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2020年7月8日水曜日

国際法秩序を無視した中国外交に歯止めを— 【私の論評】国際法を無視し、弁証法すら捨てた中共に未来なし!(◎_◎;)


岡崎研究所

6月19日付のワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンが、「もし中国が米国と良い関係を持ちたいのなら、中国はもっと良い行動をしなければならない」と題する論説を寄せ、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪共産党政治局委員(外交統括)との会談の内容を紹介しつつ、それが実質的には物別れであったと論じている。一部その要旨を紹介する。


 ポンペオ国務長官は、楊潔篪と6月17日ハワイで会談と晩餐のため数時間会った。最近の米中関係で顕著となっている相互非難を抑制する方法を探すため、中国側から今回の会談を要請してきたと言われる。それまでは、習近平がトランプに電話をすれば良かったが、トランプは3月27日の電話会談後、習近平と話すことに興味はないと言っていた。

国務省の声明は、「2人の指導者は意見交換をし、ポンペオは商業、安保、外交の分野で中国が不公正な慣行をやめる必要があると強調した。また、進行中のCOVID-19パンデミックと戦い、将来の大発生の防止のためには完全な透明性と情報共有の必要性があると強調した」と述べている。一方、中国の外務省によると、楊はより良い関係を望んでいるとポンペオに言ったが、香港への国家安全法、台湾への威嚇、新疆でのウイグル人の強制収容などあらゆる争点について、中国の立場を擁護した。

北京のやり方のパターンはよく知られている。北京の悪い行為を批判する人を侮辱または攻撃する。その後、緊張の高い状態を非難し、通常の関係に戻ることを、行動を何一つ変えずに提案する。しかし、今回は通常の関係に戻ることはない。

ロウギンの論説は、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪政治局委員との会談がうまくいかなかったこと、現在の米中関係悪化の傾向に歯止めがかからなかったことを指摘している。

米中外相会談の成果は、今後も話し合おうという合意だけである。中国側はこれまでの行動を擁護し、行動を変えることを拒否したが、そういうことでは再度話し合っても何も出てこないことになろう。

香港への国家安全法制の押し付け、新疆でのウイグル弾圧、台湾への恫喝は内政問題ではない。香港については、1984年の英中共同声明と言う条約に違反している問題であって、条約を守るかどうかの国際的な問題である。ウイグル問題については、国連憲章下で南アのアパルトヘイトなどに関連して積みあがってきた慣行は、人権のひどい侵害は国際的関心事項であるということである。台湾が中国とは異なるエンティティとして存在しているのは、事実である。

中国が台湾は中国の一部と主張していることを理解し、尊重するということは、中国が台湾に武力行使をしていいことを意味しない。

そのほか、インドとの国境紛争、豪州に対する経済制裁、ファーウェイ副社長のカナダでの拘束に絡んでの中国でのカナダ人拘束など、中国の最近のやり方には、国際法秩序を無視した遺憾なものが多い。中国が大きな国際的な反発の対象になり、そのイメージが特に先進国で悪化してきていることは否めない。

中国の緊張を高め、その緩和を申し出、その緩和の代償として相手側に何らかのことを譲らせるやり方は、ソ連、北朝鮮、中国などの共産国が多く使用してきた外交戦術であるが、すでに使われすぎて、相手側に見透かされるものになって来ている。

中国が行動を変えるべきであるとのロウギンの論説は、そういう状況の中で適切な論であると言える。

【私の論評】国際法を無視し、弁証法すら捨てた中共に未来なし!(◎_◎;)

国際関係で、中国の最大の問題は中国共産党の政治局常務委員に国際法を理解する者がいないことです。例えば南シナ海問題で中国が直面する国際司法環境の厳しさについて政治局常務委員に正しく伝えられたでしょうか。全く伝えられていないと思います。

中国の外交担当トップの「国務委員」は政治局委員どころか、さらに格が下の中央委員でしかありません。中国は、もともと他国のことは無視して、自国の都合で動く傾向のある国であることは、このブログでも何度が掲載したことがありす。それが、国の統治制度にも反映されているのです。

中国外交トップの楊潔チ・共産党政治局員

政策立案権限のない外務省は仲裁裁判所判断を「紙くず」と切り捨てました。担当する国際法に対し最低限の敬意すら払おうとしませんでした。

中共は現在の国際法が「西洋の産物」にすぎないと考えているのか。半世紀近くも国連に加盟し常任理事国の特権を享受しながら、常設仲裁裁判所の判断を否定する中国の態度は自己矛盾以外の何ものでもありません。国際法を完全無視するというのら、本来は国連から脱退すべきです。

そもそも中国には欧米型の「法の支配」という発想がありません。中国は全知全能の神と被造物である不完全な人間との契約(法)に基づく一神教の世界ではありません。日本にも、そのような考え方は、ありませんでしたが、明治以来それを理解しようと努めてきました。

これを日本では、「和魂洋才」として、とにかく西欧の考え方を学んだ上で、西欧列強に国際社会で伍していこうと努力しました。その努力は、最初は英国に認められ、日英同盟に結実しました。そうして、日本は名実ともに、国際社会の一員となりました。これは、後で述べ弁証法的な考え方に、基づいたものとも解釈できます。現在の中共にはそのようなことをするつもりは全くないです、本当に矛盾しています。

無論、様々な不幸な出来事があり、日本はその後、日英同盟も破棄し、大東亜戦争に月すすけわけですが、戦後には国際法を遵守し、国際社会に復帰しました。

その後の日本は、様々な矛盾を抱えつつも国際社会に貢献し、今日を迎えています。現状では、国内では様々な矛盾を抱え、憲法改正もできない有様です。しかし、そうは言っても、中国のように国際法を無視するようなことはありません。

中国の戦国時代に法家が説いた「法治」とは儒家の「徳治」に対する概念であり、法は権力者がつくるものです。被統治者は法の支配ではなく「立法者の支配」を受けて当然と考えます。

その意味で今2016年の中国の南シナ海実効支配に関する、国際司法判断は、人権や法の支配など欧米的概念と中華的法秩序との相克の新局面と見ることも可能です。

それと、今の中国政治指導者には共産主義者がよく用いていた弁証法的発展という考え方が身についていないようです。

弁証法とは、物の考え方の一つの型です。形式論理学では、「AはAである」という同一律を基本に置き、「AでありかつAでない」という矛盾が起こればそれは偽だとするのに対し、矛盾を偽だとは決めつけず、物の対立・矛盾を通して、その統一により一層高い境地に進むという、運動・発展の姿において考える見方です。

図式的に表せば、定立(「正」「自」とも言う)Aに対しその(自己)否定たる反立(「反」「アンチテーゼ」とも言う)非Aが起こり、この否定・矛盾を通して更に高い立場たる総合(「合」「ジンテーゼ」とも言う)に移る。この総合作用を「アウフヘーベン」(「止揚」「揚棄」と訳す)と言います。
弁証法の極めて理解しやすい事例

今の中国に見られる、ただ圧倒的に強い力関係にあるとき、単純に強行政策をとって力ずくで自らの意思を相手に押し付けるのはいかがなものでしょうか。弁証法的発展とは、自分たちの意思や行動に対する反作用の効能もよく計算に入れながら、その先に生まれる新しい関係性を戦略的に考える、いわゆる正→反→合という考え方です。

「一国二制度」をどのようにして香港住民も納得できる制度にすることができるのか。これを香港市民や当局者などを巻き込んで本格的に討議するならば、「弁証法的発展」の成果が出てくるかもしれないです。

米中対立はそもそもそれほどイデオロギー性の強いものではなく、超大国の座を目指すイニシアティブの争いの側面も強いです。したがってイデオロギー、政治・経済体制、陣営などで争った「米ソ冷戦」とは異なる面が多いです。

イニシアティブの調整さえうまくできれば、難しいことではありますが、米中共存は可能でしょう。そしてその道を探ることと香港「一国二制度」の再生は連動しています。香港に対する国家安全維持法が全人代で可決され、実施されました。

香港問題は米中新冷戦のフロントラインになりつつあります。香港に対する中国の過剰な強硬姿勢は、香港の良さを失わせる「愚策」以外の何ものでありません。

香港と中国との違いに基づき、香港社会にも受け入れ可能な香港政策を作り出す「弁証法的発展」の成果でもあった「一国二制度」は、返還から23年目で中国によって一方的に廃止されてしまいました。

中国の成長を支えた香港を強引に変化させることは、中国自身の「凋落の第一歩」を意味します。

中共は、本来であれば、西欧諸国が作った国際社会秩序を認めた上で、国際社会でビジネスをすべきでした。それと、国内が矛盾するなら、日本の「和魂洋才」ような、弁証法的な考え方で、矛盾を解消すべきでした。

下の写真は、平成11 8 23日発行の日本郵便の切手です。明治維新後、文明開化とともに外国から様々な文化がもたらされ、 当時のファッションもその影響をうけました。ハイカラとは、 当時大いに流行ったシャツの立て衿(ハイカラー)から来ており、 新しく小綺麗でしゃれた物事をハイカラと呼び、 また、そのような人をハイカラさんと呼びました。


これも、「和魂洋才」を示すエピソードの一つと言えます。とにかく当時の日本は、西欧の考え方を理解することが急務だったのです。

しかし、中共のやり方は、様々な矛盾を自国内を弁証法的に変えようとするのではなく、自国外を自国内部に合わせようとしています。その典型例が、最近の香港の「一国二制度」の破壊です。

先日もこのブログで述べたように、香港住民でない外国人までを「香港国家安全法」の適用対象とした習近平政権はもはや、世界の主人となって世界中の人々を支配てしまおうとするような狂気にとられているようです。

これは、とてつもないことです。個人でも、自分を変えずに、世界を変えることは困難です。それに比較して、まず自分を変えれば、世界が変わって見えてくるものであり、その世界で、自分の価値観を反映した何事かを実現することもできるようになります。

しかし、自分を全く変えないで、世界を変えようとだけすれば、ほとんどの場合失敗します。それどころか、どこまでもそれを推し進めようとすれば、精神に異常をきたしかねません。国も同じことです。

中国は、まさにその道を進んでいるようです。

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2018年9月24日月曜日

モルディブ大統領選で野党候補勝利、親中の現職敗れる 「中国依存」転換へ―【私の論評】モルディブでも意味不明な投資をする中国に未来はない(゚д゚)!


野党モルディブ民主党(MDP)のソリ候補

インド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブの大統領選で、選挙管理委員会は24日、インドなどとのバランス外交を目指す野党モルディブ民主党(MDP)のソリ候補(54)が過半数を獲得したと明らかにした。親中派の現職ヤミーン大統領(59)は敗れた。アジアと中東を結ぶ海上交通路(シーレーン)の要衝、モルディブで進んだ中国依存政策が転換されることになる。

 選管によると、ソリ氏は有効投票数の58.3%を獲得した。ソリ氏は「人々は変化と平和、正義を求めた」と、勝利を宣言した。

 ヤミーン氏は2013年の就任後、中国から巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた支援を受け、首都マレに2億ドル(約225億円)を投じた「中国モルディブ友好大橋」を建設するなどインフラ整備を次々と推進。野党幹部や最高裁判事を拘束する強権政治も展開し、国内外から反発を招いていた。

 ソリ氏は、中国に依存する外交政策の見直しや民主的な政治を訴え、支持拡大につなげた。MDPは隣国インドとの連携を重視しており、ソリ新政権は現政権で亀裂が走った対印関係の修復に乗り出す見通しだ。中国支援の事業の見直しも視野に入れるが、着工済みプロジェクトも多く、作業は難航が予想される。

 中国の海洋進出を警戒するインドは選挙結果について「民主主義の勝利」とのコメントを発表。選挙の不正を懸念していた米国も歓迎する声明を発表した。

【私の論評】モルディブでも意味不明な投資をする中国に未来はない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事によると「ソリ候補(54)が過半数を獲得したと明らかにした」としていますが、当選したのかそうでないのか、あるいは当確なのかなにやらはっきりしません。

ニュースサイトMihaaruによると、過半数を獲得したとは、472の投票箱のうち446を開票した段階での暫定結果で、得票率はソリ氏がヤミーン氏を16.6%上回っているそうです。

ヤミーン氏

ソリ氏は首都マレで記者団に対し「国民は変化、平和、公正を求めている。ヤミーン大統領に、国民の意思を受け止め、憲法に従い円滑な権力移行を始めるよう要請する」と述べました。

有権者が投票所で長い列を作ったため、モルディブの選挙管理委員会は投票時間を3時間延長しました。

ヤミーン氏が率いるモルディブ進歩党(PPM)の幹部はロイターに対し、同氏が高い支持を集める地域からの投票結果はまだ公表されていないと述べました。

同氏のメディア担当者はソリ氏の勝利宣言に関するコメントを控えました。

選挙管理委員会は憲法規定に従い、9月30日までに公式結果を発表するとしています。

とはいえ、よほどのことがない限り、ソリ氏の当選は間違いないようです。

米国とインドは平和的に行われた選挙を歓迎すると表明。ソリ氏率いる野党連合が勝利した可能性が高いとしています。

野党幹部によると、少なくとも5人の野党支持者が「有権者に影響を与えた」として拘束され、警察が22日夜に「違法行為を阻止」するため主要野党のオフィスを強制捜索したといいます。

欧州連合(EU)と国連の団体を含む大半の選挙監視団体は、モルディブ政府から選挙監視要請を受けたものの、選挙監視を行えば、不正投票があった場合でもヤミーン氏再選への支持に利用されかねないとして、要請を断りました。

ただ選挙を監視した団体の一つ、トランスペアレンシー・モルディブは、投票は当初円滑に行われ、ソリ氏が勝利する見通しだとし、「すべての当事者に平和的な権力移行を促す環境の維持を求める」としました。

モルディブを巡っては、従来のパートナー国であるインドと、ヤミーン氏のインフラ関連の取り組みを支援してきた中国との間で対立がみられています。西側諸国では中国の影響力拡大への懸念が広がりました。

ヤミーン氏は2月、同国初の民主選挙で選ばれたナシード元大統領ら野党関係者9人に対する有罪判決を無効とする最高裁の判断を受け入れず、非常事態宣言を発令。政治的な混乱が続いています。

モルディブの状況については、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「中国が土地を収奪している」 モルディブの野党指導者、対中批判強める 中国の手法は「債務のわな」―【私の論評】アジア諸国を「一帯一路」という妄想の犠牲にするな(゚д゚)!
記者会見する野党指導者のモハメド・ナシード前大統領=1月22日、スリランカのコロンボ

この記事は今年の1月のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 政治的混乱が続くインド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブで、野党指導者が「中国によって土地が収奪されている」と批判を強めている。不透明な土地取引が行われ、投資には高額の金利が課されているとの主張だ。中国に傾斜するヤミーン大統領を批判する思惑もあるが、強引な中国の手法に警戒感を示した格好だ。 
野党指導者のナシード元大統領は、AP通信やインド英字紙タイムズ・オブ・インディアなどとのインタビューで、「中国のモルディブでのプロジェクトは土地の収奪だ」などと主張している。
政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 ナシード氏によると、中国はモルディブで既に17の島々の権利を取得しているが、どれも手続きは不透明だという。中国は取得した島に約4千万ドル(約43億円)を投資すると約束しているが、ナシード氏側は「高金利であり、いずれモルディブ側は返済に窮する」と主張している。 
 野党側が念頭に置くのが、スリランカ南部ハンバントタ港の事例だ。中国の出資で港湾設備が建設されたが、スリランカは巨額の金利返済に苦しみ、最終的に昨年末に99年間の長期リースの形で中国側に明け渡すことになった。援助を受けていたはずが奪い取られた格好だ。ナシード氏は中国の手法は「債務のわなだ」と主張。憲法を改正して、外国人への土地販売を容認したヤミーン氏についても批判している。
政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 最高裁の政治犯釈放命令に端を発したモルディブの混乱をめぐっては、ヤミーン氏は5日に発令した15日間の非常事態宣言をさらに30日間延長することを決定。ヤミーン氏側は、中国に特使を派遣して支持を訴えており、ここでも両国の蜜月の関係がうかがえる。一方、ナシード氏側はインドに援助を求めており、与野党の対立は深まる一方だ。

・・・・・・・〈一部略〉・・・・・・

しかし、ここの土地を収奪する中国にはそれなりの意図があります。それは、無論一帯一路と多いに関係しています。

「一帯一路」とは、(1)支那西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、(2)支那沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、交通インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進していく構想です。夢のような構想ですが、中国は「本気」であり、具体的な目標を高速鉄道の建設に置いています。 
実際に、中国浙江省義烏と英ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行が、始まっています。支那が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、支メディアによると、両国間の直通貨物列車は初めて。支那は欧州との経済関係強化のため、中央アジアを通じた鉄道物流の充実を図っています。 
 中国は「一対一路」で「経済スーパーパワー外交」を展開するつもりのようです。中国の成長果実を周辺国にもシェアすることによって、周辺国との経済圏を構築し、善隣関係を強めることがねらいですが、同時に、過剰投資に悩む国内産業の新たな市場開拓、対外投資の拡大、約4兆ドルの外貨準備の運用多角化といった中国自身の経済的な思惑も込められています。
「一帯一路」を言い出したのは習近平・国家主席であり、彼の権力確立に伴って、この構想にも勢いをつけようとしています。私自身は、この構想は最初から失敗すると思っています。
なぜなら、世界航路や陸路などのインフラ整備はもうすでに出来上がっていて、われわれはそのインフラによってすでに貿易を行っています。そうして、このインフラは各国政府や民間機企業が、長年にわたり競争をしつつ切磋琢磨してつくりあげてきたものであり、さらに現在でも改良・改善が加えられています。 
今更中国が後から割って入って、最初から計画してつくりだすにしても、現在までにつくりあげられてきたインフラにまさるものを中国が中心になってつくりあげることはほとんど不可能だからです。 
中国としては、過去の国内のインフラ整備による経済成長が忘れることができず、その夢をもう一度海外で実現したいのでしょうが、国内において、共産党中央政府の鶴の一声で、何でも自由にできましたが、外国ではそういうわけにはいきません。
そもそも、一帯一路は、中国の余剰労働力を利用して、外貨獲得をしようというものであり、これがとてもうまくいくとは思えないです。

というのも、こういうブロジェクトはある程度国が成熟し経済成長も数%のような国が、経済成長率が十数%以上のような国に投資すると収益率がかなり高くなります。しかし、中国のように成長率の高い国が投資したとしても、収益率はかなり低くなります。

ちなみにモルディブの経済成長をみてみます。以下のグラフをご覧ください。


過去においては、26%と驚異的な成長をした年もあるようですが、最近ではそうでもないようです。2017年は4.8%、2018年は 5.0%(予測)です。

中国のGDPはあてになりませんが、一応は、2017年は6.9%、2018年は 6.56%(予測)です。中国のGDPなどの経済統計はデタラメだといわれていますが、仮にこれが本当だとすれば、中国によるモルディブ投資はかなり収益率が低いものであると言わざるを得ません。

仮に本当の中国成長率は低いとしても、モルディブが有力な投資先であるとは到底いえません。いずれにせよ、収益率は最初から相当低いと言わざるをえないです。

こういう国に、投資して中国企業に受注させ、中国人労働者を送り込んで工事をするという姑息なことをしたとしても、そもそも収益率がかなり低いので、外貨を獲得するなどということできません。

そこで、中国が考えだしたのは、当該国を一対一路で援助をしていたはずが、巨額の借金を抱えさせた上でインフラも奪うという方式です。

こうした手法は「債務のわな」と批判されています。3月にはティラーソン米国務長官(当時)も、一帯一路の参加国が、完成したインフラを中国側に譲渡する事態に対し、「主権の一部を放棄しないで済むよう(事業契約を)注意深く検討すべきだ」と呼び掛けました。

米シンクタンク「世界開発センター」は今年3月、一帯一路参加各国の債務についての調査結果を公表した。返済能力や債務の中国への依存度などについて、IMFのデータなどから検証しています。

債務にリスクがある国とされたのが、ジブチ、キルギス、ラオス、モルディブ、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、パキスタンの8カ国です。


報告によると、東アフリカのジブチは対外債務が2年間でGDPの50%から85%に増加した。大半の債権を抱えるのは中国です。東南アジアのラオスでは、最大67億ドル(7327億円)に達する鉄道プロジェクトが国のGDPのほぼ半分を占め、債務返済が難しくなる可能性を指摘しました。

中央アジアのタジキスタンでは、IMFと世界銀行が債務について「リスクが高い」と評価しているが、今後もさらなるインフラ投資が行われるといいます。

調査で「最大のリスクを負っている」と指摘されたのが、パキスタンです。一帯一路関連プロジェクトである中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に基づいて、インフラ整備が進行中で、中国から約620億ドル(6兆7800億円)の融資が見込まれています。調査は「高い金利が、パキスタンのリスクとなる」と警告しました。

さて、このような中、モルディブ大統領選で野党候補勝利し、親中の現職敗れる 「中国依存」転換されるというのは当然といえば当然です。

しかし、それにしても理解できないのは中国の挙動です。このような最初から儲からないことがわかりきっている投資をして、さらに投資先の国に債務を負わせ、最後にインフラを取り上げるなどのことをするのですが、それで何になるというのでしょう。

たとえば、「中国モルディブ友好大橋」を取り上げたとして、それが何になるというのでしょうか。考えてみてください、そもそも借金を返せないような国のインフラを取り上げて、何になります。

当然のことながら、そこからは富はほとんど生まれません。無論かなり経済成長をしている国であれば、そんなことはないでしょうが、であれば簡単に借金を返すことができるはずです。

巨大な橋を自分のものにしてしまえば、一見儲かったようにもみえますが、その橋ができたことによって、地域が繁栄すれば良いですが、そうでなければ、橋をメンテするのにかえって金がかかるだけになります。

土地でいえば、極端なことをいえば、中国のやり方はあまり高くもない土地に大枚をはたいてインフラを設置し、最終的にインフラをとりあげるというものですが、そもそもあまり高くもない土地に設置したインフラは富を生み出すのでしょうか。もちろん生み出す可能性がある場合もありますが、それは当該地域が急速に経済発展することが前提です。

もし儲かるというのであれば、他の国々も似たようなことをしているはずです。他国どこもやらないようなことを中国は「一帯一路」という美名をつけて、結局他国から富を収奪しようとしてるようですが、とても収奪できそうにもありません。

中国はまともに植民地経営をしたことがないので、その実体を知らないのかもしれません。かつての先進国による植民地経営も実体はほとんど儲かりませんでした、結局金食い虫的な存在になってしまったので、先進国は植民地を手放したのです。

余剰労働力をなんとかしようとしてるのかもしれませんが、それにしてもこんなやり方が長続きするとも思えません。そもそも、中国は自国内に豊富な内需が期待できそうな国ですし多くの先進国はそれに期待していました。

しかし当の中国はその潜在可能性を最大限に活用するでもなく、「一帯一路」で海外に投資をするという摩訶不思議なことをしています。何やら、経済合理性のみを考えても、中国のやり方は意味不明です。こういう意味不明なことをやる国には、未来はないと考えるのが当たり前でしょう。

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2017年11月9日木曜日

未来がなくなった亡国への光景 韓国の若者、楽して暮らせる公務員「最低職位」試験に殺到―【私の論評】ポスト安倍は日本も韓国並に八方塞がりに(゚д゚)!

未来がなくなった亡国への光景 韓国の若者、楽して暮らせる公務員「最低職位」試験に殺到

韓国の若者に「公務員志望」が高まっているという(写真と本文は関係ありません)
 韓国で「公務員志望」の熱気がますます高まっている。といって、国を牽引(けんいん)するような大志を抱いて上級職試験を受けるのではない。「一生楽して暮らせるから」と、若者が9級職(=最低職位)の試験合格を懸命に目指す。これは「亡国への光景」だ。

 韓国に「労働者と北朝鮮のための政権」が誕生して半年余。「北朝鮮のため」は、安保主権を中国に委ねるようなコウモリ外交に象徴されるとおり着々と進んでいるが、「労働者のため」は、有効求人倍率が8月の0・68から9月には0・62に落ちるなど思うに任せない。

 最低賃金は2018年から16%アップするが、玉突き型に賃金レベル全体に上がるのは必至だ。それで民間部門からは「人員削減不可避」の声が聞こえてくる。

 そうした中で、韓国の公務員は恵まれすぎている。

 官庁系シンクタンクの分析によると、9級職でいいから公務員になれば、退職までに15億ウォン(約1億5300万円)を超える収入を得られるが、小企業(従業員49人以下)に入ったら生涯賃金は8億ウォン(約8200万円)に届かない。

 中企業よりはしっかりした中堅企業(同300~999人)に入ったところで、生涯賃金は9級合格者より4億8756万ウォン(約4990万円)少ない。

 大企業(同1000人以上)なら、9級職合格者を6875万ウォン(約700万円)上回るが、大手財閥系に入社できる新卒者は2%に届かない。いまをときめく大手財閥とて「財閥キラー政権」が続けば、どうなるか分かったものではない。上級職公務員試験は難し過ぎる。
それで、国立ソウル大学の卒業者まで、最低職位の公務員試験に殺到するわけだ。2009年の法律改正により、公務員試験の年齢制限が撤廃されてからは、“晩年受験者”も増えている。財閥系に就職したものの「45停」(サオジョン)とも「名誉退職」とも呼ばれる「早期肩たたき」に遭った人々も、9級職公務員を目指す。

 だから、このところの9級職試験の倍率は50倍以上。地方で1人か2人の補充募集があると倍率1000倍といったこともある。

 9級職は、少数の例外はあれ、普通は定年まで勤めても7級までしか出世しない。日本で言えば「主事」だ。

 一昔前の韓国は、会う大学生のほとんどが、李王朝で言えば「両班」(ヤンバン)を目指していた。つまり上級職公務員か大手財閥の社員だ。

 それに比べると、今や韓国の大学生は「そうだ! 中人(チュンイン)を目指そう」に変わった。中人とは両班の下にいた宮廷の吏員だ。中人だって、両班ほどではないにしても、常民(サンミン)、奴婢(ノビ)に対しては威張り散らしていた。アァ、7~9級職公務員とは、官尊民卑が続く現代韓国で、李王朝の中人に値するのだ。

 日本には「どうして1番でなくてはダメなのですか」とわめき散らした政治家がいた。1番を目指したところで1番になれるものではないのに…。若者が初めから「中人」を目指す国に、未来があろうはずはない。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。

【私の論評】ポスト安倍は日本も韓国並に八方塞がりに(゚д゚)!

韓国統計庁発表によると、韓国の8月の若年層の失業率は9・4%と、アジア通貨危機後の1999年8月の10・7%に次ぎ、8月の数字としては最悪になりました。ちなみに、韓国の若年層の失業率は「15歳から29歳」の労働市場参加者が対象で、ILO(国際労働機関)やOECDの15歳から24歳よりも定義が広くなっている(=というわけで、若年層失業率ではなく『青年失業率』と呼ぶ)。

25歳から29歳の若者は、24歳未満よりも働いている可能性が高いです。韓国の若年層の失業率ならぬ青年失業率は、実態よりも低く見えてしまいます。

OECDの統計によると、2016年の韓国の若年層失業率は10・7%と、2ケタに達していました。ILOやOECDの定義(15-24歳)で見ると、韓国の直近の若年層失業率は12%を上回っている可能性が極めて濃厚です。

現在の韓国では、失業者の4割を若年層が占めます。しかも、就業経験が全くない若年層が増え続けているわけですから、事態は深刻です。同国では、就業経験を一切持たない失業者の8割超を、若年層が占めています。

韓国銀行
なぜ、韓国の若者の雇用機会が減少しているのか。最大の理由は、韓国銀行(韓国の中央銀行、日本の日銀にあたる)が雇用情勢がこれだけ悪化しているにもかかわらず、量的緩和をしないからです。

実際、本日も以下のようなニュースがありました。
成長率とインフレ上昇見通しが金融政策の調整を支援=韓国中銀 
韓国銀行(中央銀行)は9日、半期に一度の金融政策報告を発表し、国内経済が潜在成長率に近づいており、インフレ率も上昇が見込まれることから、金融緩和政策の調整が可能になってきたとの見解を示した。 
中銀は「経済成長率は潜在成長率に向かって好転している一方、インフレ率は目標水準を目指して上昇すると予想されており、低成長と低インフレに取り組むため緩和的に維持されてきた金融政策の調整が徐々に可能になってきている」と分析している。 
第3・四半期の韓国国内総生産(GDP)速報値が過去7年余りで最も大幅な伸びを記録したことを受け、市場関係者は中銀が11月30日の金融通貨委員会で6年超ぶりの利上げを実施するとの予想で一致している。 
中銀は2012年から8回の利下げを実施し、10月19日の委員会では政策金利を過去最低水準の1.25%に据え置いた。 
金融政策報告はまた、現在の成長モメンタムが持続的かどうかを判断するため、中銀が経済動向を注意深く見守っていくとしている。
このニュースからうかがえるのは、韓国銀行がまともに機能していないことです。まず第一に「国内経済が潜在成長率に近づいており、インフレ率も上昇が見込まれることから、金融緩和政策の調整が可能になってきた」という韓国銀行の発言です。これは、全くおかしいです。インフレ率の上昇が見込まれるから金融緩和政策の調整が可能になってきたのではなく、そもそも中央銀行の金融緩和策によって、インフレ率が決まるはずです。

さらに、これだけ雇用が悪化しているにもかかわらず、直近で実施する金融緩和策は、量的緩和ではなく、質的緩和である利上げです。

これでは、雇用情勢を改善することはできません。どうも韓国の金融政策はおかしいです。

韓国中央銀行は、国の中央銀行としては珍しく、2004年から4年間、世界唯一の赤字中央銀行となっていました(なお、2015年にはスイス国立銀行が赤字決算となっている)。これは、市場に流通されている通貨量を調節する目的で発行される通貨安定証券の過多発行と、それにもとづく利子負担によるもので、この時期の通貨安定証券の過多発行は、為替の値下がりを防ぐため行われたものとされています。しかし、これも良くわかりません。

また、1997年のアジア通貨危機当時、韓国銀行は、外貨を国内の市中銀行に貸し出すなどして、公表されていた外貨準備高を確保していなかったことが、アメリカ合衆国・連邦準備理事会のアラン・グリーンスパン議長(当時)の回顧録で明らかとなっています。

韓国銀行は中央銀行としてどうもまともに機能していないようです。日本でも、日銀が現在の黒田体制になる前の白川体制以前では、日銀はまともに機能していませんでした。

金融通貨委員会を取りまとめる李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行総裁=11日、ソウル
特に、日本国の金融政策を決定す審議会のメンバーが、とても金融政策を理解しているとも思えないようなメンバーがほとんどでした。これらのメンバーのほとんどが、なにかといえば金融引締め策を実施したため、本来金融緩和をすべきときにも引き締め策を堅持しました。

そのため、日本は円高傾向となり、デフレスパイラルのどん底に沈み込み、雇用もかなり悪化しました。韓国では、金融通貨委員会が韓国の金融政策を決定するようですが、この委員会もかつての日銀の審議会のようにまともに機能していないのだと思います。

韓国では、金融政策を疎かにしているようでは、かつての日本のように雇用が改善されることはありません。一刻もはやく金融緩和すべきです。韓国は、金融緩和すべきといういうと、緩和すればキャピタル・フライトがおこるということを主張する人もいますが、韓国の場合はその心配はないと思います。

これに関しては以前もこのブログに掲載したことがあります。結論らかいうと、韓国は金融緩和してもキャピタル・フライトは、おきません。かつてキャピタルフライトの起きた国としてアイスランドは有名です。

その頃アイスランドはGDP比で700%もの外貨建ての借金をしていました。しかし、当時のアイスランドの政府債務対GDP比は29%しかありませんでした。この700%もの債務は一体誰が負っていたのでしょうか。

アイスランド政府の借金でないのであれば、あとは民間しかありません。この膨大な対外の外貨建て債務は国内の金融機関が負っていた負債でした。

このような国であれば、当然のことながらキャピタルフライとは起こりえます。そうして、実際アイスランドではそれが起こったのです。

韓国銀行は2月22日、韓国の対外債権が前年比638億ドル増の7843億ドルとなったのに対し、対外債務は151億ドル減の3809億ドルだったと発表しました。

対外債務では長期対外債務が160億ドル減少し、短期対外債務は8億ドル増えました。外貨準備高(3711億ドル)に占める短期対外債務(1052億ドル)の割合は28.3%で前年と同じでした。同割合は2013年の32.3%、14年の32.0%、15年の28.3%と年々低下してきました。1997年の通貨危機当時(283.1%)、2008年の金融危機当時(79.3%)に比べるとはるかに低い水準です。

この程度の対外債務であれば、どう考えても金融緩和したからといって、キャピタルフライトを起こすことはありません。

にもかかわらず、量的金融緩和をしないのは、やはり、韓国では日本のように、金融政策と雇用が密接に結びついているということを理解しない人が、政治家やマスコミにも多いということだと思います。


日本では、幸いなことにこれを理解している安倍総理や菅官房長官など政府中枢に存在するので、最近は未だ十分とはいえないまでも、日銀の金融政策はまともになってきました。

しかし、ポスト安倍ではこの二人も政権では中枢に居続けることはできないでしょう。そうなると、日本も韓国なみに金融政策が機能しなくなり、また雇用がかなり悪化する恐れがあります。雇用の悪化だけではなく、またデフレスパイラルのどん底に沈み、円高に逆戻りです。

そうなる可能性はかなり高いと思います。ブログ冒頭の記事で、室谷克実(むろたに・かつみ)氏は、韓国の雇用情勢の劣悪さについては詳細に語っていますが、その原因や韓国がすべきことについては何も語っていません。というより、金融政策と雇用政策について室谷氏の頭の中では何の連関性もないのでしょう。

日本でも、室谷氏のような人のほうが一般的です。雇用の悪さと、中央銀行を結びつけて考える人は多くないです。そうして、無論韓国内でも、そのような人は皆無に近く、何かといえば、構造改革ばかり叫ぶ人が多いです。

韓国では、金融緩和策が実施されていないことが、様々な歪みを生んでいるのは間違いないです。まずは、雇用の極度の悪化、家計の借金の悪化、ウォン高、その他諸々です。

私は、韓国政府による反日活動も、これに関係していると思います。そもそも、金融緩和策がまともになされていれば、国民の不満もさほどではないですが、現状ではそうではなく、多くの国民が八方塞がりになっていて、憤怒のマグマがいつ吹き出してもおかしくない状況です。その憤怒のマグマを自分たちに向かせることなく、日本を悪者にしたてて、日本に向けるようにしたのが、韓国の反日でもあります。

まともな金融緩和策を実行すれば、国民にも余裕でき、政府も極端な反日などしなくてもすむようになります。国民と政府との関係も余裕ができ、今よりはかなり良くなります。現状では、国民の不満が増すばかりで、その不満に乗じて、北の勢力が浸透しやすくなっています。

しかし、今日の韓国は金融緩和はせず、そうして国民から政府まで皆が八方塞がりに陥っているのです。

ポスト安倍は今のままでは、金融引締めを繰り返すようになり、現在の韓国のように八方塞がりになる可能性が高いです。

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2015年10月15日木曜日

翁長氏、国連で「民族自決権」の危険極まる言動 H・S・ストークス氏緊急激白―【私の論評】翁長、中国におもねってどうする!馬鹿の一つ覚えしかできない中国に未来はない(゚∀゚)


翁長知事は、辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した=13日

沖縄県の翁長雄志知事は13日、米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古沖の埋め立て承認を取り消した。防衛省沖縄防衛局はこれを不服として、14日中にも行政不服審査法に基づく審査請求と効力停止を石井啓一国交相に申し立てる方針。政府と沖縄県が「全面対決」するなか、翁長氏の危険極まる言動について、米紙ニューヨーク・タイムズや、英紙フィナンシャル・タイムズの東京支局長を歴任した、英国人ジャーナリスト、ヘンリー・S・ストークス氏が緊急激白した。

翁長氏がついに、辺野古沖の埋め立て承認を取り消した。

菅義偉官房長官は13日、「(仲井真弘多)前知事から行政の判断は示されており、法的瑕疵はない」と記者会見で語っていたが、まったく同感だ。翁長氏は完全に一線を越えてしまった。

これまで何度も指摘してきたが、辺野古移設は「世界一危険」といわれる普天間飛行場の危険性を除去しながら、沖縄の基地負担を軽減し、日米同盟の抑止力を維持する「唯一の策」だ。中国は1990年代以降、国防費を毎年10%前後増加させ、沖縄・尖閣諸島周辺に艦船を連日侵入させている。沖縄本島への領土的野心もあらわにしている。

翁長氏は、沖縄の地政学的重要性も考えて判断すべきだが、聞く耳を持たなかった。安全保障に対する意識が欠落しているのか、何らかの意図や背景があって目を閉ざしているかの、どちらかだろう。

こうしたなか、翁長氏の看過できない、恐ろしい発言を知った。

翁長氏は先月21日午後(日本時間22日未明)、スイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で、辺野古移設に反対する演説を行った。日本の新聞は、翁長氏の「沖縄の自己決定権がないがしろにされている」という発言を報じていたが、正確には「自己決定権」という部分で「self-determination」という英語を使ったのだ。

この英語は、国際法上の権利用語であり、正確には「民族自決権」と訳し、「植民地や従属地域からの分離、独立」を意味する。つまり、翁長氏は国連で「沖縄県民は独立民族だ」「沖縄は植民地」「沖縄には日本から独立する権利がある」と宣言したようなものだ。

歴史的に、民族自決権を求める戦いは「武装蜂起」や「大量虐殺」など、悲惨な結果をもたらしてきた。コソボ、セルビア、ボスニア、ソマリア…。翁長氏はどういう意図で「民族自決権」という言葉を使ったのか。知恵をつけた人物や組織があるのか。沖縄が大混乱して喜ぶ国はどこか。

このような妄言を振りかざすリーダーを持つとは、沖縄の将来は暗澹(あんたん)たるものと言わざるを得ない。沖縄に迫る危険性について、日本国民、特に沖縄県民は深刻に受け止めるべきだ。
【私の論評】翁長、中国におもねってどうする!馬鹿の一つ覚えしかできない中国に未来はないぞ(゚д゚)!

 H.S.ストークス氏
翁長が国連の人権委員会でとんでもないことを語ったことはこのブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「沖縄で人権侵害ない」「知事は尖閣狙う中国の脅威を無視」 国連人権理で辺野古賛成派が反論―【私の論評】完璧に習近平の走狗に成り果てた愚か者翁長(゚д゚)!
22日、スイス・ジュネーブ人権理事会で演説する名護市民の我那覇真子さん
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、翁長が人権委員会において、沖縄で人権侵害が行われていると訴えたのに対して、名護市民の我那覇真子さんがその反対の演説を行ったことを掲載しました。

この記事の結論部分のみを以下に引用します。
習政権を後ろ盾とする翁長知事が独立をチラつかせ、基地の移設だけではなく、尖閣問題に異論を唱えだす可能性も高いです。本年4月5日に普天間移設工事の対立を危惧した菅義偉官房長官が初会談に及びましたが、この裏テーマは沖縄県が中国の傘下とならないよう、翁長知事の腹を探るためでもあったと考えられます。 
それにしても、翁長は、沖縄で人権侵害しているなどと訴えるなら、その前にまずは、中国における、酷い人権侵害を訴えるべきです 
沖縄に人権侵害などありません。中国こそ、民主化、政治と経済の分離、法治国家化もなされておらず、酷い人権侵害が横行しています。先日も、人権派弁護士が大量に拘束されたばかりです。 
以上のようなことを考えると、翁長は完璧に習近平の走狗に成り果てた大馬鹿者であるということができると思います。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
さて、ストークス氏はブログ冒頭の記事で、翁長氏が国連の人権委員会で民族自決という言葉遣ったことについて、「歴史的に、民族自決権を求める戦いは「武装蜂起」や「大量虐殺」など、悲惨な結果をもたらしてきた。コソボ、セルビア、ボスニア、ソマリア…。翁長氏はどういう意図で「民族自決権」という言葉を使ったのか。知恵をつけた人物や組織があるのか。沖縄が大混乱して喜ぶ国はどこか」と述べています。

しかし、様々な状況証拠からして、知恵をつけた人物は中国のいずれかの高官であり、沖縄が大混乱して喜ぶ国は中国以外にあり得ません。

翁長が沖縄におもねっているのは、明々白々です。

そうして、翁長をはじめとする、沖縄民族自決派には、はっきり断言したいことがあります。

まずは、現在琉球列島に住む人々のDNAの遺伝系統は台湾や大陸の人々とのつながりはなく、「日本本土」により近いということです。

この事実は、あの反日新聞「琉球新報」の記事に掲載されていたものです。
 琉球大学大学院医学研究科の佐藤丈寛博士研究員、木村亮介准教授、北里大学、統計数理研究所の共同研究チームが、現在の琉球列島に住む人々の核ゲノムDNAを解析した結果、遺伝的に琉球列島の人々は台湾や大陸の人々とつながりがなく、日本本土により近いという研究成果を発表した。
 琉球大学が16日、発表した。また、沖縄本島から宮古、八重山諸島へ人々が移住した時期をコンピューターで計算した結果、古くても1万年前以降と推定。宮古のピンザアブ洞穴人(2万6千年前)や石垣の白保竿根田原(さおねたばる)洞穴人(2万年前)は、現代の宮古、八重山の人々の主要な祖先ではないと結論付けた。 
 これまで、骨や一部DNAの分析から、琉球列島の人々は中国や台湾より日本本土の人々と近いとする研究成果が発表されてきたが、今回、初めて全ゲノムを網羅した解析によって同様の結果が導かれた。今後の琉球列島の人々の起源を探る研究の一助として注目されそうだ。 
 研究チームは、現在の沖縄、宮古、八重山諸島出身者数百人からDNAを採取し、ヒトゲノム全域に分布する60万個の単一塩基多型(SNP)を解析した。その結果、琉球列島の人々と台湾先住民は別系統の集団で、地理的に近接する八重山諸島の人々も台湾先住民との間に直接の遺伝的つながりがないと結論付けた。 
 港川人についても同チームは「琉球列島の人々と漢族が分岐した年代が縄文時代以降であると推定されたことから、沖縄諸島の人々の主要な祖先ではない可能性が高いと思われる」と推測し、今後さらなる精査が必要としている。 
<用語>ゲノム
親と似た性質を子に伝える「遺伝」という仕組みの元になる情報のこと。細胞の核の中に、2本一組の鎖状のDNAという分子があり、鎖には塩基という物質が並んでいる。塩基はアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類で、その並び順(配列)が遺伝情報になる。配列に従って約10万種類のタンパク質や酵素がつくられ、体を形作る約60兆個の細胞の材料になったり、体の働きを制御したりする。
もともと、血縁関係も何もない、中国などに翁長などの沖縄独立派が、おもねること自体が何の根拠もないことになります。 また、系統的にも日本の本土に近いということから、沖縄が中国などの領土である必然性など全くありません。

次に言っておきたいことは、もう現中国の体制は崩壊寸前にあることです。それは、昨日このブログに掲載したばかりです。

詳細は、昨日のブログに掲載したので、それを読んでいただくものとして、かいつまんでいうと、中国のGDPに占める個人消費の割合は、現状では35%程度に過ぎないというとんでもない事実から中国の現体制の崩壊は近いうちに必ずおこるというというものです。

下のグラフをご覧ください。1998年から2011年というと、日本は酷いデフレでモノが売れず、格差がひどくなったとされています。


ところが、この期間の中国は、GDPが伸びていたにもかかわらず、個人消費は横ばいどころか、下がっています。

2010年には、中国のGDPは日本を追い抜いて世界第二位になったとされていますが、それでも上のグラフで見てわかるように、個人消費は35%前後の推移でした。

これは、何を意味するかといえば、中国のGDPのほとんどは、多額の資金を投入して、インフラ投資を行った結果であるということです。要するに、鉄道、道路、港、電気、下水道、空港などの大規模工事を行った結果であるということです。

そうして、このような工事が行われても、個人消費はほとんど伸びないというとんでもない結果に終わっており、これは何を意味するかといえば、インフラ整備を当面することがなくなれば、中国のGDPは現在の35%の個人消費の水準近くまで落ち込むということです。

そうして、最終的には、個人消費の実数は変わらないどころかさらに下がり、GDPがおちこみ、そのことによって中国の個人消費は現状の35%から、60%前後にまで増えることになるでしょう。その頃には、中国のGDPは現状の半分程度にまで落ちこむかもしれません。

そうして、日本は上のグラフでみてもわかるとおり、デフレの間であっても、個人消費が60%近くあったということを考えてみれば、これからの中国がとんでもないことになることは良く理解できます。

中国で、大規模インフラ投資が一巡したあとには、とんでもなくGDPが落ち込むことになります。

日本や欧米などでは、終戦直後から20年から30年で大規模なインフラ投資を終えていましたが、個人使用費が大きく、インフラ整備も全くなくなるというわけではないので、その後GDPが極端に落ち込むということはありませんでした。ただし、日本は例外的に、日本銀行の金融政策の大失敗でしばらくの間酷いデフレが続きましたが、それでも、個人消費は60%近くありました。

今後中国の景気がインフラ工事がなくなる分落ち込みますが、個人消費がもともと35%しかないので、日本よりもさらにかなり酷いことになりそうです。

これに対する処方箋は、昨日の記事にも掲載したように、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をある程度すすめて、中間層を育成し、この層の社会・経済活動を活発化させることです。

しかし、習近平をはじめとする中国の共産党政府の幹部はあまりに頭が悪すぎて、このことが全く理解できておらず、経済発展というと、インフラ投資しか思い浮かばないようです。

中国の馬鹿の一つ覚えの象徴、誰もすまない住宅街を中国では鬼城と呼ぶ

そうなると、中国のGDPはいずれ、現状の半分以下になることも予想されます。そうなると、今までは儲けさせてくれた、中国共産党政府に対して忠実であった富裕層も離反することになります。そうなると、現在の体制の崩壊ということになります。さらに、中国自体が分裂するということも十分に考えらます。

こんなことは、中国の高級官僚も十分承知しているようです。中国の将来に失望した彼らは、妻子を欧米に移住させて、移住先に中国でせっせとためこんだお金を送金して、いつの日か自らも妻子の移住先に逃亡しようと企てています。こういう官僚を中国では久しく以前から、裸官と呼んでいます。実際にそうした者も多数存在します。

そんな中国におもねる、翁長などの沖縄独立派は、何といえば良いのか・・・・。はっきりいえば、時代錯誤の守旧派というところです。中国はこれからまだまだ発展するという、昔の幻想に取り憑かれたままです。まあ、一言でいえば、まともな経済対策すら覚束ない中国の馬鹿で頭が硬直した幹部と同じ、頭なしというところだと思います。

翁長などの沖縄独立派が、中国におもねったにしても、その中国は近いうちに、この地上から消え去るかもしれません。そんなときに、沖縄の最大の問題は、中国人の移民問題になるかもしれません。そんなことも翁長は、考えられないほど、頭が硬直しているのだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2012年3月11日日曜日

GREEはかつて“ウェブ屋台”だった−【私の論評】未来をつくる方法には二種類方法がある!!

GREEはかつて“ウェブ屋台”だった:

ゴムホース大学


今回はラカンさんのブログ『ゴムホース大學』からご寄稿いただきました。

■GREEはかつて“ウェブ屋台”だった
先週、従兄弟の友人から「“起業”したい」と相談を受けた。餃子の王将で3時間ほど従兄弟も交えて話したのだが内容は覚えておらず。ただ彼が連呼する「スタートアップ」「MBA」「ベンチャーキャピタル」「グリーの田中さん」「BOPビジネス」「ザッカーバーグ」という単語だけが私の脳の底に残っていた。


帰ってから「あいつは何者なんだ」と従兄弟に聞くと「MBA=M→マヌケ、B→バカ、A→アホ」(写真:馬鹿阿呆間抜けの三色ランチ:映画『バーン・アフター・リーディング』のスチル)と即答して笑わせてくれた。とにかく性格的には良い奴だが、痛い感じの意識高い同級生だそうだ。ある種の一部の最近よくいる愛嬌あるタイプなのかもしれない。彼の話した内容を一・二行で要約すると、
「自分は世界を変えたくて、でかい起業がしたい。莫大な金がいる。でもお金がない。エンジェルを探している、米国でMBAも欲しい」

みたいな感じになるのだと思う。こんな要約でなんとなく彼の雰囲気が伝わるのではないか。

自分は大きな野心を持つ挑戦に対して、「お前は無理だ」「身の程を知れ」などと頭から否定するつもりはないが、ただ“この種”の学生の話を聞いていると、疑問に思うことが多い。それは“無謀”だからではなく、彼らが思い描く巨大な設備投資から始まる“大起業”のイメージが、少し間違っているのではないかと感じるからだ。

私は、近年のIT系“大起業”は従来の起業とは違う、独特の派生を経ていると思う。
その点を考えるうえで、携帯ゲーム会社2大双璧の1つGREEの田中和良社長のインタビューが面白い。


「「それでいい、楽しいから」――7万人の町「GREE」を一人で作ってる会社員」2004年07月30日『ITmediaニュース』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0407/30/news006.html

田中氏は楽天勤務時代、自身でサーバーを用意し、サラリーマンと兼業して、まさに屋台的な半趣味でGREEを運営していたようだ。大きな“社会を変える起業”など当初は想像していなかったが、やっている途中で自己増殖的に爆発して巨大プラットフォームにまで成長した。

田中氏以外にも、こういう例は多い。『Facebook』も最初はザッカーバーグが作った出会い系SNSのような趣味サイトだったろうし。2ちゃんねる管理人の某氏のケースも同様だ。


現在は経営者として多忙な日々であろうが、初期に起きた爆発的拡張は、管理人も意図していなかったははすである。これら類似点はなんなのだろうか。

これを彼らがラッキーだったからと解釈するのも、血の滲む努力をしたからと解釈するのも間違っている気がする。

彼らのサービスがハイパーインフレーション的な増殖を見せたのは、当然彼らのサービスが魅力的であったからで、ウェブ媒体で希少な資源(ソース)である“人の関心”を奪ったからだ。

そして最も重要なのことは、現代はITインフラの拡張で情報伝達が加速化して“人の関心”の集積が指数関数的に伝達・集積される部分が深く関係しているのだろう。特にSNSでは人⇔人というダイレクトな繋がりで伝達されるので、“良い”と思ったサービスはネズミ算式に拡張する。

ただこれは“量”(人数)のネズミ算ではなく“質”(ムード)の部分も大きい。はじめは誰かが面白そうだと思い興味本位で参加して。サービスに関心を持つある一定のユーザーが集まり、それでますます面白い雰囲気ができてきて、という繰り返しで偶発的なインフレーションが、次第に強まり、独自の有機的なコミュニティーが形成されるのだ。

現在のSNSを含む、ユーザー参加型サービスは、サービスごとに独自の風土が形成されているような気がする。もちろんそのSNS内のコミュニティーごとにも、集まったユーザー層ごとに島のようなクラスタで細部増殖的に分枝するのだが。結局はそのサービス、またサービス内の所属コミュニティーの雰囲気のようなものに引き付けられ、その繰り返しで自律的なフレームが構築されるのだろう。つまり1つの言語ゲーム型ネットワークなのだ。この場合、関心の集積は、ユーザー参加人数としての身もふたもない量を超えて、参加者コミュニティーの感性価値が重要視される。

このような参加型サービスの爆発的拡張の契機となるのは、戦略的なマーケティングの集客よりも、多数派工作に至るまでの“有機的な関心の増加”である(もちろん初期の“火付け”としての宣伝は必要だが)。

王将で私が相談を受けた学生は、世界を見ているようだ。それは良いが、どうやら世界ははじめから戦略的意図で狙えるものではないのではないか?

とりあえず何がしたいか考え抜いた後で、設備投資を抑え、安価に使用できるサービスを横断的に組み合わせて低リスクなポーフォリオを組み“屋台的な試み”をトライ&エラーで続けるのがベターだと私は彼にアドバイスした。彼は世界起業のイメージと正反対だったためか、唖然としていたが、それが近道だろう。

個人にできることは考え抜いた末に、不確実性の海にサイコロを投げ続けるだと私は思う。
“投げ続けること”が重要なのだ。

【追記1】ウェブメディア企画の調査も兼ねて調べてみると、月100万PVを集める言論プラットフォーム『アゴラ』も月数百円のブログサービスに、無料のリンクウィズイン、『Facebook』などのプラグインを組み合わせたウェブ屋台である。こういう屋台的なメディアがダイナミックに運営されている事例も面白い。今後、起業の概念がIT分野に至っては変わってくるのではないか。

【追記2】適当に書いた記事だが、『Twitter』上で「そのとおり。現代のスタートアップは屋台的です」とシリコンバレーで働かれている日本人、日系人の方からほめていただけた。素朴にうれしい。

執筆: この記事はラカンさんのブログ『ゴムホース大學』( http://d.hatena.ne.jp/Lacan2205126/20120214/1329228176 )からご寄稿いただきました。
(ガジェット通信)

【私の論評】未来をつくる方法には二種類方法がある!!



上の記事起業や新しい事業を起こそうと考えている方には、非常に役にたつものだと思います(写真上は、アメリカの屋台)。ただし、題材がITに関することであったり、個人的な話題であったりして、原理原則にまではまとまっていないような気がします。このような良い話は、IT業界の方だけではなく、他の業界の方も知っておいて損になるようなことはないと思いますので、以下にドラッカーの言葉など借りながら、掲載してみます。
われわれは未来についてふたつのことしか知らない。ひとつは、未来は知りえない、もうひとつは、未来は今日存在するものとも、今日予測するものとも違うということである(『創造する経営者』)
 ありがたいことにドラッカーは、ここで終わりにしていません。続けてこうも言っています。
それでも未来を知る方法は、ふたつある。
一つは、自分で創ることである。成功してきた人、成功してきた企業は、すべて自らの未来を、みずから創ってきた。ドラッカー自身、マネジメントなるものが生まれることを予測する必要はなかった。自分で生み出した。
もう一つは、すでに起こったことの帰結を見ることである。そして行動に結びつけることである。

あらゆる出来事が、その発生と、インパクトの顕在化とのあいだにタイムラグを持つ。
これをドラッカーは、「すでに起こった未来」と名付けています。(下の写真は北見の屋台村)

出生率の動きを見れば、少子高齢化の到来は誰の目にも見えたはずだ。対策もとれたはずである。だが、高齢化社会がいかなる社会となり、いかなる政治や経済を持つことになるかを初めて論じたのはドラッカーだった。
こうして東西冷戦の終結、転換期の到来、テロの脅威も彼は予見していました。
未来を築くためにまず初めになすべきは、明日何をなすべきかを決めることでなく、明日を創るために今日何をなすべきかを決めることである。(『創造する経営者』)

またドラッカーはこうも語っています。(上の写真は、八雲町における地域振興パイロット事業試食会)
新しいものはすべて、小規模にテストする必要がある。パイロット(試行)する必要がある。
そのためには、その新しいものの実現に意欲のある者を探さなければならない。新しいものは常に障害にぶつかる。そのとき戦う者を必要とする。成功させると胸を張り、取り組む者を必要とする。しかも、それは敬意を払われる存在でなければならない。
こうしてパイロットに成功するならば、市場、デザイン、アフターサービスについて、誰も気がつかなかった問題が明らかにされ、誰も気がつかなかった機会が明らかにされる。こうして変化にともなうリスクは最小限にとどめられる。
(『明日を支配するもの』)
上の記事にでてくる馬鹿な従兄弟の友人は、資金的にも、情報的にもなんの積み上げもないところから、未来を知ることの二つの方法のうちの、未来をつくるということを志向しているということです。未来をつくるということは、すでに起こった未来をみつけるよりもかなり難しいことです。個人や中小企業などにはすぐには、なかなかできないことです。

だから、ラカンさんは、いろいろな事例を出しながら、「すでに起こった未来」を探すべきであることをこの従兄弟の友人に伝えているというわけです。

まさに、Greeの創業者田中さんも、ウエブ屋台をやって、「すでに起こった未来」を探し続けていたのだと思います。ただし、それが、意図的であったのか、それともあまり意識しないでやっていたのかは、わかりませんが、このウェブ屋台の運営こそが、上でドラッカーのいうところの、「すでに起こった未来」をみつける行為だったのです。

それから、未来をみずからつくるにしても、すぐに大々的にやってしまっては、どうなることかわかりません。だから、資金や情報をふんだんに持つ企業であってさえ、上でドラッカーが提唱しているように、パイロットをしているのです。(下の写真は、函館の屋台村)


上でラカンさんの言う「個人にできることは考え抜いた末に、不確実性の海にサイコロを投げ続けるだと私は思う。“投げ続けること”が重要なのだ」とは、まさに、ドラッカーのいうところのパイロットのことなのです。

詳細は、ドラッカーの書籍を実際に読んでいただきたいと思いますが、エッセンスはこういうことです。どんな事業だって、新規事業であるからには、最初から、大戦略があって、資源を大量につぎ込むわけではありません。それこそ、「すでに起こった未来」を探したり、未来をつくるために、パイロットをやったりしているわけです。これが、いわゆる原理原則だと思います。

このようなことをしているうちに、すでに起こった未来に確信がもてたり、パイロットで良い結果がでれば、大々的に実施することになり、そのときに始めて戦略が必要になるのです。

まさにラカンさんがおっしゃるうに、「はじめから戦略的意図で狙えるものではない」のです。

それから、冒頭にでてきた「マヌケ、バカ、アホ」は、後追いすることが新しいことと思っているよう思えてなりません。グリーも、Facebookも、もうすでに、田中さんや、ザッカーバーグさんが、歩んできた道です、これと同じことをしても全く意味がないし、成功することもかなわないでしょう。新しいことで勝負をしなければなりません。このようなことは、時代が変わっても繰り返されるということがよくわかりました。私が学生だったころ、生物学のある教授が私に「最近の大学院生は、外国の後追いばかりやっている。後追いすることが新しいことと勘違いしている。彼らは、サイエンスに掲載されているバイオテクノロジーに関する実験の追試ばかりやろうとする」と嘆いていました。

雑誌や、ウェブに掲載されている華々しい成果は、すでに過去のもであることをこの、MBAは知らないんですね。たとえば、化学の世界には、ケミカル・アブストラクトという有名なデータベースがあり、それには、最新の成果が掲載されています。これの用途は何かといえば、まだ世の中にない、新しい物質を開発するために、世の中にすでにあるものを検索するために利用します。無論、どのにようにして、作ったのかを参照もするし、場合によっては、追試もしますが、それが目的ではありません。あくまで、この世にない新しい物質をつくるためです。

「スタートアップ」「MBA」「ベンチャーキャピタル」「グリーの田中さん」「BOPビジネス」「ザッカーバーグ」なる、バズワードを覚えても仕方ないわけです。あくまで、体系的に「すでに起こった未来」を発見することが、近道なわけです。



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