2018年2月23日金曜日

「中国が土地を収奪している」 モルディブの野党指導者、対中批判強める 中国の手法は「債務のわな」―【私の論評】アジア諸国を「一帯一路」という妄想の犠牲にするな(゚д゚)!


記者会見する野党指導者のモハメド・ナシード前大統領=1月22日、スリランカのコロンボ
政治的混乱が続くインド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブで、野党指導者が「中国によって土地が収奪されている」と批判を強めている。不透明な土地取引が行われ、投資には高額の金利が課されているとの主張だ。中国に傾斜するヤミーン大統領を批判する思惑もあるが、強引な中国の手法に警戒感を示した格好だ。

野党指導者のナシード元大統領は、AP通信やインド英字紙タイムズ・オブ・インディアなどとのインタビューで、「中国のモルディブでのプロジェクトは土地の収奪だ」などと主張している。

政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 ナシード氏によると、中国はモルディブで既に17の島々の権利を取得しているが、どれも手続きは不透明だという。中国は取得した島に約4千万ドル(約43億円)を投資すると約束しているが、ナシード氏側は「高金利であり、いずれモルディブ側は返済に窮する」と主張している。

野党側が念頭に置くのが、スリランカ南部ハンバントタ港の事例だ。中国の出資で港湾設備が建設されたが、スリランカは巨額の金利返済に苦しみ、最終的に昨年末に99年間の長期リースの形で中国側に明け渡すことになった。援助を受けていたはずが奪い取られた格好だ。ナシード氏は中国の手法は「債務のわなだ」と主張。憲法を改正して、外国人への土地販売を容認したヤミーン氏についても批判している。

政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 最高裁の政治犯釈放命令に端を発したモルディブの混乱をめぐっては、ヤミーン氏は5日に発令した15日間の非常事態宣言をさらに30日間延長することを決定。ヤミーン氏側は、中国に特使を派遣して支持を訴えており、ここでも両国の蜜月の関係がうかがえる。一方、ナシード氏側はインドに援助を求めており、与野党の対立は深まる一方だ。

【私の論評】アジア諸国を「一帯一路」という妄想の犠牲にするな(゚д゚)!

モルディブとはどのようなところなのか、まずは下に地図を掲載します。


モルディブは 1,000 を超える珊瑚島と 26 の環礁からなるインド洋に浮かぶ熱帯の国で、ビーチやブルーラグーン、そして豊かに広がる珊瑚礁で知られています。首都マレでは、目抜き通りのマジディーマグ沿いに活気ある魚市場、レストラン、ショップなどが並んでいます。また、同市にある 17 世紀のフクルミスキー(金曜モスクとしても知られる)は、切り出した白珊瑚でできています。

以下の写真でもわかるように、典型的なリゾート地です。



このようなところで、中国の土地収奪がおこなれているという事自体がなかなか日本人にはピンとこないかもしれません。

しかし、ここの土地を収奪する中国にはそれなりの意図があります。それは、無論一帯一路と多いに関係しています。


「一帯一路」とは、(1)支那西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、(2)支那沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、交通インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進していく構想です。夢のような構想ですが、中国は「本気」であり、具体的な目標を高速鉄道の建設に置いています。

実際に、中国浙江省義烏と英ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行が、始まっています。支那が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、支メディアによると、両国間の直通貨物列車は初めて。支那は欧州との経済関係強化のため、中央アジアを通じた鉄道物流の充実を図っています。

中国は「一対一路」で「経済スーパーパワー外交」を展開するつもりのようです。中国の成長果実を周辺国にもシェアすることによって、周辺国との経済圏を構築し、善隣関係を強めることがねらいですが、同時に、過剰投資に悩む国内産業の新たな市場開拓、対外投資の拡大、約4兆ドルの外貨準備の運用多角化といった中国自身の経済的な思惑も込められています。

「一帯一路」を言い出したのは習近平・国家主席であり、彼の権力確立に伴って、この構想にも勢いをつけようとしています。私自身は、この構想は最初から失敗すると思っています。

なぜなら、世界航路や陸路などのインフラ整備はもうすでに出来上がっていて、われわれはそのインフラによってすでに貿易を行っています。そうして、このインフラは各国政府や民間機企業が、長年にわたり競争をしつつ切磋琢磨してつくりあげてきたものであり、さらに現在でも改良・改善が加えられています。

今更中国が後から割って入って、最初から計画してつくりだすにしても、現在までにつくりあげられてきたインフラにまさるものを中国が中心になってつくりあげることはほとんど不可能だからです。

中国としては、過去の国内のインフラ整備による経済成長が忘れることができず、その夢をもう一度海外で実現したいのでしょうが、国内において、共産党中央政府の鶴の一声で、何でも自由にできましたが、外国ではそういうわけにはいきません。

そのため、「一帯一路」は中国の妄想にすぎないと私は思っています。もし、これが成功するというのなら、共産主義も成功するはずです。しかし、一昔前は、計画経済により大成功するだろと思われた、共産主義は大失敗しました。

現在では中国ですら共産主義体制をとっていません。共産党という名称は残っていますが、その実体は国家資本主義です。

さて、モルジブはこの「一帯一路」の「21世紀海上シルクロード」の付近に位置しています。中国としては、ここを「一帯一路」の何らかの拠点にしたいと目論んでいるのでしょう。たとえば、このあたりに軍事基地を設置して、「一帯一路」構想が妨害されないように睨みをきかせる、あるいは物流の中継地点にするなどのことが考えられます。

中国は巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによって信頼を失っています。

習近平が提唱する「中国夢」は妄想に過ぎない
これは、軍事的には南シナ海や尖閣諸島付近で顕著にあらわれています。通商に関してもこれが如実にあらわれているのが「一帯一路」です。「内向き」国家である中国は自らの戦略が世界中の国々に通用するものであるという身勝手な妄想を現実のものにしようとしています。

「一帯一路」構想は、いずれ崩壊するブロジェクトですが、崩壊するまでの間に、中国が世界各地に投資をしたり、国営ゾンビ企業などの中国人労働者を大量に送り込んだりして、世界各地で軋轢を生むことになります。

以上のようなことから、安倍政権は、習近平の「一帯一路」に絶対に協力するようなことはあってはならないです。むしろ逆に、「一帯一路」に脅威を感じて抜け出そうとしているアジア諸国に、「駆け込み寺」としての受け皿を用意しておくことが日本の使命であり、国益に叶った戦略です。

モルジブのような平和な島々が土地を収奪され、中国の発展妄想の犠牲になることがあってはならないです。

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