この記事に対してツイッター上ではすでに多くの方からの批判的指摘が飛んでおり、またアゴラでも新田編集長が指摘されていますが、古谷氏の記事には明白な事実誤認があるので、きちんと指摘する必要があるのではないかと思います。
というのも、yahooトップに掲載されたとなれば、そのビュー数は数百万に達したものと思われます。明らかな事実誤認のある記事に乗っかったまま「『スリーパーセル』は三浦瑠麗の頭の中にだけある存在」などと三浦批判をしている人も散見され、これはさすがにきちんと指摘すべきだろうと思うわけです。
①「スリーパーセル=潜伏する工作員」は実在する―『警察白書』より
古谷氏は当該記事の中で公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望(平29年)」を引用し、ここに「スリーパーセルなる文字がない」ことを理由に、その存在を〈三浦氏の発言は、根拠の無い「工作員妄想」の一種と言わざるを得ないのでは無いか〉〈三浦氏にだけその存在が知られている「スリーパーセル」〉などとしていますが、『警察白書』(平成29年)にはこうあります。
〈北朝鮮は、我が国においても、潜伏する工作員等を通じて活発に各種情報収集活動を行っているとみられるほか(以下略)〉
この「潜伏する工作員」こそ「スリーパー(セル)」であり、普段は通常の人々と同じような仕事をしながら(=潜伏)、一方で総連などに情報提供をしている人がいることを指摘しています。スリーパー(セル)などと検索すれば「潜伏工作員」との訳が出てきますので、仮に初耳だとしても記事を書こうと思えば検索してみるくらいはするでしょう。
もちろん彼らが、一旦緩急あればテロリストに変貌するのかどうかまでは分かりません。しかもそれが、金正恩が斃れた後に……という話はあくまで三浦氏が考えた可能性の範疇ですので批判されても仕方はないと思います。が、古谷氏の記事の中の、少なくとも〈三浦氏にだけその存在が知られている「スリーパーセル」〉なる一文は明確な誤りと指摘できるでしょう。
②公安調査庁と警察の公安部は別物
もう一つ、古谷氏の文章で問題があるのは、公安調査庁と警察の公安部門の混同です。
当該記事で公安調査庁が発表した「内外情勢の回顧と展望」を引き、そこに「スリーパー(あるいは工作員)の文字がない」として三浦氏の言及を「妄想」としていますが、記事中で公安調査庁は「公安当局」と変化し、さらに「我が公安警察」となり、最後は「我が公安や警察」となっています。
古谷氏の認識は定かではありませんが、公安調査庁の文書を引き、『警察白書』を引かずにいることから、公安調査庁と警察の公安部門が別の組織であることを知らないか混同しているのではないかと思います。
公安調査庁は法務省の外局であり、警察の公安部門は都道府県警察本部の警備局に「公安課」として設置されているほか、警視庁は「公安部」を持っています。同じ「公安」でも別組織です。
当該記事の「公安当局」が何を指しているのか不明ですが、少なくとも公安部(公安課)を持つ警察の資料である『警察白書』には「潜入する工作員」の文字があるので、〈公安当局による報告書の中には「スリーパーセル」なる特殊工作員や活動家の記述は一切存在していない〉との記述は誤りでしょう。
以上の通り、二点の単純な事実誤認について、ご本人は早急に本文を訂正するべきと思います。
これを機会に、学びましょう
それにしても、第三者のチェックが入らないままアップされ拡散されてしまうのがネット記事の怖いところ。私も他人事ではありません。この記事だって、誤りがあればすぐに修正しなければなりません。
公安調査庁と警察の区別がついていないなどの事実誤認を含んだ記事がそのままウェブ上に掲示され、一部からは好評を得てさえいる一方、確かにざっくりとした指摘の中で具体的な地名を出したり、引用元の一つに不用意なネタ元をつかってしまったとはいえ、三浦氏の発言は批判されるだけでなく「大学に通報しろ」だとか、「同僚としてある行動をとった」などと仄めかすような文言まで飛び交っているというのはどうもおかしな感じがします。この記事のように、とすると幾分手前味噌感が臭いますが、ただただ普通に、論拠を示して淡々と「ここがおかしいと思う」と指摘するだけではいけないのでしょうか?
三浦氏が大阪という地名を出したことについても、私は差別とは思いません。皇居や国会、官庁街がある東京に比べて警戒度は低いながら地下鉄や商業施設、イベント施設などがある大都市を狙うのはテロリストからすれば十分あり得る発想ですし、例えば東京五輪の時であれば「開催地以外の大都市」が狙われるのも、危機管理の専門家が指摘するところです。テロの発動条件は議論されてしかるべきであっても、テロの危険性がある都市の一つの例として大阪を挙げることに不自然はありません。
地名を挙げたのがダメだ、差別だという文脈で言うならば、三浦氏が挙げてもいない「あいりん地区」「鶴橋」「生野区」などさらに具体的な地名を挙げて「今は大丈夫だけど過去はやばかった」的な記述をしてしまった古谷氏の方が非難されるべきなのではないかと思わなくもありません。それに工作員は必ずしも在日外国人や外国出身者に限らないのです。
とはいえ、私を含め、工作員や公安の在り方、あるいはテロの可能性についてほとんどの人はそうそう普段から考えてもいないと思いますので、これを機にみんな勉強したらいいのではないでしょうか! いや、本当にいい機会だと思います。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、江崎道朗氏は北朝鮮の工作員の破壊活動に関して以下のように言及しています。
スリーパー・セルの問題をデマや差別問題としてしまえば、それこそ北朝鮮のかく乱作戦の術中にハマることになりかねないです。
スリーパーセルの存在の可能性に関して、蓋をしてしまい全く論議をしなければ、その脅威が消えるというわけではありません。むしろ、スリーパーセルの存在もあり得るものとして、それを確かめたり、あるいはその危機が現実のものになった場合を想定してどのように行動するのか、予め定めておけけば、混乱を防ぐことができるはずです。
もし、スーパーセルなるものが存在しなけば、それはそれで良いことですが、もしも存在した場合どのようなことになるか、何も考えていなけば、とんでもないことになるだけです。
平和憲法があれば、これを防げるなどということは絶対にないです。安保では、あらゆる可能性を含めて検討すべきであり、タブーなどをもうけてある問題からは、目をそらすということは許されません。
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古谷氏は当該記事の中で公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望(平29年)」を引用し、ここに「スリーパーセルなる文字がない」ことを理由に、その存在を〈三浦氏の発言は、根拠の無い「工作員妄想」の一種と言わざるを得ないのでは無いか〉〈三浦氏にだけその存在が知られている「スリーパーセル」〉などとしていますが、『警察白書』(平成29年)にはこうあります。
〈北朝鮮は、我が国においても、潜伏する工作員等を通じて活発に各種情報収集活動を行っているとみられるほか(以下略)〉
この「潜伏する工作員」こそ「スリーパー(セル)」であり、普段は通常の人々と同じような仕事をしながら(=潜伏)、一方で総連などに情報提供をしている人がいることを指摘しています。スリーパー(セル)などと検索すれば「潜伏工作員」との訳が出てきますので、仮に初耳だとしても記事を書こうと思えば検索してみるくらいはするでしょう。
もちろん彼らが、一旦緩急あればテロリストに変貌するのかどうかまでは分かりません。しかもそれが、金正恩が斃れた後に……という話はあくまで三浦氏が考えた可能性の範疇ですので批判されても仕方はないと思います。が、古谷氏の記事の中の、少なくとも〈三浦氏にだけその存在が知られている「スリーパーセル」〉なる一文は明確な誤りと指摘できるでしょう。
②公安調査庁と警察の公安部は別物
もう一つ、古谷氏の文章で問題があるのは、公安調査庁と警察の公安部門の混同です。
当該記事で公安調査庁が発表した「内外情勢の回顧と展望」を引き、そこに「スリーパー(あるいは工作員)の文字がない」として三浦氏の言及を「妄想」としていますが、記事中で公安調査庁は「公安当局」と変化し、さらに「我が公安警察」となり、最後は「我が公安や警察」となっています。
古谷氏の認識は定かではありませんが、公安調査庁の文書を引き、『警察白書』を引かずにいることから、公安調査庁と警察の公安部門が別の組織であることを知らないか混同しているのではないかと思います。
公安調査庁は法務省の外局であり、警察の公安部門は都道府県警察本部の警備局に「公安課」として設置されているほか、警視庁は「公安部」を持っています。同じ「公安」でも別組織です。
当該記事の「公安当局」が何を指しているのか不明ですが、少なくとも公安部(公安課)を持つ警察の資料である『警察白書』には「潜入する工作員」の文字があるので、〈公安当局による報告書の中には「スリーパーセル」なる特殊工作員や活動家の記述は一切存在していない〉との記述は誤りでしょう。
以上の通り、二点の単純な事実誤認について、ご本人は早急に本文を訂正するべきと思います。
これを機会に、学びましょう
それにしても、第三者のチェックが入らないままアップされ拡散されてしまうのがネット記事の怖いところ。私も他人事ではありません。この記事だって、誤りがあればすぐに修正しなければなりません。
公安調査庁と警察の区別がついていないなどの事実誤認を含んだ記事がそのままウェブ上に掲示され、一部からは好評を得てさえいる一方、確かにざっくりとした指摘の中で具体的な地名を出したり、引用元の一つに不用意なネタ元をつかってしまったとはいえ、三浦氏の発言は批判されるだけでなく「大学に通報しろ」だとか、「同僚としてある行動をとった」などと仄めかすような文言まで飛び交っているというのはどうもおかしな感じがします。この記事のように、とすると幾分手前味噌感が臭いますが、ただただ普通に、論拠を示して淡々と「ここがおかしいと思う」と指摘するだけではいけないのでしょうか?
三浦氏が大阪という地名を出したことについても、私は差別とは思いません。皇居や国会、官庁街がある東京に比べて警戒度は低いながら地下鉄や商業施設、イベント施設などがある大都市を狙うのはテロリストからすれば十分あり得る発想ですし、例えば東京五輪の時であれば「開催地以外の大都市」が狙われるのも、危機管理の専門家が指摘するところです。テロの発動条件は議論されてしかるべきであっても、テロの危険性がある都市の一つの例として大阪を挙げることに不自然はありません。
地名を挙げたのがダメだ、差別だという文脈で言うならば、三浦氏が挙げてもいない「あいりん地区」「鶴橋」「生野区」などさらに具体的な地名を挙げて「今は大丈夫だけど過去はやばかった」的な記述をしてしまった古谷氏の方が非難されるべきなのではないかと思わなくもありません。それに工作員は必ずしも在日外国人や外国出身者に限らないのです。
とはいえ、私を含め、工作員や公安の在り方、あるいはテロの可能性についてほとんどの人はそうそう普段から考えてもいないと思いますので、これを機にみんな勉強したらいいのではないでしょうか! いや、本当にいい機会だと思います。
【私の論評】日本の安保でもあらゆる可能性を検討すべき(゚д゚)!
スリーパーセルかどうかは別にして、日本は元々スパイ天国で、各国のスパイが日本国内に多数存在しているのは、間違いないものと思います。そうして、そのスパイはときどきその存在が発覚し、テレビなどで報道して私達も目にすることになるのですが、それ以外は滅多に表には出てきません。
そもそも、スパイがすぐにそれとわかるようではスパイとはいえません。隠密裏に行動すして誰にも知られないよう行動するからスパイなのです。
しかし、それが時々表に出て来ることもあります。その典型的なものが以下の新聞記事です。
北朝鮮が日本国内から韓国内の工作員を操っていた!「225局」活動の一端とは
産経新聞 2月11日(木)17時0分配信 2016.2.11 17:30
ニュース番組やワイドショーが元プロ野球選手、清原和博容疑者(48)の報道一色になった今月2日、警視庁公安部がある重大事件を摘発していた。北朝鮮が日本国内で展開していた工作活動の一端があぶり出されたのだ。
工作を主導したのは北の対外情報機関「225局」。容疑者は日本で教育者を装いつつ、韓国内で活動する工作員に指示を伝える役割を果たしていたとされる。
日本国内から韓国内の工作員を動かしていたとみられるこの事件。「スパイ天国」とも揶揄(やゆ)される日本で、外国の諜報機関が跋扈(ばっこ)する実態が浮かび上がった。
これらのスパイの中に、スリーパセルも存在するかもしれないと考えるのは、突飛な考えではないし、むしろ妥当な考え方だと思います。
そうしてアゴラの新田編集長が指摘していた、10年前に毎日新聞で阪神大震災のときに、ある被災地の瓦礫から工作員のものとみられる迫撃砲などの武器が発見されたという報道がなされていますが、その記事が下の写真です。
阪神淡路大震災の時といえば、瓦礫にはさまっている人達を助ける為に海自の護衛艦に陸自の救出部隊を載せ向かったのですが、結局神戸港に接岸出来なかったということがありました。一部の神戸市民から『戦争の船は来るな!』と抗議されたためであるとされています。
今なら考えられないですが、そのような風潮がこの時代にあったのは確かで、だからこそ阪神淡路大震災のときには、このニュースが報道されなかったのでしょう。
さて、北朝鮮の工作員による工作活動の可能性については昨年このブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮有事が日本に突きつける8つのリスク【評論家・江崎道朗】―【私の論評】 森友学園問題で時間を浪費するな!いまそこにある危機に備えよ(゚д゚)!
江崎道朗氏 |
第3に、北朝鮮はすでに日本国内に多数のテロリストを送り込んでいて、いざとなれば発電所や交通機関などを攻撃する可能性が高い。
天然痘ウイルスをまき散らすといった生物・化学兵器を使用する恐れもある。天然痘ウイルスの感染力は非常に強いことで知られていて、感染者からの飛沫や体液が口、鼻、咽頭粘膜に入ることで感染する。北朝鮮は、天然痘感染者を山手線に乗せて一気に関東全体に広める生物兵器テロを計画しているという話もあり、こうした危機を前提に、ワクチンの準備も含め地方自治体、医療機関が予め対処方針を立てておく必要があるだろう。このような危機の可能性は、全くあり得ないこととして、否定することはできないです。三浦氏は12日、自身のブログで「正直、このレベルの発言が難しいとなれば、この国でまともな安保議論をすることは不可能」と反論しています。
スリーパー・セルの問題をデマや差別問題としてしまえば、それこそ北朝鮮のかく乱作戦の術中にハマることになりかねないです。
スリーパーセルの存在の可能性に関して、蓋をしてしまい全く論議をしなければ、その脅威が消えるというわけではありません。むしろ、スリーパーセルの存在もあり得るものとして、それを確かめたり、あるいはその危機が現実のものになった場合を想定してどのように行動するのか、予め定めておけけば、混乱を防ぐことができるはずです。
もし、スーパーセルなるものが存在しなけば、それはそれで良いことですが、もしも存在した場合どのようなことになるか、何も考えていなけば、とんでもないことになるだけです。
平和憲法があれば、これを防げるなどということは絶対にないです。安保では、あらゆる可能性を含めて検討すべきであり、タブーなどをもうけてある問題からは、目をそらすということは許されません。
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