2018年2月9日金曜日

なぜ「台湾」での東京五輪出場にこだわるのか―【私の論評】東京五輪には過去と同じく台湾は台湾として出場すべき(゚д゚)!

なぜ「台湾」での東京五輪出場にこだわるのか

古くて新しい呼称問題に日台有志が動き出す

2017年8月、2020年東京五輪での呼称を「中華台北」ではなく
「台湾」とするよう訴える人たちが台北で記者会見を開いた
2月9日に韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪が開幕する。その次の五輪、すなわち2020年の東京五輪に焦点を合わせた、ある運動が日本と台湾で繰り広げられている。東京五輪で、台湾の選手を「台湾」「TAIWAN」の名前で参加させよ、との運動だ。

五輪やアジア大会などスポーツの国際大会で、一見、どこの国かと思えるような呼称で参加している国がある。それが台湾だ。彼らの参加名称は「チャイニーズタイペイ」(中華台北)。台湾でもなく、中国でもない。これには参加する台湾人自身も違和感を抱いているのは間違いない。

「台湾人は台湾人」という意識が運動に

台湾という名称を使う運動、「台湾正名運動」を台湾でリードする弁護士の何朝棟氏は、「台湾初の政権交代となった2000年以降、それまでの中華民国から『台湾人は台湾人』という意識が広がっている。国際スポーツにも台湾の名で参加しようという声も同時に高まっている」と説明する。

2017年8月に台湾・台北で行われたユニバーシアード夏季大会の開会式。
台湾選手団は中華台北(チャイニーズタイペイ)の旗とともに入場した
台湾の呼称については、古くからの問題だ。「チャイニーズタイペイ」という呼称は、1970年から使用されている。日本では現在、公式の場では「チャイニーズタイペイ」を使うが、それ以外では「台湾」を使うことのほうが多い。2013年に東京で開催されたワールドベースボールクラシック大会で、日台双方が白熱した試合を繰り広げたことは記憶に新しい。このときもメディアやファンなどは「台湾」と呼んだが、公式には「チャイニーズタイペイ」を使っていた。

実は、台湾は1964年の東京五輪には「台湾 中華民国(ROC, Republic of China)」名義で参加した事実がある。国共内戦の結果1949年に中国共産党により中華人民共和国が成立したものの、台湾に逃れた中国国民党の中華民国のほうが国際的な地位は上だった。1950年代に大陸・台湾双方に五輪委員会が設置されたが、1956年メルボルン大会、1964年東京大会には、台湾側が国旗としている「青天白日満地紅旗」を掲げて参加することに抗議して大陸側は参加しなかった。

台湾の国旗「青天白日満地紅旗」
1971年の国連総会で「中国の唯一の合法的代表は中華人民共和国」との決議が採択されたことで、中華民国=台湾は国連を脱退。以降、急速に台湾の国際的地位が低下する。さらに米国、日本と中国との国交が樹立されたが、これは中華民国との国交断絶をも意味した。スポーツ競技でも、この2つの中国をめぐる問題はくすぶり続けた。1976年のモントリオール大会では、中華民国という呼称を使う限り台湾からの選手団は受け入れられないと開催国のカナダから拒否された。

「中華台北」を受け入れがたい台湾の国民意識

1979年の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、台湾の五輪委員会は「Chinese Taipei Olympic Committee」という名称で五輪参加を許されるようになった。とはいえ、「Chinese Taipei」を「中華台北」とするか「中国台北」とするかという問題で中国・台湾双方がもめ続けた。結局1989年に中台が「中華台北」とすることで合意し、中台間のスポーツ交流も徐々に広がっていくことになった。

東京五輪に「台湾」として出場することを目指す人々の日本での活動。
「YES! TAIWAN」「NO! CHINESE TAIPEI」と訴えている
とはいえ、「そのような経緯があっても、今の台湾人には中華台北という呼称は受け入れがたいものがある」と何朝棟氏は話す。1987年に台湾で戒厳令が解除され、民主化が始まって以降、「台湾意識」が国民の間に浸透した。大陸から来た中国人ではなく、台湾で生まれ育った「台湾人」が国民の多くを占めるようになり、「台湾アイデンティティ」も広く浸透している。

一方で、政治的にも経済的にも力をつけた中国は「1つの中国」を掲げ、台湾の存在を認めないように圧力をかけ続ける。香港も1997年の返還以降、すっかり中国の影響を受け、「民主化」運動も鎮圧されるようになった。民主国家となった台湾は中国でもなく、中華民国でもない。台湾は台湾なのに世界では少しも認められないという不満も、この運動が支持される背景にある。

2000年に民主進歩党(民進党)の陳水扁政権となって以降、「台湾」が「台湾」として存在できる空間を広げる運動はいくつか繰り広げられた。たとえば、「台湾」名義で国連に単独加盟する運動が代表例だ。当時の陳総統は「チャイニーズタイペイとは、奇妙な名称だ」と述べ、五輪や国際機関への参加に関し「不公平な待遇」と不満を述べたこともある。それが台湾正名運動へとつながっているのだ。

だが、陳水扁政権を引き継いだ中国国民党の馬英九政権は、「チャイニーズタイペイは国際社会で台湾が受け入れられる現実的で適切な名称」とし、台湾への改称に力を入れることはなかった。現在の蔡英文政権(民進党)は、台湾アイデンティティに理解を示しながらも、台湾への改称に表立った動きを見せてはいない。

親密度の高まりが台湾の呼称を考える契機に
何朝棟氏などこの運動に参加している人たちは、日台双方の街頭で署名活動などを行っている。日本は2011年の東日本大震災で台湾から多額の義援金を送られたことを契機に、台湾への関心と親密度が一気に高まった。現在、日台間を多くの観光客が行き来し、日本人は台湾に、台湾人は日本に対する好感度がますます高まっている。その中で「チャイニーズタイペイ」という呼称に違和感を抱く日本人も少なくはないと思われる。

東京五輪に「台湾」として出場することはかなうのか。マイクを
握るのは「台湾正名運動」をリードする何朝棟氏(記者撮影)
高く厚い中国の壁はある。「チャイニーズタイペイ」という呼称が、台湾の有能なアスリートが活躍できる場を提供しているという現実的側面も無視できない。だが、中台の違いを理解する日本人が、「チャイニーズタイペイを掲げている選手は台湾人なのだ」と考え、より多くの声を上げることも大切なのではないだろうか。次の五輪のホスト国を務める日本にとって、真摯に向き合うことが求められている。

【私の論評】東京五輪には過去と同じく台湾は台湾として出場すべき(゚д゚)!

オリンピックは、昔から政治利用されてきました。ベルリンオリンピックはヒトラーによるナチスドイツの国威発揚に利用されました。そうして今まさに、北朝鮮の金正恩は平昌五輪を政治利用しようとして躍起になっています。

本日は、平昌冬季五輪が開幕しました。韓国大統領府は8日、文在寅大統領(65)が10日に北朝鮮の高官代表団と会談すると発表しました。北朝鮮代表団には金正恩朝鮮労働党委員長の実妹・金与正党第1副部長が含まれるようです。米・韓両国の情報機関が、秘密のベールに覆われた“女帝”の正体を明らかにすべく、現地で動くことになりそうです。

金与正党第1副部長
開会式前日の8日、北朝鮮が平昌五輪をメディアジャックしました。スケート会場などがある江陵で玄松月団長率いる三池淵(サムジヨン)管弦楽団がコンサートを開けば、同地の選手村では美女応援団が急きょ北朝鮮の入村セレモニーに加わり、南北融和ムードを演出しました。

北朝鮮の美女応援団
南北軍事境界線を隔てた平壌では、昨日北朝鮮の軍創建70周年記念の軍事パレードが行われ、金正恩氏が演説。新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」が披露されるなど、その動向は海外メディアの注目を集めました。

このパレードでは新型大陸間弾道ミサイルの火星14、15号は公開されましたが、生中継はしませんでした。外国メディアを規制するなど、昨年に比べれば粛々のパレードとなったのは、米国の顔色を見たからだと考えられます。国内向けの引き締めが狙いだったとみられます。

というより、当初はまさか参加できるとは思わなかった平昌五輪に北が参加できるということで、金正恩は、この僥倖を最大限に活用するため、今回の軍事パレードのトーンを落としたとみられます。

それもそのはずで、北朝鮮は平昌五輪を政治利用し、南北融和の演出に躍起となっています。この日発表された予定では、金永南最高人民会議常任委員長率いる北朝鮮高官代表団は、9日午後に平壌からソウルに専用機で来韓。同日夜の五輪開会式出席のほか、翌10日に文大統領とランチ会談を行い、11日に北朝鮮に戻る日程となっています。

韓国入りした金永南最高人民会議常任委員長
サプライズとなったのは、7日に突如韓国側に伝えられた金正恩氏の妹・与正氏の参加です。金正日総書記と在日朝鮮人だった高英姫夫人の間に生まれ、幼少時に正恩氏とともにスイス留学していたとみられるますが、詳細な経歴は不明です。正日氏が亡くなった後から姿を見せ始め、正恩氏のサポート役に徹していましたが、昨年に党政治局員候補に抜てきされて以降、急速に力を強めています。

与正氏は、金正恩からの信頼が厚く、いまや事実上の右腕ともいえます。結婚していて、今年出産するのではないかとの情報があります。正恩氏の身に何かあれば、与正氏が後継者になるのではといわれているほどで、名目上のナンバー2といわれる金永南氏よりも格上になるといいます。

与正氏については、人権侵害の恐れがあるとして米政府が独自の制裁対象に指定するなど、本来なら韓国に入国できないはずですが、韓国政府はもろ手を挙げて歓迎しています。しかし、米や韓国の情報機関が、正恩氏と血縁関係にあり、将来の女帝になるかもしれない人物をタダで帰すワケにはいかないです。

与正氏は1987年ごろ生まれとされるますが、年齢も定かでないように、とにかく情報がないです。そもそも本当に正恩氏の実妹かどうかも確たる証拠がないです。今回の訪韓で、指紋や毛髪、DNAなど取れる情報を根こそぎ集めるのは間違いないでしょう。

正恩氏は外出した際、排せつ物から健康状態などの情報がとられるのを警戒し、自前のトイレを用意するほどだといいますが、与正氏もトップシークレットとして、特別待遇となるのでしょうか。

一方で、不測の事態も懸念されます。韓国国内ではアイスホッケー女子の南北合同チームの結成や三池淵管弦楽団のコンサートなど、文政権の弱腰・親北姿勢に反対する勢力が連日、デモ活動を繰り広げています。8日も江陵の公演会場近くで保守団体が抗議集会を開き、警官隊と小競り合いとなる事態も起きました。

もし、与正氏の身に危険が及び、暗殺されるようなことがあれば、南北融和どころか、南北開戦に陥りかねない危機を迎えます。韓国、北朝鮮両政府は与正氏ら北朝鮮代表団を最重要警護対象として、2泊3日の滞在中は鉄壁のガードを敷くのは必至。情報機関やメディアはそのスキを縫って、一挙手一投足を追うことになりそうです。

少し長くなってしまいましたが、このように北の平昌五輪の政治利用は凄まじいものがあります。これだけ、躍起になるのはやはり平昌五輪の政治利用はそれだけ効果が見込めるからです。

ただし、北の工作に対して、日米は安倍総理ペンス副大統領が文在寅と会談して、厳しく北の工作に安易にのらないように因果を含めたようです。

韓国で会談する安倍晋三首相と文在寅大統領
さて、北の平昌五輪政治利用について、長々と掲載しましたが、五輪ではこのような政治利用はつきものということがおわかりになったものと思います。

台湾は、平昌五輪に4人の選手を送り込んでいます。台湾からは、リュージュ、スピードスケートの2競技で合わせて4人の選手が出場しています。代表団はコーチなど関係者を含めて合計13人です。

参加するのは、リュージュ男子の連徳安・選手、スピードスケート男子の宋青陽・選手、戴瑋麟・選手、女子の黄郁婷・選手。

連徳安・選手
連・選手のオリンピック出場は2度目です。連・選手は今回、代表団の旗手も務めるとのことで、開会式では中華オリンピック委員会の旗 (チャイニーズタイペイの旗)を大きく振って、みなに台湾の代表団の元気をアピールすると話していました。
中華オリンピック委員会の旗 (チャイニーズタイペイの旗)
連徳安選手は、6日深夜に震度7の大地震が発生した台湾東部・宜蘭の出身です。多くの住民が死傷した南隣の街、花蓮には母が住んでいます。大舞台での試合を前に「自分の姿が、少しでも被災者が困難を乗り越える力になればうれしい」と古里への思いを語りました。

台湾選手団、頑張って良い成績を収めていただきたいものです。さて、平昌の次は2020年の東京オリンピックです。

さて、台湾の蔡英文総統やそれを支援する若者等は、日本でいえばかなりのリベラルで、少数民族の権利擁護、LGBT権利擁護、脱原発、捕鯨反対ですから、日本や米国の保守層には、馴染めない部分もあるかもしれません。

しかし、台湾は大陸中国から比較すれば、民主化、政治と経済の分離(大陸中国は、政治と経済が不可分)、法治国家化がかなり進んでおり、その点では、日本と台湾はかなり理解しあえる間柄であると思います。

大陸中国に関しては、日本や台湾などとは全く異なる異形の世界と言っても良いような国であり、彼らと台湾、彼らと日本などが価値を共有したり、理解しあったり、コミュニケーションをはかることすら困難です。

しかし、昨日もこのブログで述べたように、日本と台湾は、地震があったときなど互いに助け合うことも重要ですが、それとともに対中国ということでは、ソフト的(経済・民主主義・政治と経済の分離・法治国家等の体制)にもハード的(軍事・安全保障等)にも運命共同体ということがいえると思います。

五輪の政治利用というと、顔をしかめてしまう人いるかもしれませんが、大陸中国は今から東京オリンピックを最大限に政治利用して、台湾は大陸中国に属することを最大限にアピールするものと考えられます。

その腰を折って、東京五輪に台湾を台湾として参加してもらうようにして、開会式の旗も1964年の東京オリンピックのときのように、「青天白日満地紅旗」を用いてもらうことには大きな政治的な意義があると思います。

これに対して大陸中国が不満を抱き、東京五輪に参加しないということにでもなれば、ますます国際的に台湾が独立国であることをアピールできます。

是非とも、そのような方向にもっていくべきと私は思います。

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