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2020年7月3日金曜日

専門家会議廃止めぐる「誤解」…助言の役割無視する報道も 政権の重い責任は変わらず ―【私の論評】意思決定等の基本原則を知らずにモノを考えるのは、時間の無駄、人生の無駄(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

西村経済再生相

西村康稔経済再生相が、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」)を廃止し、新たな組織に衣替えすると発表した。その背景や力学は何か、今後のコロナ対策に影響が出る可能性はどうか。

 政府の新型インフルエンザ等対策会議には、特別措置法に基づく新型コロナウイルス感染症対策本部が1月30日に設置された。本部長は総理大臣、副本部長は官房長官、厚生労働大臣、措置法事務担当大臣(西村大臣)、本部員はその他の国務大臣だ。ここがコロナ対策の意思決定機関だ。

 専門家会議は、新型コロナウイルス感染症対策本部の下、医学的な見地から対策本部に助言するために、2月14日に設置された。構成員については、座長は脇田隆字・国立感染症研究所所長、副座長は尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長、その他構成員は医学関係者が10人ほどいる。

 構成員は一応決まっているが、座長は、必要に応じその他関係者の出席を求めることができるので、メンバー限定というわけではない。この専門家会議の役割はあくまで本部に助言することであり、意思決定機関ではない。

 一部のマスコミ報道は、対策本部が意思決定機関、専門家会議は助言機関という役割分担を明確に書かずに、専門家会議があたかも意思決定機関であるかのように書いてきた。「専門家会議は議事録で発言者が特定されていない」「対策本部は専門家会議の助言内容そのままでなく、一部書き換えている」などと批判しているのもその証拠だ。

 助言機関では、発言者の特定はそれほど意味はない。むしろ特定の発言者が個別業種の休業を助言した場合、関係業界から突き上げをくらうなどの不利益を被ることもある。マスコミは取材したいからといって、発言者が特定されていないことを一方的に批判するのは筋違いだ。

コロナ対策専門家会議
また、専門家会議は助言機関に過ぎないので、対策本部の決定事項と一言一句同じになるはずがない。極端に言えば、意思決定権者は助言を無視しても構わない。ただし、意思決定にはそれなりの責任が伴うだけだ。

 一部マスコミが専門家会議をあたかも意思決定機関のように報道し、その誤解の上で、コロナ対策を一部野党が批判するという「共同作業」のやり口も見え透いている。

 そもそも専門家会議は、メンバー限定ではないので、廃止し衣替えとせずに、メンバーを適宜入れ替えて運営する手もあったはずだ。

 西村経済再生相は専門家会議を「廃止」と言わずに、もう少し狡猾(こうかつ)に対応するべきだった。専門家会議の位置づけは、対策本部の一存でどうにでもできるので、廃止という手順が間違っているとは思わないが、一部マスコミの術中にはまった感がある。

 そもそも助言者を選ぶのは、意思決定権者なので、衣替えがあっても今後のコロナ対策に影響があるとも思えない。安倍晋三政権のコロナ対策の責任が大きいことにも変わりはない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】意思決定等の基本原則を知らずにモノを考えるのは、時間の無駄、人生の無駄(゚д゚)!

ドラッカー氏の意思決定に関する原則に関しては、このブログにも何度か掲載してきました。この意思決定の原則を知らない人は、専門家会議の意味や意義などについて何も理解していないのかもしれません。

経営学の大家ドラッカーは意思決定について以下のように語っています。
成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そのようにして、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ。(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)
ドラッカーは、意思決定の過程では意見の不一致が必要だといいます。理由は三つあります。
ドラッカーの意思決定に関する原理・原則のマインド・マップです
クリックすると拡大してします

第一に、組織の囚人になることを防ぐためです。組織では、あらゆる者が、あらゆる決定から何かを得ようとします。特別のものを欲し、善意の下に、都合のよい決定を得ようとするのです。

そのようなことでは、小さな利害だけで決定が行なわれることになります。問題の理解抜きでのそのような決定の仕方は、きわめて危険です。

政権の幹部が政局などだけを中心に、コロナ対策を考えていては大変なことになります。だから、そのようなことにならないために、経験内で多くの人がコロナ対策に関与するのです。それだけでも、偏ることがあるので、専門家会議を設けて、これも異なる見方をする専門家複数で協議をしてもらい、政局などの利害だけで決定が行われることを防ぐのです。

感染症の専門家が同時に意思決定を行うのも間違いです。これは、会社などの組織を例にとってみればわかります。普通の会社では、財務部長や経理部長が、営業部長が意思決定を行うということはありません。会社の最高意思決定機関は、取締役会です。

専門家会議がコロナ対策の意思決定を行うということは、会社で言えば、財務部長や経理部長、営業部長が会社の意思決定を行うのに等しいです。部長クラスは、決められた会社の方針に従い、それぞれ専門の立場から、専門分野に関係する部分を専門家の分野から方法を選ぶことくらいです。会社の方針は定められません。

しかし、これと同じようなことをして大失敗したのが、財務省であり日銀です。財務も金融政策も本来は政府がその方針を定め、その方針に従い、財務省や日銀が専門家的な立場から、方法を選ぶというのが、正しいあり方です。

財務省は国税庁という実動部隊等と、企画をする部隊が一体となっている、不思議な組織です。会社で言えば営業部と、財務部が一緒になったような異様な組織です。企業ではありえない組織です。このまま、この組織を放置しておけば、さらに腐敗するのは目に見えています。

本来の正しいあり方から逸脱したため、日本経済の実情とは関係なし、財務省は緊縮財政を、日銀は金融引き締めを繰り返し、平成年間のほとんどの期間日本はデフレでした。

コロナ対策も、専門家会議が意思決定するか実質それに近いことをしていたら、とんでもないことになったかもしれません。

第二に、選択肢、つまり代案を得るためです。決定には、常に間違う危険が伴います。

最初から間違っていることもあれば、状況の変化によって間違うこともあります。決定のプロセスにおいて他の選択肢を考えてあれば、次に頼るべきものとして、十分に考えたもの、検討ずみのもの、理解ずみのものを持つことができます。

逆に、全員一致で決めていたのでは、その決められたものしか案がないことになります。時の政権が決めたとすれば、そうなりがちです。それ以外にも代替案を得るためにも、専門家会議が必要なのです。専門家会議があるからこそ、政府は常に複数代替案を持ちながら、ことにあたることができたのです。

逆に、専門家会議と、政府の意見が何から何まで、同じであれば、専門家会議を設置した意味はありません。

第三に、想像力を刺激するためです。理論づけられ、検討し尽くされ、かつ裏づけられている反対意見こそ、想像力にとって最も効果的な刺激剤となります。すばらしい案も生まれます。

明らかに間違った結論に達している者は、自分とは違う現実を見て、違う問題に気づいているに違いないと考えなければなりません。

もし、彼の意見が知的かつ合理的であるとするならば、彼はどのような現実を見ているのかを考えなければならないです。意見の不一致こそが宝の山です。意見の不一致が問題への理解をもたらしてくれます。

いかなる問題であれ、意見の不一致が皆無などということは、奇跡です。いわんや、四六時中奇跡を起こしているなどありえないと心得るべきです。それでは、社長が一人いればよいことになります。政府なら、総理大臣が一人いればよいことになります。

後で不祥事となった行動の多くが、ろくに議論もされずに決められていることは偶然ではないのです。
成果をあげる者は、何よりも問題の理解に関心をもつ。(『経営者の条件)
問題の理解をするためにも、専門家会議は必要だったのです。そうして、専門家会議があるからこそ、政府も刺激を受け、様々な案を考えることができたのです。

そうして、結果が全てです。米国は、本日は1日で50万人を超える感染者を出しています。これには、米国の特殊事情もあるでしょうが、どう考えてみても、米国の対策は失敗したとしか言えません。 日本は、成功したと言って良いです。

そうして、専門家会議は、責任負う組織ではありません。日本のコロナ感染対策が成功しようが、失敗しようが、専門家会議自体は責任を持つものではありません。責任はあくまで政府にあります。

新型コロナウイルス対策を話し合う政府の専門家会議について、西村経済再生担当大臣は記者会見で、廃止したうえで、メンバーを拡充するなどして、政府内に「新型コロナウイルス感染症対策分科会」として改めて設置する考えを明らかにしています。

この分科会も、従来の専門家会議と同じ役割を果たすのです。第二波、第三波の到来を恐る人もいるようですが、第一波の到来により、かなりの新たな知見が得られています。油断してはいけないですが、それにしても、私自身は第二波、三波が、第一波をおおきく上回ることはないと思います。

このような意思決定の本質を知っていれば、上の記事で高橋洋一が語っているように、「安倍晋三政権のコロナ対策の責任が大きいことにも変わりはない」ことなど理解できそうですが、マスコミなどは違うようです。

安倍総理は、今ままでもこれからも、日本政府のコロナ対策の最高責任者
とにかく、物を知らなさ過ぎです。意思決定でも、コミュニケーションにもマネジメントには、原則があります、それもあらゆる組織に当てはまる基本原則があります。日本の政治家や、ジャーナリストには、この原則を知らずに、その時々の目の前のことを浅く、軽く考えて、直感的に判断をする人があまり多いようです。これは、はっきり言います。時間と、人生の無駄です。

マネジメントや、経済、軍事に関しても、先達は様々なこと考え、その上で原理・原則としてまとめています。そうして、社会に起きているほとんどの現象が、その原理・原則に当てはまるものです。当てはまらないものは、ほんのわずかです。それも知らずに、何でも最初から自分で考え、原理・原則から離れた、自分だけの考えで、人に意見したりするのは、本人にとっても、意見された人にとっても、時間と人生の無駄です。

原理原則に当てはまらないことを見出した人で、自分の頭で考えて、それを解決できれば、それは、おそらくノーベル賞を受賞できるかもしれません。そこまでいかなくても、本格的な研究の端緒となり、新たな学問や、科学の誕生になるかもしれません。ある事象や、出来事について、自分の頭だけで考えるということはそういうことです。

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2019年9月15日日曜日

「国にカネがない」報道は真っ赤なウソ~「国債費」を見ればわかる―【私の論評】財務官僚は、必要以上に国債発行額を膨らませて、財政危機を煽っている(゚д゚)!


きな臭い理由を解説しよう

同じ財布でカネを借りて返す

8月末といえば、霞が関の各省庁にとって次年度の概算要求を行う時期だ。全体では6年連続の100兆円超えとなる、過去最大の105兆円規模とみられている。

本コラムで注目してみたいのは、国債の利払いや償還に充てられる「国債費」についてだ。財務省は8月26日、この国債費を前年度要求額より3872億円(1・6%)多い24兆9746億円とする方針を固めた。要求段階での増額は2年連続となる。


国債費は一般会計歳出の実に23.2%を占める 詳細はこちらから

そもそも国債費は、財務省の理財局が財務省の主計局に対して概算要求を行うものだ。来年度の国債費要求額24兆9746億円は、本年度予算額23兆5082億円より1兆4664億円多い。その内訳は、債務償還費が16兆1112億円、利子及割引料8兆8259億円、国債事務取扱費375億円となっている。

あまり聞きなれない用語かもしれないが、債務償還費とは文字どおり、償還する国債に対して充てられるものだ。また、これについて「減債基金」という概念も理解しておこう。国債を漸次償還し、その残高を減らすために積み立てる基金のことだ。

減債基金は、非常に簡単に言ってしまえば、「国債を返すために要求される借金」ということになる。ここで考えてみてほしい。民間で社債を発行する企業はあるが、償還をする場合は借り換えをして余裕が出た時に償還する、というのが一般的だ。借金をしながら同じ財布で借金を返すというのが、おかしい状況ということはわかるだろう。

だから、海外の先進国では現在、減債基金は予算に組み込まれていない。大学の財政学のテキストにも、国債の減債基金の制度やその重要性が説明されている。ただ、諸外国では存在していないこと、減債基金がなぜ必要なのかはあまり言及されない。もし学生がそうした質問をしたら、大学教員は説明に困ってしまうはずだ。減債基金を廃止すれば、それに繰り入れる債務償還費もなくなり、国債発行額を減らせる。

次に利子及割引料だが、これがきな臭い。「債務残高1000兆円」が騒がれて久しいが、単純計算で利子は0・8%ということになる。果たして国債金利はそんなに高かっただろうか。過去に発行した国債の利払いも必要と考えて、過去10年間の10年国債金利を見てみても、平均で0・5%。これから考えるとせいぜい利子及割引料は5兆円程度あれば十分だ。

財務省は国債発行額の嵩を増やして財政危機を煽りたい?

それなのに、なぜ多額の概算要求になるかといえば、やはり国債発行額の嵩を増やし財政危機を煽りたいという財務省の意向が組み込まれているのだろう。

利子及割引料の水増しは、年度途中で補正予算を作るときに財源となる。このため、査定すべき財務省主計局は要求する財務省理財局に対し、概算要求を水増ししてするように言っているようだ。省内の力関係上、理財局は従うほかないが、側から見れば馴れ合いだ。

そうして、こうした国際標準からずれた国債費が予算に盛り込まれる。報道では「歳出が過去最高になった」「国債費が予算の4分の1を占め、財政が硬直化している」などと並ぶが、これでは財務省の走狗となって財政危機を煽っているばかりだ。日本の国債の本質的な問題は別のところにある。

【私の論評】財務官僚は、必要以上に国債発行額を膨らませて、財政危機を煽っている(゚д゚)!

さて、日本の国債の本質的な問題とは何でしょうか。以下に日本の統合政府のバランスシートを掲載します。

政府の連結(政府と日銀)バランスシート(単位:兆)
経済学では、政府と中央銀行を会計的に合算した「統合政府」という考え方があります。もちろん、行動として中央銀行は、政策手段の独立性があるのですが、あくまで法的には政府の「子会社」なので、会計的には「連結」するのです。
この場合、財政の健全化を考える着目点は、統合政府BS(バランスシート)のネット債務ということになります。上のバランスシートは、昨年財務省ホームページにある連結政府BSに日銀BSを合算し、「統合政府BS」として、高橋洋一氏が作成したものです。

統合政府BSの資産は1350兆円。統合政府BSの負債は、国債1350兆円、日銀発行の銀行券450兆円になる。

ここで、銀行券は、統合政府にとって利子を支払う必要もないし、償還負担なしなので、実質的に債務でないと考えて良いです。

また国債1350兆円に見合う形で、資産には、政府の資産と日銀保有国債があります。

これらが意味しているのは、統合政府BSのネット債務はほぼゼロという状況です。

このBSを見て、財政危機だと言う人はいないでしょう。実際は統合政府ベースでは日本政府の借金は昨年の時点でゼロと言って良い状況だったのです。統合政府ベースでみて、日本は欧米の国々と比較して、財務状況がとりたて悪いとはいえないです。

ただし、財務省は、負債の国債1350兆のみをいい、資産の方はふせて、日本国は借金漬だと言い募っているわけです。

債券関係の用語で「減債基金」というものがあります。地方行政関係者ならご存じでしょう。辞書には「国債を漸次償還し、その残高を減らすために積み立てる基金」とありますが、国債に限らず地方債にもあります。国債の減債基金は「国債整理基金」といいます。

財務官僚は、日本では減債基金があるので国債が信用されている等と言いたいのでしょうが、海外の先進国にはそのようなものはありません。その海外からすれば、借金しながら減債基金への繰入のためにさらに借金するのはいかがなものかと反論されるだけではないでしょうか。

よく考えてみれば、日本でも民間会社が社債を発行していますが、減債基金という話は聞聞いたことがありません。減債基金の積立のために、さらに借金をするのはおかしいというのは誰でも理解できることだと思います。

民間の社債では、借り換えをして、余裕が出たときに償還するというのが一般的です。これは、海外の国債でも同じなので、海外の先進国でも、かつては国債の減債基金は存在していたのですが、今ではなくなっています。

しかし、日本では、国債・地方債の減債基金はまだ存在しています。そうして、大学の財政学のテキストにも、国債・地方債の減債基金の制度やその重要性が説明されています。

ただ、海外では存在していないことや、減債基金がなぜ必要なのかについてはあまり言及されません。上の記事にもあるとおり、もし学生がそうした質問をしたら、大学教員は困惑するでしょう。

それではなぜ、日本では減債基金が存在しているのでしょうか。地方は「国の国債整理基金があるから」というでしょう。では国の国債整理基金はなぜあるのでしょうか。

大阪府の減債基金の復元額

建前としては、「国債の償還を円滑に行うため」と言うでしょうが、本音でいえば、国の予算作りのために便利な道具だからでしょう。

まず、国債整理基金への繰入といって、毎年10兆円程度の予算の水増しが可能になります。本来であれば、繰入は不要なので、その分、国債発行額を減らすことができます。

少なくとも先進国ではそうです。また、国債金利はせいぜい0・5%と低水準であるにもかかわらず、予算上の積算金利は1・8%等として、予算の利払費を水増ししています。

こうした水増しは、年度途中で補正予算を作るときに財源となります。補正予算の財源になるのであれば、水増しは国民に実害がなく、そう目くじらをたてることもないのですが、上の記事にもあるとおり、必要以上に国債発行額を膨らませて、財政危機を煽(あお)るという悪い面が目立っています。

総務省は、減債基金を金科玉条にして、諸規制によって地方自治体に起債などを統制しようとします。2007年頃、公募地方債金利を自由化されましたが、総務省官僚は猛烈に抵抗しました。その理由は市場によるコントロールではなく自分たちが統制したいというものです。そうした主張に減債基金がしばしば使われるのですが、それは筋が違うでしょう。

とにかく、財務省の刷り込みにより、負債1350兆円だけが、多くの人頭に残っており、世界有数の政府資産については、全く考えていない人が多いです。

また、資産が多いことを知っている人でも、「すぐに売れることのない資産も多数あるはずだ」などとしていますが、日本政府の資産は現金もしくはそれにすぐに変えられるものが、7割を占めています、その他の資産も、たとえば都内の一等地の土地や建物等であり、
そのほとんどが即売却可能です。

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2018年7月29日日曜日

【正論8月号】日本のマスコミが報じないトランプ・ロシア疑惑の真実 ~リベラルたちの“国家犯罪” オバマ・クリントン・ゲート―【私の論評】日本メディアのトランプ・安倍報道は最初から色眼鏡でみて疑え(゚д゚)!

【正論8月号】日本のマスコミが報じないトランプ・ロシア疑惑の真実 ~リベラルたちの“国家犯罪” オバマ・クリントン・ゲート


国際政治学者 藤井厳喜


トランプ大統領 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 ※この記事は、月刊「正論8月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。

 今、アメリカでとんでもない事が起きている!

 しかし日本のマスコミはこれを一向に報道しようとしない。このアメリカ政治の歴史的大事件のあらすじを本稿では述べてみたいと思う。

 現在のアメリカでは、ウォーターゲート事件を上回る、米国憲政史上最大とも思われるスキャンダルが爆発している。ウォーターゲート事件で時のニクソン大統領は辞任に追い込まれた。しかし、この政治スキャンダルで追及されているのはトランプ大統領ではなく、オバマ前大統領やその政権の関係者、そしてヒラリー・クリントン前大統領候補(元国務長官)などのリベラル勢力なのである。

実体のなかったロシア・ゲート

 日本ではいまだに、所謂「ロシア・ゲート問題」でトランプ政権が揺さぶられていると思っている人が非常に多い。ところが今やロシア・ゲート問題などは全く存在しないことが誰の目にも明らかになっている。2016年の選挙中に所謂「ロシア・ゲート問題」が騒がれ出してから、丸2年経つ。トランプ政権発足後に、モラー特別検察官が任命されてから1年以上経つが、トランプ陣営がロシア側と共謀していた事実は何一つ見つかっていない。モラー特別検察官の捜査は完全な空振りであった。

 実は今年の2月16日に、モラー特別検察官はロシア人13人とロシア企業3社を詐欺・身分盗用・不正送金などの罪で起訴している。ところがこの折に開かれた記者会見で、モラー特別検察官の捜査を監督する立場にあるロッド・ローゼンスタイン(Rod Rosenstein)副司法長官が、「ロシアの違法工作はあったが、それに加担したアメリカ国民は一人もいなかった」と明言しているのである。勿論、このアメリカ国民にはトランプ本人や、トランプ陣営の要人も含まれている。つまり反トランプ色の強い司法省の責任者が、「長い時間をかけて捜査をしましたが、所謂トランプ陣営のロシア・ゲート事件は存在しませんでした」と明言したに等しいのだ。こういった単純明快な事実関係すら報道されていないのが日本のメディアの実情である。

モラー特別検察官

 それでいまだに筆者自身、時々、講演会などで「ロシア・ゲートでトランプ政権はもつのですか?」というような質問を受けることが多いのである。「ロシア・ゲートなど全く存在しません」と回答すると、質問者はあっけにとられている。そこで言葉を足して「安倍首相のモリカケ問題と一緒で、反対勢力は騒いでいますが、全く実体は存在しなかったのです」と言うと、どうやらみんな納得してくれるようである。

反トランプ・クーデターを仕掛けた「ディープ・ステイト」

 一連の流れを現在の時点から総括してみると、以下のようなことが分かってきている。

 先ず、恐らくオバマ大統領を含むオバマ政権の要人、そして司法省を中心とするリベラル派の官僚達は2016年の大統領選挙でトランプに脅威を感じていた。何としてもトランプ当選を阻み、ヒラリー・クリントン候補を当選させるのが、彼らの共通の使命感となった。ヒラリーを当選させる為には、2016年の6月には既に大問題になっていた所謂「e-mail問題」を隠蔽しなければならない。これはヒラリー・クリントンがオバマ政権第1期で国務長官を務めていた時に、国務省の機密扱いのメールまで個人サーバで扱っていたという明らかな法律違反問題である。実は法律の規定通りに判断すれば、機密情報を私用サーバで扱っていたというだけで重罪に値するのである。ところが、時のロレッタ・リンチ司法長官とコミーFBI長官は、明らかにヒラリーを政治的に支持する立場から、彼女を起訴せずに、事実上、“無罪放免”してしまったのである。これが第1のオバマ政権の大きな罪である。

機密情報を私用サーバで扱っていたヒラリー・クリントン氏

 そして第2の罪は、当選に向かってばく進していたトランプ候補の足を引っ張ったことである。その謀略として用いられたのがロシア・ゲートという仕掛けであり罠であった。あたかもトランプ陣営とロシア政府が関係があるかのような噂を流し、それによってトランプ候補にダメージを与え、当選を阻もうとしたのである。それをヒラリー・クリントン陣営や民主党が行なっただけではなく、司法省とFBIも行なったというところが最大の問題点である。つまり特定の候補の当選を阻む為に、本来、厳正に中立でなければならない連邦政府、特に司法省やFBIが、選挙に直接介入してしまったのである。現在では、違法なプロセスにより許可を得て、トランプ陣営を情報監視していた事実や、FBIが直接トランプ陣営にスパイを送り込んでいた事実まで明らかになっている。

 オバマ政権は、自らと同じ民主党のヒラリー・クリントン候補を当選させる為に、公的権力を利用して、大統領選挙戦そのものに直接、干渉していたのである。これは、オバマ大統領自身の指示によるもので、それにロレッタ・リンチ司法長官やコミーFBI長官が従ったものではないのか。であるとすれば、それは大統領の犯罪そのものであり、ウォーターゲート事件などをはるかに上回るアメリカ憲政史上最悪の政治スキャンダルの1つである。

 大統領が自分の仲間を選挙で当選させる為に、司法省やFBIという政府機関を使ったというのであれば、法の支配も民主政治もあったものではない。まるで発展途上国の独裁政治と少しも変わらないではないか。実際、この事件の実態が明らかになるにつれ、アメリカの愛国者たちは「アメリカもバナナ共和国になってしまった」と嘆いている。「バナナ共和国」とは、法の支配もデモクラシーも存在しないラテンアメリカの独裁国を皮肉ったアメリカの俗語である。アメリカももう、バナナ共和国を笑ってはいられないわけだ。

 ここで「ディープ・ステイト(Deep State:深層国家)」という言葉が登場してくる。これは、トランプ政権を支持している保守派の人達が好んで使う言葉である。ディープ・ステイトとは、謂わば、国家の中の国家とでもいうべき存在で、この場合は、連邦政府内におけるリベラル派官僚やリベラル政治家の暗黙の組織であり、常にリベラルな国家解体的な政策を推進し、保守的な政策の実行に抵抗している。連邦政府内では司法省や環境省や国務省内で彼らの影響力は著しく、またFBI、CIA、NSAなどの情報機関の中心部にも彼らは浸透している。ディープ・ステイトはトランプ候補の当選を阻むために、積極的に抵抗と妨害を続け、トランプ当選後は彼を弾劾や辞職に追い込むべく活動している。ディープ・ステイト派官僚が行なう情報リークと大手マスコミが一体となってアメリカ社会にアンチ・トランプ・ムードを蔓延させているのである。

 ディープ・ステイト派官僚のいう「リベラルな政策」とは、民主国家アメリカを解体させるような政策である。彼らは移民法の厳格な執行や、社会福祉詐欺の取締りを妨害し、環境条例の規制緩和に反対している。コミー前FBI長官やモラー特別検察官やローゼンスタイン副司法長官などはディープ・ステイトのこの目に見える氷山の一角に過ぎないのだ。


 ディープ・ステイトというような具体的な抵抗組織があるかどうかはともかくとして、事実上、連邦政府内のリベラル派官僚はトランプの当選を阻む為に、そして当選後はトランプを辞職に追い込むべく、様々な謀略を巡らしてきたのは否定の出来ない事実である。

リベラルメディアの堕落

 ウォーターゲート事件では、ニューヨークタイムズを始めとする大手リベラル派マスコミはこれを「権力の犯罪」として鋭く糾弾した。ニクソン大統領はこれに抵抗できず、大統領弾劾を待たずに辞職する道を選んだ。しかし現在、オバマ政権による選挙干渉と権力犯罪が明らかになったにも関わらず、リベラル派マスコミは一向に声を挙げようとしない。現在のアメリカでは、デモクラシーの基礎を成す法治主義、言い換えれば「法の支配」そのものが危機に瀕しているのである。時の政権が、自らのお仲間(クローニー)を当選させる為に、政府機関を使って策謀することが許されるならば、法の支配は最早、ないも同然である。そしてこのデモクラシーを危機に陥れる権力犯罪の責任が厳しく糾弾されなければならない。追求の矛先は当然、オバマ前大統領自身にも向かうことになるだろう。にも関わらず、リベラル派マスコミは、このデモクラシーの根幹を揺るがす権力犯罪に対して、沈黙を保つのみである。それだけではなく、有りもしないロシア・ゲート事件をいまだに騒ぎ立てている。保守派の権力犯罪は許せないが、リベラル派の権力犯罪なら許すとでもいうのだろうか。それではそもそも法の下の平等も、そして法治主義そのものも否定することになるのだ。アメリカのリベラル派メディアの堕落はここまで来ている。

「ヌーネス・メモ」が暴いた 恐るべき権力犯罪

 米下院情報委員会のデビン・ヌーネス委員長(Devin Nunes:共和党・カリフォルニア)は2018年1月18日に委員会として、FBIや司法省の不正行為を調査した結果を1つのメモにまとめた。これは、下院情報委員会のメンバーが司法省やFBIの内部機密文書を査読し、その調査結果をまとめたものである。

米下院情報委員会のデビン・ヌーネス委員長

 文書自体は機密扱いされているため、査読した下院情報委員会のメンバーも、その内容について公にすることが出来ずにいたが、ヌーネス委員長が調査内容に基づいてメモを作成したのである。このメモ自体も当初は、機密扱いであったが、これをトランプ大統領が2月2日に機密解除することによって一般に公開された。ヌーネス委員長は、デモクラシーと法の支配を守るために、FBIや司法省の違法行為を鋭く追及する立場である。

 ヌーネス・メモの本文は、たった3ページと3分の1ほどの簡潔なものであるが、その意味するところは重大である。以下、ヌーネス・メモの要点を紹介しよう。

 ●2016年の米大統領選挙の際にFBIがトランプ陣営を情報監視していた。

 ●直接の情報監視の対象となったのは、トランプ大統領候補の外交問題アドバイザーであったカーター・ペイジ(Carter Page)氏である。

 ●当然、FBIと司法省は、何故、カーター・ペイジ氏とトランプ陣営を情報監視しなければならないかの理由を外国情報監視裁判所(FISC)に申請しなければならない。その申請理由が説得力のあるものであれば、FISCは情報監視許可を出すことになる。

 ●ところが、FBIと司法省が提出した「証拠」は、実は「スティール・レポート」と呼ばれているものであった。この「スティール・レポート」はイギリスの対外諜報機関MI6の元ロシア課に所属していたクリストファー・スティール氏が執筆したものであった。ところがスティール氏をカネで雇い、トランプ候補を中傷するレポートを書かせていたのは、ヒラリー・クリントン陣営と米民主党全国委員会なのであった。(初期にクリストファー・スティール氏に反トランプのレポートを依頼したのは、共和党大統領予備選におけるトランプのライバル候補であったと言われている。)

クリストファー・スティール氏

 ●司法省とFBIは、誰が「スティール・レポート」を書かせたかという、その出所を隠蔽したまま「スティール・レポート」の内容を客観的な証拠と見せかけて、FISCの裁判官達を騙して、トランプ陣営の盗聴・情報監視許可を入手していたのであった。

 ●「スティール・レポート」の内容は、全くのガセネタであり、トランプ陣営とロシア側が共謀しているという全く根拠のない偽情報であった。

 「ヌーネス・メモ」を詳しく読んでいくと、次のような事実も分かる。

 ●司法省とFBIが、上記の外国情報監視裁判所に出した申請書を見ると、2016年9月23日にYahoo!ニュースが報じた情報が引用されている。これはトランプ陣営とロシア側の共謀を主張するものであった。著者はマイケル・イシコフで、カーター・ペイジ氏が2016年7月にモスクワを訪問したことを取り上げている。このニュースが謂わば、傍証であるということで、外国情報監視裁判所に提出されたのであるが、このYahoo!ニュースの情報源になっていたのがクリストファー・スティール氏自身なのであった。だからYahoo!ニュース自身は傍証にもならず、情報源は同じクリストファー・スティールだということが確認された。

 ●実はクリストファー・スティール自身が、2016年9月に他のメディアともコンタクトしていた事実が明らかになっている。スティールは、FBIの情報提供者として認知されていたが、そういった人物はマスコミとコンタクトし、情報を提供することは禁止されている。スティール自身は10月30日に、情報提供者不適格ということで排除された。

 ●スティールは情報提供者として排除される前も排除された後も、司法省次官補のブルース・オア(Bruce Ohr)とコンタクトを続けていた。スティールは2016年9月の時点でオア次官補に対して、トランプに対する極端な嫌悪感を伝え、「トランプの大統領当選を何としても阻まなければならない」と語っている。

 ●しかもこのオア氏の夫人は、フュージョンGPS社の職員であった。フュージョンGPS社はヒラリー・クリントン陣営とクリストファー・スティールを繋いだ仲介機関である。フュージョンGPS社がスティールを直接雇い「スティール・レポート」を書かせた。ヒラリー・クリントン陣営と米民主党全国委員会は、弁護士事務所を通じて、フュージョンGPS社に代価を支払い、その資金がスティールに渡されていた。

 単純化していうならば、ヒラリー・クリントン陣営とFBI幹部が、トランプ追い落としの為に共謀して、違法なトランプ陣営の情報監視を行なっていたのである。これを実証した動かぬ証拠が「ヌーネス・メモ」なのである。

 尚、これに反論する為に、下院情報委員会の民主党委員が、2018年2月24日にメモを公開した。執筆したのは、アダム・シフ下院議員である。これは10ページのメモであり、表面上はヌーネス・メモに反論するものである。しかし、2月25日のウォール・ストリート・ジャーナルによれば、このシフ・メモは詳細に読めば、ヌーネス・メモを裏付けるものでしかない。つまり「スティール・レポート」こそがFBIがトランプ陣営を情報監視する主要な証拠として提出されており、しかもそのスティール・レポートを誰が書かせたかは隠蔽されていたのである。シフ・メモはこの2つの事実を覆すものではない。

副司法長官自身が否定した ロシア・ゲートの存在

 所謂「ロシア・ゲート」でロシア人13人とロシア企業3社を起訴したのを受け、ローゼンスタイン副司法長官が2月16日に行った発表の中で、重要なのは次の様な事実である。

 ●複数のロシア人やロシア企業が2016年のアメリカ大統領選挙に影響を与えようとしたのは事実。

 ●しかし、これらロシア人の犯罪行為に、実情を知りながら加わったアメリカ国民は一人もいなかった。

 ●又、ロシアのこの違法工作によって、アメリカ大統領選挙の結果が変えられることもなかった。

 ●更に、プーチン大統領やロシア政府がこういった政治工作にかかわった証拠は何一つ発見されていない。

 中でも最も重要なのは、「実情を知りながらロシアの情報工作に参加したアメリカ人はいなかった」という点であろう。記者会見でも副長官はこの点を強調していた。この言葉をそのままに受け取れば、当然「ロシア側とトランプ陣営が共謀した選挙活動はなかった」という結論になる。というか、それ以外の結論を下すことは不可能である。

 モラー特別検察官の任務は「トランプ陣営がロシア政府と共謀して、大統領選挙の結果を歪めたのではないか」という疑惑の捜査だが、「そういった事実はなかった」ということが起訴を通じて明らかになったのである。「ロシア・ゲート」なるものが全く存在しないことを、モラー特別検察官とローゼンスタイン副長官が証明してみせたのだから、皮肉な結果である。ちなみにローゼンスタイン副長官は、コミーFBI長官などと共に、トランプの大統領選当選を妨害しようとした司法省高官の一人であり、モラー特別検察官と共謀していると批判されている。要するに、「ロシア・ゲート」は最早、完全に終わったのである。

 勿論、今後、別の事実が発見され、新たなる人物が起訴されるという天文学的な可能性は存在する。しかし、それ以上の可能性を議論することは神学論争になってしまうだろう。

反撃に出たトランプ陣営

 ロシア・ゲートが存在しないことは明らかになっても、モラー特別検察官などはトランプ大統領の個人弁護士マイケル・コーヘン氏に嫌がらせ的な捜査をして、トランプへの抵抗を続けている。しかし最早、勝負あったというべきだろう。

 トランプ陣営は反転攻勢に出ている。2018年5月21日、トランプ大統領は、自らの陣営が2016年の大統領選挙で、FBIによって、政治目的のために情報監視されていたかどうか調査するよう司法省に正式に命じた。焦点は、オバマ政権関係者がそのような要請をFBIに行なったかどうかである。状況を考えれば、オバマ大統領自身がトランプ陣営へのスパイ行為を命じた可能性が疑われる。もしセッションズ司法長官やローゼンスタイン副長官が大統領命令に従わなかったら、トランプは彼らを更迭する事が出来る。

 6月14日、司法省のマイケル・ホロウィッツ監察官はヒラリー・クリントンのメール問題で、報告書を提出した。報告書でコミーFBI長官やリンチ司法長官の判断ミスを指摘したが、違法行為はなかったと結論づけたのだが、早速、翌15日、トランプは「ホロウィッツ監察官の捜査は完全に偏っており、結論は間違っている」と批判した。監察官自身は司法省の役人であり、司法省やFBIを弁護する立場に終始している。

 それにしても、ウォーターゲート事件を上回るこれだけの大事件を一切、報道しない日本のマスコミとは一体何なのだろうか?

■ふじい・げんき 昭和27年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。米クレアモント大学大学院を経て、ハーバード大学大学院博士課程修了。著書に『日米対等』(祥伝社)

【私の論評】日本メディアのトランプ・安倍報道は最初から色眼鏡でみて疑え(゚д゚)!

オバマ・クリントンゲート事件に関して、これほどまとめて報道されたのはブログ冒頭の記事以外においては、日本おいては皆無だと思います。そのため、今回はこの記事を掲載させていただくことにしました。

ブログ冒頭の記事の内容に関しては、このブログでも過去に掲載したきたものも多いです。ただし、このブログでの紹介は、断片的なものを何度も掲載してきたため、上の記事のようにまとまったものではありませんでした。

それにしても、私自身はブログで何度かこの件について事実を調べつつ掲載してきたので、ロシア・ゲートなる疑惑は、虚構に過ぎないということはしっかりと把握していましたが、そうではない人も大勢いるということを改めて知り、驚いています。

ヒラリー・クリントン陣営とFBI幹部が、トランプ追い落としの為に共謀して、違法なトランプ陣営の情報監視を行なっていたのは、昨年の暮あたりには明らかになっていました。これを実証した動かぬ証拠が「ヌーネス・メモ」なのです。

最近は、ロシア・ゲートについてはほとんどテレビで報道しなくなったので、この件については日本のマスコミもロジア・ゲート疑惑は虚構に過ぎないことを理解してのことかとも思っていたのですが、そうではないようです。

私自身は、ニュースの入手先は、テレビや新聞ではなく、ネットによるものがほとんどあり、米国に関することは、保守系も含む米国のサイトも直接見ているので、やはり日本国内の一般の人とは感覚が少し違うということに改めて思い知らされました。

まさに、藤井厳喜氏が語るように、「安倍首相のモリカケ問題と一緒で、反対勢力は騒いでいますが、全く実体は存在しなかったのです」であり、そのことがほとんど日本国内では報道されていないのです。これについては、つい最近もこのブログに掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
米ロ会談が酷評でも支持率上昇のトランプ―【私の論評】日米マスコミの報道は鵜呑みにできない、特に総理と大統領関連の報道はそうだ(゚д゚)!
ベルギーの首都ブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、
北大西洋理事会の会合の会場に到着したドナルド・トランプ米大統領(2018年7月11日)

 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみ以下に引用します。
そもそも、このブログでも過去に何度か述べているように、米国のマスコミはリベラル派が牛耳っています。新聞はすべてが、リベラル派です。テレビ局では唯一フォックスTVだけが、保守派で他はリベラルです。 
報道する時の視点はすべてリベラル派の視点からによるものです。米国のマスコミの報道だけを見ていると、それは米国の半分だけみていることになり、もう半分の保守派についてはスルーすることになります。 
それは、日本の安倍総理の報道も、産経新聞などを見ることなく、朝日新聞やテレビ報道を真に受けていれば、とんでもないことになると同じことです。 
日米双方とも、マスコミの大部分は偏向しているとみなすべきです。そもそも、両方ともトランプ大統領の登場を予測できませんでした。そんなマスコミを単純に信じ込むことはできません。
ニューズウィーク日本版は、今年の3月5日以下のような記事を掲載していました。
トランプ、習近平を「終身国家主席」と賞賛 「米国でもいつか試したい」
トランプ米大統領は3日、中国共産党が国家主席の任期撤廃案を明らかにしたことに関し、無期限で任期を務められることになるとして習近平国家主席を称賛した。CNNが報じた。 
撤廃されれば、習氏は2023年以降も続投できることになる。 
CNNによると、フロリダ州での非公式な資金集めイベントでトランプ大統領は「習氏はいまや終身大統領、終身大統領だ。そして、習氏は偉大だ」と発言。「そして、習氏にはそれが可能だった。素晴らしいことだ。われわれもいつか試してみなくてはならないだろう」と述べ、支援者から拍手を浴びたもようだ。 
トランプ大統領が米大統領の任期延長について発言したものか、冗談だったのかは不明。ホワイトハウスからのコメントは得られていない。 
民主党下院議員のロー・カンナ氏はツイッターで「これが冗談だったのかどうかにかかわらず、習氏のように終身大統領(国家主席)となることに言及するのは、米国の大統領が明らかにした心情として最も米国的らしくないものだ」と述べた。 
米国の大統領は、ルーズベルト大統領が1932年以降4回選出された以外は、慣例的に2期(1期は4年)が最長となっていた。1951年の憲法改正後、任期は最長2期と定められた。
このCNNの報道は日本版ニューズウィークばかりではなく多くのメディアが引用していました。

トランプ大統領は、習の「終身国家主席」は、「すばらしい!」といっています。ところがその一方で、対中強硬派を政権につけ、貿易戦争を大々的に開始しました。トランプ大統領の行動を見れば『主席任期撤廃』を期に反中に旋回しています。トランプ氏の本心はどちらなのでしょうか。

その本心に近づくには、10年前のトランプ氏の著書が役立つかもしれません。

トランプ大統領は、ビジネス本の分野でのベストセラー作家でした。10年前に出版されたロバート・キヨサキとの共著『あなたに金持ちになってほしい』を読むとトランプ氏がビジネスの世界で「自分を表現する」ことに特別の価値観を認めている人物であることがわかります。


私も耳にしたことがあるが、従業員なのに「まるで会社が自分のものであるかのような働きぶりだ」と評判の立つ人がいる。自分が会社のオーナーであるかのように、その成功を唯一の目的に一途に働く人たちだ。自分のビジネスを持ちたいと思ったら、一つの目的に向かって献身することが必要だ。例えば、ビジネスオーナーには労働時間に制限はない。何日も休まずに働くことさえある。それに、最終的な責任はすべてオーナーにかかってくる。 
私はそういう責任を負うのが好きだ。自信が湧いてくるからだ。疲れるどころか、エネルギーを与えてくれる。そういうプレッシャーを楽しめないという人もいるが、そういう人は従業員のままでいた方がいい。 
もちろん、自分のビジネスを持つことには、誰の目にも明らかなご褒美がついてくる。それは説明するまでもないだろう。一度自分のビジネスを持つと、他人のために働く生活に戻るのはむずかしくなる。どう考えてみても、この二つの世界は違う。 
だからこそ、自分の船の船長であり続けるために、あれほど一生懸命に働こうという気にもなるのだ。自分のビジネスを持てば、あなたは毎日自分に向かってこんなふうに言うことができる。「すべては私から始まる―今、ここで、今日!」これは実にすばらしい気分だ。 
自分のビジネスを持つのは木を育てるようなものだ。ビジネスも季節の変化や嵐を乗り越え、美しい夏の日や冬の猛吹雪を経験して生きる生命体だ。それは成長を続けるものであり、文字通り自分自身を表現するものでもある。私が、自分のやることの品質管理に細心の注意を払っている理由の一つがここにある。 
自分を表現するものが何かあったら、自分の知るかぎり、あるいは達成できるかぎりそれを最良のものにしておきたい。そうすれば、自分に対するハードルをどんどん高くすることができるし、決して退屈しなくてすむ。そのことは保証してもいい。
トランプ氏にとって勤勉はとても重要な価値なのです。ビジネスの目的は、金を稼ぐことではなく、「木を育てる」ようなものなのです。金はその結果としてついてくるのです。これは典型的なピューリタニズムの原理です。3度の結婚、派手な女性関係、贅沢な生活などは、トランプの上っ面で、本質はとても真面目で仕事を通じて社会に貢献したいという信念を持っている人物なのです。

さらにトランプ氏は、自由という価値を重視しています。
会社勤めをしていて退屈な仕事があったとしても、会社をやめる以外にできることはほとんどない。でも、自分のビジネスならば自分でコントロールすることができるし、それはより多くの自由があることを意味する。「自由」というのはなかなか興味深い言葉だ。 
なぜなら、自由にはふつう代価が伴うからだ。ビジネスオーナーのほとんどは従業員よりも何時間も多く働いているが、他人のために働く方がましだと言う起業家に私はお目にかかったことがない! ただの一度も……。 
「自分を表現する」という話は、特に芸術や文学に関して、みんなどこかで聞いたことがあるだろう。ビジネスでも自己表現が可能だ。私はビジネスも一つの芸術だと思っている。鍛錬、技術、忍耐力など、ビジネスと芸術には多くの共通点がある。表現の自由もその一つで、それこそが、ビジネスオーナーであることが特にすばらしい理由だ。 
自分がやりたいことについてビジョンが湧けば、私はそれに取り組み、実現させる。もちろん、土地の用途規制などその地域の規則には従わなければいけないが、アイディアやそれを実現するためのパワーは私の中にあって、誰にも邪魔されることはない。こういうのはすごく気分がいい! 
人がインスピレーションを受けるのには、何らかの理由がある。インスピレーションはやる気を起こす源だ。インスピレーションが湧き上がっても、それに注意を向けないでいると、人は欲求不満に陥る。インスピレーションを持っていて、それをもとに勤勉に、集中してやり続けることができる人には、自分のビジネスを持つことを考えてみるように勧める。 
ほかのことをやるより大きな見返りがあるし、「自分でまいた種を自分で刈り取る」という古いことわざはここにも当てはまり、きっと大きな収穫を得ることになるだろう。これは考えてみるだけの価値がある。
インスピレーションに基づいて、「自分に対するハードルをどんどん高く」しているうちに、トランプ氏は、アメリカ合衆国大統領になってしまったのです。

第三者的に冷静に観察すると、トランプ氏の主張は、国内的には米国人に勤勉さを取り戻すことを訴えています。そして、勤勉さに相当する報酬が得られるシステムを構築しようとしています。外交面では、米国にとって、直接的な利害関係のない問題には関与しないという非介入主義です。

しかし、直接的な利害関係のある問題には関与するということです。勤勉であり、自由を愛するトランプ氏は、中国の価値観とは真っ向から対立することになります。

そもそも、中国は民主化されておらず、政治と経済も分離されておらず、法治国家化すらされていません。典型的なピューリタニズムの原理に基づき行動する典型的な米国の保守層に属するトランプ氏はもともと、中国とは価値観を共有することはできません。

トランプ氏にとっては、ピューリタニズム的な勤勉が報われるような社会にしたいとこですが、それを邪魔するのが、中国なのです。中国による、知的財産権の侵害はもとより、中国にの現体制化における米国との貿易は、そもそも米国の勤労者にとって不利益をもたらすものであるというのが、トランプ大統領の考えです。

 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ヴェーバー著、
大塚 久雄訳、岩波文庫)の中の挿入画 ピューリタニズム的な勤勉の原点が掲載されている

そうして、トランプ氏の典型的なピューリタニズムの原理に基づく行動こそが本来米国の富を築いてきたのですが、この原理にもとづく行動は、現代の米国のリベラル派からすれば、過去に戻るというだけであって、せっかく長年かけてリベラルが気づいてきた社会に逆行するものでしかないわけです。

ただし、米国ではリベラル派がマスコミはもとより、政治や学問の世界、ありとあらゆるところで、主流派となったので、本来米国の人口の半分近くを占めるはずのビューリタニズム的な勤勉をバックボーンとする保守層の考えはごく最近まですっかりかき消されてきたといのが現実でした。

半分の人々の考えを無視するというのは、とても民主的なやり方ではありません。かといつて、保守が主流となってしまうというのも、民主的ではないです。保守とリベラルがどこまで、価値観を共有できるかが鍵です。

トランプ政権下では、米国が外交面で内政面でも本格的にチェンジ(変化)する可能性が大です。

以上のようなことを日本のマスコミは全く無視しています。日本のメディアによるトランプ大統領報道、安倍総理報道は最初から色眼鏡でみて疑うくらいが丁度良いです。

2018年7月25日水曜日

米ロ会談が酷評でも支持率上昇のトランプ―【私の論評】日米マスコミの報道は鵜呑みにできない、特に総理と大統領関連の報道はそうだ(゚д゚)!

米ロ会談が酷評でも支持率上昇のトランプ

「命運が尽きた」と言われながらも支持層は盤石

ベルギーの首都ブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、
北大西洋理事会の会合の会場に到着したドナルド・トランプ米大統領(2018年7月11日)

 西欧訪問やロシアのプーチン大統領との会談を終えた米国のドナルド・トランプ大統領が米国主要メディアから酷評を浴びている。政界でも民主党側はもちろん共和党の一部からも批判が起きた。

 だが、その一方で米国民一般のトランプ大統領支持は5割に近い水準を保ち、共和党支持者の間では一段と高くなっている。激しく糾弾されるトランプ大統領と、支持層を堅く保つトランプ大統領と、まるで2人の人物が存在するかのようだ。

根拠が薄弱な米国メディアのトランプ評

 欧州を訪問し、ロシアのプーチン大統領と会談したトランプ大統領の言動に対して、米国のメディアや民主党系識者たちからは以下のような非難がぶつけられた。

「トランプ大統領は西欧との同盟を破壊する」

「敵であるはずのロシアと手を結ぼうとする」

「トランプ氏は無知で衝動的であり、政策がない」

 トランプ批判の先頭に立つニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの記事は、このような非難に満ちていた。その筆致はまるでトランプ大統領の命運が尽きたと断じているようでもあった。

 このようにトランプ大統領を切り捨てる論評は、そのほとんどがトランプ大統領のメディアとのやりとりや、トランプ氏自身のツイッターでの発信が根拠となっている。トランプ大統領が正式に発表した政策や決定を基にしているのではなく、記者が個人的な感想を述べるという次元の記事が多いのが実状だ。

 確かにトランプ氏の言動は既成の政治リーダーとは、まったく異なる。単純明快だが、粗雑である。ごく平均的な米国人たちが日ごろ口にするような言葉で、難しい国際問題や国内問題を平易に説明しようとする。そうした言葉遣いは、政治やメディアの世界のエリートとされる層をいらだたせ、怒らせ、反発させる。

 日本でのトランプ評も、米側のそんな傾向に依拠するところが多い。実際に、いまだに以下のようなトランプ評が見受けられる。

「トランプ氏は不動産業出身だから大統領職はまともには務まらない」

「大統領としての行政や統治も、みな損得のディールなのだ」

「トランプ氏の最近の言動はみな中間選挙目当てである」

 だが、こうしたトランプ評は根拠が薄弱であり、明らかに事実と異なる部分もある。まず「不動産業だから」という批判は、不動産業への差別意識だともいえる。かつて1981年に共和党のロナルド・レーガン大統領が登場したとき、民主党側の政治家やメディアは「しょせん彼は映画俳優だったから」と見下す言葉を浴びせた。映画俳優という職業への偏見だった。しかし、現実にはレーガン大統領は米国の政治史でも最高レベルの国民の人気を得る国家指導者として名を残した。

 トランプ大統領は政策や理念ではなく金銭上の損得だけを考えて「ディール」している、中間選挙で共和党の勝利を得るために目先の人気取りだけで動いている──といった批判も、裏付けとなる事実があるわけではない。

国民の支持を得ているトランプ大統領の政策

 米国メディアは、以上のようにトランプ大統領を徹底的に「浅薄、無知、無思慮、無政策、無思想な人物」として描き、「ドン・キホーテのように孤立して奇矯な人物」というレッテルを貼ろうとしている。

 だが現実のトランプ大統領は、決してそうではない。

 私は、2015年6月にトランプ氏が大統領選への立候補を宣言したときから大統領選キャンペーン中の彼の言動を追い、トランプ氏が大統領に就任してからも、その政策や演説を取材してきた。また、トランプ大統領の支持層にも接してきた。その体験を踏まえて彼を眺めると、どうしても異なるトランプ像がみえてくる。

 今、話題になっているトランプ大統領の欧州への防衛政策やロシアへの態度に焦点を当てて説明しよう。

 今回の欧州訪問で北大西洋条約機構(NATO)の首脳会談に出席したトランプ大統領は、NATOの欧州側加盟国に防衛費の増額を強く要求した。加盟各国は最低限、GDP(国内総生産)2%の防衛費支出をするという約束を守れ、という要求だった。

 トランプ氏のこの要求は、NATOを壊す動きだとして広く報道された。トランプ氏はきわめて衝動的であり、米欧同盟の破壊につながるという批判も多かった。

 しかし実際には、トランプ氏は「NATO諸国の防衛費負担の増大」を2016年4月の大統領候補として初の外交演説で第1の公約として挙げていた。当時から一貫して変わらない「公正な負担を」という政策なのだ。国民から広く支持を得ている政策であり、オバマ前政権もこの政策を推していた。

 また、トランプ大統領は「NATO体制の維持と強化」も政策として掲げてきた。昨年(2017年)末から今年初頭にかけてトランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」でも、大統領として明言している。米国が主体となって進めるNATOの維持や強化は、今回のNATO首脳会議での共同声明でも確認された。トランプ大統領はNATO堅持を主張した上で公正な負担を求めているのだ。

 ロシア政策にしても、トランプ大統領は前記の「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」の中で、ロシアをはっきりと米国主導の国際秩序を侵食し、破壊することを企図する危険国家として位置づけてきた。トランプ大統領はプーチン大統領と握手はしても、ロシアのクリミア奪取を許してはいない。ロシアへの経済制裁もまったく緩めていないのだ。

 トランプ政権のロシアへの基本姿勢は、軍事力の強化によっても明らかだといえる。トランプ大統領は2017年9月の国連演説で「原則に基づく現実主義」という理念を掲げ、国家主権に基づく「力による平和」という政策を語った。それとともに、潜在敵であるロシアや中国の膨張を抑えるために、軍事力を大幅に強化し始めた。トランプ政権の2018年度の国防予算は、前年度から13%増加し、GDPの4%ほどに達している。

トランプ大統領はもう1人いる?

 だが、反トランプのメディアはそうした政策をほとんど取り上げない。その代わりにトランプ大統領の自由奔放な発言、放言、失言を引き出して、集中砲火を浴びせる。 

 それでも、米国一般のトランプ支持は揺らがない。大手世論調査機関で唯一、毎日、大統領支持率の調査を実施するラスムセン社の発表では、トランプ大統領への一般米国民の支持率は45%以上であり、ときには50%近くにもなる。この支持率はこの数カ月間、上昇傾向にある。

 さらにトランプ大統領への支持の特色は、本来の支持層の支持がきわめて堅固であり、しかも増加の動きをみせている点である。ごく最近でもその支持率は85%以上の高い水準にある。「命運が尽きた大統領」というイメージとはほど遠いといってよい。

 7月24日の報道でも、トランプ・プーチン会談の最中と直後の7月中旬に、ウォール・ストリート・ジャーナル紙とNBCテレビが共同で実施した全米世論調査では、トランプ大統領への支持率が前回の44%から45%に上昇したという。ネット・メディアの「ザ・ヒル」の同時期の世論調査では共和党支持層のトランプ大統領への支持率は88%という記録破りの数字を出したという。

 こうした諸点をみてくると、米側の反トランプメディアや日本側のいわゆる識者の多くが描くのとは異なる「もう1人のトランプ大統領」を、私はどうしても実感させられるのである。

【私の論評】日米マスコミの報道は鵜呑みにできない、特に総理と大統領関連の報道はそうだ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にもでている、米国の調査会社ラスムッセン社が毎日行っている世論調査で、今年2月27日にはトランプ大統領の業績を支持する者が50%となりこの内35%が「強く支持」していました。一方不支持率は48%で「強く不満を持つ」は39%でした。

トランプ大統領の支持率が50%になるのは昨年6月中旬以来のことです。その後30%台にまで転落していたのですが昨年暮れ以降上昇機運にありました。

この50%という支持率が高いのかどうかですが、オバマ前大統領の第一期目の同時期の支持率が43%であったのと比較すると、かなり良い数字だと考えざるを得ません。

その原因ですが、時期的に見るとトランプ大統領に大きな影響力を持っていた超保守派のスティーブ・バノン前主席戦略官が暴露本「炎と怒り」に、大統領の娘イバンカさんや娘婿クシュナー氏を批判する発言を引用されて、ホワイトハウスから完全に放逐されたことと重なります。

暴露本「炎と怒り」

その後トランプ大統領の口から「アメリカ・ファースト」という言葉も出なくなり、政策的にも移民に同情的だったり、今年3 月のフロリダの高校での銃乱射事件でも銃規制強化を提案したり柔軟な姿勢が見えるようになったことが支持を拡大した可能性が大きいです。

ただ、同時期に発表されたCNNの世論調査ではトランプ大統領への支持は35%で過去最低と並んだとされました。片やラスムッセン社がトランプ大統領は「評価されている」としたのに対して「最低水準」という結果はどうして生まれたのでしょうか。

トランプ大統領の支持率を伝えるCNNの画面

同じ疑問を米国でも持ったようで、ワシントンの保守系のニュースサイト「デイリー・コーラー」が分析を試みていました。

同サイトはまず回答者について調べた結果、CNNの場合「民主党支持者」33%「共和党支持者」23%「その他」44%となっていることに着目した。通常米国国民の内共和党を支持する者は37%とされているので、14%ほど民主党寄りの回答者が多かったのではないかと指摘しました。

次に、回答者の選び方もCNNが「18歳以上の成年男女」としたのに対してラスムッセンは「投票すると回答した有権者」だった。大統領選挙の投票率は通常50%前後なので、世論調査の対象としては「投票する」とした有権者の方が正確を期せるといいます。

さらに、CNNの調査は調査員が電話で尋ねる方法をとりますが、この場合回答者が調査員の意向をしんしゃくする場合があるのでラスムッセンのように録音メッセージで機械的に行う方が好ましく「CNNは調査のデータをねじ曲げ(skewing)た」と「デイリー・コーラー」は断じています。

CNNが「ねじ曲げた」かどうかはともかく、ラスムッセン社の世論調査は一昨年の大統領選の際にトランプ候補とクリントン候補の得票差をほぼ正確にとらえていたことで評価されており、いまトランプ大統領が上り調子であるという調査結果は素直に受け入れても良いと認識すべきと思います。

実際、ブログ冒頭の記事にも「大手世論調査機関で唯一、毎日、大統領支持率の調査を実施するラスムセン社の発表では、トランプ大統領への一般米国民の支持率は45%以上であり、ときには50%近くにもなっている」とあります。そうして、この支持率はこの数カ月間、上昇傾向にあります。

CNNといえば、昨年ドナルド・トランプ米大統領の上級顧問がロシア疑惑で連邦議会の調査を受けているという記事を米CNNが撤回し、CNNは26日、関わった記者3人の辞職を発表していました。

CNNを辞職したのは、記事を担当したトマス・フランク記者、調査報道部門編集者でピュリツァー賞受賞経験もあるエリック・リクトブラウ氏、調査報道部門の責任者のレックス・ハリス氏。

米国のCNNや他の報道機関の報道でも、トランプ大統領に関する報道は偏向しているとみるべきでしょう。やはり、ラスムッセン社の世論調査などを参照すべきです。

日米マスコミのトランプ報道は鵜呑みにできない

そもそも、このブログでも過去に何度か述べているように、米国のマスコミはリベラル派が牛耳っています。新聞はすべてが、リベラル派です。テレビ局では唯一フォックスTVだけが、保守派で他はリベラルです。

報道する時の視点はすべてリベラル派の視点からによるものです。米国のマスコミの報道だけを見ていると、それは米国の半分だけみていることになり、もう半分の保守派についてはスルーすることになります。

日本のメディアの安倍総理報道も鵜呑みにできない

それは、日本の安倍総理の報道も、産経新聞などを見ることなく、朝日新聞やテレビ報道を真に受けていれば、とんでもないことになると同じことです。

日米双方とも、マスコミの大部分は偏向しているとみなすべきです。そもそも、両方ともトランプ大統領の登場を予測できませんでした。そんなマスコミを単純に信じ込むことはできません。

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米ロ首脳会談 − 「ロシアからヒラリーに4億ドル寄付」プーチン大統領が発言―【私の論評】トランプ氏を馬鹿であると報道し続ける日米のマスコミは、自身が馬鹿であると気づいていない?

2018年7月22日日曜日

米ロ首脳会談 − 「ロシアからヒラリーに4億ドル寄付」プーチン大統領が発言―【私の論評】トランプ氏を馬鹿であると報道し続ける日米のマスコミは、自身が馬鹿であると気づいていない?

米ロ首脳会談 − 「ロシアからヒラリーに4億ドル寄付」プーチン大統領が発言

大紀元日本

フィンランドのヘルシンキで16日に開かれた米ロ首脳会談。会談後の共同会見

フィンランドのヘルシンキで16日に開かれた米ロ首脳会談後の共同会見で、プーチン大統領は、米国出身のビジネスマンがロシアで稼いだ資金の一部を、ヒラリー・クリントン側に寄付していたと発言した。

プーチン大統領は、記者団が2016年米大統領選のロシア介入疑惑について質問したところ、米検察が疑わしいと思っている人物の捜査を、ロシアに要請できると述べた。「ロシアの検察庁と捜査当局の代表は、捜査結果を米国に提出する」と付け加えた。

さらに踏み込んで、情報共有のため、選挙介入疑惑を調査するロバート・モラー特別検察官を含む米国の代表者が取り調べに参加できるようにするとした。

プーチン大統領の例える「疑わしい人物」とは、首脳会談前、米検察が大統領選介入の疑いで起訴した12人のロシア情報当局者を指すとみられる。

しかし、プーチン大統領は、疑わしい人物の「よく知られた一例」として、大手投資企業エルミタージュ・キャピタル創業者でCEOのビル・ブラウダー氏を名指しした。ロシアの裁判で、ブラウダー氏は脱税の罪で有罪判決が下っている。

ブラウダー氏はロシアで1996年にエルミタージュ社を創業し、一時は外資系企業でロシア国内トップの資産を保有した。2005年、ロシア国家安全機密に違反したとして、ブラウダー氏は入国を禁じられた。

プーチン大統領は会見で、「ブラウダー氏のパートナーは違法にロシアで50億ドルを稼ぎ、米国に送金した。しかし、ロシアにも米国にも税金を払っていない。彼らは4億ドルをヒラリー・クリントン氏の選挙活動資金として渡した」と述べた。

国際マグニツキー法を成立させた事案に絡むビジネスマン
米国出身で現在は英国籍のブラウダー氏は、プーチン大統領批判を繰り返してきた。このたびの名指し批判に対しても、英タイム誌に17日掲載の文書で反論している。ヒラリー氏への献金について「非常にばかげている、妄想だ」と強く否定した。

またブラウダー氏は、米ロ会談では、米検察が起訴したロシア情報当局者12人と、自分を交換することを求めているとの推察を示した。「しかし、私はすでに英国籍だ。もしプーチン大統領は私をとらえたいならば、テリーザ・メイ首相に言えばいい」と書いた。

19日、ホワイトハウスはトランプ大統領の話として、12人のロシア情報当局者に対するロシアからの取り調べは許可しないと述べた。

英国在住のブラウダー氏は、ロシアにおける脱税で2009年に裁判で懲役9年を言い渡された。同氏のかつての弁護士セルゲイ・マグニツキー氏も同様に脱税で起訴された。マグニツキー弁護士は留置所内で心不全のため死亡した。

マグニツキー弁護士は、ロシア当局内の2.3億ドルの巨額横領事件を指摘していた。弁護士の急死をロシア当局の口封じだと疑う米オバマ政権は、ロシア当局者に対して制裁を科す法案「国際マグニツキー法」を2012年、可決させた。

しかし、ロシアの国営メディア・スプートニク2017年8月によると、米諜報当局の高官は、ブラウダー氏の虚構に基づいて法案が可決したと認識していると報じた。報道によると、謎のハッカー集団が米国務省情報調査局のロシア担当責任者ロバート・オットー氏のメールをハッキングしたところ、オットー氏は、マグニツキー弁護士が告発した横領事件には、明白な証拠がないとつづっていたという。

【私の論評】トランプ氏を馬鹿であると報道し続ける日米のマスコミは、自身が馬鹿であると気づいていない?

このニュースそのうち、国内のメディアが報道すると思っていたのですが、とうとうどこも報道しなかったので取り上げることにしました。プーチン大統領が、米国出身のビジネスマンがロシアで稼いだ資金の一部を、ヒラリー・クリントン側に寄付していたと発言したということ自体は事実です。

この発言は、ブログ冒頭の記事にもあるように、2016年の米大統領選に介入した疑いで米連邦大陪審がロシア連邦軍参謀本部情報局(GRU)の情報部員12人を起訴したことについての質問に対し、プーチン大統領が答えた中で触れたものでした。

ブラウダー氏はロシアでの成功の裏話を暴露する本を出版するなどロシアの不正を告発して、プーチン大統領の怒りを買ったと言われ、同氏の顧問弁護士が逮捕されて獄中死する事件も起きました。

プーチン大統領が米国のロシア疑惑に反論する上でブラウダー氏を引き合いに出したのは、同氏のプーチン政権に対する批判をかわすことと、ロシア情報部員を訴追した米国の情報部員の公平性に疑念を抱かせる狙いがあったと考えられます。

大手投資企業エルミタージュ・キャピタル創業者でCEOのビル・ブラウダー氏

プーチン大統領は、この問題が記者会見で問われることを予想して反論を準備していたのでしょうが、それ以上に「ヒラリーへロシアから4億ドルの寄付」それも「米情報部員が民主党に橋渡し」という爆弾発言に思えました。

ところがである。この爆弾発言は、未だに米国のマスコミには全く扱われていません。米マスコミは、「フェイク(偽)・ニュース」とボツにしたつもりなのかもしれませんが、それにしても、いやしくもロシアの首脳の発言です。

この発言を無視して、今回の首脳会談のトランプ大統領を「ロシアにすり寄った」と批判するだけの米国の大半のマスコミは、はたして報道の公平性を貫いているか首をかしげざるを得ないです。

日本の大手マスコミも米国のマスコミに右にならえで、この件については報道しません。ドナルド・トランプ大統領の「ロシア・ゲート問題」は、すでに実体がないことが明らかになったこともあまり報道されていません。

米国では、昨年からヒラリー・クリントン氏の疑惑が持ち上がっていました。この件も、日本ではほとんど報道されていません。

ヒラリー・クリントン

オバマ政権でヒラリー・クリントン氏が国務長官だった当時、カナダの「ウラニウム・ワン」という企業を、ロシア政府の原子力機関「ロサトム」が買収しました。「ウラニウム・ワン」は、米国のウラン鉱脈の5分の1を保有しており、買収には米国政府の許可が必要でした。

ヒラリー氏はこの買収を積極的に推進し、「ウラニウム・ワン」はロシア政府の傘下企業となった。さすがに共和党保守派は当時、「この売却が米国の国家安全保障を大きく毀損(きそん)する」とオバマ政権を批判したが、企業買収は完了してしまいました。

米国の世界戦略における最大のライバルであるロシアにウラン鉱脈を売り渡すことは、誰が考えても米国の安全保障を損なう。ロシアのプーチン大統領は、世界のウラン・マーケットで独占的な地位を確立するために、この買収を行ったのです。

この件に絡んで、「クリントン財団」は何と、「ウラニウム・ワン」買収の関係者から総額1億4500万ドル(約165億2850万円)にも及ぶ献金を受け取っていました。同財団は慈善団体ですが、事実上のクリントン・ファミリーの“財布同様の存在”です。

しかも、「ウラニウム・ワン」の売却交渉が行われている最中(=ヒラリー国務長官時代)、ビル・クリントン元大統領は、ロシアの政府系投資銀行に招かれて講演を行い、1回の講演で50万ドル(約5700万円)もの謝礼を受け取りました。これは通常の彼の講演謝礼の2倍の金額です。

ビル・クリントン元大統領
また、ロシア政府系のウラン企業のトップは実名を明かさず、クリントン財団に総額235万ドル(約2億6700万円)の献金をしていました。

これらは、「反トランプ派」の代表的メディアであるニューヨーク・タイムズも、事実関係を認めています。

クリントン夫妻の「ロシア・ゲート問題」は今後、さらに追及されて、米民主党やリベラル系メディアに壊滅的打撃を与え、ヒラリー氏が逮捕される可能性もささやかれていました。

今回は、さらにプーチン大統領から、「ロシアからヒラリーに4億ドル寄付」という爆弾発言があったわけです。

以上事実から、日本のマスコミも報道の公平性を貫いているとはいえません。以前もこのブログに掲載したように、米国においてはマスコミのほぼ90%程度をリベラルが牛耳っています。そのため、10%の保守が何かを報道したとしても、その声はかき消されてきました。

ただし、実際には保守系のトランプ氏が大統領になったことからもわかるように、少なくとも米国の人口の半分は保守系の人々によって占められているはずです。しかし、現実にはこれらの人々の声のほとんどがかき消されてきたわけです。

トランプ氏が大統領になって以来、これは少しは改善される傾向にはありますが、まだまだです。日本のマスコミは、このような事情を斟酌して報道すべきですが、そうではなく、こと米国情勢に関しては、米国のマスコミの報道を垂れ流すばかりです。

日米のマスコミには、トランプは馬鹿だという報道を繰り返し行なってきたので、今更馬鹿は馬鹿であり続けるように報道するしかなくなってしまったのかもしれません。しかし、そのような報道をするマスコミ自身が馬鹿であることを気づいていないようです。

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2018年6月12日火曜日

【日本の選択】朝鮮専門家の無見識バレた「米朝会談中止」報道―【私の論評】ドラゴンスレイヤー達の夢は実現するか?中朝首脳会談がすぐ開催されるか否かが今後の鍵(゚д゚)!

【日本の選択】朝鮮専門家の無見識バレた「米朝会談中止」報道

トランプ大統領(右端)をはじめ各国首脳が繰り広げる外交は駆け引きで成り立っている

 米朝首脳会談をめぐって、国内では一喜一憂したような報道が繰り返されている。いまだに実現されていない会談の結果を、あたかも知っているかのように論じる人たちもいるが、まことに滑稽である。

 先日の南北首脳会談で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が終始笑顔であったこと、その他の映像を見て、正恩氏が人格者で人情味のある指導者であるかのように論じる人がいる。一方で、安倍晋三首相率いる日本外交は「蚊帳の外」に置かれていると警鐘を乱打する人まで、多種多様だった。

 冷静に考えれば、親族まで平然と殺戮(さつりく)する人物が、人格者であるはずがない。ドナルド・トランプ米大統領と太いパイプを持つ安倍首相が、「蚊帳の外」に置かれているはずがない。

 しかしながら、冷静になって考え直すべきなのは、この会談の本質である。これは、「米朝友好」や、「東アジアの平和」「正恩体制の維持」などをめぐる各国間の駆け引きであり、その結果は誰にも分からない。話し合いをすれば必然的に友好が訪れるといった類の話では決してない。

 私が最も情けなく感じたのは、トランプ氏が5月24日、正恩氏に「米朝首脳会談を中止する」との書簡を送ったときだ。トランプ氏を不甲斐なく思ったのではない。「これで米朝首脳会談がなくなってしまった」と素直に信じ込む人々が日本ではあまりに多かった。

米朝首脳会談中止を伝えたテレビ報道

 私は注意を喚起すべく、25日のツイッターで次のように指摘した。

 《米朝首脳会議が開催されるといえば、はしゃぎ、中止されるといえば、周章狼狽(ろうばい)する。これでは話にならない。開催すると言ったときに中止の可能性を考え、中止といったときに開催の可能性を考えておくのが政治だろう。日本の朝鮮問題の専門家とやらは、全く見識がないことが白日の下に曝された》

 率直に言えば、私はこの報道に接した際、「これで米朝首脳会談は実現に近づくのではないか」と感じた。両者の真剣さを確認するためのブラフではないかと直感したためだ。

 今回の会談は、平和な時代における紳士と紳士の和やかな話し合いではない。米国大統領史上、相当型破りなトランプ氏と、現代における冷酷な僭主、正恩氏の駆け引きなのだ。首脳会談を開催する、しないをめぐって駆け引きが存在しないはずがない。

 日本にとって重要なのは、この米朝首脳会談に過度な期待をすることでも、過度な失望をすることでもない。日本の同盟国として米国は何をなし、そして何をなすことができないのかを、冷静に見極めることだ。

 すべてを米国に依存するのではなく、戦略的に米国と友好関係を維持するために、日本自身が何をなすべきなのかを、焦ることなく冷静に考え始めることが肝要だ。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員等を経て、現在、大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

【私の論評】ドラゴンスレイヤー達の夢は実現するか?中朝首脳会談がすぐ開催されるか否かが今後の鍵(゚д゚)!

現状のニュースを見る限り、北朝鮮には得るものが多かったようですが、日本にとっては北朝鮮に核兵器が長期間有効なまま残存し続ける可能性が大きく、また拉致問題については提起はあったものの今後の進展は不透明です。壮大な予告編を見せられた感覚を覚えました。そうして、これは予告にもならない可能性もあります。

おそらく、交渉の本当の行方は、今後開催されるであろうポンペオ氏やボルトン氏等が関わる米朝実務者協議で決まることでしょう。

トランプ米大統領に同行してシンガポールを訪問したポンペオ米国務長官は11日、ホワイトハウスを通じて声明を発表し、シンガポールで11日午前に行われた米朝首脳会談を巡る両政府間の実務者協議について、「中身のある詳細な議論を行った」と評価しました。

ポンペオ米国務長官

首脳会談で最大の焦点となる北朝鮮の非核化を巡り、前進があった可能性があります。

ポンペオ氏は「米国の立場は明確で不変だ」と述べ、12日の首脳会談で北朝鮮に、「完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄(CVID)」を求める方針を示しました。「大統領と米国のチームはあす(12日)の会談を楽しみにしている」と期待感も示しました。

今後もこのような実務者協議を何度か重ね、具体的な核放棄の方法や検証の方法などを話し合うことになると考えられます。この段階で決裂するということは十分あり得ます。

今後の実務者協議の決め手になるのは、昨日もこのブログで掲載したように、米国の対中国戦略において金正恩が使い勝手の良い駒になるかどうかです。ポンペオやボルトンなどのドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)たちは当然そのような見方をするはずです。

核兵器を確実に廃棄し、対中国の駒になる覚悟があれば、トランプ大統領は金正恩が米国の駒である限り、北の現体制の存続を認め、核兵器廃棄の後には実質的に米国の核の傘の下に入ることも認めるでしょう。

さらに、日米が北朝鮮に対して経済援助をすることも認めるかもしれません。その時が日本の拉致問題の解決の時です。拉致問題解決なくして、日米の援助なしという形をとることができれば、日本にとってはベストでしょう。

米国はすでにこれに関して、金正恩に踏み絵を用意している可能性があります。それは、今後金正恩が、米朝会談の直後(半年以内)に習近平を訪問して、中朝首脳会談を開催するか否かです。私は、トランプ大統領はこのことに関して、首脳会談中に金正恩に因果を含めたと思います。

中朝首脳会談がすぐ開催されれば北は米国から見放される

中朝首脳会談をすぐにでも実施すれば、米国は北の存続を認めない方向に大きく舵を切るでしょう。無論経済援助などしません。一方、すぐに開催しなければ、北の存続を認めるほうに大きく傾き、経済援助もする方向で検討に入ることでしょう。

半年以内に実際に、米朝首脳会談が開催されなければ、上で述べたことはかなりの確度をもって正しいことといえると思います。

そうして、核廃棄が終了した後には、北朝鮮が米国の対中国の最前線基地となり、将来的には米軍が駐留することもあり得るかもしれません。

米国のドラゴンスレイヤーたちはそのような日が来るのを夢見ているのかもしれません。

これは、私の想像ですが、ドラゴンスレイヤー達は、台湾と朝鮮半島の両方を中国に対抗するための最前線にすることを狙っているに違いないと思います。

米朝首脳会議が開催されるかされないかで一喜一憂するような人々は、このようなことは考えもつかないのだと思います。

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2017年10月17日火曜日

若者は保守化しているのか 雇用改善で政権支持の実態、左翼色強い報道にも縁遠く―【私の論評】まもなく実質賃金も上昇しはじめ、吠え面をかく反安倍派?

若者は保守化しているのか 雇用改善で政権支持の実態、左翼色強い報道にも縁遠く
 毎日新聞の記事で、20代以下と30代の若者に内閣や自民党の支持者が多かったという調査結果が紹介されている。「政治的な知識不足」「現状維持を望む」といった解釈のほか、「雇用の売り手市場」なども要因とされているが、若者は保守的なのだろうか。

 この種の調査では現時点での傾向はつかめるが、変化については経年的な調査の方が分かりやすい。

 そこで、内閣府で継続的に行われている「外交に関する世論調査」を参考にしてみよう。

 日本で「保守化」や「右傾化」とされる代表的な特徴は、中国への態度である。この調査では「中国に親しみを感じる」割合について、年代別の経年変化が分かる。全世代でみると、中国に親しみを感じる割合は、1978年の調査開始以降、85年6月には75・4%だったが、それ以降低下し始め、95年10月に5割を切り、直近の2016年11月では16・6%(20歳以上)まで下がっている。

内閣府が2016年12月26日に発表した外交に関する世論調査より グラフはブログ管理人挿入以下同じ
 世代別の数字をみると、1999年10月では全世代で49・6%、20代で48・9%、60代で47・4%と、ほとんど差はなかった。しかし、直近の2016年11月では、全世代で16・6%、20代(18、19歳を含む)で31・1%、60代で12・8%と世代間の差が大きい。このデータでは若い世代ほど「保守化」「右傾化」していないことが分かる。

 一方、自民党支持についてみてみると、若い世代ほど支持する割合が高くなっている。より正確にいえば、若い世代は、それほど「保守化」していないが、自民党支持が強いと説明することができる。

 もっとも、これは自民党というより、第2次安倍晋三政権の特徴だといえる。実際、民主党への政権交代を許したときや、第1次安倍政権の際にも、若い世代は自民党支持は多くなかった。

 なぜ、それほど「保守化」していない若い世代に自民党支持が多く、「保守化」している老齢世代で自民党支持が少ないのか。筆者が思うに、若い世代は雇用を重視し、情報はネットなどテレビ以外から入手する。一方、老齢世代は雇用の心配がなく時間はあるが、情報を主にテレビに頼っているからではないだろうか。

昨年の結果より作成、「もりかけ問題」で一時、内閣支持率は
下したが最近はこのグラフに近いかたちになっている
 大学教員をしている筆者には切実な問題だが、大学生にとっての最大の関心事は就職である。初めての就職がうまくいくかどうかが、その後の人生を決めるともいえる。

 民主党政権時、残念ながら就職率は低く、就職できない学生が多かった。ところが、安倍政権になってから就職率は高まり、今では就職に苦労していない。正直なところ学生のレベルが以前と変わっているわけではなく、政策によってこれほどの差があるとは驚きだ。

 しかも、今の学生の情報入手はネットが中心で、左翼色が強く政権批判が多いテレビをあまり見ない傾向がある。そうした意味で老齢世代と若い世代は正反対だ。

 安倍政権の金融緩和と表裏一体の雇用重視は本来、左派政策なので、「保守化」していない若者にも受けるのだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】まもなく実質賃金も上昇しはじめ、吠え面をかく反安倍派?

若者が、内閣を支持する理由として、高橋洋一氏は若者は雇用が良くなったことを評価し、情報入手はネットが中心であることをあげています。そうして、中国への態度から若者は決して保守化しているわけではないことを主張しています。私もそう思います。

ブログ冒頭の、高橋洋一氏の記事にでてくる、毎日新聞の記事を以下にそのまま引用します。
<衆院選>若者層は保守的? 内閣・自民支持多く…世論調査  
 衆院選公示を10日に控え、国政選挙では、昨年夏の参院選から選挙権を得た、18歳以上の10代の若者が今回初めて衆院選に臨む。総務省によると、前回参院選で10代は40歳前後の世代と同程度の46.78%が投票し、投票意欲は決して低くはない。各党とも新たな票田として注目しているが、各種の統計や専門家の分析によると、10代から30代までの比較的若い世代で政治意識が保守化していると言われる。全国各地の10代有権者10人にその背景を聞いてみた。【大隈慎吾、水戸健一、野原寛史】 
 毎日新聞が9月に2度実施した全国電話世論調査(9月2、3日と同26、27日)によると、全体として20代以下(10代を含む)と30代は、40代以上の高齢層に比べて内閣支持率も自民党支持率も高い傾向を示した。 
 最初の調査では20代以下の内閣支持率5割弱に対し、70歳以上や40代は4割台、他の世代は3割台どまりで、20代以下の高さが際立った。2度目の調査でも20代以下と30代は4割台で、40代以上は3割台にとどまった。 
 年代別の自民党支持率も、最初の調査は20代以下が4割弱と最も高く、30~60代の2割台と好対照。2度目も20代以下は3割程度で、30~60代は2割台だった。 
 こうした傾向について、10代有権者の多くは「何も知らないままなら、有名な候補に」などと政治的な知識不足を背景にあげた。福岡市の男子大学生(19)は「知らないし、わからないと現状維持で問題ないと考えるからではないか」と話す。 
 「関心のない人がとりあえず名前を知っているから入れている」「自分の主張がないから、支持者の多い方に流される」などと同世代に厳しい指摘もあるが、「民主党政権はマニフェストも達成できず、インターネットの発達で失敗も隠せない」「安倍(晋三)首相はリオ五輪閉会式のスーパーマリオの演出など見せ方もうまい」といった声も聞かれた。 
 世代間の違いを指摘する声も出た。北海道の男子大学生(19)は「自分たちは子供のころから雇用難。安倍政権で景気や雇用が改善し、わざわざ交代させる必要もないと考えているのでは」と話す。 
 大阪市の予備校生(18)は「私の祖父母は野党側の考えに近いが、若い世代は安保闘争のような大きな政治運動の経験がない。野党の政策はどこか理想主義的で、現実的な対応をしてくれそうな自民がよく見える」と解説した。 
 有権者の政治意識や投票行動を研究する松本正生・埼玉大社会調査研究センター長によると、他の各種世論調査でも10代を含む若い世代で内閣や自民党の支持率が高い傾向にあり、男性が女性よりも高いという。松本さんは「安倍首相のきっぱりとした物言いや態度に若者が好感を抱き、ある程度の固定ファンがいるのではないか。大企業や正社員を中心とする雇用の売り手市場や株高の現状が続いてほしいという願望が、若い世代で強いのだろう」と話す。 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171009-00000010-mai-soci
若者は保守的と指摘する毎日新聞の記事は、若者はモノを知らない馬鹿者と言っているようなものです。モノを知らないのはどちらなのかと言いたくなります。

このような批判をすると、以下のようなグラフを提示して、2010年半ばからエンゲル係数が急上昇しているなどの批判をする人もいます。

これについては、いろいろ調べたところ、田中秀臣氏が最も理解しやすい反論をしていました。それを以下に掲載します。
エンゲル係数の推移を見ると、平成元年から平成16年(2004年)にかけて低下していましたが、平成21年(2009年)以降上昇しています。これは、エンゲル係数が、世帯主が60歳以上の高齢の世帯では高い傾向があるため、高齢化に伴って高齢の世帯の割合が上昇していることなどが全体のエンゲル係数の上昇にも関係しているのです。 
それと所得が上昇して外食が増えるとエンゲル係数が上昇したりもするのです。エンゲル係数は基本的に高齢化の進展でこれからも上昇トレンドにあると思いますが、その他の要因でも影響がおこるといえます。 
 エンゲル係数という一部分を取り出して、現在よりも民主党政権時代の方が暮らし向きがよかったという見方は、 
1)民主党政権時に失業率が高率(見かけ失業が減る傾向が始まったかのようにみえてもそれは求職意欲喪失者が増えたため=景気の悪化が深刻で職をさがすこと自体をあきらめたから)であったことをみていない 
2)民主党政権時に経済的自由での倒産件数の比較にならないほどの多さを無視 
3)現段階での自殺者数の減少を無視(民主党政権時よりも安倍政権の下の方が減少率はるかに拡大) 
4)最低賃金の上昇も無視などさまざまに列挙できるものを無視しています。さらに最近では、雇用回復の中での実質賃金上昇もみられます。民主党政権時では、雇用悪化の中での実質賃金上昇があったのですが、それは採用コスト増加で失業者増加をもたらしました。 
安倍政権を批判するならば、現在のアベノミクスのうちリフレ政策をさらに意欲的に実行せよ、というのがまともな批判の方向でしょうが、そういう話にはならず、批判のための批判しかできない人達が多いようです。
以上、田中秀臣氏の反論にでてくる指標のグラフを以下に掲載します。

就業者数については、どうみても安倍政権になってから増加しています。

倒産件数も、安倍政権になってから持続して減っています。


自殺者数も、安倍政権になってからかなり減っています。


実質賃金については、安倍政権になってから下がっています。直近では多少あがっています。

これは、反安倍派にとっては、格好の突きどころですが、これも先程のエンゲル係数のように、反安倍派は他の重要なことを見落としています。

それまで、金融引締めで雇用が悪化していた状況でご存知のように、2013年から日銀は金融緩和に転じました。そうすると、何がおこるかというと、比較的低賃金のパート・アルバイト、正社員も比較的低賃金の新卒や若年層から雇用が増えます。

そのため、マクロ経済学では、金融緩和をした直後には、雇用は増えるものの、実質賃金が下がるということが知られています。まさに、安倍政権になってからの実質賃金の低下はこれで説明ができます。

これは、大企業が業容を拡大するときにも似たような現象がおこります。たとえば、流通関係の企業で、景気が良いので、さらに利益をあげようと、店数を増やせば、店に配置する相対的に低賃金のパート・アルバイト、新卒を増やすことになります。

そうなると、どうなるかといえば、会社全体での平均賃金は下がります。金融緩和をして、実質賃金が下がるのはこれと同じようなものです。

新卒や非正規(主婦パート・アルバイト、高齢者再雇用)などの人たちが増えればその人たちの名目賃金は低いです。これらの雇用が増えていれば、インフレ率との見合いで実質賃金が下がることは明白です。実質賃金の低下で政府の経済政策は失敗と判断するのは明らかに間違いです。

しかしけ現状どおり金融緩和政策が続けば、次の段階では、人手不足となり、安定して人員を確保しようとすれば、当然のことなが、企業も賃金があげなければならなくなります。その動きが多くの企業にまで広がれば、全体の実質賃金もあがることになります。

一つ付け加えておくと、本来は実質賃金は今頃は確実にあがっていたはずなのですが、残念ながら2014年4月から、消費税増税をしてしまったため、個人消費が冷え込み、それが企業業績にも悪い影響を与えたため、雇用情勢は良くなりましたが、実質賃金上昇にまではいたりませんでした。

しかし、この状況は長くは続きません。最近実質賃金が多少あがっているのはその予兆です。しばらく、雇用者数が増え、実質賃金が減少する状況が続きしまた。いずれ、女性や高齢者などの雇用にも限界がくるでしょう、そうなると企業としては、人材を確保するためには、賃金を上げざるを得なくなります。その時期は近いです。

最後に、安倍総理が10%増税を前提として、増税分の税収の使いみちについて言及したことをもって、安倍総理は10%増税すると早合点している人もいるようですが、安倍総理は税収の使いみちについて言及しただけであって、増税するとはっきり言及したわけではありません。

このブログでは、8%増税分の税収が、社会保障にあまり使われることなく、財務省がありもしない政府の借金返済につかわれている実体をあげて、安倍総理はこれを批判しているのだという見方を紹介しました。実際そうだと思います。

次の10%増税の時期まで、北朝鮮情勢の悪化が続いていれば、政府としては北朝鮮情勢悪化のため、増税は延期ということで、三党合意による増税法案を廃案に追い込むのはたやすいことでしょう。

さらに、もし北朝鮮情勢にかたがついていたとしても、三党合意の一党である民主党が、現状では民進党と名称を変更し、半分消滅したような状況にあり、2年後には完全消滅しているかもしれません。そうなると、増税法案を廃案に追い込むのはたやすくなります。

いずれにせよ、10%増税は今から二年後のことです。安倍総理も朝鮮半島有事が間近に迫っていることから、現在は今でも政治勢力として強大な財務省と事を構えるのは避けたいと考えているのでしょう。財務省も、北朝鮮有事に備えることに協力して欲しいと考えているのでしょう。

そんなことから、現在の選挙では増税は争点と見るべきではないことを最後に付け加えたいと思います。

現在、増税凍結宣言を早々と行った、維新が苦戦しているのをみると、実際そうなりつつあるようです。

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