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2020年5月30日土曜日

トランプ氏、香港の優遇措置見直し WHOと「断絶」も―【私の論評】日欧は香港問題で八方美人外交を続ければ、英米加豪に相手にされなくなる(゚д゚)!


対中国の制裁措置を発表するトランプ米大統領=29日

 トランプ米大統領は29日、ホワイトハウスで記者会見し、中国が香港に国家安全法の導入を決めたことに関し「香港の高度な自治は保証されなくなった」と述べ、米国が香港に対し認めている優遇措置を見直す手続きに着手すると表明した。トランプ氏はまた、世界保健機関(WHO)について、新型コロナウイルスをめぐって中国寄りの対応をとったとして「関係を断絶する」と述べ、脱退を表明した。

 新型コロナ危機に乗じて香港などに対する強権姿勢や南シナ海などで覇権的行動を打ち出す中国に、米国が正面から対決していく立場を鮮明にしたもので、米中の対立が一層激化していくのは確実だ。

 トランプ氏は、中国の全国人民代表大会(全人代)が香港に国家安全法を導入する「決定」を採択したことに関し、「中国は香港に約束していた『一国二制度』を『一国一制度』に変えた」と非難した。優遇措置の見直しの対象は、関税や査証(ビザ)発給など「ごく一部を除き全面的なものになる」としている。

5月27日、香港立法会の本会議に出席した民主派の陳淑荘議員

 トランプ氏はまた、「香港の自由の圧殺」に関与した中国や香港の当局者に制裁を科すと表明した。

 米国務省の香港に対する渡航勧告も中国と同等とし、滞在中に「監視を受ける危険が増大する」との文言を明記するとした。

 新型コロナへの中国の対応に関しても、中国が忌避する「武漢ウイルス」の用語をあえて使用し、「中国がウイルスを隠蔽(いんぺい)したせいで感染が世界に拡大し、米国でも10万人以上が死亡した」と訴えた。

 WHOに関しては「中国に牛耳られている」「米国の組織改革の要求に応えていない」などと批判。年間4億5千万ドル(約480億円)規模とされるWHOに対する米国の拠出金については「他の保健衛生関連の国際組織に振り向ける」とした。トランプ氏は今月18日、WHO事務局長に「30日以内に組織を改革しなければ米国は資金拠出を恒久停止する」と警告していた。

 またトランプ氏は会見で、米株式市場に上場している中国企業の透明性向上に向け「特異な行為」をしていないか作業部会で検証すると語った。

 さらに、中国人の学生らが米国内の大学や研究機関で技術窃取を繰り返してきたと非難。記者会見後は、中国人民解放軍に連なる研究機関に所属する大学院生の米国への入国を禁じる大統領布告に署名した。

【私の論評】日欧は香港問題で八方美人外交を続ければ、英米加豪に相手にされなくなる(゚д゚)!

一国二制度の破壊で香港は中国の一地方都市となったのですから、特別優遇の廃止は当然のことです。しかし、それでは中国は、国際金融と貿易における香港の特別地位を失って経済が沈没するのは必至です。中国は、資金調達と対外貿易の重要な窓口を失うことになります。いつものことだが、習近平の愚挙は、結局自分たちの首を絞めることになるだけです。

トランプ米大統領が29日の、声明要旨は次の通りです。

■新型コロナの情報隠蔽

米国は中国との開かれた、建設的な関係を望んでいるが、その関係を実現するには米国の国益を精力的に守る必要がある。中国政府は米国や他の多くの国々への約束を破り続けてきた。中国による「武漢ウイルス」の隠蔽により、疾病は世界中に拡散した。世界的な大流行を引き起こし、10万人以上の米国民、世界中で100万人以上の命が失われた。

■WHOとの関係断絶へ

中国は世界保健機関(WHO)を完全に支配している。彼らは我々が要請した必要な改革を実施しなかったため、本日、WHOとの関係を断絶する。資金の拠出先は世界的でふさわしい、他の差し迫った公衆衛生ニーズに振り替える。

■産業機密保護へ入国制限

中国政府は長年にわたり、米国の産業機密を盗む違法なスパイ活動を行ってきた。本日、私は米国の極めて重要な大学の研究成果を保護するため、潜在的な安全リスクとみなす者の中国からの入国を停止する布告を出す。

■中国上場企業の慣行調査

さらに米国の金融システムの健全性を守る措置を取る。金融市場に関するワーキンググループに対し、米国の市場に上場している中国企業の慣行を調査するよう指示する。

今週、中国は香港の安全に一方的な統制をかけた。これは、1984年の宣言で英国と結んだ条約に対する、中国政府による明確な義務違反だ。

■香港の自治侵害は条約違反

中国による最近の侵害と、香港の自由を悪化させたその他の出来事をみれば、中国への返還以来、米国が香港に与えてきた優遇措置を続けるための正当な根拠となる自治がないのは明らかだ。

中国は、約束した「1国2制度」方式を「1国1制度」に置き換えた。このため私は米政権に、香港を特別扱いしてきた政策をやめるプロセスを始めるよう指示する。本日の私の発表は、犯罪人引き渡し条約から軍民両用技術の輸出規制まで全ての範囲の合意に影響する。

香港への渡航勧告についても、中国治安当局による刑罰や監視の危険の増加を反映して見直す。

■関税など優遇措置を撤廃

関税や渡航の地域としての優遇措置も取り消す。香港の自治侵害と、自由の抑圧に直接的または間接的に関与した中国と香港の当局者に制裁を科すのに必要な措置を取る。

香港の人々は、中国が活動的で輝く香港の街のようになることを望んでいた。世界は、香港が中国の未来像の一端であるとの楽観的な思いに打たれたのであり、香港が中国の過去の姿を映すことを期待したのではなかった。

以上

国連安全保障理事会は29日、中国政府が香港に「国家安全法」を導入する方針を決めたことを受け、米英両国の提起で香港情勢について非公式に協議しました。米国は中国に方針転換を求め、全ての国連加盟国に米国に同調するよう要請。猛反発した中国が内政干渉の即時中止を米英に要求し、議論は平行線に終わりました。

米英中の各国連代表部は協議後、それぞれ声明を発表。それによると、クラフト米国連大使は、安保理理事国に「中国共産党が国際法に違反し、香港の人々に考えを押し付けることを許すのか」と問い掛けました。

アレン英国連臨時代理大使は、「中国が立ち止まり、香港や世界が抱いている深刻かつ正当な懸念について省察するよう期待する」と求めました。

これに対し中国の張軍国連大使は、「香港問題は純粋な中国の内政問題であり、外国の干渉は認められない」と強調。29日の討議に関しても安保理として「正式」に協議を行ったわけではないとくぎを刺し、「香港を使って中国に内政干渉しようとするいかなる試みも失敗する運命にある」と主張しました。

中国の張軍国連大使

新型コロナウイルスの世界的流行をめぐり深まっていた米中対立は、香港問題を受け一段と悪化しました。ともに常任理事国である米中間の亀裂により、安保理が具体的行動を取るのは困難な情勢です。

このような情勢はなぜか日本では、あまり深刻に受け止められていないようです。

日本には「中国に制裁をほのめかして、この立法を阻止しなければならない」と主張するような政治家はいないのでしょうか。今回の一連の出来事は、米中新冷戦が熱戦(直接的な武力行使)の入り口に近づくくらいのインパクトがあるものと受け止めるべきです。

中国に帰属する自由都市・香港は、長らく西側の自由主義社会と中華全体主義社会をつなぐ回廊の役割を果たしてきました。多くの金と人が香港を通じて行き来していました。
その香港を潰すということは、中国は西側社会との決別を決心したということです。日本やEU諸国の出方はまだ不明ですが、本当に香港に対するビザや関税の優遇が取り消され、中国への経済制裁が行われることになれば、次に起こりうるのは冷戦ではなく熱戦の可能性もあります。
中国党内には、最近、トランプが中国に戦争を仕掛けてくる、という危機論があるようです。日本に真珠湾攻撃をさせたように、巧妙な情報戦で中国を追い詰め、戦争を仕掛けさせるつもりだ、といった意見を語る人間もいる程です。

台湾への米国の急接近もその文脈で説明する人がいます。だから挑発に乗らないようにしよう、という話にはならず、そうなら米国から先に手を出させてやる、と言わんばかりの「戦狼外交」(挑発的、恫喝的、攻撃的な敵対外交を指す)で対抗するのが今の習近平政権です。

こういう局面で、今や世界は一寸先は霧の中に入ったといっても過言ではありません。

香港国安法が制定されば香港はどうなるでしょうか。「香港暴動」が仕立て上げられて、軍出動となるかもしれないし、そうならないかもしれないです。ただし、中国唯一の国際金融市場が消滅するのは確かです。多くの香港知識人や社会運動家やメディア人や宗教家が政治犯として逮捕の危機にさらされ、政治難民が大量に出るでしょう。

香港の旺角地区で、民主派デモ隊による道路封鎖を阻止する警官隊(2020年5月27日)
米英が香港国安法を批判するのは、中国の国家安全部が、これから、徹底的に香港民主派市民を人権も無視して弾圧することを知っているからです。中国は、香港問題は中国の内政問題と主張しています。

しかし国際法では、人権問題に絡む干渉などは内政干渉ではないとされています。ただし、国際法をこれまでも無視してきた中国にとっては、トランプの今回の声明は、内政干渉以外のなにものでもないようです。

台湾蔡英文政権は、それを見越して、政治難民の受け入れも想定した「可能な人道的援助」に言及しています。今年1月に再選を果たしてから、新型コロナ感染対応を経て、自信をつけた、蔡英文は見違えるほど頼もしくなりました。言うべきときに言うべきメッセージを国際社会に発しています。

つい先日もこのブログで主張したように、日米をはじめとする先進国は、台湾が香港を吸収する形で香港の国際金融都市としての役割を肩代わりできるようにすべきです。また、全体主義国家が常任理事国として名をつなれているような、国際連合(連合国)などは、捨て去り、新たな国際組織を設置すべきです。

従来は主に米中の戦いとみられていた米中冷戦ですが、香港情勢等を巡って徐々に対立軸がはっきりして来ています。今まで英国は、はっきり態度を表明していませんでしたが、さすがに香港の事になると、英国も銭より価値観を選ばざるを得なくなったようです。

英米加豪は対中国でまとまったので、後はEUと日本はどうするかという状況になってきました。日本とEUは、八方美人外交を続ければ、英米加豪に相手にされなくなる覚悟を決める時がやってきたようです。

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コロナで分かった中国より優れたパートナー台湾―【私の論評】国際金融センターは不安定な香港から台湾に移せ(゚д゚)! 

2019年10月28日月曜日

アルバグダディ排除がトランプのシリア撤退に対する民主党の断固とした率直な批判に一石―【私の論評】劇的に有利となったトランプ氏の大統領選(゚д゚)!

アルバグダディ排除がトランプのシリア撤退に対する民主党の断固とした率直な批判に一石

排除されたISの指導者アブ・バクル・アルバグダディ

<引用元:FOXニュース 2019.10.27

27日、トランプ大統領がイスラミック・ステートのアブ・バクル・アルバグダディ指導者の排除作戦に成功したことで、民主党に混乱が生じている。複数の党幹部は最近、ホワイトハウスはシリアでの米国撤退後にテロ組織と戦うための「確かな計画」を持っていない、と公に不満を漏らしていた。

民主党のメッセージが裏目に出たことを印象付ける兆しとして、NBCの「サタデー・ナイト・ライブ」は、トランプがISISのために「雇用」を生み出したと示唆するタイミングの悪いコントを放送していた――大統領が記者会見を開いてアルバグダディの死亡を発表するわずか数時間前のことだ。コントはシリア北西部での2時間にわたる深夜の急襲が実行されている頃に放送されていた。

「民主党がこれについて何というべきか考え出そうとリアルタイムで悪戦苦闘しているのを見るのは、本当に興味をそそる」とジャーナリストのグレン・グリーンウォルドは27日に話した。「彼らは愛国的で反ISISでありたいと思っているが、(ウサマ・ビンラディンのことで)オバマを褒めちぎったことと矛盾しないようにトランプを中傷する方法も必要としている。容易な綱渡りではない。健闘を祈る!」

その日、民主党は――ナンシー・ペロシ下院議長、上院外交委員会幹部のボブ・メネンデス、ジョー・バイデン元副大統領を含めて――新戦略に落ち着いたようだ。歴史的急襲を実行した兵士を称賛しながら、多少なりとも大統領を称賛することをあからさまに避けたのだ。

民主党の一部では、ロシア軍は空域が利用できるように通知されていたのに、自分たちは作戦のことを事前に知らされなかったという不満の声もあった。民主党議員が実施している大統領の弾劾調査は、メディアへの情報のリークが多かったが、大統領は27日、急襲前に民主党議員に知らされなかったのは、作戦がリークされる懸念があったためだと示唆した。

「特殊部隊とインテリジェンス・コミュニティ、そして勇敢な軍の専門家がテロリストのアブ・バクル・アルバグダディに裁きを下したことについてお祝いを述べる」と、2020年にトランプの座を奪おうとしている多くの民主党の1人であるバイデンは述べた。またバイデンはトランプに「ISISが再結集したり、米国に再び脅威をもたらすことを防ぐために圧力を保つ」よう求めた。

一方ペロシは「軍とインテリジェンス専門家の勇敢な行為、献身、技能」を称賛し、「地域のパートナーの働きに感謝の念を示し」、それからトランプが「シリアのクルド人パートナーに対するトルコの侵攻にゴーサインを出した」ことを非難した。

ところが2011年5月にオバマ大統領がウサマ・ビンラディンの死亡を発表した時、ペロシは最高司令官を称賛するのをそれほど渋っていなかった

コメンテーターの中には、ワシントン・ポストもビンラディンが殺された時と異なる基準を27日に適用したと指摘する声もあった。同紙の注目を集めた、修正後の見出しは「イスラミック・ステートを指揮する厳格な宗教学者、アブ・バクル・アルバグダディが48歳で死亡」というものだ。

同情的な死亡記事ではテロ指導者を、「サッカー好きだが自由な時間を地元のモスクで過ごすのを好んだ内気で短絡的な若者」と説明し、「組織の過激主義的な見方と悪質な戦術にもかかわらず、バグダディ氏は指導者として抜け目のない実用主義を保った」と指摘した。

だが2011年、ビンラディンの死を発表したワシントン・ポストの見出しでは、きっぱりと「テロ組織」の指導者と呼んでいた。

ペロシは27日の声明の中でさらに、「下院は議会指導部ではなくロシアが事前に通知されたこの急襲について、また地域での政権の総合的な戦略について説明を受けなければならない」と要求した。

そうした不満はすでに、ツイッター上で進歩主義のコメンテーターとジャーナリストの間で共感を呼んでいた。CNBCのジョン・ハーウッド記者は、「トランプはペロシに事前に話しておらず、ペロシが機密情報を守ると信頼していなかったということだ。ペロシは情報委員会の民主党幹部だった。・・・トランプはホワイトハウスでロシア高官に機密情報を与えた」と述べた。

メネデス(民主党、ニュージャージー)に関しては、やはりトランプを称賛したり、敬意を表したりすることは避け、その代わりに「米国人の命を無慈悲に奪い、中東の人々を恐怖に陥れ、地域の平和と安全を脅かした残忍な殺人者に対する攻撃を成功させた軍隊の男女」を称賛した。

メネデスは、作戦が「我が国を守るために日々命を懸ける軍人の勇気の証拠であり、シリア民主軍とイラク軍を含めて、現場の信頼でき能力のあるパートナーと共に、米国の持続するリーダーシップが重要であることをはっきり思い出させてくれるものだ」と述べた。

また一方で共和党は、ISIS指導者の死をテロ組織に対するトランプ政権のキャンペーンの頂点と呼んだ。イラクを占領していたいわゆるISISカリフェイト(カリフ制国家)は、地域の米軍と同盟軍からの空軍力の集中攻撃で大部分が崩壊した。

共和党テネシー州のマーク・グリーン下院議員は、下院国土安全保障委員会のメンバーであるが、急襲を実行した兵士を称賛し、「いうまでもないが、私は大統領を称賛する。・・・今朝の大統領の声明は素晴らしかった」と述べた。

他の共和党員も、幾分控えめな表現ではあるが同じ感情を表した。

「トランプ大統領とトランプ政権はすでにISISという蛇の体の大部分を打倒していた。だが昨日、バグダディを殺したことで蛇の頭を切り落とした」と共和党テキサス州のジョン・ラトクリフ下院議員は、FOXニュースの「サンデー・モーニング・フューチャーズ」に語った。

下院司法委員会の共和党幹部であるジョージア州のダグ・コリンズ下院議員は、急襲前に民主党議員に知らせないというトランプの判断は正当だと示唆した。

「現在ISISに注目する人々は誰でも、窮地に陥って自爆した自分たちの指導者に注目するはずだ」とコリンズは話した。コリンズは「もっと重要な話」は、トランプが「シリアに関して情報委員会から情報を得られない」ことであり、「この10カ月間弾劾支持者によって攻撃され、嫌がらせを受けてきたこの大統領が、こうしたことが全て下院で行われている間に、委員会を遮断したということを示している」と続けた。

混乱が始まったのは、トランプが27日の朝、国民に演説を行ってからのことだ。大統領はその時ISIS指導者――トランプが「腰抜けのけだもの」と呼ぶ悪名高い殺人者でレイプ犯――が、「悪質で暴力的に、臆病者として、逃げ叫びながら」死んだと発表した。

米国特殊部隊がイドリブの居住地を急襲した際に、アルバグダディは自爆用のベストを起爆させ、子供3人を道連れに自殺したとトランプは述べた。

「バグダディの多数の戦闘員と仲間が一緒に殺されたが、作戦では1人も犠牲者が出なかった」とトランプは発表し、米国がISISに関する「非常に敏感な」資料を回収したと付け加えた。トランプはそれから米部隊のことを「君たちは世界中で本当に最高だ」と述べた。

トランプは、アルバグダディは米部隊にトンネルに追い詰められて死亡し、ISIS指導者は「ずっとめそめそと泣き叫んでいた」と述べた。

【私の論評】劇的に有利となったトランプ氏の大統領選(゚д゚)!

2017年にトランプ大統領がシリアを攻撃したときには、共和党は無論のこと、民主党からも大絶賛されました。それについては、このブログにも掲載しました。以下にその記事のリンクを掲載します。
トランプ大統領のシリア攻撃をクリントン氏も支持―【私の論評】米民主党・メディアがトランプ大統領の政策をなぜ支持したのか理解不能の民進党(゚д゚)!
    米駆逐艦ポーターが地中海から行ったシリアへのミサイル攻撃。
    米海軍提供(2017年4月7日撮影・公開)

この記事は2017年4月9日のものです。 詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
 4月4日、トランプ大統領がシリア政府軍の化学兵器使用への制裁として、59発のトマホーク巡航ミサイルによるシリアのシャイラト空軍基地への攻撃を断行した。 
 この攻撃は米国内で共和、民主の両党側から幅広く支持されている。トランプ氏の施策が両党側からこれだけ支持されるのは、1月に大統領に就任して以来初めてである。この展開を機に、トランプ政権に対する一般の評価にも変化が起きるかもしれない。
米国では、米国の敵とみなされるような敵に対してこのような攻撃を敢行して、成功を収めた場合、与野党に限らず、超党派で称賛の嵐が起こることがあります。

当時はトランプ政権のシリア攻撃を手放しで絶賛していたクリントン氏

このようなことは、日本では耐えて久しいことなので、このブログにもとりあげ、解説したものです。最近の日本の野党は、与党政権が何をしても、反対するばかりで、なにか良いことをしたとしても、全く評価しないどころか、良いことに関しても、重箱の隅をつつくように、なにやら良くないところを探して批判するばかりです。

この記事では、そうした日本の野党の異常ぶりについて解説しました。

しかし、上のFOXニュース記事を読んでいると、最近の米民主党は日本の野党とあまり変わりないようです。本来なら、米国の敵、世界の敵である、アブ・バクル・アルバグダディが排除されたのですから、これは両手をあげて喜ぶべきことです。

しかし、なんというか余裕がないというか、とにかくトランプ大統領やトランプ政権を称賛する声は、米国民主党からは、ほとんど漏れ聞こえてきません。

これは、米国の民主党も日本の野党のように、余裕がなくなってきたということを示しているのではないでしょうか。日本の野党の場合は、どうあがいても、政権を奪取することなど、誰がみても明らかです。何かを変えない限り、とても政権与党になることなど、考えられません。

米国民主党もそれに近いような状態になっているのではないでしょうか。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプは大差で再選される──最も当たる調査会社が予測―【私の論評】現時点で、トランプの再選はないと、どや顔で語るのは最悪(゚д゚)!
フロリダ州オーランドの選挙集会で再選への出馬表明をしたトランプ大統領夫妻(6月18日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみ引用させていただきます。
今年はじめの複数の調査会社の調査結果や、今回のムーディーズ・アナリティカの調査においても、トランプ大統領が大統領選で大差で再選されると予測しているわけですから、よほどのことがない限り、トランプ氏が再選されるとみて間違いないのではないでしょうか。 
ただし、選挙は水ものですから、最後の最後までどうなるかはわかりはしません。ただし、現時点で、トランプは弾劾されるとか、トランプの再選はないと、さしたる裏付けもないにもかかわらず、日米のテレビや新聞の情報だけで判断して、どや顔で語るのはやめておいたほうが良いと思います。 
はっきりいいますが、そのようなことをすれば、馬鹿と思われるだけでなく、信用を失います。
大統領選においては、不利このような状況ですから、米民主党が焦燥感を感じるのも無理からぬところがあると思います。

米国においては、大手新聞は全部リベラルであり、大手テレビ局はFOXニュースを除いた他局もリベラルです。大手新聞も大手テレビ局も、どちらかといえば民主党よりです。その他、教育機関もエンターティンメント業界も、民主党よりです。

そのため、共和党よりの声など、あまり新聞やテレビなどでも報道されません。共和党の中でも保守派の声などかき消されてしまいます。

だから、トランプ政権が登場したばかりの頃は、トランプが大統領に選ばれたのは、番狂わせくらいの感覚があったのでしょう。米国民主党としては、次の大統領選挙では当然のことながら、また民主党が勝ち、政権を奪還できるに違いないという楽観的な気分があったのだと思います。

そうして、米国でも日本でも、米国民主党よりのメディアがトランプ氏についてのネガティブな情報を大量に流すので、多くの人が無意識に「トランプ不利」と思い込んでいるところがあるのですが、そうではないことが、様々な調査機関の調査の結果より明らかになっています。だから、米民主党は相当の危機感を持つようになったのでしょう。そこにきて今回の、アルバグダディ排除です。

これから行われる世論調査で、トランプ大統領の支持率がさらに、上がるのはまず間違いないでしょう。

2011年5月、米軍がアルカイダの首領ウサマ・ビンラディンのパキスタン国内の隠れ家を急襲して殺害した時も、当時のオバマ大統領の支持率が急上昇しました。殺害発表の翌日ワシントン・ポスト紙が行った世論調査で同大統領の支持率は56%で9ポイント上昇し約1年半ぶりの高水準になりました。


当時オバマ大統領は1期目でしたが内政、外交共に手詰まりで、前年に行われた中間選挙では民主党が大敗し2012年の再選選挙も危ぶまれる状況にありましたが、この支持率回復で体制を立て直し、共和党のロムニー候補を大差で破って再選を果たしています。

この時、オバマ大統領は再選に向けての活動を開始した直後のことだったのでこのビンラディン殺害作戦は「選挙対策」ではないかとも言われました。現に、この作戦に参加した米海軍特殊部隊SEALの隊員の一人マット・ビソネッティ氏は雑誌「ワイヤード」電子版にこう語っていました。

「我々はこの作戦が選挙のためだと知っていました。我々は道具箱の中の道具みたいなものなんです。我々の作戦が成功すれば、政治家はその成果をできるだけ膨らませ、自分たちの功績にします」

さらに2003年12月、湾岸戦争の敗北の後逃亡していたサダム・フセイン元イラク大統領が隠れ家の地下穴に隠れているところを米軍に確保され米国民への「大きなクリスマス・プレゼント」と言われたことがありました。この時もジョージ・ブッシュ(子)大統領は翌年の再選選挙で苦戦が予想されていましたが、この一件をきっかけに支持を取り戻し民主党のジョン・ケリー候補に激戦の末勝利していました。

今回のアルバグダーディ容疑者死亡発表のタイミングですが、来年の大統領選に向けて与野党ともに盛り上がり始めた中でトランプ大統領はいわゆる「ウクライナ疑惑」をめぐって民主党から弾劾の追求を受け、またシリアからの米軍撤兵に対して与野党から批判を浴びているところでした。

しかし、この奇襲作戦を命じ成功させたことで合衆国軍隊の「最高指揮官」としての役割を果たして「リーダーシップに欠ける」という批判をひとまず回避できそうです。また、今回の作戦ではトルコやロシア、さらにはクルド族の支援も受けたと発表して、先の米軍撤兵も正当化できるでしょう。

世論調査で、すでにトランプ優勢となっています。今回の出来事は、オバマ前大統領のように、再選に向けての不利な潮目が変わる程度のことではすまないような気がします。トランプ圧倒的有利という具合になり、今後の米国政局はそれを前提にしないと考えられなくなるかもしれません。


民主党へのしっぺ返しもあるトランプ弾劾調査―【私の論評】トランプ弾劾は不可能、禁じ手を複数回繰り出す民主党は相当追い詰められている(゚д゚)!

2019年8月12日月曜日

トランプ氏、韓国・文政権に厳重警告! 「GSOMIA」破棄なら…日韓に対立緩和を促した“本音” ―【私の論評】信頼できない相手からの情報は、混乱と誤謬をもたらすだけ(゚д゚)!


トランプ大統領

 ドナルド・トランプ米大統領が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に厳重警告を発した。日本政府が、半導体素材の輸出管理を強化したことに反発して、文政権が「日韓軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)の破棄をチラつかせているからだ。トランプ氏は表向き、日韓両国に関係改善を求めているが、対立の背景を十分理解している。文政権の「裏切り」を戒め、韓国内の保守派に奮起を促すものといえそうだ。

 「日韓は同盟国のはずなのに、米国を難しい立場に追い込んでいる」「日韓はいつもケンカしている。仲良くしなければならない」

 トランプは9日、ホワイトハウスで記者団にこう語った。

 北朝鮮の非核化問題や中国との覇権争いを抱えるなか、対立緩和を促した-と報じられるが、事態はさらに深刻だ。

エスパー長官は韓国訪問に先立って日本を訪問している

 訪韓中のマーク・エスパー米国防長官は9日、文大統領や鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相らと相次いで会談し、米国の要請で締結したGSOMIAの継続が重要だとの考えを伝えた。

 ところが、鄭氏は「有効性などを考慮し、更新するかどうか決めたい」といい、継続を明言しなかったのだ。

 実は、日米防衛当局者の間では「文政権がGSOMIAを破棄する可能性が高い」「日本に責任を押し付けて、中国や北朝鮮に接近する兆候がある」と分析している。

 このため、米シンクタンクなどを通じて、「GSOMIA破棄=米軍撤収・同盟解体」と警告してきたが、「反日・離米・従北・親中」の文政権には通じない。

 トランプ氏の発言は、韓国の保守派勢力に「自国が自由主義陣営から離脱していいのか? 目を覚ませ」とメッセージを送ったともいえそうだ。

 日米情報当局関係者は「ホワイトハウスには『北朝鮮は戦略的な敵だが、韓国の文政権はもっと問題だ』という分析がある。明確に『韓国を切るべし』という強硬意見もある。GSOMIAが破棄されれば、韓国は安全保障上も、経済的にも重大局面を迎える」と語っている。

【私の論評】信頼できない相手からの情報は、混乱と誤謬をもたらすだけ(゚д゚)!

冒頭の記事にもあるように、日韓関係が悪化の一途をたどる中、韓国政府は日本による半導体関連材料の輸出規制措置に対抗し、日韓GSOMIA(ジーソミア=軍事情報包括保護協定)の破棄をチラつかせています。韓国お得意の「手首切ってやる!」の脅しを仕掛けているわけだ。

日韓GSOMIAには様々な利点があるはずだったが・・・・

8月7日には世論調査会社のリアルメーターが、破棄の賛否を問う世論調査の結果を賛成(47.7%)、反対(39.3%)と公表しました。

訪日したエスパー米国防長官は同7日、岩屋毅防衛相、安倍晋三首相と相次いで会談し、GSOMIAが維持されることを「心の底から願う」と強調しました。そのエスパー氏は、8日からは訪韓して、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相らと会談、同様の意向を伝えました。

日本は米英仏など7カ国、さらに北大西洋条約機構(NATO)と同協定を締結しています。日本との歴史問題を持ち出す韓国とは紆余曲折がありましたが、16年11月にようやく締結しました。

日韓GSOMIAの場合、協定の有効期間は1年で、期限の90日前に破棄を通告しない限り自動的に延長されると規定されています。これまでは毎年自動延長されてきましたが、今年は通告期限の8月24日までに韓国政府が破棄を通告するのか、注目が集まっています。そこでGSOMIAとは何か。韓国に破棄されると日本は困るのか検証してみます。

同協定は韓国からの要望で、ようやく実現にこぎ着けています。北朝鮮が発射するミサイルの着弾地点や高度、飛行距離などを分析する技術は日本の方が高いですから、韓国にとっては、自国向けに発射されるミサイルの性能分析に日本の情報が役に立ちますし、日本は北朝鮮などの潜水艦を探知する能力も韓国より高いです。

一方、日本にとっては、朝鮮半島有事の際、韓国側から戦況の情報が得られれば現地の日本人を助け出す上で役立つでしょう。それにヒューミント、人間の口からもたらされる情報も重要です。韓国は脱北者や北朝鮮内部に潜り込ませたスパイから現地の政治経済、ミサイル発射の兆候の情報を得ています。日本は韓国からこうした情報を教えてもらえるという関係です。

しかし、北とつながる韓国・文在寅政権とのGSOMIAは、ある意味で危険です。日本からの情報が北に筒抜けになるばかりか、逆にガセネタをつかまされる可能性もあります。要は韓国は、日韓GSOMIA破棄をチラつかせ米国を困らせ、日本を米国に叱ってもらいたのです。

2016年11月に締結したものですから、今年の11月で三年目ということですから、そもそもこの条約は2年と少ししか締結されてから時が経っていないということてず。その前は、韓国からの情報がなくてもやってこれたということですから、今になってそれを破棄されたらといっても、それが日本の安全保障にどれたけマイナスになるのかといえば、おそらくないでしょう。

韓国が破棄したいと言えば、日本はどうぞご自由にで良いでしょう。現状の韓国のハチャメチャ様子をみていれば、その韓国から情報がもたらされたからといって、それが信用できるかどうかは甚だ疑問です、

日本の哨戒機のレーダー照射についても未だに、何の情報の提供もありません。これでは、北朝鮮の船に対してせどりを行っていた現場の近くを日本の哨戒機が飛んだので、制裁破りを糊塗とようとして、照射をしたのではないかと疑われても仕方ないです。


日本側は、そんな相手からの情報を得たにしても、それをそのまま信じるわけにもいかず、その審議を確かめるために二度手間になるだけのことになりかねません。それであれば、米国からの情報のほうがはるかに信憑性・信頼性が高いはずです。

また韓国からの情報を鵜呑みにしてると、それこそ北朝鮮や中国に都合よく情報操作をされ、いざという時に痛い目を見ることになるかもしれません。

日本に対して韓国が不正確な情報を流せば、いざというとき大きな被害を受けることもありえます。であれば、米国の情報並びに自ら、哨戒機や潜水艦で情報を収集すれば、そちらのほうが余程信頼できます。

信頼できない筋からの情報は、混乱と誤謬をもたらすだけです。米軍ももはや北に接近し、中国に従属しようとする韓国からの情報など信頼していないでしょう。

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2019年6月28日金曜日

トランプ氏「安保破棄」発言で“憲法改正”後押し!? G20前に衝撃発言「日本に米国守る義務ない…不公平だ」 識者が分析「防衛・安全保障のあり方を熟考する契機に」―【私の論評】トランプ氏は、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促した(゚д゚)!


トランプ氏(左)は、安倍首相の悲願成就に協力したのか

ドナルド・トランプ米大統領が、「日米同盟の根幹」に関わる衝撃発言を放った。米テレビのインタビューで、日米安全保障条約に基づく防衛義務は一方的だとの強い不満を表明したのだ。米ブルームバーグ通信が直前、トランプ氏が「日米安保条約の破棄」に言及したと報じていただけに、この発言は深刻といえる。大阪で28日から開催されるG20(20カ国・地域)首脳会合に合わせた日米首脳会談の主要テーマにもなりそうだ。左派陣営の中には「日米同盟廃棄だ」などと小躍りする向きもあるが、識者の中には「自国の防衛・安全保障のあり方を熟考する契機になる」「安倍晋三首相の憲法改正を後押しする発言では」といった分析もある。

 「日本が攻撃されたら米国は第3次世界大戦を戦うだろう。米国はいかなる犠牲を払っても日本を守る。それなのに米国が攻撃されたとき、日本はその状況をソニーのテレビで見ていられる」

 トランプ氏は26日、FOXビジネステレビの電話インタビューで、こう語り、米国の同盟国への負担が重すぎるという持論を展開した。

 この直前、さらに踏み込んだトランプ発言が報じられていた。ブルームバーグ通信は24日、トランプ氏が私的な会話で「日米安保条約は不平等だ」として、「破棄」に言及したと報じたのだ。

 日米当局は強く否定したが、トランプ氏は2016年の大統領選中にも「米国が攻撃されても、日本は何もしない」「在日米軍は撤退してもいい」などと発言したことがある。

 米国民の中にも、自国が「世界の警察官」の役割を担って、多額の軍事費を支出していることに不満を感じる声は多い。

 だが、日米同盟はそれほど単純ではない。

 1960年に改定された日米安保条約は、日本の施政権下における武力攻撃について、日米が「共通の危険」に対処すると定めている。一方、日本側は米軍への基地提供義務を負っている。「非対称ながらも双務的」な同盟関係である。

 日米安保は米国にとっても重要だ。

 神奈川県横須賀市に司令部がある米海軍第7艦隊は、太平洋だけでなく、インド洋も管轄し、地球の半分を活動範囲としている。沖縄の米空軍嘉手納基地は、羽田空港の約2倍の広さがあり、極東最大の米空軍基地である。在日米軍撤退となれば、米国は世界の覇権を失うことになる。

 自由主義国家のナンバー1と2による日米同盟は、アジア太平洋や世界の平和・秩序維持に重要な役割を担っている。共産党独裁の中国による覇権拡大を阻止する強固な防波堤でもある。

 トランプ氏がG20への出発直前、衝撃発言を放った真意について、「来年の大統領選挙を見据えた選挙対策」とか、「日米貿易交渉で譲歩を迫る狙い(ディール)」「在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)などの増額要求」といった見方が出ている。

 ネット上では、左派陣営を中心に「安倍首相の外交的敗北だ」「日米安保廃棄」「沖縄・米軍普天間飛行場の辺野古移設は中止すべきだ」「米国への依存体質から抜け出そう」などと盛り上がっている。

 夕刊フジは26日午後、ブルームバーグ通信の報道を受けて、東京・新宿で街頭演説を終えた共産党の志位和夫委員長を直撃した。

 志位氏は「トランプ氏は『日本はもっと(米軍の駐留経費を)負担しろ』という文脈で言っており、とんでもない話だ。そこで(日本側が)『日米安保条約は止めないでください。何でも負担しましょう』となると、トランプ氏の言うがままになる」と述べた。

 そのうえで、「私たち(=共産党)の考えは、日米安保条約は国民多数の合意で破棄をし、対等で平等の日米友好条約に変え、本当の独立国をつくることだ」と強調した。同党は党綱領に「自衛隊の解消」「日米安保条約の廃棄」を堂々と掲げている。

 ■日米安保破棄なら防衛コスト23兆円?

 日米安保を廃棄すれば、日本は自主防衛に踏み切るしかなくなる。その防衛コストについて、「年に22兆3000億~23兆8000億円かかる」との防衛大学校教授の試算もある。年金どころではない。日本の社会保障費が吹っ飛んでしまう。

 そこで、防衛コストについて指摘すると、志位氏は「(試算には)どんな根拠があるんですかねえ」と語った。

 まったく違う見方もある。

 トランプ氏は「日本人に『自分の国は自分で守る』という覚悟を持たせ、憲法改正を後押しする意図があったのでは」と分析するものだ。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は当初、「フェイクニュースか?」と首をひねったが、大阪G20の隠れテーマが「対中包囲網の構築」であることから、次のように深読みした。

 「米国は長く、日本の軍事大国化を防ぐため、平和憲法と日米同盟で押さえ付ける『瓶のフタ論』をとってきた。だが、トランプ氏は以前から『経済大国の日本が米国頼りなのはおかしい』という疑問を明言してきた。米中対立が激化するなか、トランプ氏は『日本も憲法を改正して、自分の国は自分で守る国になるべきだ』『米国とともに共産党独裁の中国と対峙(たいじ)してほしい』とのメッセージを込めた可能性がある」

 トランプ流で、安倍首相の憲法改正を激励したのだろうか。

【私の論評】トランプ氏は、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促した(゚д゚)!

最近の報道では、トランプ大統領が日米安保破棄について語ったことが報道されていますが、その背景には米国ではすてに、オバマ政権の頃から日本は改憲すべきであるとの声が議会で高まっていたことがあります。

それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派に―【私の論評】憲法を改正するか、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になるか、あなたはどの道を選択しますか?
 GHQによる日本国憲法草案
1946年(昭和21)2月13日、外相官邸で行われた日米会談の席で、政府の「憲法改正要綱」は、あまりに保守的内容であるとして拒否され、GHQ起草の案(マッカーサー草案)が提示された。この草案は、GHQ民政局部内で極秘裏に起草されたもので、主権在民・象徴天皇制・戦争放棄などを規定していたため、政府側に大きな衝撃を与えた。

この記事は2010年のものです。詳細はこの記事をごらんいただくものとして、もうすでにこの頃からら、米議会では日本は改憲すべきという勢力のほうが、護憲勢力よりも大きくなっていたのです。

この記事の冒頭部分を以下に引用します。
米国議会が日本の憲法第9条を日米共同防衛への障害と見なし、改憲を望むようになった――。 
この現実は日本の護憲派にはショックであろう。だが、米国議会上下両院の一般的な認識として、日本側の憲法9条の現行解釈による集団的自衛権の行使禁止は、「より緊密な日米共同防衛には障害となる」というのである。
同じく以下のこの記事から私による結論部分を引用します。
憲法を改正して、パランス・オブ・パワーの一角を担う覚悟がなけば、いずれ選択できる道は二つしかありません。それは、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になることです。いますぐ、ということはないでしょうが、今後10年以内には、おそらくどちらかの道を選ばざるをえない状況に追い込まれます。あなたは、どの道を選びますか? 
しかし、私達としても、当然のこととして、どらの道も選びたくはありません。であれば、憲法を改正して、バランス・オブ・パワーの一角を担うしかありません。
この動きは近年さらに強まっていました。それについても以前このブログで取り上げたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声―【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?
米国・ワシントンD.C.の国会議事堂。米国議会で日米同盟の片務性を批判する声が高まってきた
この記事は2017年3月4日のものです。トランプ氏が大統領に就任して間もない頃です。
 米国のトランプ政権は日米同盟の堅持と尖閣諸島の共同防衛を確約している。その一方でこのほど、民主党の有力議員が米国議会で“日本は憲法を改正しない限り米国の公正な同盟パートナーにはなれない”“現状では米国は尖閣を防衛すべきではない”という主張を表明した。 
 日本側の憲法が原因とされる日米同盟の片務性は、これまで米国側から陰に陽に批判されてきた。だが、これほど真正面からの提起も珍しい。日本側としても真剣に受け止めざるをえない主張だろう。
・・・・・・・・・・・・一部省略・・・・・・・・・・・

 公聴会ではまず議長のヨホ議員が、中国の南シナ海での人工島造成や軍事基地建設を膨張主義だとして非難し、中国による東シナ海での日本の尖閣諸島領域への侵入も米国の同盟国である日本への不当な軍事圧力だと糾弾した。

 そのうえで同議員は、オバマ政権下の米国のこれまでの対応が中国をまったく抑えられなかったと指摘し、日本などの同盟国と連帯して対中抑止態勢を構築することを提唱した。その前提には、トランプ政権が日米で尖閣を共同防衛する意思を表明していることがもちろん含まれていた。

 ところがこの委員長発言の直後、民主党を代表して発言したブラッド・シャーマン議員が驚くほど強硬な語調で日本を批判したのである。

ブラッド・シャーマン民主党議員 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 「トランプ政権が日本の施政下にある尖閣諸島の防衛を約束したことには反対する」 
 中国の海洋進出を非難する前にトランプ新政権の対日安保政策に反対を唱える発言に、私は驚かされた。シャーマン議員はさらにショッキングな発言を続けた。 
「日本は憲法上の制約を口実に、米国の安全保障のためにほとんど何もしていない。それなのに米国が日本の無人島の防衛を膨大な費用と人命とをかけて引き受けるのは、理屈に合わない。日本側はこの不均衡を自国の憲法のせいにするが、『では、憲法を変えよう』とは誰も言わない」 
 「2001年の9.11同時多発テロ事件で米国人3000人が殺され、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国は集団的自衛権を発動し、米国のアフガニスタンでの対テロ戦争に参戦した。だが、日本は憲法を口実に、米国を助ける軍事行動を何もとらなかった。その時、『日本はもう半世紀以上も米国に守ってもらったのだから、この際、憲法を改正して米国を助けよう』と主張する政治家が1人でもいただろうか」 
 シャーマン議員は公聴会の満場に向けてそんな疑問を発すると同時に、日本やアジアに詳しい専門家の証人たちにも同じ質問をぶつけた。
 シャーマン議員はカリフォルニア州選出、当選11回のベテランである。民主党内でもかなりのリベラル派として知られる。そんなベテラン議員が、日米同盟が正常に機能するためには日本の憲法改正が必要だと主張しているのである。
シャーマン議員は以下のような発言もしました。

「2001年9月の9.11同時多発テロ事件では米国人3000人が殺され、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国は集団的自衛権を発動し、米国のアフガニスタンでの対テロ戦争に参戦しました。しかし、日本は憲法を口実に、米国を助ける軍事行動を何もとらなかった。その時、『日本はもう半世紀以上も米国に守ってもらったのだから、この際、憲法を改正して米国を助けよう』と主張する日本の政治家が1人でもいたでしょうか」

トランプ政権からでもなかなか出てこない過激な主張であり、日本に対する手厳しい批判でもありました。

しかし、この主張には無理な側面もあります。なぜなら、日本国憲法は日本が自主的に定めたものではなく、当時の米国によって作成されたものだからです。それは、バイデン元副大統領もそのように発言していました。そのため、日本が米国の要請に従い憲法を変えるというのなら、米国もそれ相当のことをしなければならないです。

まずは、極東軍事裁判の一方的な判決、さらには、その後のGHQの統治などの誤りを認めるべきです。そうすれば、日本は自主的に憲法改正をしやすい状況を醸成できます。

以下にこの記事の【私の論評】の結論部分を掲載します。
日本が米国の要請よって、憲法を変えるなどということになれば、日本としてもただ変更するというのではなく、当然のことながら、米国と日本の関係を大東亜戦争前の日米が戦争するなどとは思いもよらかなった頃の関係に近いものに戻すことを条件とすべきです。 
このようなことをいうと、そんなことは全く不可能と思われるかもしれませんが、私はそうでもないと考えます。なぜなら、米国の保守本流派とされる人々は、そもそもソ連の防波堤となって戦っていた日本と米国が戦争したは間違いだったと考えているからです。 
そもそも、ルーズベルトが全体主義のソ連と手を組んだことが間違いの始まりだったとしています。こういう米国保守本流の考え方からすれば、米国と日本の関係を大東亜戦争前の日米が戦争するなどとは思いもよらなかった頃の関係に戻すという考えは受け入れやすいかもしれません。
スターリン(左)とルーズベルト(右)
ただし、大東亜戦争前と現在とでは国際情勢が違いますから、全くその頃と同じということてはできません。しかし、日本としてはまずは国連の常任理事国入りは当然の前提条件とすべきです。
そうして、日本が自主防衛をするようになってにしても、日米の同盟関係は維持するという条件も前提条件とすべきでしょう。そうして、日米同盟の双務性を堅持すことも条件とすることは当然のことです。
その上でなら、米国による要請も受け入れて良いと思います。ただし、自分の国を自分で守ること、すなわち防衛戦争をできるようにすることや実際にすること自体は、米国とは関係なく、本来独立国としては、当然のことです。これができないというのは、日本は未だ独立国ではないという証です。
ただし、米国議会の日本に対して憲法改正圧力は、日本にとって憲法改正にはずみをつけるということから、日本政府は大いに利用すべきものと思います。
上にでできたブラッド・シャーマン議員は、最近も日本を鋭く批判しています。ご存知のように、米国連邦議会では2018年11月の選挙で野党の民主党が下院の多数を制しました。多数党は議会の全委員会の長ポストを握り、議題や審議の手続きを仕切ることができます。下院で共和党と民主党の勢力が逆転したことで、2019年初頭からは民主党議員たちが議事進行の先頭に立つようになりました。

なかでも活発なのは外交委員会です。外交委員会のなかで日本についての政策を審議するのが「アジア太平洋・不拡散小委員会」(Subcommittee on Asia, the Pacific and Nonproliferation)です。この小委員会の委員長に新たにブラッド・シャーマン議員が就任しました。

現在、下院外交委員会のメンバーは民主党26議員、共和党20議員です。この委員会は活動がきわめて活発です。この5月に入ってからでも、中国、ロシア、北朝鮮、イラン、人権、大量破壊兵器などに関する問題を幅広く取り上げて、12回も公聴会を開催しました。

そのなかでもとくに活発に動くメンバーが、カリフォルニア州選出のブラッド・シャーマン議員です。同議員は1997年以来、当選7回、外交委員会全体において民主党側議員のなかで委員長に次ぐ筆頭議員の立場にあります。また、民主党リベラル派としてトランプ政権への反発も激しく、トランプ大統領への弾劾決議案の提出を何度も試みてきました。

そのシャーマン議員が、下院外交委員会の「アジア太平洋・不拡散小委員会」委員長に就任したのです。下院外交委員会では、地域別、主題別に6つの小委員会を設けています。そのなかで日本や中国などアジア関連の課題を専門に扱うのがアジア太平洋・不拡散小委員会です。

このような意見の持ち主が、米国連邦議会のなかで日本への関わりが最も大きい小委員会委員長ポストに就いたのです。このことは日本側でも銘記しておくべきでしょう。そうして、米国においては平時には米国の大統領の権限は世界最弱であることも銘記しておくべきでしょう。ただし、米国では超党派で中国に対峙していて、こと中国に関することでは、大統領に権限が集まりつつあることも事実です。

米国の保守本流派とされる人々は、そもそもソ連の防波堤となって戦っていた日本と米国が戦争したは間違いだったと考えていることは、上でも述べましたが、米国のリベラル派である民主党のシャーマン議員にはそのような歴史観はないようです。

現状のまま、米国が日米同盟を断ち切るようなことがあれば、喜ぶのは中国です。米軍が日本からひきあげれば、中国は嬉々として、日本を占領しにやってくるでしょう。ロシアや北朝鮮、もしかすると韓国もそうするかもしれません。

そうして、日本の富と技術力を簒奪して、冷戦や制裁を勝ち抜くことでしょう。それどころか、日本の無能な官僚などは追い出し、自ら財政・金融政策などを抜本から変え、日本経済を成長させ、さらに莫大な富を得て、経済力で米国を追い抜き、世界を手にいれるかもしれません。そうなれば、世界は闇です。

そんなことは、日米双方にとって良いことは一つもありません。日米は互いに協力しつつ中国と対峙するために、やはり日本が自主的に憲法を変えやすい状況を醸成していくべきです。

トランプ発言の背景には、このようなことがあるのです。トランプ氏としては、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促したとみるべきです。

【関連記事】



2019年5月17日金曜日

習近平氏、窮地! トランプ氏、ファーウェイ“完全排除”大統領令に署名 「共産党独裁国家の覇権許さず」鮮明に―【私の論評】本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎない(゚д゚)!


トランプ大統領

米国が警戒する背景には、次世代通信規格「5G」の到来がある。

 5Gは、現在の4Gの100倍とも言われる速度での通信を可能にし、あらゆるものがインターネットにつながる。共産党独裁国家である中国が5Gを「支配」すれば、安全保障への影響ははかりしれない。トランプ政権は、同盟国にも「ファーウェイ排除」を要請している。

 こうした、トランプ氏の対中強硬姿勢には、党派を超えて支持が広がっている。

 米民主党の大物、チャック・シューマー上院院内総務はツイッターで、「中国にタフな姿勢を貫け」と投稿し、トランプ氏の決断に賛同した。米世論調査会社ギャラップが4月下旬に実施した世論調査で、トランプ政権の支持率は過去最高の46%を記録した。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「米中貿易戦争は、世界制覇をめぐる権力闘争といえる。習近平国家主席が提唱した『中国製造2025』が実現すれば、欧米や日本のハイテク産業は壊滅し、世界経済の覇権は完全に中国共産党に握られる。自由も人権も、法の下の平等もなくなる。トランプ政権は『断固戦う』との国家意思を示した。今回の大統領令署名は、同盟国にも強いメッセージを発した形になった」と語った。

 米国が警戒する背景には、次世代通信規格「5G」の到来がある。

 5Gは、現在の4Gの100倍とも言われる速度での通信を可能にし、あらゆるものがインターネットにつながる。共産党独裁国家である中国が5Gを「支配」すれば、安全保障への影響ははかりしれない。トランプ政権は、同盟国にも「ファーウェイ排除」を要請している。

 こうした、トランプ氏の対中強硬姿勢には、党派を超えて支持が広がっている。

 米民主党の大物、チャック・シューマー上院院内総務はツイッターで、「中国にタフな姿勢を貫け」と投稿し、トランプ氏の決断に賛同した。米世論調査会社ギャラップが4月下旬に実施した世論調査で、トランプ政権の支持率は過去最高の46%を記録した。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「米中貿易戦争は、世界制覇をめぐる権力闘争といえる。習近平国家主席が提唱した『中国製造2025』が実現すれば、欧米や日本のハイテク産業は壊滅し、世界経済の覇権は完全に中国共産党に握られる。自由も人権も、法の下の平等もなくなる。トランプ政権は『断固戦う』との国家意思を示した。今回の大統領令署名は、同盟国にも強いメッセージを発した形になった」と語った。

【私の論評】本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎない(゚д゚)!

トランプ米大統領は15日、安全保障上の脅威があると判断した外国の通信機器の使用を禁じる大統領令に署名しました。次世代通信規格「5G」ネットワークの主導権を米国と争う中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)排除が念頭にあり、米商務省は同日、ファーウェイに対して米製品を許可なく販売することを禁じる措置を発表しました。

このブログでは、以前も5Gについて掲載しました。その記事の中では、5G問題の本質は、
"中国の「サイバー主権」を囲い込むこと"であると掲載しました。

このことは、多くの識者がそのようにとらえているようです。そうして、冒頭の記事の藤井厳喜氏も、それに近いようなことは述べています。しかしなぜか「中国のサイバー主権」については直接は述べていません。他の識者も中国の「サイバー主権」については5Gの問題について直接関連付けて述べる人はいないようです。

このことが、多くの人々のこの問題に関する認識を若干弱めているのではと思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
いまだ低いファーウェイへの信頼性、求められる対抗通信インフラ―【私の論評】5G問題の本質は、中国の「サイバー主権」を囲い込むこと(゚д゚)!

この記事から「サイバー主権」に関わる部分のみを引用します。

中国は「サイバー主権」という概念を唱え、それを促進するため、国連に対するロビー活動を行ってきました。インターネット規制を国家に限定すべきだと主張する一方、業界や市民社会を脇役に押しやりました。 
中国で2017年6月1日、インターネットの規制を強化する「サイバーセキュリティー法」が施行されました。中国共産党は統制の及びにくいネット上の言論が体制維持への脅威となることに危機感を抱いており、「サイバー空間主権」を標榜して締め付けを強化したのです。 
同法は制定目的について「サイバー空間主権と国家の安全」などを守ると規定。「社会主義の核心的価値観」の宣伝推進を掲げ、個人や組織がインターネットを利用して「国家政権や社会主義制度」の転覆を扇動したり、「国家の分裂」をそそのかしたりすることを禁止しました。 
中国で2017年6月1日、インターネットの規制を強化する「サイバーセキュリティー法」が施行されました。中国共産党は統制の及びにくいネット上の言論が体制維持への脅威となることに危機感を抱いており、「サイバー空間主権」を標榜して締め付けを強化したのです。
同法は制定目的について「サイバー空間主権と国家の安全」などを守ると規定。「社会主義の核心的価値観」の宣伝推進を掲げ、個人や組織がインターネットを利用して「国家政権や社会主義制度」の転覆を扇動したり、「国家の分裂」をそそのかしたりすることを禁止しました。 
具体的には情報ネットワークの運営者に対して利用者の実名登録を求めているほか、公安機関や国家安全機関に技術協力を行う義務も明記。「重大な突発事件」が発生した際、特定地域の通信を制限する臨時措置も認めています。

こうした規制強化について、中国は「サイバー空間主権」なる概念を打ち出して正当化しています。2016年12月に国家インターネット情報弁公室が公表した「国家サイバー空間安全戦略」は、IT革命によってサイバー空間が陸地や海洋、空などと並ぶ人類活動の新領域となり、「国家主権の重要な構成部分」だと主張。インターネットを利用した他国への内政干渉や社会動乱の扇動などに危機感を示し、「テロやスパイ、機密窃取に対抗する能力」を強化すると宣言しました。 
また同弁公室は今年3月に発表した「サイバー空間国際協力戦略」でも「国連憲章が確立した主権平等の原則はサイバー空間にも適用されるべきだ」と主張。「サイバー空間主権」の擁護に向けて「軍隊に重要な役割を発揮させる」とも言及しました。
そもそも、インターネットを構築したのは米国であり、その影響は避けられないです。中国のネット検閲技術も米国企業が協力したとされています。中国当局にはインターネットの情報を完全にコントロールできないことへのいらだちがあるようです。サイバー空間主権を掲げることで、領土内の決定権は中国にあると強調したいのでしょう。

そうして、「サイバー主権」は2017年に発表されたことと、5G問題は2018年あたりから、表面化したため、両者は互いに関連付けられることはあまりありせんが、これは不可分に結びついています。

というより、本質は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその道具に過ぎないともいえます。

この記事より、5G問題に関する部分を以下に引用します。
今後世界は5Gを中心として、オープンモデルの世界と、クローズドモデルの世界に分断されていく可能性が大です。クローズドモデルは闇の世界となることでしょう。 
私自身は5Gの問題の本質はここにあると思います。日米などの先進国は、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進することによって、中間層を多数輩出させ、彼らに自由な経済・社会活動を保証することにより、国富を蓄積して国力を増強しました。このようなことを実現した先進国では、インターネットは当然オープンなものと受け止められているのです。
しかし、中国にとっては5Gは、まず自国内での「サイバー主権」を確実に実行するための道具なのです。そうして、中国は次の段階では、世界の通信秩序をつくりかえようとしているのです。

もともと、米国がつくりだしたインターネットは、軍事的なものでした。当時はあり得ることと認識されていた、世界中が核兵器で破壊されても、通信インフラが多少でも残っていれば、世界中と連絡がとれるということが、当初の目的でした。

しかしこれが、軍事目的のほかに、学術面で使用されるようになりました。このオープンなシステムを用いて、従来では考えられなかった用途が考え出されました。

たとえば、学術誌で有名だったケミカル・アブストラクトがインターネットを介して、情報を提供するようになりました。

ケミカル・アブストラクトは、最新の化学物質の組成や性質を掲載したものですが、当初は冊子体は非常に大きく(1年で厚さ数メートルとなる)なるものでした。

ケミカル・アブストラクツ(冊子)の表紙

多くの化学者は、新たな化学物質を合成した場合、この冊子を検索して、自分の開発した物質が、本当に新しいものであるかどうかを確かめました。しかし、このような冊子であることから、更新に時間がかかり、たとえその冊子に掲載されていなくても、他の学者がすでに開発していたなどということもしばしばありました。

多くの化学者が自分では、ノーベル賞級の発見をしたつもりでも、たまたま冊子に掲載されていなかっただけで、実は他の学者がとっくに発見していたということもありました。

しかし、これが現在では、すべてデータベース化されていて、インターネットで検索できるようになっていて、オンラインで申請し要件を満たしていれば、すぐに新たな発見がデーターベースに掲載されるようになりました。

現在の化学者は、日々このデーターベースで検索していて、自分の発見が本当に新しいものであるか、そうではないかを検索することができます。これは、インターネットが普及するまでは考えられないことでした。

このように、インターネットの学術利用が普及していきました。そうして、次の段階では、一般の人もつかえるように、インターネットの商用利用がはじまり、今日に至っています。

このような歴史をたどった、インターネットは今日でも、基本的にオープンな仕様になっています。

しかし、中国はこのオープンなインターネットを「サイバー主権」なる主張をもとに、自分たちに都合の良いものに作り変えようとしているのです。その尖兵が5Gなのです。

こう考えると、5G問題は、単に技術上の問題であるとか、米国と中国の覇権争いなどという単純なものではないと理解できると思います。

基本的に、自由でオープンなインターネットを自分たちの都合の良いように作り変え、中国共産党の統治の正当性をより確かなものにしようとすることを許さない米国との対立というのが、5G問題の本質なのです。

もともと米国で開発されたインターネットは、当初は軍事目的だったものの、今日では自由でオープンな特性を活かし、社会の重要なインフラとなっています。

しかし、中国はこれをつくりかえ、まずは自国内で情報を政府が一元的に管理可能なものにつくりかえようとしています。さらに、中国の覇権の及ぶ他国においもその国の政府がインターネットを一元的に管理できるようにすることを目指していることでしょう。さらに、将来は、世界の情報を一元的に管理しようとの目論見も当然あることでしょう。

これからの世界は、中国の通信モデルと既存のモデルのせめぎあいになることが考えられます。ここは、なんとしても米国に勝利してもらい、通信インフラの世界を中国の都合のようにつくりかえることを防ぐべきです。

インターネットが中国の都合の良いようにつくりかえられてしまえば、世界は暗黒の闇になります。世界中がジョージ・オーウェルが描いた世界「1984」になってしまうかもしれません。これだけは、米国の覇権がどうのこうのという前に、絶対に避けるべきなのです。

この問題は、トランプ大統領からすれば、米国の信じる理念と、中国の信じる理念との対決なのです。

トランプ大統領がファーウェイ“完全排除”大統領令に署名したのは、背後にこのようなことがあることを理解すべきでしょう。本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎないのです。単なる技術上の問題とか、米国と中国の覇権争いだけのようにみてしまうと、本質がみえなくなります。

【関連記事】

いまだ低いファーウェイへの信頼性、求められる対抗通信インフラ―【私の論評】5G問題の本質は、中国の「サイバー主権」を囲い込むこと(゚д゚)!



2019年5月12日日曜日

誤算?無策?習政権、トランプ氏“逆鱗”読み切れず… 中国「報復」示唆も米側は切り札投入―【私の論評】「大幅な譲歩」か「強行路線」か?いずれに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ない(゚д゚)!


ワシントンで言葉を交わすライトハイザー米通商代表(右)と、
              中国の劉鶴副首相(左)=10日

ドナルド・トランプ米政権は、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)分に課している追加関税率を10%から25%に引き上げた。習近平政権も報復を示唆するが、米国側は「全輸入品への追加関税」という切り札を出してきた。貿易戦争が長期化すれば深い傷を負うのは中国側であることは明確で、習政権の「誤算と無策」がハッキリしてきた。

 米通商代表部(USTR)は10日、中国からの輸入品約3000億ドル(約33兆円)分に25%の追加関税を課す手続きに入ると発表した。実施すれば中国からの全輸入品が25%の対象となる。

 トランプ大統領は10日、ツイッターで、追加関税について「交渉次第で撤回するかもしれないし、しないかもしれない」と中国に譲歩を迫った。一方で「交渉は良い雰囲気で続けており、急ぐ必要はない」と記すなど、脅したりすかしたりの老獪(ろうかい)さをみせた。

 10日の閣僚級協議も合意に至らず、次回協議について、スティーブン・ムニューシン財務長官は米CNBCテレビに「予定されたものはない」と語った。一方、中国の劉鶴副首相は、米国との貿易協議を早期に北京で開催することで合意したと強調するなど、決裂ではないことを強調するのに懸命の様子だった。

 中国商務省は10日、「必要な対抗措置を取らざるを得ない」との報道官談話を発表したが、関税競争は中国に分が悪い。2018年の対米輸出額が4784億ドル(約52兆5900億円)だが、輸入額は1550億ドル(約17兆400億円)にとどまり、報復関税にも限界がある。

 関税が引き上げられた対米輸出品についても、中国側が価格を引き下げて対応しているのが実情で、トランプ氏は「米国製品のコストへの影響はごくわずかで、ほとんど中国が負担している」と勝ち誇っている。

中国全人代の閉幕式に臨む習近平国家主席=3月5日、北京の人民大会堂

 中国は論点も見誤った。

 米国側は、外国企業からの強制的な技術移転や産業補助金などを最重要課題としているが、中国側は貿易赤字の問題にすぎないと軽視していた節もある。

 習政権はメンツにこだわり、米国と対等であるかのように交渉に臨んだ。閣僚級協議でも、習国家主席がトランプ氏に書簡を送ったが、効果はなかった。習氏とトランプ氏との電話協議など直接交渉で打開を図るが、展望は見いだせない。

【私の論評】「大幅な譲歩」か「強行路線」か?いずれに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ない(゚д゚)!

ロイター通信8日付は、米政府関係者らの話として、中国当局は今までの交渉で知的財産権保護や技術の強制移転、為替などの事項に関して、国内法の改正を約束したにもかかわらず、今月3日に米政府に送った合意文書案で約束を撤回したそうです。

中国当局が突如態度を変えた理由について憶測が飛び交っています。

今年に入ってから、中国経済がやや回復の兆しが表れていました。中国税関総省が発表した3月の貿易統計では、同月ドル建て輸出は、市場予想を大幅に上回り、前年同月比14.2%増加しました。5カ月ぶりの高水準といいます。中国当局によるテコ入れ策で、3月の新規人民元建て融資や社会融資総量が予想外に急増し、投資の拡大が示されました。中国当局は、景気が上向きになったことで、強気に出た可能性があります。

今年4月までは、株価も回復していたが・・・・・・

しかし、中国経済の好調が、約束を反故した主因ではないようです。中国当局の最高指導部が「政治的な賭けに出た」という見方が、最も説明がつきます。

国際社会は、中国共産党政権が真に構造改革を行うと信じていません。構造改革を行い、市場を開放してインターネット封鎖を解除し、情報の自由を認めるためには、単に掛け声をかけて投資をすれば成就するという簡単なものではありません。

それを実行したとしても、現実には何も変わらないです。それを実行して根付かせるためには、一定以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をする必要があります。

それを本当に実行すれば、中国共産党政権は統治の正当性を失い、崩壊することになります。

さらに、ここまで米の要求を受け入れると、党内から「弱腰外交」と習氏への批判が沸き立つことでしょう。

中国共産党の本質を見極め、強硬姿勢を示すトランプ政権は、貿易戦を通じて、中国当局に2つの究極の選択肢を突きつけました。中国共産党一党独裁を捨てても中国経済を守るのか、それとも中国共産党政権を維持するのかです。

約束の撤回は、中国当局からの返事だと見てもよいです。「一強体制」を築いたように見える習近平国家主席は、政権維持に拘れば、難しい政権運営を強いられることになります。

江沢民(左)と曽慶紅(右)

4月下旬、江沢民派の主要人物である曽慶紅氏が久しぶりに公の場に姿を見せました。習近平氏は近年、反腐敗キャンペーンで江派の高官を次々と失脚させ、江沢民派の勢力は衰退しました。その一方で、江沢民氏、曽慶紅氏2人の摘発を放置しました。専門家は、習近平氏は中国共産党体制の崩壊を避けるために、江沢民氏らに譲歩したとみてきました。

インターネット上に投稿された動画によると、4月20日、曽慶紅は江西省トップの劉奇氏とともに、故郷の同省吉安市を視察しました。劉奇氏は、習近平氏が浙江省トップを務めた際の部下で、習氏の側近です。曽と劉の両氏の組み合わせは、習派と江派が「仲良くやっている」というメッセージを送り、党内の団結をアピールしているように見えます。しかし、習近平氏が政権維持に拘り、江沢民派に譲歩しても、団結は長く続きません。

トランプ大統領が5日のツイッターで対中追加関税の引き上げを発表したのを受け、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは6日、情報筋の話を引用し、貿易交渉で中国側が約束した内容の一部に対して習近平氏が認めず、交渉が失敗すれば「自分がすべての責任を負う」と述べたと報じました。

サウスチャイナ・モーニング・ポストは、2015年にアリババグループに買収され、親江沢民派メディアとして認識されています。

劉鶴副首相は、9日と10日の米中通商協議に予定通り参加しました。渡米前、劉氏は「圧力下での渡米」とメディアに語りました。習近平氏の政敵は、今回の交渉を「米国の圧力に屈した侮辱的な交渉」と捉え、習氏への批判を強めるでしょう。この交渉でどんな結果が生じても、敵対勢力に攻撃の口実を与えることになります。

劉副首相の訪米は、米国の圧力に屈したというよりも、親江沢民派メディアの報道への対応と言えます。

実にトランプ米大統領の5日のツイッター投稿を受けて、中国人民銀行(中央銀行)は6日株式市場の取引開始前に、中小銀行を対象に預金準備率の引き下げを発表しました。これによって、市場に2800億元(約4兆5174億円)の資金を供給するといいます。中国当局が、トランプ大統領の発言で、中国経済や株式市場が受ける影響を予測したことが読み取れます。

しかし、中国当局はサウスチャイナ・モーニング・ポストの報道を予測できませんでした。

今後の見通しとして2通りの展開があります。一つは中国側が大幅に譲歩し、米側と合意するというものです。しかし、こうなった場合、江沢民派が必ず、「主権を失い国を辱めた」として、習近平氏に反撃するでしょう。党内闘争が一段と激しくなり、政権の不安定さが高まることになります。

もう一つは、中国当局が引き続き意図的に貿易交渉を先延ばし、米中両国が物別れに終わることです。これが起きれば、中国経済が壊滅的な打撃を受けることになります。

輸出、投資、個人消費の低迷が深刻化するほか、中国当局が最も不安視する債務危機もぼっ発する可能性が高いです。これに伴う企業の倒産、労働者の失業が急増し、中国当局への社会不満が一気に爆発することになります。

中国当局は、この最も恐れる状況に、どう対処するのでしょうか。習近平氏が政治手腕を発揮し、反対派の攻撃を圧制することができたとしても、経済崩壊を迎えた中国共産党政権は末路をたどるしかありません。

米中貿易戦、中国国内および共産党の現情勢を分析すれば、米中貿易交渉で勝負に出た中国当局は、初めから失敗に向かっていることが分かります。米中通商協議の結果がどうであれ、中国共産党体制の崩壊が加速化します。

10日、2日間の米中閣僚級協議を終え、トランプ大統領は同日、今後も交渉を続ける方針を表明しました。ロイター通信は10日、情報筋の話として、劉副首相は国内法の改正を拒む立場を変えておらず、国務院令や行政命令で対応すると提案したと報じました。米側はこれに拒否したといいます。

前国家経済会議(NEC)副委員長のクリート・ウィレムス(Clete Willems)氏は米メディアに対して、トランプ氏は交渉チームに「満足できる内容でなければ、いつもで立ち去れ」と告げた、と話しました。

「強国路線」を掲げてきた習氏にとって、米側への大幅な譲歩は国内の求心力を失いかねないですが、強硬姿勢を貫いて貿易摩擦がエスカレートすれば、経済成長の減速に拍車がかかるというジレンマに陥っているのです。

どちらに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ないのです。

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2019年4月27日土曜日

日米首脳、蜜月“2時間”会談 米韓“2分”との差が浮き彫りに… トランプ氏、5月訪日決断のウラ―【私の論評】会談の背後に消費税問題あり(゚д゚)!


握手する安倍首相(左)とトランプ米大統領=26日、ワシントンのホワイトハウス

安倍晋三首相は26日午後(日本時間27日早朝)、ドナルド・トランプ米大統領とワシントンのホワイトハウスで会談した。北朝鮮の非核化や拉致問題、日米同盟の深化、貿易問題など、2時間近く、相当突っ込んだやりとりをしたという。トップ同士の会談がわずか2分程度だった、トランプ氏と、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談(11日)とは、明らかに次元が違うようだ。

 安倍首相「令和時代の最初の国賓として、トランプ氏ご夫妻をお迎えできることを大変うれしく思う」

 トランプ氏「非常に素晴らしいことで名誉だ。本当に楽しみにしている」

 両首脳による10回目の会談は、打ち解けた雰囲気のなか、両国や世界の懸案事項について、一つ一つ確認する場となった。

 「北朝鮮の非核化」については、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が25日に行った露朝首脳会談の結果を踏まえながら、「国際社会が一致して『北朝鮮の非核化』に取り組むことが重要」(安倍首相)との認識を確認した。今後の非核化プロセスについて、綿密に議論したという。北朝鮮への経済制裁は継続する。

 拉致問題については、安倍首相が、トランプ氏が2月の米朝首脳再会談で、正恩氏に問題を提起したことに謝意を伝えた。トランプ氏は「(解決に向けて)全面的に協力する」と明言した。

 日米貿易交渉については、安倍首相が「ともにウィンウィンとなる交渉を進めよう。必ずその結論を出すことができる」と伝え、トランプ氏と早期に合意を目指すことで一致したという。

 トランプ氏は、新天皇即位の重要性について、安倍首相から「(米国の国民的行事であるプロフットボールNFL王者決定戦スーパーボウルの)約百倍大事だ」と説明され、5月の訪日を決断したと語った。

 安倍首相は「日米同盟はかつてないほど強固だ。そのことを世界に力強く示す機会にしたい」と述べた。

 トランプ氏は、訪日時の相撲観戦について、「ずっと興味深いと感じてきた。優勝者にトロフィーを渡す」と興奮気味に語ったという。

 この日は、メラニア大統領夫人の誕生日で、安倍首相は昭恵夫人とともに誕生日会に出席し、翌27日にはワシントン近郊のゴルフ場でトランプ氏と一緒にプレーする。

【私の論評】会談の背後に消費税問題あり(゚д゚)!

トランプ氏はすでに5月と6月の訪日が決まっているので、今回の会談は、3カ月連続の日米首脳会談の一番最初の会談です。この異例の連続会談の裏に何があるのでしょうか。北朝鮮問題や日米通商協議がテーマと報じられたましたが、果たしてそれだけなのでしょうか。

私は、消費税引き上げ問題が絡んでいるのではないかと睨んでいます。今年10月に予定されている消費増税について、安倍晋三首相の側近でもある自民党の萩生田幹事長代行が「景況感次第で延期もあり得る」と言及し、波紋を呼んだことは先日もこのブログに掲載しました。


大阪12区、沖縄3区の衆院補欠選挙で2敗した自民党が、夏の参院選に向けて立て直しに動き始める中、3回目の「消費増税延期」というカードを切る可能性が指摘されています。その場合、衆参同日選挙が現実味を帯びます。

その決断を左右する大きな要素がトランプ米大統領の出方です。安倍首相はトランプ氏から直接、大詰めを迎えている米中貿易協議の見通しと、トランプ氏自身の増税に関する考えを聞いたうえで、増税延期を決断するかもしれないです。

決断まではいかなくても、消費税凍結あるいは見送りの有力な根拠を得た可能性が大だと思います。

日本から海外に輸出する場合、輸出企業は仕入れ時に支払った消費税の還付を受けるため、消費税がかからないです。トランプ政権はこれが輸出企業への補助金にあたり、不公平だと批判してきました。4月に行われた日米貿易交渉でも、この問題が取り上げられたと報道されています。

さらに、昨年は減税などを実施し、経済面で成果をあげたトランプ大統領からみれば、10%への増税は、恐るべきアイデアであり、最悪の選択としかみえないはずです。日本経済は成長していない上にさらに増税すれば、経済成長を取り戻すことはできなくなると感じているはずです。



トランプ政権と良好な関係を持つ安倍政権が、成長政策とは真逆の方向に進もうとしていることを残念に思っているでしょうし。日本政府が今すべきことは、消費税の増税ではなく、減税であると感じているでしょう。

外交では、トランプ大統領は安倍総理を頼りにしていますし、実際インド太平洋における安倍外交は米国をかなり助けたところがあります。インド太平洋地域には、米国の覇権を嫌う国々も多くあります。

おそらく、米国単独ではインド太平洋での中国への対峙はなかなかうまくいなかったでしょう。トランプ氏は、日本の安倍総理の橋渡しに感謝していると思います。




その安倍総理が、国内で消費増税をしようとしていることを残念に思うことでしょう。米中貿易戦争の激化、イギリスのEU離脱に伴う欧州経済の悪化など、経済運営の舵取りが難しくなる中で、今回の日米首脳会談において、トランプ氏本人の口から消費増税を批判された可能性もあります。

無論、トランプ大統領としては、安倍政権が消費増税で国民からの支持を失いレームダック化することを恐れていると思います。そうなれば、今後の中国との対決にも悪影響が出ることを懸念しているでしょう。

そうして、安倍総理自身も、6月には大阪でG20(主要20カ国・地域)首脳会議を控えています。そこでホストを務める日本の首相としても、自ら増税を決めて世界経済のリスク要因を増やすわけにはいきません。となれば、10月の消費税増税はかなり難しくなります。

安倍首相は、不安定化する景気と米国からの「圧力」、参院選に向けた自民党・政権の支持率を見極めつつ、「決断」を迫られる局面を迎えています。そうして、私としては是非とも消費税凍結を決断をして衆参同時選挙を実施していただきたいです。

そうすることにより、日米関係はさらに良好になり、国内では安倍総理は念願の憲法改正をやりやすくなります。さらに安倍総裁の四選も可能性も十分でてくるものと思います。

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