2017年11月16日木曜日

トランプ氏の「インド太平洋」発言、対中外交戦略の大きな成果に 北朝鮮への対応でも議論進む―【私の論評】トランプ外交を補完した安倍総理の見事な手腕(゚д゚)!

トランプ氏の「インド太平洋」発言、対中外交戦略の大きな成果に 北朝鮮への対応でも議論進む

東京・米軍横田基地で演説したトランプ米大統領
 11月10、11日に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議では、北朝鮮問題はどのような構図で話し合われたのか。そして日本にとって成果は見いだせたのだろうか。

 トランプ米大統領のアジア歴訪は、日本からスタートした。大統領専用機が米軍横田基地を使ったことについて、外交上問題があるという指摘が一部の左派系論者からあった。筆者が出演した関西のテレビ番組でもそうした意見が出ていた。

 これに対して、筆者は異論を唱えた。横田基地への到着、その後のゴルフ場や都心へのヘリ移動、そして横田基地からの離日というトランプ氏の行程は、すべて「横田空域」の中である。平時であれば、このような行動はないだろうが、今は「準戦時体制」と思ったほうがいい。北朝鮮からの対話を引き出すために、最大限の圧力をかけるときである。

 そのためには、北朝鮮がトランプ氏に対して一切挑発できない状態にすることが望ましい。これは外交上の圧力にもなる。

 このトランプ氏の姿勢は、韓国でも同様で、真っ先に訪れたのは在韓米軍だった。

 米軍がこの時期に日本海で空母3隻を配備したのも、北朝鮮への圧力である。

 これは、過去に米国が軍事行動をとった際と同じ程度だ。1986年のリビア攻撃の時は空母3隻、2001年のアフガニスタン空爆の時は空母4隻が出撃している。今回、米軍の空母3隻は、日本の海上自衛隊の艦船との共同訓練も行った。

 トランプ氏は中国を訪問した際、習近平主席とも北朝鮮問題を話し合ったはずだ。トランプ氏はツイッターで「中国の習主席が対北朝鮮制裁を強化すると述べた。彼らの非核化を望んでいると言っていた。進展している」と記している。

 APECでは、トランプ氏とロシアのプーチン大統領の間で非公式な会合があり、シリア問題について話し合ったようだ。

 安倍晋三首相もAPECをうまく使った。中国、ロシア、カナダ、メキシコ、ニュージーランド、ベトナム、ペルー、インドネシア、マレーシアの各国と2国間で首脳会談を行った。中国とは、安倍首相の訪中や習主席の来日といった外交日程のみならず、朝鮮半島の非核化や国連安保理決議の完全な履行についての連携など、北朝鮮問題についても話し合っている。

 ロシアとは、北方領土問題で双方の法的立場を害さない形で来春に向けてプロジェクトを具体化するための検討の加速に加えて、対中国と同じく朝鮮半島の非核化や国連安保理決議の完全な履行への連携など北朝鮮問題も議論した。

 安倍首相は、インド太平洋での自由貿易圏という構想を持っていたが、トランプ氏は完全にそれに乗っている。アジア歴訪の中で、「インド太平洋」との言葉を頻出させ、APECでの演説でも使った。

 日本は北朝鮮問題への対応と、インド太平洋で中国への対抗という大きな成果を得た。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】トランプ外交を補完した安倍総理の見事な手腕(゚д゚)!

12日間に及ぶアジア歴訪の成果を自画自賛したトランプ大統領。北朝鮮の核問題や貿易不均衡の是正で成果があったといいます。またアメリカ国民が負担してきた共同防衛の費用を日本に受け持たせて雇用を生み出すと強調しました。

一方、安倍総理はきょう、ハリスアメリカ太平洋軍司令官と会談、北朝鮮への対応について協議しました。ハリス司令官は海上自衛隊とアメリカ海軍空母の共同訓練を評価、有事の際に向け連携強化に期待を示しました。安倍総理も一連の外交を終え、成果として日米の連携強化を最大限にアピールしています。

表敬訪問したハリス米太平洋軍司令官(左)と握手する安倍晋三首相=16日午前、首相官邸
今回の安倍総理の外交の真骨頂は、トランプ大統領の「商談外交」の欠陥を補完して、北朝鮮に対する国際世論を盛り上げ、包囲網実現へとつなげたということだと思います。

トランプ大統領は外交・国際政治の未経験という弱点を露呈しました。疲弊したのでしょうか、トランプ大統領は最重要会議である東アジアサミット(ESA)を欠席して帰国、アジア諸国首脳らの落胆とひんしゅくを買いました。

トランプ大統領は、複雑な利害の錯綜するアジア外交への対応能力の限界を見せたということだと思います。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「トランプ氏が中国による重商主義拡大を米国の犠牲の下に放任した」と警鐘を鳴らしました。

これとは対照的に、安倍総理の活躍が目立ちました。安倍総理の基本戦略はまずトランプ大統領の訪日で、核・ミサイル開発に専念する北に対する圧力を最大限に高め、日米共同歩調を確認することでした。

その上でトランプ大統領に中国を説得させて北への圧力を強化させ。次いで東南アジア諸国への働きかけで国際世論を盛り上げる目論見でした。ところが肝心のトランプ大統領が中国で習近平の手のひらで踊ってしまいました。

2500億ドル(28兆円)の「商談」で舞上がって、対北問題をお座なりにしてしまったのです。一応は北への圧力を最大限高める方針を主張したのですが、習近平は国連決議の履行以上の言質を与えず、軽くいなされてしまいました。

効果への疑問が指摘されている2500億ドルの「商談」に目がくらんで、毎年2700億ドル規模の対中貿易赤字が発生している問題などは素通りしてしまったのです。私自身は、貿易赤字そのものはさほど問題ではないと思うのですが、それにしても、その赤字の中身が問題であり、中国のブラック産業的なものの米国への輸出自体にはかなり問題があると思います。

まともな先進国同士の輸出、輸入であれば、貿易赤字そのものではなく、その中身を分析(たとえば経済成長が続くと、外国からの輸入が増えるが、これによる赤字は健全)ということになりますが、中国国内の非近代的な産業構造、低賃金労働、劣悪な労働条件による低価格化による米国の輸出は、いわば中国によるブラック的なものを米国に輸出していることにもなり、それが米国産業の毀損にもつながります。

これが問題の本質であって、単純に貿易赤字やその額そのものを問題にするトランプ大統領にはこのことに気づいて欲しいものです。気づいていたにしても、それをはっきりと他の国々にもわかるように主張して欲しいものです。

習近平主席とトランプ大統領会談
一方安倍総理は、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国首脳と精力的な会談を行い、北朝鮮問題の実情を説明しました。これが14日の首脳会議に結実した。ほとんどの首脳が北の核・ミサイル開発に対する懸念を表明するとともに、国連安保理決議違反を指摘しました。

これにより、北朝鮮包囲網がかなり強化されました。さらに重要なのは多くの首脳から中国が実効支配を進める南シナ海の問題に関して「航行の自由に抵触しかねない」などの懸念や指摘が出されたことです。

東アジアサミットは議長声明で北朝鮮による核・化学兵器など大量破壊兵器やミサイル開発を非難し、核・ミサイル技術の放棄を要求するに至りました。これは北朝鮮の兄貴分である中国ならびにロシアをけん制するものでもあります。

一方でトランプ大統領は、米政府がこれまで中国の人工島造成による軍事拠点化に、「待った」をかける役割を果たしてきたことなど念頭になかったようです。結局南シナ海問題で中国への強い姿勢を打ち出せないままとなり、強い指導力を発揮させることは出来ませんでした。

トランプ大統領は、オバマは無論のこと、歴代大統領が打ち出し続けてきたインド太平洋地域に関する自らのビジョンを示さないで歴訪を終わらせてしまいました。15日付読売によるとベトナム外交筋は「米国が南シナ海問題で抑制的に対応する間にも、中国は軍事拠点化を着実に進める。遠くない将来、中国の南シナ海支配を追認せざるを得ない時が来るのではないか」と述べているといいます。

ASEAN首脳会議の開幕式で、壇上でドゥテルテ大統領(右)と握手するドナルド・トランプ
米大統領。トランプ氏の左隣はベトナムのグエン・スアン・フック首相、左端はロシアの
ドミトリー・メドベージェフ首相=12日、フィリピン・マニラの文化センター
経済問題でもトランプ大統領は「インド太平洋地域のいかなる国とも2国間貿易協定を結ぶ。われわれは、主権放棄につながる大きな協定にはもう参加しない」と発言しました。

これは米国が戦後作り上げた多国間貿易システムを否定し、輸出のための市場を自ら閉ざすことを意味します。なぜなら、TPPの離脱で米国の輸出業者はGDPで世界の16%を占める市場で不利な立場におかれるからです。

トランプ大統領はいまや2国間協定で米国が個別に圧力をかけようとしても、貿易構造の多様化で多くの国が痛痒を感じない状況であることを分かっていないようです。

WSJ紙は「米国の最大の敗者になるのは、農業州と中西部にいる大統領支持者だろう。TPPは米国にとって、アジアの成長から恩恵を得られる絶好のチャンスであり、トランプ大統領の抱く不満の種を是正する部分が少なくない」と批判しています。

しかし、かたくななまでに2国間貿易に固執するトランプの方針は覆りそうもなく、世界は次の政権を待つしかすべがないというのが実情でしょう。こうしてトランプのアジア歴訪の旅は、指導力を発揮するどころか、事態をますます流動的なものにしてしまったようです。

一方、TPP11が日本の主導により大筋合意に達しました。カナダ及びメキシコからは不協和音が聞こえるものの、米国が撤退したにも関わらず、日本が主導して合意に漕ぎつけたことは日本外交の大きな一歩です。

11日までベトナム・ダナンで開催された、米国を除くTPP参加11カ国の閣僚会合
更に、APECの場に於いてトランプ大統領が、安倍首相が2016年TICADに於いて提唱した「インド太平洋構想」を「自らの案」として提案したことも、同じく日本外交の大きな一歩です。

その演説の中で“中国の不公正な貿易と巨大な貿易赤字"を取り上げ、“政府の計画立案者ではなく、民間産業が、投資を先導すべきである"と述べ、“経済的な安全保障と国家の安全保障は同等のものである"と言い切ったことは、中国の掲げる「一帯一路構想」と対峙する姿勢を鮮明にしたものであり、中国に飲み込まれんとするアジア諸国にとっても少なくともアジアにおける「米国のプレゼンス」を確認できたことは朗報であったといえます。

トランプ大統領の今回のアジア歴訪で、得た唯一の本当の成果はこれだけかもしれません。もし安倍総理が、インド太平洋での自由貿易圏という構想をだしていなかったら、これもなかったかもしれません。

一方、共産党大会で独裁体制を確立した「習近平の強さが浮き彫り」(ワシントンポスト紙)になった形となりました。しかし、安倍総理は、トランプ大統領の商談外交を補い、この習近平の強さも、打ち消された形になりました。

トランプ大統領は、元々政治家ではなく、実業界で名を挙げた人であり、外交に疎いのは仕方ないことです。今回のアジア歴訪も、初めての本格的な外交としては、及第というところだと思います。そうして、その背景には安倍総理の外交努力がありました。

このブログでは、安倍総理はトランプ大統領には外交でかなりあてにされているということを掲載したことがあります。 

なぜそのようことになったかといえば、安倍総理の外交努力によって安倍総理は、ASEANやインドと関係が深いため、これらの諸国とトランプ氏と仲介役をしたところ、米国とこれらの国々の関係が飛躍的に良くなったという経緯があるからです。 

まさに今回の一連の日米のアジア地域の外交においても、安倍総理は経験の少ないトランプ大統領を補完して、総体としては日米に有利になるように、事を運びました。

もし、安倍総理が旧来の総理大臣ように、米国に追随するばかりで主体的な行動しなかったとしたら、日米両国とも今回の外交でも、さしたる効果を挙げられないどころか、より一層、中露に水を開けられ、日米ともにアジアでの影響力を失っていたことでしょう。

トランプ大統領は今後ますます、安倍総理に対して全幅の信頼を寄せることになったと思います。

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