米中の「二大大国の覇権争い」で朝鮮半島の危機を考えたとき、日本はどう動くべきか |
朝鮮半島の危機は、単なる日米韓と北朝鮮の枠組みでとらえるのではなく、米国と中国という「二大大国の覇権争い」という構図の中で考えるべきである。例えば、北朝鮮に対する米国の先制攻撃のみならず、中国の先制攻撃の可能性も考える必要がある。
なぜならば、自国との国境付近で核実験を繰り返し、習近平国家主席の顔に泥を塗る行為を繰り返す北朝鮮に対し、中国は激怒しているはずだ。そして、米軍の攻撃が成功し、その影響力が朝鮮半島全域に及ぶことを、中国は避けたいと思うからだ。
中国の人民解放軍が北から北朝鮮を攻撃し、南から米韓連合軍が攻撃する案は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を排除する目的のためであれば、米中双方にとって悪い案ではない。今後、朝鮮半島を舞台とした米中の駆け引きが注目される。
ここで、朝鮮半島をめぐる将来シナリオを列挙してみる。
(1)現在と変化なく、韓国と北朝鮮が併存する。
(2)朝鮮半島に統一国家が誕生する。このシナリオには2つのケースがあり、北朝鮮が主導する統一国家が誕生するケースと、韓国が主導する統一国家が誕生するケースだ。両ケースとも、米軍は朝鮮半島から撤退せざるを得ないであろう。
(3)中国が実質的に朝鮮半島の一部または全域を支配する。このシナリオには2つのケースがある。中国が北朝鮮のみを実質的に支配するケースと、朝鮮半島全域を実質的に支配するケースだ。このシナリオでは人民解放軍がその支配地域に駐留することになる。米軍が韓国に残る場合は「北朝鮮のみを中国が実質的に支配するケース」であり、米軍と人民解放軍が38度線で直接対峙(たいじ)することになる。
以上の各シナリオに対し、日本の安全保障はいかにあるべきかを分析すべきだ。最悪のシナリオは「朝鮮半島全域を中国が実質的に支配し、中国の人民解放軍がその支配地域に駐留する」シナリオだ。
この場合、日本は中国の脅威を直接受けることになり、この脅威に対処するためには、現在の防衛態勢を抜本的に改善する必要がある。
いずれにしろ、北朝鮮の「核・ミサイル」の脅威は目の前にある現実の脅威であり、これに確実に対処する一方で、朝鮮半島の将来を見据えたシナリオに基づく日本の国家安全保障戦略を構築し、それに基づき防衛態勢を整備することが急務である。
■渡部悦和(わたなべ・よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書に『米中戦争そのとき日本は』(講談社現代新書)など。
【私の論評】中国が北実効支配なら習近平は寝首をかかれる(゚д゚)!
中国が北朝鮮を攻撃し、中国が実質的に朝鮮半島の一部または全域を支配する可能性については、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国、正恩氏排除を決断か 人民解放軍が対北参戦の可能性も…軍事ジャーナリスト「黙ってみているはずがない」―【私の論評】中国の北朝鮮への侵攻は新たな火種を生むことに(゚д゚)!
失脚した元人民解放軍トップ郭伯雄氏 |
この記事を理解するためには、まずは以下のような事実を知っていなければなりません。
人民解放軍は「国家の軍隊」ではなく、共産党の私兵です。そもそも、中国には普通の国でいう、軍隊は存在しないのです。
中国人民解放軍女性兵士?彼女らは、総合商社の一員でもある\(◎o◎)/!
人民解放軍は日本でいえば、商社のような存在であり、実際中国国内外で様々なビジネスを展開しているという事実です。そのような存在でありながら、武装もしており、いわば武装商社のような存在です。そうして中には核武装もしているという異常な組織です。
人民解放軍にはさらなる弱点もあります。中国政府が1970年代から進めた一人っ子政策で誕生した「一人っ子軍人」です。兄弟姉妹のいない環境で過保護に育てられた別名「小皇帝」が軍内部で増加。有事でまともに戦えそうにない“本性”を、災害派遣などの場面でさらしているといわれています。巨大な軍は、実は内部崩壊を招きかねない深刻な事態に直面しているのです。さて、このような事実を前提に、この記事にはもし人民解放軍が北朝鮮に侵攻すれば、さらなる火種を生み出すことになることを掲載しました。その部分を以下に引用します。
このような軍とは呼べないような武装組織である、人民解放軍がまともに戦えるとは思えませんが、まかり間違って北朝鮮に攻め込み、北朝鮮に進駐することにでもなれば、それこそ目もあてられない状況になります。北朝鮮は人民解放軍の不正の温床になるだけです。それどころか、金目のものといえば、武器、核兵器、核関連施設だけの北朝鮮と言っても良いくらいなので、これらを海外に売却するということもやりかねません。これをご覧いただければ、北朝鮮に中国が侵攻して、朝鮮半島の一部(現在の北朝鮮に相当する部分)、あるいは朝鮮半島一部に進駐することになれば、とんでもないことになることは明らかです。
かえって、治安を悪化させ、次の戦争の火種を生み出すことになりかねません。米国であろうが、中国であろうが、特に地上戦で北朝鮮を打ち負かした後に、少なくと50年くらい軍隊を進駐させて、民主的な政権を樹立して、自分たちで国を収めることができるように監視を続ける覚悟がなければなりません。
中国の人民解放軍にはそのような覚悟は最初からありませんし、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家化もされていない中国の人民解放軍にはそれはできません。それこそ、腐敗の温床になるだけです。
一人っ子が多い、武装商社である中国の人民解放軍は、韓国まで攻め込んで一挙に半島を統一して統治するようなことは、ほとんど無理だと思います。しかし、北朝鮮侵攻ということはあり得ない話ではないので、仮に中国が北朝鮮に進駐したとなると、現在の北朝鮮は紛争の絶えない地域になることが考えられます。
まずは、中国が侵攻したことで、北朝鮮の経済も中国のようにある程度は良くなるかもしれません。特に、中国が得意のインフラ整備を行えば、それなりに経済成長するかもしれません。
しかし、中国は他の先進国のように、これをさらになる地域の発展に結びつけるようなことはできず、中国国内のように富裕層だけが潤い、その他大勢の一般の人民は、旧北朝鮮のときと同じ程度の生活水準から抜け出ることはできないでしょう。
これが不満をよび、さらに外国に支配されているということでこれがさらに朝鮮族の不満を呼ぶでしょう。そうして、これから北朝鮮内で紛争が絶えない地域になってしまう事が考えられます。
そうして、この地域に投入される人民解放軍は、大部分は瀋陽に本拠をおく軍制改革後も、《北部戦区》と名前を変えたに過ぎず、今もって「瀋陽軍区」のままの戦区からの人民解放軍ということになると考えられます。この瀋陽軍区にも着目すべきです。
この瀋陽軍区は特に中国人民解放軍の中でも、最精強を誇り、機動力にも優れています。
朝鮮戦争(1950~53年休戦)の戦端が再び開かれる事態への備え+過去に戈を交えた旧ソ連(現ロシア)とも国境を接する領域を担任する旧瀋陽軍区には、軍事費が優遇され、最新兵器が集積されています。
大東亜戦争(1941~45年)以前に大日本帝國陸軍がこの地に関東軍を配置したのも、軍事的要衝だったからです。
習国家主席は、北京より平壌と親しいとされる「瀋陽軍区」によるクーデターを極度に恐れているといわれています。「瀋陽軍区」高官の一族らは、鴨緑江をはさみ隣接する北朝鮮に埋蔵されるレアメタルの採掘権を相当数保有しています。
これは、「瀋陽軍区」が密輸支援する武器+エネルギー+食糧+生活必需品や脱北者摘発の見返りです。北朝鮮の軍事パレードで登場するミサイルや戦車の一部も「瀋陽軍区」が貸している、と分析する関係者の話もあります。
もっと恐ろしい「持ちつ持たれつ」関係は核・ミサイル製造です。中国人民解放軍の核管理は《旧・成都軍区=現・西部戦区》が担い「瀋陽軍区」ではありません。「瀋陽軍区」は核武装して、北京に対し権限強化を謀りたいのですが、北京が警戒し許さないのです。
もっと恐ろしい「持ちつ持たれつ」関係は核・ミサイル製造です。中国人民解放軍の核管理は《旧・成都軍区=現・西部戦区》が担い「瀋陽軍区」ではありません。「瀋陽軍区」は核武装して、北京に対し権限強化を謀りたいのですが、北京が警戒し許さないのです。
ならば、核実験の原料や核製造技術を北朝鮮に流し、または北の各種技術者を「瀋陽軍区」内で教育・訓練し、「自前」の核戦力完成を目指すということも考えられます。
実際、2016年、中国の公安当局は、瀋陽軍区→北部戦区の管轄・遼寧省を拠点にする女性実業家を逮捕しました。高濃度ウランを生み出す遠心分離機用の金属・酸化アルミニウムなど核開発関連物資や、戦車用バッテリーなど大量の通常兵器の関連部品を北朝鮮に密かに売りつけていたのです。戦略物資の(密輸)重油も押収されました。
実際、2016年、中国の公安当局は、瀋陽軍区→北部戦区の管轄・遼寧省を拠点にする女性実業家を逮捕しました。高濃度ウランを生み出す遠心分離機用の金属・酸化アルミニウムなど核開発関連物資や、戦車用バッテリーなど大量の通常兵器の関連部品を北朝鮮に密かに売りつけていたのです。戦略物資の(密輸)重油も押収されました。
その理由は以下のようなものです。
(1)北京が北朝鮮崩壊を誘発させるレベルの対北完全経済制裁に踏み切れば、最精強の「瀋陽軍区」はクーデターを考える。
(2)他戦区の通常戦力では鎮圧できず、北京は旧成都軍区の核戦力で威嚇し恭順させる他ない。
(3)「瀋陽軍区」としては、北朝鮮との連携で核戦力さえ握れば、旧成都軍区の核戦力を封じ、「瀋陽軍区」の権限強化(=対北完全経済制裁の中止)ORクーデターの、二者択一を北京に迫れる。習国家主席が進める軍の大改編は、現代戦への適合も視野に入れていますが、「瀋陽軍区」を解体しなければ北朝鮮に直接影響力を行使できぬだけでなく、「瀋陽軍区」に寝首をかかれるためでもあります。
「瀋陽軍区」が北朝鮮と北京を半ば無視してよしみを通じる背景にはその出自も関係しています。中国は朝鮮戦争勃発を受けて“義勇軍”を送ったのですが、実はそれは人民解放軍所属の第四野戦軍でした。
朝鮮戦争時に韓国内を侵攻した中国軍 |
当時、人民解放軍で最強だった第四野戦軍こそ瀋陽軍区の前身で、朝鮮族らが中心となって編成された「外人部隊」だったのです。瀋陽軍区の管轄域には延辺朝鮮族自治州も含まれ、軍区全体では180万人もの朝鮮族が居住します。
いわば、「瀋陽軍区」と北朝鮮の朝鮮人民軍は「血の盟友」として今に至っています。金正日総書記(1941~2011年)も2009年以降、11回も瀋陽軍区を訪れています。
2012年氷点下40度の気温のもとで、演習を実施する瀋陽軍区の高射砲部隊 |
中国は、国内の内戦の危険を抱えているのです。この内戦で逃げ回るのは、「瀋陽軍区」の猛攻を前に恐れをなす習近平派人民解放軍の役どころかもしれないです。
瀋陽軍区の人民解放軍が北朝鮮に侵攻すれば、金ファミリーは実権を失い以前にもこのブログに掲載したように、ロシアが亡命の手助けをするかもしれません。しかし、朝鮮人民解放軍の組織はそのまま残り、瀋陽軍区と北朝鮮軍により、いずれ中国に反旗を翻すことになりそうです。そうして何よりも、瀋陽軍区は北の核兵器を手に入れるのです。
これを考えると、習近平が自らの私兵である人民解放軍を、北朝鮮に送り込むのはかなり難しいです。もし送りこめめたにしても、瀋陽軍区と北朝鮮軍とに挟まれることになり、中国本土からの供給の道が絶たれ、兵糧攻めで崩壊するかもしれません。
かといつて、瀋陽軍区の人民解放軍を送り込めば、北朝鮮の人民解放軍と結託して、それこそクーデターをおこし、逆に北京に攻め込むということも考えられます。
以上のことから、習近平が北朝鮮に人民解放軍を送り込むことは考えにくいし、送るとすれば、それこそ習近平が命脈がつきかけているというサインかもしれません。
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