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2020年2月21日金曜日

フィリピンの「訪問米軍に関する地位協定」破棄は中国に有利?―【私の論評】米国、中国との距離を再調整しつつあるフィリピン(゚д゚)!

フィリピンの「訪問米軍に関する地位協定」破棄は中国に有利?


フィリピンが先日「訪問米軍に関する地位協定」の破棄を決めたことが、大きな議論を呼んでいます。

協定が破棄されればフィリピンで行われていた米軍による演習やサポートがなくなり、フィリピンにとって大きな影響があるのでは?と言われていますが、実は最も喜んでいるのは中国・・かもしれません。

アメリカのトランプ大統領は「節約になるし、特に問題ない」と発言していますが、アメリカ国防総省の高官は、「協定を破棄すればアメリカの影響力が落ち、中国にとって有利になる」と指摘しています。

また、アメリカ国防総省の中国担当スブラジア次官補代理も、「アメリカとフィリピンの軍事的な関係がすぐに壊れるわけではないが、中国はアメリカを追い出そうとしている。これはアメリカと中国の競争だ。」と述べました。

つまり、アメリカがいなくなれば、中国はフィリピンを侵略しやすくなる、というような意味でもありますね。

南シナ海問題ではアメリカのサポートもあって何とか中国の動きを抑えてきているフィリピンですが、協定がなくなれば中国はもっと自由に動けるようになるかもしれません。

さらにスブラジア氏は、「中国は各国からアメリカを引き離そうとしている」とコメントし、警鐘を鳴らしました。

今のところドゥテルテ大統領は破棄決定を撤回するつもりはなさそうですが、アメリカはどうにか説得しようと必死になっているようにも見えます。

フィリピン国民としても、中国の勢力が拡大し、それが自国に及んでくることは誰も望んでいないでしょう。

協定破棄が有効になるまでにはまだ半年近くありますが、この間にドゥテルテ大統領がどう動くかは、世界中が注視しています。

【私の論評】米国、中国との距離を再調整しつつあるフィリピン(゚д゚)!

ドゥテルテ比大統領

2016年6月にドゥテルテ(Rodrigo Duterte)現大統領が就任した後、フィリピンの対外政策は大きく変わりました。ドゥテルテ大統領は、米国との同盟関係を強化し中国と対決姿勢をとった前アキノ政権の対外政策を180度転換し、米国と距離を置き、中国に接近しました。

その理由は、経済開発の重視、麻薬など治安対策に対する欧米からの非難への反発、中国とコネクションを持つ華人の政権への影響力、個人的な対米不信など様々に取り沙汰されていました。ただ、就任から4年が経とうとする現在、米中対立の激化をはじめとする戦略環境の変化に合わせ、フィリピンは米国や中国との距離を再調整しています。

再調整のプロセスにおいて鮮明になったドゥテルテ政権の傾向は、中国との経済協力を強化する基本路線を保ちつつ、対米関係で「南シナ海カード」を使い、より多くの関与を引き出そうとする姿勢です。

しかし、深化する経済協力によって、南シナ海におけるフィリピンと中国の領有権争いが鎮火したわけではないです。南シナ海では依然として、フィリピンと中国の間でトラブルが頻発しています。

それらは主として、係争海域における、中国によるフィリピンに対するハラスメントです。例えば2019年初から4月にかけて、フィリピンが実質的に管理するスプラトリー諸島のパグアサ島近海に、200隻以上の海上民兵の一部とみられる中国漁船が大挙して押しかけました。

この中国の示威的な行動に対し、フィリピン政府は外交ルートで中国に抗議しました。また同年6月には、リード礁付近で停泊中のフィリピン漁船に中国漁船が衝突し、フィリピン漁船が沈没する事案が発生しました。フィリピン世論は、中国漁船による「当て逃げ」として対中批判を強め、マニラでは反中デモも行われまし。

こうした中国のハラスメントやトラブルに対してドゥテルテ大統領は、時折強硬な発言によって世論の弱腰批判を避けつつも、トラブルの火消しを念頭に穏当な発言に終始しました。

そうした大統領の発言は、例えばパグアサに中国漁船が押し掛けた際には「(同島に展開する)兵士は自爆攻撃の用意がある」など挑発的な発言を行ったかと思えば、フィリピン漁船の沈没事案を「ちょっとした海難事故」と形容するなど、一貫性を欠いていました。

また2019年6月にバンコクで行われたASEAN首脳会議の席上、ドゥテルテ大統領はASEANと中国の間で進行中の行動規範(Code of Conduct:COC)協議の遅れに対し、失望と不満を表明しましたが、これも本人の真意か、世論向けのリップサービスであったのか、判然としないものでした。

南シナ海問題への対応の文脈で、ドゥテルテ政権は対米関係の再調整をも図ろうとしています。ただそれは、距離を置いていた米国へ再接近を図るといった単純なものではなく、対中関係に関する自らの立ち位置を変えないまま「南シナ海カード」を使って米国から安全保障上の関与をより多く引き出そうとする戦略的な動きです。

昨年末以来、フィリピン政府は米国に対し、同盟条約の見直しを要求しています。米比同盟の礎となる条約は、1951年に締結された米比相互防衛条約ですが、有事の際の規定は次のようになっています。
第4条 各締約国は、太平洋地域(the Pacific area)におけるいずれかの締約国に対する武力攻撃(armed attack)が、自身の平和と安全にとって危険であることを認識し、憲法上の手続きに従って共通の危険に対処するために行動することを宣言する。
フィリピン政府内で見直し論争の中心にいるのは、ロレンザーナ(Delfin Lorenzana)国防相です。国防相は昨年末、米比相互防衛条約を見直すべきであり、見直しが不調に終わった場合は条約の破棄もありうる、とまで発言しました。

ドゥテルテ大統領は対中接近の理由の1つとして「同盟国米国は、南シナ海有事に際してフィリピンのために中国と戦う意思はない。フィリピンも中国と戦争する力はない。そのためフィリピンは中国とは対決せず、対話姿勢をとる」という論理に言及しています。

この理屈は故なきことではなく、スカボロー事案でのフィリピンの失望がありました。2012年、スカボロー礁が中国との対峙の果てに中国の実質的な管理下となった際にも、米国は軍事介入することはありませんでした。フィリピン政府は、米国が南シナ海の領有権問題で中立を保ち、有事の際に同盟条約に基づきフィリピンを支援することを確約しないことに、不満を強めていました。

そのためロレンザーナ国防相は、南シナ海有事に際して米国がフィリピンの防衛に確実にコミットするよう、条約の見直しを要求しました。要求のポイントは2点あり、条文にある「太平洋地域」と「武力攻撃」の定義です。

ロザンナーレ比国防相

国防相は、南シナ海有事の対応に沿う形で、定義を明確化するよう求めました。フィリピン側の不満を受け、ポンペオ国務長官は2019年3月にフィリピンを訪問した際、「南シナ海は太平洋地域の一部であるため、南シナ海におけるフィリピン軍、航空機、公船に対する武力攻撃は、米比相互防衛条約第4条における相互防衛義務に該当する」と述べ、南シナ海有事におけるフィリピンの防衛に関し、以前より踏み込んだ発言を行いました。

またアメリカのソン・キム(Sung Kim)駐フィリピン大使は、海上法執行機関や武装漁民を念頭に「外国政府の意を受けた民兵よる攻撃も、『武力攻撃』に含まれうる」と述べ、フィリピン側の要求に応える形をとりました。

政権内では同盟見直しに関する関係者の発言にはバラつきがあり、例えばロクシン(Teodoro López Locsin Jr.)外相は見直し不要論者であり、ドゥテルテ大統領自身はこの問題に関し意見表明を行っていません。

こうしたやり取りを見ていると、ドゥテルテ政権は米国との間で同盟に基づく協力関係を強化するというよりは、フィリピン側の不満を表明し、米比同盟の不備を明らかにし、政権の現在の対中アプローチを正当化しようしている観さえあります。

実際、2019年5月の総選挙ではドゥテルテ陣営が大きく勝利して政権基盤を盤石にすると共に、大統領自身の支持率も高い水準を保っているため、ドゥテルテ大統領は、自らの政策の優先順位に一層確信と自信を深めているように見えます。

次世代移動通信システムの5Gをめぐる米中の対立に関しても、ロペス(Ramon Lopez)貿易相は、ファーウェイをフィリピン政府として必ずしも排除しない意向を示しました。これに対してキム大使は、アメリカとフィリピンの間で同盟関係に基づく軍事情報の共有が困難になる可能性があるとの懸念を示しました。

ドゥテルテ政権関係者から同盟の解消にまで言及がある中で、ファーウェイを導入しないよう米国がフィリピンに対して圧力をかけても、効果は未知数です。総じてフィリピンは、現在の中国との関係のあり方を変えるつもりはなく、今後も中国寄りの対中・対米関係の維持と、状況に応じて適宜再調整を行う、という対応をとると考えられます。

その方向性の中で、エスパー米国防長官は13日までに、フィリピン政府から「訪問米軍に関する地位協定」を破棄するとの通知を受けたとし、遺憾の意を表明しました。

エスパー国防長官

協定は1988年の締結で、米軍用機や艦船の比国内への自由な寄港を承認。米軍人には入国査証や旅券の対応などの規制が緩くなっています。

最近訪比したばかりだった長官はベルギー・ブリュッセルへ向かう機中で、廃棄の通知は届いたばかりだとし、米国の対応を決める前に米軍司令官の意見を聞く必要があると記者団に述べました。

トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に、「彼らがそうしたいならそれでいい。多額の金を節約できる」と述べ、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領とは「とても良好な関係」にあるとアピールしました。

フィリピンでは、地位協定をめぐり議論が割れています。左派や国家主義者らは、罪に問われた米兵の特別扱いを保証するものだと非難しています。一方、地位協定を破棄すればフィリピンの防衛力が低下し、南シナ海における中国の野望を阻止するという米国の目標にも支障が出ると擁護する声もあります。

ドゥテルテ政権の麻薬犯罪撲滅作戦では、容疑者多数が当局により殺害され、欧米諸国を中心に人権侵害との批判が強いです。

問題なのは、ドゥテルテ大統領が批判に耳を貸さず、欧米への反発から、人権状況に口出ししない中国にすり寄りつつあることです。

強権や人権弾圧で欧米の批判を受ける国に経済援助を手に近づき、影響下に置くのは中国の常套手段です。ASEANでは親中派のカンボジアがその典型ですが、フィリピンの立場は特別です。

ハーグの仲裁裁判所は南シナ海での中国の主張を退けました。勝訴した当事国がフィリピンであることを忘れるべきではありません。

裁定は中国の海洋拡大をやめさせる大きな拠り所であり、フィリピンは本来、先頭に立って中国の非を鳴らすべきなのです。裁定が中国から経済援助を引き出すカードであってよいはずはありません。

目先の利益に飛びつき、南シナ海の不当な支配を許してよいのでしょうか。対中連携を再確認する形で、破棄撤回を決断すべきです。

トランプ大統領も「多額の金を節約できる」などとして、「訪問米軍に関する地位協定」の破棄を許容すべきではありません。ただし、トランプ大統領としては、様子見というところなのだと思います。南シナ海の安全保証に後退があるようなことだけは、避けてもらいたいです。

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南シナ海問題、米国とフィリピンの「温度差」―【私の論評】米国とアジア各国にTPP協定を広げ対中国経済包囲網を強化するが日本の役割(゚д゚)!


2019年10月28日月曜日

アルバグダディ排除がトランプのシリア撤退に対する民主党の断固とした率直な批判に一石―【私の論評】劇的に有利となったトランプ氏の大統領選(゚д゚)!

アルバグダディ排除がトランプのシリア撤退に対する民主党の断固とした率直な批判に一石

排除されたISの指導者アブ・バクル・アルバグダディ

<引用元:FOXニュース 2019.10.27

27日、トランプ大統領がイスラミック・ステートのアブ・バクル・アルバグダディ指導者の排除作戦に成功したことで、民主党に混乱が生じている。複数の党幹部は最近、ホワイトハウスはシリアでの米国撤退後にテロ組織と戦うための「確かな計画」を持っていない、と公に不満を漏らしていた。

民主党のメッセージが裏目に出たことを印象付ける兆しとして、NBCの「サタデー・ナイト・ライブ」は、トランプがISISのために「雇用」を生み出したと示唆するタイミングの悪いコントを放送していた――大統領が記者会見を開いてアルバグダディの死亡を発表するわずか数時間前のことだ。コントはシリア北西部での2時間にわたる深夜の急襲が実行されている頃に放送されていた。

「民主党がこれについて何というべきか考え出そうとリアルタイムで悪戦苦闘しているのを見るのは、本当に興味をそそる」とジャーナリストのグレン・グリーンウォルドは27日に話した。「彼らは愛国的で反ISISでありたいと思っているが、(ウサマ・ビンラディンのことで)オバマを褒めちぎったことと矛盾しないようにトランプを中傷する方法も必要としている。容易な綱渡りではない。健闘を祈る!」

その日、民主党は――ナンシー・ペロシ下院議長、上院外交委員会幹部のボブ・メネンデス、ジョー・バイデン元副大統領を含めて――新戦略に落ち着いたようだ。歴史的急襲を実行した兵士を称賛しながら、多少なりとも大統領を称賛することをあからさまに避けたのだ。

民主党の一部では、ロシア軍は空域が利用できるように通知されていたのに、自分たちは作戦のことを事前に知らされなかったという不満の声もあった。民主党議員が実施している大統領の弾劾調査は、メディアへの情報のリークが多かったが、大統領は27日、急襲前に民主党議員に知らされなかったのは、作戦がリークされる懸念があったためだと示唆した。

「特殊部隊とインテリジェンス・コミュニティ、そして勇敢な軍の専門家がテロリストのアブ・バクル・アルバグダディに裁きを下したことについてお祝いを述べる」と、2020年にトランプの座を奪おうとしている多くの民主党の1人であるバイデンは述べた。またバイデンはトランプに「ISISが再結集したり、米国に再び脅威をもたらすことを防ぐために圧力を保つ」よう求めた。

一方ペロシは「軍とインテリジェンス専門家の勇敢な行為、献身、技能」を称賛し、「地域のパートナーの働きに感謝の念を示し」、それからトランプが「シリアのクルド人パートナーに対するトルコの侵攻にゴーサインを出した」ことを非難した。

ところが2011年5月にオバマ大統領がウサマ・ビンラディンの死亡を発表した時、ペロシは最高司令官を称賛するのをそれほど渋っていなかった

コメンテーターの中には、ワシントン・ポストもビンラディンが殺された時と異なる基準を27日に適用したと指摘する声もあった。同紙の注目を集めた、修正後の見出しは「イスラミック・ステートを指揮する厳格な宗教学者、アブ・バクル・アルバグダディが48歳で死亡」というものだ。

同情的な死亡記事ではテロ指導者を、「サッカー好きだが自由な時間を地元のモスクで過ごすのを好んだ内気で短絡的な若者」と説明し、「組織の過激主義的な見方と悪質な戦術にもかかわらず、バグダディ氏は指導者として抜け目のない実用主義を保った」と指摘した。

だが2011年、ビンラディンの死を発表したワシントン・ポストの見出しでは、きっぱりと「テロ組織」の指導者と呼んでいた。

ペロシは27日の声明の中でさらに、「下院は議会指導部ではなくロシアが事前に通知されたこの急襲について、また地域での政権の総合的な戦略について説明を受けなければならない」と要求した。

そうした不満はすでに、ツイッター上で進歩主義のコメンテーターとジャーナリストの間で共感を呼んでいた。CNBCのジョン・ハーウッド記者は、「トランプはペロシに事前に話しておらず、ペロシが機密情報を守ると信頼していなかったということだ。ペロシは情報委員会の民主党幹部だった。・・・トランプはホワイトハウスでロシア高官に機密情報を与えた」と述べた。

メネデス(民主党、ニュージャージー)に関しては、やはりトランプを称賛したり、敬意を表したりすることは避け、その代わりに「米国人の命を無慈悲に奪い、中東の人々を恐怖に陥れ、地域の平和と安全を脅かした残忍な殺人者に対する攻撃を成功させた軍隊の男女」を称賛した。

メネデスは、作戦が「我が国を守るために日々命を懸ける軍人の勇気の証拠であり、シリア民主軍とイラク軍を含めて、現場の信頼でき能力のあるパートナーと共に、米国の持続するリーダーシップが重要であることをはっきり思い出させてくれるものだ」と述べた。

また一方で共和党は、ISIS指導者の死をテロ組織に対するトランプ政権のキャンペーンの頂点と呼んだ。イラクを占領していたいわゆるISISカリフェイト(カリフ制国家)は、地域の米軍と同盟軍からの空軍力の集中攻撃で大部分が崩壊した。

共和党テネシー州のマーク・グリーン下院議員は、下院国土安全保障委員会のメンバーであるが、急襲を実行した兵士を称賛し、「いうまでもないが、私は大統領を称賛する。・・・今朝の大統領の声明は素晴らしかった」と述べた。

他の共和党員も、幾分控えめな表現ではあるが同じ感情を表した。

「トランプ大統領とトランプ政権はすでにISISという蛇の体の大部分を打倒していた。だが昨日、バグダディを殺したことで蛇の頭を切り落とした」と共和党テキサス州のジョン・ラトクリフ下院議員は、FOXニュースの「サンデー・モーニング・フューチャーズ」に語った。

下院司法委員会の共和党幹部であるジョージア州のダグ・コリンズ下院議員は、急襲前に民主党議員に知らせないというトランプの判断は正当だと示唆した。

「現在ISISに注目する人々は誰でも、窮地に陥って自爆した自分たちの指導者に注目するはずだ」とコリンズは話した。コリンズは「もっと重要な話」は、トランプが「シリアに関して情報委員会から情報を得られない」ことであり、「この10カ月間弾劾支持者によって攻撃され、嫌がらせを受けてきたこの大統領が、こうしたことが全て下院で行われている間に、委員会を遮断したということを示している」と続けた。

混乱が始まったのは、トランプが27日の朝、国民に演説を行ってからのことだ。大統領はその時ISIS指導者――トランプが「腰抜けのけだもの」と呼ぶ悪名高い殺人者でレイプ犯――が、「悪質で暴力的に、臆病者として、逃げ叫びながら」死んだと発表した。

米国特殊部隊がイドリブの居住地を急襲した際に、アルバグダディは自爆用のベストを起爆させ、子供3人を道連れに自殺したとトランプは述べた。

「バグダディの多数の戦闘員と仲間が一緒に殺されたが、作戦では1人も犠牲者が出なかった」とトランプは発表し、米国がISISに関する「非常に敏感な」資料を回収したと付け加えた。トランプはそれから米部隊のことを「君たちは世界中で本当に最高だ」と述べた。

トランプは、アルバグダディは米部隊にトンネルに追い詰められて死亡し、ISIS指導者は「ずっとめそめそと泣き叫んでいた」と述べた。

【私の論評】劇的に有利となったトランプ氏の大統領選(゚д゚)!

2017年にトランプ大統領がシリアを攻撃したときには、共和党は無論のこと、民主党からも大絶賛されました。それについては、このブログにも掲載しました。以下にその記事のリンクを掲載します。
トランプ大統領のシリア攻撃をクリントン氏も支持―【私の論評】米民主党・メディアがトランプ大統領の政策をなぜ支持したのか理解不能の民進党(゚д゚)!
    米駆逐艦ポーターが地中海から行ったシリアへのミサイル攻撃。
    米海軍提供(2017年4月7日撮影・公開)

この記事は2017年4月9日のものです。 詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
 4月4日、トランプ大統領がシリア政府軍の化学兵器使用への制裁として、59発のトマホーク巡航ミサイルによるシリアのシャイラト空軍基地への攻撃を断行した。 
 この攻撃は米国内で共和、民主の両党側から幅広く支持されている。トランプ氏の施策が両党側からこれだけ支持されるのは、1月に大統領に就任して以来初めてである。この展開を機に、トランプ政権に対する一般の評価にも変化が起きるかもしれない。
米国では、米国の敵とみなされるような敵に対してこのような攻撃を敢行して、成功を収めた場合、与野党に限らず、超党派で称賛の嵐が起こることがあります。

当時はトランプ政権のシリア攻撃を手放しで絶賛していたクリントン氏

このようなことは、日本では耐えて久しいことなので、このブログにもとりあげ、解説したものです。最近の日本の野党は、与党政権が何をしても、反対するばかりで、なにか良いことをしたとしても、全く評価しないどころか、良いことに関しても、重箱の隅をつつくように、なにやら良くないところを探して批判するばかりです。

この記事では、そうした日本の野党の異常ぶりについて解説しました。

しかし、上のFOXニュース記事を読んでいると、最近の米民主党は日本の野党とあまり変わりないようです。本来なら、米国の敵、世界の敵である、アブ・バクル・アルバグダディが排除されたのですから、これは両手をあげて喜ぶべきことです。

しかし、なんというか余裕がないというか、とにかくトランプ大統領やトランプ政権を称賛する声は、米国民主党からは、ほとんど漏れ聞こえてきません。

これは、米国の民主党も日本の野党のように、余裕がなくなってきたということを示しているのではないでしょうか。日本の野党の場合は、どうあがいても、政権を奪取することなど、誰がみても明らかです。何かを変えない限り、とても政権与党になることなど、考えられません。

米国民主党もそれに近いような状態になっているのではないでしょうか。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプは大差で再選される──最も当たる調査会社が予測―【私の論評】現時点で、トランプの再選はないと、どや顔で語るのは最悪(゚д゚)!
フロリダ州オーランドの選挙集会で再選への出馬表明をしたトランプ大統領夫妻(6月18日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみ引用させていただきます。
今年はじめの複数の調査会社の調査結果や、今回のムーディーズ・アナリティカの調査においても、トランプ大統領が大統領選で大差で再選されると予測しているわけですから、よほどのことがない限り、トランプ氏が再選されるとみて間違いないのではないでしょうか。 
ただし、選挙は水ものですから、最後の最後までどうなるかはわかりはしません。ただし、現時点で、トランプは弾劾されるとか、トランプの再選はないと、さしたる裏付けもないにもかかわらず、日米のテレビや新聞の情報だけで判断して、どや顔で語るのはやめておいたほうが良いと思います。 
はっきりいいますが、そのようなことをすれば、馬鹿と思われるだけでなく、信用を失います。
大統領選においては、不利このような状況ですから、米民主党が焦燥感を感じるのも無理からぬところがあると思います。

米国においては、大手新聞は全部リベラルであり、大手テレビ局はFOXニュースを除いた他局もリベラルです。大手新聞も大手テレビ局も、どちらかといえば民主党よりです。その他、教育機関もエンターティンメント業界も、民主党よりです。

そのため、共和党よりの声など、あまり新聞やテレビなどでも報道されません。共和党の中でも保守派の声などかき消されてしまいます。

だから、トランプ政権が登場したばかりの頃は、トランプが大統領に選ばれたのは、番狂わせくらいの感覚があったのでしょう。米国民主党としては、次の大統領選挙では当然のことながら、また民主党が勝ち、政権を奪還できるに違いないという楽観的な気分があったのだと思います。

そうして、米国でも日本でも、米国民主党よりのメディアがトランプ氏についてのネガティブな情報を大量に流すので、多くの人が無意識に「トランプ不利」と思い込んでいるところがあるのですが、そうではないことが、様々な調査機関の調査の結果より明らかになっています。だから、米民主党は相当の危機感を持つようになったのでしょう。そこにきて今回の、アルバグダディ排除です。

これから行われる世論調査で、トランプ大統領の支持率がさらに、上がるのはまず間違いないでしょう。

2011年5月、米軍がアルカイダの首領ウサマ・ビンラディンのパキスタン国内の隠れ家を急襲して殺害した時も、当時のオバマ大統領の支持率が急上昇しました。殺害発表の翌日ワシントン・ポスト紙が行った世論調査で同大統領の支持率は56%で9ポイント上昇し約1年半ぶりの高水準になりました。


当時オバマ大統領は1期目でしたが内政、外交共に手詰まりで、前年に行われた中間選挙では民主党が大敗し2012年の再選選挙も危ぶまれる状況にありましたが、この支持率回復で体制を立て直し、共和党のロムニー候補を大差で破って再選を果たしています。

この時、オバマ大統領は再選に向けての活動を開始した直後のことだったのでこのビンラディン殺害作戦は「選挙対策」ではないかとも言われました。現に、この作戦に参加した米海軍特殊部隊SEALの隊員の一人マット・ビソネッティ氏は雑誌「ワイヤード」電子版にこう語っていました。

「我々はこの作戦が選挙のためだと知っていました。我々は道具箱の中の道具みたいなものなんです。我々の作戦が成功すれば、政治家はその成果をできるだけ膨らませ、自分たちの功績にします」

さらに2003年12月、湾岸戦争の敗北の後逃亡していたサダム・フセイン元イラク大統領が隠れ家の地下穴に隠れているところを米軍に確保され米国民への「大きなクリスマス・プレゼント」と言われたことがありました。この時もジョージ・ブッシュ(子)大統領は翌年の再選選挙で苦戦が予想されていましたが、この一件をきっかけに支持を取り戻し民主党のジョン・ケリー候補に激戦の末勝利していました。

今回のアルバグダーディ容疑者死亡発表のタイミングですが、来年の大統領選に向けて与野党ともに盛り上がり始めた中でトランプ大統領はいわゆる「ウクライナ疑惑」をめぐって民主党から弾劾の追求を受け、またシリアからの米軍撤兵に対して与野党から批判を浴びているところでした。

しかし、この奇襲作戦を命じ成功させたことで合衆国軍隊の「最高指揮官」としての役割を果たして「リーダーシップに欠ける」という批判をひとまず回避できそうです。また、今回の作戦ではトルコやロシア、さらにはクルド族の支援も受けたと発表して、先の米軍撤兵も正当化できるでしょう。

世論調査で、すでにトランプ優勢となっています。今回の出来事は、オバマ前大統領のように、再選に向けての不利な潮目が変わる程度のことではすまないような気がします。トランプ圧倒的有利という具合になり、今後の米国政局はそれを前提にしないと考えられなくなるかもしれません。


民主党へのしっぺ返しもあるトランプ弾劾調査―【私の論評】トランプ弾劾は不可能、禁じ手を複数回繰り出す民主党は相当追い詰められている(゚д゚)!

2019年10月3日木曜日

プーチンの国ロシアの「ざんねんな」正体―【私の論評】将来の北方領土交渉を有利に進めるためにも、日本人はもっとロシアの実体を知るべき(゚д゚)!

プーチンの国ロシアの「ざんねんな」正体

外交官の万華鏡河東哲夫


こわもてで鳴らすプーチンだが、実は「愉快な」人かも

<独裁者が君臨するこわもてロシアの素顔は実は「ずっこけ」――この国に振り回されず、うまく付き合う方法は?>

ロシアと言うとすぐ「おそロシア」とか、もろ肌脱いだこわもてのウラジーミル・プーチン大統領といった話になるが、まじめくさった議論はもう飽きた。実はこの国の人たちはかなりずっこけた「ざんねんな」存在。ロシアを知る者には、それがまたたまらない味なのだ。

世界を席巻する人工知能(AI)やロボット技術について、プーチンの腹心である元財務相アレクセイ・クドリンは、「この開発に遅れれば、ロシアは永遠に遅れることになる」と決まり文句のように言う。奇想天外なことを考えるのが好きなロシア人だから、AIやロボットの開発には向いている。だが経営・技術要員の致命的な不足や製造技術、品質管理、サプライチェーンの遅れによって、多くはアイデア倒れに終わってしまう。

2013年には角速度センサーを逆向きに付けたため、ロケットが発射直後に反転して地上に激突した。開発中のロボットが研究所から迷い出て、大通りの真ん中でバッテリー切れになったこともあった。プーチンは「原子力で長期間、空中待機する巡航ミサイル」を造ると豪語していたが(簡単に撃墜されると思うのだが)、今年8月にはそれが開発中に爆発して技術者を5人も殺し、放射能をまき散らした。

プーチンはじめロシア政府のお歴々は口をそろえて、「いつまでも経済・財政を石油に依存していてはいけない。製造業を何とかしないとロシアはやっていけない」と言うのだが、製造業はロシアのアキレス腱であり続ける。数年前、プーチンは友人の実業家が開発した国産乗用車の試乗会に招待された。ハンドルを握る友人の隣に乗り込むプーチンは冗談半分、「おい、君。大丈夫だよね。この車バラバラにならないよね」と聞いたのだった。

プーチンは独裁者にあらず

ロシア人は契約や規則より、まず自分の都合を優先する。きちんと仕事をしてもらいたかったら、いつも電話で友情を確認し、月に1度は飲みに行くくらいでないといけない。

知識層の地金は西欧のリベラリズムだが、人間の常でロシア人も汚いところは、どうしようもなく汚い。例えばモスクワの墓地は利権の塊だ。「いい場所」は、顧客から袖の下を巻き上げる黄金の小づちでもある。今年6月には、警察幹部が絡む墓地利権の調査をしていた新聞記者が警官からポケットに麻薬を突っ込まれ、麻薬密売未遂の容疑で逮捕される事件があった。非難の声が巻き起こり、事件を仕組んだ警察幹部2人が懲戒免職になっている。

12年前のある日、ビクトル・ズプコフ首相は閣議で部下を叱り飛ばした。「サハリンの地震復興予算は既に送金したはずなのに、現地からはまだ届いていないと言ってくる。調査して是正しろ」。ところが、2カ月たっても問題は解決されなかった。どうも予算は送金の途中で、何者かによって「運用に回されて」しまうらしい。

この国では悪い意味での「個人主義」がはびこっていて、国や国民、会社や社員全体のことまで考える幹部は数えるほどもいない。多くの者にとって公共物は、自分の生活を良くするために悪用・流用するものだ。

そんなわけだから、14年3月、介入開始からわずか2週間ほどでクリミア併合の手続きが完了したとき、プーチンは冗談半分で部下に言った。「本当かい、君たち。これ本当に、われわれがやったのかね?」

プーチンはこのようなロシアにまたがる騎手のような存在だ。公安機関という強力な手綱はあるが、馬が暴れだせば簡単に放り出される。「独裁者」とは違うのだ。ドナルド・トランプ米大統領と同じく、(まがいものの)ニンジンで馬をなだめているポピュリストの指導者なのだ。

そして18年10月、年金支給年齢を5年も引き上げる法案に署名したことで、プーチンは国民の信頼を裏切った。男性の平均寿命が67歳のロシアで、年金支給を65歳から(女性は60歳から)にするというのだから無理もない。

それから1年がたち、プーチンの顔色は冴えない。老いの疲れも見える。ロシアの国威を回復しようと、家庭も犠牲にして20年間頑張ってきたのに、できたことはボリス・エリツィン時代の大混乱を収拾し、ソ連時代のようなけだるい安定を取り戻しただけ。プーチンが政権を握った00年当時に比べると、モスクワは見違えるほど美しく清潔になり、スマートフォンを活用した利便性は東京を上回るほどだ。だが、ロシアに上向きの勢いはない。24年にプーチン時代は終わるので、彼の周辺は利権と地位の確保を狙ってうごめき始めている。

2つの「ソ連」を生きる人々

プーチンはロシアを復活させるに当たって、西側の影響を受けたいわゆる「リベラル」分子を政権から遠ざけた。そのため彼の時代には、エリツィン時代に冷や飯を食わされたソ連的なエリートが復活した。彼らは昔の共産党さながらの万年与党「統一ロシア」に糾合され、その硬直した官僚主義と腐敗は国民の反発を買っている。

政権の柱である公安機関と軍も利権あさりが目に余る。今年4月には、連邦保安局(FSB)の銀行担当の複数の幹部が拘束された。銀行から賄賂を受け取って、中央銀行による免許停止措置を免れさせていたためだ。

7月にモスクワで起きた民主化要求デモをきっかけに、プーチンは公安機関への依存を強めている。約1カ月半の間に全国で3000人が一時拘束され、首謀者の自宅には深夜に公安が踏み込んで逮捕する。まるでスターリン時代のような取り締まりだ。


ロシアは高齢者が少なく、35歳以下の若い世代が人口の約半数を占める。彼らの多くは自由な西側文化に染まり、強い権利意識と上層部の汚職に対する厳しい意見を持ち、SNSの呼び掛けで集会・デモを繰り広げる。何ともちぐはぐだが、現在のロシアでは上層部と政府依存体質の大衆が「ネオ・ソ連時代」を、知識人層は「ネオ・ペレストロイカ時代」を生きている。

ロシアの歴史は繰り返す。支配と富の分配構造が固まって70年もたつと、ひずみと不満が増大して暴力的な革命が起きる。1917年のロシア革命、そして1991年のソ連崩壊がそれだ。ソ連崩壊の結果生まれた現在の構造は、今また破断する定めなのかもしれない。ただロシアの場合、革命は進歩をもたらさない。特権階級が交代するだけだ。

このような国とは、「適当」に付き合うべきだ。極東ロシアは政治・経済両面で日本にとって大きな意味を持たない。極東ロシア軍は人員、装備とも手薄で、日本の脅威ではない。北方領土は当面返さないだろうから、この問題でこちらから譲歩することは避ける。諦めて平和条約を結んでも、見返りに得られるものはない。

ロシアに反日感情はない。むしろ自らの対極とも言える日本文化、日本人に憧れている面もある。きちんとしていないロシア人に振り回されないように気を付けさえすれば、ロシアは「愉快な」相手なのだ。

<ニューズウィーク日本版2019年10月01日号:特集「2020サバイバル日本戦略」より>

【私の論評】将来の北方領土交渉を有利に進めるためにも日本人はもっとロシアの実体を知るべき(゚д゚)!

日本では、ロシアを未だにに超大国と見るむきも少なくないですが、やはり等身大にみるべきでしょう。このブログでは過去に、ロシアの実体を何度か掲載してきたことがあります。

ロシアの経済力は、現状では韓国と同程度です。韓国と同程度とは、どのくらいなのかということになりますが、詳しくはGDPを調べていただくもとして、大体東京都と同じくらいです。

東京都のGDPは日本全体の1/3くらいです。ロシアの経済の現状はこの程度です。この程度の国ができることは、経済的にも軍事的にも限られています。

さらに、人口は1億4千万人程度と、あの広大な領土に比較すると、人口では日本よりもわずかに2千万人しか多くないのです。人口密度がいかに低いのか、よく理解できると思います。

中国と国境を接する極東では、さらに人口密度が低いので、中露国境をまたいで、著しい人口密度の差があります。

この人口密度の極端な違いから、多くの中国人が国境を越境して、物販はもとより様々なビジネスを行い、まるで国境がなきがごとくの状態になっています。これを国境溶解と呼ぶ人もいるくらいです。

ただし、最近では変化も見られます。最近では、ロシア人も中国に出稼ぎにでかけるといいます。情勢は驚くほどに変化しているのです。ただ、国境溶解がより鮮明になっていることは確かです。

このように、現在のロシアは、中国ともまともに対峙できる状況ではありません。かつての中ソ国境紛争など信じられないくらいです。

とはいいながら、ロシアはソ連の核兵器と、軍事技術の直接の継承者であり、あなどることはできません。

特にICBM、SLBMなど、これは軍事技術的にはすでに米露では、数十年前から、成熟した技術であり、両国とも40年も前の核兵器が今でも現役です。

たとえば、米国防総省によると初期のフロッピーディスク規格となる8インチフロッピーディスクが未だに現役だといいます。大陸間弾道ミサイル、戦略爆撃機、空中給油・支援機など一連の核兵器を運用、調整する指揮統制系統だとしており、現場では今から40年前に発売された1976年「IBMシリーズ/1」や当時普及し始めていた8インチフロッピーディスクが運用に用いられているといいます(2017年現在)。

弾道ミサイル発射管制センターで撮影された写真。8インチフロッピーディスクが使用されている

ロシアでも同じ状況です。ソ連時代に開発された、核兵器が未だに現役なのです。それを考えると、確かに軍事的には未だにロシアは侮れない相手であるのは確かです。

とは、いいながら、ICBMやSLBMなどは、実際にはなかなか使用できない兵器であるのも確かです。しかし、ソ連時代の軍事技術を継承したロシアはいまでも、軍事的には侮れないことは確かですが、経済的には見る影もありません。

考えてみてください、仮に東京都が日本から独立して、軍事国家に豹変したとして、世界に向かってどの程度のことができるでしょうか。米国あたりが本気になれば、あっという間に潰されます。さらに、将来的にも経済が伸びる要素はほとんどありません。今のロシアはまさにそのような状況なのです。

経済的にみても、プーチンの国ロシアは、まさに「ざんねんな」国なのです。この、ずっこけた「ざんねんな」ロシアと付き合うには、たしかにもっと鷹揚に構えたほうが良いのかもしれません。

日本では目を疑う熊の散歩もロシアでは日常風景の一つ

北方領土交渉についても、このブログにも過去に掲載しているように、現在帰ってこないからといって、慌てる必要は全くないと思います。

中国が経済的に弱体化してくれば、今は表面化していない、ロシアの中国に対する不満が爆発します。そうなると、過去の中ソ対立のように、中露対決が再現することになります。

経済的に弱体化した中露が激しく対立すれば、ますますロシアの経済力は落ち込みます。そのときこそ、日本は北方領土交渉を強力に推し進めるべきなのです。今は鷹揚にかまえるべきです。とはいいながら、北方領土に関しては、ロシアに一切譲歩すべきではありません。

日本としては対ロシアでは、北方領土が最重要ですが、その他では、経済的にも技術的にもロシアに頼ることはないです。北方領土以外はもっと鷹揚に構えてつきあって行くべきと思います。

ただし、ロシアというと、日本人は強面の「おそロシア」を思い浮かべたり、ロシアマフイアの凄惨さを思い浮かべたり、第二次世界大戦末期や、その後の日本に対する卑劣極まる振る舞いが忘れられない面もあります。確かに、ロシアにはそういう一面はあります。かといつて、それが全部というわけでもありません。

北方領土交渉を将来日本に有利にすすめるためにも、日本人はもっとロシアの実体を知るべきと思います。少なくとも、かつてのソ連時代の超大国のイメージは早々に捨て去るべきです。

北方領土は、一昔前なら戦争して取り返すしかありませんでした。しかし、現在では戦争に変わる方法もありますが、一昔前の戦争と同じくらいの、気構えと機知がないと到底叶うものではありません。それを実行するためにも、現在のロシアを熟知する必要があるのです。

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2019年8月22日木曜日

中国の属国へと陥りつつあるロシア―【私の論評】ロシアの中国に対する憤怒のマグマは蓄積される一方であり、いずれ、中国に向かって大きく噴出する(゚д゚)!


岡崎研究所

 ロシアがクリミア半島を併合して欧米諸国の経済制裁を受けるようになり、また、シリア問題で人権を蹂躙しているアサド政権を支援していることから西側諸国と離反するようになり、プーチン大統領は、東の中国を向くようになった。

 中国の習近平主席も、米国との貿易戦争やファーウェイの5Gをめぐる対立等で、ロシアと接近を図っている。


 ロシアは、最近、5Gで中国のファーウェイを採用することを決めた。また、中露は、海軍の合同軍事演習を活発化させている。仮想敵国は日米両国とも言われている。

 中露関係については、今やロシアは中国のジュニア・パートナーである。いま、中国のGDPはロシアの6倍であるが、その差はどんどん広がっている。IMF統計では、ロシアはGDPで韓国にさえ抜かれかねない状況である。

 プーチン大統領は、自分の取り巻きに利権を配分し、権力を維持しているが、国家としてのロシアを大きく衰退させてきた政治家である。石油資源に依存するロシア経済を改革するのが急務であるとわかっているのに、ほとんどそれができていない。

 ロシア史を見ると、ロシアの指導者は、スラブ主義を標榜してロシア独自の道を追求する人と、欧米との関係を重視する欧化主義者が交代してきている。ロシア独自の道に固執したスターリンの後の本格政権は、西側との平和共存を唱えたフルシチョフ(日本に歯舞と色丹の2島を返還する決断をしたが実現しなかった)であった。その後、スラブ主義者とも言うべきブレジネフが登場した。その後は、欧米との関係改善を目指したゴルバチョフ、エリツィンが指導者として登場した(その時には歯舞、色丹、国後、択捉の北方領土4島が日露間の交渉の対象であるとする東京宣言ができた)。 

 エリツィンは、プーチンを改革者であると考えて後継者に選び、自分の家族を訴追などから守ってくれることを期待した。

 プーチンは、後者の役割は義理堅く果たしたが、ユーラシア主義者として欧米に対抗する路線をとった。そういう経緯で、プーチンは必然的に中国に近づいた。それが今の中露の蜜月関係につながっている。

 しかし、プーチン後は、この蜜月関係が続く可能性よりも、ロシアの指導者が欧米重視主義者になり、この蜜月は続かない可能性の方が高いと思われる。

 プーチン政権の上記のような傾向にもかかわらず、中露間にくさびを打つという人がいるが、プーチンがいる限り、そういうことを試みてもうまくいかないだろう。北方領土で日本が妥協して、中露間にくさびを打つことを語る人もいたが、ピント外れである。

 7月27日付の英エコノミスト誌は、ロシアが中国の属国になってきていると指摘している。その指摘は正しい。ロシアがそれから脱したいと思う日は来るだろう。そうなったときには、ロシアとの関係を考える時であろう。

 中国が中露国境沿いで安定の源になるとの見方が一部にあるが、そういうことにはならないだろう。極東ロシアは約650万の人口であり、千葉県とだいたい同じである。他方、中国の東北には1億以上の人口がある。1860 年の北京条約で沿海州などはロシア領となったが、ロシアは2004年の中露国境協定の締結後、国境が決まったのだから、中国に北京条約は不平等条約であったとの教育をやめてほしいと要望しているが、中国はそれを聞かず、そういう教育を続けている。中露国境の安定を望んでいるのはロシアであって、必ずしも中国ではない。

【私の論評】中露対立が再び激化した場合、日本は北方領土交渉を有利にすすめられる(゚д゚)!

中露関係の歴史は17世紀、ロシアがシベリアを東進し、やはり東アジアに勢力を拡張していた清朝と接触したときにはじまります。その結果、両者が結んだ1689年のネルチンスク条約は、高校の世界史の授業でも習う重要事件で、名前くらいご存じでしょう。


この条約がおもしろいです。条約とよばれる取り決めなのだから、互いに対等の立場でとりむ結んだものです。しかし東西はるかに隔たった当時のロシアと清朝が、まさか全く同一のルール・規範・認識を共有していたわけはありません。にもかかわらず、両者は対等で、以後も平和友好を保ちえました。

なぜこのようなことが可能だったのでしょうか。わかりやすい事例をあげると、条約上でも使われた自称・他称があります。ロシアの君主はローマ帝国をついだ「皇帝(ツァー・インペラトル)」ですが、そのようなことが清朝側にわかるはずもなく、清朝はロシア皇帝を「チャガン・ハン」と称しました。

ロシアも中華王朝の正称「皇帝」を理解できず、清朝皇帝を「ボグド・ハン」と称しました。「ハン」というから、ともにモンゴル遊牧国家の君主であって、「チャガン」は白い、「ボグド」は聖なる、という意味です。つまり客観的に見ると、両者はモンゴル的要素を共有し、そこを共通の規範とし、関係を保っていたことになります。

それは単なる偶然ではありません。ロシア帝国も清朝も、もともとモンゴル帝国を基盤にできあがった国です。もちろん重心は、一方は東欧正教世界、他方は中華漢語世界にあったものの、ベースにはモンゴルが厳然と存在しました。両者はそうした点で、共通した複合構造を有しており、この構造によって、東西多様な民族を包含する広大な帝国を維持したのです。


そのため両者がとり結んだ条約や関係は、いまの西欧、ウェストファリア・システムを起源とする国際関係・国際法秩序と必ずしも同じではありません。露清はその後になって、もちろん国際法秩序をそれぞれに受け入れ、欧米列強と交渉、国交をもちました。しかし依然、独自の規範と論理で行動しつづけ、あえて列強との衝突も辞していません。これも近現代の歴史が、つぶさに教えるところです。

いまのロシア・中国は、このロシア帝国・清朝を相続し、その複合的な構造にもとづいてできた国家にほかならないのです。いわば同じDNAをひきついでいます。両国が共通して国際関係になじめないのは、どうやら歴史的に有してきた体質によるものらしいです。

中露が19世紀以来、対立しながらも衝突にいたらず、西欧ではついに受け入れられなかったマルクス・レーニン主義の国家体制を採用しえたのも、根本的には同じ理由によるのかもしれないです。中ソ論争はその意味では、近親憎悪というべきかもしれません。

西欧世界には、モンゴル征服の手は及びませんでした。その主権国家体制・国際法秩序、もっといえば「法の支配」は、モンゴル帝国的な秩序とは無関係に成立したものです。だからロシアも中国も、歴史的に異質な世界なのであって、現行の国際法秩序を頭で理解はできても、行動がついてこないのです。制度はそなわっても、往々にして逸脱するのです。

しかも中露の側からすれば、国際法秩序にしたがっても、碌なことがあったためしがありませんでした。中国は「帝国主義」に苦しみ、「中華民族」統合の「夢」はなお果たせていません。

ソ連は解体して、ロシアは縮小の極にあります。くりかえし裏切られてきた、というのが正直な感慨なのでしょう。中露の昨今の行動は、そうした現行の世界秩序に対するささやかな自己主張なのかもしれないです。現代の紛争もそんなところに原因があるのでしょうか。

そこで省みるべきは、わが日本の存在であり、立場です。日本はもとより欧米と同じ世界には属していません。しかしモンゴル征服が及ばなかった点で共通します。以後も国家の規模や作り方でいえば、日本は中露よりもむしろ欧米に近いです。

国際法・法の支配が明治以来の日本の一環した国是であり、安倍首相がそのフレーズを連呼するのも、目先の戦術にとどまらない歴史的背景があります。

クリミアはかつてロシア帝国の南下に不可欠の橋頭堡(きょうとうほ)であり、西欧からすればそれを阻む要衝でした。尖閣は清朝中国にとっては、なんの意味もありませんでしたが、現在の中国も過去には何の興味も持っていなかったにも関わらず、近海が地下資源の豊富でことが明らかになると、無理やり「琉球処分」にさかのぼる日中の懸案とされてしまい、中華世界と国際法秩序を切り結ぶ最前線とされてしまいました。

互いに無関係なはずの東西眼前の紛争は、ともに共通の国家構造と規範をもつ中露の、西欧国際法秩序に対する歴史的な挑戦ということで、暗合するともいえるでしょう。

たしかにいまの中露は、欧米に対抗するための「同床異夢」の関係にあるといってよいです。ただし、考えていることもちがうし、「一枚岩」になれないことはまちがいないです。

Russian Flag Bikini

プーチン露大統領と中国の習近平国家主席は昨年6月の中国・北京での首脳会談で、両国の「全面的・戦略的パートナーシップ関係」を確認。軍事・経済協力を強化していくことで合意した。

同年9月の露極東ウラジオストクでの「東方経済フォーラム」に合わせた中露首脳会談でも、両国は米国の保護主義的な貿易政策を批判したほか、北朝鮮の核廃棄プロセスへの支持を表明しました。

さらに同フォーラムと同時期に露極東やシベリア地域で行われた軍事演習「ボストーク(東方)2018」には中国軍が初参加。ロシアのショイグ国防相と中国の魏鳳和(ぎ・ほうわ)国務委員兼国防相が、今後も両国が定期的に共同軍事演習を行っていくことで合意しています。

しかし、同年10月24日付の露経済紙「コメルサント」によると、ここ最近、中国系銀行がロシア側との取引を中止したり、口座開設を認めなかったりする事例が相次いでいるといいます。

国際的な対露制裁の対象外の企業や個人も例外ではないといい、同紙は「中国側はどの企業が制裁対象なのか精査していない。その結果、全てをブロックしている」と指摘しまし。「この問題は今年6月の首脳会談以降、両国間で議論されてきたにもかかわらず、中国側は『是正する』というだけで、実際は何もしていない」と不満をあらわにしました。

同年同月26日付の露リベラル紙ノーバヤ・ガゼータも「中国はロシアの友人のように振る舞っているが、実際は自分の利益しか眼中にない」と批判。「中国の経済成長の鈍化が進めば、中国政府は国民の不満をそらし、自らの正当性を確保するため、攻撃的な外交政策に乗り出す可能性がある。例えばシベリアや極東地域の“占領”などだ」と警戒感を示しました。

実際、露極東地域には、隣接する中国東北部からの中国企業の進出や労働者の出稼ぎが相次いでいます。極東に住むロシア人の人口は今後、減少していくと予想されており、同紙の懸念は「いずれ極東地域は中国の支配下に置かれるのではないか」というロシア側の根強い不安があらわれたものといえます。

同年同月29日付の露有力紙「独立新聞」もこうした中国脅威論を取り上げました。同紙は「ユーラシア経済連合と一帯一路との連携に基づく計画は、実際には何一つ実現していない」と指摘し、「中国によるロシアへの直接投資は、カザフスタンへの投資よりさえも少ない」と指摘しました。

経済発展が著しいウズベキスタンやカザフスタンなどの中央アジア諸国について、ロシアは旧ソ連の元構成国として「裏庭」だとみなしています。しかし、一帯一路も中央アジアを不可欠な要素と位置付けています。

地政学的に重要な中央アジアでの影響力を確保するため、ロシアと中国は、この地域への投資や技術供与、軍事協力の表明合戦を繰り広げており、表向きの双方の友好姿勢とは裏腹に、現実は協調とはほど遠いのが実情です。

このように、中露の友好関係は一時的なみせかけに過ぎないものであり、米国による対中国冷戦が長く続き、中国の力が削がれた場合、中露対立が激化することは必至です。そうして、その状況はしばらくは変わらないでしょう。

現状は、国力特に経済の開きがあまりにも大きすぎるため、さらにロシアは人口密度の低い極東において直接中国と国境を直接接しているという特殊事情もあるため、ロシアが中国に従属しているように見えるだけです。

しかし、プーチンは強いロシアを目指しており、文在寅のように自ら中国に従属しようなどという考えは毛頭ありません。

その実、ロシアの中国に対する憤怒のマグマは蓄積される一方です。これはいずれ、中国に向かって大きく噴出します。

その時こそが、日本の北方領土交渉を有利に進められる絶好のタイミングなのです。また、米国が最終的に中国を追い詰めるタイミングでもあるのです。

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2019年5月25日土曜日

【日本の解き方】日本の「対韓国制裁シナリオ」 仲裁委応じなければ提訴へ! カネでの締め付けが有効に―【私の論評】日本は、文政権時に断交していればポスト文政権と有利に交渉がすすめられる(゚д゚)!


文在寅氏

韓国のいわゆる徴用工判決を受けて、日本政府は日韓請求権協定に基づく仲裁付託を通告したが、これはどういう意図があるのか。今後、日韓首脳会談など歩み寄りの可能性はあるのだろうか。

 河野太郎外相は、パリで開かれた経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会に合わせて、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と会談した。「徴用工」問題については、仲裁委の開催を要請したが、韓国側は同意しなかった。

 日本は今年1月から、日韓請求権協定に基づき、2国間協議を申し入れていたが、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相が、三権分立を理由として「政府としてやれることに限界がある」などの発言をしていた。

23日、韓国の康京和外相(右)と会談に臨む河野外相(パリ)

 これは三権分立を履き違えたものだ。国際協定を履行するためには、必要に応じて立法措置を講ずればよく、その不作為は国際協定を守る意思がないといわれても仕方ない。日本大使館前のいわゆる慰安婦像も、ウイーン条約違反で、しかも公道の不法占拠なので、行政上の措置を取るべきなのに不作為を決め込んでいるのと同じ構造だ。

 いくら韓国政府に誠意がなくても、国際関係では適正な手順、手続きが重要であり、日本は事を急ぐことはできない。そこで、国家間の約束である日韓請求権協定上、次の段階である仲裁委の開催要求に進んだ。

 1月から4カ月経過したこのタイミングは、6月末の20カ国・地域(G20)首脳会議を控えている。日韓首脳会談は「見送り」と日本側から明確な意思表明がなされているが、これは韓国が会いたければ仲裁委を開けとの、日本からの強烈なメッセージでもある。

 しかし、これまでの韓国のスタンスから見て、このまま応じない可能性も高い。

 それに韓国が応じなければ、国際社会の前で赤っ恥をかくに違いない。日本はG20議長国であり、国際社会へのアピールの機会も多い。

 そして、韓国が応じない場合、次の段階として国際司法裁判所(ICJ)への提訴が検討されるのだろう。その後には、日本企業の資産の現金化が進んだ場合、韓国への対抗措置として制裁へ移行するのではないか。

 日韓請求権協定や国際司法の手順を尽くした後であれば、制裁の大義名分は十分に立つ。

 対抗措置はいろいろなメニューが考えられる。(1)ヒト(2)モノ(3)カネ(4)その他に対する規制に大別されるが、(1)はビザの発給停止、(2)は関税引き上げ、フッ化水素などの輸出禁止、(3)は送金停止、貿易保険の適用からの除外、日本国内の韓国企業の資産差し押さえ、韓国への直接投資規制、韓国機器への与信リスク引き上げ、(4)は駐韓大使帰国、断交などの具体的な方策が考えられる。

 このうち、日本人や日本企業への「誤爆」が少ないのは(3)のカネだ。特に、韓国のカントリーリスクを高め、韓国企業の外資取り入れコストを高くする方策が最もコストパフォーマンスがよいのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本は、文政権時に断交していればポスト文政権と有利に交渉がすすめられる(゚д゚)!

これまで日本は、「韓国をいたずらに刺激しては、北朝鮮、中国、ロシアと日本の関係も悪化してしまう」等と懸念し、日韓関係の構築に努めてきました。地図を見れば、朝鮮半島は大陸が日本に突きつける“匕首であることが簡単に理解できます。

我が国は常に「朝鮮半島にユーラシア大陸との緩衝地帯を作る」ことを最優先にしてきました。これは、戦争の歴史が最も雄弁に物語っています。これが、白村江の戦い(663年)、日清戦争(1894~95年)、日露戦争(1904~05年)が起きた理由なのです。

「対馬海峡を日本の防衛戦にしてはいけない」という理屈で日韓関係を憂慮するむきもありますが、これに何の問題があるというのでしょうか。確かに現在、中国の軍事力増強は脅威かもしれません。しかし今の日本は、韓国に仲介を依頼しなくとも、北朝鮮、中国、ロシアと外交を結ぶことは可能です。

逆にこの特ア3国が韓国を先兵として日本への侵略を企てるというシナリオは、日米安保が機能している以上、机上の空論に過ぎません。日本が韓国と国交を断絶すれば、多くのメリットが得られますが、デメリットはありません。

仮に左派の文在寅(66)と金正恩(35)が手を結んだなら、史上最強の“反日国家”が誕生してしまうと心配するむきもありますが、これも杞憂に過ぎません。

朝鮮半島が南北に分裂しているメリットも無視できないことを忘れてはいけません。そもそも韓国は、中国に従属しようとしてますが、明らかに北は中国の干渉を嫌っています。

北朝鮮の核は、日米にとって脅威ではありますが、中国にとっても脅威です。現実は、北の核、北朝鮮の存在そのものが、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。

そうして、米国、中国、露はいずれも、現状維持を望んでいます。北朝鮮も本当はそうです。この状況を変えようとしているのは、韓国だけです。これについては以前このブログにも掲載したことなので、詳細はその記事をご覧になってください。以下にその記事のリンクを掲載します。
北朝鮮『4・15ミサイル発射』に現実味!? 「絶対に許さない」米は警告も…強行なら“戦争”リスク―【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!
金正恩氏は東倉里から“人工衛星”を発射しなかった。短距離弾道弾にお茶を濁したか・・・・

半島が統一してしまい、半島全体が中国側についてしまえば、中国にとっては最高ですが、米国にとっては最悪です。統一して、半島全体が米国側についてしまえば、中露にとっては最悪です。この最悪の事態よりは、現状のうが両陣営にとってずっと良いことなのです。

そうして何よりも、朝鮮戦争の再来は、米中露ともに避けたいと考えています。現在の露はすでにGDPが韓国より若干小さいくらいの規模にまで落ち込んでいます。とても、朝鮮戦争に干渉するだけの力はありません。中国も現状では経済が落ち込んでいますし、さらに米国から経済冷戦を挑まれたうえで、さらに朝鮮戦争を実行する余力はありません。

米国とて、かつてのように余力がある状態ではないし、現状では対中国経済冷戦を挑んでいる最中ですから、できれば朝鮮戦争の再来は避けたいです。米国にとっての本命は北朝鮮ではなく、中国です。米国が冷戦に勝てば、朝鮮半島問題も自動的に解消されるでしょう。

米中露は、当面は朝鮮半島は現状維持を望んでいるです。北朝鮮も、いかにも統一を望んでいるような素振りを見せることはありますが、もし統一すれば、国内に金王朝に対して何の敬意もなく、恩義もない韓国人が多数北朝鮮に入ってきたり国内で大きな影響力を持つことになるわけですから、これはどう考えても望ましいことではありません。

それでも、時折統一を望んでいるようにみせかけるのは、単に文在寅を喜ばせ、少しでも北朝鮮制裁が緩まれば良いからです。そのような金正恩の籠絡に、文在寅が有頂天になって舞い上がっているだけです。

日本企業の資産が実際に差し押さえられたら、日本としても、もうこれ以上韓国とは付き合えないです。

政治家、学者、弁護士など一部の頓珍漢な人達が韓国に理解を示したり、甘い顔を見せたりしていますが、さすがに今回は多くの国民の理解は得られないでしょう。

この事態を避けるにはどうしたら良いのでしょうか。韓国政府が今後徴用工裁判と同様の裁判を開かせないようにするのは無理でしょうし、賠償金を負担することもないでしょう。

だとすれば、日韓関係はいったん完璧に破綻しないとどうしようもないところにきたといえると思います。結局のところ、国交断絶です。そこまでやらないと事の深刻さ韓国は気付かないです。その先にしか日韓の未来はないです。

ブログ冒頭の高橋洋一氏記事のように、まずはカネによる制裁をすれば、一時は制裁が奏功する可能背もありますが、韓国政府の過去の出方をみれば、到底信用などできません。またすぐに元通りなるでしょう。最終的には国交を断絶するしかないです。



最近は、分政権の支持率は、落ちており、文政権は、どう考えてみても長期政権にはならず、近い将来に文政権は崩壊する可能性もあるものと思います。韓国の大統領は1期5年なので、朴槿恵大統領のように弾劾罷免されない限り、2022年5月9日までは大統領として任期が設定されています。文大統領の任期は最大限そこまで終わるでしょう。

いずれにせよ、文政権が終了したときに、すでに日本が韓国と断交していれば、ポスト文政権は、日本との関係を回復しようとするでしょう。日本としては、それでもしばらくは様子をみて、本気て相手が回復するつもりがあれば、国交断絶を解除すれば良いのです。おそらく、いままで一番交渉がしやすくなるでしょう。

もし、文政権が崩壊したときに、日韓が国交断絶していなければ、新たな政権も、文政権の反日を引き継ぐだけになり何も変わりません。その時になって、国交断絶するよりは、文政権時代に断絶しておくことのほうが、日本にとって有利なのは言うまでもありません。

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2018年5月8日火曜日

イラン核合意問題 専門家はこう見る―【私の論評】トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用している(゚д゚)!

イラン核合意問題 専門家はこう見る


アメリカのトランプ大統領が、イラン核合意についての判断を日本時間の9日発表することについて、日本とサウジアラビアの専門家に聞きました。

トランプ政権の悪あがき イランはNPT離脱も

イラン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授は、中東のレバノンでの総選挙で、イランの支援を受けるイスラム教シーア派組織、ヒズボラの陣営が躍進したことなどが背景にあるとしたうえで、「イランの影響力が地域に広がるのを止めることに躍起になっているトランプ政権の悪あがきではないか」と分析しています。

そのうえで、「イランの核合意から離脱か、破棄するという内容になると思う」と述べ、合意から離脱すると発表する可能性が高いという見方を示しました。

また、アメリカが核合意から離脱した場合、「イラン側の責任ある立場の人から、核合意を履行することと、イランがNPT=核拡散防止条約にとどまることを条件付ける発言が出てきた。かつての北朝鮮と同じようにNPT離脱というカードを振りかざしてくる可能性がある」と述べ、イランが、強硬路線に踏み切る可能性もあると指摘しました。

そのうえで、「IAEA=国際原子力機関が、現在、世界で最も厳しい査察態勢のもとで、イランを監視しているが、これがなくなるため、イラン国内で何が行われているのか一切情報が見えなくなり、核兵器を開発しているとの疑いが生まれてしまう。こうした状態をイスラエルやサウジアラビア、それに、アメリカやヨーロッパが放置するとは考えにくく、イランの核施設に対する限定的な軍事攻撃か、イランの現体制を崩壊させるために、大規模な軍事介入をする可能性もある」との見方を示しました。

合意の見直しは不可欠 一層混乱が深まるおそれも

ムハンマド・スラミ博士

中東のアラブ諸国の盟主を自認するサウジアラビアは、おととしからイランと国交を断絶したほか、イランが内戦が続くイエメンの反体制派を支援するなどして、地域を不安定化させていると激しく非難し、アメリカのトランプ政権にイランへの包囲網を強めるよう働きかけてきました。

サウジアラビアのイラン研究機関の代表を務めるムハンマド・スラミ博士は、NHKのインタビューに対し、「核合意はイランの核兵器開発の阻止につながったが、包括的ではなかった。重要なのはイランのアラブ諸国に対する内政干渉をやめさせることを、核合意に含めることだ」と述べ、サウジアラビアにとって合意の見直しは、不可欠だとの立場を強調しました。

一方、「サウジアラビアは、直接戦争を望んでいない。ただ、イスラエルやアメリカがイランの支援を受けた中東各地の民兵を攻撃する可能性はある」と分析し、イランが影響力を拡大するシリアなどで、軍事的緊張が高まり、一層混乱が深まるおそれがあると指摘しました。

また、イランとの経済取引について、「もし湾岸諸国とビジネスの継続を望むならば、イランとビジネスをするべきでない。ビジネスの継続は、イランのネガティブな行動を支援していることにほかならないからだ」と警告しました。

【私の論評】トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用している(゚д゚)!

上記のニュース、イランの核問題について知らないと理解できないと思いますので、まずはそれについて掲載しておきます。

イランの核開発問題(イランのかくかいはつもんだい)とは、イランが自国の核関連施設で高濃縮ウランの製造を企画していた、またはしている、という疑惑がかけられている問題のこと。

イランは医療用アイソトープの生産を行うテヘラン原子炉の稼働のため、20%高濃縮ウランの自国製造を進めています。通常の原子力発電では低濃縮ウランで十分であり、高濃縮ウランを用いるのは原子爆弾の製造を狙っているからではないか、とアメリカなどから疑いをかけられました。

ただし原子爆弾には90%以上の高濃縮ウランが必要であるため、意見が分かれました。イランは自ら加盟する核不拡散条約(NPT)の正当な権利を行使しているのであり、核兵器は作らないと主張した。当時の第6代イラン大統領マフムード・アフマディーネジャードは『Newsweek』2009年10月7日号の取材に対して「核爆弾は持ってはならないものだ。」と否定する発言をしています。

これに対し核保有国アメリカは、イランの主張に疑念を持ち、核兵器保有に向けての高濃縮ウランであると主張して、国際的にイランを孤立化させようとする政策を取ってました。これらには政治的思惑が見え隠れしており、疑惑段階でイランに経済制裁をとる一方で、既に核兵器を保有しているパキスタンやインドなどにはイランのようなボイコット(制裁)を行いませんでした。

イランの政権は、2013年の大統領選挙によって、憲法規定による任期で退任したアフマディーネジャードからハサン・ロウハーニーに交代しました。

2015年にイランは米英仏独中露6か国協議「P5プラス1」との間で、核開発施設の縮小や条件付き軍事施設査察などの履行を含む最終合意を締結し、核兵器の保有に必要な核物質の製造・蓄積を制限することとなりました。

2016年1月16日、国際原子力機関(IAEA)はイランが核濃縮に必要な遠心分離器などを大幅に削減したことを確認したと発表。これを受けてイランとP5プラス1は同日、合意の履行を宣言し、米欧諸国はイランに対する経済制裁を解除する手続きに入りました。

国連常任理事国であり核保有国である5カ国に加えドイツがメンバーとなっている背景には、ドイツとイランの密接な経済的結びつき―とりわけ原子力分野における―があります。イランの核開発はかなりの程度ドイツの原子力技術に依存しており、シーメンスを始めとするドイツの主要企業がイランとの深いつながりを持っています。

バラク・オバマ前大統領時代の2015年に締結されたこの合意は、イランが核開発を制限するのと引き換えに、欧米諸国がイランに対する経済制裁を解除するという「包括的共同作業計画」です。

これに伴いアメリカでは国内手続きとして、イランの合意遵守状況に基づき、大統領が制裁解除を維持するかどうかを定期的に判断することになっています。今度の期限は5月12日です。

トランプは選挙戦のときから、イランとの核合意はアメリカが締結した「最も愚かな」合意の1つだとして、その「解体」を約束してきました。それでもジェームズ・マティス国防長官ら閣僚に説得されて、これまでは離脱を思いとどまってきたようです。

トランプ米大統領は7日、P5プラス1とイランの核合意に関し、「8日午後2時(日本時間9日午前3時)に私の決定を発表する」とツイッターに書いており、おそらく合意から離脱すると発表すると考えられています。

トランプ大統領のこの動きは北朝鮮問題とも関係があるものと考えられます。北朝鮮がイランのように原子力分野の開発を継続し、潜在的な核の脅威を温存することを事前に防止するための措置ではないかと考えられます。

実際、これに対応したものかどうかはわかりませんが、中国国営メディアは8日、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が7日から8日まで遼寧省大連を訪問し、習近平国家主席と会談したと報じました。金氏の訪中が確認されたのは3月下旬以来、2回目です。つい最近会ったばかなのに、これは何か新しい動きに対応していると考えられます。

金正恩としては、トランプ氏のこの動きを察知して、これに対応するために習近平と対応を協議するために面談したということも十分考えられます。

中国国営通信 新華社が8日に配信した、中国遼寧省大連で会談する習近平主席(右)と金正恩委員長

金正恩としては、核のリビア方式による完全廃棄は何とか避けたい、最低でもイランのように原子力分野の開発を継続し、いつでも核兵器を開発できる体制を整えたいと目論んでいたのでしょうが、それも封じられる可能性がでてきたわけです。

イラン産石油の最大の「お得意様」は中国です。金正恩としては、その中国が輸入量を減らす可能性は低いとみて。中国がイラン制裁に踏み切るかどうか探りにでたものと考えられます。

12年にアメリカとEUが対イラン経済・金融制裁を強化したとき、国際市場におけるイランの石油販売量は半減しました。そしてこのことが、イランを交渉のテーブルに引き戻す重要な役割を果たしました。

しかし、今度の制裁に中国が参加しなければ、前回ほどの経済的打撃をイランに与えることはできません。そうなればイランを交渉のテーブルに引き戻すことは難しいし、ましてや、より厳しい条件の「新合意」を結ぶことなど不可能です。

そうして、イランが交渉のテーブルにつかなければ、北朝鮮にとっては有利になります。金正恩は、米朝会談で比較的優位に交渉をすすめられることにもなります。しかし、もし米国がイランに軍事攻撃という事態にでもなれば、金正恩は嫌がおうでも、リビア方式以外に生き残る道はないことになります。


いずれにしても、今回のイラン核合意問題の趨勢が米朝会談にも大きな影響を及ぼすことになりそうです。

私は、今回はトランプ氏が「合意から離脱」を発表をすると見ています。そうして、本当にそうするかどうかはわかりませんが、いずれイランへの武力行使の可能性もちらつかせると思います。そうして金正恩を極限まで追い詰めて、米朝会談をかなり有利にすすめるか、金正恩が会談をキャンセルするように仕向け、米軍が武力攻撃をしやすい状況にもっていくものと考えます。

トランプ氏は元々は実業家です。実業家の場合、常に使える資源は限られていることを自覚しています。だから、優先順位をつけます。現在優先度が一番高いのは、北朝鮮です。優先順位をはっきりつけることと、定めた目標に対しては活用できるものは何でも活用するというのが、優れた実業家の真骨頂です。そうして、本当は米国でさえも、使える資源は限られています。

イラクの問題と北朝鮮の問題に関して、どちらを優先するかということを考えれば、北朝鮮に軍配があがるのは当然のことです。

イラン問題は多少複雑になったり、解決が長引いたにしても、イランが北朝鮮のように核ミサイルを米国に発射することはできません。11月の選挙の中間選挙のことを考えても、多少イラン問題が複雑化しようとも、北朝鮮問題の決着への見通しをこのあたりまでにはっきりと、国民に示したいというトランプ氏のしたたかな思惑が透けて見えます。

これは、政治の専門家や、中東の専門家などにはかえって見えにくい局面だと思います。

私は、トランプ氏は、米朝会談を有利にすすめるためイラン核合意問題を活用していると考えるのが妥当な見方であると考えます。

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