2019年10月12日土曜日

民主党へのしっぺ返しもあるトランプ弾劾調査―【私の論評】トランプ弾劾は不可能、禁じ手を複数回繰り出す民主党は相当追い詰められている(゚д゚)!


 9月27日、ウクライナ疑惑をきっかけに、ペロシ下院議長(民主党)がトランプ大統領弾劾調査の開始を発表した。大統領にとってこれまで以上に事態は深刻ではあるが、民主党にとっても来年の選挙で大きなしっぺ返しが来る恐れがある。 

トランプ大統領

 今までにも、モラー特別検察官による調査をはじめ、民主党の特にプログレッシブが弾劾を求める材料はあったが、ペロシ下院議長がそれをどうにか抑えてきた。しかし、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に対し、 議会が既に承認していた同国への軍事資金援助を遅らせ、引き換えにバイデン前副大統領の息子に絡む疑惑調査を依頼したとの内部告発をきっかけに下院議長も弾劾調査に踏み切らざるを得なくなった。

 軍や国家防衛、インテリジェンス歴のある民主党新人下院議員7名が9月23日付ワシントン・ポスト紙に投稿し、世界に安定をもたらし、アメリカの国家安全保障のために議会が割り当てた予算を大統領が個人の利益のために利用したのであれば、国家の安全を脅かし、汚職の罪は非常に重いことになり、弾劾に値すると論じたのも影響を与えた。

 弾劾訴追は、下院の単純過半数で可決となるが、上院での弾劾裁判での有罪判決には2/3が必要であり、共和党が多数の上院では現状当然不可能である。 

 ペロシ議長がこれまで弾劾調査に踏み切らなかったのは、弾劾訴追が無駄な努力となるだけでなく、来年の選挙での民主党へのしっぺ返しを恐れたためである。クリントン大統領は弾劾された史上二人目の大統領だが、下院で共和党が弾劾を可決し、上院がそれを否決した後、大統領への支持率が大きく伸びただけでなく、1998年の中間選挙で民主党が大躍進した。

 国民の弾劾への支持は充分でない。9月18日発表のポリティコ/モーニング・ コンサルト世論調査によれば、議会が弾劾調査を開始することへの賛成はわずか37%で、半分が反対である。アメリカ人は、法を非常に重視するので、法に基づいて選出された大統領を裁く、それも議会が裁くことに強い抵抗がある。いずれの党が多数を占めようと国民の議会に対する信頼が常に低いことも影響しているだろう。

 民主党支持者では数字は全く違う。次の民主党大統領予備選で票を投じるとしている有権者の68%が弾劾調査を支持し、反対はわずか20%である。この数字とウクライナ疑惑を考慮すれば、民主党指導層は弾劾調査に踏み切らざるを得なかっただろう。

 トランプ大統領の支持率は相変わらず低く、個人として嫌う率は51%と歴代大統領の中で一番高い。また、NBC/WSJ調査によれば、 トランプ大統領が再選されることに、回答者の半分がとても嫌と答えた。

 ウクライナ疑惑が発覚し、民主党指導層だけでなく、米政治の専門家たちの多くも、大統領が民主主義統治のルールを破壊し、国の安全保障を危険にさらした可能性を議会が調査する責務を遂行せざるを得ないと判断しだした。疑惑が真実であれば、他国を選挙でのライバルに泥を塗る画策に加担させるために、大統領は議会が承認した軍事・安全保障予算を利用したことになるばかりでなく、アメリカへの信頼を失墜させ、さらにはこうした 行為は以後大統領あるいは国が他国に脅される理由ともなる。上記の軍やインテリジェンス経験者である民主党下院議員7名の投稿はそれを明確に表現したと言える。

 ホワイトハウスは民主党やメディアからの圧力を受け、トランプ大統領のゼレンスキー大統領との会話記録を公開したが、これはあくまでホワイトハウスがまとめた要約でしかなく、大統領の会話記録として慣例である発言を全てそのまま記録したものではない。

 26日に明らかになった内部告発文によれば、トランプ大統領が米大統領の権力を利用し、ウクライナ大統領に圧力をかけ、米大統領選挙でのライバルに関する調査を強要することで選挙に介入させようとした。さらには、ホワイトハウスの上級官僚たちが会話記録の全容を隠すために、通常使われるサーバーからホワイトハウス外からアクセスできないサーバー に移すという隠匿行為があったと述べている。

 一方、弾劾調査はトランプ大統領の望むところ、という見方もある。混乱や怒りを招き対立を深めるのはトランプの手法であり、トランプ大統領は地盤固めのために弾劾調査を利用するだろう。親トランプ派の民主党攻撃は既に激しいものになっている。

 今後、どれだけ冷静に法にのっとった議論を展開できるかは、ペロシ議長の腕の見せ所だが、票決がどうであれ弾劾調査に対する民主党の姿勢が来年の選挙の行方に大きく影響するだろう。

【私の論評】トランプ弾劾は不可能、禁じ手を複数回繰り出す民主党は相当追い詰められている(゚д゚)!

米国では下院では過半数の賛成があれば、弾劾裁判を始められますが、最終的な評決は上院の3分の2が必要です。米国上院は共和党が与党ですから、20人程度の上院議員が寝返らないと、3分の2は取れません。

そのようなことは、現在の共和党の議員たちにできるわけなどありません。ニクソン大統領のウォーターゲート事件がありましたが、あのときニクソン氏は、弾劾されそうになったため自ら辞任しました。

リチャード・ニクソン氏

なぜ弾劾されそうになったかと言うと、当時の共和党の議員が彼を見捨てたからです。そこで、これはもう万事休すだということで辞任したのです。

しかし、いまの共和党の議員がトランプ氏を見捨てる等といえば、どうなるでしょうか。当時のニクソン氏と比較すれば、圧倒的に高い支持率のトランプ氏、それに発信力、粘り強さ、執着心、これを考えたら難しいです。

下手に弾劾に賛成してトランプ陣営を寝返りでもしようものなら、自らの支持者に離反されるおそれがあり政治生命を失ってしまう可能性すらあります。

そうすると共和党の議員の寝返りを考えている議員も、二の足を踏んで、20人も簡単に寝返ることはないでしょう。だから、弾劾などできません。裁判はできたとしても、弾劾にはならないということです。

そうなると、民主党支持者は「民主党は何をやっているのだ」となるでしょう。民主党はまさににルビコン川を渡ってしまい、難しい状況陥ってしまいました。大統領の弾劾は米国においては、禁じ手といっても良いくらいの手段なので、民主党支持者の中にもこれに反対する人も多いです、これではトランプ氏が辞任となることはないです。

大統領選も間近ということで、民主党も代表争いをやっています。この最中に、ウクライナ問題で、まさに火中でもあるバイデンさんや息子さんが、何やら怪しいことをやったのではないかという嫌疑がかかってしまったということです。

トランプ大統領は、中国にも捜査しろと依頼しています。頼む相手が間違っているのではないかとも思われますが、もしかすると中国も実施するかもしれません。そうなると、バイデン氏がさらに泥に塗れという事態も想定されます。
現状では、民主党の支持率も落ちていて、ウォーレン氏という方がかなり盛り上がって来ています。上り調子の背景には、相次いで打ち出す大胆な政策があります。

富裕税の導入、「アマゾン解体」、学生ローン帳消しなどで、穏健派からは実現性を疑問視する声も根強いです。ところが、ウォーレン氏は7月末の討論会で「『できない』と言うために、なぜわざわざ大統領を目指すのか理解できない」と切り返し、喝采を浴びました。


確かに、彼女の方が他の穏健派の候補者よりは、新しい感じもしますが、しかし彼女は根っからのリベラルですから、はたして民主党をどれだけまとめられるか疑問符がつきます。

民主的な選挙で選ばれた大統領を政治的な動機で糾弾し解任しようとする弾劾措置への反発は、米国民の間で従来から根強いものがありました。だからこそ民主党のペロシ議員は、昨年11月の中間選挙前も、「ロシア疑惑」が高まったそれ以前の時期でも、弾劾への動きには一貫して反対してきたのです。

もしも今回の弾劾措置に対してトランプ大統領が上院の支持を得て勝利を宣言したとき、同大統領への支持がさらに高まり、民主党への支持が減るというシナリオは十分に考えられます。

さらにもっと確実な見方として、今回の「ウクライナ疑惑」を理由とする弾劾手続きが、民主党側の大統領選の先頭走者であるバイデン氏への支持を大きく減らすことも予想されます。



バイデン氏には、オバマ政権の副大統領だったとき自分の息子の疑惑に関連して、ウクライナ政府に圧力をかけたという情報が流れています。トランプ氏への「ウクライナ疑惑」への調査に関連して、その疑惑が改めて浮上してしまう危険性があります。だからこそ今回の弾劾に関しては、「バイデン氏を大統領選から追い落とすための陰謀」という説も流れているくらいです。

やはり、米国では最初から禁じ手とわかっている「弾劾」を今回だけではなく、過去にも画策して結局失敗した民主党は、相当追い詰められているとみべきです。

次の大統領選挙は、民主党にとってそんなに簡単ことではありません。そうなると、やはり余程のことがない限りトランプ氏が勝つ可能性がかなり高まったと見るべきでしょう。

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