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2019年5月12日日曜日

誤算?無策?習政権、トランプ氏“逆鱗”読み切れず… 中国「報復」示唆も米側は切り札投入―【私の論評】「大幅な譲歩」か「強行路線」か?いずれに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ない(゚д゚)!


ワシントンで言葉を交わすライトハイザー米通商代表(右)と、
              中国の劉鶴副首相(左)=10日

ドナルド・トランプ米政権は、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)分に課している追加関税率を10%から25%に引き上げた。習近平政権も報復を示唆するが、米国側は「全輸入品への追加関税」という切り札を出してきた。貿易戦争が長期化すれば深い傷を負うのは中国側であることは明確で、習政権の「誤算と無策」がハッキリしてきた。

 米通商代表部(USTR)は10日、中国からの輸入品約3000億ドル(約33兆円)分に25%の追加関税を課す手続きに入ると発表した。実施すれば中国からの全輸入品が25%の対象となる。

 トランプ大統領は10日、ツイッターで、追加関税について「交渉次第で撤回するかもしれないし、しないかもしれない」と中国に譲歩を迫った。一方で「交渉は良い雰囲気で続けており、急ぐ必要はない」と記すなど、脅したりすかしたりの老獪(ろうかい)さをみせた。

 10日の閣僚級協議も合意に至らず、次回協議について、スティーブン・ムニューシン財務長官は米CNBCテレビに「予定されたものはない」と語った。一方、中国の劉鶴副首相は、米国との貿易協議を早期に北京で開催することで合意したと強調するなど、決裂ではないことを強調するのに懸命の様子だった。

 中国商務省は10日、「必要な対抗措置を取らざるを得ない」との報道官談話を発表したが、関税競争は中国に分が悪い。2018年の対米輸出額が4784億ドル(約52兆5900億円)だが、輸入額は1550億ドル(約17兆400億円)にとどまり、報復関税にも限界がある。

 関税が引き上げられた対米輸出品についても、中国側が価格を引き下げて対応しているのが実情で、トランプ氏は「米国製品のコストへの影響はごくわずかで、ほとんど中国が負担している」と勝ち誇っている。

中国全人代の閉幕式に臨む習近平国家主席=3月5日、北京の人民大会堂

 中国は論点も見誤った。

 米国側は、外国企業からの強制的な技術移転や産業補助金などを最重要課題としているが、中国側は貿易赤字の問題にすぎないと軽視していた節もある。

 習政権はメンツにこだわり、米国と対等であるかのように交渉に臨んだ。閣僚級協議でも、習国家主席がトランプ氏に書簡を送ったが、効果はなかった。習氏とトランプ氏との電話協議など直接交渉で打開を図るが、展望は見いだせない。

【私の論評】「大幅な譲歩」か「強行路線」か?いずれに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ない(゚д゚)!

ロイター通信8日付は、米政府関係者らの話として、中国当局は今までの交渉で知的財産権保護や技術の強制移転、為替などの事項に関して、国内法の改正を約束したにもかかわらず、今月3日に米政府に送った合意文書案で約束を撤回したそうです。

中国当局が突如態度を変えた理由について憶測が飛び交っています。

今年に入ってから、中国経済がやや回復の兆しが表れていました。中国税関総省が発表した3月の貿易統計では、同月ドル建て輸出は、市場予想を大幅に上回り、前年同月比14.2%増加しました。5カ月ぶりの高水準といいます。中国当局によるテコ入れ策で、3月の新規人民元建て融資や社会融資総量が予想外に急増し、投資の拡大が示されました。中国当局は、景気が上向きになったことで、強気に出た可能性があります。

今年4月までは、株価も回復していたが・・・・・・

しかし、中国経済の好調が、約束を反故した主因ではないようです。中国当局の最高指導部が「政治的な賭けに出た」という見方が、最も説明がつきます。

国際社会は、中国共産党政権が真に構造改革を行うと信じていません。構造改革を行い、市場を開放してインターネット封鎖を解除し、情報の自由を認めるためには、単に掛け声をかけて投資をすれば成就するという簡単なものではありません。

それを実行したとしても、現実には何も変わらないです。それを実行して根付かせるためには、一定以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をする必要があります。

それを本当に実行すれば、中国共産党政権は統治の正当性を失い、崩壊することになります。

さらに、ここまで米の要求を受け入れると、党内から「弱腰外交」と習氏への批判が沸き立つことでしょう。

中国共産党の本質を見極め、強硬姿勢を示すトランプ政権は、貿易戦を通じて、中国当局に2つの究極の選択肢を突きつけました。中国共産党一党独裁を捨てても中国経済を守るのか、それとも中国共産党政権を維持するのかです。

約束の撤回は、中国当局からの返事だと見てもよいです。「一強体制」を築いたように見える習近平国家主席は、政権維持に拘れば、難しい政権運営を強いられることになります。

江沢民(左)と曽慶紅(右)

4月下旬、江沢民派の主要人物である曽慶紅氏が久しぶりに公の場に姿を見せました。習近平氏は近年、反腐敗キャンペーンで江派の高官を次々と失脚させ、江沢民派の勢力は衰退しました。その一方で、江沢民氏、曽慶紅氏2人の摘発を放置しました。専門家は、習近平氏は中国共産党体制の崩壊を避けるために、江沢民氏らに譲歩したとみてきました。

インターネット上に投稿された動画によると、4月20日、曽慶紅は江西省トップの劉奇氏とともに、故郷の同省吉安市を視察しました。劉奇氏は、習近平氏が浙江省トップを務めた際の部下で、習氏の側近です。曽と劉の両氏の組み合わせは、習派と江派が「仲良くやっている」というメッセージを送り、党内の団結をアピールしているように見えます。しかし、習近平氏が政権維持に拘り、江沢民派に譲歩しても、団結は長く続きません。

トランプ大統領が5日のツイッターで対中追加関税の引き上げを発表したのを受け、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは6日、情報筋の話を引用し、貿易交渉で中国側が約束した内容の一部に対して習近平氏が認めず、交渉が失敗すれば「自分がすべての責任を負う」と述べたと報じました。

サウスチャイナ・モーニング・ポストは、2015年にアリババグループに買収され、親江沢民派メディアとして認識されています。

劉鶴副首相は、9日と10日の米中通商協議に予定通り参加しました。渡米前、劉氏は「圧力下での渡米」とメディアに語りました。習近平氏の政敵は、今回の交渉を「米国の圧力に屈した侮辱的な交渉」と捉え、習氏への批判を強めるでしょう。この交渉でどんな結果が生じても、敵対勢力に攻撃の口実を与えることになります。

劉副首相の訪米は、米国の圧力に屈したというよりも、親江沢民派メディアの報道への対応と言えます。

実にトランプ米大統領の5日のツイッター投稿を受けて、中国人民銀行(中央銀行)は6日株式市場の取引開始前に、中小銀行を対象に預金準備率の引き下げを発表しました。これによって、市場に2800億元(約4兆5174億円)の資金を供給するといいます。中国当局が、トランプ大統領の発言で、中国経済や株式市場が受ける影響を予測したことが読み取れます。

しかし、中国当局はサウスチャイナ・モーニング・ポストの報道を予測できませんでした。

今後の見通しとして2通りの展開があります。一つは中国側が大幅に譲歩し、米側と合意するというものです。しかし、こうなった場合、江沢民派が必ず、「主権を失い国を辱めた」として、習近平氏に反撃するでしょう。党内闘争が一段と激しくなり、政権の不安定さが高まることになります。

もう一つは、中国当局が引き続き意図的に貿易交渉を先延ばし、米中両国が物別れに終わることです。これが起きれば、中国経済が壊滅的な打撃を受けることになります。

輸出、投資、個人消費の低迷が深刻化するほか、中国当局が最も不安視する債務危機もぼっ発する可能性が高いです。これに伴う企業の倒産、労働者の失業が急増し、中国当局への社会不満が一気に爆発することになります。

中国当局は、この最も恐れる状況に、どう対処するのでしょうか。習近平氏が政治手腕を発揮し、反対派の攻撃を圧制することができたとしても、経済崩壊を迎えた中国共産党政権は末路をたどるしかありません。

米中貿易戦、中国国内および共産党の現情勢を分析すれば、米中貿易交渉で勝負に出た中国当局は、初めから失敗に向かっていることが分かります。米中通商協議の結果がどうであれ、中国共産党体制の崩壊が加速化します。

10日、2日間の米中閣僚級協議を終え、トランプ大統領は同日、今後も交渉を続ける方針を表明しました。ロイター通信は10日、情報筋の話として、劉副首相は国内法の改正を拒む立場を変えておらず、国務院令や行政命令で対応すると提案したと報じました。米側はこれに拒否したといいます。

前国家経済会議(NEC)副委員長のクリート・ウィレムス(Clete Willems)氏は米メディアに対して、トランプ氏は交渉チームに「満足できる内容でなければ、いつもで立ち去れ」と告げた、と話しました。

「強国路線」を掲げてきた習氏にとって、米側への大幅な譲歩は国内の求心力を失いかねないですが、強硬姿勢を貫いて貿易摩擦がエスカレートすれば、経済成長の減速に拍車がかかるというジレンマに陥っているのです。

どちらに転んでも、習近平は過酷な状況に直面せざるを得ないのです。

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2018年8月22日水曜日

韓国・文政権“大恐慌”リーマン級の「雇用惨事」で失業率が大幅悪化 緊急会議開くも無策…―【私の論評】金融政策の大失敗が韓国の危機的な人口減と高齢者の割合の急増をもたらす(゚д゚)!

韓国・文政権“大恐慌”リーマン級の「雇用惨事」で失業率が大幅悪化 緊急会議開くも無策…

文大統領の経済失政で韓国の雇用は深刻な危機に

 「雇用拡大」を掲げる韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権が、大恐慌に陥っている。リーマン・ショックの影響下にあった2010年以来という雇用危機を迎えたからだ。青瓦台(大統領府)などは日曜に緊急会議を開いて対応を協議したが、改善に向けた明るい材料はない。韓国メディアでは、さらなる惨事の到来を危惧する見方すら浮上している。

 その衝撃的な数字は、17日に発表された。

 7月の就業者数は前年比5000人増で、6月の10万6000人増から大幅に減ったのだ。失業率も悪化し、聯合ニュースは《7月の失業率3・7%に悪化 就業者増加数はリーマン以来最低》との見出しで報じた。

 「雇用惨事」と伝えるメディアもある今回の危機は、文政権自身が招いたとの見方が強い。強引な最低賃金の引き上げとともに、雇用の増加幅が減ったからだ。

 韓国統計庁の発表によると、今年1月の就業者数は33万4000人増だったが、同月に最低賃金が16・4%引き上げられると、2月は10万4000人増と20万人以上急減した。

 その揚げ句、7月には「5000人増」まで落ち込み、青瓦台は慌てたようだ。

 ハンギョレ新聞(日本語版)によると、日曜の19日に、与党・政府・大統領府の「雇用状況に関する緊急会議」が開かれた。だが、「来年の雇用予算を大幅に増やす」という方針のほかに具体的な政策手段が示されなかったという。

 東亜日報(日本語版)は《金融危機以来最悪の雇用情勢に大統領府も戸惑い隠せず》との見出しの記事で、文氏が大統領就任以来、雇用に力を注いできた様子を紹介し、「衝撃は大きくならざるをえない」と指摘。最大野党「自由韓国党」が大統領政策室長の更迭を求めたことも伝えた。

 政府の危機感は強いが、雇用状況が好転する兆しはない。むしろ、来年1月に最低賃金がさらに10・9%引き上げられて人件費が高騰するため、人減らしが進む可能性が高いとみられている。

 《雇用惨事の悲鳴、まだ聞こえないのか》と題する社説で、中央日報(日本語版)は次のように危惧した。

 「このような雇用惨事に歯止めをかけなければ韓国の共同体全体が危機を迎えるかもしれない」 韓国の将来は暗い。

【私の論評】金融政策の大失敗が韓国の危機的な人口減と高齢者の割合の急増をもたらす(゚д゚)!

「雇用拡大」を掲げるなら、まずは金融緩和をしなければどうしょうもないのに、緩和はせずに最低賃金だけをあげた結果がこの有様です。

文政権の失敗の原因は、核心は文政権のマクロ経済政策の失敗、特に、金融政策に失敗したことです。
韓国の最低賃金の推移(ウォン/時間)

韓国の中央銀行はインフレ目標を採用していて、消費者物価上昇率の目標値は2%です。現状は前年同月比で1・5%だが、確かに朴政権時代の実質的なデフレ状態に比べれば、かなり改善しているのは事実です。

ところが、それでも韓国の金融緩和は極めて抑制されています。それが経済全体の拡大を抑えているのです。実際、韓国銀行の政策金利は据え置かれたままです。

韓国は朴政権から今の文政権にかけて、それ以前まで採用していた高めのインフレ目標を断念しています。その背景には、韓国の資産・負債の構造があるようです。

対外債務残高が前政権時代から現在にかけて増加基調にあり、現時点では約4千億ドルに膨らんでいます。この対外債務の実質額が拡大することを、政府と中央銀行が恐れているため、より一層の踏み込んだ緩和ができないというのが表向きの理由のようではあります。そうして、対外債務が膨らめば、キャピタルフライトをまねき兼ねないというのが、表向きの理由なのでしょう。

ところが、実際には同じような資産・負債構造であっても、朴政権以前は、リーマンショック以後と比べて、今より高いインフレ率と失業率の低下傾向(就業者の増加傾向)が「同居」していました。ちなみに、2012年まではインフレ目標の中央値は3%であり、上限は4%(下限は2%)でした。

さらに、キャピタルフライトの危険など、以前このブログにも掲載したように、実際にフライトを起こしたアイスランドなどと比較すると、政府は財政黒字ながら、膨大な民間の借金が存在していたのと比較すれば、まだかなり低い状況です。

キャピタルフライトを起こした頃のアイスランドはGDP比で700%もの外貨建ての借金をしていました。しかし、当時のアイスランドの政府債務対GDP比は29%しかありませんでした。この700%もの債務は一体誰が負っていたのでしょうか。

アイスランド政府の借金でないのであれば、あとは民間しかありません。この膨大な対外の外貨建て債務は国内の金融機関が負っていた負債でした。

このような国であれば、当然のことながらキャピタルフライとは起こりえます。そうして、実際アイスランドではそれが起こったのです。

韓国銀行は2月22日、韓国の対外債権が前年比638億ドル増の7843億ドルとなったのに対し、対外債務は151億ドル減の3809億ドルだったと発表しました。

対外債務では長期対外債務が160億ドル減少し、短期対外債務は8億ドル増えました。外貨準備高(3711億ドル)に占める短期対外債務(1052億ドル)の割合は28.3%で前年と同じでした。同割合は2013年の32.3%、14年の32.0%、15年の28.3%と年々低下してきました。1997年の通貨危機当時(283.1%)、2008年の金融危機当時(79.3%)に比べるとはるかに低い水準です。

さて、13年以降は韓国では物価目標が2%へ引き下げされてから、急激に低インフレ化し、むしろ実質的にデフレ経済に陥っています。見方を変えれば、物価抑制という目標に絞れば、金融政策は「成功」しているのかもしれないです。

つまり、政府と中央銀行は、韓国の大企業の対外債務の実質増を警戒しすぎるあまり、それによって雇用を犠牲にしているのである。その大きなしわ寄せの対象が、若年雇用の悲惨な実態という状況なのです。

韓国だけ若者の失業率が悪化、日米欧は一斉に改善

どの国の中央銀行の金融政策も、インフレ目標はあくまでも中間的なものにすぎません。日本ももちろんそうです。あくまで、インフレ目標の実現を通じて、雇用全体の改善や経済の安定化を目指すことが、各国中央銀行の政策目標です。

こうした意味では、韓国政府と韓国銀行は金融政策の目的を、銀行や大企業に対してあまりにも「忖度(そんたく)」しすぎて、その半面、肝心要の雇用を犠牲にしていることになります。経済・雇用の全体的な状況が改善しないままに、最低賃金の引き上げなどすばば、雇用が激減することは最初からわかりきっています。

韓国の金融政策は、緩和基調ではないために、むしろ雇用を全体として縮小させてしまっているというのが現在の姿なのです。つまり、パイの大きさが前よりも小さくなってしまっているのです。そのとき、パイの切り分けを変えることをしたらどうなるでしょうか。きっと最も力の強い人たちに、より多くのパイが配られることになるだけです。

小さくなってしまったパイでも、すでに働いている正社員たちに、より多くの配分が与えられるのです。他方で、非正規社員や新卒の人たちは割を食うことになります。最低賃金の引き上げはこの状況をさらに悪化させたのです。

巨大アップルパイを切り分けているところ。パイそのものを大きく
しなれれば、いくら分配を正確にしようにも、割をくう人がでてくるのは当然

日本では、アベノミクスの採用以降、雇用が増加し、最低賃金も6年連続で引き上げられました。これはパイが拡大している中で、最低賃金の引き上げが若年層などの雇用を悪化することなく行われたことを意味しています。パイの配分の変更をスムーズにするには、パイの拡大が必要だということです。これを誤ると、特に若年雇用が悪化してしまうことになります。これがまさに、今の韓国の状況なのです。

わが国でも過去の民主党政権や現在の立憲民主党は、パイの拡大に極めて消極的であるにもかかわらず、パイの配分には積極的です。その結果どうなるかといえば、民主党政権時代の状況が如実に示しています。

ところが、未だこれだけの雇用改善を目の前にしても「アベノミクスは失敗で、民主党政権の方がよかった」というトンデモ意見が絶えないようです。このようなことをいう人たちには現在の韓国の状況を理解することはできないでしょう。

ところで、韓国内の経済政策論争を見てみると、最低賃金引き上げや残業時間規制などの是非ばかりに目が行っていて、日本的なアベノミクス、つまり金融政策による雇用最大化を主張する意見は皆無です。米エール大の浜田宏一名誉教授が韓国銀行でスピーチしたとき、出席者すべてが金融緩和政策による雇用創出、つまりリフレ政策に否定的だったといいます。

韓国には日本でいうリフレ政策を唱える人がいないとしか思えないです。政策のアイデアを助言する人が韓国にいなければ、そもそもその政策が採用される可能性も低いです。これがまさに現代韓国の不幸です。

ブログ冒頭の記事を読むと、いくら韓国内の話とはいえ、雇用の話を論じているのに、金融緩和は全くスルーしています。この記事を書いた人の頭の中には、雇用と金融緩和が密接に関連しているという観念が全く無いのだと思います。

日本も以前は韓国と似た状況でしたが、それにしても少数派ながらリフレ派が存在し、その人々が事あるごとに政府や野党に対して提言など行ってきました。韓国でも、マクロ経済を学んだ人は少なからず、存在すると思います。こういう人たちが、金融緩和策や積極財政を提言しないのはなぜなのか本当に不思議です。

そうして、事はさらに深刻です。韓国の若年失業率の高止まりが続くことで、すでに若年から中年に移行した人たちの経済状況が低迷しているのです。非正規雇用の割合も極めて高く、その人たちの所得水準は不安定です。

現在の韓国の30代の未婚率は日本をかなり上回っています。この事態を放っておけば、未婚率が経済的な要因でさらに上昇していくことでしょう。韓国でも未婚率と合計特殊出生率はかなり強い関係にあります。金融政策の失敗が、将来的な韓国の大幅な人口減と高齢者の割合の急増をもたらす可能性が大いにあります。

しかも、そのスピードは日本よりも早いです。韓国が「消滅」するかどうか、その方が巷でよく目にする「韓国崩壊」論よりもよほど深刻な事態です。

文政権は、一刻もはやく、マクロ経済の政策転換を行い、金融緩和、積極財政に転ずるべきです。

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