トランプ大統領 |
5Gは、現在の4Gの100倍とも言われる速度での通信を可能にし、あらゆるものがインターネットにつながる。共産党独裁国家である中国が5Gを「支配」すれば、安全保障への影響ははかりしれない。トランプ政権は、同盟国にも「ファーウェイ排除」を要請している。
こうした、トランプ氏の対中強硬姿勢には、党派を超えて支持が広がっている。
米民主党の大物、チャック・シューマー上院院内総務はツイッターで、「中国にタフな姿勢を貫け」と投稿し、トランプ氏の決断に賛同した。米世論調査会社ギャラップが4月下旬に実施した世論調査で、トランプ政権の支持率は過去最高の46%を記録した。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「米中貿易戦争は、世界制覇をめぐる権力闘争といえる。習近平国家主席が提唱した『中国製造2025』が実現すれば、欧米や日本のハイテク産業は壊滅し、世界経済の覇権は完全に中国共産党に握られる。自由も人権も、法の下の平等もなくなる。トランプ政権は『断固戦う』との国家意思を示した。今回の大統領令署名は、同盟国にも強いメッセージを発した形になった」と語った。
米国が警戒する背景には、次世代通信規格「5G」の到来がある。
5Gは、現在の4Gの100倍とも言われる速度での通信を可能にし、あらゆるものがインターネットにつながる。共産党独裁国家である中国が5Gを「支配」すれば、安全保障への影響ははかりしれない。トランプ政権は、同盟国にも「ファーウェイ排除」を要請している。
こうした、トランプ氏の対中強硬姿勢には、党派を超えて支持が広がっている。
米民主党の大物、チャック・シューマー上院院内総務はツイッターで、「中国にタフな姿勢を貫け」と投稿し、トランプ氏の決断に賛同した。米世論調査会社ギャラップが4月下旬に実施した世論調査で、トランプ政権の支持率は過去最高の46%を記録した。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「米中貿易戦争は、世界制覇をめぐる権力闘争といえる。習近平国家主席が提唱した『中国製造2025』が実現すれば、欧米や日本のハイテク産業は壊滅し、世界経済の覇権は完全に中国共産党に握られる。自由も人権も、法の下の平等もなくなる。トランプ政権は『断固戦う』との国家意思を示した。今回の大統領令署名は、同盟国にも強いメッセージを発した形になった」と語った。
【私の論評】本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎない(゚д゚)!
"中国の「サイバー主権」を囲い込むこと"であると掲載しました。
このことは、多くの識者がそのようにとらえているようです。そうして、冒頭の記事の藤井厳喜氏も、それに近いようなことは述べています。しかしなぜか「中国のサイバー主権」については直接は述べていません。他の識者も中国の「サイバー主権」については5Gの問題について直接関連付けて述べる人はいないようです。
このことが、多くの人々のこの問題に関する認識を若干弱めているのではと思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
いまだ低いファーウェイへの信頼性、求められる対抗通信インフラ―【私の論評】5G問題の本質は、中国の「サイバー主権」を囲い込むこと(゚д゚)!
この記事から「サイバー主権」に関わる部分のみを引用します。
中国は「サイバー主権」という概念を唱え、それを促進するため、国連に対するロビー活動を行ってきました。インターネット規制を国家に限定すべきだと主張する一方、業界や市民社会を脇役に押しやりました。
中国で2017年6月1日、インターネットの規制を強化する「サイバーセキュリティー法」が施行されました。中国共産党は統制の及びにくいネット上の言論が体制維持への脅威となることに危機感を抱いており、「サイバー空間主権」を標榜して締め付けを強化したのです。
同法は制定目的について「サイバー空間主権と国家の安全」などを守ると規定。「社会主義の核心的価値観」の宣伝推進を掲げ、個人や組織がインターネットを利用して「国家政権や社会主義制度」の転覆を扇動したり、「国家の分裂」をそそのかしたりすることを禁止しました。
中国で2017年6月1日、インターネットの規制を強化する「サイバーセキュリティー法」が施行されました。中国共産党は統制の及びにくいネット上の言論が体制維持への脅威となることに危機感を抱いており、「サイバー空間主権」を標榜して締め付けを強化したのです。
同法は制定目的について「サイバー空間主権と国家の安全」などを守ると規定。「社会主義の核心的価値観」の宣伝推進を掲げ、個人や組織がインターネットを利用して「国家政権や社会主義制度」の転覆を扇動したり、「国家の分裂」をそそのかしたりすることを禁止しました。
具体的には情報ネットワークの運営者に対して利用者の実名登録を求めているほか、公安機関や国家安全機関に技術協力を行う義務も明記。「重大な突発事件」が発生した際、特定地域の通信を制限する臨時措置も認めています。
こうした規制強化について、中国は「サイバー空間主権」なる概念を打ち出して正当化しています。2016年12月に国家インターネット情報弁公室が公表した「国家サイバー空間安全戦略」は、IT革命によってサイバー空間が陸地や海洋、空などと並ぶ人類活動の新領域となり、「国家主権の重要な構成部分」だと主張。インターネットを利用した他国への内政干渉や社会動乱の扇動などに危機感を示し、「テロやスパイ、機密窃取に対抗する能力」を強化すると宣言しました。
また同弁公室は今年3月に発表した「サイバー空間国際協力戦略」でも「国連憲章が確立した主権平等の原則はサイバー空間にも適用されるべきだ」と主張。「サイバー空間主権」の擁護に向けて「軍隊に重要な役割を発揮させる」とも言及しました。そもそも、インターネットを構築したのは米国であり、その影響は避けられないです。中国のネット検閲技術も米国企業が協力したとされています。中国当局にはインターネットの情報を完全にコントロールできないことへのいらだちがあるようです。サイバー空間主権を掲げることで、領土内の決定権は中国にあると強調したいのでしょう。
そうして、「サイバー主権」は2017年に発表されたことと、5G問題は2018年あたりから、表面化したため、両者は互いに関連付けられることはあまりありせんが、これは不可分に結びついています。
というより、本質は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその道具に過ぎないともいえます。
この記事より、5G問題に関する部分を以下に引用します。
今後世界は5Gを中心として、オープンモデルの世界と、クローズドモデルの世界に分断されていく可能性が大です。クローズドモデルは闇の世界となることでしょう。
私自身は5Gの問題の本質はここにあると思います。日米などの先進国は、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推進することによって、中間層を多数輩出させ、彼らに自由な経済・社会活動を保証することにより、国富を蓄積して国力を増強しました。このようなことを実現した先進国では、インターネットは当然オープンなものと受け止められているのです。しかし、中国にとっては5Gは、まず自国内での「サイバー主権」を確実に実行するための道具なのです。そうして、中国は次の段階では、世界の通信秩序をつくりかえようとしているのです。
もともと、米国がつくりだしたインターネットは、軍事的なものでした。当時はあり得ることと認識されていた、世界中が核兵器で破壊されても、通信インフラが多少でも残っていれば、世界中と連絡がとれるということが、当初の目的でした。
しかしこれが、軍事目的のほかに、学術面で使用されるようになりました。このオープンなシステムを用いて、従来では考えられなかった用途が考え出されました。
たとえば、学術誌で有名だったケミカル・アブストラクトがインターネットを介して、情報を提供するようになりました。
ケミカル・アブストラクトは、最新の化学物質の組成や性質を掲載したものですが、当初は冊子体は非常に大きく(1年で厚さ数メートルとなる)なるものでした。
ケミカル・アブストラクツ(冊子)の表紙 |
多くの化学者は、新たな化学物質を合成した場合、この冊子を検索して、自分の開発した物質が、本当に新しいものであるかどうかを確かめました。しかし、このような冊子であることから、更新に時間がかかり、たとえその冊子に掲載されていなくても、他の学者がすでに開発していたなどということもしばしばありました。
多くの化学者が自分では、ノーベル賞級の発見をしたつもりでも、たまたま冊子に掲載されていなかっただけで、実は他の学者がとっくに発見していたということもありました。
しかし、これが現在では、すべてデータベース化されていて、インターネットで検索できるようになっていて、オンラインで申請し要件を満たしていれば、すぐに新たな発見がデーターベースに掲載されるようになりました。
現在の化学者は、日々このデーターベースで検索していて、自分の発見が本当に新しいものであるか、そうではないかを検索することができます。これは、インターネットが普及するまでは考えられないことでした。
このように、インターネットの学術利用が普及していきました。そうして、次の段階では、一般の人もつかえるように、インターネットの商用利用がはじまり、今日に至っています。
このような歴史をたどった、インターネットは今日でも、基本的にオープンな仕様になっています。
しかし、中国はこのオープンなインターネットを「サイバー主権」なる主張をもとに、自分たちに都合の良いものに作り変えようとしているのです。その尖兵が5Gなのです。
こう考えると、5G問題は、単に技術上の問題であるとか、米国と中国の覇権争いなどという単純なものではないと理解できると思います。
基本的に、自由でオープンなインターネットを自分たちの都合の良いように作り変え、中国共産党の統治の正当性をより確かなものにしようとすることを許さない米国との対立というのが、5G問題の本質なのです。
もともと米国で開発されたインターネットは、当初は軍事目的だったものの、今日では自由でオープンな特性を活かし、社会の重要なインフラとなっています。
しかし、中国はこれをつくりかえ、まずは自国内で情報を政府が一元的に管理可能なものにつくりかえようとしています。さらに、中国の覇権の及ぶ他国においもその国の政府がインターネットを一元的に管理できるようにすることを目指していることでしょう。さらに、将来は、世界の情報を一元的に管理しようとの目論見も当然あることでしょう。
これからの世界は、中国の通信モデルと既存のモデルのせめぎあいになることが考えられます。ここは、なんとしても米国に勝利してもらい、通信インフラの世界を中国の都合のようにつくりかえることを防ぐべきです。
インターネットが中国の都合の良いようにつくりかえられてしまえば、世界は暗黒の闇になります。世界中がジョージ・オーウェルが描いた世界「1984」になってしまうかもしれません。これだけは、米国の覇権がどうのこうのという前に、絶対に避けるべきなのです。
この問題は、トランプ大統領からすれば、米国の信じる理念と、中国の信じる理念との対決なのです。
トランプ大統領がファーウェイ“完全排除”大統領令に署名したのは、背後にこのようなことがあることを理解すべきでしょう。本当の脅威は中国の「サイバー主権」であって、5Gはその小道具に過ぎないのです。単なる技術上の問題とか、米国と中国の覇権争いだけのようにみてしまうと、本質がみえなくなります。
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