皇居・宮殿で4日に行われた「令和」最初となる一般参賀。晴天に恵まれるなか、天皇陛下は計14万1130人の参賀者を前に「世界の平和」と日本の「一層の発展」を願われた。参賀者からは被災地慰問や先の大戦の記憶の継承、環境問題といった各方面での今後のお取り組みについて、天皇、皇后両陛下に期待を寄せる多くの声が聞かれた。
午前10時、モーニングコート姿の陛下が宮殿「長和殿」のベランダに姿を見せられた。陛下は向かって左の秋篠宮さま、右側の皇后さまとそれぞれ言葉を交わした後、ゆっくりした口調でお言葉を読み上げられた。お言葉の後は陛下、皇后さま、秋篠宮さまの順に笑顔で手を振って応えられた。
「以前から親しみを感じていたが、同い年とは思えない若々しさを感じた」。陛下と同じ59歳で、千葉県習志野市から妻(58)と初めて参賀に訪れた会社役員の三宅良一さんは、間もなく会社から離れる自らと比較し、「これから大仕事が始まることは、本当に頭が下がる思い」と気持ちを寄せた。同じく陛下と同世代の東京都墨田区の会社員、石井功さん(55)は「上皇さまのお姿を見て成長し、これから一層、国民に寄り添ってくださると思う」と新たな時代を展望した。
平成28年4月の熊本地震で県内の実家が全壊、祖父母宅も被災したというのは、東京都大田区の会社員、後藤梨々子(りりこ)さん(29)。「祖父母が避難した体育館を上皇ご夫妻が訪問され、温かいお人柄に大変励まされたと聞いている。陛下にも被災地などでお力を頂きたい」と願った。青森市から来た会社員、上野真理さん(40)は病気療養中の皇后さまが笑顔で手を振られる姿に安堵(あんど)し「ご自身のやり方で皇后として歩まれてほしい」と述べた。
【私の論評】あなたは天皇陛下を誤解していないか?
元号が改元となり多くの人々が、天皇に関して改めて興味を持ったり、関心を持ったりする方もいらっしゃると思います。しかし、マスコミや識者などもあまり天皇に関しては、まともな報道や解説をしないので、未だ誤った認識を持っている方も多いようですので、以下にその典型的なものをあげさせて解説させていただきます。
【誤解1】天皇陛下が退位を希望するのは、公務に「疲れた」からではない!
これは、とんでもない誤解です。平成28年8月8日のいわゆる「生前退位に関するビデオメッセージ」において、天皇陛下はひと言も「俺は疲れた、休みたい」などとは仰っていません。自分は死ぬほど働けと言われたら働くが、制度としてこの状態はどうなのか、今後も伝統としての象徴天皇をずっと続けられるかどうかを考えてほしい、と訴えられたのです。
日本国憲法に「天皇は、日本国の象徴であり……」と記されているせいで、誤ったイメージが広まっているのかもしれませんが、じつは歴代天皇のなかで「象徴ではなかった」天皇というのは、数えるほどしかいません。平安時代の嵯峨天皇以降で考えれば、基本的にすべて象徴天皇です。実力を伴う独裁者の地位を目指したのは、鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇ただひとり。明治天皇も昭和天皇も、そんなことは微塵も考えていませんでした。これが第2の誤解につながります。
【誤解2】戦後、マッカーサーが天皇の権力を剥奪したわけではない!
象徴天皇とは、別に進駐軍から押し付けられたものではありません。日本はもともと象徴天皇でしたし、明治以降もそうでした。にもかかわらず、マッカーサーが勝手に思い違いをして、「独裁者はやめろ!」と言ってきたわけです。
そもそも、話が噛み合っていなかったのです。しかも厄介なことに、ここへもうひとつの誤解が重なってきたのです。
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天皇とマッカーサー元帥 |
【誤解3】日本憲法下では、天皇は自分の意見を表明してはいけない!?
マッカーサーは確かに天皇に「独裁者はやめろ!」と言ってきました。ただし「判を押すだけのロボットになれ!」などとは言っていません。日本国憲法の表現を使うなら、天皇は「国政に関する権能を有しない」としただけなのです。
権能とは一般的な言葉に置き換えるなら、「権限」でしょう。英語にすれば、どちらも「power of command」で同じ意味です。日本憲法下では、天皇は国政に関する権限こそ持ちませんが、自分の意見を表明することや、結果として影響力を行使することまでは禁じられていません。つまり戦後、日本人の多くは天皇に対して【誤解2】と【誤解3】という二重の誤解をしながら、マッカーサーすら口にしなかった暴挙を行ってきたということです。
【誤解4】女系を認めない皇室典範は「男尊女卑」だ!?
これはむしろ逆です。男系でつながる皇室はむしろ「男性排除」の論理で成り立っています。女性は民間人でも皇族の方と結婚すれば皇室に入れますが、男性はそうはいきません。男性が民間人の場合、皇族の方と結婚されても民間人のままです。
男系なので、女性皇族が結婚されると女性皇族のほうが、皇籍を離れることになります。
雅子様が皇后陛下になられましたが、眞子様と結婚される予定されている小室圭さんが皇室に入ることはありません。ゆえに「男性排除」の論理だと言えるのです。
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愛子様 |
愛子様の女帝に関する議論についても、誤解があると思います。我が国では、奈良時代に民間人の道鏡が皇位を狙って以来、「女帝は生涯独身か未亡人のみ」とする不文法が確立しました。女帝を認めていない現在の皇室典範を「男尊女卑」だと叫ぶのは勝手ですが、もし愛子様が御即位された場合、「生涯独身」を求められるという歴史があることをきちんと理解しているのでしょうか。甚だ疑問です。
【誤解5】「上皇」という尊号は「元上皇」だけに与えられるもの!?
特例法の成立により、天皇陛下は退位後、200年ぶりの「上皇」となることが決まりました。この「上皇」という尊号は、天皇を辞めた方に贈られる「太上天皇」の略ですが、歴史上には天皇にならなくても「上皇」になった方が存在します。その方々を「不登極帝(ふとうぎょくてい)」と呼びます。
鎌倉時代の後高倉上皇や、室町時代の後崇光上皇などが「不登極帝」です。死後に追贈された、陽光上皇と慶光上皇もいらっしゃいます。いずれも天皇の父君です。天皇にはなっていないので、歴代天皇にはもちろん数えません。
日本人なら誰もがその存在を知りながら、よく理解できていない事柄も多い皇室関係。誤解を解いた上で、天皇陛下をご覧いただければ、また違った見方ができるのではないかと思います。
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