2019年9月8日日曜日

日銀がまるで財務省…! 黒田総裁が「転向」で日本経済を失速させる―【私の論評】緩和の副作用など、全く心配するに値しない、日銀は思い切って緩和すべき(゚д゚)!


その責任は重い

露出が減った日銀・黒田東彦総裁

2019年、国内外の景況が次々と悪化し、各国の中央銀行は次々と金融緩和に舵を切ってきた。そんななか、まったく緩和策を打ち出していないのが他ならぬ日銀である。

「9月緩和」の噂も方々でささやかれるが、当の黒田東彦総裁から具体的な発言はない。それどころか、黒田総裁のメディア露出自体も減ってきた。

日銀黒田総裁

今の黒田総裁を見ていると、民主党政権時代の白川方明前総裁とダブるところがある。「金融緩和できない」という説明を繰り返すあたりだ。

白川前総裁は、名目金利がゼロになっていることを理由に、「これ以上金利を引き下げられない」と断言していた。

このロジックを打破するため、2013年3月に黒田総裁が後継指名された。

黒田総裁は、たしかに名目金利は下げられないが、名目金利から予想インフレ率を差し引いた「実質金利」は下げられると主張した。

日銀が国債を購入すれば、予想インフレ率は高まる。年間80兆円ベースで中央銀行が国債を購入すれば、2年でインフレ目標2%は達成できると目論んだ。これが「黒田バズーカ」である。

手を緩める日銀
黒田バズーカの効果は大きく、インフレ率は2014年4月に1・6%まで上昇した。

インフレ目標は達成目前だったが、8%への消費増税で台無しになってしまった。今では、「2%」の目標ははるか遠いものと言えるだろう。

黒田バズーカのキモは国債を買いまくることに尽きるが、最近は日銀も手を緩めている。

2016年9月から、名目金利に着目する「イールドカーブ・コントロール」という新方式に変更した結果、国債の購入ペースは年間80兆円から年間30兆円に減額しているのだ。

国債購入ペースが落ちている以上、予想インフレ率も、実際のインフレ率も芳しくないのは当然のことだ。

黒田総裁は、スタート時に設定した理論を自ら否定していることになる。



日銀が国債購入額を減額したのは、市中の国債の品不足が理由だという。

しかし、'19年6月末の国債発行残高は980兆円もある。日銀の保有国債は46%の454兆円だ。

「コップに水がまだ半分も入っていない」と考えれば、526兆円もの国債が市中には残っている。インフレ目標達成を第一に掲げるなら、日銀は国債購入ペースを落とす必要はなかったのだ。

まるで財務官僚…

ベン・バーナンキ元FRB議長はかつて、中央銀行が国債を購入するとデフレ脱却になるばかりか、中央銀行の保有する国債は国の利払い負担・償還負担がなくなり、実質的に財政再建になると主張していた。

黒田総裁は消費増税を回避して、国債購入を進めればよかったのに、まるで財務官僚のように消費増税を推奨している姿が目につく。

黒田総裁に残された打開策はひとつ。イールドカーブ・コントロールを止め、黒田日銀のスタート時の国債購入ベースの「量的緩和」に戻ることだ。

たしかに、自らの金融政策の失敗を認めることになり、黒田総裁のメンツは失われる。だが、中央銀行全体の信頼性という、最も重要なものを取り戻すことができるはずだ。

おそらく、今後10年ほどはさらに消費増税することはないだろう。今のうちに、「量的緩和」へと原点回帰しておくべきだ。

『週刊現代』2019年9月7日号より

【私の論評】緩和の副作用など、全く心配するに値しない、日銀は思い切って緩和すべき(゚д゚)!

今月、ECBが金融緩和に舵を切り、FRBも追加利下げに踏み切ることが確実視される中、日銀は一体何をしているのでしょうか。日銀の対応次第で「緩和負け感」が鮮明になり、円高が進むリスクがあります。

日銀の追加緩和余地は今でも十分にあります、「大きな効果が見込めて、副作用の小さい手段」はまだまだ十分にあります。ただ日銀が実施しないだけです。

世界的な金融緩和競争の色彩が強まってきています。7月末のFRBによる約10年ぶりの利下げに追随する形で、8月にはニュージーランド、メキシコ、インド、タイなど多くの国で続々と利下げが実施されました。さらに今月には、ECB(12日)が金融緩和に舵を切り、FRB(18日)も追加利下げに踏み切ることが、市場で確実視されています。



こうした各国、とりわけ欧米の金融緩和にもかかわらず、日銀はなにもしません。これまで各国の金融緩和観測の高まりに伴って海外金利の低下が進み、内外金利差の縮小を通じて円高が進んだきているにもかかわらず、日銀はそれに対処しようとしません。円高は輸入物価の押し下げや輸出の下振れなどを通じて物価の抑制に作用します。そんなことは、わかりきったことであり、これに対して日銀が対処しないということは、全く理解不能です。

足元では米中協議の再開期待から多少円安方向に戻してはいるものの、欧米中銀の会合が始まる来週以降は警戒が必要になります。世界的な金融緩和競争の中、欧米中銀に続いて19日に政策決定が為される日銀の「緩和負け感」が鮮明になることで、円高が進むリスクがあるためです。

FRBやECBと比べて、日銀の追加緩和余地は、厳しい側面はあるものの、現状では未だ緩和余地はあります。金融緩和の縮小・停止や金融引き締めの段階を経ている欧米中銀と異なり、日銀は2013年以降長期にわたって一貫して金融緩和を続けてきたにもかかわらず、最近はイールド・カーブコントロールにより、緩和を実質上控えているからです。

従って、日銀としては出来ることなら追加緩和を実行すべきは明らかなのですが、欧米が緩和に動くなかで日銀だけ取り残されれば、円高の引き金を引くことになるでしょう。

ここで、黒田総裁の発言内容(1)などを参考に追加緩和の主な選択肢を改めて考えてみると(表紙図表参照・外債購入やヘリマネなど極端な手段を除く)、(1)フォワードガイダンス強化、(2)長期金利許容レンジの拡大(下限引き下げまたは撤廃等)、(3)マイナス金利深堀り、(4)長期金利目標の引き下げ、(5)国債買入れ増額、(6)ETF買入れ増額、(7)その他資産購入(財投債・地方債等)という手段が挙げられます。

これらは技術的には可能であり、日銀がやる気になればどれもができるはずです。本来これらは、出し惜しみせず、物価目標の早期達成のために既に導入すべきものだったのです。

既述のとおり、今回、欧米が金融緩和に踏み切るなかで日銀が全く動かなければ、「緩和負け感」が鮮明になり、円高の引き金を引くことになるでしょう。

日本では多くの人が金融緩和の副作用軽減の悪影響を完全に相殺することは困難であると考えているようですが、それはさほど難しいことであはありません。

市場をよく観察し、インフレ傾向が顕著になれば、緩和をやめる、あるいは引き締めに転ずるということて十分に対応できます。実際日銀以外の世界の中央銀行はそのように対処しています。

追加金融緩和の悪影響は、日技が金融引き締めに転じればどれも防げること

日銀が一切の政策変更を見送り、現状維持とした場合には、既述の通り「緩和負け感」が鮮明となり、市場は円高・株安に振れることになります。それだけは絶対に避けなければなりません。そうでなければ、日本はまたリーマン・ショックのときのように、震源地の米国や、英国が日本よりも、先駆けて回復したにも関わらず、日本だけが一人負けの状況に甘んずることになります。

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