2019年9月4日水曜日

驚きの事実、韓国は北朝鮮内を偵察できていなかった―【私の論評】今のままだと、韓国は周辺諸国からは安保でも経済でも「どうでも良い」国に成り下がる(゚д゚)!

想像以下だった情報収集力、GSOMIA破棄で打撃を受けるのは韓国

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

安倍総理と文在寅大統領

 韓国の日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄は日韓両国にどのような影響を与えるのか。さまざまな意見が飛び交うなか、朝鮮半島の軍事情勢に精通した米国の専門家が、同協定の破棄は韓国側にとってきわめて不利になるという見解を公表した。日本は偵察衛星を使って北朝鮮内部のミサイル発射の動向などを探知できるが、韓国にはその能力がないからだという。元米軍高官の同専門家は、今回の韓国の措置は米韓同盟を傷つけ、北朝鮮や中国を有利にするだけだとして厳しく非難している。
日本と韓国の情報収集ギャップ

 同専門家は、現在ワシントンの安全保障研究機関「民主主義防衛財団(FDD)」の上級研究員を務めるデービッド・マックスウェル氏である。マックスウェル氏は韓国のGSOMIA破棄についての見解を、防衛問題専門紙の「ディフェンス・ニュース」(8月29日号)に論文として発表した。

デービッド・マックスウェル氏

 マックスウェル氏は米国陸軍の将校として在韓米軍・参謀本部に勤務した経験を持つ。在韓米軍では特殊作戦部長を務めたほか、在日米軍や国防総省にも勤務した。陸軍大佐として2011年に退役した後は、米国防大学やジョージタウン大学で朝鮮半島の安全保障などについて教えると同時に、FDDの研究員としても調査や研究を続けてきた。

「韓国は北朝鮮とその支援国の手中に陥っている」というタイトルの同氏の論文は、韓国が日本との軍事情報を交換する協定の破棄を決めたことの誤りや危険性を強調していた。

 同論文がとくに注目されるのは、韓国には人工衛星で北朝鮮内部の軍事動向を探知する偵察能力がまったくないという指摘だった。一方、日本にはその偵察能力があるから、GSOMIAの破棄はむしろ韓国にとって不利な状況を招くという。

その点について同氏の論文は以下のように述べていた。

「韓国と日本は2016年11月に、北朝鮮の弾道ミサイル発射と通常戦力作戦に関する秘密情報を含めた軍事情報を交換する協定『GSOMIA』に調印した。だが韓国側の人工衛星による情報取得の能力は、南北軍事境界線の南側の領域対象だけに限られている。一方、日本の自衛隊は、軍事境界線の北側の北朝鮮軍の動向を偵察できる偵察衛星数機を保持している。GSOMIAはこうした両国間の情報収集ギャップを埋める協定だった」

 マックスウェル氏はこれ以上は韓国の偵察衛星の能力には触れていなかったが、韓国が現在にいたるまで北朝鮮領内を偵察できる独自の人工衛星を保有していないことは韓国側からの情報でも明らかとなっていた。

断られた偵察衛星の「レンタル」

 考えてみれば、これは驚くべき現実である。北朝鮮は長年、韓国を公然たる敵とみなし、いつでも軍事攻勢をかけられるかのような言動をとってきた。トランプ政権の圧力により最近こそ敵対的な姿勢は後退したかに見えるが、北朝鮮の韓国に対する軍事的脅威は変わってはいない。

 その韓国が、北朝鮮内部のミサイル発射や地上部隊の進撃の動きをつかむ人工衛星を保有していないというのだ。

 韓国の中央日報などの報道によると、韓国政府は2017年8月に、レーダー搭載衛星4機と赤外線センサー搭載衛星1機の計5機の偵察衛星を2021年から3年の間に打ち上げて運用するという計画を発表した。しかし、この計画が完成する2023年まで、つまり2017年から約6年間は、北のミサイル発射の兆候を探知する方法がない。そこで、韓国軍は偵察衛星の「レンタル」というアイデアを思いつき、諸外国に打診したという。

 このあたりの実情は日本でも産経新聞の岡田敏彦記者が2017年9月に詳しく報道していた。韓国政府はイスラエル、ドイツ、フランスの3国に偵察衛星の借用を求めたが、いずれも断られたというのだ。その結果、現在にいたるまで韓国は独自の北朝鮮偵察用の衛星を持っていない。この韓国の態度を、岡田記者は楽観や怠慢が原因だとして批判していた。

 一方、日本は北朝鮮のテポドン・ミサイルの脅威への自衛策として、2003年頃から北朝鮮の軍事動向を探知できる人工偵察衛星の打ち上げ計画に着手した。2013年には光通信衛星とレーダー衛星という2種類の偵察衛星を打ち上げて組み合わせることで、北朝鮮内部の動きを探知できるようになった。

 人工衛星はその後、機能強化、追加の打ち上げなどを経て、現在も光通信衛星2機、レーダー衛星5機の運用体制が保たれているという。つまり、北朝鮮内部の危険な軍事行動を察知する人工衛星の情報収集能力は、韓国よりも日本のほうがずっと高いということなのだ。
 マックスウェル氏は、だからこそ韓国が日本との軍事情報交換の協定を破棄することは賢明ではないと断じるのだ。北朝鮮の軍事動向に関する情報源は、もちろん人工衛星以外にも北朝鮮内の通信傍受やスパイや脱北者からの通報など多々あるが、偵察衛星の役割も非常に大きいといえる。
 米国の人工衛星での情報収集能力は、言うまでもなく日本よりずっと高い。韓国政府はGSOMIAがなくても、これまでと同様に米国からその情報を入手することができる。だが、それでも日本からの情報を遮断する措置は害はあっても益はない、ということだろう。

米国にとっては「裏切り行為」

 マックスウェル氏はこの論文で、韓国のGSOMIA破棄が米韓同盟に悪影響を与える点も強調していた。

 同論文によると、トランプ政権のエスパー国防長官は、8月に韓国を訪問して文在寅大統領と会談した際、GSOMIAの継続を相互に確認し合ったと解釈していた。だから、米側は文政権の今回の措置を裏切り行為に近いと捉えているという。

 また同論文は 韓国の措置が米国の政策にも害を及ぼし、逆に北朝鮮とその背後にいる中国やロシアを利することになる点を強調して、韓国政府への非難を繰り返していた。

【私の論評】今のままだと、韓国は周辺諸国からは安保でも経済でも「どうでも良い」国に成り下がる(゚д゚)!

冒頭の記事にあるような内容は、軍事専門家や評論家の間ではよく知られた事実です。このブログでも、これに近い内容は過去の記事にも掲載してきました。ただし、散発的に掲載したもので、上記のようにまとまった内容ではなかったので、本日掲載させていただくことにしました。

米国・日本・韓国の3カ国間による軍事協定が存在することの意味は、対北朝鮮・対中国という反共を目的とした軍事協定に他ならないです。その軍事協定を韓国が破棄するということは、韓国が日米との自由主義協定を捨て去ることを意味しています。

日韓におけるGSOMIA【軍事情報に関する包括的保全協定】は3年前の2016年11月23日に締結されました。協定は1年ごとに自動更新されることになっており、更新しない場合は3ヶ月前に申し出なければならないですが、奇しくも昨日8月23日はその更新を決める締め切り日に当たる日でした。

日韓GSOMIA協定は朴槿恵前大統領のときに締結された

この図ったかのようなタイミングの良さは、韓国にとっては、まさに渡りに船で、日本の輸出規制のせいでGSOMIAを破棄しなければならなくなったとうそぶくことが1つの目的なのだろうと考えられます。

もともと、文在寅氏は左翼革命家(出身は人権派弁護士)として南北朝鮮を統一するという目的を持った人物です。ところが、マクロ経済の理解が乏しいせいか、左翼的な経済政策が失敗し、米朝問題では存在感を示せずに蚊帳の外に置かれ、日韓問題でも、行き過ぎた反日政策が仇となり、もはや切り札としての「反日」というカードには使用期限が付いてしまっていました。

この八方塞がりの状況を打破しない限り、文在寅氏は、かつてのその他多くの韓国大統領達と同じような末路を辿ることが予感されていました。

そのためでしょうか、やぶれかぶれとなり、自国のゴールにオウンゴールするという奇策を講じました。一見すると、狂ったかのような行動にも見えますが、当の本人は至って、本気なのかもしれないです。

韓国が「GSOMIAを破棄したのは日本のせいだ」と米国に吹聴することで日米間の信頼に亀裂を生じせしめ、その隙に北朝鮮に擦り寄ることを計画しているのかもしれないですが、そんな子供騙しの計画は、当初から成功する可能性は限りなく0に近いものでした。そのような幼稚な策に騙されるほど世界の目は節穴ではありません。

このままいくと、近い将来、軍事的関係としては、(米国+日本+台湾)vs(中国+北朝鮮+韓国)という構図になっていくのかもしれないと思う人も多いかもしれません。

しかし、私はそうではないと思います。おそらく(米国+日本+台湾)vs(中国+北朝鮮+ロシア)という構図になっていくことでしょう。ただし、それは見かけだけのことで、各国それそれぞれが、それぞれの思惑があり、その思惑がありながらも、外見上は上記のような構図で動いていくということになるでしょう。

ただし、(米国+日本+台湾)は、各々の国の思惑があるとはいえ、それは互いにあまり離反することはなく、大きな共通の目的があり、(中国+北朝鮮+ロシア)ほど各々の思惑が離反していることはありません。

ただ、(米国+日本+台湾)(中国+北朝鮮+ロシア)これらすべて国々に共通する考えがあります。それは、南北朝鮮の統一などではなく、朝鮮半島の現状維持です。北と韓国が分離された状態が続くことを望んでいるのです。

どの国も朝鮮戦争終了後の秩序をそのまま維持することを望んでいます。この事実を文在寅は見誤ったのです。特に、北朝鮮は統一を望んでいると、錯覚したのです。

金正恩の望みは、一つであり、それは金王朝の存続です。どのような形であれ、朝鮮半島の南北を統一してしまえば、チュチェ思想を学んだこともなく、金王朝にもともと尊敬の念などない韓国人が北朝鮮にも多数入ってくることになります。

金正恩の望みは唯一、金王朝の存続

そのようなことは金正恩は到底許容できません。にもかかわらず、南北統一に関心があるように、文在寅にみせかけたのは、一重に苦しい制裁逃れをしたかったからです。しかし、文は金のその腹を読むことができず、南北統一で舞い上がってしまったのです。

この状況では、韓国は、自由主義陣営にも、共産主義陣営にも入れないでしょう。おそらく、安全保障上は空き地のような存在になるでしょう。

なぜなら、北朝鮮にとって中国は親の友人ではなく、その証左として、金正恩は、自分の叔父である張成沢氏を処刑し、自分の兄である金正男氏を暗殺しました。両名とも、かなり中国に近い存在でした。

金正恩は、中国の干渉を極度に嫌っています。そのため、北朝鮮と北朝鮮の核が中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。これに関しては、韓国が自由主義陣営から抜けても、同じことでしょう。

まかりまちがって、中国が韓国に軍隊を送ろうとしたり、送った場合、北朝鮮はそれを歓迎することなく、中朝国境付近と38度線の軍備を増強したり、短距離ミサイルの発射を繰り返し、中国と韓国を恫喝するでしょう。

このようなことになれば、南北統一を目指して、韓国が自由主義陣営から抜け出せば、安全保障上は空き地のような存在となり、経済的にも日米からの支援がなくなり、中国も支援することなく、かなり経済が疲弊することになります。

おそらく、韓国の経済は北朝鮮よりはましという程度のものになるでしょう。

それでも韓国は、表面上は共産主義をとりいれたようにみせかけるかもしれませんが、中国にはまともに相手にされないでしょう。無論ロシアも経済的に疲弊した韓国には何の興味ももたないでしょう。

かくして、韓国は、周辺諸国からは「どうでも良い」国になります。ただし、日米は韓国に北や中国の軍隊が入ることを許容しないでしょう。中露は、米軍が再び韓国に入ることを許容しないでしょう。

もし、そういう状況となり、韓国が安全保障上も経済的にも無意味な存在なれば、歴史的には文在寅大統領が韓国を滅ぼしたということになる可能性があります。実際今のままだと、そうなる可能性か高いです。それに、もうすでにそうなりかけています。

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