ロイター: Peter Thal Larsen
Peter Thal Larsen |
企業を分析する際に、負債だけをみる人は真剣な投資家とは言えないだろう。しかし、こと国の分析となると、その国の富よりも債務にばかり着目するファンドマネジャーは多い。
国際通貨基金(IMF)は、国家財務の資産側にもスポットライトを当てることで、バランスを取り戻そうと努めている。
IMFが10日公表した世界経済生産の61%を占める31カ国の財政モニター報告書には、驚くべき指摘が並んでいる。公的部門の正味資産の合計額は101兆ドル(約1京1000兆円)に上り、合計国内総生産(GDP)の219%に相当する。一方、公的債務の合計は同94%であり、資産はその倍以上あるということになる。
巨額の借金を抱える日本の場合、負債額はGDPの283%に相当するが、その半分以上を日本銀行を含めた政府機関が抱えている。他の資産も考慮に入れて試算すると、日本の「純資産」はほぼプラスマイナスゼロになると、IMFは指摘している。
IMF Fical Motitor 2018に掲載されたグラフ |
一方で、財政黒字を誇るドイツの場合、純資産はマイナスだ。
こうした分析は、完璧にはほど遠い。根拠となっているデータは統一性に欠ける。そして、資産と負債の全体像を把握しようとする中で、公的年金制度の将来的なコストや、地下に眠る自然資源の価値などについては、大胆な推計を用いることになる。また、国有企業や資産は簡単には売却できない。
だがそれでも、国の富をより明確に把握することは、いくつかのポジティブな効果をもたらす。1つには、純資産を増大させる公共投資と、借金で財源を作った補助金の区別が明確になる。また、よりよく資産を管理するよう国に圧力が加わる。
IMFがモニターした31カ国の資産利益率は、2010─16年において平均1.9%だった。これに加えて、GDPの3%程度の利益を搾り出すことができれば、先進国が徴収する法人税と同程度の歳入を手にすることになる。
こうした説明責任に対する政治的な消極姿勢が、公共資産に関する公式データの不備を招いているのだろう。
たがその中でも、一部の国は自ら範を示しつつある。ニュージーランドは、6月までの1年間で純資産が1300億ニュージーランドドル(約9兆4000億円)に達し、GDP比で45%と前年の40%から増加したと発表した。
IMFに背中を押され、他の国も、近くバランスシートの資産側について、より詳細な情報を投資家に提供し始めるのではないだろうか。
【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つしかない(゚д゚)!
つい一昨日このブログではかなりIMFを批判しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
IMF「対日4条協議」の内幕 財務省が言わせる「日本は消費増税すべきだ」 ―【私の論評】愚かなIMFを緊縮財政に利用する屑組織財務省は解体すべき(゚д゚)!
IMFのラガルド専務理事(右)と会談する麻生太郎財務相(左)=4日、財務省 |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では「IMFは1990年代から2000年代にかけて緊縮一辺倒であったことを12年に間違いだったと認めていた」ことを掲載しました。要するに、経済が悪化した国々が過去にIMFの融資を求めたのですが、そのときにIMFは財政均衡を重視して、それらの国々に緊縮財政をすることを条件に融資をしたのです。
その結果どういうことになったかといえば、IMFから融資を受けた国々すべてが、経済の悪化を是正することができずとんでもないことになったのです。
ところが、財務省はIMFの名前で自らの見解を述べることで外圧として利用できるので、最近の4条協議で、IMFが「日本は消費増税すべきだ」という意見を述べているのですが、まず財務省がそう言わせていると思って間違いないのです。
本来ならば、IMFはこうした財務省の悪巧みを見破って正しいコンサルティングをすべきなのに、財務省に唯々諾々と従い、財務省の言うとおりの「日本は増税すべき」などというとんでもないコンサルティングの結果を公表しているのです。酷いの一言につきます。この点では、絶対にIMFの馬鹿さ加減を許容することはできません。
それとは打って変わって、今回のIMFの報告書はまともな内容です。以下にそのリンク先を掲載しておきます。
https://www.imf.org/en/Publications/FM/Issues/2018/10/04/fiscal-monitor-october-2018 …
この報告書では、中央銀行(日本では日銀)などを含んだ広義の政府部門のバランスシートでは日本はほとんど純債務はありません。さらに、最近の日本では日銀が市場からかなり国債を買い取っています。
日銀は日本政府の下部組織ですから、この国債は債務とはなりません。日本政府と日銀の統合(統合政府といいます)したBSでは、統合政府ベースでは、借金がないどころか、財政は黒字です。
こんなことを言うとまた、愚かな人々が「そんな馬鹿な」などと言い出すかもしれませんが、こんな一見理解しがたいことになるのは、過去の日本があまりにも長い間(20年以上)金融引締めを実行してきたからです。こんな、異常な状況は古今東西にみられません。
政府の資産と負債の両方を見るとという見方は比較的最近多くの政府で実施されるようになったので、IMFは先の報告書のような比較分析ができるようになりました。
統合政府ベースのBSは、それを作成している国は、まだ少ないです。そのうち、多くの政府が真の自国の財政などを分析するために作成しはじめたなら、IMFの報告書にも統合ベースのBSが掲載されることになるでしょう。
日本の純資産はプラマイゼロである、すなわち政府の借金はゼロであること示すブログ冒頭のロイターのビーター・サル・ラーセン(Peter Thal Larsen)ような記事はなぜか日本のマスコミでは、ほとんど報道されません。これと同じことは、日本ではいわゆるリフレ派という人々が20年くらい前から言ってきたことです。
このブログでも、ブログを創設したばかりの頃(2007年)から、掲載したきたことです。このIMFレポートは財務省の影響がほぼないので、こういう情報を日本のマスコミは報道すべきですが、財務省に忖度しているか、文字やグラフ読めないかのいずれかなのか、ほとんど報道されません。
さて、上の記事を読んだとしても、記事の中で「そして、資産と負債の全体像を把握しようとする中で、公的年金制度の将来的なコストや、地下に眠る自然資源の価値などについては、大胆な推計を用いることになる。また、国有企業や資産は簡単には売却できない」という部分を過大に受けとめる人も多いのではないでしょうか。
それこそ、日本政府の資産を昔の銀行の不良資産のように考え、「日本の資産は不良資産ばかりで、すぐに売ることもできないから、結局は日本は借金まみれなのだ」などと思い込むのは、勝手にしても、それをまともに確かめることもせずドヤ顔で周り吹聴する馬鹿で愚かな人や悪意に満ちた人も多いです。
実は日本政府の資産の7割以上が、現金または現金と同等ですぐに現金に換金できるものです。さらに他の資産も不良資産ではありません。かなり売りやすいものばかりです。現金にすぐに換金できるもののわかりやすい代表例としては、日本国国債があげられます。
日本国債は金利が非常に低いことはご存知でしょう。しかも、日銀が金融緩和のため市中銀行等からかなり買い取っているので、市場ではかなり不足しています。だから、日本政府が有する国債など販売すれば、すぐに入れ食い状態になります。
このような状態なら新規で国債を刷っても入れ食い状態になるのは明らかですが、緊縮を旨とする財務省はそんなことは絶対にしようとはしません。震災復興のときは、国債ではなく、復興税で賄うなどという、常軌を逸した、非常識を実行しました。このままだと、いずれ日銀の金融緩和にも支障をきたすかもしれません。
ブログ冒頭の記事では、「企業を分析する際に、負債だけをみる人は真剣な投資家とは言えないだろう。しかし、こと国の分析となると、その国の富よりも債務にばかり着目するファンドマネジャーは多い」としています。
全くその通りです。国の富よりも債務ばかりに着目するような、ファンドマネジャーは長い目で見れば、成果をあげられず、敗退するしかないのでないでしょう。
このような理屈は何もファンドマネジャーでなくても、まともな常識を持っていればすぐに理解できるはずです。例えば、遺産相続です。
遺産相続の時に、負債だけみて、負債が膨大にあるから、相続放棄するなどという人がいるでしょうか。細かいことはさておき、大局的には負債だけでなく、資産もみて、負債よりも資産の方が大きいとみれば、相続し、負債のほうが資産よりも大きければ、相続放棄をするというのが当たり前です。
しかし、財務省はこのような常識もないようです。私は財務官僚は優秀であると聴いていたのですが、彼らは負債ばかり強調して、資産のことはいわずに、しかもそれを前提として消費税増税をすべきだと言います。
最初は省益だけを追求しているため、悪意でそのようなことを言っているのかとも思っていましたたが、近年の財務省の数々の幼稚な不祥事などみているとあまりに社会常識に欠けているようにみえ、どうみても頭が悪いようにしか見えません。
東大を卒業して、難しい試験に合格して、将来を嘱望されて財務省に入るまでは、確かに彼らは世間一般よりも頭が良いのかもしれませんが、財務省に入ってからは財務官僚の慣行などに従っているうちに、社会常識すら破ってしまうように頭が悪くなっているのかもしれません。
特に、周りの他の官庁や、マスコミ、識者などが彼らにちやほやして、国民生活や経済に全く関係ないところで、いろいろ忖度をするので、自らを成長させる機会を失い、頭も財務省に入ってから月日を経るごとに悪くなってしまったのかもしれません。
先のIMFの報告書には、各国の財政政策の姿勢がより積極的なのか、あるいより緊縮的なのかの分析まであります。以下の図のFISCOは、1に近いほど景気の悪化に順応して財政政策を機動させているかということを示しています。狭義の政府部門のGDP債務比率によって財政政策の機動性が拘束されてるとも読めます。これは、財務省病の根源である、財務省忖度指数ともいえるかもしれません。
やはり、ここまで常識に欠ける財務省は解体して、複数の他官庁の下部組織にして、そのDNAを絶つというのが、日本にとっては一番良いことかもしれません。
中途半端に解体すると、彼らはゾンビのように復活し、他官庁を植民しまた緊縮病を日本中に撒き散らすことになります。
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