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2020年4月18日土曜日

政策スピード不足 官僚の壁 一律給付に財務省反対―【私の論評】中国ウイルスで死者が出る今、政治がまともに機能していれば、起こらないはずの悲劇が起こることだけは真っ平御免(゚д゚)!

政策スピード不足 官僚の壁 一律給付に財務省反対

安倍晋三首相は17日の記者会見で
安倍晋三首相は17日の記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大の阻止に向け「国民皆でこの状況を連帯し、乗り越える」と訴えた。2月29日以降、記者会見の回数は5回に上る。だが、都市部を中心に感染者数は増え続け、緊急経済対策に盛り込んだ現金給付では減収世帯への30万円の給付から国民1人当たり現金10万円の一律給付に方針転換するなど迷走を重ねた。首相の思惑とは逆に、政権への批判は強まっている。

 首相官邸の政策決定にスピード感が欠けるのは、前例踏襲を常とする官僚が壁になっているためだ。

 感染の有無を調べるPCR検査について、首相は再三、1日当たりの検査能力の引き上げを指示したが、厚生労働省は軽症者の入院が増えて重症者支援が遅れれば医療崩壊を起こすと難色を示してきた。新型コロナは感染しても軽症か無症状の人が多い。検査ができないままでは、国民の不安が強まるのは当然だ。

 新型コロナ感染症に治療効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の承認手続きやオンライン診療でも、副作用への懸念から、医師免許を持つ幹部職員らが「立ちはだかった」(政府関係者)とされる。

 現金給付をめぐっては、財務省が国民全員を対象にすれば、「大企業や年金生活者など打撃のない人にも配るのは不公平だ」と主張した。官邸は一律給付が膨大な財源を必要とすることも考慮し、対象を減収世帯に限り、1世帯当たり30万円の給付に傾いた。

 だが、首相が要請した全国の小中高校などの休校や外出自粛による在宅勤務で、家庭では食費など想定外の支出がかさんでいる。企業は先行きへの不安から今後の賃上げに慎重になるのは必至だ。消費税率10%も家計の重しになるだろう。首相はこうした国民感情を重視し、緊急事態宣言の対象区域を全国に拡大したのを機に10万円の一律給付に転じた。17日の記者会見で首相は「もっと判断を早くしておけばよかった」と率直に語った。

 「私たちにはもっとできることがある。目の前の現実に立ち向かうだけではなく、未来を変えることだ」。首相は会見でこう協力を呼びかけた。ただ、5月の大型連休を過ぎても感染者数が高止まりし続ければ、首相が要請した国民の努力も巨額の経済対策も水泡に帰する。来年7月に延期した東京五輪・パラリンピックの開催も危ぶまれる。首相は自らの判断が国家の命運を握る覚悟を持ち、果敢に対応すべきだ。(小川真由美)

【私の論評】中国ウイルスで死者が出る今、政治がまともに機能していれば、起こらないはずの悲劇が起こることだけは真っ平御免(゚д゚)!

10万円一律給付を決定する件で公明党がかなり強く出た事で、安倍総理が実現にこぎ着けることができたところがあるのは、事実ではあるのですが、朝日新聞は相変わらずこの件についても印象操作をしています。

「一律給付に反対の安倍首相が折れた」などと報道しています。

【世論の不満、折れた首相 与党に転換迫られ 10万円給付へ 新型コロナ】
(2020/4/17 朝日新聞)

そしてこれ、時事通信も全く同じような報道をしています。

【公明、「連立離脱」論で押し切る 官邸主導の政治手法に影―現金給付1人10万円】
 新型コロナウイルス感染拡大を受けた経済対策で、焦点の現金給付は国民1人当たり10万円とすることが決まった。連立解消まで持ち出した公明党の強硬な要求に安倍晋三首相が折れた形で、2020年度補正予算案を組み替える異例の展開となった。第2次政権発足以降貫いてきた官邸主導の政治手法が今回ははね返され、首相の求心力低下も印象付けた。~以下省略~(2020/4/17 時事通信)
一律給付はむしろ安倍総理は実施したい側でした。それを特に強固に反対していたのは麻生太郎でした。

麻生は「2009年の定額給付は叩かれまくったから絶対にダメだ」と国会でも個人的にも根に持っているのを隠さない答弁ぶりでした。

そこで安倍総理は岸田政調会長に指示を出したわけですが、財務省のポチで緊縮財政派の岸田政調会長は一律給付の声を無視して「1世帯あたり30万円給付します!」と、総理に話を持っていって了承を取り付けました。

岸田政調会長

しかも、蓋を開けてみたらおもいっきり所得制限がついてよくてもせいぜい5世帯に1世帯程度しか対象にならない中身でした。財務官僚としてはまんまとしてやったりと言ったところでしょう。

そこにでてきたのが、公明党です。総理としては、公明党と根回しをした上でこれを利用したのでしょう。

一律給付に連立離脱も辞さないと主張したものの、それでも岸田ら財務省派の連中が一歩も譲歩せず、4時間もの交渉の末に結局結論は先送りとなりました。そこに安倍総理の一押しでようやく一律給付実現にこぎ着けました。
消費税増税についても財務省のポチで国民の利益より財務省を守る個人的政治信念を優先する老害麻生太郎と岸田文雄という財務省の代弁者により、上げざるを得なくなったというのが事実です。

自民党内の若い議員達、特に今回の一律給付と消費税減税を求めた100人になる議員達に言いたいのですが、政府に文句を言うのではなく自分たちの派閥のボス、岸田、麻生にこそそのエネルギーをぶつけるべきだったと思います。

特に麻生は国民の利益より財務省を守るという事に関しては従来から全くブレたことがありません。過去には、消費税増税が間違っている事を講演などで語りつつも、必ず財務省の省益最優で動いてきました。

麻生財務大臣

その麻生の強い影響力の土台になっているのは、麻生に直接文句を言わないくせに麻生派に所属して党内第二派閥の領袖という麻生の権力を支えている議員達です。そこを自覚すべきです。

麻生派の議員がやるべきだったのは、定額給付に対しての個人的な恨みまで持ち出して一律給付断固拒否で抵抗した老害麻生を説得することであったはずです。

なんでもかんでも総理だけを悪者にするのは、「僕は派閥のボスに目を付けられたくないので総理を批判してポーズだけ取ります」という風に見られても致し方ありません。

朝日新聞や時事通信、読売新聞など第一次安倍内閣の倒閣に動いた記者クラブ談合メディアの一部は隙を見ては現在も第一次安倍内閣の時から全く同じ書き方を使っています。

「首相が折れた形だ」、「折れた首相」、「求心力の低下を印象づけた」

意思を通しきれない頼りないリーダー、安倍晋三。これが朝日新聞が第一次安倍内閣のときからずっと繰り返し使ってきたイメージです。そのための「折れた首相」という書き方です。

先のも述べたように、今回は安倍総理は公明党を利用したというのが真相でしょう。

今回公明党が切ってきた「連立離脱」カードは強固な基盤を持っていない議員にとっては
本当にあるかどうかわからない創価票が減る事で落選してしまうという危機を抱くことになります。

特に二階派はそういう有象無象が集まっていますし、岸田派、麻生派もそうした議員は少なくありません。

安倍総理のように地元に圧倒的な地盤を築いている議員ならいざ知らず、当落ギリギリのところにいる議員達にとっては次の選挙で落ちるかもしれないぞという脅しになります。

安倍総理が菅官房長官を切れないのも管-公明党ラインがあるからなのでしょう。

また、今回のことで公明党内の支持基盤層の不満もかなり抑えられるでしょう。公明、山口なつお氏に花を持たせた形ですからね。

自民党内では、一つの派閥ばかり強くさせるとパワーバランスを調整できなくなってしまうのです。面倒な話ですがこれが議院内閣制です。

安倍総理は、国会で反日野党にひたすら嫌がらせされながら空いた時間で政策を進めつつ、こんな水面下のバランス調整を7年以上も続けているのです。

これまでも何かある度にマスコミが「首相の求心力低下を印象づけた」「優柔不断な首相」という印象操作を行ってきました。

こんな事を書きながら同時に「第2次政権発足以降貫いてきた官邸主導の政治手法」などと報道しているのですから噴飯ものです。

朝日新聞や時事通信、読売新聞などの記事のとおりなら、<今までずっと党を無視して官邸で決定し押し切ってきた優柔不断で求心力低下を繰り返してきた安倍総理は8年も政権を続けてきた。>

という矛盾したことになるのですが、彼らはそれに気づいているのでしょうか。

今回のことで改めてはっきりしたのは、麻生太郎や岸田文雄らが国民生活より財務省のポチであろうとする事を選ぶ連中だということです。

岸田派としては岸田がせっかく総理に「1世帯あたり30万円給付します(ほとんど対象にならない)」と報告して了承を得た案が総理と公明党によってはっきりひっくり返されたわけですから、岸田派としてはメンツが丸つぶれということです。しかし、これは国民のことを全く考えずひたすら財務省ポチであり続けたことの代償です。

そうして、それ以上に、岸田があてにならないので切り捨てる事になってもかまわないという判断を安倍総理が行ったことになります。

長い時間外務大臣をやって次期総裁候補の一角にも名前が出るようになった岸田は、総裁選への備えのためにも大臣交代を直訴。そして今のポジションにいたわけですが、肝心な所で財務官僚が書いた台本で総理を騙して「ほとんど真水を出させない経済対策」を押し通そうとして大やけどをした形です。むしろ求心力低下は安倍総理よりも、岸田の方がよほど大きいです。

昨日の衆議院厚生労働委員会で、山井和則(京都6区比例復活)、岡本充功(愛知9区比例復活)らが安倍総理の揚げ足取りだけを目的に質問に立ちましたが、今回総理が10万円給付に変更したことに関連して以下のようなやりとりがありました。



山井
「総理は一律給付には3ヶ月以上かかると当初言っていた!嘘をついていたな」

安倍総理
「3ヶ月以上かかると言っていたので新たな方法を検討するように指示したら期間短縮ができるとなったから一律給付に決めた」

山井
「総理は虚偽の説明をしていたんだな!総理の言う事は信用できない!緊急事態宣言もろくに精査せず発表したんだな!」「総理の言う事は信用できない」

山井としては、「総理は一律給付をしたくなくて嘘をついていた。責任を取って辞任しろ!」ということにするために質問に立ったのがよくわかる質疑でした。

山井の不毛な質疑でしたが、こんな質疑でも山井の意図とは全く別の角度で安倍総理の役に立ちました。

山井の質問に対する安倍総理の答えは以下のようなものでした。

安倍総理
「これまで一律給付は3ヶ月以上かかると説明されてきた。新たな方法を検討するように見直しをさせたら住基台帳を使うアイデアが出てきた、これで5~6月頃から配布が可能と言われた」

自民党内で一律給付と消費税減税を求めた100人以上の議員が党内で議論を開いた時に政調会長らは「一律給付の場合は3ヶ月以上かかってかえって時間がかかるから所得制限」という話で押し切っています。

この件は小野田紀美議員がぶち切れしてツイッターで愚痴っていたのでご存じの方もいらっしゃると思います。

要するに麻生も岸田も一律給付反対、緊縮財政派なので一律給付に対して財務省サイドは「できない理由」を作ってそれしか方法がないかのように説明をしてきたわけです。

なので麻生大臣に至っては「一律にしたら金がくばられるのは8月以降になる」とまで言っていました。麻生は良くも悪くも自分の部下の説明は疑わないようにしているので財務官僚にまんまと嘘をすり込まれていたのかもしれません。

財務官僚はその説明で総理まで騙していた形になります。

財務省の岡本薫明事務次官

ところが一律給付を実現させたい総理が見直しをさせたら住基台帳やネットなどを使う事で早く配れるようにできる、という話が出てきたわけです。出てきたのは総務省サイドからのアプローチのようです。財務省ってほんとに国民の邪魔しているだけです。

本当ならマイナンバーカードが全国民に普及していたらそれに基づいて振り込めばいいだけなのでもっと短縮できたはずです。日本のマスコミと反社会勢力(共産党と旧社会党系)にとっては口座の名寄せが行われるといろいろ都合が悪いので長い間邪魔をしてきたおかげで歴代政権は、彼らに足を引っ張られ放題です。

先にもあげたように、総理に対してすら「一律給付は3ヶ月以上かかる」と「できない理由」を作って説明してきた財務省は嘘つきであり、やはり解体すべきだと思います。

対象を絞って30万円支給するのと、10万円一律給付とでは、どう考えても10万円一律給付のほうが、はるかに簡単で、早いはずです。対象を絞った場合は、対象であるかどうかを確認するのにかなり手間取るはずですし、役所に人が大勢集まりコロナ感染を誘発しかねません。

さらには、支給金詐欺も横行しそうです。何しろも対象を絞っての給付金は、給付資格を何らかの形で証明しなければならなくなりますから、複雑だし、不正受給の温床にもなります。

今回のような、緊急時には財務省と財務大臣は対策会議等に参加できないようにするという措置が必要かもしれません。何しろ緊急時であっても国民の命よりも省としての方針、緊縮財政を重視するのですから、これからも国難のたびに足を引っ張られることになるのは間違いないでしょう。

そもそも、復興税などという、自然対策に税金を用いるなど古今東西に全く例のない(疑うなら調べてください)奇妙奇天烈な税制をつくったのですから、これくらいのことはされても仕方ありません。多くのサラリーマンは未だにこの税金を天引きで支払い続けているということを忘れるべきではありません。

安倍総理は党内のバランスを取りながら今回は公明党まで使ってきたやっと実現できた形です。政策実現のためにそこかしこに根回しをしているのでしょう。緊急事態宣言についても反対する閣僚を説得して回っていたのが総理という実態だったようですし、五輪延期についてもしっかり関係各所とIOCなどと調整がついてから発表しました。

今回自民党内で一律給付を求めた若手議員達はこういう実態を踏まえて発言と行動をより磨くべきです。

中国ウィルス終息後、いかに中国の影響力を削いでいくか、むしろ本番はそこからになると見ておかなければなりません。党内で強力に議論を進められるだけの実力を付けてもらいたいです。

議院内閣制の総理大臣は独裁などできず、なかなか前に話が進んでいかないもどかしさがどうしてもあります。ですが面倒であっても手続きこそが民主主義でありますし、利害が対立するところを調整するのですから時間がかかるのは当然とも言えます。
これからの課題は、国益と利害対立する、財務省の「省益」をいかに取り除いていくかということです。

世論調査では、10万円の一律給付のほうが圧倒的な支持がありました。結局私たち国民の世論の後押しもあって今回の10万円一律給付は実現したわけですが、次のステージは消費税減税でしょう。

総理の負担を考えれば、国会で反日4野党のゴミ質疑に毎日何時間も付き合わされているのだけでも辞めさせるべきと思います。

日本のマスコミの大半は総理を潰すことしか考えてませんので、これからも実態を無視した記事を書き続けるのでしょう。また、テレビのワイドショーも右に倣えです。

私たち国民が冷静に状況を分析し続けていくしかありません。ワイドーショーだけが、情報のソースのワイドシー民は、情弱であり、ワイドーショーをみて「対策が遅すぎる」「首相は公明党に折れた」とか挙句の果てに「もりとも桜」の話題も出るような始末です。実際、私もワイドショー民のそうした反応に時々遭遇することがあります。

馬鹿な情弱は、馬鹿の壁を高く築いてどうしようもないのかもしれませんが、それにしても、それが自分の親族、おじいちゃん、おばあちゃんなら、子供や孫なら、本当に残念なことだと思います。幸いなことに、我が家ではそのようなことはなく、ワイドショー民にあうのは家以外であり、その点では私は本当に恵まれていると思います。

ワイドショー民には、ネットの報道番組等をテレビでみられるようにしてあげて、財務省やそのポチたちからの情報操作、印象操作を受けないようにして、緊縮病を解いてあげるべきです。

このブログでは、『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』という書籍を哨戒したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機はこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下のこの本の著者たちの言葉を引用します。
民主的な選択は、裏づけのある政策とそうでない政策を見分けることから始まる。特に国民の生死にかかわるようなリスクの高い政策選択においては、判断をイデオロギーや信念に委ねてはいけない。…正しくかつわかりやすいデータや証拠が国民に示されていないなら、予算編成にしても経済政策にしても、国民は政治家に判断を委ねることができない。その意味で、わたしたちはこの本が民主化への第一歩となることを願っている。
「経済政策はどんな薬、手術、医療保険よりも命に関係する」という著者たちの言葉の重みを感じます。この記事は、最近もこのブログで紹介させていただきました。

中国ウイルスが終息したとしても、その後の経済対策が悪ければ、中国ウイルスの死者を上回る死者を出すおそれもあるのです。

この記事を書いたのは、2016年3月4日です。この記事を読んだ私の知人の中に、「経済政策が人を殺すこともあるということは、絶対に信じることができない」という人がいました。

私は、これは私一人だけの意見ではなく、多くの経済学者などが指摘するところだと、言っても彼は考えを翻しませんでした。そうして、結局この書籍も読まなかったようです。

その彼に、最近「経済政策が悪ければ人を殺すこともある」と思うかと、再度聴いてみました。そうすると、今の彼は、中国ウイルスのこともあってか、考えを翻したようでした。そうして、この書籍も読んでいました。

世の中彼のような人ばかりだと良いのですが、ワイドショー民はそうではないです。彼らは、可愛そうなだけでなく、緊縮政策支持で自分で意識せず、意図せず、若い人たちを間接的に殺すことにもなりかねません。それが、自分の子供や孫だったらどうなるのでしょうか。今はただでさえ、中国ウイルスで死者が出る時期です。本来政治がまともに機能していれば、起こらないはずの、悲劇が起こることだけは真っ平御免です。


2019年9月21日土曜日

【田村秀男のお金は知っている】政治も「ガチョウの沈黙」に便乗!? 消費税が「悪魔の税制」といえるワケ―【私の論評】国民はもっと怒れ! 本当は増税率25%の大インパクト(゚д゚)!



 日本の法人税率は29・74%という建前だが、ソフトバンクグループは税引前純利益1624億2200万円もあるのに、納税額は500万円、税負担率0・003%。日本製鉄はそれぞれ1109億2200万円、16億1500万円、1・46%。これは、元国税マンで税制研究の大家、富岡幸雄・中央大学名誉教授が近著『消費税が国を滅ぼす』(文春新書)で明らかにした。

 大企業がまともに納税すれば約9兆円の税増収となり、消費税増税は不要どころか、消費税減税が可能になるという。消費税率を下げれば、家計の消費は上向き、内需は拡大、20年以上もの間、日本経済を停滞させてきたデフレ圧力は解消、日本再生の見通しが立つ。消費税増税による日本経済破壊ぶりを論じてきた拙論にとって、まさに正鵠(せいこく)を射た思いだ。消費税というのはつくづく「悪魔の税制」だと思う。

 消費税を世界で初めて導入したのは第二次世界大戦後のフランスだが、その基本的な考え方は17世紀、ルイ14世の財務総監、ジャン・バティスト・コルベールの「徴税の極意」に由来する。

 吉田寛・千葉商科大学教授の近著、『市場と会計』〔春秋社〕によると、コルベールは、生きているガチョウを騒がせずに、その羽をできるだけ多くむしり採ることだ、とうそぶいた。騒ぐとやっかいな貴族や僧職には課税せず、宮廷に出入りすることのない平民を徴税の対象とした。

 日本でも消費税が1989年に導入されて以来、財務官僚は何かとうるさい財界には法人税率を引き下げる一方、収入をむしり取られてもおとなしい家計に対しては消費税率アップで臨む。そればかりか、法定税率はあくまでもみかけだけで、内実は企業規模が大きくなればなるほど実際の税負担率は下がっている。忠実に税を納めているのは主に中堅規模の企業だという。

 日本国の国土、文化・伝統や国民の献身などあらゆる資源を最大限利用しているソフトバンク、日本製鉄のような超大企業が巨大な利益を稼いでいるのに税負担が小さくても、お上からとがめ立てられることはない。

 政治の方も、「ガチョウの沈黙」に便乗している。安倍晋三政権は消費税率を2014年度にそれまでの5%から8%に引き上げたばかりか、今年10月には10%とするのだが、安倍政権は消費税増税にもほとんど影響されずに安定した世論の支持率を保っている。

 このままだとどうなるか。家計なるガチョウは1997年度の消費税増税以来の慢性デフレにさいなまれている。子育てや教育にカネのかかる30歳から50歳未満の世代の2018年の給与は01年よりも少ない。


 グラフは家計消費と消費税、法人税、所得税など一般会計税収総額の推移である。税収増減額はほぼぴったりと家計消費増減額に連動している。政府税収は消費税率を上げない限り増えない。法人税は上記のような不公正ぶりだ。

 ガチョウを太らすことを考えないどころか、やせ細ろうとも、気にしない。そして平然と毛をむしり取る。(産経新聞特別記者)

【私の論評】国民はもっと怒れ!  本当は増税率25%の大インパクト(゚д゚)!

日本経済を旅客機にたとえると、増税で超低空飛行することに・・・・・・

今回の、消費税を「2パーセント」の増税と軽く考えている人もいますが、本当はそうではありません。「買った物の値段の8パーセント」の税が「10パーセント」に増えるので、税金としては「25パーセント増税」です。率でみれぱ、25%の増税率なのです。
計算式にすると10-8=2  2÷8=0.25  0.25×100=25(%)
すでに数十数パーセントのものを、2%だけあげるというのとは全く異なります。

400万の年収が500万になったら、年収は25%アップと同じ考え方です。おそらくほとんどの人が、年収が25%もアップすれば、かなり年収のアップを実感できると思います。

消費税の場合も、それと同じで。頭の中で2%と大勢の人が思っていても、実際に増税されれば、増税率は25%ということがすぐに実体験として感じ取られることになります。

それに、10%というと切りがよく、誰でも計算できるので、さらに始末が悪いです。10万のモノを買えば、 1万、1千万のモノを買えば、100万です。

因みに消費税3%の時から計算すると10%増税は、330%の増税率ということになります。これでは、消費が減るのも無理はないです。

そうして、これでは景気が良くならないのも無理はないです。個人消費支出は、景気を左右する最も大きな要素です。

日本経済を巨大な旅客機とたとえると、国内総生産(GDP)はその高度にたとえられます。これが増えていれば、経済成長率がプラスとなって好景気、反対に減少していれば、経済成長率がマイナスで、不景気となります。

旅客機を飛ばしているエンジンに相当するのが、①個人消費支出、②設備投資、③輸出入、④政府支出、の4項目で、この合計がGDPとなります。

この中でも、個人消費支出と設備投資は、「景気の両輪」と呼ばれることもあるメインエンジンです。ところが、設備投資がGDP全体の15%程度を占めるのに対して、個人消費支出は、全体の60%程度を占める圧倒的な規模を持つのです。

最近は個人消費は減っているか、12年頃までは60%程度を占めていた

したがって、設備投資が2%増えても、経済成長率は0.3%しか増えないのですが、個人消費支出が2%増えると、経済成長率は1.1%も増えることになります。
こうしたことから、「機長」である政府にとって、旅客機の高度を上げて景気を良くするためには、個人消費支出を増やすことが、最も効率的ということになります。それでは、個人消費支出を増やすための政策には何があるのでしょうか。

私たちが消費を増やすのは、収入が増えた場合です。したがって、「機長」である政府は、税率というレバーを操作して減税を実施、所得を増やすことで消費拡大を実現しようとするのが常道です。

反対に、消費が増えすぎ、インフレなどの弊害が発生している場合には、増税をして、エンジンの過熱を抑えるべきなのです。

しかし、減税が個人消費支出の増加に直結するわけでありません。実際バブル崩壊後の深刻な不況期、政府は度重なる財政出動(総額100兆円)を行ったのですが効果は無く、個人消費支出は一向に増えませんでした。

ちょうどこのあたりに、日銀は株価、土地価格等の資産価格が上昇していたものの、一般物価はほとんど上昇していなかったにもかかわらず、金融引き締めに転じてしまいました。これが大失敗でした。

将来に不安を感じていた人々は、財政出動分の大部分を貯蓄に回し、消費の拡大には消極的になりました。この結果、個人消費支出は増えずに景気は低迷、日本経済という旅客機の飛行状況は、さらに悪化してしまったのです。

日本経済のメインエンジンである個人消費支出は、景気の動きを大きく左右する最も重要なものです。しかし、その動きは中央銀行(日本では日銀)の金融政策に大きく左右され、「減税すれば消費は増える」という単純な図式は成立しません。

このメインエンジンをいかにコントロールするかは、日本経済という旅客機の安定的な飛行に直結するものであり、機長である政府(財務省)の手腕と、日銀の金融政策の手腕が問われるのです。

さて、財政政策については、ブログ冒頭の記事のような状況です。減税どころか、増税するという有様です。

では、日銀の金融政策はどうかといえば、インフレ目標は達成目前だったのですが、8%への消費増税で台無しになってしまいました。今では、「2%」の目標ははるか遠いものになってしまいました。

黒田バズーカのキモは国債を買いまくることに尽きるのですが、最近は日銀も手を緩めています。

2016年9月から、名目金利に着目する「イールドカーブ・コントロール」という新方式に変更した結果、国債の購入ペースは年間80兆円から年間30兆円に減額しているのです。



国債購入ペースが落ちている以上、予想インフレ率も、実際のインフレ率も芳しくないのは当然のことです。

日銀が国債購入額を減額したのは、市中の国債の品不足が理由だとしています。

ところが、'19年6月末の国債発行残高は980兆円もあります。日銀の保有国債は46%の454兆円です。

「コップに水がまだ半分も入っていない」と考えれば、526兆円もの国債が市中には残っているのです。インフレ目標達成を第一に掲げるなら、日銀は国債購入ペースを落とす必要はなかったのです。

日銀が、この状況にある現時点で、2%増税をすると、個人消費が確実に低下して、日本経済という旅客機はエンジンを減速せざるをえず、低空飛行余儀なくされることになります。

このような実体を知って、国民はもっと怒るべきです。おとなしくしていては、ますます、毛をむしり取られ「やせ細ったガチョウ」に成り果てることになります。

【関連記事】

日銀がまるで財務省…! 黒田総裁が「転向」で日本経済を失速させる―【私の論評】緩和の副作用など、全く心配するに値しない、日銀は思い切って緩和すべき(゚д゚)!


2019年7月11日木曜日

ホルムズ海峡「有志連合」結成へ 問われる日本の決断―【私の論評】イランでも米国でも政治には宗教が大きく影響していることを忘れるべきではない(゚д゚)!


トランプ大統領

参院選が盛り上がらない。消費増税という与野党の対立点があるにもかかわらず、マスコミは年金で煽っているが、いまいちだ。

 消費増税が盛り上がらないのは、新聞が軽減税率を受けるために、新聞が消費増税の中身を報じられないからだ。

明確な争点設定ができていない選挙

 軽減税率の対象が、「コメ、ミソ、ショウユ」まではわかるが、「新聞」がそれに付け加わるのはおかしいだろう。

 また、年金の支給額などを政争の具にしてはいけない。年金は複雑な仕組みのようだが、2019年6月13日付け本コラムで示したように、保険でありシンプルな数学問題だ。年金で老後の生活のすべてがみられるはずはないのは、一般国民ならみんな分かっている。あえて保険で説明すると、すべてのドライバーが加入しなければいけない自賠責では不十分で、一部の人は任意保険に加入するのと同じだ。つまり強制加入の年金は、保険料を上げられないので、ミニマムの保障しかできないので、それ以上の生活を望む人は別に貯蓄せざるを得ないのだ。年金だけの生活では満足できない人もおり、その人たちの貯蓄は2000万円というわけだ。また、自営で定年がなければ、長く働くことは可能であり、その場合には貯蓄もほとんど不要である。

 こうした内政問題では、マスコミでは明確な争点設定ができていないが、格好の外交・安全保障上の問題が降ってきた。米軍の統合参謀本部議長が、ホルムズ海峡などで船舶の安全を確保する有志連合を結成する考えを示し、日本政府にも協力を打診したと報じられている。

 筆者は、安倍首相が先日イランに訪問し、最高主導者との会談中に起こった日本関連タンカーへの襲撃事件は、日本への警告という認識だった。アメリカはイランの仕業と言うが、少なくともアメリカ軍は、日本関連のタンカーが襲撃される光景を上空から見ていたわけで、もし米国関連船なら、警告をしていたはずだ。この意味で、アメリカ軍も見過ごしていたので、イランの仕業としてもアメリカも傍観していたという意味で、日本への警告とみられる。

 ホルムズ海峡は、日本のエネルギーの生命線である。トランプ大統領は、日本も自国でシーレーンを守ったらどうかという。今回のアメリカの打診も、その延長線だろう。

法改正か、特措法か

 これが国際政治のリアルな社会だ。2015年9月に成立した安保法制では、ホルムズ海峡での機雷掃海が、集団的自衛権の例として出ていた。その審議では、そのための要件はかなり厳格であり、今のような事態では要件を満たしていないといわれるだろう。

 であれば、法改正をすべきかどうか。現行法では、自衛隊法による海上警備行動もありえる。しかし、これでは、日本に関係のある船舶は守れるが、外国の船は守れない。海賊対処法では、外国船舶も護衛できるが、海上警備行動と同様な行動制約がある。こうした現行法制上の問題を考えると、特別措置法でも対応というのもありえる。

 とかく、日本は良くも悪くも面倒臭い国なのだ。ただし、米イランの問題は深刻だ。イランの状態をあえていえば、1990年代なかごろの北朝鮮の核問題に似ている。米朝で開戦一歩手前までいったが、結果として米朝枠組み合意ができた。しかし、その後の歴史をみれば、北朝鮮が抜け駆けして、今では北朝鮮は事実上核保有国になった。

 このままでいけば、イランも同じ道をたどるかもしれない。北朝鮮の時には、アメリカは具体的な北朝鮮攻撃も考えていたが、今のイランにも同じようにアメリカは考えている可能性もある。となると、そのための一歩が、今回の有志連合への打診という形であるとすれば、これは国政選挙にもっともふさわしいリトマス紙になる。各政党の見解を聞きたいモノだ。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「安倍政権『徹底査定』」(悟空出版)、「『バカ』を一撃で倒すニッポンの大正解」(ビジネス社)など。

【私の論評】イランでも米国でも政治には宗教が大きく影響していることを忘れるべきではない(゚д゚)!

冒頭の記事にあるとおり、消費増税という与野党の対立点があるにもかかわらず、参院選が盛り上がっていません。これは、無論新聞が軽減税率を受けるために、新聞が消費増税の中身を報じられないからという側面が大きいです。

しかし、野党が増税に反対するものの、なぜ増税が日本経済にとって良くないのか、説明できないということもあると思います。彼らの戦術では、とにかく政権与党を不利にするために、反対しているというだけで、マクロ経済に疎く、なぜ増税が日本経済にとって良くないのかを説明できないため、全く迫力に欠けるのです。さらに付け加えれば、財務省と正面切って闘う、覚悟もないようです。だから、まともな争点にもならないのです。

とにかく、普段から「権力に対抗すること」を第一義とし、倒閣ばかり考えて行動しているため、まともな政策論ができないどころか、経済も安全保障に関しても幼稚な次元にとどまっているようです。

そういう観点からすると、今回の「ホルムズ海峡などで船舶の安全を確保する有志連合を結成」での米国の日本への協力依頼は、高橋洋一氏の言うように、格好のリトマス試験紙となるかもしれません。

ここでまた、日本の安全保証に関して、彼らが単に倒閣のための道具として用いるようだと、国民の信頼を失い、ポロ負けすることになるでしょう。

冒頭の記事にもあるとおり、ペルシャ湾の出入り口、ホルムズと紅海の出入り口であるバベルマンデブ両海峡の航行の安全を守るためトランプ政権が練ってきた「有志連合護衛艦隊」(センチネル作戦)が遂に結成されることになりました。

2、3週間以内にも始動する見通しですが、輸入原油の8割以上を同湾に依存する日本が参加するよう求められるのは必至です。

「有志連合護衛艦隊」の結成は7月9日、米軍の制服組のトップであるジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長がエスパー次期国防長官、ポンペオ国務長官と会談した後、明らかにしました。同議長によると、この構想は数日以内に最終決定され、2、3週間以内に有志連合艦隊への参加国がはっきりするとしています。

米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長
議長は現在、同盟国に参加を打診している最中だとし、参加国が当初は少なくても、順次増やしていけばいいとの考えを示しました。参加同盟国として見込まれているのは、英仏などの欧州各国と、同湾のエネルギー資源に大きく依存している日本です。

軍事面での公平分担が持論のトランプ大統領はペルシャ湾でタンカー攻撃が起きたこともあり、「自国の船舶は自分で守るべきだ。なぜ米国が他国のために無償でシーレーンを守らなければいけないのか」と不満をぶちまけてきました。

米国防総省はこうした大統領の意向を受け、同盟国による民間船舶の護衛を中心とした「センチネル作戦」の立案を進めてきました。ダンフォード議長によると、艦隊の指揮は米軍が取り、各国の護衛艦に監視活動で入手した情報を伝達、それぞれの艦船がタンカーなど自国の船舶を守りながら護衛航行する仕組みです。

輸入原油の80%をペルシャ湾に依存している中国は米国と経済戦争で衝突していますし、ロシアも対米関係は最悪な状態です。協力を得られる見通しは全くないです。日本やドイツなどの同盟国も「イランがやったという、より明確な証拠が必要」と消極的です。

菅官房長官はイランの関与について「予断を持って答えるのは控える」と慎重です。米国のイラン犯人説を支持しているのは、サウジアラビアやイスラエル、そして英国ぐらいのものです。

しかし、タンカー攻撃が再発すれば、米国の求めをむげに拒否することはできないでしょう。なんといっても、中国同様、日本の輸入原油の約85%がホルムズ海峡を通って入ってきており、トランプ大統領が出てきて「一番恩恵を受けているのは日本だ」と迫る場合も想定しておかなければならないです。湾岸戦争の際、貢献が小さいとして世界からバッシングにあった悪夢を繰り返すわけにはいかないです。賢い対応が必要です。

有志連合艦隊が結成されるというが・・・・・

こうした中、イランは強硬策を打ち出しました。イラン原子力庁は17日、核合意が守られていないことを理由に、低濃縮ウランの貯蔵量が合意で定められた上限を10日後の27日に超過すると発表した上、7月上旬以降、濃縮度を核兵器のウラン製造が容易になる20%まで高める選択肢もあると警告しました。イランが、この路線を進めば、理論的には1年弱で核爆弾を保有することができるようになります。

なんとか支持拡大を図りたいトランプ政権は25、26の両日、ペルシャ湾のバーレーンで開催される「パレスチナ経済支援サミット」会議の場で、反イラン包囲網を固めることを計画しています。

同会議は元々、トランプ氏が「世紀の取引」と売り込む中東和平提案の経済分野を公表し、パレスチナへの経済援助を引き出すために開催されるものです。ところが、イラン危機が激化した今、より緊急な課題は対イラン包囲網の構築です。会議に先立ち、米国はイラン対応のため、1000人の兵力をペルシャ湾に増派しました。

米国の対イラン強硬方針により、欧州には、大量破壊兵器保有の確固たる証拠のないままイラクに侵攻した「イラク戦争の前夜に似てきた」(アナリスト)との見方が強まっています。ホルムズ海峡の安全航行と、イランの核保有阻止という2つの問題にトランプ大統領がどう決断を下すのでしょうか。

ポンペオ国務長官やボルトン大統領補佐官らの対イラン主戦論者の勢いが増しているかのようですが、防波堤として大きく立ちはだかっているのは実はトランプ大統領です。戦争になれば、最優先課題の再選が危うくなりかねないからです。皮肉にも米国の戦争を押しとどめているのは、イラン核合意から脱退したトランプ氏自身なのです。

にもかかわらず、トランプ大統領がなぜイランに対して強硬策を繰り返すのかといえば、その目的は、米国のキリスト教福音派の支持を固めることにあります。2016年の大統領選挙では福音派の80%程度がトランプ氏を支持したといわれ、トランプ氏にとって重要な支持基盤です。

           ドナルド・トランプ大統領と共に祈った米国の福音派指導者ら=2017年11月11日
           ホワイトハウスの大統領執務室で
福音派の人々には、親イスラエル政策は宗教上の義務との考えが強いです。トランプ氏にとって中東地域での覇権をめぐってイスラエルと敵対するイランへの圧力を強め、屈服させようとすることは福音派からの支持をさらに強め、自らの支持を盤石とするために欠かせないのです。トランプ大統領の対イスラエル支援策は、時間の経過とともに強化されていくことでしょう。

トランプ大統領としても、福音派の支持基盤を固めるためには、イランに対して強硬手段を取らなければならない側面がありつつ、戦争になってしまえば、再戦が危うくなりかねないというジレンマに陥っているのです。

ただ、一昨日もこのブログで掲載したように、米国には武力行使に至る前の「金融制裁」があります。同じく金融制裁とはいっても、資産凍結、取引停止、最終的には一番厳しい「ドル使用禁止」など様々な段階があります。

「ドル使用禁止」が以下に厳しい措置であるかは、一昨日このブログで述べました。米国は武力行使に至る前に、何段階かの金融制裁という手があります。まずは、金融制裁のうち比較的軽いところから、新たな制裁をくりた出していくことでしょう。そうみるのが、現時点では妥当と思われます。

ただし、米国の制裁が厳しくなればなるほど、イランによるテロは過激になり、ホルムズ海峡の危機は高まることになります。ここで、日本の胆力が試されることになります。

日本ではついつい忘れがちですが、イランでも米国でも政治には根底では宗教が大きく影響していることを忘れるべきではありません。それを忘れると、国際情勢が見えなくなります。このことを忘れた、マスコミや政治家が、珍妙な論議を繰り返すであろうことが、今から目に見えるようです。

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2019年4月17日水曜日

政治に左右される為替管理 国家資本主義・中国の限界―【私の論評】国際金融のトリレンマにはまり込んだ中国人民元の国際化は不可能(゚д゚)!

政治に左右される為替管理 国家資本主義・中国の限界

人民元の限界とドル覇権

倉都康行 (RPテック代表取締役、国際金融評論家) 

 最近の為替市場や株式市場の慌ただしい展開に比べれば、国際通貨制度の動きは極めて緩慢である。10年前の金融危機の際には「ドルの信認低下」が世界中で騒がれたが、IMF(国際通貨基金)の統計によれば、昨年9月末時点での準備通貨におけるドルのシェアは61・9%と、ユーロの20・5%、円の5・0%、ポンドの4・5%を大きく引き離しており、事実上の「世界通貨」としての地位は揺らいでいない。

 とはいえ、ドルの占める割合が徐々に低下していることもまた事実であり、2015年3月末の66・0%という水準から約3年半で4・1%のシェア・ダウンとなっていることを考えれば、今後一段と低下する可能性もないとは言えないだろう。

(注)ユーロは左から20%→19.1%→20.5%で推移 (出所)IMF資料を基にウェッジ作成


 では、この間に準備通貨のシェアはどう変わったのだろうか(上図)。ドル以外の通貨をみると、ユーロは20・0%からわずかに上昇、3・8%と同水準にあった円とポンドはともに1%超の上昇となっている。豪ドルやカナダドルは1%台のシェアでさほど変わっていない。一方で16年12月末から公表開始となった人民元のシェアは、2年足らずの間に1・1%から1・8%まで伸びて、豪ドルを抜いている。カナダドルのシェアを追い越すのも時間の問題であろう。

 つまりドルのシェアを食っているのは、円やポンド、そして人民元といった通貨であることが分かるが、その変化のタイミングもまた重要である。しばらく65%台を維持していたドルのシェアが顕著に低下し始めたのが17年3月末以降であることは、トランプ大統領の登場が変化の一つの契機になっていると思われるからである。

進む新興国の「ドル嫌い」
逃避先は金と人民元


 トランプ大統領は就任以来、その政治的軍事的優位を利用して経済制裁をたびたび発動してきた。米財務省外国資産管理室を通じて実行された制裁件数は、10年の1000件から18年には6000件以上に急増した。中でも、ドルの使用を制限する金融制裁は極めて強力である。その対象国は、イランやベネズエラ、ロシア、そしてトルコなど敵対国から友好国まで幅広い範囲となっている。

 こうした厳しい制裁方針は、当然ながら他国のドル依存体制にも影響を及ぼしていく。米国の核合意からの離脱でドル利用が困難になったイランは、欧州諸国と共同で非ドルの決済システム構築を検討中であり、ロシアはユーロ中心となっている外貨準備においてドル保有をさらに低下させたと言われている。中国が米国債保有額を徐々に低減させていることも明らかになった。今後2年間のトランプ政権運営下で、ドル保有額が一段と減少する可能性は高い。

 こうした新興国におけるドル保有の引き下げは、財政赤字や経常赤字を懸念した従来の「ドル離れ」とは性格が異なり、「ドル嫌い」といった方が適切なのかもしれない。準備通貨としての地位は認めざるを得ないが、制裁によって身動きを縛られることになれば、自国経済が麻痺(まひ)しかねない。その防衛策として、幾つかの国々で発動されているのが「金への逃避」である。

 昨年8月に1195ドルまで下落した金は今年に入って上げ足を早め、1340ドル台にまで上伸し、その間10%を超える上昇率を記録している。ドル金利のピーク感や地政学リスクへの懸念などを背景に金を選好する機関投資家が増えているが、新興国などの中央銀行も昨年来着々と金購入を継続している。金の国際調査機関、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)にれば、18年の各国中銀やIMFなどの公的部門に拠る金購入量は前年比74%増の651・5トンと1971年の金ドル兌換(だかん)停止以来の最高水準を記録した、という。

(出所)World Gold Council資料を基に筆者作成

 その牽引(けんいん)役となっているのがロシアであり、昨年の金購入量は274・3トン、金額では270億ドルとともに過去最高記録を更新している(上図)。中銀全体の購入量も過去最高に達したと推定されるが、ロシアはいずれも40%以上を占めており、その外貨準備における金保有比率は18%前後に上昇したようだ。ドイツやオーストリア、インドネシアなど金売却を進めた国もあるが、ロシアと同様に金購入を増やしているのがトルコやカザフスタン、インド、ポーランドといった国々である。

 インフレ・ヘッジという従来の金選好要因は低インフレが続く今日では説得力を失っているが、政治的なヘッジという判断での金購入には合理性がある。信用通貨へのアンチ・テーゼとして生まれた暗号通貨への信頼性が失墜したいま、ドルの逃避先としてはまず金だ、というのが実態なのかもしれない。

 そして、金とともに注目されているのが人民元だ。人民元は中国政府の「準備通貨化」という国策も手伝って徐々に利用度を上げてきた。準備通貨におけるシェアは前述のようにまだユーロや円、ポンドの比ではないが、市場での利用頻度は確実に上昇している。

 その一例が、イングランド銀行(英中銀)が半期に一度公表している「マーケット・サーベイ」に表れている。調査に拠れば、18年4−9月期の「ドル・人民元」の取引額は前期比17%増加して「ユーロ・ポンド」を抜き、取引シェアは2・3%から2・8%へと拡大して全体の7番目の位置にまで上昇している(下表)。

(出所)Results of the Foreign Exchange Joint Standing
Committee (FXJSC) Turnover Survey for October 2018を基に筆者作成

 世界全体で為替取引額がやや低下傾向にある中で人民元取引が顕著な増加を見せていることは注目に値しよう。香港市場では人民元の投機的な動きがたびたび見られるが、ロンドン市場においては人民元建て社債のような資本取引の定着を背景とする取引が着実に増えているのかもしれない。

 ドル・人民元取引が第6位の「ドル・カナダ」を抜くのも時間の問題だろう。ドル円に次ぐシェアを獲得する時代の到来は、そう遠いことではないかもしれない。

西側体制に挑む中国
拙速な国際化の代償


 だが、いかに準備通貨や決済通貨、あるいは資本通貨としての台頭が目覚ましくとも、人民元はユーロや円、ポンドに比べればまだマイナー通貨との印象は拭えない。ドルを脅かす存在になる日が近未来にやってくるという可能性もほとんどないと言ってよいだろう。

 もっとも、この数年、ブレトンウッズ体制に挑む元の国際化の動きがあった。従来西側諸国が担ってきた、途上国へ手を差し伸べる役割をも演じ始めたのである。習主席の鳴り物入りで始まった「一帯一路」プロジェクトやインフラ投資銀行であるAIIBの創設がその好例だ。いずれも、人民元を最大限に活用しようとする試みを胚胎するものであり、特に一帯一路はアジアから中東、アフリカにまで至り世界的規模に及んでいる。

 だがその積極策はパキスタンやスリランカなどで深刻な過剰債務問題を生んでいる。従来、ソブリンの債務問題にはIMFや先進国政府・銀行などが協調して対応に当たってきたが、一帯一路では国際協調路線が採れず、袋小路に陥る可能性が高い。それは人民元の拙速な国際化政策の代償でもあろう。

 また、IMFは16年秋に人民元をSDR(特別引出権)バスケットの構成通貨に採用することを決定し、ドル、ユーロ、円、ポンドに並ぶ主要通貨としてのお墨付きを与えたが、あくまで国際政治的な判断であり、金融経済的な判断ではなかった。市場における人民元に対する評価とIMFの決定との間には、大きな溝があると言わざるを得ない。

 人民元には準備通貨としての基本的な脆弱(ぜいじゃく)性もある。一に、その流動性や交換性についての信認が乏しいことである。経済力と金融力が比例しないのは日本を見れば明白であるが、中国の場合はさらに資本規制・為替管理がいつ課されるか分からない、という懸念が残る。人民元の国際化に関しては習政権の誕生以来改革は棚上げ状態にあり、同主席の長期政権化の下で国家による中央集権的な管理体制がむしろ強化される方向性が顕著となって、人民元の変動相場制移行など改革期待感は大きく後退している。

遅れる中国の市場整備
当面続く米国の通貨覇権


 さらに、人民元の運用機会が制限されていることや、債券市場の多様化や透明化が遅れていることも、人民元が国際通貨体制のメジャー・グループに入れない要因となっている。例えば主要通貨の場合、準備通貨として保有する中銀など公的機関や貿易決済のために外貨を保有する企業、それを預金として受け容(い)れる銀行は、当該国で運用する機会を探さねばならない。

 米国や日欧などでは短期から超長期まで幅広い満期を擁する国債が常時売買されており、格付けが高く流動性も高い投資適格社債や証券化商品なども存在する。だが中国の場合、国債市場は発展中だがまだ海外投資家が自由にアクセスし得る状況ではなく、社債などの信用格付けも整備されている状況からはほど遠い。

 為替市場だけでなく社債などの資本市場にたびたび政府介入が見られることも、市場が政治的に歪(ゆが)められていることを示唆している。また外貨を中長期で保有する際には時にヘッジ機能も必要になるが、人民元の場合はオプションやスワップなどのデリバティブズ取引は未発達である。

 換言すれば、人民元が主要な準備通貨として認められるには、中国の国家主義的資本システムが胚胎する「非市場的ルール」という印象が断ち切られる必要がある、ということでもある。だが13年に習主席がトップの座に就任して以来、市場化や自由化などの構造改革機運は大きく後退しており、米国による圧力もその流れを変えるには至らないだろう。

 08年に金融危機が世界を襲った際には一気にドル不信が巻き起こり、ドル一強体制の終焉(しゅうえん)まで囁(ささや)かれたことがあったが、約10年が経過して判明したことは、逆に国際通貨体制におけるドルの強靭(きょうじん)さであった。ユーロなど既存通貨だけでなくSDRのようなバスケット通貨構想もドルを代替する力が無(な)いことが、あらためて確認されたのである。

 そして経済力では目覚ましい拡大を続ける中国の人民元が準備通貨の主役候補になれそうにないことは、米国の通貨覇権がまだ当面持続することを意味している。奇妙な話ではあるが、米中覇権戦争におけるトランプ流の圧力が効かずに中国が市場経済国へと変身しない方がドルの長期的覇権を担保することになる、ということもできる。

 つまり、外貨準備に占めるドルのシェアがいずれ50%台に低下し、人民元が5%程度まで上昇することになったとしても、中国が国家主導の経済モデルを放棄しない限り、ドルの「世界通貨」としての役割が低下したり存在感が薄れたりすることはないだろう。

代替性のないドル一強という
アンバランスな通貨体制


 もっとも、粘り強いドルにも脆弱な構造問題があることは誰でも知っている。経常赤字は慢性化しており、財政赤字は今後急拡大することが予想されている。排他的な保守主義を主張するのはトランプ大統領だけではない。米議会にも10年前のような「世界的な金融危機の際には海外勢のドル不足を支援する」といった金融当局の行動を許すムードはない。そして英エコノミスト誌は、オフショアダラーである「ユーロダラー市場」を採り上げて、「最後の貸し手が存在しないリスク」を指摘している。

 言い換えれば、政治的かつ経済的な問題を抱え続ける米国のドルが代替性のない「最強通貨」として君臨する時代がまだまだ続く、ということでもある。二番手のユーロは経済同盟が完備されていない不完全通貨から抜け出せず、準備通貨化への意欲も乏しい。円やポンドの役割は低下する一方で、人民元の信頼性や利便性が急速に改善する見通しも薄い。国際政治経済がG2時代へと移行する中で、通貨体制はアンバランスな状態が続く。

 歴史的に国際通貨制度は、金・銀時代やポンド・ドル時代、ドル・金時代、ドル・マルク・円時代に見られるように、複合的で補完性のあるシステムであった。だが今後は「信頼性に欠ける一強通貨」という資本システムに依存せねばならない、フラジャイルな時代の到来が不可避となるだろう。

【私の論評】国際金融のトリレンマにはまり込んだ中国人民元の国際化は不可能(゚д゚)!

上の記事では、回りくどい解説をしていますが、「国際金融のトリレンマ」という昔から知られている原理を知れば、人民元の国際化は現状のままでは不可能であることがすぐに理解できます。

今年3月の全人代は「異例」づくめだった

先月開催された中国の全国人民代表大会(全人代)では、金融政策で量的緩和を実施しないことが明らかになりました。その背景は何なのでしょうか。結論からいえば、中国の政治経済の基本構造が根本要因です。

基本知識として、先進国ではマクロ経済政策として財政政策と金融政策がありますが、両者の関係を示すものとして、ノーベル経済学賞の受賞者であるロバート・マンデル教授によるマンデル・フレミング理論があります。

経済学の教科書では「固定相場制では金融政策が無効で財政政策が有効」「変動相場制では金融政策が有効で財政政策無効」と単純化されていますが、その真意は、変動相場制では金融政策を十分緩和していないと、財政政策の効果が阻害されるという意味です。つまり、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先する方が、マクロ経済政策は効果的になるというものです。

これを発展させたものとして、国際金融のトリレンマ(三すくみ)があります。この結論をざっくりいうと、(1)自由な資本移動(2)固定相場制(3)独立した金融政策-の全てを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べないというものです。

これらの理論から、先進国は2つのタイプに分かれます。1つは日本や米国のような変動相場制です。自由な資本移動は必須なので、固定相場制をとるか独立した金融政策をとるかの選択になりますが、金融政策を選択し、固定相場制を放棄となっています。



もう1つはユーロ圏のように域内は固定相場制で、域外に対して変動相場制というタイプです。自由な資本移動は必要ですが域内では固定相場制のメリットを生かし、独立した金融政策を放棄します。域外に対しては変動相場制なので、域内を1つの国と思えば、やはり変動相場制ともいえます。

中国は、こうした先進国タイプになれません。共産党による一党独裁の社会主義であるので、自由な資本移動は基本的に採用できません。例えば土地など生産手段は国有が社会主義の建前です。

中国の社会主義では、外資が中国国内に完全な民間会社を持つことができません。中国に出資しても、中国政府の息のかかった中国企業との合弁までで、外資が会社の支配権を持つことはできません。

一方、先進国は、これまでのところ、基本的に民主主義国家です。これは、自由な政治体制がなければ自由な経済体制が作れず、その結果としての成長がないからです。

もっとも、ある程度中国への投資は中国政府としても必要なので、政府に管理されているとはいえ、完全に資本移動を禁止できません。完全な資本移動禁止なら固定相場制と独立した金融政策を採用できますが、そうではないので、固定相場制を優先するために、金融政策を放棄せざるをえなくなったのです。

要するに、固定相場制を優先しつつ、ある程度の資本移動があると、金融政策によるマネー調整を固定相場の維持に合わせる必要が生じるため、独立した金融政策が行えなくなるのです。そのため、中国は量的緩和を使えなくなってしまったのです。

そもそも、国内で金融緩和政策すらできない国の、通貨が本格的に国際化できるはずもありません。何か国際金融において、大きな問題が起こったにしても、金融緩和できないのであれば、その問題にまともに対処することすらできません。

中国は、グローバル経済に組み込まれた今や世界第2位の経済大国であり、こうした 国は最終的に日米など主要国と同様の変動相場制に移行することで、国内金融政策の 高い自由度を保持しつつ、自由な資本移動を許容することが避けられないです。

移 行が後手に回れば国際競争力が阻害されたり、国内バブルがさらに膨らむおそれがあります。一方で、 拙速に過ぎれば、大規模資本逃避や急激な人民元安が懸念されます。何より金融緩和ができないという状況は、最悪です。なぜなら、マクロ経済上の常識である、金融政策=雇用政策という事実から、中国では雇用を創造することができないからです。中国は今後一層難 しい舵取りを迫られることになるでしょう。

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2018年7月17日火曜日

お先真っ暗…韓国「雇用政策」大失態、貿易戦争も直撃、対中輸出3兆円減の試算も―【私の論評】金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で敗退する(゚д゚)!

お先真っ暗…韓国「雇用政策」大失態、貿易戦争も直撃、対中輸出3兆円減の試算も

経済政策で窮地に立つ文政権。そこに米中貿易戦争が直撃した

 「雇用拡大」を掲げる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、大ピンチに陥っている。雇用状況を示す数値が5カ月連続で低迷し、メディアでは「雇用大惨事」との指摘も上がる。雇用不振の背景には、最低賃金(時給)の大幅アップがあるが、労働界はさらなる引き上げを要求。人件費高騰に苦しむ小規模事業者からは悲鳴が上がり、コンビニ店主でつくる団体は「全国同時休業」も辞さない構えだ。米中の「貿易戦争」の余波も直撃し、韓国経済はお先真っ暗の状態だ。

 《「雇用大統領」文在寅政権下の「雇用大惨事」》(12日、朝鮮日報日本語版)

 《雇用不振に陥った韓国経済、成長最優先への方向転換を》(12日、中央日報日本語版社説)

 韓国の保守系メディアは最近、雇用の低迷ぶりを相次いで報じている。

 韓国統計庁が毎月発表している雇用動向を見ると、今年に入って雇用状況を示す数値は急激に下がっている。文氏が大統領に就任した昨年5月から今年1月までは、就業者数が前年同月比で20~30万人多かった。だが、それ以降は10万4000人増(2月)、11万2000人増(3月)、12万3000人増(4月)、7万2000人増(5月)、10万6000人増(6月)と5カ月連続で20万人台を割り、政権が目標としている32万人増を大きく下回った。

 急激な雇用不振の理由は、1月からの最低賃金大幅アップにあるとの見方がもっぱらだ。その賃上げ率はなんと16・4%に上る。

 前出の社説で、中央日報は雇用不振が消費沈滞につながり、米中貿易戦争で輸出も減少の危機を迎えるとして、「韓国経済が四面楚歌から抜け出すには、まず最低賃金の急激な引き上げを自制しなければいけない」と指摘する。さらに社説はこう続けた。

 「最低賃金委員会で労働界は来年の最低賃金を今年より43・3%増の1万790ウォン(約1070円)を提示した。同意できない。政府は急激な最低賃金引き上げの副作用を認める必要がある」

 大幅に最低賃金を引き上げる動きに対し、人件費高騰に苦しむ事業者は怒りを隠せないようだ。

 東亜日報(日本語版)は13日、《「最低賃金に不服」宣言、350万人の小規模個人事業主の絶叫虚しく》という記事を掲載した。

 記事によると、350万人の小規模個人事業主を代表する小商工人連合会が12日、緊急記者会見を開き、「国家が一方的に定めた来年の最低賃金は受け入れられない」と闘争宣言を行った。

 全国7万余りのコンビニ代表でつくる全国コンビニ加盟店協会も同日、「零細事業主の生活を根こそぎ摘み取る心算で、零細事業主を犯罪者や貧困層に追いやっている」と絶叫し、全国同時休業も辞さない考えを明らかにしたという。

 文氏は昨年6月の施政方針演説で、「雇用」という言葉を44回口にするほど、雇用拡大を売り物にしてきた。だが、行き過ぎた経済政策は零細業者らを破滅に追いやろうとしているようにしか見えない。

 今月に勃発した米中貿易戦争の影響も深刻だ。朝鮮日報(日本語版)は7日、《対岸の火事でない米中貿易戦争、韓国経済に飛び火も》という記事で、現代経済研究院経済研究室のチュ・ウォン室長の試算を紹介している。それによると、米国で中国製品の輸入が10%減少して中国経済全体が大きな影響を受けた場合、韓国からの中国向け輸出は282億ドル(約3兆1100億円)の減少が見込まれるというのだ。

 こんな惨状にもかかわらず、韓国ギャラップが13日に発表した文氏の支持率は69%と高水準を維持している。

 韓国に精通するジャーナリスト、室谷克実氏は「韓国社会の大勢は『積弊(旧体制の弊害)が残っているから、文大統領がやっている政策がうまくいかない。積弊をもっと潰さなければいけない』という認識だから、支持率が高い。今の流れでいくと、人民共和国化に向けて止まらない状況だ」と話す。

 今後、韓国経済はどうなるのか。

 室谷氏は「文氏のやっていることは反米、反資本主義で韓国はキューバ化が進んでいるように思える。世界のどこの国でも『富国強兵』政策をやっているが、韓国は『貧国弱兵』政策を行っている。経済はどうしようもないところまでいくのではないか」と予測した。

【私の論評】金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で敗退する(゚д゚)!

文在寅政権は「韓国経済のパラダイム見直し」との考え方に基づき、「所得主導」と「革新」という2つの軸で成長政策を推し進めようとしています。所得主導は需要の側、革新は供給の側を刺激することで成長動力を引き出そうとする構想です。

所得主導成長の逆説、韓国低所得層の所得が大幅減

しかしこの2つの軸は現政権発足からわずか1年で大きな危機に直面しています。最低賃金を16.4ポイントも大幅に引き上げたものの、低所得層では1年前に比べて所得が逆に8ポイントものマイナスを記録しました。年間30万以上増加していた雇用も7万と大幅にブレーキがかかりました。現政権は自分たちを「雇用政府」と自負していますが、実際は正反対の結果を招いているのです。

革新成長にいたっては成果が全くありません。文大統領は革新成長のコントロールタワーとしてキム・ドンヨン経済副首相を指名しはっぱをかけているようですが、実質的にさほど大きな権限のない経済副首相がやれるような仕事ではありません。

革新成長は何一つうまくいっていない
過去10年続いた保守政権は「グリーン成長」「創造経済」などの旗印で供給側に重点を置いた成長政策を推し進めたのですが失敗しました。営利を前面に出した病院や遠隔医療は医師団体から反対され、カーシェアリングはタクシー業界、スマートファームは農民団体の反対によって挫折しました。またネットバンクは銀行と企業の分離、フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)は個人情報保護などの規制に阻まれ全く進んでいません。

このような状況では、雇用を経済を良くするために、まずは何をさておいても、金融緩和をすべきです。それ抜きに、単純に最低賃金をあげたり、構造改革をしても、過去の日本がそれで失敗して、失われた20年に突入したように、何も得るものはありません。

そうして、金融政策の大きな転換の意識は文政権にはありません。むしろ民間部門を刺激する政策として、財閥改革などの構造改革を主眼に考えているようです。しかし、このような構造改革はデフレ経済に入りかけている韓国経済の浮揚には結びつかないです。

韓国の歴代政権が、金融緩和政策に慎重な理由として、ウォン安による海外への資金流出(キャピタルフライト)を懸念する声がしばしばきかれます。しかし金融緩和政策は、実体経済の改善を目指すものです。特に、雇用状況を変えるものです。

金融緩和とはいっても、無制限ではなく、インフレ目標値を設定しての緩和を実施すれば良いのです。そうすれば、実際にキャピタルフライトしたアイスランドのように、政府は黒字だったものの、民間が外国から膨大な借金を抱え込んでいるようなことでもなければ、滅多なことで、キャピタルフライトが起こるようなことはありません。

日本でも日銀が2013年から金融緩和に転じる前には、「金融緩和するとハイパーインフレになる」「キャピタルフライトする」等といわれてきましたが、そうはなりませんでした。

むしろ最近では、このブログでも解説したように、5月の失業率は2.2%となり、昨年あたりにささやかれていた金融緩和出口論など全くの誤りであったことが明らかになりました。また、昨年まで黒田総裁が主張していた日本の構造的失業率が3%という見解も誤りであったことがはっきりしました。

ただし、この2.2%の失業率が日本の構造的失業率かどうかについてはもう少し様子をみてから判断すべきものと思います。

ただし、政策的には構造的失業率がどうのこうのなどということはあまり重要な問題ではなく、やはり2%物価目標に向けてさらに量的緩和を拡大していくべきでしょう。まだまだ、日銀の量的緩和は手ぬるいとみるべきです。

いずれにしても、日本では、2013年4月から日銀が金融緩和に転じ、現在も継続しています。そのため、雇用もかなり良くなっています。

そもそも、雇用情勢が悪ければ、まずは金融緩和すべきです。そうすれば、雇用が改善され、人手不足になり、黙っていても企業は賃金をあげます。そのような状況になってから、世間相場をみながら最低賃金を上げれば良いのです。

しかし、そもそも文政権は日本と同様のリフレ政策を採用する可能性はいまのところないに等しいです。雇用情勢を良くするには、単純に最低賃金を上げるなどという発想ではうまくいかないのは当然のことです。

経済が大きくなっていないのに、最低賃金だけを機械的にあげれば、雇用が減るのは当然のことです。こんな明白なことに気づかないようでは、韓国経済の長期停滞、特に雇用問題が本格的に解消する可能性は無いです。

そうして、金融緩和をせずに最低賃金だけ上げるという政策は、文在寅の独壇場というわけではありません。日本の野党も政権公約に掲げていたものです。日本の野党の頭には今でも、雇用=金融政策という考え方は、文在寅のように全く無いでしょう。

日本の野党は、2016年7月の参院選挙のときに、最低賃金の引き上げを争点にしました。無論、金融緩和を含む、アベノミクスには反対していました。

同年5月17日には、最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会が「最低賃金をいますぐどこでも時給1000円に!時給1500円をめざす院内集会」を衆議院第二議員会館で開催しましたた。労働組合の参加者や国会議員ら約80人が集まりました。下の写真がその時撮影されたものです。


彼らの、政策は文在寅と本質的に同じです。なぜか、金融政策はすっぽ抜けて、最低値賃金を機械的に上げれば、それで雇用が良くなると単純に信じているようです。

日本の野党は、韓国の単純な最低賃金上昇政策が大失敗に終わったことを他山の石として、真摯に反省すべきです。しかし、そのような様子は全くみられず、何かといえば「アベガー、アベガー」と反政府キャンペーンを繰り返すばかりです。この状況ですから、野党はいつまでも野党であり続けるしかないのです。

私は、いずれ文政権も雇用政策で大失敗して、敗退すると思います。韓国にも安倍総理のように金融緩和を提唱する政治家があらわれないと、いつまでたっても雇用は改善されないでしょう。そんなことでは、国民は絶対に納得しないでしょう。

金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で大失敗しているのです。

この事実に目覚めない、政治家は与野党に限らず必ず失敗することになるのです。


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2018年5月12日土曜日

【日本の解き方】野党「18連休」と国民民主党 立民と「左派連立」目指すも、経済政策の無理解が問題だ ―【私の論評】多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たない(゚д゚)!

【日本の解き方】野党「18連休」と国民民主党 立民と「左派連立」目指すも、経済政策の無理解が問題だ 

野党合同ヒアリングで関係各省庁の職員から聞き取り
を行う野党議員(奥列)=8日午後、国会内

民進党と希望の党が合流した新党「国民民主党」が誕生したが、離党者も数多く出て、衆院で野党第1党になれなかった。今後、立憲民主党との違いを打ち出すことができるのだろうか。

日本維新の会を除く野党6党は、大型連休の間、本職であるべき国会審議を拒否し、連休明けを含めなんと18連休だった。その間、辞任要求をしていた麻生太郎財務相が国会に出ているのに、目の前のクビを取るための質問を国会でしなかった。

一方で、国会外で「野党合同ヒアリング」と称して、国会答弁もできない下っ端官僚をつるし上げていた。これは、ある意味でパワハラだ。答弁能力のない下っ端官僚が同じ答弁を繰り返すたびに、一部野党の議員に怒鳴り上げられ、さすがに気の毒だった。


動画はブログ管理人挿入

これには6野党支持者からも批判が出て、8日から国会審議を再開せざるを得なくなった。

そして「連休」明けの7日、野党の18連休の最後の日に、国民民主党の結党大会が開かれた。

民進党は53人、希望の党は54人だったので、本来なら合流した国民民主党は107人になって衆参両院ともに野党第1党になるはずだった。しかし、実際に参加したのは衆院議員39人、参院議員23人の計62人。約4割が新党に参加しなかったことからも、その期待度がうかがえる。新党は今の状態より良くなるために参加するのが通例だが、機を見るに敏な国会議員も見限っているのだ。

希望の党からの参加者は、現実的な安全保障や憲法改正への賛成など、旧民主党時代の曖昧な安全保障・憲法改正論議から大きく舵を切っていた人も少なくなかった。国民民主党ではそうした大きな国の方向性は議論しないらしいので、再び旧民主党時代に戻ったかのようだ。

国民民主党は旧民主党の中ではやや右の中道路線だが、立憲民主党は旧民主党の左派である。国民民主党は、旧民主党のように大きな問題の議論を避けるが、立憲民主党は左派路線そのものを隠そうとしない。

この意味で、コアな左派は立憲民主党のほうに魅力を感じるだろう。国民民主党は、リアルな安全保障や憲法改正の主張をすると、自民党との差別ができなくなってしまうジレンマがある。

この点から、立憲民主党の方から合流を申し入れることはなさそうなので、国民民主党が立憲民主党と合流して、旧民主党が復活するようなことは当面ないだろう。両党は広い意味での左派政党を目指しているが、旧民主党が分裂してできた経緯から、合流することはなく、両党が合わせて過半数を取ったときには連立政権を組むのだろう。保守系の自民党と公明党のように、政党は違うが連立パートナーになるという腹づもりのようだ。

しかし、問題は、本コラムで何回も繰り返しているように、両党ともに、雇用を増やすマクロ経済政策や金融政策について勉強不足であることだ。とても左派政党を名乗る資格はない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たない(゚д゚)!

最近さらに、雇用情勢が改善されています。それは統計数字だけではなく様々な現場にも反映されています。たとえば、最近日本郵便が法人向けの郵便物の集荷サービスを6月末に廃止する方針を固めました。

人手不足の日本郵政は法人の郵便物の集荷を廃止する

宅配便「ゆうパック」の取扱量増加で人手不足が常態化する中、無料で実施してきた法人の郵便物の集荷を継続するのは困難と判断したのです。同社は既に年明けから、集荷を利用してきた法人顧客にサービス廃止の通知を出していますが、顧客から不満も出そうです。

昨年はヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスは4月、健全な労働環境を守ることを理由に27年ぶりの運賃値上げの方針を発表しました。

昨年はクロネコヤマトの運賃が値上げに

2年続けて、物流に関連する大手企業が運賃をあげたり、サービスを停止したりする状況に追い込まれています。これは、明らかに2013年度から継続してきた金融緩和による雇用増による人手不足によるものです。

このような状況になっても、高橋洋一氏がブログ冒頭の記事で掲載しているように、立憲民主党も国民民主党も、雇用を増やすマクロ政策や金融政策について理解していないようです。特に金融政策に関する理解は最悪のようです。

経済理論など理解しなくても、もう現在の人手不足の状況は理解できるはずです。そうして、この人手不足は金融緩和策による雇用の改善であることも理解できるはずです。

さらに、もっと目利きなら、難しい経済理論など理解していなくても、クロネコヤマトや日本郵便がここしばらく現場の人の採用を多めに行ってきたことにより何が起こったのかも、肌で感じることができるはずです。

クロネコヤマトも、日本郵便でも、まずは現場の人間を増やすのは当然のことです。管理職や、役員を増やすよりも、まずは現場のパート・アルバイトなどを増やすはずです。そうなると、何がおこるのか、会社単位でも平均賃金は下がります。

国レベルで全産業でこれがおこれば、当然実質賃金は下がります。実質賃金は平均値でみるからです。しかし、野党は実質賃金が下がったことを「実質賃金ガー」といって安倍政権を批判するばかりでした。

金融緩和策による雇用の改善は、労働者の雇用を改善するということで、世界中の左派政党や、労働組合などが賛成している政策です。野党は、良く女性の議員や閣僚数などを日本と比較するということなどで、良く海外のことを調べるのですが、金融政策についてはなぜか全く比較もせず、調査もしていないようです。

この世界中の左派政党や、労働組合が賛成している金融緩和策を安倍総理は2012年の政権交代選挙で公約として選挙に勝利し、2013年4月から日銀は大規模な量的金融緩和に踏切りました。それから5年間、途中で8%増税がありましたが、継続して量的緩和を行ってきた結果が今日の雇用情勢の過去にないほどの改善と、人手不足です。

保守派の安倍総理が金融政策で雇用を改善したにも関わらず、国民民主党も立憲民主党も金融緩和政策についてほとんど理解を示していません。

彼らは、元々経済がよくわかっておらず、「 政権や権力と戦うのが自分たちの使命」と思いこんでおり、とにかく「安倍には反対」という姿勢に凝り固まり、安倍総理の実施する金融緩和にまで反対してしまったというのが真相だと思います。

そうして、国民経済を良くするために、左派的な手法でも過去に十分にその効果が確認されている金融緩和策を導入する保守派の安倍総理と、安倍総理が実行している政策であるから反対という左派政党のどちらが国民にとって良いかといえば、無論安倍総理のほうが良いに決まっています。

国民のことを考える政治家と、自分たちの都合しか考えない政治家のどちらが国民に支持されるのかといえば、当然のことながら国民のことを考える政治家です。しかし、そのことに国民民主党も立憲民主党も含めた日本の野党は、何度選挙で惨敗しても理解できないようです。

そうして、選挙で惨敗し続け、少数派の支持しか受けていない野党に肩入れするマスコミもこのことを理解できないようです。

↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(万部)

実際、主要全国紙の朝刊販売数は都市を経るごとの減少しています。この減少は無論インターネットの普及という面もありますが、新聞の報道姿勢が国民の多数派の意見や考えを無視しているということも多いに影響していると思います。

朝朝日新聞は不動産事業で儲けているから、部数が減っても問題ないとよくいわれます。しかし、過去5年の朝日新聞社の財務諸表を徹底分析すると驚くべきことがわかっています。

年5%の部数減で、朝日は倒産の危機に陥るというのです。去年のデータでは40万部減、すでに5%以上部数を減らしています。「朝日廃刊」はもう荒唐無稽の話ではありません

国民民主党や立憲民主党を含む野党は、自ら多数国民を無視して、少数派になる道を選び続ける一方、新聞などのマスコミも少数派である野党にばかり肩入れしています。

少数派であることや、少数派にばかり肩入れすることに固執すれば、やがて自らも少数派になり滅んでいくのは自明の理だと思います。

無論少数派の意見や考えを無視しろと言っているわけではありません。彼らの意見も尊重すべきです。しかし、多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たないのは自明の理です。野党や、マスコミはこれをどう見ているのでしょうか。

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米国インサイド情報紙が「安倍3選は確実」と分析した理由―【私の論評】東京新聞ですら安倍氏3選確実と予想する自民総裁選の行方(゚д゚)!

2018年3月28日水曜日

叩きたいあまり、反安倍以外のコメントはボツ 官僚を上げたり下げたり…ご都合主義なメディアの人々―【私の論評】政治とは政党と官僚との化かし合いという現実を忘れるな(゚д゚)!

叩きたいあまり、反安倍以外のコメントはボツ 官僚を上げたり下げたり…ご都合主義なメディアの人々  高橋洋一 日本の解き方



 左派系メディアでは、天下り問題で文部科学省の事務次官を引責辞任した前川喜平氏が正義のヒーローのように扱われている。今回の決裁文書の改竄(かいざん)問題でも、佐川宣寿前国税庁長官を官邸の圧力の被害者のように印象づける動きや、デモで「官僚がんばれ」という人までいる。結論ありきのコメントを求めるメディアも含め、そこにはご都合主義があるように筆者には思えるのだが、いかがなものだろうか。

 ちょうど1年前であるが、文科省による組織的な天下り斡旋(あっせん)が問題になっていた。天下り斡旋は、国家公務員法違反である。これは文科省の調査報告書にも書かれているが、その法律は第1次安倍晋三政権時に成立したものだ。筆者はその企画に関わったが、当時、安倍首相が国会を延長してまでも成立に執念を燃やしたものだ。当然のことながら、天下りの主要路を断たれた官僚からは怨嗟(えんさ)の声があがった。

 実は、筆者はそこで退官したが、この流れをくむ公務員改革は続き、自民党政権末期に、自公と民主が歩み寄って、内閣人事庁などの公務員改革基本法の骨子ができ、第2次安倍政権になって、内閣人事局創設に至った。これらの公務員改革を当時のマスコミは絶賛し、天下りを批判した。1年前の文科省による天下り斡旋についても、マスコミは非難し、その首謀者である前川氏も批判されていた。

 ところが、左派系メディアは、加計学園問題で「総理の意向」と書かれた文科省文書の存在を認めた前川氏が安倍政権批判を始めると、手のひらを返したように持ち上げ始めた。ちなみに前川氏は、メディアで問題とされた新国立競技場の高額発注の責任者でもあった。


 今回の財務省による決裁文書の改竄も、公文書改竄という刑法にも触れうる問題である。それなのに、「佐川氏が忖度(そんたく)せざるをえなくなった」「内閣人事局があるから官僚が萎縮していた」など問題の本質からずれるコメントが目立った。

 政治家から指示があれば、それは刑法違反の共犯にもなりかねないので問題だ。しかし、政治家で決裁文書のことを知っている人はまずおらず、知らなければ指示はできないだろう。

 そこで、忖度とか内閣人事局の問題とかで、なんとか官邸が問題だということに持っていこうとしているのだろう。

 筆者は元財務キャリアで、官邸勤務経験もあるので、官邸への忖度があったのではないかというコメントをしばしばメディアから求められる。しかし、本コラムで書いているように、「財務キャリアが官邸に忖度することはまず考えられない」と言うと、メディアでは使えないコメントして扱われる。メディアはまず結論ありきで、それに合った人のコメントしか扱わないと思った方がいいだろう。

 安倍政権を叩きたいあまり、「反安倍」の人には手のひら返しでも無条件に賛同する一方、エビデンスに基づく客観的な話でも、「反安倍に使えない」と断定して無視するのは、おかしいと思う。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】政治とは政党と官僚との化かし合いという現実を忘れるな(゚д゚)!

官僚の果たしている役割とは何かといえば、政府の仕事を実行する事です。また、それを実行するための専門技術・能力を持っているのが官僚です。官僚制と言った場合は、政府全体の体型を指します。

官僚は、執行する側の人間ですから法律通りに前例通りに運営する事が至上命題です。これを、国民に代わり、「シビリアンコントロール」したり、官僚の命題である「法律」を新規に作ったり、改正したりするのが国民の負託と、立法権を持つ「政治家」です。

政治家は官僚をコントロールする為に官僚組織の長として君臨しますが、官僚のもう一つの指名「素人である政治家を補佐する」というものがあります。

素人であ政治家が国家百年の計を乱さないように、補佐するのも官僚の仕事なんですが、政治家が馬鹿だと、いわゆる官僚のレクチャーにより、官僚の都合の良いように政治家は洗脳されてしまいます。管理監督するはずの政治家が管理監督される側の官僚に管理監督されてしまうということがしばしば行われています。ただし、この方は政治家は楽であることはいうまでもありません。

この一番酷い事例は、財務省による増税路線でしょう。復興税、税と社会保障の一体改革による消費税の目的税化など、これらは理論的には破綻しています。

まずは、東日本大震災のような大きな自然災害があったときに、復興税で復興事業を実施するなどということは、古今東西に例をみません。

通常は、償還期間が100年程度の復興債で実施します。なぜなら、復興による工事により再建されたり新たなつくられるインフラなどは、震災を受けた世代だけではなく、後々の世代も使用するものだからです。負担を世代間で平等にわかちあうという趣旨で復興債を用いるのが普通です。

しかし、財務官僚は、ご説明資料などを用いて、政治家にレクチャーし、あたかも復興税がまともな政策であるかのように洗脳し、結局復興税を導入してしまいました。

税と社会保障の一体化による消費税の目的税化なども同じです。そもそも、税の目的税化など不可能です。たとえば、自衛隊が、税を払った人は防衛し、そうでない人は防衛しないとか、税を多めに払った人を優先的に防衛するなどということはできません。社会保険制度も同じことです。

こんなわかりきったことを曲げて財務省は、消費税を増税するために、これを正当化するご説明資料を作成し、政治家にレクチャーし洗脳しました。そのため、現状では、消費税を上げる必要性など全くないのですが、増税はしなければいけないと思い込む政治家がほとんどです。

証人喚問された元財務相理財局長だった佐川氏

ブログ冒頭の記事で高橋氏が批判している前川氏には、他にも多くの問題がありました。たとえば、前川氏は、平成27年9月に安保法制に反対した学生団体「SEALDs(シールズ)」などが国会前で行った集会に参加していたことを明かしていました。

前川氏は2時間近くに及ぶ講演の終盤近くになって、「ここだけ内緒の話ですけど」と前置きして「2年前の9月18日、国会前にいたんです」と切り出した。

前川氏は「集団的自衛権を認めるという解釈は成り立たない。立憲主義に反する」と主張。デモに参加した動機について「今日行かなきゃ、もうないと思ったんですね。その日は安保法制が参議院で成立した日ですから」と語りました。

当時、前川氏は文科省の審議官で翌年の6月、事務次官に就任した。公務員で、しかも省庁事務方のトップを担い、加計学園問題でも参考人招致を受け、今も積極的に発言している前川氏が、従来から安倍政権に批判的だったことを自ら認めた形です。人事院規則では国家公務員は政治的行為ができない事になっています。

一般職国家公務員の政治的行為の制限について

このようなことをして、平気の平左で、しかも自分から告白するような人物である、前川氏など、全く信用できないことはこのことだけでも、明らかです。

官僚は法律・体制の維持、その中での仕事の迅速制を追求します。政治家は法律の改正と、政策を実行するために官僚が立てた計画の変更することが仕事の本筋です。そのため、ある意味で政治家と官僚は、利益は相反する事ところがあります。

余程、政治家が自覚を持ち、勉強して動かないと良い意味でも悪い意味でも、官僚の専横を許してしまうことがあります。

また官僚は各省庁の組織の一員なので、政府の利益より、組織の利益を優先させたり、さらに悪い官僚の場合は、個人の利益を優先させたりすることになります。

これをシビリアンコントロールで排除するのが政治家の仕事なのですが、これができないと、全体的には政府全体が悪い方向へ行く場合もあります。

特に、三権分立の補完や監視が上手く行っていないとそうなります。ただし、官僚制そのものは民間でも広く使われている制度であるため、一概に官僚制度だけが悪いとはいえません。

では、日本の政治のどこが間違いなのでしょうか。それは、いくつもあるかもしれませんが、その中でも最大のものは立憲主義に基づいてた運営が行われていないということでしょう。

立憲主義の前提となるのが、政党の近代化です。それについては、以前このブログにも何度か掲載したことがあります。その典型的な記事のリンクを以下に掲載します。
立民、「首相の解散権制約」の不毛 民進“分裂騒動”の責任押し付けたいだけ 宇佐美典也氏緊急寄稿―【私の論評】立憲主義の立場からも首相の解散権は正しい(゚д゚)!
立憲民主党の枝野代表、実は彼こそ立憲主義とは何かを最も知らない人物かもしれません

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、近代政党に関する部分のみを以下に引用します。
近代政党には、三つの要素があります。 
綱領、組織、議員です。
明確な理念をまとめた綱領がある。綱領に基づいて全国組織が形成されます。全国の政党支部が議員を当選させます。その議員たちは政策の内容で競い合い、自由で民主的な議論で党首を決めます。選ばれた党首は直属のシンクタンクとスタッフを有し、全国組織に指令を下します。この条件に当てはめると、自民党は近代政党ではありません。無論、他の野党も、近代政党とは言い難い状況にあります。
自民党が有する最大のシンクタンクは官僚機構(実体は財務省主計局)ですが、ヨーロッパの政党は官僚機構に対抗できるシンクタンクを自前で揃えています。 
イギリスなどでは、自前でブレーンを用意して勉強した政治家だけが、党の出世階段を上ります。政治の世界の実体は、政党と官僚は化かし合いです。
イギリスの政党は、近代政党ですが、それでも失敗することもあります。たとえば、過去のイギリスでは、付加価値税(日本の消費税にあたる)を増税したのですが、その後若者雇用を忠信に雇用情勢がかなり悪化したため、イングランド銀行(イギリスの中央銀行、日本の日銀にあたる)が大規模な金融緩和を実施したのですが、景気はなかなか回復しませんでした。

そのような失敗もあることはあるのですが、時々NHKBSのワールドニュースを見ている限りにおいては、日本の国会よりもはかにまともな国会運営がなされています。

政党が近代化されていれば、日本でも政治家が官僚に恒常的に化かされるということはないかもしれません。

それにしても、日本でいますぐまともな政策を立案できるシンクタンクを機能させることは無理かもしれません。いまのところ、やはり政治家には官僚に化かされない程度の知識を身につけることが最優先課題だと思います。

私達、有権者はそのような政治家を選ぶべきです。そのために、官僚にいつも化かされてばかりの、政治家は選挙で投票しないことです。

特に、増税を手放しで賛成するような政治家には絶対に投票すべきではありません。しかし、そうなると、今の日本ではほとんど投票すべき政治がいなくなってしまうという恐ろしい現実もあります。

ただし、政治はそもそもが、「政党と官僚」の化かしあいということを理解すべきです。これを理解していないと、そもそも政治の本質がわからなくなります。

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2017年10月12日木曜日

連立政権で経済悪化のワケ 官僚主導で筋悪の政策実行、政治も弱体化する悪循環に―【私の論評】今は政権交代や連立政権を組むような時期ではない(゚д゚)!

連立政権で経済悪化のワケ 官僚主導で筋悪の政策実行、政治も弱体化する悪循環に

衆院選では、早くも選挙後の各党の組み合わせについての論議も出ているが、かつての細川護煕連立政権や、自社さ連立政権にはどのような特徴があったのだろうか。

 細川政権は、元熊本県知事の細川氏が第79代首相に任命され、日本新党、社会党、新生党、公明党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合の非自民・非共産の連立政権で、在職期間は1993年8月9日から94年4月28日までの263日だった。

細川政権
その後、細川連立政権を支えた党派が、羽田孜氏を第80代首相に任命し、羽田政権が誕生した。しかし、各党派が離脱し、94年4月28日から6月30日までの在職日数64日の短命政権だった。

羽田政権
引き続いて誕生した自社さ政権は、村山富市政権と橋本龍太郎政権からなり、94年6月30日から98年5月30日までの自民、社会、さきがけによる連立政権である。

 村山氏は第81代首相に任命され、94年6月30日から96年1月11日までの在職日数は561日だった。

村山富市政権
橋本氏は村山内閣の通産相を経て第82代首相に任命され、96年1月11日から98年7月30日までの在職日数932日の政権だ。第二次改造内閣の途中、社民党と新党さきがけは98年5月30日に連立与党を離脱した。

第二次橋本政権
これらの連立時代から、日本経済は失われた20年に落ち込んだ。政権がしっかりしていないと、官僚の間違った経済政策を改めることができない。典型的な例が、バブル崩壊以降の日銀による過度な金融引き締めや、97年4月からの消費増税だった。

前者については、政治の混乱の中、バブル期のマクロ経済パフォーマンスは悪くなかったのに、金融緩和が問題だと日銀官僚が勘違いし、バブル崩壊以降に過度な金融引き締めを継続した。これがデフレによる失われた20年の主たる原因になった。

 98年4月から改正日銀法が施行されたが、政争の具となったこともあり、中央銀行の独立性について「手段」と「目的」を峻別できなかった。世界の流れについて行けないまま、その後のインフレ目標の導入に日本は遅れを取ってしまった。

 後者については、自社さ政権での政治パワーが低下している村山政権において、当時の大蔵省主導で97年4月からの消費増税が決められた。デフレ期の消費増税は最悪の経済政策であり、デフレをさらに激化させてしまった。

 なお、2014年4月からの消費増税も、導入決定は民主党政権であり、不慣れな政権運営時という意味では、1997年4月からの消費増税と似ていた。

 連立政権は、政党間で共通する政策が少なく、政治面で推し進めるものが乏しいので、どうしても経済面では官僚主導になりやすい。そして、筋悪の政策が選ばれ、その結果悪い経済パフォーマンスになって、さらに政治が弱体化される悪循環になりがちだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今は政権交代や連立政権を組むような時期ではない(゚д゚)!

ブログ冒頭では、細川政権あたりから日本の政権は、短命になったことが記されています、この流れは第二次安倍政権になってから、止まったように見えます。以下に歴代政権の在職期間の表を掲載します。


この表をみるとここしばらくは、小泉政権を除きすべてが短命です。そうして、今回の選挙で安倍政権が勝利し自民・公明の連立政権が継続することになれば、第二次安倍政権も外になりそうです。

さて、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事を補足すると、日銀がバブル潰しのために金融引き締め政策を行い、その結果1991年にバブルが崩壊しました。

細川政権が成立する前から日銀は金融引締めを行い、その後も金融引締め政策は続きました。

そうして、このような状態になってからしばくして1997年4月から消費税増税が行われました。消費税増税をしたときの政権は橋本政権ですが、橋本氏は総理大臣を辞任するときに、「消費税導入は失敗だった」として国民に詫ています。

そうして、日本経済は未だデフレから完璧に脱出しきっていないにもかかわらず、2014年4月から増税をしています。

一方、金融緩和は、2013年4月から実施し現在に至っています。

そうして、その結果経済はどうなったのか、以下に振り返っておきます。

まずは株価ですが、昨日11日の東京株式市場で、日経平均株価(225種)の終値は、前日比57円76銭高の2万881円27銭となり、1996年12月以来、約21年ぶりの高値水準をつけました。


約21年ぶりの高値となった日経平均株価の終値を示すボード(11日、東京都中央区で)

以下に高橋洋一氏作成のグラフを掲載します。


さて、リベラル・左翼の金融政策の理解では、株価を上げだけと言うかもしれません。しかし、このグラフをみていると、株価を上げたのは正しいが、株価と雇用に関係があることを忘れているようです。株価と半年先の就業者数は関係あります。もっともこれは見かけ上の相関で、実は金融政策が裏にあって、金融政策は株価にも雇用にも効くのです。株価のみに言及し雇用をいわないのは非常に奇異なことです。


雇用改善。選挙になると必ず雇用改善はアベノミクス(金融政策)ではなく「失業率改善は人口減少だから当然」などという出鱈目を語る識者もいますが、これは完璧な間違いです。

確かに高齢化・団塊世代の引退で働ける人が減るので、失業者の数も減少するし、労働市場の需給バランスが改善するのは、そのとおりです。

しかし、現状の失業率が3%台を下回るまでの失業率低下の主たる要因が、人口・働き手の減少であるというのは、誤解です。まず、15-64歳(現役世代)の人口は、1997年がピークで、それ以降毎年減少し続けています。具体的に言えば1998年以降、同人口は毎年平均で0.7%減少し続けています。

ところが、現役世代の人口が減り続ける中で、1990年代後半から失業率は大きく上昇、2000年代には5%台まで悪化しました。

つまり、現役世代の人口の減少幅より、雇用削減幅が大きかったため、失業率が上昇していたのです。そして、2010年代に失業率は低下に転じたましたが、2000年代までとは逆に、雇用が増え失業が減ったので、失業率が1994年以来の水準まで再び正常化したのです。

以上がやや長い目でみた、現役世代の人数と失業率の関係です。景気の変動による雇用者数の増減が、失業率の動きのかなりの部分を説明しており、人口動態の影響が小さいということです。

一方、現役世代の数は1998年から減り続けていますが、団塊世代の引退などでその減少ペースが2012年から年率1%の減少にまで「ペースアップ」しています。それが、2012年の失業率低下(改善)を後押しした部分は多少あります。ただ、2013年以降、4%を下回る水準まで低下した失業率の主たる要因は、アベノミクスが発動された、2013年からの景気回復で新規雇用が生まれたことに原因があります。

リーマンショックが起きた2008年から、民主党政権最後の年の2012年までの4年間で就業者数は129万人減少しました。

その後アベノミクス発動後の4年間で就業者数は185万人増えています。民主党政権下で減少し続けた就業者数が、アベノミクス発動による景気刺激政策で一転して増えたことは明確であす。一方、2013年以降の4年間で、失業者は80万人減っています。4年間での就業者数から失業者数を引けば分かる通り、2012年まで就職を諦めていた人たちに新たな雇用の場が、約100万人分創出されたのです。

実は、失業率だけをみると、民主党政権下の2011~12年にも失業率は低下しています。そのため、失業率の低下と金融緩和強化は関係ない、などと言う枝野氏のような論者もいます。ただ、2011~12年までの失業率低下と、金融緩和が発動された2013年以降の失業率低下は、その中身が全く異なることは明らかです。

デフレと総需要の不足下において、景気刺激的な金融緩和、財政政策が適切かつ十分行われたとすれば、経済成長率は高まり雇用が増えます。

失業率だけでなく就業者数の推移など関連指標を丹念にみれば、2013年からの労働市場の改善によって、新たな雇用が生まれ、その分家計所得全体が底上げされたことは否定できません。そうして歴史的な長期政権となっている安倍政権の支持率の高さを保っている最大の要因は、満点とはいえないものの、妥当な経済政策運営を続けているからです。

枝野氏は民主党政権時代と安倍政権時代で就業者数で変化があったことを認めず、図が間違っているとテレビで語っていました。私は「失業率改善は人口減少だから当然」ということを数量的に説明した資料は、現在に至るまで見たことはありません。もし証明できるものがあれば、是非見せていただきたいものです。

さて他にも安倍政権による成果はあります。それを以下に掲載します。


これだけ、具体的な成果を数字で出せた政権は、ここ20年では安倍政権だけです。どう考えても現政権は、経済に関してはここ20年では最も成果をあげているし、外交や安全保証でも高い水準で議論をし、実行している政権です。

安倍総理が、消費税10%になったときを前提として、諸費税の配分に言及していたことをもって、安倍総理は諸費税を10%にあげると判断して、安倍政権は消費税をあげると考えている人たちもいるようですが、この問題について判断するのは早計です。

私自身は、以前このブログで述べたように、これは消費税増税分のほとんどが、本当はありもしない国の借金の返済というかたちで、財務省が溜め込むので、それを批判したものと思います。

安倍総理は、今回の選挙では、消費税増税を争点にはしたくないのでしょう。北朝鮮の危機への対応を考えた場合、現在は財務省と対峙するようなことはせず、それは後に回すと判断していると思います。

そんなことより、上記でも述べたように、各党の金融緩和に対する姿勢をみるべきです。

今のところ、実績をあげている安倍総理の金融緩和に対する姿勢が最も良いものと判断されます。

一方、希望の党も、現状の金融政策スタンスを維持することに言及しています。ただ、そこに至るまでに紆余曲折がありました。

当初は、「金融・財政政策への過度の依存から脱する」とされていましたが、これは、素直に読めば、「現行の金融政策を転換させ、『出口政策』へ舵を切る」ことを意味します。そうして、緊縮財政をすることも意味します。

直近の「金融政策は現状維持」の公約が実現すれば良いですが、実際に希望の党が政権のキャスティングボードを握った場合、誰が首相になるのかがわからないような状況から、政策の信頼性がやはりいまひとつ不透明です。

北朝鮮の危機が顕在化しつつある現在、政権交代したり、選挙後他党と連立政権を組むなどということはすべきではありません。

そのようなことは、必ず失敗するということを、上に掲げた「歴代政権の在職期間の表」が如実に示していると思います。

政権交代や連立政権など組んで良い結果を招く可能性が高くなるのは、北朝鮮や中国の危機が遠のき、経済的にはデフレから完全脱却し経済がかなり良くなったときであって、今ではありません。

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