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2018年4月9日月曜日

政権交代で中国の一帯一路を封印したいマレーシア―【私の論評】ナジブとマハティールの戦いは「アジア的価値観」と「西欧的自由民主主義」の相克という枠組みで捉えよ(゚д゚)!

政権交代で中国の一帯一路を封印したいマレーシア

中国に身売りしかねないナジブ首相に立ち向かうマハティール元首相

下院解散で、事実上の選挙戦がスタートしたマレーシア。与党連合(国民戦線)は野党支持層が厚い
選挙区に数週間前から早々に、ブルーの与党連合統一の旗を張り巡らせ、猛追する野党阻止を狙う

 60年ぶりの歴史的政権交代が期待されるマレーシアの総選挙(下院=定数222、5年に1回実施。総選挙(投開票日)は5月5日前後で政府が最終調整=前回記事で独自報道)は、与党優勢が伝えられている。

 一方で、2008年に与党連合(国民戦線)が歴史的に苦戦を強いられた戦い「TSUNAMI(津波)選挙」が再び起こるのか、と内外の注目を浴びている。

現首相のナジブ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 首相のナジブは7日に下院を解散し、津波の再来を警戒する中、「史上最悪のダーティーな選挙を展開するだろう」(元首相のマハティール)と見られ、残念ながら筆者も全く同感だ。

野党に30日間の活動停止

 ナジブは、公務員の給与所得値上げなどのバラマキ公約、さらには与党に有利な「選挙区割りの改定法案」、メディア封じ込めの「反フェイクニュース法案」を下院解散直前の数日間で強行採決。

 さらに、マハティールが代表を務めるマレーシア統一プリブミ党への“締めつけ”を強化。政府は解散直前の5日になって突如、プリブミ党が党登録時の書類に不備があると、書類再提出を指示し、30日間の活動停止を言い渡した。
元首相のマハティール

 30日間の間に再提出しなければ、同党は”永久追放”されると見られている。政府は野党連合(希望同盟)に対しても、野党連合の統一旗の使用やマハティールの顔写真を選挙活動に使用することも禁止した。

 選挙戦活動に圧力がかけられる中、マハティールは「ナジブよ、逮捕したかったら、してみろ!」と自分の政党のロゴが入ったTシャツを着用し、打倒ナジブのシュプレヒコールを全開させている。

 こうした事態に、米国国務省はナジブの非民主的な強権発動に異例の非難声明を発表。さらに、民主化を後押しする宗主国の英国のメディアなど欧米のメディアは、ナジブ糾弾の辛辣な報道を活発化させている。

 一方、事実上の選挙戦に火蓋が切られたマレーシアでは「次期首相には誰がふさわしいか?」を聞いた最新の世論調査(政府系シンクタンク調査。3月23日から26日まで)が実施された。

 その結果、過半数の61%が、野党連合を率いる92歳のマハティールに再び、国の舵取りを握ってほしい、と願っていることが6日、明らかになった。ちなみに、ナジブへの続投への期待は、39%だった。

 昨年末、実施された各種世論調査では、ナジブが少なからず優位に立っていたが、ここに来て、マハティール人気が急上昇。

 「独裁開発者」としての過去の首相時代のイメージから、「人民、民主(ラクヤット=マレー語)」をキーワードに、民衆の頼れるリーダーへとソフトにイメージチェンジした。首相時代より人気が出ているのは、何とも皮肉だ。

 そんな国民の期待を背負う、マハティールは、22年という歴代最長の首相在任を経て、政界を勇退した。

 本来ならば、悠々自適な余生を過ごしているはずが、ナジブ側による暗殺に警戒しながら、歴史的な政変を起こそうとしている。老骨に鞭打つ決意の背景には、いったい何があるのか――。

ナジブと中国の蜜月関係

 誰もが納得する理由は、本人も公言している国際的なスキャンダルとなったナジブや一族が関わる政府系ファンド1MDBの巨額公的不正流用疑惑にメスを入れることだ。



 しかし、本当にマハティールがメスを入れたいのは1MDBが発端となって明らかになりつつある「ナジブと中国の蜜月関係」のようだ。

 その矛先は、マレーシアを重要拠点とする中国の国家主席、習近平提唱の経済構想「一帯一路」にある。マハティール率いる野党が政権交代を実現すれば、マレーシアにおける中国の一帯一路戦略は見直しされるだろう。

 本来、マレーシアでは外国諸国との経済協力は経済企画庁(EPU)が直接の担当省。しかし、一帯一路プロジェクトに関しては、ナジブ直属の総理府がイニシアティブを取っている。

 ナジブと習の独裁的なトップダウンな指揮の下、一帯一路プロジェクトが展開されていることが問題視されているのだ。

ナジブ(左)と習近平(右)

 マレーシアでの一帯一路プロジェクトが、ナジブ設立の1MDBの巨額債務を救済するために始まったことをマハティールは決して見逃すことができないのだ。

 一方、中東からの石油に依存している中国としても、マラッカ海峡を封鎖される危険性(マラッカジレンマ)に備え、マレー半島における拠点づくりは最重要課題となっている。

 中国にとっても地政学的に極めて重要拠点となるマレーシアを取り込むため、借金返済を目論むナジブと習が「利害を一致」させ、一帯一路を通じてチャイナマネーが大量流入している。

 最も顕著な例は、1MDB傘下のエドラ・グローバル・エナジー社が所有する発電所の全株式約99億リンギ(1リンギ=約28円)分を中国の原子力大手、中国広核集団に売却したことだ。

 しかも、中国広核集団は、同資産に加え1MDBの負債の一部の60億リンギを肩代わりした。まさに、一帯一路の下での「1MDB救済プロジェクト」にほかならない。

発電所の全株式を中国に売却

 国の安全保障の根幹である発電所を外資に売り渡す国家戦略にも驚かされるが、ナジブは借金返済のため、「発電所は外資上限49%」というマレーシアの外資認可規制を無視し、中国企業に100%身売りしてしまった。

 そのような状況の中、マハティールは一帯一路のインフラ整備に伴い中国政府から巨額の債務を抱え、財政難にあえぐスリランカと同じ徹を踏まないと誓っている。

 中国マネーの流入は国内政策に悪影響を与え、中国経済への依存は、南シナ海を含め、国や地域の安全保障にも大きな影をもたらすことにもなるからだ。

 こうしたことから、マレーシアと中国との関係改善は、今回の選挙の大きな争点の1つになっている。

 マレーシアでは、一帯一路の関連プロジェクトが鉄道、電力、工業団地、不動産、港湾などのインフラ整備投資を中心に約40件ほど進んでおり、IT分野を始め、製造業、教育、農林水産、観光など幅広い事業に及んでいる。

 中でも、習肝いりの一帯一路の目玉プロジェクト、「東海岸鉄道プロジェクト」は、首都クアラルンプール郊外とマレーシアの北部・ワカフバルを縦断する総距離約600キロを結ぶ一大プロジェクト。2025年完成を目指している。

 問題は、スリランカと同様だ。中国は“低利融資”と言うものの「年利約3.3%で550億リンギ」の総経費を、中国輸出入銀行から借入。

 当然、他の諸国の一帯一路と同様、建設会社は中国交通建設などで、政府は「雇用も資材も、外国と国内の内訳は半々」と模範解答するが、他の様々な一帯一路プロジェクトと同様、「実態は資材だけでなく、労働者もほぼ100%が中国から投入されている」(建設関連企業幹部)と見られている。

 しかも、その労働者は建設現場からの外出を禁じられ、彼らの消費はマレーシア経済に何の貢献もしない。

 中国との「利害一致」と言うが、中国一強プロジェクトにほかならない。

中国のための東海岸鉄道

 ナジブは「東海岸鉄道は開発途上の東部地域の経済成長率を底上げする」と豪語する。しかし、マハティールは「借金を抱え込み、地元の経済や企業をさらに疲弊させるだけ」と同プロジェクトの中止を公約に掲げている。

 マラッカ・ジレンマを克服したい中国にとって、東海岸鉄道プロジェクトはその生命線となるが、マレーシアにはほとんど利益がもたらされないとうわけだ。

 こうした反論にナジブは、「東海岸鉄道など中国との開発プロジェクト(一帯一路関連)を中止せよとは、野党は頭がおかしい!」と激怒する。

 さらに、「中国は最大の貿易相手国。主要輸出品のパーム油だけでなく、ツバメの巣やムサンキング(果物の王様、ドリアン)も大量に輸入しているんだ(「中国がドリアン爆買い マレーシア属国化への序章」)」「中国なくして、国民の暮らしは良くならない」とまで言う。

 まるで中国に憑りつかれたかのように“中国賛歌”をまくし立てている。

 マレーシアの建国の父といわれるマハティールがなぜ、92歳にして現職首相に対して歴史的な政変を起こそうとしているのか。独立国家としてのマレーシアの存亡に対する危機感がある。

 中でも、ナジブの中国との蜜月が、彼の愛国心を傷つけ、その怒りが最高潮に達したのが、マレーシア国産車の「プロトン」の中国企業への身売りだった。

 「プロトンの父」と言われたたマハティールは日本の三菱自動車と資本・技術提携し、東南アジア初の国産車を導入させた。

 この売却が、ナジブとの対決姿勢を決定的なものとした。余談だが、ナジブは「財政難」を理由に、マハティールがアジアで日本に次いでマレーシアに誘致したF1レースからも昨年、撤退。

 さらに、マハティールが経済発展の成長のシンボルとして、肝いりで日本のハザマに施工させた、かつては世界最高峰のビルでマレーシアのランドマーク、ペトロナスツインタワーを超える高さのビル建設計画も進めている。

中国資本で建設が進むフォレスト・シティ

 ナジブの目玉プロジェクトであるクアラルンプールの新国際金融地区 「TRX」で建設中の別の超高層タワー(写真下)は、すでにペトロナスツインタワーを建設途中でその高さを抜いてしまった。



 ドミノ倒しのようにバサッ、バサッと、”マハティール・レガシー”を次から次へと、ぶっ壊すナジブ。

 そして、東海岸鉄道プロジェクトだけでなく、TRXに建築予定の超高層タワーやダイヤモンド・シティ、さらにはイスカンダル地帯に建設される大規模開発、それらすべてが一帯一路にも関連する中国の大手企業による開発だ。

 中でも、 4つの人工島を建設して、約80万人が居住する大型高級住宅街、教育施設、オフィスを構える都市開発計画「フォレスト・シテイ」は、中国の大手不動産「碧桂園」が開発、 2035年の完成を目指す。

都市開発計画「フォレスト・シティー」立体パース

 建設にあたり租税恩典も与えられ、買手の約80%が中国本土からの「大陸人」だと言われている。

 マハティールは、「チャイナマネーの大量流入で、国内企業は衰退の一途を辿るだけでなく、新たな1MDBのような巨額な債務を抱えることになる。さらに、マレーシアの最も価値ある土地が外国人に専有され、外国の土地になってしまうだろう」と話す。

 そこには、建国の父・20世紀最後の独裁開発指導者としてではなく、ラクヤット(民衆)のために立ち上がり、新たなレガシー(遺産)を築きたいという気持ちもあるのかもしれない。

(取材・文  末永 恵)

【私の論評】ナジブとマハティールの戦いは「アジア的価値観」と「西欧的自由民主主義」の相克という枠組みで捉えよ(゚д゚)!

中国がマレーシアなどの国々に影響力を及ぼすことができるのは、金の力だけではありません。やはり、客家(はっか)と客家人ネットワークを理解しなければ、これは理解できないでしょう。

客家人とは、原則漢民族であり、そのルーツを辿ると古代中国(周から春秋戦国時代)の中原や中国東北部の王族の末裔であることが多いです。歴史上、戦乱から逃れるため中原から南へと移動、定住を繰り返していきました。

客家人の住居「福建土楼」

移住先では原住民から見て“よそ者”であるため、客家と呼ばれ、原住民との軋轢も多数ありました。原住民と、客家人の争いを土客械闘といいます。

中国の政治において最も重要なファクターは「客家人ネットワーク」だと言われます。「アジアのユダヤ人」とも言われる彼等は、中国、シンガポール、台湾、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、米国などの中枢に強固な繋がりを持つ華僑ネットワークを形成しています。

客家は、孫文、鄧小平、宋美齢、江沢民、習近平、李登輝、蔡英文、李光耀など、アジアを中心として多くのキーパーソンを排出しています。

さて、昨日はシンガポールの独裁者であった故リー・クアンユー氏のことをこのブログに掲載ましましたが、このシンガポール、そうしてマレーシアも中国語の通じる華人の多い地域です。

マレーシアの首都クアラルンプールにある中華レストラン「客家飯店」

街で買い物をしても、日本人であったとしても普通に中国語で対応されます。マレーシアの最南端に位置する都市ジョホールバルでは街じゅうのいたるところに中国語を見かけます。華人には中国語で話しかけた方が、心を開いてくれる気がします。

日本から来られる方の中には、“中国人”に関してネガティブなイメージからか、中国語のアレルギーのようなものを感じる人がいるかもしれません。

中国語を読み書き話す人を見ると「中国人かな?」と思ってしまいますが、当人たちの多くは自分たちのことを大陸の中国人とは分けて考えています。

人それぞれなので一概にはいえませんが、大陸の人たちとは往往にして気質が異なります。人種としての分類では彼らは『マレーシアン・チャイニーズ』です。彼らの多くは、自分たちは、大陸の人とは違うといいます。はっきり言うと、大陸の中国人を軽蔑しているからかもしれません。

マレーシアでは、中華系の人々(華人)は人口の25%を占めると言われています。人口比は25%でも、一人あたりの平均GDPはマレー系の人々より5割近く高いです。

商取引では英語でももちろん問題ないですが、中国語が流暢にできるならそのほうが歓迎される場面があります。

表向きは英語で対応しているものの「裏で所属の部下と話しているのは中国語」という場面もあります。そのような場合は、両方できるほうが何かと有利に話を運べます。

中国語といえば、北京語(マンダリン)を想像します。たしかに華人は基本的に北京語ができます。それでも母語としての中国語はというと、地域によって人口が変わります。肌感覚にはなりますが以下のような感じなります。
クアラルンプール(Kuala Lumpur):広東語
イポー(Ipoh):広東語
ペナン(Penang):福建語(閩南語)
ジョホール・バル(Johor Bahru):北京語
中国語ができる人はマレーシアでも普通に生活ができます。医療を受けるにしても薬局で必要な薬を買うにしても便利です。

マレーシアの中華系の人は中国語(普通語・北京語)が基本的に話せます。もちろん読み書きもしっかりできます。学校で習うのは簡体字。50歳以上の人は繁体字を好んで用いることもあります。

中学生は公育語がマレー語になるため、当人たちは覚えることを結構苦しんでいるようですが、マレー語もできるようになります。これらの言語がどれもかなり高いレベルです。

家で中国語が話されている家庭が最も有利なようです。インターナショナルスクールでも中国語の授業はありますが、授業だけで中国語を習得するのは無理です。

マレーシアの首都クアラルンプール

マルチリンガルの子どもたちも多いです。家政婦さんとはマレー語、両親とは中国語、学校では英語という具合です。それぞれのことばを瞬時に切り替えます。

非中華系でも、たとえば地元のインド系の方たちも多少中国語がわかる場合があります。インド系だからといっても油断は禁物です。中国語でひどいことを言ってしまえば通じてしまいます。

ちなみにシンガポールはというと、英語で教育を受けている背景のためか、30歳くらいよりも若い年齢の華人は、中国語はあまりうまくないです。マレーシアとは対照的です。

英語と中国語は、両言語とも性質がずいぶんと違いますから、環境的に二つ同時にマスターできる可能性の高い地域は、世界でもマレーシアだけかもしれません。

最近の、マレーシアン・チャイニーズは経済的に余裕ができてきたためか、LCCなどを使って世界各地を旅行する人も増えて来ました。日本にも大勢来ています。

さて、昨日このブログに掲載したお隣の国シンガポールの、独裁者であった故リー・クアンユー氏も華人でした。そうして、数多い華人の中でも、先に掲載した客家人でした。

昨日の記事にもあるように、氏は客家系華人の4世にあたるといいます。曽祖父のリー・ボクウェン(李沐文)は、同治元年(1862年)に清の広東省からイギリスの海峡植民地であったシンガポールに移民しました。本人は自分のことを「実用主義者」「マラヤ人」と称している。また、自らを不可知論者としています。

昨日のブログでは、石平氏の『なぜ中国は民主化したくてもできないのか』という書籍の書評を紹介させていただきました。

この書籍では、石平氏は、長く独裁を続けた毛沢東や改革開放経済の道を開いた鄧小平に比肩する実績も、カリスマ性もない習氏がなぜやすやすと“独裁体制”を築けたのかという問に対して、"中国民衆の中に「皇帝を求める」エートス(社会通念)や伝統があるからだ"と断じています。

中華思想では、天から命じられた天子(皇帝)は中国だけでなく全世界唯一の統治者なのです。そうして、中華秩序を失えば王朝も崩壊するという歴史を中国の民衆は身に染みて知っているのです。

そうして、昨日の記事では、故リー・クアンユー氏が、西洋の自由民主主義は「アジア人」には向いていないとは述べていたことを掲載しました。リー・クアンユー氏は、さらに「アジア人は、個人の利益よりも集団の利益を上に置く考え方に慣れている。生来、権力者に対して従順で、こうした傾向はアジアの歴史に深く根差す"アジア的価値観なのだ"と主張していました。と主張したことも掲載しました。

そうして、私は石平氏の言う"中国民衆の中に「皇帝を求める」エートス(社会通念)や伝統"とリー・クアンユー氏の言う"アジア的価値観"とは本質的に同じものであると考えました。

私は、アジア一帯に住む華人のうちでも、特に客家人はこうした社会通念や伝統を強く継承しているのではないかと思います。

マレーシアの、現首相ナジブ氏と、元首相のマハティール氏の経歴を調べてみると、両方とも生粋のマレー人のようです。しかし、上でも述べたように、マレーシアには華人も大勢いて、その中には客家人も存在していて、特に経済界では幅を効かせています。

そのような客家人にナジブ氏は大きく影響されたのだと思います。一方、マハティール氏は、西洋の自由民主主義に親和的な立場をとっているのだと思います。

昨日は、"現在のアジアではリー・クアンユーのいう「アジア的価値観」すなわち中国の民衆のなかにある「皇帝を求める」エートス(社会通念)や伝統と、西洋的自由民主主義とが相克しているのです。

ナジブとマハティールの戦いは、この相克の枠組みでとらえるとかなり理解しやすくなります。そうして、私は無論マハティールを支持します。

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2017年10月12日木曜日

連立政権で経済悪化のワケ 官僚主導で筋悪の政策実行、政治も弱体化する悪循環に―【私の論評】今は政権交代や連立政権を組むような時期ではない(゚д゚)!

連立政権で経済悪化のワケ 官僚主導で筋悪の政策実行、政治も弱体化する悪循環に

衆院選では、早くも選挙後の各党の組み合わせについての論議も出ているが、かつての細川護煕連立政権や、自社さ連立政権にはどのような特徴があったのだろうか。

 細川政権は、元熊本県知事の細川氏が第79代首相に任命され、日本新党、社会党、新生党、公明党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合の非自民・非共産の連立政権で、在職期間は1993年8月9日から94年4月28日までの263日だった。

細川政権
その後、細川連立政権を支えた党派が、羽田孜氏を第80代首相に任命し、羽田政権が誕生した。しかし、各党派が離脱し、94年4月28日から6月30日までの在職日数64日の短命政権だった。

羽田政権
引き続いて誕生した自社さ政権は、村山富市政権と橋本龍太郎政権からなり、94年6月30日から98年5月30日までの自民、社会、さきがけによる連立政権である。

 村山氏は第81代首相に任命され、94年6月30日から96年1月11日までの在職日数は561日だった。

村山富市政権
橋本氏は村山内閣の通産相を経て第82代首相に任命され、96年1月11日から98年7月30日までの在職日数932日の政権だ。第二次改造内閣の途中、社民党と新党さきがけは98年5月30日に連立与党を離脱した。

第二次橋本政権
これらの連立時代から、日本経済は失われた20年に落ち込んだ。政権がしっかりしていないと、官僚の間違った経済政策を改めることができない。典型的な例が、バブル崩壊以降の日銀による過度な金融引き締めや、97年4月からの消費増税だった。

前者については、政治の混乱の中、バブル期のマクロ経済パフォーマンスは悪くなかったのに、金融緩和が問題だと日銀官僚が勘違いし、バブル崩壊以降に過度な金融引き締めを継続した。これがデフレによる失われた20年の主たる原因になった。

 98年4月から改正日銀法が施行されたが、政争の具となったこともあり、中央銀行の独立性について「手段」と「目的」を峻別できなかった。世界の流れについて行けないまま、その後のインフレ目標の導入に日本は遅れを取ってしまった。

 後者については、自社さ政権での政治パワーが低下している村山政権において、当時の大蔵省主導で97年4月からの消費増税が決められた。デフレ期の消費増税は最悪の経済政策であり、デフレをさらに激化させてしまった。

 なお、2014年4月からの消費増税も、導入決定は民主党政権であり、不慣れな政権運営時という意味では、1997年4月からの消費増税と似ていた。

 連立政権は、政党間で共通する政策が少なく、政治面で推し進めるものが乏しいので、どうしても経済面では官僚主導になりやすい。そして、筋悪の政策が選ばれ、その結果悪い経済パフォーマンスになって、さらに政治が弱体化される悪循環になりがちだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今は政権交代や連立政権を組むような時期ではない(゚д゚)!

ブログ冒頭では、細川政権あたりから日本の政権は、短命になったことが記されています、この流れは第二次安倍政権になってから、止まったように見えます。以下に歴代政権の在職期間の表を掲載します。


この表をみるとここしばらくは、小泉政権を除きすべてが短命です。そうして、今回の選挙で安倍政権が勝利し自民・公明の連立政権が継続することになれば、第二次安倍政権も外になりそうです。

さて、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事を補足すると、日銀がバブル潰しのために金融引き締め政策を行い、その結果1991年にバブルが崩壊しました。

細川政権が成立する前から日銀は金融引締めを行い、その後も金融引締め政策は続きました。

そうして、このような状態になってからしばくして1997年4月から消費税増税が行われました。消費税増税をしたときの政権は橋本政権ですが、橋本氏は総理大臣を辞任するときに、「消費税導入は失敗だった」として国民に詫ています。

そうして、日本経済は未だデフレから完璧に脱出しきっていないにもかかわらず、2014年4月から増税をしています。

一方、金融緩和は、2013年4月から実施し現在に至っています。

そうして、その結果経済はどうなったのか、以下に振り返っておきます。

まずは株価ですが、昨日11日の東京株式市場で、日経平均株価(225種)の終値は、前日比57円76銭高の2万881円27銭となり、1996年12月以来、約21年ぶりの高値水準をつけました。


約21年ぶりの高値となった日経平均株価の終値を示すボード(11日、東京都中央区で)

以下に高橋洋一氏作成のグラフを掲載します。


さて、リベラル・左翼の金融政策の理解では、株価を上げだけと言うかもしれません。しかし、このグラフをみていると、株価を上げたのは正しいが、株価と雇用に関係があることを忘れているようです。株価と半年先の就業者数は関係あります。もっともこれは見かけ上の相関で、実は金融政策が裏にあって、金融政策は株価にも雇用にも効くのです。株価のみに言及し雇用をいわないのは非常に奇異なことです。


雇用改善。選挙になると必ず雇用改善はアベノミクス(金融政策)ではなく「失業率改善は人口減少だから当然」などという出鱈目を語る識者もいますが、これは完璧な間違いです。

確かに高齢化・団塊世代の引退で働ける人が減るので、失業者の数も減少するし、労働市場の需給バランスが改善するのは、そのとおりです。

しかし、現状の失業率が3%台を下回るまでの失業率低下の主たる要因が、人口・働き手の減少であるというのは、誤解です。まず、15-64歳(現役世代)の人口は、1997年がピークで、それ以降毎年減少し続けています。具体的に言えば1998年以降、同人口は毎年平均で0.7%減少し続けています。

ところが、現役世代の人口が減り続ける中で、1990年代後半から失業率は大きく上昇、2000年代には5%台まで悪化しました。

つまり、現役世代の人口の減少幅より、雇用削減幅が大きかったため、失業率が上昇していたのです。そして、2010年代に失業率は低下に転じたましたが、2000年代までとは逆に、雇用が増え失業が減ったので、失業率が1994年以来の水準まで再び正常化したのです。

以上がやや長い目でみた、現役世代の人数と失業率の関係です。景気の変動による雇用者数の増減が、失業率の動きのかなりの部分を説明しており、人口動態の影響が小さいということです。

一方、現役世代の数は1998年から減り続けていますが、団塊世代の引退などでその減少ペースが2012年から年率1%の減少にまで「ペースアップ」しています。それが、2012年の失業率低下(改善)を後押しした部分は多少あります。ただ、2013年以降、4%を下回る水準まで低下した失業率の主たる要因は、アベノミクスが発動された、2013年からの景気回復で新規雇用が生まれたことに原因があります。

リーマンショックが起きた2008年から、民主党政権最後の年の2012年までの4年間で就業者数は129万人減少しました。

その後アベノミクス発動後の4年間で就業者数は185万人増えています。民主党政権下で減少し続けた就業者数が、アベノミクス発動による景気刺激政策で一転して増えたことは明確であす。一方、2013年以降の4年間で、失業者は80万人減っています。4年間での就業者数から失業者数を引けば分かる通り、2012年まで就職を諦めていた人たちに新たな雇用の場が、約100万人分創出されたのです。

実は、失業率だけをみると、民主党政権下の2011~12年にも失業率は低下しています。そのため、失業率の低下と金融緩和強化は関係ない、などと言う枝野氏のような論者もいます。ただ、2011~12年までの失業率低下と、金融緩和が発動された2013年以降の失業率低下は、その中身が全く異なることは明らかです。

デフレと総需要の不足下において、景気刺激的な金融緩和、財政政策が適切かつ十分行われたとすれば、経済成長率は高まり雇用が増えます。

失業率だけでなく就業者数の推移など関連指標を丹念にみれば、2013年からの労働市場の改善によって、新たな雇用が生まれ、その分家計所得全体が底上げされたことは否定できません。そうして歴史的な長期政権となっている安倍政権の支持率の高さを保っている最大の要因は、満点とはいえないものの、妥当な経済政策運営を続けているからです。

枝野氏は民主党政権時代と安倍政権時代で就業者数で変化があったことを認めず、図が間違っているとテレビで語っていました。私は「失業率改善は人口減少だから当然」ということを数量的に説明した資料は、現在に至るまで見たことはありません。もし証明できるものがあれば、是非見せていただきたいものです。

さて他にも安倍政権による成果はあります。それを以下に掲載します。


これだけ、具体的な成果を数字で出せた政権は、ここ20年では安倍政権だけです。どう考えても現政権は、経済に関してはここ20年では最も成果をあげているし、外交や安全保証でも高い水準で議論をし、実行している政権です。

安倍総理が、消費税10%になったときを前提として、諸費税の配分に言及していたことをもって、安倍総理は諸費税を10%にあげると判断して、安倍政権は消費税をあげると考えている人たちもいるようですが、この問題について判断するのは早計です。

私自身は、以前このブログで述べたように、これは消費税増税分のほとんどが、本当はありもしない国の借金の返済というかたちで、財務省が溜め込むので、それを批判したものと思います。

安倍総理は、今回の選挙では、消費税増税を争点にはしたくないのでしょう。北朝鮮の危機への対応を考えた場合、現在は財務省と対峙するようなことはせず、それは後に回すと判断していると思います。

そんなことより、上記でも述べたように、各党の金融緩和に対する姿勢をみるべきです。

今のところ、実績をあげている安倍総理の金融緩和に対する姿勢が最も良いものと判断されます。

一方、希望の党も、現状の金融政策スタンスを維持することに言及しています。ただ、そこに至るまでに紆余曲折がありました。

当初は、「金融・財政政策への過度の依存から脱する」とされていましたが、これは、素直に読めば、「現行の金融政策を転換させ、『出口政策』へ舵を切る」ことを意味します。そうして、緊縮財政をすることも意味します。

直近の「金融政策は現状維持」の公約が実現すれば良いですが、実際に希望の党が政権のキャスティングボードを握った場合、誰が首相になるのかがわからないような状況から、政策の信頼性がやはりいまひとつ不透明です。

北朝鮮の危機が顕在化しつつある現在、政権交代したり、選挙後他党と連立政権を組むなどということはすべきではありません。

そのようなことは、必ず失敗するということを、上に掲げた「歴代政権の在職期間の表」が如実に示していると思います。

政権交代や連立政権など組んで良い結果を招く可能性が高くなるのは、北朝鮮や中国の危機が遠のき、経済的にはデフレから完全脱却し経済がかなり良くなったときであって、今ではありません。

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2017年3月25日土曜日

【トランプ政権】オバマケア代替法案を撤回 最重要公約、政権に大打撃―【私の論評】元々米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではない(゚д゚)!


オバマケア代替法案の撤回を受けホワイトハウスで対応するトランプ米大統領
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
ライアン米下院議長は24日、本会議での採決を予定していた医療保険制度改革(オバマケア)の改廃法案を撤回すると発表した。可決に必要な賛成票を固められなかったためで、オバマケアは当面存続する。オバマケア改廃は大統領選挙での最重要公約だっただけに、就任早々に大打撃を受けた形だ。

 ライアン氏は24日、記者会見で「残念な日になった」と述べて失望を表明。オバマケアの制度が一部で維持されることに不満を示してきた党内強硬派から十分な賛成を引き出せなかったことを認め、「近い将来はオバマケアは存続する」と述べた。

 一方、トランプ氏もホワイトハウスで記者会見し、保険料が上昇傾向にあるオバマケアは「自壊させておけばいい」と述べ、その責任は民主党にあると強調した。また今後は「税制改革に向かうだろう」とした。

 トランプ氏は選挙戦でオバマケア改廃を最重要公約とし、ビジネスで培った「交渉術」で実現させると宣言。改廃法案発表後はライアン氏のほか、下院議員の経験が長いペンス副大統領やプライス厚生長官らも総動員して票固めに躍起となった。しかし賛成票は可決に必要な216人に10人程度届かなかった模様で、共和党議員237人から多くの造反者が出たようだ。

 改廃法案撤回は就任後に目立った成果を残せていないトランプ氏にとって手痛い失敗。さらに共和党もホワイトハウスと上下両院を握りながら悲願のオバマケア改廃を実現できず、統治能力不足を露呈する結果になった。トランプ氏が思うままに政権を運営できるわけではないことが明らかになった形で、今後、支持層のトランプ離れが進む恐れがある。

【私の論評】元々米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではない(゚д゚)!

オバマケア代替法案は撤回される運びとなりました。オバマケア改廃に関しては、日本ではトランプ大統領が最重要公約としたことと、議会では共和党が僅差とはいえ多数派となっていることから、日本では議会を通るだろうし、通らなければトランプ大統領にとっては、大きな失点でブログ冒頭の記事にもあるとおり、支持層のトランプ離れが進むことを予期した人も多いのではないかと思います。


しかし、私はこれは完璧に間違いであると思っています。まずは、改廃法案の撤回直後の現状はどうなっているのか見てみましょう。

以下にロイターの記事を引用します。
オバマケア代替法案撤回:識者はこうみる
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
●減税など実行可能な案件に着手可能
<ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメント(ボストン)のシニアポートフォリオマネジャー、マーガレット・パテル氏>
市場ではトランプ政権が医療保健問題に完全に手足を縛られ、身動きできなくなるのではないかとの懸念が出ていた。医療保健問題がこうした形でクリアされたことで、規制改革や減税などそれほど複雑ではなく実行可能な案件に着手できると、市場では楽観的な見方が出ているのではないか。
これほど複雑で大きな費用が絡む案件が棚上げにされたことはプラス方向の動きのように見える。今後、減税のようにそれほど難しくない案件に歩を進めることができる。 
●議会はトランプ氏の思い通りには動かず
<DRWトレーディングの市場ストラテジスト、ルー・ブライアン氏>
最も重要なのは、トランプ米大統領と議会の関係に関する見方を変えるという点だ。過去数カ月は、議会はトランプ大統領が求めることは何でもやるといった印象があった。しかし、明らかにこうした状況ではなくなるだろう。
以下は、項目だけあげておきます。 
●株価への影響は限定的に

●次の焦点は税制改革、市場は前進好感

●市場反応前向き、道筋明確化に期待
今回の件は、市場関係者らはあまり大きな影響があるとは思っていないようです。しかし、どうしてこのようなことが言えるのでしょうか。それは、市場関係者などなら当然知っているというか常識的なことで、日本では意外と知られいないことがあります。本日はそれについて掲載します。

まずは第一点目として、アメリカの政治は二大政党制であり、今回のように政権交代があったとき、前政権と現政権の政治があまりにも異なった場合、とてつもなく混乱することになります。そのような混乱を避けるため、アメリカの政治では継続性の原則が貫かれています。


継続性の原則とは、たとえ政権交代したとしても、現政権は前政権の政策を6割〜7割は引き継ぎ、後の4割から3割で、新政権の色を出すというような政治手法のことをいいます。

この継続性の原則から、オバマケアはオバマ政権の最重要政策であり、これが政治の継続性の原則から、たとえ政権交代したとても、そのまま引き継がれるのは、不自然なことではありません。むしろ、オバマケアに賛成した人々も多数存在したことから、政権交代したからといつて、すぐに廃止されたのでは、いたずらに混乱を助長することになったかもしれません。

当面は、オバマケアを実施し、はっきりと不都合なことが起こった場合、再度国民に十分に説明をしてコンセンサスを得た上で、オバマケアの改廃案を議会に諮るというというようにしたほうが、混乱を避けることができると思います。

第二点目としては、米大統領は平時には、世界最弱の権力者であるという事実です。この事実は以前から米国内では周知の事実であり、そのため今回のように議会の反対にあって、欠局オバマケア代替法案を撤回せざるをえなくなっても、それですぐに、支持者から統治能力不足などと認識されるわけではありません。

米国の大統領は平時には、世界最弱の権力者であることについては以前このブログでも何度か掲載しました。その記事の一つのリンクを以下に掲載します。
米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声―【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
では米国の大統領は、あらゆる権力を行使できる万能のリーダーなのかというとそうではありません。米国は、厳格な三権分立制度を採用しており、行政、立法、司法の権限が完全に分離しています。行政府の長である大統領は選挙によって国民から選ばれますから、議会に対して責任を負うことなく大統領としての職務を遂行できます。しかし、立法に関する権限は一切持っておらず、大統領は議会が作った法律に従って行政権を行使するしかありません(拒否権を発動することは可能)。 
これに対して日本や英国は議院内閣制を採用しており、首相は国会議員の中から選ばれ、内閣は国会に対して責任を負っています。日本の場合には毎年の予算について、行政府が予算案を提出し、議会はそれを審議するという立場ですが、米国の場合、行政府に予算の提出権はありません。大統領は予算教書という形で要望を議会に告げるだけで、実際の予算に関する権限は議会が握っています。 
また、戦争を遂行する権利も実は大統領は保有していません。米国の大統領は軍隊の最高指揮官ですが、宣戦布告を行う権利は議会に付与されており、大統領が戦争を遂行するには、議会からの「授権」が必要です。このように米国では、三権分立が明確になされてまいす。 
残念なことに、我が国では小学校から大学まで、三権分立が近代法治国家に共通する普遍的な憲法上の原理」であるかのように教えています。それは間違った常識です。
三権分立とは、モンテスキューというフランスの哲学者が、ジョージ3世(在位1760~1820年)時代のイギリスを「おお、三権分立だ、すばらしい!」と勘違いして発明してしまった概念です。
モンテスキュー
本人は「発見」したと思い込んでいましたが、それはモンテスキューの頭の中で作り上げられた妄想に過ぎませんでした。 
三権分立をまともに実行してしまっている国は、世界の文明国の中でアメリカ合衆国ただ1国です。そうして、いつまでたってもモンテスキューの母国でもあるフランスを含む、他の文明国がアメリカの真似をしないのは、三権分立が欠陥制度だからです。 
そうして、アメリカ大統領は「世界“最弱”の権力者」とも言われています。アメリカ大統領が最弱、特に平時には最弱であることは世界の比較憲法学の常識です。ただし、議会が戦争をすることを受け入れた場合には、戦争を遂行するために権限が大統領に集中するようになっています。 
そのため、日本などでは多くの人が戦争時の米国大統領のように、平時でも大統領に強力な権限が集中していると考えるのだと思います。でも現実は違います。米国大統領は、平時には世界で最弱の権力者なのです。ただし、これは米国自体の国力などとは別問題です。あくまで、米国の大統領は、他国と権力者と比較すれば、相対的に権力が弱いということです。
以上のように、モンテスキューの妄想である、三権分立を現在でも信奉してその通りにしている米国では大統領は平時においては、世界最弱権力者なのです。そうして、このような米国でも、平時において最も権力が強いのは司法だといわれています。このような仕組みは、一見良いことばかりのように見えますが、その実平時における変革期などには、足かせになることも多いです。

さらに第三点目としては、米国では大統領選挙の公約をそれも重点公約を全部実行しなくても、さほど避難されることもないという事実があるからです。

たとえば、TPPですが、トランプ氏はTPPを離脱することを公約にあげました。そうして、それを実行しました。しかし、たとえこれを実行しなかったとしても、あまり問題にはならなかったたでしょう。

なぜなら、過去に大統領選においてFTAやEPAに関して、大統領選のときには反対の意思を表明しておきながら、大統領になったらこれを批准した大統領などいくらでも存在するからです。実際、アメリカの大統領選挙の公約は守られないことが、しばしばありますし。だからといって、大きな問題になったこともありません。

以上の三点から、もともと米国では政権交代をしたからといって、極端に変わるということはないのです。もし、政権交代するたびに極端に変わってしまったら、確かに国内は混乱してしまうでしょう。

今回オバマケア代替法案は撤回されましたが、もともと米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではないので、これだけをもって、トランプ大統領の統治能力が低いとみなすことはできません。また、これは多くの米国民が知っていることです。

そうして、今後はどうなるかといえば、外交や安全保証については、オバマ氏が大統領就任中には、失敗に失敗を重ねてきたことはあまりに明白なので、議会側もあの大失敗を繰り返さないためにも、トランプ大統領に賛成する率が高いです。

オバマ氏の八年間の変化
さらに、オバマの経済対策については、確かに金融政策は成功しましたが、それでも国民の不満はつのり、これは最悪期からの回復が均等に起こらなかったことと関係ありそうです。暴落した株式や不動産の急回復で富裕層の資産価値や所得は大きく好転しました。半面、多数の一般の人々は、V字回復から取り残されました。求職活動そのものをあきらめてしまった人、二度と持ち家に住めなくなった人も少なくありません。

オバマ氏自身、さよなら演説で認めたように、回復から取り残された人々は、政府は強者しか相手にしない、と不信感を募らせたのでしょう。

そのため、議会も経済面においてもトランプ大統領に期待するところが大きいと思います。特に減税には、大きな期待を寄せているようですから、きっとこの政策には賛同すると思います。

以上から考えれば、オバマケア代替法案の撤回をもって、トランプ大統領の統治能力不足を懸念するには、全くあたらないと思います。もっと長い目で見る必要があります。

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2013年12月16日月曜日

【ドラッカー】人間関係というものは全体への貢献と仕事への貢献を中心に置くことで一変する―【私の論評】現代の政治家・官僚も自分がしうる最大の貢献は、何かを問いつづけることが最重要!しかし、根本的には政治制度改革が必要不可欠(゚д゚)!


仕事の哲学 (ドラッカー名言集)

 「人間関係の能力をもつことによって、良い人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や他との関係において、貢献を重視することによって、良い人間関係はもてる。そのようにして、人間関係は生産的となる。生産的であることが、良い人間関係の唯一の定義である」(ドラッカー名言集『仕事の哲学』) 
人間関係に悩む若者が増えたせいか、人間関係についてのハウツーが、多く書かれ、多く読まれています。しかし、人間関係の根本は人間関係のスキルによって左右されるのではありません。 
もちろん、潤滑油としての礼儀作法は重要です。しかし、真の人間関係は、スキルを超えたところにあります。とはいえ、高邁な思索の世界にあるわけでもありません。 
ありがたいことに、人間関係は、仕事の場において、全体への貢献と人の仕事への貢献を中心に置くだけのことで、がらりと一変します。あらゆる関係が、前向きの生産的なものに変わります。 
ドラッカーは、「仕事上の成果がなければ、温かな会話や感情も無意味である。貧しい関係の取り繕いにすぎない。逆に、関係者全員に成果をもたらす関係であれば、失礼な言葉があっても人間関係を壊すことはない」と言います。 
しかも、「成果をあげる秘訣とは、ともに働く人たち、自らの仕事に不可欠な人たちを理解し、その強み、仕事のやり方、価値観を活用することである。仕事は、仕事の論理だけではなく、ともに働く人たちの仕事ぶりに依存するからである」。 
さらには、逆に、自らの強み、仕事のやり方、価値観、果たすべき貢献を知ったうえで、それを誰に知らせるかを考えなければならないということです。 
組織内の摩擦のほとんどは、互いに、相手の仕事、仕事のやり方、重視していること、目指していることを知らないことに起因する。つまり、問題は、互いに聞きもせず、知らされもしないことにあるといいます。 
「果たすべき貢献を考えることによって、横へのコミュニケーションが可能となり、チームワークが可能となる。自らの生み出すものが成果に結び付くには、誰にそれを利用してもらうべきかとの問いが、命令系統の上でも下でもない人たちの大切さを浮き彫りにする」(『仕事の哲学』)
【私の論評】現代の政治家・官僚も自分がしうる最大の貢献は、何かを問いつづけることが最重要!しかし、根本的には政治制度改革が必要不可欠(゚д゚)!

本日は久々にドラッカーの話題です。過去においては、このブログではドラッカーの書籍に関する話題を頻繁に紹介してきましたが、最近はめっきり減ったので、本日はこの話題にしました。

在りし日のドラッカー氏とドリス夫人の、食卓の風景

上の記事で、ドラッカーは人間関係は、全体への貢献と仕事への貢献を中心に置くことで一変すると語っています。まさしく、これは本当です。これになし、いくら人間関係をつくろおうとしても、結局ほころびるだけです。

ドラッカーは、この「貢献」というキーワードで様々な経営上の課題や原理・原則を明らかにしています。

貢献を考えることによって個人も組織も成長するとして、ドラッカーは自らの著作の中で以下のように語っています。
  成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に据える。(ドラッカー名著集『経営者の条件』) 
ドラッカー名著集1 経営者の条件

自らの果たすべき貢献を考える者は、部下が果たすべき貢献についても考えるようになります。あなたに期待できることは何かと聞きます。こうして本当のコミュニケーションが行なわれるようになります。

しかも、貢献に焦点を合わせることによって、横へのコミュニケーション、すなわちチームワークが可能になります。

加えて、最も重要な貢献は何かを自問することは、いかなる自己啓発が必要か、いかなる能力が必要かを考えることにつながります。

そして、貢献に焦点を合わせるならば、部下、同僚、上司を問わず、人の自己啓発を触発することになります。仕事のニーズに根ざした基準を設定することになります。すなわち卓越性を要求するようになります。

こうしてドラッカーは、貢献に焦点を合わせることによって、コミュニケーション、チームワーク、自己啓発、人材育成という、成果を上げるうえで必要な四つの基本条件を満たすことができるといいます。

私たちは、人についても組織についても多くを知りません。しかし、人にせよ組織にせよ、果たすべき貢献を考えることによって成長することは知っています。
自らに少ししか求めなければ成長しない。多くを求めるならば何も達成しない者と同じ努力で巨人に成長する。(『経営者の条件』)
ドラッカーは、さらに他の著書では、「貢献すべきは貢献したいことではない 貢献すべきことであると述べています。
 自らの果たすべき貢献を考えることが、知識から行動への起点となる。問題は、何に貢献したいかではない。何に貢献せよと言われたかでもない。何に貢献すべきかである。(『明日を支配するもの』)
ドラッカーは、このようなことが問題になるようになったこと自体が歴史上初めてのことだといいます。過去においては、長いあいだ、貢献すべきことは、自分以外のなにかによって決められていました。自ら考えることや悩むことではありませんでた。農民は土地と季節で決められていました。職人は仕事で決められていました。家事使用人はご主人の意向で決められていました。

ところが、知識労働者が仕事の主役となるや、彼らに何を貢献させるかが重大な問題になりました。そこで、人事部が組織され、それを考えることになりました。

しかし、人事部全盛の時代は、驚くほど短かいものとなりました。いかなる手法を開発しようとも、人事部なる世話役がやり切れることではないことが明らかになのました。そこで早くも1960年代には、知識労働者の場合、何を貢献するかは自分で考えよということになりました。好きなことをさせることが、最も進んだ方法とされました。

もちろん、好きなことをさせてもらうことによって、成果を上げ、併せて自己実現したという者はそれほど多くはありませんでした。

何を貢献するかを本人に考えさせることは正しかったのです。しかし、考えるべきは、何をしたいかではありませんでした。自らの貢献は何でなければならないか、でした。

世界最強の大国・米国の大統領さえ、したいことではなく、しなければならないことをしなければならないのです。

トルーマン大統領は、ルーズベルト大統領のあと、国内問題に取り組むつもりでした。しかし、ポツダム会議で旧ソ連のスターリンとやり合った後、戦後の問題は国際関係であることを痛感させられました。そして、大急ぎで外交に力を入れて戦後世界に平和をもたらしました。

これに対し、ジョンソン大統領は、ベトナム戦争を抱えつつ、国内問題から離れられませんでした。
 自らの果たすべき貢献は何かという問いに答えを出すためには、三つのことを考える必要がある。第一に、状況が求めるものである。第二に、価値ありとするものである。第三に、あげるべき成果である。(『明日を支配するもの』)
明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命

以上のことから、現代組織においてはいかに「貢献」について考えるかが、本当に重要になったかがわかります。

上記の例では、トルーマンやジョンソンの大統領の例がでていました。これは、いかに最高権力や、それに近い人間が、「貢献」について考えなければならないかを明確に示しています。自らの最大の貢献は何かについて考えない政治家や官僚など存在価値はないのだと思います。

特に、官僚などが、自らの貢献を省益などと考えて仕事をすれば、とんでもないことになるのだと思います。やはり、彼らは国民のためにできる最大の貢献を第一義として動かなければならず、それを忘れたとき全く成果を挙げられない存在になるということです。

政治家についても、無論、国家というものを第一義として、その上で自分のできる最大の貢献は何なのかを考えて行動しなければならないということです。その姿勢を失えば、堕落の道に陥ることになります。

自分の最大の貢献ができることは何なのかを日々考え続けて、実行することが政治家や官僚の本当の使命です。

しかし、現在のように政治家や官僚がなかなかその使命をまっとうできない現在、それも似たような失敗が一度ならず、何度も繰り返されるような現在、何かが間違っています。

これについても、ドラッカーは民営化だけでは間に合わないほど政府の病は重いということを著書に書いています。
先進国の政府のうち、今日まともに機能しているものは1つもない。米、英、仏、独、日のいずれにおいても、国民は政府を尊敬していない。信頼もしていない」(『ネクスト・ソサエティ』)
ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる

あらゆる国で問題が発生し、その解決に政治家のリーダーシップを求める声が聞かれています。しかし、それは間違った声なのです。問題が起こっているのは、人に問題があるからではありません。ドラッカーは「システムに問題が生じたのだ」としています。

今日の政府は400年前にかたちができました。16世紀末に登場した国民国家とその政府は、当時最高のイノベーションでした。事実、このかたちは200年で世界中に広まりました。

ところが19世紀の後半、社会の力によって社会を救うという何種類かのイズムが広がり、揚げ句の果てに、政府は万能だということにされてしまいました。その典型がソ連の国民の面倒は何から何まで政府が面倒をみるという社会主義でした。

しかし政府には、できることとできないことがあります。特に現場の仕事が恐ろしく苦手です。

1969年、「再民間化」のコンセプトの下に、政府現業部門の民営化を最初に唱えたのが、ドラッカでした。これを英国の保守党がドラッカー教授の提案と断ったうえで、政策綱領に織り込みました。

それから40数年。いまや現業の切り離しや民営化だけでは間に合わないほどに、政府の病は重いです。
今後25年間、イノベーションと起業家精神が最も必要とされるのが政府である」(『ネクスト・ソサエティ』)
日本の政府や政治システムも、明治維新のときに西欧のものを取り入れたものです。確かにこの方式は当時はすぐれていたのですが、今や機能していません。

人が変れば、政治は変るというという幻想は、他国ではもう数十年も前から間違いであることが認識されていましたが、日本で本格的に認識されたのは、民主党政権の誕生とその崩壊後でした。これにより、日本国民も他の先進国並みに、人さえ変れば、政治が変るなどという幻想は誰も信じなくなりました。

民主党の唯一の貢献は、人さえ変われば政治が変わるとい
うのは、幻想にすぎないことを多くの人々に認識させたこと?

まさしく、日本でも、今後イノベーションと起業家精神が最も必要とされるは、政府だということです。この分野こし、システム改革が最重要なのです。そうして、この分野は、1年~2年でなんともなるものではありません。それこそ、ドラッカーが語っているように、25年くらいは時間をかけて、じっくりと、根本的に変えていく必要があります。

ドラッカー氏は、一般に経営学の大家だと考えられていますが、企業だけにおよばず、あらゆる組織の経営に関して、非常に役に立つ論考をされています。企業経営者にだけ、読ませるというのは勿体無いです。政治家や官僚の皆さんにも読んで、理解していただきたいです。私は、そこから、本当の意味での政治改革の発想が生まれてくるのではないかと期待しています。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2012年12月22日土曜日

願わくは1ドル=120円の円安政策、首相再登板の安倍氏に期待−【私の論評】総選挙のずっと前から自民党を非難しつづけ今後も煽り続けるマスコミは、世界最低の非常識で、次世代には生き残れない!!

願わくは1ドル=120円の円安政策、首相再登板の安倍氏に期待

ブルームバーク本社内

12月21日(ブルームバーグ):自民党の安倍晋三総裁が前回首相の座にあった5年余り前よりも日本経済は約10%縮小した。円相場の急騰で製造業の空洞化が進んだからだ。安倍氏が12月26日の特別国会で首相の座に返り咲く見通しとなったことは、輸出業者にとって円高の打撃を抑える絶好のチャンスとなる可能性がある。

安倍総裁が日銀に無制限の流動性供給を要請したことから、円相場は11月半ば以降、ドルに対して約5%下落した。選挙前の世論調査でリードしていた自民党は今月16日の衆院選挙で圧勝した。21日の円相場は84円前後だが、先物トレーダーの間では円の下落を見込むポジション(持ち高)が120円付近にあった2007年7月以来の高水準に達している。

・・・・・・・<中略 >・・・・・・・

11月の貿易赤字は過去3番目の規模で、同月の輸出は中国や欧州連合(EU)の需要の弱さが響き6カ月連続の減少だった。

バークレイズ銀行チーフFXストラテジストの山本雅文氏は「円高の期間は終わった」として円売りを勧める考えを示した。

この記事の詳細は、こちらから!!

【私の論評】総選挙のずっと前から自民党を非難しつづけ今後も煽り続けるマスコミは、世界最低の非常識で、次世代には生き残れない!!

上のブルームバーグの記事、淡々として事実を語っています。そうして、タイトルも『首相再登板の安倍氏に期待』として、期待感を前面に打ち出しています。ブルームバーグといえば、ソロモン・ブラザーズの元幹部で、現在のニューヨーク市長であるマイケル・ブルームバーグ(以下「マイケル」)が1980年代に設立しました。当初は債券取引の情報を専用端末に配信するサービスを提供していましたが、その後、通信社をはじめ、テレビ、ラジオ、雑誌などメディア事業を展開。世界に185の拠点を持ち、社員数は約1万3000人。東京支局でも記者100人超える、社員約600名を抱えて、事業を展開しています。

ブルームバーグの端末
ブルームバーグが提供しているサービスで最も普及しているのは独自アプリケーションを用いた情報端末です。どこからでもインターネット接続があれば利用できる「ブルームバーグ・エニウェア」と主に社内利用用の固定端末の「ブルームバーグ・プロフェッショナル」サービスがあります。一部にバグなどの問題の指摘もありますが、常にユーザーのフィードバックを元に新しい機能や改良などが頻繁に行われサービス向上に努めています。ロイターのシェアを過去十年以上に渡って奪い続けていることからも、企業戦略としては成功を収めていることがわかります。

ブルームバークのテレビの女子アナ
ブルームバーグの報道は、あまり偏向していないので、定評があります。アメリカでも、比較的偏向が少ないです。その姿勢は、日本のブルームバーグにも引き継がれているようで、偏向は少ないようです。ただし、アメリカの国益を重視していると思いますが、それは、アメリカの会社として当然と思いますし、一定の許容の範囲の中に収まっているようなので、安心して読むことができます。

この報道姿勢は、上の記事でも発揮されています。淡々と安部政権への期待を掲載するとともに、他者の見方を掲載しているだけです。選挙で大勝したとしても、まだ発足もしていない政権に対する報道としては、これで十分だと思います。

ブルームバーグ 女子アナ
これと比較すると、日本のメディアは、選挙前から安部総裁叩きを実施していました。これについては、このブログにも何回か掲載しました。自民が圧勝した選挙後もすでに安部たたき、自民党たたきが始まっています。これに関しては、最近も以下のような記事がありました。

「将来が怖い」と不安がる声が続々自民党政権誕生に脅える人々の叫び

この記事の内容は、私からいわせると、問題外です。今のままだと、確実に将来が不安だからこそ、安部自民党政権は、まずは経済を良くしようということで、これに関しても公約に掲げているのです。やりも、しないうちから、不安を煽る完璧な、コミンテルン的な記事です。

「竹島の日」式典を見送り 安倍自民、日韓関係改善に現実路線

これも、産経新聞はもとより、大手新聞各社が、報道したものです。これに関しては、自民党のFBページで以下のような声明が発表されています。


さて、上の記事などで驚いていては、まだまだ生ぬるいです。新聞などのマスコミは、民主党がも次の選挙では、大敗することが明らかになった今年4月の時点ですでに、自民党叩きを実施しています。


公 開日: 2012/04/11

上の動画は、sakurasoTVのものです。これも消費増税実現の為なのであろうか?読売新聞は自民党が発表した公約原案の一部を切り取って報じ、与党に協力しない自民党の姿勢を厳しく批判しました。しかしながら、読売新聞に限らず、新聞各紙は公約原案の全体像を報じぬままに批判に終始していました。上の動画では改めて三橋貴明から自民党公約原案の全体像を御説明しながら、新聞報道の問題点を明らかにしていました。

私は、民主党が政権交代をしたときには、はなから民主党は何もできないだろうし、ますます日本の国が悪くなるだろうと最初から確信していましたが、このブログ記事ではすぐには、民主党政権批判はしませんでした。なぜなら、発足したばかりのときに何か悪いことがあったとしても、それは、前政権の不手際によるものであるかもしれないからです。このことは、このブログにも二大政党制に関して何回か述べたことがあります。その最新のものにつき、以下にURLを掲載します。

【きょうの名言】スポーツのいいところ−【私の論評】日本人は、自分の国の「身の丈」を知らなすぎる!!韓国も、中国も!!

なぜ、こんなことを言えたかというと、過去の私のブログにも書いたように、イギリスやアメリカなどの二大政党制をみれば、わかりきっていました。 最近では、両国とも結構せっかちになりましたが、かつては、これらの国々では、政権交代しても、すぐに前政権のやってきたことをすぐに改めることはなく、政権をとってから、半年くらいで徐々に変え、1年経過してから本格的に変えるというのが当たり前でした。その間、マスコミも、現政権のことをあまり批判しませんでした。なぜなら、その時の政治が悪くで問題がおこったとしても、それは、現政権に問題があるのではなく、前の政権に問題があったかもしれないかです。
それに、極めつけは、二大政党のこれらの国では、かつては、政権交代したとしても、現政権と前の政権との違いは、わずか、3割から多くても、4割くらいなもので、あとの7割から6割はほぼ同じでした。このようにして、政権が交代したとしても、いきなり政策が180度転換することもなく、政治の継続性を図っていたのです。
民主党は、こんなことを知ってか知らずが、最初から自民党政権との違いを鮮明にうちだし、どんどん突き進んで、失敗を繰り返し、今日に至っています。まさに、「身の丈知らず」の所業だったと思います。政治家といえば、ある程度以上年齢がいっているのが、普通ですから、現在の若者が、「身の丈知らず」であっても、仕方ない面もあると思います。
とにかく、政権交代したとしても、二大政党制の場合は、政権交代直後はしばらくは、マスコミは政府を批判しないということが世界の常識です。 米英では、この期間を結婚になぞらえて、ハニームーンと称したりします。できれば、半年くらいは、ハニームーン期間が欲しいものです。少なくとも100日くらいは、その期間を設けるべきでしょう。

それにしても、民主党が政権交代をしたときは、しばらくは、マスコミも批判はしていなかったと思いますし。かなり批判するようになったのは、鳩山さんの普天間基地移設問題あたりからだったと思います。自民党は、確かに政権与党の時代が長かったですが、それにしても、空白期間が3年もあるわけですから、この間に民主党の度重なる不手際がたくさんありました。この不手際まで、自民党のせいにされてはたまったものではありません。


自民党に対しては、マスコミは、最初から批判の大合唱で進む腹のようです。しかし、これは、世界の常識からみれば全くの世界最低の非常識であると思います。このような非常識、このブログでも、これからもどんどん摘発していきます。

さて、上で述べたように、ブルームバーグは、比較的まともな報道姿勢で、ロイターのシェアを過去十年以上に渡って奪い続けていることからも、企業戦略としては成功を収めていることがわかります。日本のマスコミのように明らかに日本弱体化という姿勢で偏向報道を行うような機関は、ブルームバーグのような存在がでてきたら、あっという間に駆逐されてしまうと思います。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?



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http://www.epochtimes.jp/jp/2008/06/img/m71935.jpg

2012年7月14日土曜日

北ミサイル発射に米「迎撃は本国防衛のみ」と通告―【私の論評】集団的自衛権 当たり前のこと決断急げ!!

北ミサイル発射に米「迎撃は本国防衛のみ」と通告


北朝鮮が4月に長距離弾道ミサイルを発射した際の米軍の迎撃態勢と日米の情報共有の全容が13日、分かった。米海軍は7隻のイージス艦を展開させ、大半が海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載。うち1隻を北朝鮮に最も近い黄海に配置したのは日本側の要請だった。米政府は発射前の協議で日本側に「ミサイルを迎撃するのは米国の防衛目的に限る(ブログ管理人強調」との対処方針も通告してきていた。

米イージス艦の配置は黄海=1隻▽日本海=2隻▽鹿児島県沖=1隻▽太平洋=1隻▽フィリピン沖=2隻-の計7隻。海上自衛隊はイージス艦を沖縄周辺に2隻、日本海に1隻展開させた。


海自のイージス艦はミサイル本体やブースター(推進エンジン)が日本領土・領海に落下する場合の迎撃を優先させ、北朝鮮から離れた海域に配置した。これにより、水平線を超えてこないとミサイルを探知できない弱点を抱えた。

このため日米共同作戦の中枢となっている「自衛艦隊司令部」(神奈川県横須賀市)は事前の協議で、米海軍に黄海への米イージス艦の配置を要請。米側はこれを受け入れ、横須賀基地を母港とするイージス艦「カーチス・ウィルバー」を黄海に前方展開させた。

北朝鮮がミサイルを発射した際、発射の熱源を捉えた米軍の早期警戒衛星情報(SEW)に加え、カーチス・ウィルバーが探知したとみられる航跡情報はデータリンクで海自側に提供された。


【私の論評】集団的自衛権 当たり前のこと決断急げ!!

上のニュースで、「ミサイルを迎撃するのは米国の防衛目的に限る」との米側の対処方針は米国のホンネを表すものだと思います。実際北朝鮮のミサイル発射が失敗しなければ、実際に発射した可能性も十分あったと思います。特に、今回は、長距離でアメリカに到達する可能性もありました。日本は、集団的自衛権がそんざいしないなどという愚かな法解釈があるため、もし、アメリカのイージス艦が撃ち落としに失敗しても、ミサイルの到達地点が、アメリカである場合は厳密には日本のイージス艦がこれを撃ち落とすわけにはいきません。こういう背景もあるので、先のアメリカの対処方針の背景ともなっているものと推察します。


本日は、産経ニュースには、関連記事で以下のようなものも掲載されていました。
北朝鮮の弾道ミサイル発射で米海軍がイージス艦を7隻展開させたことは、北朝鮮によるミサイルの長射程化と搭載可能な核兵器小型化に対する危機感の表れだ。黄海への配置で日本の要請に応じる一方、「米国防衛」に限り迎撃するとの対処方針は、日本防衛を目的にした迎撃の見送りを意味する。ミサイル発射から3カ月たち集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更が急務であることが浮き彫りになった。
■中国の網の中
「黄海に入ることはリスクを伴う」。政府高官は米イージス艦の黄海への配置をそう振り返る。中国大陸と朝鮮半島の間にある黄海に展開すれば、中国の情報収集網にさらされてしまう。北朝鮮が2009年4月に弾道ミサイルを発射した際には、発射場所は北東部の咸鏡北道舞水端里だったため、黄海には展開しなかった。
今回のミサイル発射時、中国海軍艦艇などは偵察活動を活発化した。米イージス艦レーダーの電波の周波数帯や照射方法、探索パターンを確認しようとしたとみられる。周波数帯を把握されれば、中国の弾道ミサイルにも対処する米軍のミサイル防衛(MD)が無力化される恐れもある。
それでも中国国境に近い北西部の「西海衛星発射場」と称する新基地が初めて使われたこともあり、ミサイルをいち早く探知し、迎撃態勢に入るために黄海配置が決まった。イージス艦はミサイル発射から約1分後に1段目を分離した後に航跡が途絶えたことを確認した。
黄海で演習中の米空母とイージス艦
集団的自衛権の、自衛権(じえいけん)とは、急迫不正の侵害を排除するために、武力をもって必要な行為を行う国際法上の権利です。国内法上の正当防衛権に対比されます。他国に対する侵害を排除するための行為を行う権利を集団的自衛権といい、自国に対する侵害を排除するための行為を行う権利である個別的自衛権と区別します。

さて、本日は、この集団的自衛権自衛権について、同じ産経新聞で以下のような報道もされていました。

フロンティア分科会で発言する野田首相
保有してはいるが、憲法上、行使はできないとされている集団的自衛権の扱いについて、政府の国家戦略会議の「フロンティア分科会」が、報告書で「全く異なる時代状況下で設けられた政治的・法的制約を見直す」とし、行使を容認する必要性を提起した。
野田佳彦首相は、9日の衆院予算委員会で「提言も踏まえながら政府内での議論も詰めていきたい」と語った。 
自民党政権時代から「権利は保有しているが行使できない」という憲法解釈は変更されぬままで、日本の安全保障の大きな足かせになってきた。日米安保体制についても、集団的自衛権を行使することで、初めて両国が対等な相互防衛体制を確立できる。 
それだけに野田政権による行使容認の提起を高く評価したい。 
安倍晋三政権下で設けられた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が平成20年にまとめた報告書は、米国を狙った弾道ミサイルの迎撃などの具体例を挙げて政府に実現を求めた。 
自衛隊が日本を狙った北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とすことはできても、米国を狙ったミサイルの迎撃は、集団的自衛権の行使にあたるため認められないという憲法解釈があるためだ。 
日米が共同行動中に攻撃された米軍艦船を防護し、反撃することも現行の解釈ではできない。
この集団的自衛権に対して、かつて小泉首相は、「日米が一緒に行動していて、米軍が攻撃を受けた場合、日本がなにもしないということが果たして本当にできるのか」といい、集団的自衛権の行使について検討すると表明していました。この発言に示されるように、集団的自衛権の行使とは、日本が外国から侵略や攻撃を受けたときの「自衛」の話だけではなく、軍事同盟を結んでいる相手の国が戦争をする時に共同で戦争行為に参加することです。

小泉首相とブッシュ大統領
憲法九条は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定しています。そのため政府も、集団的自衛権の行使は憲法上許されないとのべてきました。

平成の幕開けを伝えた在りし日の小渕氏
一九九九年、小渕内閣の時、アメリカの軍事介入に自衛隊を参加させるガイドライン法=戦争法が作られました。しかし同法も憲法九条があるため、自衛隊の活動は「後方地域支援」に限るとされています。この制約を取り払い、自衛隊が海外で米軍と共同で武力行使ができるようにしたいというのが、いまの集団的自衛権論のねらいであり、実際、この議論は、九条の明文改憲論と一体のものとして出されています。

首相らの集団的自衛権発言の背景には、憲法上の制約をとり払って自衛隊が米軍の軍事力行使に共同で参加できるように集団的自衛権を採用すべきだというアメリカの圧力があります。これまでアメリカは、「自国の死活的な利益」を守るため、必要な場合、一方的な軍事力行使をすることを公式の戦略にし、九九年のユーゴ空爆をはじめ、一方的な武力行使をくり返してきました。集団的自衛権の行使は、無法なアメリカの侵略と武力干渉に日本が共同して参加するという危険な「集団的軍事介入」の道を開く可能性もあります。というようなことを盾にとって、集団的自衛権自衛権は、絶対に認めるべきではないという左翼系の人も多いです。

実際、本日は、以下のようなニュースもありました。(しんぶん赤旗)
すでに首相は、オバマ大統領との日米首脳会談(5月1日)の共同声明で、日米軍事同盟を地球規模に拡大することを公言し、「動的防衛協力」の名で、米軍と自衛隊が海外で共同した軍事活動を行うことを宣言しています。 
志位氏はこうした経過にふれ、「日本再生戦略に集団的自衛権行使の容認が盛り込まれれば、『アメリカとともに海外で戦争をする国』への重大な一歩が踏み出されることになる」と指摘。「『憲法第9条のもとでは集団的自衛権の行使は許されない』という従来の政府見解をも踏み越え、憲法に真っ向から背く道だ」と批判しました。
しかしながら、戦争行為には、上記の北朝鮮のミサイルのような事例もあります。アメリカ軍と、共同軍事行動をとっている自衛隊がアメリカが攻撃を受けたとしても、集団的集団的であるのか、個別であるのか、区別がつきにくい状況はいくらでもあります。

「集団的軍事介入」ではない、集団的自衛権行為とは、現実にいくらでもありうることで、もし、これができない場合は、アメリカ軍と共同軍事行動をしていた自衛隊員が、攻撃を受けた場合全員反撃できず、討ち死にという事態も考えられます。日本に駐留中のアメリカ軍が攻撃を受けた場合、どう解釈すべきでしょうか?攻撃を受けても、アメリカ軍の軍事施設であるから、何もしないなどということができるでしょうか?そんな、愚かなことは断じて許すべきではありません。

射撃でオリンピックに出る小西ゆかりさん 自衛官時代の写真
それに、志位さんをはじめとする、左翼系の方々にお伺いしたいのですが、ソ連をはじめとして、旧社会主義・共産国家のすべてが、軍隊を持っていました。核武装をしていた国もあります。これは、国家として当たり前のことと思います。どうして、日本だけが、戦後一方的にこのブログでも以前掲載したように、馬鹿とスパイの巣窟でっあったGHQに一方的に押し付けられた劣悪な占領地法を未来永劫にわたって、金科玉条のように守らなければならないのでしょうか?

その理由を教えてください。そうして、どうして、日本が核武装してはいけないのでしょうか?日本がかつての、社会主義国家ソ連邦のように、軍隊を持ち、核武装してはいけないのでしょうか?何回な屁理屈でなく、誰にでも納得できるように平易に説明していただたいものです。


それに、私は沖縄に行ったときに、海兵隊の若者と飲んだことがありますが、全員入り立てで、顔つきは、本当にまだ子供っぽく、明るくて、愛嬌があり、こういう人たちが、理屈はどうであれ、日本や外国を守るために命を犠牲にすることもあるのだと思うと、何か割り切れないものを感じました。彼らは、決して殺人マシーンではなく、生身の人間です。皆赤い血が流れているのです。(ちなみに、上の写真映画のスチル写真などではありません。実物のベトナムでの海兵隊員の写真です)集団的自衛権を固くなに主張する人たちは、こういう若者たちと一度でも話をして、酒を酌み交わしたことがあるのでしょうか?その前に、生身の自衛隊隊員や海上保安官などと話をしたり、酒を酌み交わしたことがあるのでしょうか?

女性自衛官
やはり、自分の国は、自分で守るというのが、国民国家の自然なあり方ではないでしょうか?それが、できるように、新憲法を日本人が日本人でつくることにより、上のような一見複雑な集団的自衛権の問題などなくなります。そうすれば、東欧などでは、冷戦構造が終焉下にもかかわらず、アジアには、冷戦構造が手付かずで残っていますが、これも消えます。それは、日本にとって良いことであり、世界にとっても良いことです。

野田政権は、税と社会保障の一体改革なるもので、結局増税への道筋をつけたり、TPPでは自由貿易への道を開いたと思い込みながら、その実不平等条約にすぎないものへの道筋をつけたりで、結局自分では、善行をしているつもりで、日本弱体化への道筋をつけました。しかし、集団的自衛権は、日本の強化に道筋をつけるものです。民主党もう、次がないことは明らかです。民主党の事務方である、旧社会党から横滑りで入った人たちは、とにかく、もう時間があまり残されていない民主党政権の時代に、日本国解体法案などで、とにかく日本国弱体化をはかろうと躍起になっています。


どうか、野田さん、これら事務方の人々が嫌がる、日本国を強化する事柄をどんどん導入してください。もう時があまり残されていない総理大臣任期と、民主党政権のために、自分たちが日本のために努力していたという証のために努力を惜しまず、最後の国民国家へのご奉公に勤しんでください。あなたに残された引き際の、花道はこれしかありません。

間違っても、事務方が大喜びするようなことはせずに、逆に憤怒で、憤死するくらい日本国強化事項をどんどん取り入れたり、道筋をつけて、引き際を壮大な花道で飾ってください。金融や経済は難しくて、財務省や、日銀にさんざんぱら、手のひらで弄ばれ馬鹿にされましたが、安全保障の問題などは、野田さんですら自分でもかなりの程度判断できるほど、今の日本は、異常です。子供が考えても理解できることが、今の日本では実現できないことが多々あります。

そうしていただければ、野田政権への評価も高まると思います。そうすれば、様々な愚行は、帳消しになり、日本国では政権交代をしただけの意義はあったと、後の歴史家が評価することになります。それがなければ、ただのうたかたの泡として消滅し、単なる歴史上の徒花ということで終わってしまいます。こう思うのは、私だけでしょうか。みなさんは、どう思われますか?

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