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2017年3月25日土曜日

【トランプ政権】オバマケア代替法案を撤回 最重要公約、政権に大打撃―【私の論評】元々米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではない(゚д゚)!


オバマケア代替法案の撤回を受けホワイトハウスで対応するトランプ米大統領
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
ライアン米下院議長は24日、本会議での採決を予定していた医療保険制度改革(オバマケア)の改廃法案を撤回すると発表した。可決に必要な賛成票を固められなかったためで、オバマケアは当面存続する。オバマケア改廃は大統領選挙での最重要公約だっただけに、就任早々に大打撃を受けた形だ。

 ライアン氏は24日、記者会見で「残念な日になった」と述べて失望を表明。オバマケアの制度が一部で維持されることに不満を示してきた党内強硬派から十分な賛成を引き出せなかったことを認め、「近い将来はオバマケアは存続する」と述べた。

 一方、トランプ氏もホワイトハウスで記者会見し、保険料が上昇傾向にあるオバマケアは「自壊させておけばいい」と述べ、その責任は民主党にあると強調した。また今後は「税制改革に向かうだろう」とした。

 トランプ氏は選挙戦でオバマケア改廃を最重要公約とし、ビジネスで培った「交渉術」で実現させると宣言。改廃法案発表後はライアン氏のほか、下院議員の経験が長いペンス副大統領やプライス厚生長官らも総動員して票固めに躍起となった。しかし賛成票は可決に必要な216人に10人程度届かなかった模様で、共和党議員237人から多くの造反者が出たようだ。

 改廃法案撤回は就任後に目立った成果を残せていないトランプ氏にとって手痛い失敗。さらに共和党もホワイトハウスと上下両院を握りながら悲願のオバマケア改廃を実現できず、統治能力不足を露呈する結果になった。トランプ氏が思うままに政権を運営できるわけではないことが明らかになった形で、今後、支持層のトランプ離れが進む恐れがある。

【私の論評】元々米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではない(゚д゚)!

オバマケア代替法案は撤回される運びとなりました。オバマケア改廃に関しては、日本ではトランプ大統領が最重要公約としたことと、議会では共和党が僅差とはいえ多数派となっていることから、日本では議会を通るだろうし、通らなければトランプ大統領にとっては、大きな失点でブログ冒頭の記事にもあるとおり、支持層のトランプ離れが進むことを予期した人も多いのではないかと思います。


しかし、私はこれは完璧に間違いであると思っています。まずは、改廃法案の撤回直後の現状はどうなっているのか見てみましょう。

以下にロイターの記事を引用します。
オバマケア代替法案撤回:識者はこうみる
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
●減税など実行可能な案件に着手可能
<ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメント(ボストン)のシニアポートフォリオマネジャー、マーガレット・パテル氏>
市場ではトランプ政権が医療保健問題に完全に手足を縛られ、身動きできなくなるのではないかとの懸念が出ていた。医療保健問題がこうした形でクリアされたことで、規制改革や減税などそれほど複雑ではなく実行可能な案件に着手できると、市場では楽観的な見方が出ているのではないか。
これほど複雑で大きな費用が絡む案件が棚上げにされたことはプラス方向の動きのように見える。今後、減税のようにそれほど難しくない案件に歩を進めることができる。 
●議会はトランプ氏の思い通りには動かず
<DRWトレーディングの市場ストラテジスト、ルー・ブライアン氏>
最も重要なのは、トランプ米大統領と議会の関係に関する見方を変えるという点だ。過去数カ月は、議会はトランプ大統領が求めることは何でもやるといった印象があった。しかし、明らかにこうした状況ではなくなるだろう。
以下は、項目だけあげておきます。 
●株価への影響は限定的に

●次の焦点は税制改革、市場は前進好感

●市場反応前向き、道筋明確化に期待
今回の件は、市場関係者らはあまり大きな影響があるとは思っていないようです。しかし、どうしてこのようなことが言えるのでしょうか。それは、市場関係者などなら当然知っているというか常識的なことで、日本では意外と知られいないことがあります。本日はそれについて掲載します。

まずは第一点目として、アメリカの政治は二大政党制であり、今回のように政権交代があったとき、前政権と現政権の政治があまりにも異なった場合、とてつもなく混乱することになります。そのような混乱を避けるため、アメリカの政治では継続性の原則が貫かれています。


継続性の原則とは、たとえ政権交代したとしても、現政権は前政権の政策を6割〜7割は引き継ぎ、後の4割から3割で、新政権の色を出すというような政治手法のことをいいます。

この継続性の原則から、オバマケアはオバマ政権の最重要政策であり、これが政治の継続性の原則から、たとえ政権交代したとても、そのまま引き継がれるのは、不自然なことではありません。むしろ、オバマケアに賛成した人々も多数存在したことから、政権交代したからといつて、すぐに廃止されたのでは、いたずらに混乱を助長することになったかもしれません。

当面は、オバマケアを実施し、はっきりと不都合なことが起こった場合、再度国民に十分に説明をしてコンセンサスを得た上で、オバマケアの改廃案を議会に諮るというというようにしたほうが、混乱を避けることができると思います。

第二点目としては、米大統領は平時には、世界最弱の権力者であるという事実です。この事実は以前から米国内では周知の事実であり、そのため今回のように議会の反対にあって、欠局オバマケア代替法案を撤回せざるをえなくなっても、それですぐに、支持者から統治能力不足などと認識されるわけではありません。

米国の大統領は平時には、世界最弱の権力者であることについては以前このブログでも何度か掲載しました。その記事の一つのリンクを以下に掲載します。
米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声―【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
では米国の大統領は、あらゆる権力を行使できる万能のリーダーなのかというとそうではありません。米国は、厳格な三権分立制度を採用しており、行政、立法、司法の権限が完全に分離しています。行政府の長である大統領は選挙によって国民から選ばれますから、議会に対して責任を負うことなく大統領としての職務を遂行できます。しかし、立法に関する権限は一切持っておらず、大統領は議会が作った法律に従って行政権を行使するしかありません(拒否権を発動することは可能)。 
これに対して日本や英国は議院内閣制を採用しており、首相は国会議員の中から選ばれ、内閣は国会に対して責任を負っています。日本の場合には毎年の予算について、行政府が予算案を提出し、議会はそれを審議するという立場ですが、米国の場合、行政府に予算の提出権はありません。大統領は予算教書という形で要望を議会に告げるだけで、実際の予算に関する権限は議会が握っています。 
また、戦争を遂行する権利も実は大統領は保有していません。米国の大統領は軍隊の最高指揮官ですが、宣戦布告を行う権利は議会に付与されており、大統領が戦争を遂行するには、議会からの「授権」が必要です。このように米国では、三権分立が明確になされてまいす。 
残念なことに、我が国では小学校から大学まで、三権分立が近代法治国家に共通する普遍的な憲法上の原理」であるかのように教えています。それは間違った常識です。
三権分立とは、モンテスキューというフランスの哲学者が、ジョージ3世(在位1760~1820年)時代のイギリスを「おお、三権分立だ、すばらしい!」と勘違いして発明してしまった概念です。
モンテスキュー
本人は「発見」したと思い込んでいましたが、それはモンテスキューの頭の中で作り上げられた妄想に過ぎませんでした。 
三権分立をまともに実行してしまっている国は、世界の文明国の中でアメリカ合衆国ただ1国です。そうして、いつまでたってもモンテスキューの母国でもあるフランスを含む、他の文明国がアメリカの真似をしないのは、三権分立が欠陥制度だからです。 
そうして、アメリカ大統領は「世界“最弱”の権力者」とも言われています。アメリカ大統領が最弱、特に平時には最弱であることは世界の比較憲法学の常識です。ただし、議会が戦争をすることを受け入れた場合には、戦争を遂行するために権限が大統領に集中するようになっています。 
そのため、日本などでは多くの人が戦争時の米国大統領のように、平時でも大統領に強力な権限が集中していると考えるのだと思います。でも現実は違います。米国大統領は、平時には世界で最弱の権力者なのです。ただし、これは米国自体の国力などとは別問題です。あくまで、米国の大統領は、他国と権力者と比較すれば、相対的に権力が弱いということです。
以上のように、モンテスキューの妄想である、三権分立を現在でも信奉してその通りにしている米国では大統領は平時においては、世界最弱権力者なのです。そうして、このような米国でも、平時において最も権力が強いのは司法だといわれています。このような仕組みは、一見良いことばかりのように見えますが、その実平時における変革期などには、足かせになることも多いです。

さらに第三点目としては、米国では大統領選挙の公約をそれも重点公約を全部実行しなくても、さほど避難されることもないという事実があるからです。

たとえば、TPPですが、トランプ氏はTPPを離脱することを公約にあげました。そうして、それを実行しました。しかし、たとえこれを実行しなかったとしても、あまり問題にはならなかったたでしょう。

なぜなら、過去に大統領選においてFTAやEPAに関して、大統領選のときには反対の意思を表明しておきながら、大統領になったらこれを批准した大統領などいくらでも存在するからです。実際、アメリカの大統領選挙の公約は守られないことが、しばしばありますし。だからといって、大きな問題になったこともありません。

以上の三点から、もともと米国では政権交代をしたからといって、極端に変わるということはないのです。もし、政権交代するたびに極端に変わってしまったら、確かに国内は混乱してしまうでしょう。

今回オバマケア代替法案は撤回されましたが、もともと米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではないので、これだけをもって、トランプ大統領の統治能力が低いとみなすことはできません。また、これは多くの米国民が知っていることです。

そうして、今後はどうなるかといえば、外交や安全保証については、オバマ氏が大統領就任中には、失敗に失敗を重ねてきたことはあまりに明白なので、議会側もあの大失敗を繰り返さないためにも、トランプ大統領に賛成する率が高いです。

オバマ氏の八年間の変化
さらに、オバマの経済対策については、確かに金融政策は成功しましたが、それでも国民の不満はつのり、これは最悪期からの回復が均等に起こらなかったことと関係ありそうです。暴落した株式や不動産の急回復で富裕層の資産価値や所得は大きく好転しました。半面、多数の一般の人々は、V字回復から取り残されました。求職活動そのものをあきらめてしまった人、二度と持ち家に住めなくなった人も少なくありません。

オバマ氏自身、さよなら演説で認めたように、回復から取り残された人々は、政府は強者しか相手にしない、と不信感を募らせたのでしょう。

そのため、議会も経済面においてもトランプ大統領に期待するところが大きいと思います。特に減税には、大きな期待を寄せているようですから、きっとこの政策には賛同すると思います。

以上から考えれば、オバマケア代替法案の撤回をもって、トランプ大統領の統治能力不足を懸念するには、全くあたらないと思います。もっと長い目で見る必要があります。

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