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2020年6月5日金曜日

野党が追及する専門家会議の「議事録未作成」…基準定めたのは民主党政権 意見採用は政治家の役割―【私の論評】専門家の意見を採用する政治家は、本来の意味でのゼネラリスでなければならない(゚д゚)!

野党が追及する専門家会議の「議事録未作成」…基準定めたのは民主党政権 意見採用は政治家の役割だ 

高橋洋一 日本の解き方

立民蓮舫代表




















 新型コロナウイルスの政府専門家会議が議事録を作成していないと報じられた。

 まず、現状がどうなっているのかを見てみよう。新型コロナウイルス感染症対策本部と新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の開催状況、資料、議事概要は、官邸のウェブサイトで公表されている。対策本部は1月30日から5月25日まで36回開催され、専門家会議は2月16日から5月29日まで15回開催されている。

 議事概要について、対策本部は3月1日開催の第16回まで、専門家会議は3月9日開催の第6回までそれぞれ公表されている。なお、対策本部は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき設置され、メンバーは首相を本部長として閣僚である。専門家会議は医学的な見地からの助言を行うために設置され、座長は脇田隆字・国立感染症研究所所長、副座長は尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長などとされ、必要に応じ、その他関係者を出席させるとされている。

 議事概要の公表が遅れていることについて、政府は、各会議の参加者の全員に確認してからでないと公開できないので時間がかかっていると説明している。

 筆者が現役の官僚の時には、秘密保持のために議事概要について手間がかかるやり方をしていた。委員のところに直接に出向き、議事概要のコピーを渡さずに、その場でチェックしてもらっていた。今はどのように行っているのか知らないが、コロナによる外出自粛もあったなかで、確認やチェックに時間がかかったのかもしれない。

 「議事録」と「議事概要」の差は、基本的には発言者を特定するかどうかである。専門家会議で議事録が作成されていないと報道されているが、正確にいえば、発言者が特定されない議事概要が作成されているが、その公表が昨今の事情で遅いということになる。

 ここで問題は、なぜ議事録ではなく議事概要なのかに絞られる。官房長官の記者会見によれば、専門家会議は政策の決定や了解に関わらないので発言者を特定しない議事概要にすることとし、初回会合で委員の了解を得たという。この手続きは、東日本大震災後の2011年4月1日に民主党政権で決定された「行政文書の管理に関するガイドライン」に定められたものだ。

 専門家会議は助言するにすぎないので、発言者が特定されない議事概要の作成とすることで問題はない。一部野党が攻めているようなマスコミ報道であるが、そのうち「ブーメラン」になりはしないか。専門家会議ではいろいろな意見が出ても、それらのうち何を採用するかは、政治家の対策本部の役割だ。

政府は批判を受けて、専門家の了解が得られれば、発言者を一部明示するなどの対応を含めて検討に入ったと報じられている。

 ただ、専門家会議での発言者を特定すると、新元号の制定時にあったように、マスコミの取材攻勢が特定の研究者の研究活動に迷惑になりうることもある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】専門家の意見を採用する政治家は、本来の意味でのゼネラリスでなければならない(゚д゚)!
専門家とは、一体どのような人たちなのでしょう。簡単に言ってしまえば、特定の分野における専門知識を持つ人ということだと思います。
コロナ対策専門家会議

では、専門家と言われる人々の責任とは、どのようなものなのでしょうか。これについては、経営学の大家ドラッカー氏は次のように語っています。
素人は専門家を理解するために努力すべきであるとしたり、専門家はごく少数の専門家仲間と話ができれば十分であるなどとするのは、野卑な傲慢である。大学や研究所の内部においてさえ、残念ながら今日珍しくなくなっているそのような風潮は、彼ら専門家自身を無益な存在とし、彼らの知識を学識から卑しむべき衒学に貶めるものである。
ここでは、知識社会における組織に関してその専門家のあり方を論じてみたいと思います。ドラッカー氏は知識労働のための組織について、以下のように語っています
知識労働のための組織は、今後ますます専門家によって構成されることになる。彼ら専門家は、自らの専門領域については、組織内の誰よりも詳しくなければならない。(『ポスト資本主義社会』)
いまや先進国では、あらゆる組織が、専門家によって構成される知識組織です。

そのため昔と違って、ほとんどの上司が、自分の部下の仕事を知らないのが普通です。そもそも今日の上司には、部下と同じ仕事をした経験がないのです。彼らが若かった頃には、なかったような仕事ばかりです。したがって彼らのうち、部下たる専門家の貢献を評価できるだけの知識を持つ者もいません。

いかなる知識といえども、他の知識よりも上位にあるということはありません。知識の位置づけは、それぞれの知識に特有の優位性ではなく、共通の任務に対する貢献度によって規定されます。


このようにして、現代の組織は、知識の専門家によるフラットな組織です。じつにそれは、同等の者、同僚、僚友による組織なのです。

そしてそのフラットな組織において、彼らの全員が、まさに日常の仕事として、生産手段としての自らの頭脳を用い、組織の命運にかかわる判断と決定を連日行なうのです。

つまり、全員が責任ある意思決定者なのです。

 もっともドラッカーは、自分よりも詳しい者が同じ組織にいるようでは、専門家とはいえないと言います。
現代の組織は、ボスと部下の組織ではない。僚友によるチームである。(『ポスト資本主義社会』)
専門家会議に出ている人たちも、そのような専門家なのです。そうして、知識そのものに関しては、知識自体が重要なのであって、その知識を誰が生み出しのか、ということ自体は重要ではありません。さらに、専門家の知識自体は、他の人はその全貌を理解することはできません。

理解できるなら、そもそも専門家など必要ありません。だからこそ、複数の専門家で話し合い、これが現状では最適であろうということが官邸などの政治家がわかれば、それで良いということになります。

であれば、議事録などなくても、概要があれば良いということになります。


一方官邸の政治家や、他の政治家は、専門家ではないですが、ゼネラリストであることが求めらます。ゼネラリストというと、なんでもできる人と言うイメージがありますが、現代の知識社会においては、それはゼネラリスではなく、何もできない人のことです。

ドラッカー氏によると、ゼネラリストとは「自らの知識を知識の全領域に正しく位置づけられる人」ことであり、そのような人は、ほとんどいないとしています。そういうことができる人か、いずれトップマネジメントになるのです。政治家も本来はそうでなければなりません。

だからこそ、知識社会で働く人々が、自らの仕事の成果を生かしてもらうには、「ほかの人のニーズや方向、限界や認識を知らなければならない」としています。

ドラッカー氏は、「変化はコントロールできない。できるのはその先頭に立つ事だけである」と言っていますが、昨日の専門家(スペシャリスト)は、現代の経営環境では、今日は「無能の人」となるリスクを秘めています。ましてや組織のリーダーにならなければならない人やトップマネジメントは、変化を先回りするぐらいのスピード感が必要としています。

それには、真のゼネラリスト育成に踏み出す努力が欠かせません。専門のない「何でも屋」でなく、「統合力」においてスペシャリティを持ち、スペシャリストを使いこなせるだけの「知識の幅」「論理性」「クリティカル・シンキング」「交渉力」を持った人材の育成には確かに時間が掛か借ります。しかしそれは無意識に、個々の努力に期待していても、偶然を除いてできないことです。意識的な試みは避けて通れないのです。

このようなことを考えると、専門家の意見を採用する政治家は本来の意味でのゼネラリスでなければならず、「議事録がー」と頓珍漢で素っ頓狂な主張をする野党政治家などは、まずはゼルラリストとしての素養を身につけるべきです。

そうして、ゼネラリスになるにしても、政治家もある程度自分の専門分野を持つことが必要です。そのようなことをせずに、国会ではとにかく倒閣のことばかり考え、目先のことで倒閣の材料を探すことばかりに集中したためでしょうが、日本の野党は、日に日に衰弱するばかりです。

野党の存在は、政治の世界には、不可欠なはずです。しかし、今のままでは、無意味な存在になるだけです。そうして、無能な野党に胡座をかくような与党であっては、与党も野党と同じような運命を辿ってしまいます。

与党の政治家も、真の意味でのゼネラリストの素養を身につけるべきです。

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2020年3月12日木曜日

「特措法」改正で野党の微妙な立場 緊急事態宣言に「改憲」への懸念も 民主党時代の法律否定もできず ―【私の論評】安倍総理が主張するように、いますぐ「緊急事態宣言」を出す必要はない(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

左から立憲民主党・枝野幸男代表、福山哲郎幹事長
新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案は最速で13日にも成立する見通しとなっている。今回の新型コロナウイルスを対象に加える法改正によって、何ができるのか。「緊急事態宣言」について懸念する声もあるが、どのような問題があるのだろうか。

 新型インフル特措法は、民主党政権下の2012年に制定された。同法32条により、内閣総理大臣は「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行うものとしている。

 今回の場合でも、安倍晋三首相は「新型コロナウイルス緊急事態宣言」を行うことができるようになる。また、現在、事実上政府より行われている外出自粛要請や興行場、催物等の制限等の要請・指示についても法的根拠となる。生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)も規定されており、マスクに関する政府措置の法的根拠にもなる。

 さらに、政府関係金融機関等による融資が規定され、国や都道府県による費用の負担のほか、損失補償や損害補償等の財政負担についても規定されている。これらは今回の新型コロナウイルスの場合にも適用される。

 ただし、財政措置については、現行法は医療関係に限定されているので、改正法案では学校休校などに伴う補償措置なども盛り込まれるだろう。

 新型インフル特措法は民主党政権で成立したものだが、個人の自由や権利の制限につながる恐れもあることから、日本弁護士連合会や日本ペンクラブは反対していた。当時、野党だった自民党ですら、恣意的な緊急事態宣言への懸念を表していた。

 ところが、今回は攻守所を変えて、与党の自民党が攻めている。興味深いのが、自民党は憲法改正において緊急事態条項を掲げていることだ。緊急事態宣言と緊急事態条項は名称は似ているが、前者は法律事項、後者は憲法事項という違いがある。

 ほとんどの国の憲法には、緊急事態条項がある。ワイマール憲法での緊急事態条項がナチス政権の暴走を招いたとされるドイツでも、戦後ナチス再来を防ぐために、緊急命令権をなしとするなど工夫して緊急事態条項をドイツ連邦共和国基本法(憲法)中に規定した。しかし、今の日本国憲法にはそもそも緊急事態条項がないため、自民党では憲法改正によって盛り込もうとしている。

 もっとも、憲法の範囲内で国民の権利制限が可能となる例として、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法、新型インフルエンザ等対策特別措置法などがある。

 そこで自民党は、憲法の範囲内で緊急事態宣言を行おうとして、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正という「変化球」を投げ込んできた。

 しかし、これは、野党にとっては憲法改正への一里塚に見える。野党としては、憲法改正への機運が盛り上がると困る。かといって、民主党時代の法律を否定もできないという微妙な立場になる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理が主張するように、いますぐ「緊急事態宣言」を出す必要はない(゚д゚)!

新型コロナウイルスの感染拡大に備え「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案は12日、衆院本会議で賛成多数で可決され、衆院を通過しました。自民、公明の与党に加え、立憲民主党、国民民主党などの野党も賛成した。13日の参院本会議で成立する見通しです。

緊急事態宣言といえば、すでに北海道ではだされています。しかし、留意すべきは、北海道の緊急事態宣言には法的根拠がないことです。あくまでも自主的な呼びかけに過ぎず、国民(北海道民)や企業に対する強制力はありません。

一方、法整備が検討されている新型インフルエンザ対策特別措置法の改正案に基づく緊急事態宣言には、強制力があり、その前提の違いを正しく認識する必要があります。すなわち、法律に基づく「緊急事態宣言」では、自粛ではなく強制的な企業活動の縮小・停止、外出の禁止といった事象が発生する可能性があるということになります。

緊急事態宣言の流れを以下に掲載します。


立憲民主党の山尾志桜里衆院議員は12日、同党などでつくる野党統一会派の会合で、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、首相による「緊急事態宣言」を可能とする改正案の採決で反対することを表明しました。同日の衆院本会議で同党は賛成する方針で、山尾氏が造反を宣言した形です。

「緊急事態宣言」をめぐって、野党は、権限行使に一定のハードルを設ける必要があるとして、改正案に「国会による事前承認」(緊急時は事後承認)を明記する修正を求めていました。

ところが、与野党の断続的な協議を経て、立憲や国民民主党は改正案の付帯決議に「国会に事前に報告する」という文言を盛り込むことで妥協。党としては、賛成に回ることを決めました。

 立憲執行部の内実を暴露する山尾議員。指摘された安住国対委員長は背後からニラミつけた。
 =12日12時45分頃、衆院第4控室
この、「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案は明日にも成立しそうですが、成立したからといってすぐに「緊急事態宣言」が出されることはないでしょう。

なぜなら、このブログでも昨日示したように、日本はどう考えてみても現時点で深刻な感染国とはいえないからです。

その記事のリンクを以下に掲載します。
イタリア 感染者が1万人超える 新型コロナウイルス―【私の論評】日本は感染国ではない!見通しを示さず客観性に欠けたマスコミ報道が日本の悪いイメージをつくった(゚д゚)!
この記事から一部と、グラフを引用します。
各国の感染者数は、5日現在で、中国本土8万272人▽韓国5621人▽イタリア3089人▽イラン2922人▽その他(クルーズ船)706人▽日本331人▽フランス285人▽ドイツ262人▽スペイン222人▽米国153人▽シンガポール110人▽香港105人なです。 
ワイドショーなどでは、感染者数だけ報道し、結局脅威を煽るようなことになっていますが、これは以前のこのブログの記事でも示したように、もっと客観的に見るべきです。人口の多い国が、感染者が多くなるのは当然のことで、人口の多い国も少ない国も、感染者数だけでみたり、比較するのはあまり意味がありません。 
公衆衛生学では、感染者数を人口10万人あたりでみるのが普通(感染者数➗人口✖10万人)です。そうすると、韓国11・0人▽中国本土5・6人▽イタリア5・1人▽イラン3・6人▽シンガポール1・9人▽香港1・4人▽スペイン0・5人▽フランス0・4人▽ドイツ0・3人▽日本0・3人▽米国0・1人です。 
どちらのデータを見ても、日本が感染国とはいえないです。乱暴ですが、あえてクルーズ船の感染者数を日本に含めたとしても0・8人であり、感染国とはいえないという結論に変わりはないです。はっきりいえば、政府が手をこまねいているうちに、マスコミ報道で日本の悪いイメージができあがったというだけなのです。以下にグラフを掲載します。(以下のグラフの日本には、クルーズ船の感染者は含まれていません)


上で示した数値は、5日現在、グラフは8日現在のものです。少し古いので、日本だけ本日の最新の数値で計算してみます。本日は、日本の感染者数は649人ですから、10万人あたりでは、0.6人です。これでは、どう考えてみても現状で「緊急事態宣言」を出すような状況ではありません。これが、1人、2人と増えた場合、もしくはそこまでいかなくても、急速に増えた場合には「緊急事態宣言」を出すべきでしょう。

実際、国会で、新型コロナウイルスをめぐる現状について、安倍首相は、自治体による外出自粛の指示などが可能となる「緊急事態宣言」を出すような状況ではない、との見解を示していました。

政府は今後、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し、重大な影響が出そうになった場合、「緊急事態宣言」を出して政府や自治体が、外出自粛の指示などの強い措置をとれるようにするため、『新型インフルエンザ等特別措置法』の改正を目指しているのです。

こうした中、参議院予算委員会で野党議員は「すでに緊急事態ではないか」と安倍首相を追及しました。

日本維新の会・松沢成文議員「世界的な蔓延、つまり、パンデミック宣言、もうせざるをえないっていうところまで来てるんですよ。緊急事態だということを、なぜ言えないんですか」

安倍首相「(現状は)緊急にさまざまな対応をしなければいけない事態ではありますが、法的に『緊急事態』であるかどうかということについては、感染のスピードが急速に拡大しているということではまだないわけでございまして」と説明していました。

10万人あたり感染者数から判断すると、まさに安倍総理の考えは正しく、野党の追求は頓珍漢です。野党は、追求しようとするなら、明確なエビデンスにもとづき追求すべきです。過去の「もりかけ桜」も、明確なエビデンスではないもので、追求していましたが、野党はこのようなことばかりを繰り返してきたので、国会でまともに追求することもできないようです。

日本のマスコミも頓珍漢なのですが、政府のほうも10万人あたりの感染者数を開示するなどして、国民に対して客観的な正しい情報を伝えていくべきと思います。

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2020年3月2日月曜日

「国会質問で不当な人権侵害」原英史氏が森ゆうこ参院議員を提訴 国会議員の「免責特権」どこまで許されるのか? 作家・ジャーナリスト、門田隆将氏が緊急寄稿―【私の論評】国会での誹謗中傷は、処罰しないと野党は認知症になるだけ(゚д゚)!


門田隆将氏

国民民主党の森ゆうこ参院議員の国会質問によって、不当な人権侵害を受けたとして、政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)座長代理の原英史氏が25日、東京地裁に損害賠償訴訟を起こした。作家でジャーナリストの門田隆将氏が緊急寄稿した。


 この件をひと言で表現するなら「国会議員による国民に対する誹謗(ひぼう)中傷・住所公開事件」となる。

 森氏は昨年11月15日の参院予算委員会で、毎日新聞の記事を根拠に、原氏が特区提案者から金銭を受け取ったとして、「国家公務員なら斡旋(あっせん)利得、収賄で刑罰を受ける」と発言し、自身のホームページで原氏の自宅住所を公開した。

森ゆうこ参議院議員

 だが、森氏の質問の根拠となった毎日新聞は昨年6月、原氏から損害賠償訴訟を起こされている。同紙は法廷で、原氏が金銭を受け取ったという報道をしたつもりはないと答弁をしている。あぜんとする主張である。

 にもかかわらず、森氏は国会の場で、原氏を糾弾した。

 原氏は「事実無根の誹謗中傷」として謝罪・訂正を求めたが、森氏は応じなかった。国会議員が議院で行った演説や討論、表決は、憲法第51条に定められた「免責特権」の対象となるのだ。

 これで納得できるはずがない。免責特権がある以上、「国会内」で自律的に対処するのが筋として、原氏は参院に対して、6万7000人分のネット署名を添えて「森氏の懲罰」を求める請願を行った。

 ところが、原氏の請願に応えたのは日本維新の会だけだった。それ以外の与野党は完全無視し、森氏も、原氏の度重なる謝罪・訂正要求を無視し続けた。

 原氏は泣き寝入りか、一個人として国会議員と戦うかという“二者択一”を迫られた。

 最終的に、原氏は提訴に踏み切った。森氏が原氏の自宅住所情報をネットで拡散したことなどは「国会外での不法行為」にあたり、免責特権で保護されないとの主張だ。

原英史氏

 多くの国民は、野党議員の傍若無人な振る舞いや、新聞や週刊誌をもとにした「事実の裏取りもしてもいない」質問内容にあきれている。国政調査権を有する国会議員による国会での質問は、新聞や週刊誌の“下請け”であってはならない。

 原氏はさらに、「国会での言論を検証する独立機関」をつくる構想も持っている。国会議員の言論について、中立・客観的で、事実に基づく検証・提言を行う、「国会版BPO」である。

 こうした組織ができれば、国会にも緊張感が生まれる。国民への名誉毀損も「平気だ」といった言動も減るはずだ。国民のために動いた、原氏の果敢な決断を評価したい。


 原氏の提訴について、森氏は28日、事務所を通じ、「まだ訴状を見ておりません。特別申し上げることはございません」とコメントした。

【私の論評】国会での誹謗中傷は、処罰しないと野党は認知症になるだけ(゚д゚)!

原 英史(はら えいじ、1966年)は日本の文筆家で、政策コンサルタント、元通産省・経産省職員。フェイクニュース研究所副所長と称しています。株式会社政策工房代表取締役社長で、大阪府市統合本部特別顧問です。

以前、経産省の職員であったことはありましたが、今では純然たる民間人です。森ゆうこ参議院議員は、その民間人を侮辱するだけではなく、住所を公開したりしたのですから、これはもう良識の範囲を完璧に逸脱しています。

Change.orgでは、原氏を支援するキャンペーンを実施しています。その内容を以下に掲載します。なおこのキャンペーンでは、趣旨に賛同するとともに、支援金を寄付できるようになっています。
賛同いただける皆さまに署名お願いいたします。 
【発起人】
朝比奈一郎、生田與克、池田信夫、岩瀬達哉、上山信一、加藤康之、岸博幸、鈴木崇弘、髙橋洋一、冨山和彦、新田哲史、原英史、町田徹、八代尚宏、屋山太郎
(敬称略、五十音順)
=======
参議院議長殿 
 憲法第51条では、「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」とされています。 
 しかし、だからといって、誤った報道に安易に依拠した名誉毀損など、国会議員による不当な人権侵害は許されるべきでありません。 
 この観点で、森ゆうこ参議院議員に対し、以下の理由から、除名などの懲罰を検討いただくことを求めます。 
 あわせて、こうした事案の再発防止のため、さらなる対策を国会において検討いただくことを求めます。

【理由】
 森ゆうこ議員は、10月15日参議院予算委員会で、原英史・国家戦略特区 ワーキンググループ座長代理が不正行為を行ったかのような発言を繰り返したうえ、「(原氏が)国家公務員だったらあっせん利得、収賄で刑罰を受ける(行為をした)」、すなわち「原氏が財産上の利益を得た」との事実無根の虚偽発言をしました。
 森ゆうこ議員は、発言の根拠として、6月11日の毎日新聞一面記事をパネル化して提示・配布しました。しかし、この記事が虚偽報道であることは、原氏が根拠を挙げて繰り返し説明しています(別紙:10月14日の公開記事、これまでの毎日新聞への反論)。 
 同氏は毎日新聞社に対して名誉毀損訴訟を提起しており、訴訟の中で毎日新聞社は、「原氏が金銭を受け取ったとは報じていない」と弁明していることも、すでに明らかにされています。 
 その状況下で、森ゆうこ議員がNHK中継入りの予算委員会において、十分な事実関係の調査もなしに、何ら根拠のない誹謗中傷を行ったことは、許されるべきでない人権侵害です。

(別紙)
http://agora-web.jp/archives/2042082.htmlhttp://agora-web.jp/archives/author/haraeiji
このほか、必要に応じ、さらに理由を追加します。
このような議員の傍若無人な振る舞いは決して許されるものではありません。私自身は、このような振る舞いが許されているからこそ、国会での不毛な論議がいつまでも継続されるのだと思います。

国会をまともな場にするためにも、このようなキャンペーンは有意義だと思います。

さらに、森議員は、国会審議の場では「国家公務員だったら斡旋利得、収賄で刑罰を受ける」と発言した一方で、ツイッター上では「仮に金銭の授受があれば、特区WG委員に公務員と同等の倫理規定がないため、刑事罰を課されないないものの、脱法行為ではないのか」と発言しています。


一見、同じような表現に見えますが、実は微妙に表現を使い分けています。国会では事実があったとほぼ断言している一方で、ツイッター上では“仮に金銭の授受があれば”と仮定の話に変えています。

かつ、国会では“あっせん利得、収賄”と犯罪行為であるかのように決めつけているのに、ツイッター上では“倫理規程“と弱い話にすり替えられています。

森議員は、国会では免責特権があって責任を問われないので意図的に激しい表現で原氏を誹謗中傷し、ツイッター上では訴訟リスクがあるので表現を弱めたとしか考えられません。憲法第51条がある中で、こうした狡猾な使い分けが行われているのが現実なのです。

私は、憲法改正で第51条を大幅に弱めることが必要と思いますが、それは難しいでしょう。しかし、その場合でも、たとえば国会議員が国会審議の場で他者の誹謗中傷、名誉毀損、人権侵害につながる発言を行なった場合、両院が当該懲罰を課すとともに、被害を受けた者に国会の中で事実確定と名誉回復の機会を与えるなど、知恵を出せばやりようはいくらでもあります。

今回の訴訟が、単なる法定論争に終わることなく、なにかこのような動きにつながることを期待しています。

そうでないと、日本の野党は国会で弛緩して、頭をつかわず、楽に楽を重ねて、現在の馬鹿の次元から認知症にすすむのではないかと思います。ツイッターの投稿よりも、頭を使わないですむ国会であってはいけないです。

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2020年1月21日火曜日

米国やイランも歓迎なのに…海自中東派遣に反対の野党 韓国外交は板挟みで迷走中 ―【私の論評】中東海自派遣には、いずれの国も反対していない。反対するのは日本の野党のみ(゚д゚)!

米国やイランも歓迎なのに…海自中東派遣に反対の野党 韓国外交は板挟みで迷走中 
高橋洋一 日本の解き方

中東に派遣された海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」

 海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機が中東に派遣された。その意義と、中東情勢において日本の果たす役割について考えてみたい。

 イラン沖のホルムズ海峡は、狭いところが33キロしかない世界海上交通の要衝だ。特に日本にとっては、この海峡が封鎖されると、石油の輸入の大半が絶たれてしまう。

 経済産業省の「石油統計」によれば、日本の原油輸入元として、2018年時点でサウジアラビア(38・0%)、アラブ首長国連邦(25・4%)、カタール(8・1%)、クウェート(7・6%)と上位4カ国で約計79%を占める。欧米の中東依存度が2割程度であるのと比べても比重が大きい。日本の1次エネルギー国内供給の4割は石油であり、その8割がホルムズ海峡に依存しているので、同海峡は日本のエネルギーの生命線といってもいいだろう。

 現在、米国とイランの間で一触即発の緊張関係が続いている。もし万が一ホルムズ海峡で有事になると、日本経済への打撃は他の欧米諸国の比でない。

 日本のタンカーはホルムズ海峡を日々通過しているが、その安全が確保されない場合、どのように対処すべきか。

 ロジカルには、(1)自衛隊の単独派遣(2)他国との協力(3)静観-である。このうち、(2)の他国との協力では、米主導の欧米の有志連合への参加以外の選択肢は今のところない。

 一部の野党は、(1)にも(2)にも反対なので、結果として(3)の静観ということになる。かつて一部の野党は、「石油が日本に入らなくてもたいしたことはない」と豪語していたが、論外だ。国内の石油備蓄は200日分以上もあるので、備蓄がある限りは日本経済はなんとか持ちこたえるが、それがなくなると苦境に陥るのは、過去の石油危機をみればわかることだ。

海自中東派遣に反対の立憲民主党枝野代表

 筆者は、あるべき対応として、(3)は論外として、本コラムで(1)を勧めてきた。日本の米国とイランに対する立ち位置を考えたときに、(2)の有志連合では対イランとの関係でまずいからだ。安倍晋三政権は常識的な判断として(1)を選択した。

 この方針は、米国にもイランにも支持されている。今回、安倍首相は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーンを歴訪した。中東での平和外交であり、タイミングは絶妙だ。しかも、その成果として、(1)について、これらの諸国の賛同を取り付けた。

 一方、韓国外交はこの問題で迷走している。当初は有志連合への参加方針だったが、イランから恫喝(どうかつ)され、米国からは有志連合への早期参加を催促され板挟みになった。日本は早い段階で(1)を決めたのと好対照だ。

 今回の安倍首相の中東歴訪は、オマーン国王死去にも重なり、弔問外交にもなった。喪に服するという意味で中東には一時的に紛争が起きにくい状況なので、この好機に日本主導で中東和平ができるかもしれない。これは、米国とイランの両方にパイプを持っている安倍政権しかできないことだ。まさに正念場である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中東海自派遣には、いずれの国も反対していない。反対するのは日本の野党のみ(゚д゚)!

私は野党がなぜ、海自中東派遣に反対するのか全く理解できません。そもそも、民間のタンカーが危険な地区に行くのは問題がなくて、海自がその地区に行くことは反対というのは理解できません。

中東に派遣された海自のP3C哨戒機

たとえば、武装した敵に包囲されていて、それでも日々に必要な水を包囲した敵の近くの水場まで汲みに行くのに、主婦や子供などに水を汲みにいけというのでしょうか。まともな感覚であれば、もし身近に軍人や、警察などがいれば、それらに行かせるか、あるいは水汲みをする人たちの警護に当たらせるのではないでしょうか。

自衛隊を中東派遣すると「イスラムに嫌われる」などと報道されていますが、あれは全くの欺瞞です。中東の産油国にとっても海路の安全確保は極めて重要です。

タンカーがミサイル攻撃されるとか、海賊に襲われることはあってはならないということで、日本と産油国の利害は一致しています。そもそも、日本を敵視するイスラムとは誰のことなのでしょう。IS、アルカイダ、それとも海賊なのでしょうか。

日本はテロリストや海賊のご機嫌を取るために、自衛隊を派遣しない方が良いというのでしょうか。彼らは自衛隊を派遣しようとしまいと日本を敵視しています。自衛隊を派遣すると中東諸国に嫌われるという発言はいろんな意味でまともではありません。

それにしても、安倍総理がこのタイミングで中東歴訪したことは良いことでした。サウジアラビア、UAE、オマーンに行って皆さんと同じように海路の安全確保が大事だと考え、自衛隊を派遣しますと直接伝え、相手からも同意を得た上で海自を中東に派遣したのです。

サウジアラビア・ウラー近郊でムハンマド皇太子(左)の歓迎を受け握手する安倍首相=1月12日

一方、上の記事では韓国外交はこの問題で迷走しているとしていますが、韓国もとうとう中東に艦艇を派遣することを決めました。

韓国政府は21日、中東・ホルムズ海峡への独自の海軍部隊派遣を決めたと発表しました。海賊から韓国船を保護する目的でソマリア沖・アデン湾へ既に派遣されている部隊の活動範囲を一時的に拡大します。米国が求めていたホルムズ海峡の安全確保を目指す有志連合には参加せず、必要に応じて協力するとしています。

米韓間では最近、北朝鮮への韓国人の個人観光を進めたい韓国と難色を示す米国との溝が深まっています。文在寅政権としては、米側の派兵要請に応じることで懸案を減らしたい考えとみられますが、支持層が反発する可能性もあります。

いずれにせよ、韓国ですら派遣を決めたのです。日本の一部の野党は、これをどう捉えるのでしょうか。

海上自衛隊の護衛艦による警護を希望する船舶は約2600隻にのぼるといいます。これは、アデン湾を航行する日本関係船舶の年間隻数にほぼ匹敵するそうです。

海賊発生件数が多発した2010(平成22)年には、219件の襲撃があり49隻が乗っ取られ、1181人が人質にされました。ニュースとしてしばしば取り上げられ、翌2011年にピークに達し237件も発生しました。

しかし、2012年には80件弱となり、2013、2014年はひと桁、2015年には遂にゼロになったことからも劇的に状況が改善しました。

世界各国が手を携え、軍艦や自衛艦などを派遣し根気強く洋上の監視を行い、海賊という共通の脅威に対抗した結果がもたらしたものです。

今回の派遣は海賊対処に加えて日本関係船舶の安全航行のためで、ジブチ基地沖のアデン湾からアラビア海北部、そしてホルムズ海峡(含まない)に繋がるオマーン湾まで、正しく日本列島に匹敵する広範囲に及びます。

国家存立の基本であるエネルギーは、輸入先や資源の多様化が叫ばれて久しいですが、原油の中東依存は1970年代の石油危機時よりも増大し88%にも達しています。

北海道では、昨年ブラックアウトがあつたばかりですが、石油がなくなれば、あのようなことも起こりえます。北海道では2、3日のことですみましたが、長期にわたってあのような事態が起これば、大変なことになります。それこそ、死人がでかねません。

他方で、ドナルド・トランプ大統領は、米国はエネルギーを他国に依存する必要がなくなったと宣言しました。

このことからは、米国の中東関与も逐次縮小が予測され、日本は自らエネルギー安全確保の必要性に迫られることになりました。

このことからも、自衛隊の活動の礎をしっかり確立することが直近の課題であり、現行憲法範囲内でもできることはすべて行うという姿勢も重要ですが、将来的には憲法の見直しが不可欠です。

その意味で、野党の自衛隊の安全のため、中東への派遣は中止すべきという提言はあまりに近視眼的なものであり、とうてい日本の安全保証をまともに考えているとは思えません。

私には、彼らは倒閣のため、国民の安全を犠牲にしているとしか思えません。

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2019年10月8日火曜日

池上彰さんへ、消費増税について議論しませんか 政府の主張を代弁?財政危機あおる解説に疑問 ―【私の論評】野党は、臨時国会を「三点セット」(関電、あいちトリエンナーレ、NHK)で終わらせるな(゚д゚)!

池上彰さんへ、消費増税について議論しませんか 政府の主張を代弁?財政危機あおる解説に疑問 


池上彰氏

消費増税に絡んで、国の借金や財政破綻の懸念に関する話が出てきている。消費税と国の財政の関係はどうなっているのか。

10月1日の消費増税の前に、テレビで各種の番組が組まれた。筆者も9月28日、大阪・朝日放送の情報番組「教えて!ニュースライブ正義のミカタ」で解説した。

そこでは、(1)米中貿易戦争など世界経済が危ういタイミングでの消費増税は最悪(2)消費税を社会保障に使う国はなく、社会保障が心配なら歳入庁を設置して社会保険料の漏れをなくすことが先決(3)軽減税率は不合理なので給付付き税額控除で代替(4)新聞の軽減税率対象はエコひいきで、裏には財務省からの天下り(5)マイナス金利の活用で5兆円程度の財源捻出可能(6)いっそのこと全品目軽減税率適用を(7)これらを10月4日からの臨時国会で議論すべきだ-と、これまで地上波で言えなかった話をした。もっとも、本コラムの読者ならおなじみの話だろう。

この番組は関東では放送されないが、好評で視聴率も高かったらしい。

同じ日に、テレビ朝日で放送された「池上彰のニュースそうだったのか!!」でも、ジャーナリストの池上彰氏が消費税について解説していた。その内容は筆者には「いま財政が危ないので消費増税」という財務省のプロパガンダのように思えた。

池上氏は番組で「とりあえずは大丈夫でも、借金がひたすら増え続ければ、いずれ財政破綻する危険性が高まる」と話していた。しかし、借金だけをみるのは不十分で、資産を同時に考慮すると日本の財政は危なくない。実際には財政破綻の確率は5年以内で1%程度しかなく、先進国の中で最低水準だ。

さらに、池上氏は説明の中で「政府と日本銀行は全く別のもの」と述べた。形式的には、日銀は政府と別法人であるが、理論上、政府の連結子会社だ。財務を見るときには、グループ企業は一体で連結して分析する。政府と中央銀行を一体連結して考えるのは、経済学で「統合政府」という考え方もあるくらい当然のことで、池上氏の説明は不正確だといえる。

筆者にとって、番組での池上氏の発言は、政府の主張を代弁しているように聞こえてしまう。そしてその説明は間違いだとしかいいようがない。

池上氏の番組には経済の専門家は出演しておらず、池上氏が居並ぶタレントに語りかける形式だった。タレントは池上氏に同意する役割のようにみえる。

池上氏をめぐってはかつて、専門家らに取材したことを明示せずに番組内で使うという問題が指摘されていたが、今回の場合、取材先は財務省関係者だったのだろうか。

筆者は、いまの状態で財政危機をあおるのは不見識だと考える。財政危機なのかどうかについて、“破綻論の家元”ともいえる財務省との公開討論にいつでも応じる用意がある。しかし、財務省側は逃げ回るだけで、決して応じない。

この際、池上氏の番組に筆者を呼んでくれれば、国民にとって有意義な議論ができるはずだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】野党は、臨時国会を「三点セット」(関電あいちトリエンナーレNHK)で終わらせるな(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事の内容の繰り返しになってしまいますが、本が財政破綻しようもないことや、政府と日本銀行は一体であり一帯としての呼称は一般的に統合政府と呼ばれていること、社会保障は保険として扱うべきであり、消費税等とはもともと関係なく、財源は保険料として徴収すべき性格のものであることなど、このブログの読者であれば、ほとんど常識といっても良いくらいのものです。

さらに、もう増税が決まってしまったのですから、それであれば、今更増税のすべきではないと言っても手遅れなので、現状の国債金利がマイナスであることを最大限に活用して、国債を大量発行して経済対策に当てることも、常識中の常識です。

何しろ金利がマイナスということは、政府がカネを借りる手段である、国債を発行すれば、政府はマイナス金利分儲かるということなのですから、発行して経済対策に当てれば良いのです。

さらに、経済対策をするというのなら、複雑な軽減税率などやめて、給付金などで低所得層などを支援するような対策を打てば良いのです。さらには、全品軽減税率ということにすれば良いのです。

しかし、これらが日本常識にならないのは、このブログでも過去に主張してきたように、財務省の増税キャンペーンにと、それの尻馬に乗るマスコミによるものであることも、このブログで過去に何度か主張してきたことであり、これもこのブログの読者であれば、ほんど常識になっているものと思います。

そうして、尻馬に乗るマスコミの代表が、池上彰氏であると言っても過言ではないです。
さて、上の高橋洋一氏の記事にも指摘されている、池上彰の消費税に関する報道の動画を以下に掲載しておきます。


さて、直近の日本経済はどうなっているのでしょうか。現状では8月が最新のものです。

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/tankan09a.htm/9月日銀短観、大企業・製造業DIはプラス5 3期連続で悪化2019/10/1。 https://nikkei.com/article/DGXLASFL01H8X_R01C19A0000000/… 8月の景気指数、4カ月ぶり「悪化」に2019/10/7 。https://nikkei.com/article/DGXMZO50683810X01C19A0MM8000/…

と軒並み悪い結果が出ています。

明日は、景気ウォッチャー調査の結果もでますが、この状況だとこれも悪くなりそうです。

今月の月例経済報告はいつやるか未定ですが、しれっと景気判断が悪化でしました等と発表するだけで終わるのでしょうか。すでに臨時国会も始まっていますから、本来は景気対策しか手がないように思えるのですが。

ただし、麻生さんは追加経済対策は必要ないと言ってましたが、今のうちに本格的な対策を打たないととんでもないことになりそうです。

これだけ、経済指標が悪いにもかかわらず、増税をしているわけですから、本来ならば、野党の攻め時なのに「三点セット」(関電あいちトリエンナーレNHK)というのであれば全く心もとないてす。

無論この「三点セット」を無視せよとまではいいませんが、現状の財政問題と比較すれば、小さいです。

消費増税を最初に打ち出したのは自公政権での税法改正だったことは歴史的事実です。しかし、それにそそのかされ、政権与党として自公と協力してマニフェストにもない増税法を成立させた2012年時点の民主党政権は誤っていました。

猛省が必要です。そしてその後、2014年と今回と2度の増税の判断をしたのは自公政権でした。与党内での真剣な議論の中で鈴木洋一元衆議院議員(民主党)が、増税法に入れ込んだ「景気(弾力)条項」は、増税延期を財務省がのむ交換条件として自民公明政権が法律改正をして消し去ってしまいました。

わが国には所得の再分配が必要です。政府はそのための財源がないと言い張りますが、それは誤っています。緊縮財政を離れて再分配を行う財源はすでに目の前にあります。

すでに述べたように、国債を新たに発行して、あるいは格差を是正する目的で税金を集めて、それを全額日々の暮らしに追われている就職氷河期世代をはじめとする国民、若者たち、子育て世代に給付金として直接再分配すればいいのです。

必要なのは財源ではなく、政治的決断です。これまでそうした決断を下せる政党がなく、政治が政治としての役割を果たしていないから問題が起きているのです。

このブログでは、デフレ脱却の実現、緊縮財政への反対、就職氷河期世代への支援を主張してきました。これは、これからのわが国に絶対に必要な政策です。どれほどさえぎる壁が厚くても景気をよくし、賃金が上がるようにしていかなければなりません。

本来ならば、野党はこのようなことを主張すべきなのです。増税に関して、野党(現役議員という意味)で増税に関してまともな発言をしているのは現在は、昨年暮の補欠選挙で返り咲いた馬淵澄夫氏と、令和新選組の山本太郎氏くらいかもしれません。

馬渕議員は、「日本の借金1000兆円という数字自体を疑ってみる必要がある」ということと「消費税を引き下げよ」ということを昨年下野していたときに語っていました。

https://wpb.shueisha.co.jp/news/politics/2018/11/28/107637/

馬渕は民主党政権時代から、このようなことを語っていたのですが、当時の民主党の幹部らは聞く耳をもちませんでした。その後、民主党政権が崩壊した後の馬渕氏が所属していた幹部も右に習えでした。現在馬渕議員は無所属ということもあって、残念ながら、いくら正論を語っても大きな声にはなりません。

一方令和新選組の山本太郎氏は、上で紹介した池上氏の番組内容を真っ向から論破しています。それは以下の動画をご覧いただくとご理解できると思います。



このことに関して、ブログ記事にしている人もいます。そのブログの記事のリンクを以下に掲載します。


ただし、このブログは反安倍の立場から書かれているので、首をかしげざるを得ないことも買いてあります。私は、安倍政権に関しては、是々非々で、賛成するところも多々ありますが、反対するところもあります。無論、増税は大反対です。ただし、外交政策や、憲法改正に向けての努力に関しては、こころもとないとこもありますが、概ね賛同しています。そうして、両手をあげて賛成ではないのですが、それにしても野党があまりにだらしなく、今のところ安倍政権に変わる政権はないと考えています。

いずれにせよ、山本太郎氏は、財政に関しては、まともなことを言っています。この程度のことなら、このブログの読者の方々なら常識の範囲だと思います。さらに、このくらいのことは、本来高校でまともに政治経済を勉強した人なら誰でも知っていることです。

山本太郎氏に関しては、増税反対とか、日本が財政反対するはずがないということに関しては、賛成ですが、他の事柄についてはとても賛成するわけにはいきません。

しかし山本太郎氏もこのことに気づいたのですから、他の野党の議員、特に野党の幹部の人なら、財務省のキャンペーンがいかに強力であったにしても、やはり財政に関しては、もっとまともな考えを持つべきです。

さらに、野党が単純な反権力=反安倍というスタンスではなく、国民の立場に立って、論理的に筋道をたてて、高橋洋一が主張しているような、経済対策を実行するように国会で主張して、政策案を提出すれば、自民党の中にも反増税がいますから、それこそ財務省主導の際限のない増税キャンペーンを阻止することができるかもしれません。

ちなみに、増税反対の政策であれば、どの政党であれば、高橋洋一氏や、田中秀臣氏、情念司氏のような人たちも、政策立案に喜んで助け舟を出すと思います。そのような良心的な評論家、エコノミストはこの日本に大勢いると思います。さらに、野党は、鈴木洋一元参議院銀や、馬渕議員などにの声にも耳を傾けるべきと思います。

増税見送りもあり得ると語っていた萩生田光一文部科学相

野党の攻撃により、増税の悪影響を取り除くために、大きな経済対策が導入されることになれば、それこそ、麻生財務相は辞任ということになるかもしれません。そこまでいかなくても、次の組閣で麻生氏が財務大臣でなくなれば、野党の大勝利です。そうなれば、有権者も野党に振り向く人も現れるかもしれません。

有権者としては、財政や安保なども含めて、野党がまともな政策を打ち出せば、別に自民党ではないと考える人もでてくるでしょう。そうなれば、与党も財務省にやすやすと籠絡されることもなくなるかもしれません。そうして、与野党が切磋琢磨して、国民のために努力する体制ができあがるかもしれません。

それができたときに、日本の野党ははじめてまともな仕事をしたと国民から一定の信頼を勝ち得ることができるかもしれません。

それをせずに、臨時国会を「三点セット」(関電あいちトリエンナーレNHK)で終わられせば、国民からの信頼はまた地に落ちることでしょう。そうして、有権者からは大馬鹿と思われ、二度と這い上がることはできないかもしれません。

そうなると、安倍政権もこれから先、経済がますます悪化した先には、有権者の信頼を失うかもしれません。その後は、財政政策を根本的な変えない政党が政権与党になったとしても、短期政権で終わることになり、財務省はぬか喜びし、10%増税はおろか、20%増税、25%増税にまで突っ走ることになるかもしれません。

このまま増税して、まともな経済対策も打たないということになれば、与野党ともに疲弊することになるのです。特に野党はますます疲弊することになるでしょう。

自民党は、増税を決めてしまったので、自民党議員がいまさら自ら先頭に立って増税に反対するわけにもいきません。それは野党の役割です。今こそ野党は、国民のため、日本の政治主導のため、そうして自分たちのために、決起すべきなのです。

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2019年2月7日木曜日

統計不正でも「アベノミクスによる経済回復」という評価は覆らず…雇用者報酬は増加―【私の論評】野党は、中国の統計をなぜ批判しないのか?

統計不正でも「アベノミクスによる経済回復」という評価は覆らず…雇用者報酬は増加

根本匠厚労相(右)を追及する立民の長妻昭元厚

各省庁の経済統計の不正が次々と発覚し、こうした統計データに基づき評価されてきた「アベノミクスの成果」自体を疑問視する指摘も出ている。そこで、各種経済統計を見直した場合、「アベノミクスによる経済回復」という評価が覆る可能性はあるのか、もしくは統計不正と「アベノミクスによる経済回復」は無関係なのか、さらには一連の統計不正はなぜ起こったのかについて考えてみたい。

まず、マクロ経済の見方から考えてみよう。マクロ経済政策を評価するには、まずは雇用、次に所得で行うのが基本である。要するに、まず仕事があって、その上で衣食が足りていれば満点である。これを具体的にみるには、以下の評価基準を用いる。

(1)雇用は就業者数、失業率
(2)所得はGDP、雇用者報酬

筆者はアベノミクスに対して、雇用はまずまずであるが、所得の観点からまだ不満があるので、これまで70~80点という評価を下してきた。今回の統計不正により、GDPなどを算出する際の基礎データである毎月勤労統計の数字が変更になった。そのため、雇用者報酬も変更された。2017年の名目雇用者報酬は前年比1.6%増、実質雇用者報酬は同1.2%増。また、18年1~11月の名目雇用者報酬は同3.1%増、実質雇用者報酬は同2.3%増となった。18年1~11月の雇用者報酬は、名目、実質ともに前年より増加している。

その理由は簡単だ。このデータは毎月勤労統計から作成されるが、毎月勤労統計は本来全国200万事業所を対象とするが、実際には3万件程度のサンプル調査となっている。しかし、東京都において1500事業所を調べるところが500事業所しか調べなかったので、実際のサンプル数は全国で2.9万だった。本来の統計処理であれば復元すべきだったのに、それを怠った。例えていえば、2.9万で割り算すべきところ、3万で割り算したため、過小の数字になったというのと同じだ。それが是正されると、数字としては大きくなるだけだ。

とはいうものの、統計不正の前後で数値を比較すると、せいぜい0.3%程度の違いでしかない。これは、グラフにすると線の太さに隠れる程度にもなるので、今回の統計不正によって、これまでの経済分析が一変するというほどのものではない。

西日本新聞に掲載された給与額公表値と再集計地の違い
縦軸が0.5%刻みになっているので、差異が確認できるが、
通常のものであれば確認できないほどに小さなものである

一部野党の批判は“木を見て森を見ず”

雇用者報酬は、概念として人数×賃金である。雇用の増加により、人数が増加しているのは間違いない。問題は賃金である。名目賃金が増加しているのは間違いないが、実質賃金については顕著な増加でない可能性がある。

一部野党とメディアは、この点だけをついている。まさに、木を見て森を見ずである。

そもそも、マクロ経済政策で一番肝心の雇用では、民主党政権時代は最悪の状況だった。雇用が満たされると、次に雇用者報酬がよくなる。その次に名目賃金、最後に実質賃金が上がる。

一部野党やメディアは、雇用、雇用者報酬、名目賃金の改善を無視して、最後の実質賃金の上昇が顕著でなかったという点だけをあげつらっている。いずれにしても、前に述べたマクロ経済の評価について再び見ても、

(1)雇用の回復は確実
(2)雇用者報酬は名目でも実質でも上昇

と確実にいえる。

ただし、報酬を人数×賃金と分解した際、名目賃金の上昇はいえるが、実質賃金については、上昇かどうかは現時点ではわからないという状況だ。もっとも、この状況は統計不正発覚の前から同じである。

今回の統計不正を、試験で例えてみよう。ちなみに筆者のような大学教員は今、学期末の採点で忙しい時期だ。どこの大学でも似たような採点基準であろうが、学生への通知は、S、A、B、C、Dの5段階で通知し、教員が大学に提出するのは100点満点での点数だ。90点以上をS、80点以上90点未満をA、70点以上80点未満をB、60点以上70点未満をC、60点未満をDとし、60点以上で及第である。ちなみに、筆者のクラスの採点は、S19%、A8%、B17%、C25%、D31%という結果。今年は例年よりSが多いが、それでもSはあまりいない。

筆者の試験ではないが、もし出題の一部が不適切だったとしよう。その場合、すべての学生に該当問題では点を与える。すべての学生の点数は上がるが、不適切な出題がごく一部であれば、大学から学生へ通知する5段階評価は変更されることはない。今回の統計不正は、アベノミクスの評価そのものを根底から覆すものではない。筆者のアベノミクスの評点はBであったが、この評価は統計不正後でも変わりはない。

もっとも、このように結果として経済分析においてこれまでの評価が変わらないというのは、単に偶然なだけだ。統計不正は、統計の信頼を根底から揺るがすので許されるべきものではない。

横断的な専門組織の必要性

今回の統計不正について、以下の点が問題である。

(1)04年から、全数調査すべきところを一部抽出調査で行っていたこと
(2)統計的処理として復元すべきところを復元しなかったこと
(3)調査対象事業所数が公表資料よりも概ね1割程度少なかったこと

手続き面から上記は、統計法違反ともいえるものでアウトだ。実害では、(2)のために04~17年の統計データが誤っていたということになり、統計の信頼を著しく損なうとともに、雇用保険の給付額等の算出根拠が異なることとなり、追加支給はのべ1900万人以上、総計537億円程度になる。統計技術から、(1)はルール変更の手続きをすれば正当化できるし、(3)では誤差率への影響はなく、統計数字の問題自体は大きくないのはすでに述べたとおりだ。

今回の統計不正については根深いものがあるので、経緯を考えてみよう。

驚くべきは、統計職員が最近急減していることだ。04年でみると、農林水産省には4674人の統計職員がいたが、農業統計ニーズの減少のため、これまで4000名以上を削減してきた。他の省庁でも若干の減少である。今回問題になった厚生労働省は351人の職員だったが、今や233人に減少している。

日本政府の統計職員数は1940人であるが、これは人口10万人当たり2人である。12年でみると、アメリカ4人、イギリス7人、ドイツ3人、フランス10人、カナダ16人であり、日本の現状は必ずしも十分とはいえない。

どこの世界でも同じだと思うが、統計の世界でも従事人員の不足は間違いを招くという有名な実例がある。1980年代のイギリスだ。政府全体の統計職員約9000人のうち、2500人(全体の約28%)を削減したところ、80年代後半になって国民所得の生産・分配・消費の各部門の所得額が一致せず、経済分析の基礎となる国民所得統計の信頼が失われてしまった。

日本の統計事務は省庁縦割りであり、世界の標準的な省庁横断的組織になっていない。統計職は対象がなんであっても応用が効くので、各省庁ごとに統計職員を抱える必要性はなく、しかも統計の公正性を確保するなら各省から独立した横断的組織のほうが望ましい。

一刻も早く、国会における独立委員会を含めて第三者委員会や捜査機関による徹底した調査を行い、統計に対する国民の信頼を回復しなければいけない。その際、人員・予算の確保、横断的な専門組織の創設が重要だ。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

【私の論評】野党は、中国の統計をなぜ批判しないのか?

上の記事では、統計不正の前後で数値を比較すると、せいぜい0.3%程度の違いというのですから、これは極端なことをいうと誤差のようなものです。他の人為的な間違いをしたとしても、この程度の誤差が出ることはあり得ます。

よって、「アベノミクス」の成果、特に雇用上の成果に関する統計の評価に関しては、間違いはなかったということです。

ただし、これは誤差でもないし、意図して意識して行われた不正の結果出た違いであるということが重大な問題であるということです。

だから、国会における独立委員会を含めて第三者委員会や捜査機関による徹底した調査を行い、統計に対する国民の信頼を回復しなければいけない。その際、人員・予算の確保、横断的な専門組織の創設が重要だということです。

ここで中国の統計について振り返ってみます。

中国の「経済統計」については、以前から、中央政府が発表する「全国GDP」と各地方政府が発表する「地方GDP合計」に大きなかい離があるとこのブログでも指摘してきました。2018年1月には、内蒙古、天津が相次いで、経済統計に水増しがあったことを明らかになっています。

全国GDPと地方GDP合計の差異の推移

地方政府のみならず、中央政府も統計をねつ造しているとの疑念が、以前から各方面で出されてきまし。その真偽はともかく、中央が発表する各種統計に必ずしも整合性がなく、また政治的考慮から、ことさら楽観的な面を強調する一方、都合の悪い部分は意図的に無視する傾向があることは事実です。

例えば、国家統計局が1月に発表した17年経済実績や3月全人代政府活動報告(以下、報告)での説明ぶりに関連し、以下のような疑問があります。

昨年3月5日に開幕した全人代で演説した李克強首相(前列)。
汗を拭う姿はCCTV(中央テレビ局)には映らなかった。 

①17年、都市部住民の1人当たり実質可処分所得が6.5%増に対し、農村部住民は7.3%増、この結果、都市部と農村部の収入格差が縮小したとされています。

ところが、全国ベースの1人当たり実質可処分所得も7.3%増とされており、都市部常住人口比率が17年58.5%、また都市部の収入は農村の約2.7倍と高水準であることを考えると、全国の1人当たり可処分所得伸びは、上記6.5%と7.3%の間の6.5%に近い水準になるはずです。

②産業構造の高度化を見る上で、中国当局は以前からハイテク技術製造業の伸びと装備製造業伸びを重視しています。国家統計局は2017年のハイテク技術製造生産3.3兆元(13.4%増)、装備製造9.1兆元(11.3%増)、また、総工業生産伸び6.6%増に対するハイテク技術製造の貢献率23%、装備製造52%と両分野が大きく伸びているとしています。

17年の総工業生産額およびハイテク技術製造と装備製造生産額の対総工業生産シェアは発表されていないため、これら数値から各々のシェアを推計すると、

11.3%(6.6%×23%÷13.4%)、30.4%(6.6%×52%÷11.3%)となるのですが、16年実績として国家統計局から発表されているシェアは各々12.4%、32.9%(図表)。17年いずれの産業も総工業生産伸びを大きく上回る伸びとなっているにもかかわらず、シェアは下がる形となっており、各種数値間の整合性がとれていません。

[図表]工業生産伸び・シェア(%)

(注)国家統計局分類では、ハイテク技術製造は医薬、航空、電子通信、コンピューター、医療・精密計測機器。装備製造は金属製品、通信等各種専門設備、自動車・鉄道・船舶・航空等輸送設備、コンピューター等電子設備、精密計測機器。両概念は重複していると思われるが詳細不明。2017年シェアはハイテク製造の総工業産伸び率貢献度23%、装備製造52%から推計。
(出所)中国国家統計局の統計公報、記者会見議事要旨より筆者作成
消費、投資、輸出がそろって成長に寄与とされるが・・・
③報告は過去5年、消費の成長への貢献率が上がったとし(54.9%→58.8%)、投資・輸出主導から消費、投資、輸出がそろって成長に寄与するパターンが実現したこと、また民間投資が奨励され投資構造が改善したとしています。しかし、17年全国一人当たり消費支出は18322元、実質5.4%増でGDP伸びより1.5%ポイント低い。うち都市部住民は4.1%増でGDP伸びの60%程度、農村も6.8%増でGDP伸びより低いです。

他方、全国固定資産投資は成長率減速に対応して11年以降伸びが鈍化しているが、17年7.2%増と成長率との関係ではなお高水準。投資構造も国有企業(国企)が10.1%増と高い一方、民間投資は6%増とGDP成長率より低いです。また各級政府が行う基礎インフラ投資はGDP伸びの3倍に及ぶ。さらに不動産投資の全投資に占めるシェアは引き続き20%近い高水準で、国企や地方政府中心の製造業・インフラ投資、不動産投資が成長をけん引する構図に大きな変化はないです。

④報告は「政府のミクロ管理、市場や企業への直接関与を減らし、マクロ調整や市場監督に注力した」とし、その根拠として、過去5年、各省庁の許認可事項が44%減少したこと、中央・地方政府が価格を統制している財が各々80%、50%以上減少したこと等を挙げています。

しかし、住宅市場のバブルを抑えるための政府の住宅購入抑制策、政府が企業に強制的削減目標を課す形で進められている鉄鋼、石炭等の過剰生産設備削減、またその過程で大型国企の集中合併が進み、国企が保護される一方、過剰設備整理で相対的に大きな影響を受ける中小民間企業が置き去りにされていることは、習政権が発足以来掲げている「市場機能に十分な役割を発揮させる」との方針やこれまで進められてきた「国退民進」に明らかに逆行しています。

中国の国民経済計算の中で分配国民所得は見当たらないですが、別途、国家統計局は17年企業利潤21%増、中でも国企45.1%増と発表。また財政部統計で全国一般公共財政収入は7.4%増(うち中央7.1%増、地方7.7%増)。報告は「人民中心の発展思想を堅持し、民生の保障・改善に注力し、人々の獲得感(豊かさの実感)が継続的に増強」と主張していますが、統計は発展の果実がむしろ政府と国企に向かったことを示しています。

この他、最近公表されたデータについても、一定規模以上(主要営業収入が2000万元以上)企業の利潤が18年1〜5月2.7兆元、前年同期比16.5%増と発表されたましたが、昨年発表されている17年1〜5月の数値は2.9兆元。国家統計局は発表文の脚注で、①「一定規模以上の企業」に分類されている企業には出入りがあり、また新企業参入、破産もあること、②地域や産業の垣根を越えて活動している企業の統計の重複計上を精査したこと、③「営改増」、つまり営業税の増値税への移行に伴い、一部工業企業で、税負担が軽減されるサービス活動を切り離しサービス業とする動きが出たことを挙げています。

また、18年5月小売販売高前年同期比8.5%増と発表されたが、昨年5月発表された数値を基に計算すると3%増にしかなりません。これについても、脚注で前年数値を精査し改訂したためとしています。いずれも当局から一定の説明はあるものの、必ずしも市場関係者等から十分かつ透明性のある説明とは受け止められておらず、統計の信頼性、比較可能性、連続性に疑問が生じる結果となっています。

ブログ冒頭の記事を書かれた、高橋洋一氏はテレビの番組で中国のGDPの出鱈目ぶりを暴露しています。

以下にその番組の一部を含むツイートがあったので、それを以下に掲載します。


これは、昨年のGDPの伸び率に関するものですが、学者によっては、中国のGDPは未だ日本を超えておらず、ドイツ以下であると結論を出している人もいるくらいです。

いずれにせよ、中国の統計の出鱈目ははっきりしすぎるくらいはっきりしています。これを批判せずに、倒閣のために「アベノミクスによる経済回復」という評価が覆えそうと日本の野党は躍起になっているようですが、これまた政局にするのは無理筋で「もりかけ」騒動よりもさらに小粒なワイドショー民向け劇場パフォーマンスに終わることになるでしょう。

そんなことより、韓国が北朝鮮の手に落ちたり、中国が経済冷戦に負けて経済が弱体化した場合などに、かなり大勢の難民が日本に押し寄せる可能性があります。それにどのように対応すべきか等、今から警戒を強めておくべきです。

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2018年6月3日日曜日

働き方改革論争、野党のなかでどこが一番「マシ」だったか―【私の論評】現代社会は数十年前と全く異なることを前提にしない守旧派は社会を破壊する(゚д゚)!

働き方改革論争、野党のなかでどこが一番「マシ」だったか

足並みが、そろっていないが…

https://youtu.be/B4ENQJjA4aA

まともな修正案もださずに

「働き方改革」における与野党合意が進められているが、肝心の野党間での認識にズレが生じているようだ。

5月21日、自民、公明両党と日本維新の会、希望の党はいわゆる「働き方改革関連法案」の修正について大筋で合意した。

与党は野党の一部の賛同を取りつけることで今国会中の法案成立を目指しているが、立憲民主党、国民民主党および共産党は「長時間労働を助長する」として批判を続けるなど、野党間の足並みはそろっていない。

このことは、仮にも労働者のためにあるはずの国民民主党や立憲民主党に、働き方改革をリードする政策能力がないことを裏付けてしまったともいえる。

どういうことか。当初、政府与党が目指した働き方改革は、(1)残業上限時間の設定、(2)高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)の設置、(3)裁量労働制拡大の3本柱だった。

(1)は過労死対策なので、与野党ともに異論はなかった。問題は(2)と(3)で、(2)は一定の年収以上であれば残業時間の制限などがなくなるものだが、労働基準法の適用除外が拡大するとの懸念があり、(3)は残業代の頭打ちにつながるとして、野党はそれらの削除を要求していた。

また、(3)については、労働時間に関する調査データの不備が見つかり、政府与党は今年の3月に取り下げた。

残る争点は(2)の高プロ制度の設置である。

政府与党は、その対象者として、「年収1075万円以上」を打ち出した。だが、世論の過労死問題への関心の高まりを受け、野党はこの適用除外を「過労死法案」「残業代ゼロ」として批判。野党側からすれば、やがて「年収1075万円」という基準が引き下げられ、ほとんどの労働者に労働時間の適用除外が拡大するとの見立てがあったのだろう。

しかし、ここで流れを変えたのが、日本維新の会の修正案だ。もともと高プロ制度は労働者の同意を必要とするものであるが、適用後に本人が考えなおしたとき、適用を解除できるようにした。これは労働者に寄り添った修正案といえよう。

今年4月から5月にかけて、立憲民主党、国民民主党や共産党は、森友問題などを理由に国会を「18連休」した。その間、働き方改革についてまともな修正案を出すこともなかったために、国民には野党がただ国会をサボっているようにしかみえなかった。一方、審議拒否しなかった維新は、法案を研究してしっかりと審議の成果を示せたわけだ。

たしかに高プロ制度に労働者側の逃げ道がなければ、不当な処遇を受ける人も出てくるかもしれない。だがこの制度に「出入り自由な道」があればロジカル的にも破綻はなくなる。

そこで今回のような、与野党の弾力的な合意が生まれたのだ。このような急展開に際し、「18連休」を終えた立憲民主党、国民民主党や共産党は対応が間に合わず、蚊帳の外になってしまった。

欧米でも高プロ制度のような労働規制の適用除外がある。欧米における適用除外対象者の労働者に対する割合は、米国で2割、フランスで1割、ドイツで2%程度だ。日本で「年収1075万円」以上は4%程度というから、高プロ制度の導入は世界から見れば当たり前で、むしろ遅すぎたくらいだ。

『週刊現代』2018年6月9日号より

【私の論評】現代社会は数十年前と全く異なることを前提にしない守旧派は社会を破壊する(゚д゚)!


働き方改革」はこれから重要になるテーマです。最近までの日本は、デフレで雇用状況も悪く、とにかく雇用が確保されていれば良いというような状況でしたが、皆さんもご存知のように、安倍政権の金融緩和政策によって、雇用情勢がかなり良くなったので、次の段階では「働き方改革」が重要になりつつあります。

現在「働き方改革」をしようという動きは、まさに時宜にかなっているといえます。雇用情勢が良くなっているということ自体が「働き方改革」をすすめるのに良い機会になっているともいえます。雇用情勢が悪いときには、「働き方改革」をすすめようにも、ななかなか進まないでしょう。

雇用情勢が良い状況なら、そもそも雇用環境が悪いブラック企業になど、そもそも新規で雇用される人がいなくなるし、そこで働いていた人も辞めて他の企業に移るようになり淘汰されるか、まとも企業に生まれ変わるしかありません。

さらに、まともな企業でも「働き方改革」を推進して働きやすい環境をつくっている企業と、そうではない企業にも差がつきます。当然のことながら、「働き方改革」を推進している企業のほうが、魅力があり、そのような企業のほうに多くの人が集まるようになります。

そのようなことを、野党は全く理解できないのでしょう。いわゆる野党6党は、前代未聞「18連休」もの職場放棄を続けたあげく、先月8日午後の衆院本会議から審議に復帰しました。

復帰条件としていた「麻生太郎副総理兼財務相の辞任」などは通らず、成果「ゼロ」の惨敗というほかないです。「審議拒否はズル休み」との世論の逆風に耐えかねて、最後は大島理森衆院議長に泣きついたかたちでした。野党に優しい朝日新聞をはじめ、メディアは一様に、戦略なき欠席戦術を厳しく批判しました。

国会議員の歳費、つまり給料は法律で決まっています。 その月額は129万4000円。 このほかにいわゆるボーナスである期末手当が約635万円支給されますので、年収ベースの総額は2200万円ほどとなります。 これが本来の国会議員の給料です。

さらに国から政党交付金として議員一人当たり年間約4000万円、立法事務費として月額65万円が会派に支払われます。報道をみるとここに誤解が多いのですが、このお金のほとんどは政党が使い、議員個人に支給されるわけではありません。しかし、政党によって異なりますが、政党交付金の一部、年間数百万円から1000万円程度は各議員に支給されています。

こうした経費を含めると、仮に政党交付金が年間1000万円だとして、年間4400万円ほどのお金が議員本人の口座や政党支部の口座に分けられて振り込まれます。


にもかかわらず、国会で審議拒否をする、すなわち一般の会社員ならば、会社を休むのと同じようなことをしても、歳費などか減額されることもありません。

このような野党の議員には、さらに理解不能なこともあります。それは現在は高度な知識社会になっているという認識です。知識社会とは、富の源泉が知識となった社会のことです。

一昔まえの富の源泉は「ヒト・モノ・カネ」といわれましたが、現在ではこれらがあっても高度な知識がないとか、新たな高度な知識をつくり出せないことには、富を生み出すことはできません。無論昔のタイプの産業も生き残ってはいますが、それが次世代を切り拓く産業になるかといえば、そんなことはありません。

現代の労働のほとんどには知識労働的な要素が含まれています。工場で働くにしても、様々な管理システムを効率的に管理するには様々な知識が必要です。工事現場で働くにしても、今や昔のようにスコップ一丁で、汗塗れになって土を掘り返すような労働ではありません。そのような仕事のほとんどは重機がこなします。現場では様々な新しい工法が実施されています。これらを実行するには様々な知識が必要とされます。

陸上自衛隊でも、スコップ一丁で塹壕を堀り、小銃を構えるなどという戦法など過去のものです。無論、そのよう場面が全くないということはないですが、それが主流ではありません。様々な情報を駆使して、最新鋭のミサイルを発射するなどの戦法がとられています。やはり、ここでも知識が重要なのです。

旧日本軍の塹壕戦

野党の面々は、このようなことを理解していないので、安全保障に関しても、時代遅れで頓珍漢な認識しかしておらず、数十年前から一歩も進んでいないようです。

現在では知識労働が全くない労働は存在しませんが、知識労働の比重が高い労働者から比較的低い労働者が存在します。その中でも、知識労働が労働のほとんど占める労働者を知識労働者と定義します。

野党の面々は、知識労働者の存在を無視しているため、彼らをどうやって動機づけるかについても全く無頓着です。

経営学の大家ドラッカーは、知識労働者の動機づけについて以下のように述べています。

「知識労働者の動機づけに必要なものは成果である」(『断絶の時代』)

肉体労働については、よい仕事に対するよい賃金でよいです。知識労働については、すごい仕事に対するすごい報酬でなければならないです。知識労働者が求めるものは、肉体労働者よりもはるかに大きい。異質でさえあります。

知識労働者は生計の資だけの仕事では満足できないのです。彼らの意欲と自負は、知識人としての専門家のものです。

知識労働者は知識をもって何事かを成し遂げることを欲します。したがって、知識労働者には挑戦の機会を与えなければならないのです。知識労働者に成果を上げさせるべくマネジメントすることは、社会や経済にとってだけでなく、彼ら本人のために不可欠なのです。

知識労働者は、自らがなすべきことは上司ではなく知識によって、人によってではなく目的によって規定されることを要求します。

知識には上級も下級もありません。関係のある知識とない知識があるだけです。したがって知識労働はチームとして組織されます。仕事の論理が、仕事の中身、担当する者、期間を決めるのです。これは、知識労働者の本質的な仕事のほとんどがルーチンなものではなく、プロジェクトで実行されることをみても明らかです。
有能なだけの仕事と卓越した仕事の差は大きい。そこには職人と親方の違い以上のものがある。知識労働ではこれが顕著に現われる。知識労働は一流を目指さなければならない。無難では役に立たない。このことがマネジメント上重大な意味をもつとともに、知識労働者自身にとっても重大な意味をもつ。(『断絶の時代』)
これは、IT業界などみているとわかりやすいです。IT業界の人々は、他者よりも卓越した仕事をすることが求められています。そうして、卓越した仕事の実績が彼らにとって成果であり、動機づけなのです。


無論、給料も良くなければならないですが、しかし、それよりは、卓越した仕事ができるということ自体が彼らの動機づけになるのです。

このような仕事をしているとき、残業がどうのなどということはさほど大きな問題にはならないのです。そんなことよりも、短期間に時間に関係なく仕事ができ、ブロジェクトが終われば長期の休みがとれるというような環境が彼らにとっては一番馴染むのです。

通常のサラリーマンのように、朝9時〜夕方5時まで、毎日決まって働くという働きかたでは、そもそも知識労働者にはなじまないのです。そのような働き方は、知識労働の度合いの低い労働ではなんとかなりますが、知識労働者には向きません。

また、ドラッカー氏は知識労働者は全員エグゼクティブでなくてはならないとしています。
今日の組織では、自らの知識や地位のゆえに組織の活動と業績に実質的な貢献を果たす知識労働者は、すべてエグゼクティブである。(『経営者の条件』)
組織の活動と業績とは、企業であれば優れた製品を出すことであり、病院であれば優れた医療を提供することです。

そのために知識労働者は意思決定をしなければならないです。自らの貢献について責任を負わなければならないのです。自らが責任を負うものについては、他の誰よりも適切に仕事をしなければならないです。

現代社会では、すべての者がエグゼクティブであるとドラッカーは言います。仕事の目標、基準、貢献は自らの手にあります。したがって、物事をなすべき者は皆、エグゼクティブなのです。

知識による権威は、地位による権威と同じように正当かつ必然のものです。彼らの決定は、本質的にトップの決定と変わらないのです。

研究者ならばプロジェクトを続行するか中止するかを決めることによって、販売部門の経営管理者ならば最高のセールスマンにどの地域を担当させるかを決めることによって、企業としての意思決定を行なっているのです。
もし企業が起業家活動の中心であるとするならば、そこに働く知識労働者はすべて起業家として行動しなければならない。知識が中心的な資源になっている今日においては、トップマネジメントだけで成功をもたらすことはできない。(『創造する経営者』)
むろん、ここでドラッカー氏は知識労働者の働き方の理想を語っているわけですが、とはいいながら、現代ではますます知識労働者の割合が増えていきますし、過去には肉体労働とみなされていた労働の中にも知識労働の割合がますます増えていきます。

このようなことに対応していこうというのが我が国の「働き方改革」でもあります。そうして、その中でも、高度プロフェッショナル制度は象徴的です。まずは、実施してみてから暫時変更して、より良い制度にしていくべきです。野党のようにただ反対しているだけでは、何も進歩はありません。


そのような時代に、野党のように労働といえば、一昔まえの肉体労働のようにとらえ、残業がどうのこうのとばかり言って、新たな知識労働のトレンドに目を向けようとしないのであれば、これからの時代の働き方には対応できません。

過去の日本は、デフレ・スパイラルのどん底に沈んで、知識労働に対する対応が遅れてしまいました。しかし、現状ではもう日本を含めて、先進国のほとんどは知識社会に突入しました。

もう、すでに私達の社会は数十年前の社会と全く異なるのです。私達も、そのことを理解しなければ、変革を妨げ、数十年前の考えから一歩も出られない、野党の面々と同じく、守旧派の頑迷固陋な老人のような存在に成り果て、これからは社会を破壊することになります。

2018年6月1日金曜日

時間のムダだった「愛媛県文書」騒動 確認取らず公表する醜態、ダブスタ目立つ「反アベ」の人―【私の論評】財務省の増税路線を批判しない不思議な野党とマスコミ(゚д゚)!

時間のムダだった「愛媛県文書」騒動 確認取らず公表する醜態、ダブスタ目立つ「反アベ」の人

「愛媛県文書」の存在を知らせる朝日新聞の紙面

 先日の本コラムで、加計学園をめぐり、安倍晋三首相と加計孝太郎理事長が面談したなどと記述された「愛媛県文書」を取り上げた。その際、1年前の「文部科学省文書」とそっくりな構図であることを説明し、最後に、万一事実でなかった場合、メモの提出者と、それを裏取りなしで報道した多くのマスコミの責任は大きいと断じた。

 どうやら、愛媛県文書は事実が書かれていなかったようだ。当事者の加計学園が「誤った情報を与えた」とのコメントを公表したのだ。

 筆者の懸念したとおり、愛媛県文書は書かれている人の確認も取っておらず、証拠能力のある公文書にもならないメモだった。伝聞に伝聞を重ねたようなものだったのだ。文書に書かれている人の確認を取らず、公文書にもならないというのは文科省文書と同じである。

 確認が取れていない文書をそのまま公表したり、マスコミが報じたり、さらには国会で問題視したりすることにどこまで意味があるのだろうか。

 公文書ではないメモを公表するにせよ、書かれている人の迷惑になってはいけないので、その人に事前に確認を取るのが一般常識だろう。

 愛媛県文書も文科省文書もそうした当然の確認行為がないまま公表しており、何らかの意図を持ったものであるといわざるを得ない。その確認をしておけばこのような醜態をさらすこともなかっただろうに。

 そうした文書を報道するためには、裏を取る必要があるだろう。愛媛県文書も文科省文書もともに裏を取るのはそれほど難しいことではないと思われるが、マスコミはそうした当然のことを怠り、あたかも事実のように報道したこともおかしい。

 これを取り上げる国会議員も、国家戦略特区が認可の「申請」を認めただけなのに、認可をしたと間違った理解をしているので嘆かわしい。筆者は以前のコラムでNHKのウェブサイトの記述の間違いを指摘したが、報道は相変わらずである。

 文科省による認可作業は、昨年の4~10月に行われている。3年前に愛媛県と加計学園の間で行われた話が、昨年行われた認可作業にどのような影響があったというのだろうか。

 このように今回の愛媛県文書と1年前の文科省文書にはともに多少「盛って書いた」ところなど共通点が多い。しかし、文科省文書の時には、「首相の意向」と盛って書いた文科省官僚は一切非難されていないが、今回の愛媛県文書の場合、誤った情報を出した加計学園関係者が批判されるのは、ダブルスタンダードだ。

 筆者は、こうしたメモは往々にして伝聞が多く、盛った話ばかりなのでそれを信じないが、首相を追及する手がかりを失ったと残念がる人ほど、こうした「ダブスタ」が多いようだ。

 重ねて言うが、特区で行ったのは単に「認可の申請」だけで、「認可」そのものではない。首相を追及したいなら、この点をきっちりと勉強する必要がある。特区関係の新文書が出てきたと騒いでマスコミが報道し、国会で取り上げるのは時間の無駄でしかない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省の増税路線を批判しない不思議な野党とマスコミ(゚д゚)!



昨日は、国会で嘘の答弁をしたとして市民から刑事告発されていた佐川氏らが大阪地検により不起訴となりました。この1年間、マスコミ・野党は必死で追及しましたが、この結果でした。

マスコミと野党の財務省の文書書き換え追求の目的は麻生太郎財務大臣の辞任でだったと思います。麻生大臣が辞任すれば、安倍政権の屋台骨が大きくゆらぎ、秋の総裁選での安倍三選に赤信号がともると、反安倍陣営は思っていたのでしょう。

29日の国会で麻生大臣は、森友学園をめぐる文書改ざん問題について「改ざんとか、悪質なものではない」との発言に関しての、野党やマスコミの追求もこの麻生下しが主目的でした。

麻生大臣の言葉尻をとらえた、テレビ報道

麻生大臣は「書き換えられた文書の内容を見る限り、少なくともバツをマルにしたとか、白を黒にしたとか、改ざんとかそういった悪質なものではないのではないか。いわゆる答弁に合わせて書き換えたということが全体の流れである」と発言しました。

文書書き換えでも文書改ざんでも、財務省のしたことは国民の信頼を失墜させたことで重大なことには違いありません。しかし、これが麻生大臣の責任かといえば、さすがにそれは違います。

文書の書き換えは麻生大臣の認識できない範疇行われました。あのようなことで、大臣が辞任するということになれば、官僚は大臣をいつでも辞任させることができることになってしまいます。

そうなれば、安倍政権であろうと、安倍首相以外の自民党政権であろうと、他の政党の政権であろうと、文書を書き換えれば官僚はすぐに大臣を辞任させることができます。そんな馬鹿な話はないでしょう。

しかし、マスコミは、麻生大臣が「改ざん、悪質なものではない」「悪質なものではない」と題して、その言葉尻をとらえて報道しています。さらに、野党がこの言葉尻をとらえて、麻生大臣に辞任を迫るという発言も紹介しています。

彼らの報道ぶり、からはマスコミが麻生大臣の言葉尻をとらえていますぐにでもやめさせたいという意図がはっきりとみえます。もちろん野党がそうするのはある程度は、政治的に理解できるところがありますが、マスコミの報道姿勢としてはどうなのでしょうか。 

ところで野党もマスコミも麻生大臣辞任の世論形成にだけ集中しているようで、国民や政治家などの真の敵である財務省については生ぬるい批判しかしていません。さすがに最近の財務省自体は大人しくみえはしますが財政再建や社会保障の拡充という理由で消費増税路線は健在です。

経済財政諮問会議は「骨太の方針」の中に消費増税を明記し、さらに財政再建の期限や目標値を設定しています。昨年の「骨太の方針」では「増税」の文字はありませんでした。

昨年の「骨太の方針」の表紙、中身に「増税」という文字はなかった

昨年なかった「増税」の文字が、今年の「骨太の方針」には現れたということは、野党やマスコミ、識者などの財務省批判などとは全く別に、増税に関しては本来あってはならない財務省の政治的な力は昨年よりもさらに強力になっていることを意味します。

またマスコミも財務省発と思われる消費増税対策を報道したり、または「識者」の中でも消費増税の影響を論じる人が最近目立って増えてきています。

どれも「(消費税の悪影響に)万全の構え」という表現を用いて景気対策の有効性を強調したり、あるいは消費増税の影響自体を過少にみるものが多いです。財務省は見かけは大人しくしていても、その他の増税マスコミや増税政治家、そして増税識者たちが代わりに消費増税を宣伝し、それを着実に具体化していこうとしています。

その増税への熱意は未だに全く衰えていないようです。文書書き換え問題がどうなろうと、国有地売却の疑惑があつたにしても、財務省そのものは何も変わらず、あいかわらず増税路線をひた走りに走っているのです。

消費税増税を前提とした日本経済新聞の記事

増税を推進する、マスコミ、政治家、官僚、識者は消費増税の万全の対策だとか、日本経済への影響は軽微であるとか、2013年から14年にかけて言っていたのと同じような屁理屈で、増税を正当化しています。

しかし、現実は彼らの主張とはまったく異なり、日本経済は大きなダメージを負いました。金融緩和策で雇用は良くなったものの、増税の悪影響が未だ続いており、GDPの伸び率では未だお隣の韓国よりも低い状況です。現状でも、まだ完璧にデフレから回復したとは言い難い状況にあります。これを喜んだのは消費税率を上げることに成功した財務省と増税陣営だけでしょう。もちろん増税陣営の中には野党勢力の多くも存在します。

本当は、麻生大臣の言葉尻りをとらえることよりも、はるかに重大なのはこの財務省の消費増税路線とその弊害です。この問題にこそ日本の将来がかかっています。この問題を追求する野党やマスコミが存在しないというのが、本当に残念です。

もう一度増税すれば、日本経済はとんでもないことになるのは明らかです。また、デフレに戻るのは必定です。そうなれば、円高にもなり、また日本の産業の空洞化がはじまり、若者は、就活に苦しむようになります。やはり、財務省は分割して、他省庁の下部組織につけるという方式で完璧に解体するしかないのかもしれません。

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