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2020年5月2日土曜日

ロシア、政権求心力に懸念 コロナ感染11万人超え 陣頭指揮の首相「陽性」―【私の論評】中国ウイルスで衰退するロシアと、北方領土交渉が今までで最も実施しやすくなる(゚д゚)!

ロシア、政権求心力に懸念 コロナ感染11万人超え 陣頭指揮の首相「陽性」

4月30日、モスクワ郊外の公邸に滞在中のプーチン・ロシア大統領(左)に新型コロナウイルス
感染をオンラインで報告するミシュスチン首相(画面)=ロシア大統領府提供

ロシアの新型コロナウイルス感染者数が急速に拡大している。一日には十一万四千人余に達し、対策で陣頭指揮を執っていたミシュスチン首相(54)の陽性も確認された。早期に中国との国境を封鎖するなど厳しい予防措置にもかかわらず、ここ数日、五千~八千人の感染者が出る日が続き、世界ワースト八位に。地方でもデモが相次ぐなど、市民は不満を募らせている。

ミシュスチン氏から陽性の報告を受けたプーチン大統領は三十日夜、「あなた抜きで重要な政策決定は行われない」と述べ、今後もテレワークで会議に参加するよう指示した。だが一部報道ではミシュスチン氏は医療施設で自主隔離後、高熱に見舞われているという。首相代行にはベロウソフ第一副首相が就いた。

ミシュスチン氏は一月に内閣総辞職したメドベージェフ前首相の後任で、コロナ対策本部を指揮。感染がまん延していた中国からの入国を西欧諸国より早く、二月二十日から禁止し、三月からは外国人の入国を止めた。外出禁止や商店の強制休業などでも徹底した隔離措置を断行してきた。

ロシアは検査を積極的に行い、累計で三百七十万件と米国に次ぐ規模。死者も約1%の千百人超と他国と比べると少ない。感染者の洗い出しと隔離による「封じ込め作戦」が進んでいるとの見方もあるが、拡大に歯止めがかかっていない。プーチン氏も四月二十八日、「ピークはこれからで危険な状態だ」と指摘した。

これに対し、モスクワなど都市部ではネット上で政権批判をしたり、シベリアでは鉱山労働者らによるデモが発生。独立系世論調査機関「レバダ・センター」が三十日に公表した調査では、市民の48%が政権に対してコロナ対策で不満を表明した。

このため、二〇二四年に任期が満了するプーチン氏の続投を可能にする憲法改正の全国投票についても、政権批判票を封じるため、コロナ禍が落ち着くと予想される冬まで先延ばしにするとの報道も出ている。政権は経済活動の維持と感染食い止めを巡り、難しいかじ取りを求められている状態だ。


【私の論評】中国ウイルスで衰退するロシアと、北方領土交渉が今までで最も実施しやすくなる(゚д゚)!

ロシアでは、各地の軍施設や医療機関にも広がっています。1日から連休が始まり、外出の増加が予想されることから、当局は警戒を強めています。

ロシアは、中国ウイルス禍の最中他国に対して、フェイクニュースを流すなどの工作活動を行ってきました。

ガーディアン(3月18日)はEEASが3月に出したレポートをもとに、ロシア政府系メディアが西側諸国の中国ウイルス危機を悪化させる目的でデマを拡散していたと指摘しています。

同紙によると、1月半ばから3月半ばまでの2カ月間に、ロシアが発信源のデマが80件確認されたといいます。内容は「新型ウイルスは中国、アメリカ、イギリスの生物兵器」「感染の発生源は移民」「製薬会社の陰謀」「中国ウイルス自体がデマ」などでした。

ガーディアンが指摘するフェイク情報の拡散は、ロシア政府系メディアのスプートニク、RIA-FAN通信、レン・テレビ(REN TV)などでみられたましたが、その多くは米国の陰謀論サイトや中国、イランのネット上にある陰謀論的書き込みをシェアする形で行われました。

「リトアニアで米軍兵士が感染した」とのデマもSNS経由で拡散されましたが、その引用元として多かったのは、ロシア政府系メディアのRT(ロシア・トゥデイ)スペイン語版でした。

このように政府系メディアとSNSの相互引用で情報発信源を隠しつつ、信ぴょう性を持たせてデマを拡散する手法はロシア情報機関の得意技で「メディア・ミラージュ」と呼ばれます。イランでも同様の手法で「アメリカの生物兵器」「イスラエルの生物兵器」といったデマが拡散されました。

ニューヨーク・タイムズ(3月28日)は、ロシアと中国とイランのデマ拡散工作が互いに連動して、アメリカ社会の分断と弱体化が促されていると指摘しています。

同記事によれば、今回はとりわけ中国が積極的だといいます。これまで中国は、台湾や香港、チベット問題などに関する政治的プロパガンダには積極的に資金を投入してきましたが、陰謀論の拡散にはあまり関与してきませんでした。

にもかかわらず、今回は「ウイルスの発生源は米国」「ウイルス封じ込めに成功した中国共産党のシステムは優れている」といった言説を、発信源を隠して拡散しています。中国ウイルス問題で責任の矢面に立つきわめて不利な立場に追い込まれたことで、ロシアの情報戦略の有効性を認識し、模倣を始めたということでしょう。

そのためか、中国がデマ情報拡散に活用しているサイトは、カナダの親ロシア系陰謀論サイト「グローバル・リサーチ」や、親イラン・ロシア反米系の陰謀論サイト「ベテランズ・トゥデイ」など、もともとロシアが陰謀論を拡散するのに利用してきたところが多いようです。

最後に、ロシアや中国が意図的に拡散したフェイク情報を、EEASレポートから紹介しておきます。

▽「牛乳がCOVID-19に効く」説(presentnews.biz.ua、ウクライナ語)

▽「そもそも中国ウイルス感染は起きていない」説(Der Fehlende Part、ドイツ語、動画)



▽「大手製薬会社の金儲けが目的のアメリカ製人工ウイルス」説(NewsFront、スペイン語)

▽「ビル・ゲイツとロックフェラーによる人口削減の陰謀」説(Journal of New Eastern Outlook、英語)

▽「手洗いは効かない」説(RT、ドイツ語)

▽「亜鉛が中国ウイルスに効く」説(RT、アラビア語)

▽「大手製薬会社と手を組んだ欧米メディアは、中国でビタミンCによる治療に成功したことを無視している」(South Front、英語)

▽「パンデミックは誇張された陰謀。ファシスト国家を作るのが目的」(スプートニク、ドイツ語版)

また、中国の一連のデマ拡散工作について、各所からの分析報告を紹介しておきます。

▽「中国の国営メディアが新型中国ウイルスのパンデミックに関して、国際的な認識に影響を与えようとしている」(Recorded Future)

▽「中国はどのようにツイッターによるプロパガンダの仕組みを構築し、中国ウイルスを解き放ったか」(プロパブリカ)

▽「中国がトランプ非難のプロパガンダ広告~国営メディアは中国のパンデミックへの対応を称賛し、アメリカの過ちを攻撃する広告を多数購入」(テレグラフ)

中露は、世界の中国ウイルス危機に乗じて、これだけの工作を実施しているのです。日本国内でも当然様々な工作を行っているでしょう。日本のマスコミにもいろいろ、直接的間接的に働きかけているでしょうし、政治家などにも働きかけているでしょう。当然SNSでも工作をしているとみるべきです。

彼らの目的は、日本国内を分断させること、アジア内の分断、日豪分断、日欧分断、日米同盟の分断など様々です。私達は、これらに騙されないように中国ウイルス報道や、SNSなどの内容には十分気をつける必要があります。

日本では、脳内がお花畑的な人が多く、こうした中露の工作があるなどとはつゆほども疑わない人も多いようで、特にマスコミで中露の「メディアミラージュ」を取り上げているところはありません。

ロシアがこのような「メディア・ミラージュ」をチャンス到来として、各国に対して工作しているうちに、ロシア自体の感染者が増え、抜き差しならぬ状態になったのは皮肉です。

感染したとされる、ミシュスチン首相といえば、今年の1月に、就任したばかりです。これについては、このブログでも掲載しています。この記事では、プーチンがミシュスチンを首相に据えたのには、それなりの背景があることを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
プーチン院政への布石か 経済低迷のロシア、政治経験ゼロのミシュースチンが首相に―【私の論評】プーチン院政は、将来の中国との本格的な対峙に備えるため(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
プーチンはロシアがこのまま中国の属国になってしまうことを、潔しとはしていないはずです。 ただし、中国はつい最近人口が14億人を超えましたが、ロシアの人口は1億4千万人に過ぎません。経済に関しては、現在のロシアは東京都なみのGDPしかありません。 
だからこそ、ロシアは中国に対する不満はあるものの、属国的地位に甘んずるしかないのです。そうして、プーチン自身も自分の目の黒いうちは、この状況は変わらないと考えていたでしょう。 
しかし、昨年あたりからこの状況は大きく変わってきました。そうです。米国による対中国冷戦が過激さを増してきたのです。もはや米国内では、トランプ政権等とは別にして、米国議会が超党派で中国に対峙する体制を固めています。だから、トランプ氏が大統領をいずれ辞任したとしても、米国の中国に対する姿勢は変わりません。
プーチン(左)と習近平(右)
そうして、どうやら米国は中国が現在の中国共産党独裁体制を変えるか、それができなければ他国に影響力を行使できないように、徹底的に中国の経済を破壊しようとしているようです。そうして、これは最早貿易戦争の域を超えて、価値観の対立にまでなっています。 
中国は独裁体制をおそらく変えられないでしょう。なぜなら、それを実行すれば、中共は統治の正当性を失い、崩壊するからです。となると、米国は中共が経済的に衰え他国に影響力が行使できない程に中国の経済を破壊するまで、制裁を続けるでしょう。 
こうした状況をみたプーチン氏は、自分の目が黒いうち(短くてここ数年、長くて10年くらい)に、ロシアが中国の属国的地位から脱する見込みがでてきたと判断したに違いありません。そうして、ロシアがうまく立ち回ることによって、中共の崩壊を加速することも視野に入れているに違いありません。 
だかこそ、自らは中国との対峙に専念し、国内政治は信頼できる人物にまかせ、自らは他国に伍して中国の崩壊に際して、ロシアの権益を最大限に拡張すべきとの結論に至ったのでしょう。 
さて、中国がある程度経済的にも疲弊した頃には、かつての中ソ対立のように、中露の対立が激しくなってくると予想されます。 
その時がまさに、日本にとっては北方領土交渉がやりやすくなるのです。戦後70年以上が過ぎた今、世界でもっとも危険な国は中国です。この唯物論・無神論を国是とした軍事独裁国家を封じ込めるためには、ロシアは日米と平和条約を結び、協力しなければならなくなります。そうでないと、ロシアは中国の属国とみなされ中国の道連れにされるかもしれません。
今回の中国ウイルス禍では、ロシアは中国ウイルス感染そのもので相当疲弊するはずです。特に、ロシアの最大の主要産業は、 鉱業(石油,天然ガス,石炭,金,ダイヤモンド等)であり、これらは、中国ウイルス禍によってかなり価格が下がっています。

中国ウイルス禍で、経済が疲弊するのは確実ですが、それによる失業や生活困窮などに、対処するのは今日のロシアにとっては困難です。

そもそも、ロシアの人口は1億4千万人で、日本より、2千万人多いのですが、GDPは国でいえば、韓国と同等、日本国内の都市でいえば、東京都なみです。ロシアと日本は人口は大差はないですが、中国ウイルス感染者数5月1日現在では、ロシアは12.4万人です。死者は、1,222人です。日本は同時で、感染者数1.4万人、死者数は493人です。ロシアの被害が酷いことがわかります。

日本全体の経済が東京都なみだとしたら、どうなるか想像してみてください。現在政府は、国民一人あたり10万円の給付を決めました、休業補償については財務省が渋ってはいますが、日本の経済力(そもそも財務省の言う、国民一人当たりの借金が1000万円であるとは、財務省の大嘘)であれば、やろうと思えば実行可能です。

しかし、ロシアは違います。日本の東京都と同等の経済のロシアの軍事力は米国に次いで、世界第二位です。宇宙開発も手広く行っています。そうなると、国民の雇用や、困窮者に対する補助するための資金を捻出するのはかなり難しいです。

そうなると、プーチン政権の求心力はかなり落ちることになります。そうなると、プーチンの夢でもある、ロシアが中国の属国的地位から脱するという目論見は水疱に帰し、ロシアはますます中国の属国的な立場から逃れなくなります。

それは、プーチンとしては潔しとしないでしょう。これを解決するには、日本に北方領土を返還し、手厚い経済協力を得るしか方法はないかもしれません。

かつて、丸山穂高衆院議員は、北方領土問題について「戦争をしないとどうしようもなくないか」「(戦争をしないと)取り返せない」などと発言してトラブルになりました。

しかし、戦争で取られたものは、戦争で取り返すしかないというのは、厳然たる事実です。これが、国際社会の現実です。

ところが、現在ロシアで起こっている中国ウイルス禍はまさに、戦争と匹敵するほどの非常事態です。

今のロシアは、どこまでも疲弊し、これも沈みつつある中国の属国的地位から、真の属国に成り下がるか、あるいは、日本の支援を受けてロシアが中国の属国的地位から脱するかのいずれか一つです。

このような大きな取引は、残念なが米国とはできないでしょう。米露には、北方領土のような大きな懸案事項はないからです。日本としては、素早く中国ウイルス禍から脱却して、世界情勢も国内情勢も疎く、省益のためだけに突っ走る財務省の干渉を押さえつけて、経済を急速に回復して、ロシアに見せつけるときです。

その時こそ、北方領土交渉は今まで一番やりやすくなります。このようなことを言うと、嫌がる人もいるかもしれませんが、かつてのソ連は日ソ不可侵条約を一方的に破り、日本領に侵攻して、北方領土を掠め取ったのです。それどころか、何の法的根拠もないのに、シベリアに多数の日本人を抑留し、多数の死亡者がでました。占守島の戦いで、日本軍が奮戦しなければ、北海道もソ連領になっていたかもしれません。

検索結果

ウェブ検索結果占守島の戦い

我々日本人は、それを忘れるべきではありません。日本としては、中国ウイルスが終息すれば、すぐにでも北方領土交渉を再開すべきです。そうして、北方領土を返還させるだけでなく、ロシアを中国に対峙する日米側に取り込むべきです。

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2020年3月29日日曜日

中国 陽性でも無症状は感染者に加えず 感染拡大に懸念の声―【私の論評】中国共産党も、日本の財務省も、その本質は「死神」であることが顕になりつつある(゚д゚)!

中国 陽性でも無症状は感染者に加えず 感染拡大に懸念の声


中国では新型コロナウイルスに感染して陽性反応が出ても症状がないことを理由に感染者の統計に加えず、公表もされていませんが、「無症状」の感染者から感染した可能性があるケースが出ていて、感染が広がることに懸念の声が上がっています。

中国 河南省の保健当局は28日、国内で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者45人のうち、省内の女性1人について、陽性反応が出ても症状がない人と濃厚接触していたと発表し、「無症状」の感染者から感染した可能性があることを明らかにしました。

中国政府は無症状の感染者について、隔離して2週間の経過観察の対象となるものの、せきなどの症状がないため感染させる確率は比較的低く、公表する必要がないとして感染者の統計に加えていませんが、香港メディアは非公開の記録として、先月末の時点で無症状の感染者が4万3000人以上に上っていたと伝えています。

国民からは公表されていない「無症状」の感染者から感染が広がることに懸念の声が上がっていて、李克強首相は今月26日に開いた会議で情報公開や対策を強化する方針を示しました。

【私の論評】中国共産党も、日本の財務省も、その本質は「死神」であることが顕になりつつある(゚д゚)!

中国は感染の初期段階でも、感染の事実を隠蔽したため、多くの国々の人々が感染しました。これは、すでに多くの人が知っている事実です。

中国の統計データは2月に3度も統計変更がありました。通常は変更後と変更前の複数時系列が発表されるべきですが、公表もそうした措置は見当たらず、全く信用ができません。

陽性反応が出ても症状がないことを理由に感染者の統計に加えなかったとしても、感染者として追跡をしたり、囲い込みをしたり、自宅療養させるなどの隔離の措置をとっていれば、防疫体制にはあまり問題がないかもしれませんが、もしこれを通常の感染していない人と同じ扱いをしていたとしたら、とんでもないです。

しかし、とにかく習近平政権としては、武漢ウイルスの感染が中国では終息したことをアピールしたいようですから、感染していない人と同じ扱いをしている可能性は高いです。

そうなるとさらに、かなりの人に感染がこれからも広がる可能性が高いです。これでは、日本としても、中国からの入国制限を当面緩めることはできません。

非常時には人の本質が顕になると昔から言われていますが、今回の非常時において、習近平や中国共産党の本質が顕になったのが、この統計の操作です。

とにかく自らの落ち度にならないように、自ら無謬でありたいがため、統計のとり方まで兵器変えてしまうのが、中共なのです。統計の操作といえば、もともと中国のGDPの値もほとんど信じられていません。まずは、地下経済を完璧に無視したものになっています。

さらには、伸び率などほとんど出鱈目です。これらは、貿易相手国の正確な数字を用いて、実際輸出入の数字とGDPに相当乖離があることや、人工衛星からの中国の夜間の灯りの推移を観察した結果などからも、かなり出鱈目であることが実証されています。

中国の統計数値は、正確なデータではなく、「政治的メッセージ」であるとみなすのが正しいです。要するに「武漢ウイルスを根絶せよ」「GDPをこのくらい伸ばせ」という号令のようなものとみなすべきなのです。

このようなことを、平気でするのが中共です。非常時には人の本質が顕になるというのは、無論中共だけではなく、日本の中でも見られることです。

たとえば、最近では広島県の県立広島大は29日、新型コロナウイルスへの感染が確認された今春卒業の女子学生(20歳代)について、欧州を旅行後、症状があったにもかかわらず、卒業式に出席していたと発表しました。大学側は1月以降、全学生に海外旅行を自粛するよう求めていました。

大学によると、学生は今月5~13日、英国などを旅行。帰国後、のどの痛みや鼻水などの症状が出たにもかかわらず、23日に学科別に開かれた卒業式にマスクをして出席しました。学生は福岡県在住で、同県が28日にこの学生の感染を発表しました。


少し古いもので記憶に残るものとしては、2月18日午後8時頃の福岡市営地下鉄内で、同じ車両の席でマスクをせずに咳をしている人がいるというので、非常通報ボタンを押し、電車を止めた男がいました。

テレビでも放映されたが、優先席に座っているので高齢者のようです。車内はガラガラでした。それほど嫌なら席を変えるかいったん下車すればよいです。“迷惑爺”としか言いようがないです。

しかも、この男は偉そうに足を組んで座っているのです。マナーも知らないようです。この現場に居合わせた青年によると、車内では「頭おかしいんじゃない」という声が上がっていたそうです。

2月28日には、山手線でもマスクした女性が咳をしたところ、女性に対して「コロナウイルスの可能性があるから、隣の車両に移れ」と怒鳴る男がいて、それを注意した男性と怒鳴り合いになる場面がテレビで放映されていました。傑作だったのは、この場面を撮影した高校生の「大人気ないなあ」というコメントでした。この男も恥ずかしい姿をさらしてしまいました。




トイレットペーパーをめぐっても恥ずかしい行動が相次ぎました。あるスーパーでは、デマ情報に踊らされた相当高齢だと思われる男性が12ロール入りのトイレットペーパーを4つもカートに乗せていました。この恥ずかしい映像は全国に放映されました。今の時代、どこで誰に撮られているか分かったものではありません。

先月末から今月にかけてトイレットペーパーがスーパーの棚から消えてしまいました。原因はSNS上で「トイレットペーパーなどの製造元である中国が、生産をしていないので品薄になる前に購入したほうがいい」というデマ情報が拡散したためです。

このデマ情報を拡散させた1人が米子医療生活協同組合の職員だったことが判明し、同生協が謝罪会見を行いました。この職員は、「伝え聞いた情報を確認せず投稿してしまった。転売目的ではない」などと釈明しているようですが、無責任きわまりない行為です。

愛知県・蒲郡市では、陽性だと判明した50代の男性が「コロナウイルスをまき散らしてやる」と言って、飲食店やパブに行っていたことが判明しました。正気の沙汰ではないです。当人は、すでに亡くなったそうですが、言語道断の行為です。

静岡県・焼津市から選出されている諸田洋之県議が大量のマスクをインターネットオークションに出品していたことが判明した。3月9日に本人が行った記者会見によれば、888万円の売り上げがあったそうである。もともと会社で持っていたものなので転売ではないから、悪いことをしたとは思っていないと開き直ったそうです。

1枚せいぜい数十円のものを何倍、何十倍もの値段で販売するというのは、マスク不足につけ込んで金儲けをしたということです。こういう他人の危機につけ込んでやる金儲けをするというのは、卑しいやり方です。県議以前に、人間として批判されるべきです。

以上のように、日本国内でも非常時には人の本質が顕になるという例がかなりみられました。これからも、怒るかもしれません。人の振り見て我が振り直せという格言もあります。私も、このような愚かなことをしないように気をつけたいです。

しかし、この現象は財務省にまで及んでいます。このブログでも、以前指摘したように、今回のような非常時には、経済の大停滞と未曾有の危機であり、かつ、消費税増税で景気が低迷しているわけですから、低所得層や子育て世帯の生活底上げを目指す給付金の支給と景気の底上げを目指す、消費税減税の両方を実行すべきです。

すぐに、効果がでるように、給付金を支給し、その後消費税減税を行い、その後も何度も様々な政策を実行すべきです。そうして、それを実行するには国債を発行すればよいです。国債発行により、金利が上昇することがあれば、日銀が金融緩和をすれば良いのです。今の日本ではやりようはいくらでもあります。

しかし、財務省は減税は頑としてやりたくないようで、政府に足して減税か給付金かの二者択一を迫っているようです。これは、はっきりいって財務省の越権行為です。減税と給付金を実行するしないかあくまで政府が決めるべきものです。

経済危機や不況の時の不十分な経済政策は、死者を生み出すことがスタックラー&バス『経済政策で人は死ぬか?』草思社で説得的に解説されています。これについては、このブログでも解説しました。その意味では長期停滞の主犯である財務省と旧日銀は人殺し組織といっても過言でないです。失業率と自殺者数の負の相関(オークンの法則)は明瞭なその証拠です。


仮に非常事態宣言を出せば経済への損失はさらに拡大するのは間違いないでが、それは経済対策をうまく実行すれば乗り越え可能です。国民一人当たり現金給付、消費減税などを行えば十分可能です。

これは、杞憂であってほしいのですが、といいつつ、その可能性は十分あると思うのですが、非常事態宣言による経済の悪化に対処するための経済対策に財務省の抵抗があり、政府がなかなか非常事態宣言に踏み切れないとすれば、財務省は本当に誰がみても人殺し組織ということになります。

このようなことを述べると、「政治家が悪い」「安倍政権が悪い」とかいいだす人も多いのではないかと思います。確かにその側面はないとはいえませんが、この種の愚劣な意見こそが、政権をまたいでずっと30年超も財政再建を無意味に唱える財務省を放任してきたともいえます。

中国共産党も、日本の財務省も、その本質は「死神」であることが顕になりつつあります。無論中国共産党と比較すれば、日本の財務省の官僚など、はるかにスケールが小さく「プチ死神」とでも呼ぶべきなのかもしませんが・・・・・・・。死神は死神です。

これからも、国でも、組織でも、個人でも、非常時にはその本質が顕になることが多いものです。顕になれば、顕ではなかったときよりは、その本質を見極め、良いことなら、それを応援し、悪いことなら、糾弾すべきです。糾弾されなければ、組織でも個人でも、ますます腐り、さらに悪さをするようになります。

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2020年3月12日木曜日

「特措法」改正で野党の微妙な立場 緊急事態宣言に「改憲」への懸念も 民主党時代の法律否定もできず ―【私の論評】安倍総理が主張するように、いますぐ「緊急事態宣言」を出す必要はない(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

左から立憲民主党・枝野幸男代表、福山哲郎幹事長
新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案は最速で13日にも成立する見通しとなっている。今回の新型コロナウイルスを対象に加える法改正によって、何ができるのか。「緊急事態宣言」について懸念する声もあるが、どのような問題があるのだろうか。

 新型インフル特措法は、民主党政権下の2012年に制定された。同法32条により、内閣総理大臣は「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行うものとしている。

 今回の場合でも、安倍晋三首相は「新型コロナウイルス緊急事態宣言」を行うことができるようになる。また、現在、事実上政府より行われている外出自粛要請や興行場、催物等の制限等の要請・指示についても法的根拠となる。生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)も規定されており、マスクに関する政府措置の法的根拠にもなる。

 さらに、政府関係金融機関等による融資が規定され、国や都道府県による費用の負担のほか、損失補償や損害補償等の財政負担についても規定されている。これらは今回の新型コロナウイルスの場合にも適用される。

 ただし、財政措置については、現行法は医療関係に限定されているので、改正法案では学校休校などに伴う補償措置なども盛り込まれるだろう。

 新型インフル特措法は民主党政権で成立したものだが、個人の自由や権利の制限につながる恐れもあることから、日本弁護士連合会や日本ペンクラブは反対していた。当時、野党だった自民党ですら、恣意的な緊急事態宣言への懸念を表していた。

 ところが、今回は攻守所を変えて、与党の自民党が攻めている。興味深いのが、自民党は憲法改正において緊急事態条項を掲げていることだ。緊急事態宣言と緊急事態条項は名称は似ているが、前者は法律事項、後者は憲法事項という違いがある。

 ほとんどの国の憲法には、緊急事態条項がある。ワイマール憲法での緊急事態条項がナチス政権の暴走を招いたとされるドイツでも、戦後ナチス再来を防ぐために、緊急命令権をなしとするなど工夫して緊急事態条項をドイツ連邦共和国基本法(憲法)中に規定した。しかし、今の日本国憲法にはそもそも緊急事態条項がないため、自民党では憲法改正によって盛り込もうとしている。

 もっとも、憲法の範囲内で国民の権利制限が可能となる例として、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法、新型インフルエンザ等対策特別措置法などがある。

 そこで自民党は、憲法の範囲内で緊急事態宣言を行おうとして、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正という「変化球」を投げ込んできた。

 しかし、これは、野党にとっては憲法改正への一里塚に見える。野党としては、憲法改正への機運が盛り上がると困る。かといって、民主党時代の法律を否定もできないという微妙な立場になる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理が主張するように、いますぐ「緊急事態宣言」を出す必要はない(゚д゚)!

新型コロナウイルスの感染拡大に備え「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案は12日、衆院本会議で賛成多数で可決され、衆院を通過しました。自民、公明の与党に加え、立憲民主党、国民民主党などの野党も賛成した。13日の参院本会議で成立する見通しです。

緊急事態宣言といえば、すでに北海道ではだされています。しかし、留意すべきは、北海道の緊急事態宣言には法的根拠がないことです。あくまでも自主的な呼びかけに過ぎず、国民(北海道民)や企業に対する強制力はありません。

一方、法整備が検討されている新型インフルエンザ対策特別措置法の改正案に基づく緊急事態宣言には、強制力があり、その前提の違いを正しく認識する必要があります。すなわち、法律に基づく「緊急事態宣言」では、自粛ではなく強制的な企業活動の縮小・停止、外出の禁止といった事象が発生する可能性があるということになります。

緊急事態宣言の流れを以下に掲載します。


立憲民主党の山尾志桜里衆院議員は12日、同党などでつくる野党統一会派の会合で、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、首相による「緊急事態宣言」を可能とする改正案の採決で反対することを表明しました。同日の衆院本会議で同党は賛成する方針で、山尾氏が造反を宣言した形です。

「緊急事態宣言」をめぐって、野党は、権限行使に一定のハードルを設ける必要があるとして、改正案に「国会による事前承認」(緊急時は事後承認)を明記する修正を求めていました。

ところが、与野党の断続的な協議を経て、立憲や国民民主党は改正案の付帯決議に「国会に事前に報告する」という文言を盛り込むことで妥協。党としては、賛成に回ることを決めました。

 立憲執行部の内実を暴露する山尾議員。指摘された安住国対委員長は背後からニラミつけた。
 =12日12時45分頃、衆院第4控室
この、「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案は明日にも成立しそうですが、成立したからといってすぐに「緊急事態宣言」が出されることはないでしょう。

なぜなら、このブログでも昨日示したように、日本はどう考えてみても現時点で深刻な感染国とはいえないからです。

その記事のリンクを以下に掲載します。
イタリア 感染者が1万人超える 新型コロナウイルス―【私の論評】日本は感染国ではない!見通しを示さず客観性に欠けたマスコミ報道が日本の悪いイメージをつくった(゚д゚)!
この記事から一部と、グラフを引用します。
各国の感染者数は、5日現在で、中国本土8万272人▽韓国5621人▽イタリア3089人▽イラン2922人▽その他(クルーズ船)706人▽日本331人▽フランス285人▽ドイツ262人▽スペイン222人▽米国153人▽シンガポール110人▽香港105人なです。 
ワイドショーなどでは、感染者数だけ報道し、結局脅威を煽るようなことになっていますが、これは以前のこのブログの記事でも示したように、もっと客観的に見るべきです。人口の多い国が、感染者が多くなるのは当然のことで、人口の多い国も少ない国も、感染者数だけでみたり、比較するのはあまり意味がありません。 
公衆衛生学では、感染者数を人口10万人あたりでみるのが普通(感染者数➗人口✖10万人)です。そうすると、韓国11・0人▽中国本土5・6人▽イタリア5・1人▽イラン3・6人▽シンガポール1・9人▽香港1・4人▽スペイン0・5人▽フランス0・4人▽ドイツ0・3人▽日本0・3人▽米国0・1人です。 
どちらのデータを見ても、日本が感染国とはいえないです。乱暴ですが、あえてクルーズ船の感染者数を日本に含めたとしても0・8人であり、感染国とはいえないという結論に変わりはないです。はっきりいえば、政府が手をこまねいているうちに、マスコミ報道で日本の悪いイメージができあがったというだけなのです。以下にグラフを掲載します。(以下のグラフの日本には、クルーズ船の感染者は含まれていません)


上で示した数値は、5日現在、グラフは8日現在のものです。少し古いので、日本だけ本日の最新の数値で計算してみます。本日は、日本の感染者数は649人ですから、10万人あたりでは、0.6人です。これでは、どう考えてみても現状で「緊急事態宣言」を出すような状況ではありません。これが、1人、2人と増えた場合、もしくはそこまでいかなくても、急速に増えた場合には「緊急事態宣言」を出すべきでしょう。

実際、国会で、新型コロナウイルスをめぐる現状について、安倍首相は、自治体による外出自粛の指示などが可能となる「緊急事態宣言」を出すような状況ではない、との見解を示していました。

政府は今後、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し、重大な影響が出そうになった場合、「緊急事態宣言」を出して政府や自治体が、外出自粛の指示などの強い措置をとれるようにするため、『新型インフルエンザ等特別措置法』の改正を目指しているのです。

こうした中、参議院予算委員会で野党議員は「すでに緊急事態ではないか」と安倍首相を追及しました。

日本維新の会・松沢成文議員「世界的な蔓延、つまり、パンデミック宣言、もうせざるをえないっていうところまで来てるんですよ。緊急事態だということを、なぜ言えないんですか」

安倍首相「(現状は)緊急にさまざまな対応をしなければいけない事態ではありますが、法的に『緊急事態』であるかどうかということについては、感染のスピードが急速に拡大しているということではまだないわけでございまして」と説明していました。

10万人あたり感染者数から判断すると、まさに安倍総理の考えは正しく、野党の追求は頓珍漢です。野党は、追求しようとするなら、明確なエビデンスにもとづき追求すべきです。過去の「もりかけ桜」も、明確なエビデンスではないもので、追求していましたが、野党はこのようなことばかりを繰り返してきたので、国会でまともに追求することもできないようです。

日本のマスコミも頓珍漢なのですが、政府のほうも10万人あたりの感染者数を開示するなどして、国民に対して客観的な正しい情報を伝えていくべきと思います。

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2019年9月3日火曜日

「第2の天安門」の懸念が消えない香港デモ―【私の論評】香港のインターネットをはじめとする、あらゆる通信手段がシャットアウトされたとき、中国の香港への武力侵略が始まる(゚д゚)!

「第2の天安門」の懸念が消えない香港デモ

岡崎研究所

「逃亡犯条例」の改正をめぐって始まった香港の抗議デモは、10週を超え、空港や市内の交通機関を麻痺させるほど展開を見せている。これに対して、中国共産党は、人民解放軍を香港の近くに集結させる等、「第2の天安門事件」が香港において起こりうるような状況が出てきている。

中国人民解放軍

 8月8日付の英エコノミスト誌は、天安門事件のようなことにならないようにとの希望、期待を表明し、そういうことになった場合、「中国の安定も繁栄も」悪影響を受けると中国に警告している。しかし、中国の共産党指導部がどう考えるか、予断を許さない状況である。

 ここで思い出される事件は、1968年のソ連軍のチェコ侵攻である。まさかソ連がそこまで乱暴なことはしないであろうと考えていたが、間違いであった。8月21日、タス通信が、「ソ連はチェコ人民に友好的援助を提供することにした、その援助には軍事的手段によるものも含まれる」と報じ、ソ連軍は、チェコに軍事侵攻した。実は、この侵攻の前に、赤軍とワルシャワ条約機構の軍隊がチェコ周辺で演習をしていたことが、あとから分かった。

 今回も、香港に近い深圳で人民解放軍が演習をしている。部隊が集結している。それを踏まえて、トランプ大統領は、中国に自制を求め、習近平主席に香港のデモの代表者らと対話することを訴えているが、習近平がそれに応じる気配は今の所ない。

 人民解放軍は、香港自治政府の要請があれば、いつでも出動する用意があるとしており、国務院の香港担当部局は、我々の自制を弱さと受け取ってはならないと警告を発している。

 香港の抗議デモ隊の側も、香港自治政府側も、不信を乗り越えて対話するなど、事態を鎮静化する方向で努力すべきであろう。逃亡犯条例改正問題は、抗議者側が実質的にそれを阻止することに成功した。更なる民主化をという気持ちはわかるし、警察のやり方への憤懣もわかるが、ほどほどに要求を抑える必要がある。香港独立、香港人が主役の香港など実現不可能である。香港の特別な制度は2047年までは続くことになっている。その制度、地位を守るためには、多少の妥協も必要になろう。

 中国は、米国の策謀、テロの兆しを指摘し、軍事介入した場合の口実作りをしている気配がある。また、中国のこの問題への対処ぶりは、外交上の考慮よりも内政上の考慮で決められる可能性が高い。新疆ウイグル、チベット自治区の現状を見ても、香港の将来が明るいとは決して言えないだろう。1989年と比べても中国は大きくなりすぎた。1997年に、香港の「一国二制度」が50年間続けば、中国も民主化するのではないかと言われていたことが、幻想であったことは、今日の状況を見れば明らかである。

 そんな中、8月20日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙に、米上院院内総務のマコーネルが、香港のデモを支持する論説を掲載した。マコーネル院内総務は、香港の問題は北京の国内抑圧の強化と海外での覇権追求の結果である、香港の自治が侵食されれば米上院は対応措置を取っていく、中国は混乱を回避すべきであると述べている。中国が香港に武力介入することがあれば、すぐに米国議会が何らかの措置を取ることになるだろう。トランプ大統領も習近平主席に対して、香港に武力介入したら議会が対抗措置を取るから、貿易で取引も出来なくなってしまう、だから止めてほしい、と述べている。

【私の論評】香港のインターネットをはじめとする、あらゆる通信手段がシャットアウトされたとき、中国の香港への武力侵略が始まる(゚д゚)!

まずは、冒頭の記事にもある、1968年のソ連軍のチェコ侵攻について振り返っておきます。



チェコスロヴァキアでは、1948年に成立したチェコスロヴァキア社会主義共和国のノヴォトニー共産党第一書記による政権のもとで、経済の停滞と言論の抑圧などに対する不満が強まっていました。1968年に民主化運動が盛り上がり、ノヴォトニーは辞任、後任にドプチェクが就任しました。

ドプチェク第一書記は、路線の転換と民主主義改革を宣言、一気に「プラハの春」と言われた改革を実行しました。3月にはノヴォトニーは大統領も辞任、代わって第二次世界大戦の国民的英雄スボボダが選出されました。ドプチェクの改革は社会主義を否定するものではなく、「人間の顔をした社会主義」という言葉で示されるように、国民の政治参加の自由、言論や表現の自由などを目指すものでした。

この動きに対してソ連のブレジネフ政権は社会主義体制否定につながると警戒し、介入を決意、1968年8月20日にソ連軍を主体とするワルシャワ条約機構5カ国軍の15万が一斉に国境を越えて侵攻、首都プラハの中枢部を占拠してドプチェク第一書記、チェルニーク首相ら改革派を逮捕、ウクライナのKGB(国家保安委員会)監獄に連行しました。

これがチェコ事件と言われるもので、全土で抗議の市民集会が開かれ、またソ連の実力行使は世界的な批判を浴びました。スボボダ大統領は執拗にドプチェクらの釈放を要求、ソ連は釈放は認めましたが、ソ連軍などの撤退は拒否しました。

当時世界は、まさか当時(戦後23年、社会主義国チェコ・スロバキア独立より20年)のソ連が、ソ連軍を主体とするワルシャワ条約機構5カ国軍の15万人もの軍隊をチェコに侵攻させるとは思いもよりませんでした。

こうした苦い経験があるからこそ、上の記事では「第2の天安門事件」が香港において起こりうることを憂慮しているのです。

しかし、香港が大英帝国の統治下にあったときから、今日に至るまで、香港は他国から武力侵攻を受けた歴史はありません。日本軍も、香港には武力侵攻していません。あくまで、平和的に英国から行政権を移譲という形式で統治しています。

なぜ、香港が武力侵攻されなかったのか、それにはそれなりの理由があります。

それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
香港騒動でトランプは英雄になる―【私の論評】トランプの意図等とは関係なく、香港の自治が尊重されないなら、米国は香港を中国と別の扱いにすることはできない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、現在の香港が中国の武力侵攻を受けにくい理由に関する部分のみ以下に引用します。
 ところが、まずそうした状況にはならないだろうと楽観視しているのは香港の事情に精通する米国人ジャーナリスト、ワシントン・ポストのマーク・セッセン記者だ。 
「中国の軍隊が香港に侵入し、香港市民の抗議デモを鎮圧するのはかなり難しいのではないのか。軍隊を出動させても抗議デモを天安門の時のように鎮圧できないからだ」 
 その理由を3つ挙げている。 
 1つは、香港の地形だ。香港島、九龍半島、新界と235余の島からなるが、山地が全体に広がり、平地は少ない。香港島北部の住宅地と九龍半島に人口が集中している。 
 市街は曲がりくねった狭い迷路だらけ。それに坂が多い。重装備の戦車や装甲車が活動するには極めて不適切だ。 
 2つ目は、今回の抗議デモには指導者がいないし、1か所を叩いてもすぐほかの場所で抗議デモが始まる。モグラ叩きのようなものだ。 
 現在は6月に200万人デモを行った民主派団体「民間人権陣線」が抗議活動の指揮を執っているようだが、市民は自然発生的に広がっている。 
 3つ目は1989年の天安門事件の当時にはなかったSNSをはじめとするインターネットの普及だ。市民間のコミュニケーションの手段になっているだけでなく、中国軍の一挙手一投足が動画で世界中に流れる。 
 中国政府の全く統制の取れない状況下で中国軍対香港市民の武力衝突→多数の死傷者といった事態が同時多発的に全世界に流れる。 
 それが習近平国家主席と中国共産党にとってどんな意味を持つか。知らぬはずがない。 
https://www.washingtonpost.com/opinions/2019/08/15/china-does-not-have-upper-hand-hong-kong-trump-does/
確かに、香港は市街戦をするにしても、なかなかできそうにもありません。攻める側は相当苦戦と犠牲を強いられるでしょう。

デモ隊の鎮圧もかなり困難を極めるでしょう。

実は香港には、すでに中国人民解放軍(PLA)の守備隊約5000人が駐屯しています。ただし、これは返還後から続いていることで、ふだんは存在感が薄く、中国の主権を示す象徴的な存在に過ぎません。

とはいいながら、7月31日にはこの守備隊が、兵士の訓練動画という形で沈黙を破りました。動画では兵士が広東語(香港の公用語)で「何があっても自分の責任だぞ」と叫んだり、香港警察がデモ制止に使う決まり文句「停止衝撃否則使用武力(突入を止めろ、さもなくば武力を使うぞ)」が書かれた赤い警告旗を掲げて行進したりしています。

これは中国側からの「警告」と、広くとらえられた。中国政府からは「火遊びをすれば大やけどをする」、「(中国の)抑制的な姿勢を弱さと勘違いすべきではない」といった発言も出ています。

しかし、中国が軍事介入をした場合、国内的にも国際的にも政治的リスクがあまりに大きく、事態を悪化させるのは必定です。

軍事介入は圧倒的なものでない限り、ますます抵抗を呼ぶことになるでしょう。では、他の方法で、香港を制圧することはできるのでしょうか。

まずは、中国は政治介入による制圧が可能かということがあります。これに関しては、議論の分かれるところですが、すでに中国は何度も香港に政治介入をしており、それが最近の抗議行動につながっていると見ることができます。

香港の立法会(議会)は中国寄りです。2017年には大規模な抗議デモにもかかわらず、ひとつの法律を成立させました。香港トップの行政長官に立候補する人は、親中国のメンバーが多数を占める委員会であらかじめ承認される必要がある、という内容でした。

さらに、当選した行政長官は中国政府の承認を得なければならず、その後に閣僚を選出できるとされました。

2017年の選挙で当選した現職の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、「逃亡犯条例」改定案を立法会に提案。今回の長期にわたる抗議デモを引き起こしました。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官

中国政府は林鄭月娥氏の辞任を断固として認めなかったり、同氏が改定案を取り下げるのを拒んだり、あらゆる方法で力を誇示してきました。

中国政府は、世論が林鄭氏の辞任に追い込むことなどできないと示したいので、辞任を認めないでしょう。

仮に林鄭氏が辞めることになっても、中国政府が支持する人が後任になることは間違いないです。

ただし、中国が香港に対して、政治介入を強めれば、強めるほど、香港デモは激化することも間違いないです。

次に、中国は個人を標的にできるでしょうか。今回の抗議デモの発端となった「逃亡犯条例」改定案は、中国政府にとって、香港の政治活動家たちを本土に移送し、有罪と認定する手段になると非難されています。

林鄭氏は、改定案の審議はもう求めないとしています。ところが、逃亡犯条例が改定されないとしても、中国政府が法律のあるなしに関わらず、抗議に参加する市民を拘束するのではないかという心配が、香港で根強いです。

そうした不安を感じさせる有名な事件が、香港の書店主で、中国政府に批判的な本を販売していた桂民海氏をめぐるものです。桂氏は2015年にタイで行方不明になった後、中国にいることが確認されましたが、2003年の交通事故をめぐって拘束されており、裁判で有罪とされ刑務所に送られました。

2017年に出所したが、翌年に中国の列車内で再び拘束されたとみられ、それ以降は行方が確認されていないです。

活動家の家族が中国本土に住んでいる場合は、その家族に影響が及ぶことも考えられます。

ただし、個人を標的にして、さらに多数の個人を拘束したとしても、香港デモはさらに激化するだけに終わります。

結局、政治的介入も、個人を標的することでも、中国は香港のデモを鎮圧できないことになります。

では、中国にとって残された道は、香港に人民解放軍を送りこみ、武力鎮圧して、香港そのものを中国領土にしてしまうのでしょうか。

これも、できそうもありません。共産党政権は香港を利用してきました。香港を窓口にして西側の情報を収集し、金融センターとしての利点を十二分に活用。先端技術と豊富な資金を延々と本土に吸い上げてきました。

ただし自分が強くなったので香港を切り捨てるかというと、そうもいかないのです。北京にとって、情報収集窓口や金融センターとしての利用価値は下がりつつありますが、それ以上に重要なのは香港が共産党高官たちの「蓄財の要塞」として機能している点です。

国家主席の習近平を含め、共産党政権の高官たちはほぼ例外なく香港に不正に獲得した財産を隠匿している、と報道されています。「祖国内部に不正蓄財」するわけにいかないので、彼らは今後も「半死」状態の香港に、限られた「繁栄と自治」を与え続けるでしょう。

そうなると「香港民族」の都市国家建設の夢も消えないでしょう。それは、中国共産党としては許容できないので、結局いずれ、香港を武力鎮圧することになる可能性は高いです。

ただし、武力鎮圧の直前には、インターネットをはじめあらゆる通信手段をシャットアウトするでしょう。そうして、中国は、人民解放軍ではなく、鎮圧の専門部隊である、人民武装警察を大量に動員して、香港を鎮圧するでしょう。当然多数の犠牲者は出ますが、それでもあまり犠牲者を出さないことと、情報を切断することで、中国は世界からの批判をかわそうとるするでしよう。

ただし、世界からの批判は中国政府が思ったよりも激しいものになり、天安門事件の直後のように、世界中から制裁を受け、当惑することになるでしょう。それで、習近平は失脚することになるかもしれません。

その後香港にはは、中国政府の傀儡政権ともいえるような、行政府ができあがり、限られた「繁栄と自治」を与えられ、細々と生きていくといことになるでしょう。香港が元に戻れるのは、中国が崩壊したときになるでしょう。

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2019年5月8日水曜日

中国、1年間で1000万人が失業 天安門の再来を事情通懸念―【私の論評】平成の始まりに起きた、この事件を風化させるな(゚д゚)!

中国、1年間で1000万人が失業 天安門の再来を事情通懸念

あの悪夢が繰り返されるのか

中国の今年1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.4%増だった。これは、28年ぶりの低成長だった昨年全体の経済成長率の6.6%を下回る結果となり、中国経済の減速傾向が鮮明になった。これに伴い、中国では昨年1年間で約1000万人が職を失うなど、今後も失業ラッシュが続くことで、中国各地で激しい労働争議が発生することが予想される。

中国では昨年7月からトランプ米政権が対中貿易赤字の拡大を理由に、中国からの輸入品への関税を増額するなど米中貿易戦争が勃発しており、中国経済に大きな打撃を与えている。

中国国家統計局が1月21日に発表した2018年のGDPは実質で前年比6.6%増だったが、成長率は2017年から0.2ポイント縮小し、天安門事件の影響があった1990年以来28年ぶりの低水準となっている。

このため、中国では対米輸出の比率の高い製品を製造している企業が影響を被っており、圧倒的な人気を誇ってきた米アップルのiPhoneの売れ行きに急ブレーキがかかっている。「世界のiPhoneの半分超を生産する」(中国メディア)といわれる河南省鄭州の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループでは、出稼ぎ労働者が増える繁忙期は従業員が40万人を超えるといわれるが、今年に入って、5万人規模の労働者を前倒しでリストラしたと伝えられる。

今後も米中間の貿易戦争が激しくなれば、さらに失業者が増えるのは必至だ。中国国家統計局の調査では、中国の貿易産業で働く労働者は昨年下半期で、全体の2分の1が解雇されており、中国農業農村省は「740万人の農民工(出稼ぎ農民)が地元に戻った」と発表。

さらに、中国の経済ニュース専門サイト「財新網」は昨年11月、「国内雇用低迷のため、202万件の求人広告が消えた」と報じたほか、「網易」も同時期、「今年上半期国内504万社が倒産、失業者数200万人超」との見出しを掲げた記事を配信した。

『習近平の正体』の著書もあり、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏はこう指摘する。

「失業率の上昇で、労働者デモの激化など社会が不安定になり、その結果、中国共産党への信頼感が薄れれば、中国共産党による一党独裁体制が揺るぎかねない。習近平国家主席はこれを極めて恐れており、何とか米中貿易戦争の激化を回避したいと思っているのはやまやまだが、特効薬はいまのところ見当たらず、このままでは習近平最高指導部体制の存続も懸念される事態となることも予想される。今年の6月4日は天安門事件の30周年記念日だが、まさに早晩、天安門事件の再来も否定できないだろう」

【私の論評】平成の始まりに起きた、この事件を風化させるな(゚д゚)!

上の記事で今年は、天安門事件の30周年記念日と述べています。このブログでは過去においては天安門事件について取り上げたこともありますが、ここしばらくは取り上げていませんし、また掲載の仕方が、どちらかといえば、ある程度知っていることを前提としてとりあげているところがありました。

現在は、平成も終わり令和の御世となりました。思い返してみると、天安門事件は平成の始まりと重なります。平成元年、1989年を振り返ると、その年の6月4日に中国で天安門事件があったことを忘れてはならないでしょうあれほどの大事件も、中国国内では未だに全く報道されず、ネットでも検索できません。日本でも風化しているところもありますので、以下に簡単に解説します。

天安門事件とは。きっかけは胡耀邦の追悼集会

1989年4月15日、胡耀邦元総書記が心筋梗塞のため亡くなります。北京にある天安門広場では、学生らによって追悼集会が開かれました。

1989年4月15日の胡氏の死去を悼んで学生や民衆が天安門広場で行った
追悼活動。これが、同年6月4日の天安門事件のきっかけとなった

この集会は、胡耀邦を解任した最高指導者、鄧小平への抗議活動の意味合いも含んでいました。追悼集会は徐々に形を変え、中国独裁体制を否定し、民主化への移行を求めるものになっていったのです。

集会はヒートアップし、デモへと発展していきます。この動きを察知した中国共産党は、戒厳令を布き、デモの鎮圧のために警察ではなく軍隊を動員。無差別に発砲をし、強引に鎮圧しました。

この事件は、当然世界から猛烈な批判を浴びることになります。

現在でも中国共産党は、天安門事件に関するあらゆる検閲をおこなっており、中国国内ではこの件についてインターネットで調べることすらできない状態です。

ではこの事件が起こった原因は、どのようなものがあるのでしょうか。

天安門事件が起こった原因

発端は、亡くなった胡耀邦元総書記の追悼をするために、学生たちが天安門広場に集まってきたことでした。

学生のなかには中国共産党による独裁体制を快く思っていない者もおり、独裁体制を打破すべしといったような強硬派もいたのです。彼らが声高に独裁体制打倒を叫び、追悼集会は反体制派の集会と化しました。この動きは北京だけでなく、西安や南京などにも広がっていきます。


当時の天安門での抗議活動の動画

ここまでなら、彼らを解散させて穏便に収めることができたかもしれません。

しかし「人民日報」という中国共産党の機関紙が「旗幟鮮明に動乱に反対せよ」という社説を一面に掲載します。ここには学生たちの活動を「動乱」と位置づけ、共産党の指導に反するため断固として反対しなければならないという内容が記されていました。

これに学生たちが猛反発し、ハンガーストライキといった過激な行動に出るようになりました。以降、中国共産党の高官が話し合いをしようとしても、学生側は拒否します。

そして、しびれを切らした中国共産党が実力行使に出たのです。

天安門事件の死者数は?

中国共産党の公式発表によると、死者は学生や軍を合わせて319人とのことですが、一説ではそれよりもはるかに多い3000人とされています。

日本でも一斉に天安門事件を報道しましたが、各新聞紙でばらつきがありました。たとえば読売新聞は「死者3000人以上」、毎日新聞は「死者2600人かそれ以上」、朝日新聞は「死者2000人、負傷者5000人以上」といった具合で、正確な数は把握しきれていません。

英国で2017年に公開された外交文書によると、中国当局が民主化運動を弾圧した1989年の天安門事件で、中国軍が殺害した人数は少なくとも1万人に上ると報告されていることが明らかになっています。

「1万人」という人数は、当時のアラン・ドナルド駐中国英国大使が1989年6月5日付の極秘公電で英国政府に報告したものです。大使は、「中国国務院委員を務める親しい友人から聞いた情報を伝えてきた」人物から入手した数字だと説明しています。

国務院は中国の内閣に相当 し、首相が議長を務めます。

天安門事件の死者数はこれまで、数百人~1000人以上と、様々に推計されていました。

中国国内でもこの事件をひた隠しにするため、追加調査はおそらくおこなわれないでしょう。

天安門事件の犠牲者

情報が錯綜していますが、いずれにしても319人よりはるかに多い、というのは間違いないです。

天安門事件の真相

鄧小平(左)と趙紫陽(右)

事件当時、中国共産党内には鄧小平と趙紫陽という人物がいました。趙紫陽は総書記でしたが、実権を握っていたのは発言力の大きい鄧小平でした。

当時の共産党内には、共産主義を徹底しておこなう鄧が率いる長老派の存在があり、天安門事件を利用して政敵の排除を狙っていたようです。

ここでいう政敵というのは、趙紫陽のことです。共産主義の枠を超えた経済政策を打ち立て、若者から人気のあった趙は、伝統的な共産主義を維持したい長老派からは厄介な存在として認知されていました。

天安門事件の発端となるデモが起こった時も、趙は平和的な解決を模索し、積極的な話し合いをしていました。しかし学生のなかには過激な意見を持つものもいて、話し合いはどれも決裂しています。

鄧はこのデモを反社会的行動とみなし、軍隊によるデモの強制解散を実行します。趙は武力弾圧に断固反対しましたが、鄧は趙の役職をすべて解任して軟禁状態にし、大虐殺が実行されました。

天安門事件というと民主化デモの弾圧に目が行きがちですが、中国共産党内の政権闘争という側面もあったのです。

天安門事件を報道する当時の朝日新聞

今年は30周年ということもあって、習近平指導部は年初から人権派弁護士や中国に残っている民主化運動活動家を多数拘束しているようです。

香港メディアによると、民主化活動家の陳斌氏も逮捕されたといいます。同氏は2016年6月、天安門事件で戦車の前に立ちはだかった学生運動指導者の姿を描いた酒瓶のラベルを作り、白酒(焼酎)の瓶に貼りつけて配ったところ、社会の治安を乱したとの容疑で逮捕されました。この4月には裁判で懲役3年半の実刑判決が下されたといいます。

このほかにも、大学では学生らが不審な活動をしていないかを互いに見張り合い、怪しい動きをしている学生の密告を奨励していると伝えられています。こうした状況から、中国指導部は民主化運動の再燃を強く警戒しているのは間違いないです。

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2019年4月1日月曜日

韓国の「行き過ぎた北朝鮮宥和政策」を懸念する米国―【私の論評】米国の本音はどこにあるのか?


 韓国の文在寅大統領の北朝鮮に対する宥和政策の行きすぎに関して、最近、同盟国の米国内で懸念の声が上がっている。ポンペオ国務長官やボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、北朝鮮の非核化がなされるまでは国連制裁の手を緩めないと述べているのに対し、文在寅大統領は、北朝鮮に対する制裁を解除して南北協力を早急に進めたいようである。

平城市内をパレード中に笑顔をみせる韓国の文在寅大統領(左)と
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長 昨年9月18日

 このような文在寅大統領の姿勢には、韓国内のメディアでも疑問を呈するものが出て来た。例えば、3月10日付のコリア・ヘラルド紙(韓国の英字紙)の社説がそれである。同社説は、文在寅は、南北協力や制裁解除に対する米国の懸念を直視し、より対米協力をするべきであると述べている。

 この社説は、常識的な正論を述べたものであるが、このような意見は、野党や大手メディア等の少数派である。文在寅政権は、必要な対北朝鮮の制裁解除を行い、金剛山観光、開城工業団地の再開や鉄道共同プロジェクトなどを促進させ、早期に北朝鮮の金正恩労働党書記長のソウル訪問を実現させたいと考えている。それ故、ハノイでの第2回米朝首脳会談が決裂に終わったことには、衝撃を受けたようだ。文在寅政権は、南北という狭い視野しか持たず、世界を知らない人々が多すぎるように見える。文正仁特別補佐官(延世大学教授)は英語も喋れ、世界のことも知っている面白い人だが、左派志向が強い。

 文在寅政権に対する米国の態度が硬化していることは、コリア・ヘラルド紙の社説でも指摘されている。当然であろう。主たる理由は、韓国の南北融和一辺倒の立場と制裁解除の主張である。3月上旬に訪米した韓国の国会議長訪問団に参加した元野党大統領選挙候補の鄭東泳氏もペロシ下院議長等からいろいろ言われたことを明らかにしている。鄭東泳氏は、これは日本の工作の結果だと、日本を批判している。とんでもない話である。

 なお、文正仁大統領特別補佐官は、最近の講演会で、ハノイでの米朝首脳会談の失敗の原因は、米国と北朝鮮、そして日本にあると述べたと言われる。一方、今、ワシントンには、「韓国責任論」といった感じもあるようだ。昨年3月、金正恩委員長の非核化の意図をいわば「保証」し、首脳会談を米国に働きかけたのは韓国だった。が、注意深い検討もなく、それに飛びついたのはトランプだったことも事実である。

 文在寅大統領は、最近、内閣改造を断行した。南北関係を所掌する統一部長官の趙明均氏を替え、金錬鉄統一研究院長を後任に指名した。同人は、極端な考えや発言で知られ、承認公聴会はもめるであろうが、それでも文在寅は強行任命するだろう。大手メディアは康京和外相、鄭義溶安保室長こそ交代すべきだと主張している。

 国連制裁は対北朝鮮交渉の重要な梃子であり、大事にしていかなければならない。米韓作業部会でも、韓国は、開城団地再開などの問題を提起する。3月12 日、国連制裁委員会の年次報告書が公表されたが、制裁の確実な実行こそが重要である。

 米韓両国は、3月2日、合同軍事演習「フォール・イーグル」と「キー・リゾルブ」の廃止を発表した。昨年夏に実施を取りやめた「乙支フリーダム・ガーディアン」を含めて、三大軍事演習がすべて打ち切られ、新たな小規模の演習に代わることになった。トランプ大統領は、国防省の説明と違い、理由に予算節約をあげている。が、米国が只でかかる大きな譲歩をするのは良くなかったのではないか。一方的廃止ではなく、少なくとも何らかの約束事にして、北朝鮮から相応の措置を取るべきではなかったか。最近の東倉里実験場の再整備のように、一方的措置は撤回可能である他、米国がそれをやれば、北朝鮮は益々一方的措置で非核化を済まそうとするであろう。

【私の論評】米国の本音はどこにあるのか?

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が米国にケンカを売りました。核を手放そうとしない北朝鮮に対し、堂々と経済援助に動き始めたのです。

金剛山観光をする人々

2月27、28日にベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談で、「非核化せずに、制裁だけ緩和させよう」との北朝鮮の本心が露わとなりました 。会談と前後して、北朝鮮が破棄したと称していた弾道ミサイル基地の復旧の兆候 があることも明らかとなりました。

にもかかわらず韓国は、制裁破りの援助に動いています。当然、米国も世界もそんな韓国に驚きの目を向けています。文在寅政権の暴走は止まるのでしょうか。

米朝首脳会談の翌3月1日、「3・1節」記念演説で文在寅大統領は「金剛山観光と開城工業団地との再開も米国と協議します」と宣言しました 。いずれも北朝鮮に多額のドルが渡る、南北の経済協力事業です

もちろん米国は一蹴しました。3月7日、匿名を条件にブリーフした国務省高官は「金剛山観光と開城工業団地に対する(国連)制裁を解くのか」との質問に対し、たった一言「NO」と答えました 。

韓国の保守系紙は「北朝鮮に非核化意思がないことが明らかになった後も制裁緩和を求める文在寅政権に、米国が怒り出した」と一斉に懸念を表明しました。

朝鮮日報は社説「文の『金剛山・開城工団の提案』に『NO』と一言だけ答えた米国」(3月9日、韓国語版)で以下のように書きました 。
  • (「NO」との答弁は)同盟国のトップが公に言及した提案を米国が即座に拒否したということだ。米国の方針はすでに決定済みなので、韓国は邪魔するな、との意味だろう。 
  • 米国の官民全体が北朝鮮に核放棄を決心させるには圧迫だけであるとの共感で1つになった。 
  • だが、韓国の統一部は「金剛山・開城工団再開案を用意して米国と協議する」と言い、与党関係者は「それらを利用して米朝仲介を牽引せよ」と要求しました。 
  • 大統領だけでなく、集団的に分別を失ってしまったのだ。こんな韓国の動きを見て米国の関係者らは「ジョークでやっているのだろう」と言っているという。

ところが、こうした批判に文在寅政権は馬耳東風。3月8日には南北関係の責任者である統一相を交代する人事を発表しました。国連制裁を念頭に置いて対北政策を進めたとされる官僚出身の趙明均(チョ・ミョンギュン)氏を更迭。新たに指名したのは学者出身の金錬鉄(キム・ヨンチョル)氏です。 同氏はこれまで「開城工団の閉鎖は自殺行為」 「(米国が)大韓民国を主権国家と見なしているか疑わしい 」などと親北・反米発言を繰り返してきた人物です。

中央日報は社説「韓国、北東アジアの除け者にならないよう米国との『政策すれ違い』に警戒を」(3月12日、日本語版)で、ワシントンでは「(韓米関係の悪化により)このままだと韓米首脳会談も難しい」との空気が高まったと報じました 。

米韓同盟が破壊されると危機感を高めた保守系の最大野党「自由韓国党」のナンバー2、羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)院内代表 は3月12日、国会で「大韓民国の大統領は金正恩(キム・ジョンウン)の首席報道官だと、顔から火が出るような恥ずかしい話を聞くことがないようにしてほしい」と演説しました。この発言に与党「共に民主党」の議員らは猛反発し、演説が中断されるなど国会は紛糾しました。

同日、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会・専門家パネルは年次報告書を発表。北朝鮮が政府機関主導のサイバー攻撃で仮想通貨を5億7100万ドル(約630億円)不法に取得しなどと指摘、制裁逃れの実態を明らかにしました。

この報告書は、制裁により輸出が禁じられているはずの高級車を北朝鮮が使っていると写真付きで指摘。その1枚は、2018年9月、平壌で金正恩委員長と文在寅大統領が一緒にメルセデス・ベンツに載っている写真でした (報告書の47ページ )。韓国では「南北経済協力の名称で制裁を破ろうとする韓国への警告」と受け止められています。

平壌で金正恩委員長と文在寅大統領が一緒に乗ったとされるメルセデス・ベンツ

それでも文在寅政権は、米国と全面対決する構えを崩しません。3月14日、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一外交安保特別補佐官が、統一相の人事について「米国とは関係なしに、朝鮮半島政策を推し進める大統領の意向の表れだ」と述べました。

大統領の本音を語ると韓国で見なされる文正仁氏は「(統一相に指名された)金錬鉄氏は主張通り仕事を進めていくだろう」「(それに対し)米国も何もできないはずだ」とも語りました。

ついに文在寅政権は、北朝鮮を助けるためなら米国との決別も辞さない、と言い出したのです。「ルビコン河を渡った」のは、このままでは一心同体の金正恩政権がじり貧となるとの判断からでしょう。

ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったため、国連の対北制裁が緩む見通しは立たなくなりました。制裁により北朝鮮は、石炭、繊維、水産物の輸出が激減、外貨不足に陥っています。

朝鮮日報のアン・ヨンヒョン論説委員 は「今や金正恩は『通貨危機』を心配することに」(3月6日、韓国語版)で「制裁が続けば北朝鮮は2~3年後に(外貨が枯渇し)通貨危機に陥る可能性が高い」と書きました。

北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は3月15日に平壌で会見し、金正恩委員長が米国との非核化交渉に関する声明を近く発表すると明らかにしました。

その内容は、米国の非核化要求を拒絶、交渉中断や大陸間弾道弾の試験再開を表明する可能性が高いと見られています。 じり貧の道から脱し、米国を再交渉の場に引き戻すには、「放っておけば危険な北朝鮮」とのイメージを打ち出すしかないとの思惑でしょう。

朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン) 主筆は「文政権、金正恩と運命共同体になっている」(3月7日、韓国語版)を書きました。「北朝鮮との関係改善」というカードに全てをかけた文在寅政権は、世界中を敵に回した金正恩政権とスクラムを組むしかなくなった、との分析です。



では韓国は、北朝鮮との連帯をやめ、米国との同盟を堅持する路線に戻るのでしょうか。確かに保守系紙は、そうすべきだと主張しています。ところが、普通の人々がこぞって「北朝鮮よりも米国」を選択するかは分からないです。「米朝の仲介役として米国からも大事にされている韓国」といった幻想を、保守も含め多くの韓国人が信じ込んでいるからです。

トランプ政権は、情報機関同士のパイプを通じて、北朝鮮と首脳会談の開催にこぎつけました。その際、疎外感から韓国が駄々をこねないよう、韓国の仲介もあって会談が実現したかのように演出しました。

文在寅政権はこれを利用し「朝鮮半島では韓国が主導権を握っている」と大々的に宣伝しました。すると「自分たちは疎外されている」と不満を溜めていた韓国人のほとんどが、「我々が運転席に座っている」と信じ込んだのです。

朴槿恵(パク・クネ)政権は、米中等距離外交を展開 、「2大国を操り、それを背景に日本と北朝鮮を叩く偉大な韓国」との妄想を国民に植え付けました。

前政権と同様に、文在寅政権も「妄想作戦」に出たのです。ちなみに今回の妄想は、「米国と一定の距離を置いてこそ、北朝鮮を会談に引き出すなど仲介が可能になる」との含意があります。

もしここで米国の側に完全に戻れば、韓国は仲介者の資格を失うことになります。運転席の座から降りたくない韓国人が、「米国側に戻ろう」とは言いにくい仕組みとなっています。

2017年3月に実施された米韓合同演習「フォールイーグル」

もちろん妄想に生きる韓国人も、世界中から向けられる冷たい視線に、次第に気が付いていくでしょう。ただその時になって米国側に戻ろうとしても、米国から突き放される可能性が高いです。

ハノイでの米朝首脳会談で非核化に何の進展もなかったというのに、米国は3月2日、例年2~4月ごろ実施していた大型の米韓合同軍事演習の廃止を発表しました。野外機動訓練「フォールイーグル」と、シミュレーション中心の指揮所演習「キー・リゾルブ」です 。

合同軍事演習を実施しない同盟は脆弱です。日米の安保専門家の間では「トランプ政権は韓国との同盟維持の意欲を失った。米韓同盟の廃棄を北朝鮮の非核化と交換するカードにするつもりだろう」との観測が一気に高まりました。

米政界の動向に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は産経新聞・正論欄に「在韓米軍を非核化の梃子にせよ」(3月6日)を寄稿。「すでに日本の防衛線は(朝鮮半島の軍事境界線から)対馬海峡まで後退している」と書きました。

東亜日報の社説「トランプ氏『米軍駐留費150%賦課』…韓米『形ばかりの同盟』になるのか」(3月11日、日本語版)も「(米韓同盟が)外形だけが残る道に進んでいる」と危機感を表明しました。その理由として、大型の合同軍事演習の廃止に加え「米軍ではなく韓国軍が司令官を務める韓米連合司令部体制」に近く移行することを挙げました。

米軍は、ある程度の規模以上の部隊は、外国軍に指揮されないとの原則を持っています。「韓国人を指揮官に抱く在韓米軍」は、極めて小規模の部隊にならざるを得ないのです。

北朝鮮の核ミサイル

韓国は米国との同盟、つまり“核の傘”を、失う可能性が高まっています。その際、韓国は「誰の核に頼るのか」を決めねばならないです。中国かロシアか、それとも自主開発か。最も手っ取り早いのが、北朝鮮の核を頼る手です。

北朝鮮から核弾頭を全て除去する完全な非核化は難しいです。仮にそれが実現しても、核弾頭の開発に携わった人材は残り、核の潜在保有国ではあり続けます。

その事実に直面する韓国人のうち、かなりの人々が「北朝鮮と和解すれば、その核は自分たちに向くどころか民族の核として活用できる」と信じるでしょう。韓国で「民族の核」に反対するのは、極めつけの保守だけとなるでしょう。

朝鮮日報の楊相勲・主筆は「南北の政権が野合し、運命共同体になった」と書きました 。だが、現実はもっと厳しいものになるでしょう。南北の政権だけではなく国同士である韓国と北朝鮮という2つの国が、運命共同体になっているのです。

だからこそ、世界からどんなに冷笑されようと、国内からどんなに批判が高まろうと、文在寅政権は「勝算あり!」とばかりに、ますます北とのスクラムを固く組むのです。

現状は米国にとってどうなのでしょう。私は現状は最悪の状況ではないと思います。そもそも、北の核は米国だけを標的にしたものではありません。中国も標的となっています。

韓国の文在寅というより、歴代の政権、特に朴槿恵あたりから、韓国は中国に従属する姿勢を露わにしています。

北朝鮮は、中国の過度の干渉を嫌っています。金正男氏や、張成沢(チャン・ソンテク)氏の殺害はそれを如実に示しています。

そのため、北朝鮮とその核は、中国が朝鮮半島に浸透することを防いでいます。韓国は中国に従属しようとしつつ、北朝鮮との接近をはかっています。ただし、北朝鮮をはさんで、中国に接している韓国は、中国に完璧に従属することができないでいます。

これは、たとえ、韓国が全くあてにならなくなったにしても、安全保証上の空き地があるようなもので、この状況は、米国にとっては決して悪い状態ではありません。

最悪の状況は、中国が朝鮮半島全域を掌握し、覇権の及ぶ範囲とすることです。

米国としては、北・韓国の両国とも様子見というところでしょう。中国の覇権が朝鮮半島で強まることがあれば、米国は具体的に動きはじめるでしょう。また、北朝鮮が核実験、ミサイル実験を再開したときにも、具体的な動きをみせるでしょう。

韓国に関しては、文在寅の支持率も下がっていることですから、長期政権にならず、次の大統領が比較的まともであれば、米韓合同演習を再開する可能性もあります。

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2019年3月28日木曜日

5月20日が消費増税停止期限か 政権目標のデフレ脱却道半ば…日本も「リーマン級」混乱懸念―【私の論評】安倍総理は消費税増税の空気に抗え(゚д゚)!

5月20日が消費増税停止期限か 政権目標のデフレ脱却道半ば…日本も「リーマン級」混乱懸念
 
 
   2月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は昨年2月と比べて0・7%上昇した。総合指数は0・2%上昇、「食料及びエネルギーを除く総合」は0・3%上昇だった。   これらから、生鮮食品は下落しているが、エネルギー価格が上昇しており、全体としては極めて緩やかな上昇にとどまっていることが分かる。ただし、エネルギーのうちガソリンについては、これまで上昇していたが、2月には2年3カ月ぶりにマイナスに転じたため、エネルギーの上昇への寄与が低下し、総合指数と「生鮮食品を除く総合」で伸び率が鈍化した。   もともと、季節要因と海外要因で影響を受けやすい総合指数と「生鮮食品を除く総合」でみるよりも、「食料及びエネルギーを除く総合」で見たほうが傾向が見やすい。それの対年同月比でみると0・3%なので、物価はほとんど上がっていない。   これでは、デフレから完全に脱却していない。デフレ脱却は安倍晋三政権の一丁目一番地といえる目標である。   こうしたなかで行われる消費増税はデフレ脱却に支障が出るばかりか、名目経済成長を阻害し、財政当局が主張する財政健全化のためにも逆効果である。   安倍首相はこれまで「リーマン・ショック級のことがない限り消費増税を行う」と言ってきたので、消費増税見送りの可能性はある。   中国経済は米中貿易戦争のために急減速している。英国と欧州連合(EU)もブレグジット(EU離脱)の混迷により経済変動が不可避の状況だ。それに加えて、インフレ目標2%を下回るほど、日本の経済活動は不活発である。   日本国内経済がさえないのは、事実上の金融引き締め政策であるイールドカーブコントロール(長短金利操作)を日銀が堅持し、同時に財務省も緊縮財政路線から脱していないからだ。今の景気は既に下降局面に入っている。    もっとも今年度予算が成立する3月中は予算成立が安倍政権の最優先なので、消費増税は予定通りとしかいえない。しかし、4月以降、安倍首相が君子豹変(ひょうへん)することはあり得る。     これまで消費増税は2度見送られた。1度目は2014年11月で、衆院解散・総選挙が行われた。15年10月からの消費増税を世論に問うものだった。     2度目は、16年5月の伊勢志摩サミット。その時、17年4月からの消費増税はリーマン・ショック級の経済変動があり得るとして見送られた。    二度あることは三度あるなのか、三度目の正直なのか。    こうした状況の中、いつまでに安倍首相が最終決断するかというと、常識的には5月20日の1~3月期国内総生産(GDP)速報公表までだろう。7月の参院選の公約は6月上旬までに取りまとめる必要があるからだ。 リーマン・ショック級というなら、3年前の伊勢志摩サミット時より今のほうがその確率は高い。震源地となる候補として、中国、英国に加えて、日本も挙げておこう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
 
【私の論評】
 
 
 
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2016年5月7日土曜日

【緊迫・南シナ海】中国の海上民兵、米イージス艦を包囲 過去2回の「航行の自由」作戦中 米司令官明かす 中国に強い懸念伝達―【私の論評】米軍はやっかいな海上民兵に対抗するために、大陸中国の卑劣な便衣兵文化を認めよ(゚д゚)!


2009年秋田港外港に入港したイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」

米太平洋艦隊のスウィフト司令官は6日、南シナ海で米軍が過去2回実施した「航行の自由」作戦で、派遣したイージス艦が「海上民兵」と呼ばれる武装した漁民が乗り込む船に囲まれたと明らかにした。ワシントンでの講演で語った。

海上民兵は最近、南シナ海で増加傾向にあり、中国政府が関与しているとの見方が出ている。

スウィフト氏は「中国海軍の高官と海上民兵について意見交換し、強い懸念を伝えた」と述べた。偶発的な衝突を防ぐため、米中両国の海軍同士の協議が必要だとの考えを示した。

スウィフト氏によると、昨年10月に「航行の自由」作戦で派遣されたイージス駆逐艦ラッセンと、今年1月に派遣されたイージス駆逐艦カーティス・ウィルバーの周囲に海上民兵が乗った船が近寄ってきたという。

【私の論評】米軍は卑劣な海上民兵に対抗するために、中国の便衣兵文化を認めよ(゚д゚)!

いずれ海上民兵が南シナ海ち米軍を悩ますことになるであろうことは、このブログにすでに掲載したことがあります。上の記事は、この予測を裏付けるものです。

その記事のリンクを以下に掲載します。
知られざる中国の「海上民兵」―漁船が軍事組織に―【私の論評】海上民兵は便衣兵と本質的に同じ!!米国は、南京虐殺事件の虚偽を認めない限り、便衣兵に悩まされることになる(゚д゚)!
尖閣周辺海域に向かう中国漁船 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、海上民兵に関する内容を以下にコピペします。
ベトナムと同様、中国は海上民兵を抱える数少ない国の一つだ。この部隊は通常、民間漁船で編制され、さまざまな活動に従事する。これには難破船の救助など緊急対応から、島に上陸して主権を主張するといった強硬な活動まで含まれる。大企業で民間活動に従事する船員や漁業連合が軍事組織に採用され、軍事訓練や政治教育を受け、中国の海洋権益を守るために動員される。 
中華人民共和国の建国初期に創設された海上民兵は、世界最大の漁船団で編制されている。ここ数年で海上民兵は洗練さと重要性を増し、建築資材の運搬から情報収集まで幅広い任務を果たすようになってきた。最精鋭部隊は、必要があれば機雷や対空ミサイルを使い、「海上人民戦争」と呼ばれるゲリラ攻撃を外国船に仕掛けるよう訓練されている。現在、海上民兵は実質的に中国政府が管理する第一線の部隊として機能し、東シナ海と南シナ海で中国の権利を主張するための監視や支援、けん制などの活動に従事している。
機雷の配置訓練を受ける中国の民間漁船 
海上民兵に関する疑問の中で、最も複雑なのは「誰が統率しているか」だ。建設作業や訓練など、海上民兵がこなす日常業務は沿岸都市や郡に配置されるおびただしい数の人民武装部によって実施され、これを軍分区の司令部が監督している。海上民兵はさまざまな機関から直接指揮を受けて幅広い役割をこなすため、ここから先の組織構造は一段と複雑になっている。
最近、規模を縮小したり専門性を高めたりすることで、各部隊の役割を変容させる努力が続けられてきた。その一例が浙江省玉環郡の海上民兵大隊で、この部隊は海軍の船に燃料や弾薬などを供給している。
このほか、偵察部隊、重要な施設や地域を護衛する部隊、敵を混乱させたり敵の設備を故障させたりする部隊、海上輸送能力を増大させる部隊、修理や医療救助に従事する部隊など、さまざまな支援活動に関わっている。
また、海上民兵は中国の政治活動や外交政策に協力し、係争海域における中国のプレゼンス維持を支援したり、領有権を主張する島々に上陸したりしている。
数千隻に上る海上民兵の船には「北斗」と呼ばれる中国独自の衛星測位システムが設置されている。これにより民兵は他の部隊を追跡できるほか、テキストメッセージの送受信、船員がタブレット上に手書きした中国語の読み込みなどができる。
中国による海上民兵の雇用は、周辺国だけでなく米国などにも幅広い影響を及ぼす。東シナ海や南シナ海で米国やその同盟国が中国との紛争に巻き込まれれば、軍事活動に従事する数多くの民間漁船への対処法を定めた交戦規定が要求されるだろう。南シナ海で激しい衝突が見られないのは、弱小な中国の近隣国がゲリラ的な混戦に直面し、これが中国海軍の戦闘参加を回避させているからかもしれない。
民間人と衝突すれば政治的に敏感な問題になるため、米国などの海軍は手足を縛られた状態にある。その間、海上民兵は係争海域で際限なく拡大する中国の施設建設や護衛といった支援活動を継続することになる。
以上をご覧いただければ、海上民兵とはいわば海上の便衣兵です。便衣兵(べんいへい)とは何かといえば、一般市民と同じ私服・民族服などを着用し民間人に偽装して、各種敵対行為をする軍人のことです。これは、国際法違反であり、捕虜となっても裁判にかけられ処刑されるのが普通です。

「便衣兵」の用語は日中戦争に関連して主に使用されます。このほか、戦争・紛争当事国が、「便衣兵」と同義の「隠れ戦闘員」と見なした非合法戦闘員・ゲリラを殺害した行為が、国際法上問題と指摘された例はベトナム戦争、イスラエル・パレスチナ紛争、コロンビア内戦など数多いです。便衣兵は捕虜とは異なり、陸戦法規の保護を適用されません。

さて、便衣兵というと、南京虐殺の虚偽にもかかわりがあります。東中野修道は「日本軍は便衣兵の厳正な摘出を行い、捕虜の資格が無い便衣兵のみを処刑したものだ。これが曲解されたものが南京大虐殺である」と主張しています。

ただし、この便衣兵は現在の中華人民共和国とは全く関係ありません。日本が南京を陥落したときには、中華人民共和国は存在せず、日本と戦ったのは現在台湾にある中華民国の軍隊である、国民党軍と戦ったのです。

さらに、大陸中国は南京で虐殺されたのは、20万人(最近ではいつの間にか30万人となっている)だとしていますが、これもそもそも虚偽です。どのくらいの人数かはわかりませんが、しかし20万人などから程遠い、数少ない便衣兵が処刑されたと私は、見ています。

この説に関しては、これを拒絶する人も多いですが、しかしながら、20万人も市民を虐殺ということになると、あまりにも辻褄のあわないことが多すぎます。

飛行服姿の原田要さん
最後のゼロ戦乗りともいわれた、原田要(かなめ)さんは、昭和12年に日本軍が中国・南京を攻略した際、原田さんは海軍航空隊の一員として現地にいました。記憶にあるのは、露店が立ち、日本兵相手に商売を始めた住民の姿です。「南京大虐殺は信用できない。もしあれば、中国人はわれわれに和やかに接しただろうか」と語っています。

これについては、ここで述べると長くなってしまいますので、これ以上は説明しません。しかし、私は便衣兵が処刑されたのは事実であり、これが著しく曲解されたのが南京大虐殺であると考えています。

大東亜戦争中には、日本軍は便衣兵にも悩まされましたが、督戦隊や清野戦術にも悩まされました。

「督戦隊(とくせんたい)」とは、自軍部隊を後方から監視し、命令無しに逃げてきたり、降伏をする自軍兵士を射殺する兵士たちのことです。

「清野戦術」とは、中国軍は敗走時に、日本軍が利用できる物を何も与えないようにするため、民家から食糧など奪える物を奪ったあと、できる限り全ての家屋を焼払う戦術のことです。これに逆らう者は殺害されました。

なお、日清戦争の時にも、当時清國軍にも便衣兵が存在していたそうです。さらには、大東亜戦争当時の八路軍(共産党軍)にも、便衣兵がいました。今日の海上民兵といい、これは大陸中国の文化であるといっても良いのではないでしょうか。

NHKテレビで報道された八路軍の女性便衣兵
さて、南京虐殺20万人、30万人という膨大な数字は、南京裁判(南京戦犯軍事法廷)と東京裁判から一人歩きをはじめました。両裁判は南京、東京と場所は離れているものの、ほぼ同時期に進行していきました。

南京法廷 は北京、上海、広東など10ヵ所で開かれた中華民国政府による法廷の一つで、いわゆる「BC級戦犯」が対象となりました。

この南京法廷では、“南京虐殺の実行者 ”に対する審判が主要な柱とされ、何かと議論の多い「百人斬り競争」の向井、野田両少尉が裁かれたのもこの法廷でした。
大虐殺の実行者とされた谷 寿夫中将 (第6師団師団長 )に対する判決文のなかに、虐殺数の内訳が出てきます。

谷中将率いる第6師団は、第16師団(師団長・中島 今朝吾中将)、第18師団(同・牛島 貞雄中将)、第114師団(同・末松 茂治中将)などの部隊とともに、大規模な虐殺、放火、強姦、掠奪を行ったとしています。

殺害数については、以下のとおり「集 団 屠 殺」 および「個別分散屠殺」 の2つに大別し、前者の19万人、後者の15万余人と合わせ、「30万人以上 」 にのぼったとしています。

しかし、これはあまりに多すぎであり、そうして肝心要の物的証拠がほとんどありませんでした。そもそも、20万、30万の犠牲者というと、会戦レベルの犠牲者数です。会戦ですら、このような犠牲者が出ることは滅多にありませんでした。

古代中国では会戦もあったでしょうが、近現代では中国は会戦など経験したことがありません。だから、20万、30万の犠牲者という意味が理解できないのではないかと思います。南京という一都市を陥落させるのは会戦ではありません。

一都市に会戦レベルの将兵を送り込み、市民を20万人前後も殺害するなど、莫大な時間と労力を投入せざるを得ず、これは不可能に近いです。これは、古代中国人は理解できなたかもしれませんが、近現代の中国では不可能かもしれません。



そうして、あれから長い時経て、今度は中華人民共和国が南シナ海で海上民兵という便衣兵を投入しているのです。

今のところ、アメリカの艦艇を取り囲むくらいのことしかしていませんが、いずれさらに妨害行動やさらなる軍事行動に出てくる可能性が大です。海上民兵の漁船にミサイル、魚雷などを搭載すれば、これは米軍にとってかなりの脅威になります。

これに対して、民間人と衝突すれば政治的に敏感な問題になるため、米国などの海軍は手足を縛られた状態にあるといって良いです。

米国側としては、海上民兵の本質は便衣兵であるとして、いざというときには、これを排除しなければないときがきます。

その時に、また過去の歴史が繰りかえされるかもしれません。米軍は、卑劣極まる便衣兵を排除したにもかかわらず、中国側からは、漁民を虐殺したと非難されることになるかもしれません。

2013年三沙海上民兵部隊が創設され、女性民兵が56式歩兵銃を持って宣誓した
そんなことにならないためにも、米国としては、東京裁判の間違いを認め、南京虐殺20万、30万の虚偽を公にして、中国大陸には卑劣な便衣兵文化が存在することを認め、現在も海上民兵という形で存在していることを世界に向かって公にすべきです。

そうすれば、米軍は卑劣な便衣兵に対してすぐに対処できるようになります。それをしなければ、米軍はいつまでも中国の便衣兵に悩まされることになります。海軍力ではとうてい、米国や日本にも勝てない中国はそれを良いことに、便衣兵でさらなる海洋進出を続けるかもしれません。そんなことは、断じて許すわけにはいきません。

我が国も、便衣兵が東シナ海で暗躍し、領海侵犯などした場合には、厳正にこれに対処する旨を中国政府に伝えるべきです。便衣兵は人民解放軍と同列にみなすと通告すべきです。

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