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2019年4月29日月曜日

【日本の解き方】失敗続きだった平成の日銀、バブル潰し実体経済も潰す 黒田体制で大転換も道半ば…―【私の論評】日銀の平成年間の過ちを繰り返させないように、令和ではまず日銀法を改正すべき(゚д゚)!



異次元緩和で雇用を好転させた黒田総裁だが、インフレ目標達成は道半ばだ

平成の時代、金融政策をつかさどる日銀は、バブル崩壊や日銀法改正、リーマン・ショックなどを経て、現在の黒田東彦(はるひこ)総裁体制で大きく政策転換した。

 平成はバブル絶頂期で始まった。1989年(平成元年)1月の日経平均株価は3万円台でスタートし、年末には3万8915円まで上昇、これがピークだった。

 まもなくバブルは崩壊したが、その前後において、日銀はひどかった。それは、もし現在のような「2%のインフレ目標」があったら、という思考実験をしてみれば分かる。当時はインフレ率が高くなっていなかったので、金融引き締めは不要だったはずだ。

 それなのに、「平成の鬼平」とマスコミから持ち上げられた当時の三重野康総裁は、「バブル潰し」と称して、不必要で、しかも実体経済に悪影響を及ぼす金融引き締めを行った。それは、バブルを潰すばかりか、実体経済も潰した。しかも、日銀官僚は間違わないという無謬性(むびゅうせい)神話があるために、この金融引き締めは正しいものとして、その後も引き締め基調が継続した。それが、平成デフレの引き金でもあった。

三重野康氏

 90年代半ばから、いわゆるデフレ経済に日本は陥った。見た目の名目金利は低水準だったので、多くの人は金融引き締めを意識しなかったのだが、インフレ率がマイナスになるとは、古今東西を見ても前例がほぼ皆無だった。名目金利は低くても、インフレ率がマイナスなので、実質金利は高く、経済成長は望めない状態だった。

 そうしたなか、1997年(平成9年)、日銀法が全面改正された。金融引き締めが若干改善したのは、小泉純一郎政権での2001年3月から福井俊彦総裁の下で量的緩和政策が実施されてからだった。しかし、06年3月にデフレ脱却を待たずに量的緩和が終了する。その後、日本では景気が下り坂の中で、08年9月リーマン・ショックが起こった。



 ここで、白川方明(まさあき)総裁率いる民主党政権下の日銀は、痛恨の政策ミスをしてしまった。大きな経済ショックへの対応策は、まず大胆な金融緩和だ。欧米の中央銀行は猛烈な金融緩和を行い、通貨量も大きく増加した。これに対し、日銀は動かず、円は猛烈に高くなった。リーマン・ショックでは日本は欧米に比べて直接の大きなダメージを受けなかったにもかかわらず、この円の「独歩高」が日本経済を低迷させた。

 12年12月に第2次安倍晋三政権が発足した。13年3月、黒田総裁体制になり、ようやく本格的な金融緩和が実施された。雇用の回復は驚異的であり、当初の想定どおりだ。14年の消費増税がなければインフレ目標2%もとっくに達成していただろう。

 しかし、16年9月からイールドカーブコントロール(長短金利操作)を導入したことで、以前と比べると緩和の後退となっている。このため、インフレ目標2%は達成できていない。デフレからも完全脱却とは言い難く、今一歩の状況だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀の平成年間の過ちを繰り返させないように、令和ではまず日銀法を改正すべき(゚д゚)!

まずは、冒頭の記事の最後のほうにある、実質的緩和の後退ともなったイールドカーブコントローについて説明します。

イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)は、2016年9月の日銀金融政策決定会合で日銀が新たに導入した政策枠組み「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の柱のひとつです。

2016年1月から始めた短期金利のマイナス金利政策に加え、10年物国債の金利が概ねゼロ%程度で推移するように買入れを行うことで短期から長期までの金利全体の動きをコントロールすることです。

日銀は指定する利回りで国債買入れを行う指値オペレーションを新たに導入するとともに、固定金利の資金供給オペレーションの期間を1年から10年に延長することによりイールドカーブ・コントロールを推進します。

イールド・カーブコントロールなどせずに、インフレ目標2%になるまで、強力に量的緩和を進めれば、短期間で達成できたのでしょうが、こうしたコントロールをしてしまったため、実質的に緩和の後退となり、いつまでも達成できない状況になったといえるでしょう。

さて、その日銀ですが、令和に入ってからはどのような金融政策を行うのてしょうか。

日本銀行は25日の金融政策決定会合後の公表文で、金融政策の指針である「フォワードガイダンス」を修正し、大規模金融緩和による超低金利を「少なくとも令和2(2020)年春頃まで」続ける方針を示しました。

また、金融緩和の副作用軽減のため金融機関が日銀からお金を借りる際に差し出す担保の基準緩和などで円滑な資金供給や市場機能の確保を可能にします。

金融政策決定会合に出席するため、日銀本店に入る黒田総裁=25日午前

国内景気を下支えするため、短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度に誘導する現行の金融緩和策は維持します。国内景気の基調判断は前回3月の決定会合での見方を維持し、海外経済減速の影響を受けながらも「穏やかな拡大を続ける」と説明しました。

併せて公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では新たに示した令和3(2021)年度の物価上昇率見通しを1・6%とし、2%の物価上昇目標の達成がさらに遅れるとの見立てを示しました。実質国内総生産(GDP)成長率見通しは1・2%としました。

フォワードガイダンスでは、2%目標の達成が後ずれすることを受け、「消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間」維持するとしていた金融政策の実施時期を明確化した形です。

また、副作用の緩和措置では、日銀が保有する上場投資信託(ETF)を市場参加者に一時的に貸し付ける制度の導入も検討します。

黒田東彦(はるひこ)総裁は25日午後に記者会見を開き、フォワードガイダンス見直しの狙いや、経済、物価の見通しについて詳しく説明しました。

日銀は16年9月に、生鮮食品を除く消費者物価上昇率が安定的に2%の物価目標を超えるまで、マネタリーベース(銀行が日本銀行に預ける当座預金と日銀券発行額の合計額、金融政策の度合いを示す指標の一つ)の拡大方針を続ける「オーバーシュート型コミットメント」を導入しています。

このコミットメントから考えれば、21年度でさえ物価上昇率は2%に及ばないのだから、20年春頃どころか21年度も、いまの超金融緩和政策を維持継続するのは当然です。

2%目標の達成にメドが全く立たない以上、市場にとって今回のフォワードガイダンスの「明確化」はなんら驚きではありませんでした。

これによる市場の無反応は、日銀も予想していたと思います。効果はないにもかかわらず、なぜ日銀はフォワードガイダンスの明確化に踏み切らなければならなかったのでしょうか。

FRB(米連邦準備制度理事会)は利上げを休止、また償還後の国債再購入額を減らすバランスシートの縮小も停止しました。ECB(欧州中央銀行)も年内の利上げを断念しました。
世界経済の不透明感が強まるなか欧米中銀が路線修正を模索し始めるなか、日銀が何らかの政策対応をしないことで、円高などのリスクが高まる懸念がありました。

とはいえ、マイナス金利の深掘りは、金融機関からすれば収益を圧迫するという副作用があるとみられることになるでしょう。25日の記者会見で黒田東彦総裁は、この副作用を否定していましたが、国民生活より、銀行を重視する日銀の姿勢からすれば、言葉通りに受け取る向きはほとんどいないでしょう。

しかし、これは金融機関の儲けがなくなると、金融資本市場がうまく回らないという市場関係者の思い込み(自己保身)に過ぎないものです。

実際には、日銀が金融機関から「この金利水準では儲からないから何とかしてくれ」と常日頃、愚痴を聞かされているので、それを「副作用」と表現しているだけです。日銀としては金融機関のために金融政策を行うとは言えない建前があるので、市場機能の問題を前面に出して「副作用」を説明してきました。こうした複雑な背景があるので、一般の人には日銀が何を言っているのか理解できないと思います。

金融関係者は、実質的に縮小している国債買い入れ額を再び増やせば、長期金利の低下を招く。これも金融機関の経営にマイナスに作用するとみているのでしょう。

取り得る手段としては、ETF(上場投資信託)買入額の増額ですが、これは、今後、景気が後退期に入った際や、円高が進行した際の手段としてとっておきたいのが本音なのでしょう。

結局、超低金利政策の継続期間の明示しか日銀が取り得る手段はなかったのです。

今回のフォワードガイダンスの「明確化」と市場の無反応は、金融機関の意向を重視する日銀としては、物価目標達成に向けた日銀の手詰まり感を改めて浮き彫りにしたと言えるでしょう。

日銀が金融機関を重視するのは、金融政策を行う主体であるとともに、金融機関の監督という準行政的な機能もあるからです。前者をマネタリー、後者をプルーデンスといいます。

実は、日銀内の仕事としてはマネタリーの部分はごくわずかで、多くは「銀行の中の銀行」として金融機関との各種取引を通じたプルーデンスです。プルーデンスは「日銀官僚」が天下るときにも有用であるため、日銀マンの行動に金融機関重視がビルトインされているとみたほうが良いでしょう。

銀行の収益悪化は、人工知能(AI)対応が遅れたという構造的な側面もあり、必ずしも低金利だけが原因とはいえないです。

プルーデンス重視が、マネタリーに悪影響を与えては本末転倒です。マネタリーではマクロの物価と雇用だけをみていればよく、ミクロの金融機関経営は考慮されるべきではないです。

それにしても、このままでは令和に入っても、物価目標の目処がたたないことになってしまいそうです。

令和年間は、日銀法の改正をして、日本における中央銀行の独立性を世界標準のものとして欲しいものです。

ちなみに、中央銀行の独立性とは、日本では日本国の金融政策は中央銀行が政府など他から影響を受けず中央銀行が独立して行うものと解釈されているようですが、これは世界標準からみれば、全くの間違いです。

中央銀行の独立性とは、日本国の金融政策は政府が目標を定め、この目標を達成するために日銀は専門家的立場から、目標を達成するための方法を他から独立して選ぶことがきるというものです。

日銀の独立性を世界標準にすれば、日銀がプルーデンスを重視するため、まともな金融政策が実後できず、手詰まりになるということもないかもしれません。

日銀の独立性を世界標準にするのは、日銀法を変えるだけでできます。政府は、日銀法を一日もはやく改正すべきです。そうでないと、令和年間も平成年間と同じく、日銀が金融政策を間違い続けることになりかねません。

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2019年3月28日木曜日

5月20日が消費増税停止期限か 政権目標のデフレ脱却道半ば…日本も「リーマン級」混乱懸念―【私の論評】安倍総理は消費税増税の空気に抗え(゚д゚)!

5月20日が消費増税停止期限か 政権目標のデフレ脱却道半ば…日本も「リーマン級」混乱懸念
 
 
   2月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は昨年2月と比べて0・7%上昇した。総合指数は0・2%上昇、「食料及びエネルギーを除く総合」は0・3%上昇だった。   これらから、生鮮食品は下落しているが、エネルギー価格が上昇しており、全体としては極めて緩やかな上昇にとどまっていることが分かる。ただし、エネルギーのうちガソリンについては、これまで上昇していたが、2月には2年3カ月ぶりにマイナスに転じたため、エネルギーの上昇への寄与が低下し、総合指数と「生鮮食品を除く総合」で伸び率が鈍化した。   もともと、季節要因と海外要因で影響を受けやすい総合指数と「生鮮食品を除く総合」でみるよりも、「食料及びエネルギーを除く総合」で見たほうが傾向が見やすい。それの対年同月比でみると0・3%なので、物価はほとんど上がっていない。   これでは、デフレから完全に脱却していない。デフレ脱却は安倍晋三政権の一丁目一番地といえる目標である。   こうしたなかで行われる消費増税はデフレ脱却に支障が出るばかりか、名目経済成長を阻害し、財政当局が主張する財政健全化のためにも逆効果である。   安倍首相はこれまで「リーマン・ショック級のことがない限り消費増税を行う」と言ってきたので、消費増税見送りの可能性はある。   中国経済は米中貿易戦争のために急減速している。英国と欧州連合(EU)もブレグジット(EU離脱)の混迷により経済変動が不可避の状況だ。それに加えて、インフレ目標2%を下回るほど、日本の経済活動は不活発である。   日本国内経済がさえないのは、事実上の金融引き締め政策であるイールドカーブコントロール(長短金利操作)を日銀が堅持し、同時に財務省も緊縮財政路線から脱していないからだ。今の景気は既に下降局面に入っている。    もっとも今年度予算が成立する3月中は予算成立が安倍政権の最優先なので、消費増税は予定通りとしかいえない。しかし、4月以降、安倍首相が君子豹変(ひょうへん)することはあり得る。     これまで消費増税は2度見送られた。1度目は2014年11月で、衆院解散・総選挙が行われた。15年10月からの消費増税を世論に問うものだった。     2度目は、16年5月の伊勢志摩サミット。その時、17年4月からの消費増税はリーマン・ショック級の経済変動があり得るとして見送られた。    二度あることは三度あるなのか、三度目の正直なのか。    こうした状況の中、いつまでに安倍首相が最終決断するかというと、常識的には5月20日の1~3月期国内総生産(GDP)速報公表までだろう。7月の参院選の公約は6月上旬までに取りまとめる必要があるからだ。 リーマン・ショック級というなら、3年前の伊勢志摩サミット時より今のほうがその確率は高い。震源地となる候補として、中国、英国に加えて、日本も挙げておこう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
 
【私の論評】
 
 
 
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2018年7月1日日曜日

雇用指標、5月は一段と改善 失業率は25年7カ月ぶり2.2%―【私の論評】出口論者に煽られるな!日銀の金融緩和は未だ道半ばであったことが明らかに(゚д゚)!


総務省が29日発表した5月の完全失業率(季節調整値)は2.2%と前月(2.5%)から低下し、1992年10月以来となる25年7カ月ぶりの低水準となった。厚生労働省が発表した同月の有効求人倍率(同)も1.60倍に上昇。1974年1月以来、44年4カ月ぶりの高水準となり、雇用情勢は一段と改善が進んでいる。

マイナビの合同企業説明会にて

完全失業率はロイターの事前予測調査で2.5%と予想されていた。

季節調整値でみた5月の就業者数は前月比20万人減の6673万人、完全失業者数は同21万人減の151万人となった。非労働力人口は同35万人増の4270万人だった。この結果、完全失業率は2.2%と4カ月ぶりに低下した。

原数値でみた就業者数は6698万人、15─64歳の就業率が77.0%といずれも過去最高を更新。景気拡大を背景とした企業の求人増に伴って5月は幅広い年齢層で就業者が増加しており、総務省は「雇用情勢は着実に改善している」と判断している。

有効求人倍率は、ロイターの事前予測調査で1.59倍が見込まれていたが、結果はこれを上回った。有効求人数は前月比1.1%増、有効求職者数は同0.5%増だった。

新規求人倍率は2.34倍と前月から低下した。

【私の論評】出口論者に煽られるな!日銀の金融緩和は未だ道半ばにあったことが明らかに(゚д゚)!

5月の雇用指数は確かにかなり良くなっています。これについて、高橋洋一氏は以下のようなツイートをしています。

確かに、この状況では、日銀の過去のUV分析は明らかに間違っていたということがいえます。そうして、日銀の金融緩和は失業率の加減が2.2%かもしれないという可能性もあることから、未だ道半ばであったことも明らかになったといえます。

日銀の分析もそうですが、以前ある経済評論家がUV分析のグラフを示しつつ、バブル崩壊後に構造失業率が上昇したと説明していました。しかし、失業率と欠員率で示される点が、横軸に沿って動いている、縦軸に沿って動くようになったと怪しい説明を行っていました。変化したのは図表に太線で書かれているUV曲線なのですが、良く分かっていないようでした。

短期的には失業率が高いと欠員率が低く、失業率が低いと欠員率が高くなるものです。この関係を示したのがUV曲線で、理論的には強い裏づけは無いものの、失業率と欠員率が等しくなる点を構造失業率と見なしています。転職期間が長い世界では構造失業率が高く、短い世界では低くなる傾向があります。

このように日本語で説明しても良いのですが、数式を用いた方が、特に理系の方々には、理解しやすいと思いますので、山上(2010)の説明を見つつ背景を確認していきます。

失業者数をU、欠員数をV、新規雇用者数をMと置くと、これらの関係は以下のようになります。
Mは凹関数としておきます。失業者数が増えても、そうは新規雇用者数は増えません。この世界で欠員が充当される確率mは以下のようになります。

where

失業状態から脱出できる確率は以下のようになります。


生産性ショックの到来確率(=雇用喪失率)をqと置けば、失業者数の変化は以下のようになる。Lは労働人口で、L-Uが雇用者数、q(L-U)が失業する人数になり、θm(θ)Uが新規雇用者数になる事に注意。


失業率の変動は以下のようになる。
where

定常状態はになるため、短期の均衡条件は以下のようになります。


図を描いてみましょう。m(θ)はθの減少関数ですが凹関数なので、θm(θ)は増加関数になり、原点に凸の曲線が描かれます。


均衡点は雇用逼迫率、もしくは有効求人倍率θに依存するわけですが、θが定常になるときが構造失業率となります。山上(2010)ではサーチ理論から定常点を議論していますが、内閣府の推定などでは便宜的にθ=1と置いています。

景気悪化したときはθが減少して(1/θが増加して)均衡点が上方に移動し、構造変化が起きたときはUV曲線自体が右上もしくは左下へ移動します。



以上がUV曲線です。理系以外の方で、上記が理解しずらい方は、グラフを理解されれば、UV分析については、十分だと思います。このグラフを理解していると、失業率に関する頓珍漢な理論に煽られることはありません。

これぐらい知っておくと、問題の経済評論家の解釈のどこがおかしいかが分かります。つまり、失業率と欠員率ではなく、UV曲線がどう移動したかで議論すべきだったのです。なお、引用されていたグラフは以下で、年代ごとのUV曲線が明確に書かれています(西川(2010))。




日銀はUV分析が正しく実行できればそれにこしたことはありませんが、一度構造的失業率(失業率の下限と考えられる失業率)3.0%と分析したにしたとしても、その状態がしばらく続いても実質賃金等が上がらない状態が続けば、再度分析するとか、あるいは実験的にさらに量的緩和を強化するなどの措置をとるべきだったでしょう。

日銀は、構造的失業率が3%は間違いであろうことを高橋洋一氏はすでに、昨年の4月あたりに指摘していました。日銀は、このあたりで構造的失業率の値を見直すべきでした。そうして、さらなる量的緩和に踏み切るべきでした。

この頃といえば、UV分析はさることながら、私自身は過去の失業率などからみて、やはり日本の構造的失業率はどうみても、3%台ではなく、2.5%くらいであろうと考えていていて、このブログにもそのように掲載しました。

私のような素人ですら、このように考えるのですから、日銀はさらなる量的緩和をすべきだったでしょう。

さらに、この頃私は日銀が量的緩和をするには当時から国債が品薄状態でしたから、政府は国債の刷り増しもすべきであると主張していました。いまそれらが正しいことが証明されたと思います。

昨年あたりから、日銀の金融緩和の出口論を語る頓馬な人たちがいましたが、彼らは一体何を見ているのかと思ってしまいます。というより、彼らの目は節穴です。彼らに幻惑されるべきではありません。

高橋洋一氏は、完全失業率2.2%が三ヶ月も続けば、再考するとしていますが、その時には日銀にも金融政策を再考していただきいたものです。

日銀や政府(財務省)も、様々な分析や、理論を発表するのは悪いことではない(明らかに悪質と思われるものもありますが、それは例外として)とは思いますが、直近の統計数値にあわせて、機動的な金融政策、財政政策を行うべきです。

ちなみに、野口氏と田中氏の共著『構造改革論の誤解』(2001年)には構造失業率を2.4パーセントぐらいとした上で、構造的だと思われていた雇用の状況が変化してさらに下がる仮説を提示してます。

この仮設は常識的に考えてみてもわかります。失業率が下がりつつある段階では、失業率が高いので、従来は全く就業を諦めていた人が、就業機会が増えたので、それが動機づけとなり、就業に踏み切るという構図は多いに考えられることです。

現状をみると、どうやらこの仮説は正しそうです。であれば、構造失業率がどの水準かと議論すること自体には、あまり意義を見いだせません。これだけ失業率が下がっても、急激な賃金上昇圧力が起きないという事は、まだまだ金融緩和と財政出動ということを意味しているかもしれないです。

構造失業率ばかりに注目するのではなく、インフレ率の加速に注目し、やはり機動的な金融政策を実施すべきなのです。ただし、構造失業率の数値自体にはあまり意味はないですが、結果としての失業率については多いに神経をつかうべきでしょう。

そもそも、経済対策としては、他が悪くても、失業率が低ければ、まずまずといえるからです。雇用こそ最も重要だからです。

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