2018年5月7日月曜日

高橋洋一 日本の解き方 物価目標2%は実現できる 黒田日銀の壁は消費再増税、財政出動で景気過熱が必要だ―【私の論評】次の総理はやはり安倍晋三氏しか考えられない(゚д゚)!


2期目に入った日銀の黒田東彦総裁

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁体制は2期目がスタートした。今度こそ2%のインフレ目標(物価目標)達成はできるのか。2014年4月の消費税率8%への引き上げは悪影響をもたらしたが、19年10月に予定されている10%への再増税はその二の舞いにならないのか。

金融政策の基本は、インフレ率を設定した目標(現在は2%)に、失業率をこれ以上は下がらない水準のNAIRU(インフレを加速しない失業率。筆者は2%代半ばと推計)にコントロールするというものだ。

インフレ率について、消費者物価指数(総合)は黒田日銀スタート時の13年4月は▲0・7%だったが、18年2月には1・5%にまでなった。目標の2%まで2・7ポイント改善すべきところが直近では2・2ポイント。これは100点満点で80点と評価できる。

失業率についてみると、13年4月は4・1%だったが、18年2月には2・5%まで改善した。目標2・5%を達成できたので100点である。インフレ率と失業率を合わせてみれば90点といえる。これは、間違いなく及第点である。

もちろん、インフレ率については、生鮮食品を除く指数が1・0%、生鮮食品及びエネルギーを除く指数は0・5%にとどまっており、まだインフレは弱いと見ることもできる。

失業率も一時的に良くなっている可能性を否定できず、もう少し様子を見るべきだとも思える。

統計として、良い数字であることは事実だが、問題は引き続き及第点が取れるかどうかである。個別価格の変動がなければ、消費者物価は総合指数に収束していく。失業率がNAIRU、インフレ率がインフレ目標になると、おのずとそうなる。そこでポイントはNAIRUがいくらかということになる。

日銀は、正式にはNAIRUについて言及していない。物価リポートでは、構造失業率という言葉を使っている。かつては、NAIRUと構造失業率の関係を聞くと、口頭では似たようなものと答えていたが、今や物価リポートでは「違う」と明確に否定している。それでは、NAIRUはいくらと思っているかと聞くと、答えない。

これは、世界の中央銀行から見れば奇妙なことだ。筆者のように、2%台半ばといえば、一応2・5%くらい、統計の誤差を考えると2・3%でもおかしくないとなるが、答えないのは、中央銀行としての説明責任を果たしていないだろう。少なくとも、物価リポートで公表している「構造失業率が3%台」というのは、ミスリーディングである。

インフレ目標2%はこのままなら達成できるだろう。問題は消費増税が予定されている19年10月までに、失業率がNAIRUとなり、インフレ率がインフレ目標を超えるくらいの過熱状態になっているかどうかだ。

過熱していれば、消費増税が冷やし玉になるかもしれない。過熱していなければ、インフレ目標の達成は遠のくだろう。過熱するかどうかは、今後の財政政策次第である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】次の総理はやはり安倍晋三氏しか考えられない(゚д゚)!

NAIRUとインフレ目標、失業率の関係は、以下のようになっています。インフレ目標の数値、NAIRUの数値は高橋洋一氏が計算したものです。


この関係がはっきり頭に入っていれば、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事を良く理解できるでしょうし、そもそも金融政策や財政政策がその時々でどうあるべきかなどもはっきりと理解できるでしょう。これを知っていれば、金融政策や財政政策に関して、かなり理解が深まります。知らなかった人是非この際、頭の中に入れて、ことあるごとに利用すると良いと思います。

上の記事で、インフレ率、失業率に関しては、現状の日銀は90点であり、及第点であるとしています。私もそう思います。

しかし、このグラフが頭に入っていないと、高橋洋一氏の言うように、日銀が今のまま量的緩和の姿勢を崩さない限り、インフレ目標2%はこのまま日銀が量的緩和を継続するならいずれ達成できるであろうことも、消費増税が予定されている19年10月までに、失業率がNAIRUとなり、インフレ率がインフレ目標を超えるくらいの過熱状態になっているかどうかが大問題であるということなど理も解できないです。

そうして、インフレ率が完璧に2%を完璧に超える状態になれば、消費税の増税をしても問題はないことや、そのような状態にもっていくのは、今後の財政政策次第であることも理解できないでしょう。

まずは、これが頭に入っている前提で、以下に金融政策と財政政策の違いなど掲載します。これは、経済政策のラグ(ズレ、タイムラグ)を理解するとその違いがより鮮明になります。

経済政策には以下のようラグがあります。

1)内部ラグ
経済情勢の把握から経済政策の実行迄
1-1)認知ラグ
経済現象を認知する迄
1-2)決定ラグ
政策当局が経済情勢を判断し経済政策の発動の決定を行う迄
1-3)実行ラグ
決定した政策を実行に移す迄
2)外部ラグ
 政策実行から経済に効果が生じる迄

金融政策は決定ラグ、実行ラグが財政政策に比べて短く、外部ラグが長くなります。これは、日銀の9人が金融政策決定会合(時には緊急開催もあり)で、即座に決定、実行することができます。過半数の5票を取ることが出来れば良いので、追加緩和が必要であれば、その政策提案に5人の賛成で決定・実行できます。

財政政策は、与党内の調整や国会での議論などを通じて法制化しないと実行できず、決定から実行までに時間がかかります。安倍晋三総理が消費増税延期のために(修正法案提出・可決に必須ではない)衆院解散したことを見ても、財政政策の決定から実行に時間とコストがかかることが分かります。

外部ラグですが、財政政策はどの部分にいくら、と直接的にお金を使うため効果が早く出ますが、金融政策は様々な波及経路を通じて経済に効果を及ぼすため、半年〜1,2年程度のラグがあります。


以上のようなラグがあるからこそ、金融政策と財政政策をうまく組み合わせる必要があるのです。世の中には、財政政策と金融政策を比較してどちらが良いとか悪いとか語る人もいますが、医療の分野では同じ病気を治療するにしても、患者のその時々の状況にあわせて、複数の薬を使い分けるのが普通です。金融政策と財政政策も同じようなものであり、どちらか一方というのでは、経済を速やかに立て直すことはできません。

これには、世界恐慌のときに当時の大蔵大臣であった、高橋是清が財政政策と金融政策を組み合わせて世界で一番はやく恐慌から脱出したという事例があります。世界恐慌の原因は、長らく明らかにされてきませんでしたが、1990年代の研究でその原因はデフレであったことが解明されています。

昭和恐慌からの早期の脱出をみると、デフレ脱却には金融政策が有効であることが実証されました、特に昭和恐慌のような深刻な不況においては財政政策と金融政策のポリシーミックスが有効であることが明らかになりました。

そしてこれらの政策により人々の期待を上向きに変えることが必要であるということです。高橋是清の経済政策はまさにこれを狙ったものでした。

高橋是清

現代日本において「デフレは構造問題」「資金需要がない中で日銀がいくら資金供給しても無駄」というかつての「日銀理論」から、「デフレは日本銀行の責任で解決する問題」で、「断固としてデフレに立ち向かう」という能動的なレジームへの転換を意味するのです。

そしてこの転換こそが、日本に先駆けてリーマンショック時の金融危機において実際に各国が行ってきたことなのです。

山崎元氏が、日銀について以下のようなTweetをしていました。


山崎元氏は「人々の期待を上向きに変える」というのを恋愛にたとえたわけです。そうして、私は同僚の助けということで、財務省の積極財政も必要としたのです。

金融政策と財政政策は対立するものではなく、それぞれの特徴(政策決定に関わる人数やプロセスの多寡、ラグなど)を考慮して、適切な政策割り当てが必要なのです。

いずれにせよ、現状では日本がデフレから完璧に脱却して、緩やかなインフレにもっていくためには、金融政策だけでも何とかなるかもしれませんが、それでは時間がかかりすぎるし、2%のインフレ目標を達してもいないうちに、10%増税などしてしまえば、2%の達成はかなり先に伸びてしまうのは明らかです。

そうして、速やかに2%を達成するためには、財政出動が必要不可欠なのです。というより、10%増税を実行するのであれば、今こそ大規模な財政出動をし経済を加熱させておかないと、また個人消費が落ち込み、デフレになり、2%のインフレ目標はまた先延ばしになってしまいます。増税を先延ばしするなら、金融政策だけでも何とかインフレ目標が達成できるかもしれません。このいずれかの選択肢しかないということです。

これを理解しているのは、政治家では安倍総理とその側近だけです。後は、誰も理解していません。マスコミも理解していません。財務省の官僚は知らないふりをしているだけです。この状況だと、やはり現状ではポスト安倍は安倍総理しかないという結論になります。

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