2018年5月16日水曜日

【激動・朝鮮半島】トランプ米政権、米朝首脳会談中止の可能性に言及した北の真意を精査 現時点では「開催予定に変更なし」―【私の論評】正恩の判断一つで石器時代をむかえる北(゚д゚)!


10日、米中西部インディアナ州で、支持者に応えるトランプ米大統領

 トランプ政権は、北朝鮮が朝鮮中央通信を通じた声明で米朝首脳会談を中止する可能性に言及したことに関し、安全保障担当の高官らを招集して北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の真意などについて分析作業に入った。

 サンダース米大統領報道官は15日、声明をめぐる報道に関し「承知している」とした上で、「米国として北朝鮮の発言内容を独自に精査し、同盟諸国と引き続き緊密に連携していく」と強調した。

 国務省のナウアート報道官は15日の記者会見で、米朝首脳会談について「引き続き準備を進める」と述べ、現時点で開催予定に変更はないとの認識を明らかにした。

 ナウアート氏はまた、「金正恩氏は以前、米韓が合同演習を続けることの必要性と効用について理解すると発言していた」と指摘。国防総省のマニング報道官も同日、一連の米韓演習は「毎年の定例」であり、「防衛的性格であることは何十年にもわたって明確にしてきており、変更もない」と強調した。

 マニング氏は演習の目的について「米韓による韓国防衛の能力を向上させるとともに、米韓の相互運用性と即応能力を高めるため」とした。

 北朝鮮が問題視している米韓共同訓練「マックス・サンダー」は定例の空軍演習で、今年は米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22やB52戦略爆撃機などが参加。既に始まっており、25日まで行われる。

【私の論評】正恩の判断一つで石器時代をむかえる北(゚д゚)!

マックス・サンダーに参加中のステルス戦闘機F22ラプター

以前もこのブログに掲載したことがありますが、北朝鮮には40年前のレーダーしかなく、実質上防空施設はないと考えて良いです。航空機も時代遅れのものが多く、米韓の航空兵力には全く太刀打ちできません。核ミサイルばかり注力してきたので、昔中東や、ベトナムで活躍した北朝鮮空軍の面影は全くありません。

このような北朝鮮ですから、米韓の航空機による普通の攻撃も脅威ですが、これに加えて、金正恩を恐怖に陥れる戦法もあります。

それは《電磁パルス(EMP)攻撃》や《地中貫通核爆弾》を用いた戦法です。

米軍による電磁パルス攻撃の模式図

EMP攻撃の方は、日本国内ではもっぱら北朝鮮が日本を筆頭に米韓に仕掛けるというパターンの報道が多いです。現に、北朝鮮がICBM搭載用水素爆弾の6回目実験を行った昨年の9月3日、北の朝鮮労働党機関紙・労働新聞がEMP攻撃を完遂できると強調していました。これは、おそらく本当でしょう。

韓国の公共放送KBSは昨年9月3日夜のニュースで、韓国がEMP攻撃に遭えば「自動車などの交通手段や金融機関や病院、通信施設など、全基幹施設が停止したり、誤作動を起こしたりして、事実上『石器時代に戻る』」という専門家の声を紹介してもいました。

しかし、『石器時代に戻る』のは北朝鮮ではないでしょうか。

EMP攻撃は、高度30~400キロの上空での核爆発を起点とします。その時生じたガンマ線が大気を構成する窒素や酸素などの分子に衝突。分子中の電子がはじき飛ばされて雷のような巨大な電流が発生するなどした結果、強力な電波の一撃であるEMPが地上に襲来します。「宇宙より押し寄せる津波」に例えられるゆえんです。

EMPは送電線を伝ってコンピューターといった電子機器に侵入。電圧は5万ボルトに達するので、機器はIC(集積回路)の機能停止で損壊し、同時に大規模停電にも見舞われます。

影響範囲は爆発の高度や規模によるが、高度100キロで広島型原爆の3分の2に相当する10キロトン(TNT火薬換算)のケースでは、日本全土をほぼ覆う半径約1100キロにも達っします。

現代社会は電気なしでは成り立たちません。大規模停電で公共インフラを支える電子機器が損壊すれば、都市機能はマヒします。携帯電話&電話&インターネットなどの通信やガス&水道の供給が停止。飛行中の航空機が操縦不能になり、電力を絶たれた原子力発電所が制御不能に陥ります。自衛隊・警察・消防の指揮・命令系統や金融機関も機能不全となります。 

EMP攻撃は地上への核攻撃と違い、ミサイルの弾頭部分を大気圏再突入時の超高熱から守る素材や突入角度制御に関わる技術は必要ありません。小型の核弾頭を搭載したミサイルを発射し、目標上空で起爆するだけです。米国防総省では、北朝鮮が既に核弾頭の一定程度の小型化に成功し、EMP攻撃能力を備えたと確信しています。

この恐るべき兵器を米国は当然、研究・開発し、実戦段階まで昇華しています。

スターフィッシュ・プライム時にホノルルでみられたオーロラのような現象

実際、米国は1962年、北太平洋上空で高高度核実験《スターフィッシュ・プライム》を実施、高度400キロの宇宙空間での核爆発でEMPを発生させました。ところが、爆心より1400キロも離れた米ハワイ・ホノルルなどで停電が引き起こされ、予想通りの「魔力」が実証されました。
 
米国の専門家チームが近年まとめたシナリオでは、10キロトンの核爆弾がニューヨーク付近の上空135キロで爆発すると、被害は首都ワシントンが所在する米国東部の全域に及びます。損壊した機器を修理する技術者や物資が大幅に不足し、復旧には数年を要し、経済被害は最悪で数百兆円に達します。

EMP攻撃で、北朝鮮の核・ミサイル施設&基地を含む軍事拠点や各種司令部&各部隊間をつなぐ電子・通信機器=指揮・統制システムを不通にできれば、もはや戦(いくさ)はワンサイド・ゲームと化すことになります。

その上、EMP攻撃敢行のハードルは、核爆弾の直接攻撃に比べハードルが低いです。EMPの場合、核爆発に伴う熱線や衝撃波は地上には届かないです。EMPは被攻撃側の人々の健康に直接影響しません。

半面、食糧不足や病気などで数百万人単位もの死傷者は出ます。病院をはじめ、無線などの情報通信やテレビ・ラジオもマヒし、被害情報把握も救援・復旧活動も困難になります。信号機も突如消え、交通事故や火災で死者を増やし、大パニックに陥るためです。

こうした、一般の北朝鮮国民への被害をどう局限し、国際世論の批判をかわすか、米国は昨年、シミュレーションを繰り返していました。

もちろん、米国にとり最優先事項は人道ではなく、EMPの届きにくい地下坑道に陣取る北朝鮮・朝鮮人民軍の通常・核兵器による報復の芽を摘み取る点にあります。核施設の制御不能回避も大きな課題です。以上の課題も、米国昨年着々と解決しました。

ところで、北朝鮮の韓大成・駐ジュネーブ国際機関代表部大使は昨年9月5日、あろうことかジュネーブ軍縮会議で「米国が北朝鮮に圧力を加えようと無駄な試みを続けるなら、わが国のさらなる『贈り物を受け取ることになる』だろう」と演説しました。しかし、現実には『贈り物を受け取ることになる』側は、北朝鮮になるかもしれないです。

B2ステルス爆撃機とそれに搭載する地中貫通爆弾

さて次は、《地中貫通核爆弾》について論じます。 

バラク・オバマ政権は政権の最終盤に入って、ようやく北朝鮮の脅威に気付きました。一昨年11月の政権引き継ぎ会談で、当時のオバマ大統領は大統領選挙を制したドナルド・トランプ次期大統領に「米国の最大脅威は北朝鮮」だと、自戒を込めて伝えました。米国防総省も引き継ぎ直前、秘中の秘たる《地中貫通核爆弾B-61タイプ11》の模擬弾投下試験を超異例にも公表。大統領選で激突していたトランプ候補とヒラリー・クリントン候補に、暗に覚醒を促しました。

大型貫通爆弾=MOPのパワー・アップ費&生産費や、MOPのプラットフォームとなるB-2ステルス爆撃機の改修費について、米国防総省は2000年代に入り近年でも頻繁に請求し認められています。 

対する北朝鮮の核・ミサイル施設は地下深く、鉄筋コンクリートや硬岩、鋼鉄などを巧みに組み合わせて構築されています。しかも、時間の経過とともに地下施設は補強され、強度を増しています。

このように、米国が「克服しなければならない課題」は多数残っています。しかし、「克服しなければならない課題」は昨年着実に「克服」されてきたのです。

30センチ以下の動く対象を捉える米国の偵察衛星は移動式発射台のワダチをさかのぼり、核・ミサイル格納トンネルを特定します。

軍事利用している衛星の種類には資源探査型があり、地質構造・地表温度を識別して、地下施設・坑道の構造や深度が一定程度判別可能です。

こうして長年蓄積し続けた膨大な量の偵察・監視資料を精緻に総合的に再分析します。すると、見えなかった地下施設が浮かび上がるのです。

例えば、地下施設建設前と建設後で、地上地形がどう変化していったか/地形変化のスピード/掘削機の能力割り出し/トラックで運び出される土砂の量/トラックで搬入されるセメント・鉄骨・鋼板などの量/労働者数…など。

地下施設といえども、兵器や技術者、軍人が出入りする出入り口は絶対に必要です。換気施設も然り。絶好の監視対象であり爆撃ポイントになります。 

金正恩の執務室があるとされる15号屋の衛星写真、地下150メートルには秘密居所があるされている

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の秘密居所は地下150メートルともいわれ、MOPですら荷が重い恐れがありますが、先述の《地中貫通核爆弾B-61タイプ11》であれば確実に粉砕します

《電磁パルス(EMP)攻撃》と同様、地中貫通核爆弾B-61タイプ11は他の核搭載兵器に比べ、実戦投入のハードルは低いです。爆発威力を抑えれば、地下での起爆であり、一般国民の住む地上の被害を抑え、核汚染被害も局限できます。地下に蓄えられる朝鮮人民軍の生物・化学兵器も、核爆発力を抑えた「小さな核爆弾=ミニ・ニューク」が発する熱波で蒸発→無害化に一定程度貢献することでしょう。

やはり、「贈り物」が届く先は金正恩委員長が震えながら閉じこもる「地下のお住まい」のようです。

このような2つの贈り物で北朝鮮は「石器時代」に戻ることになるどころか、金正恩氏も蒸気になって跡形もなく消え去ることになりかねません。

石器時代に戻る北朝鮮?

マックス・サンダーでは当然のことながら、これら2つの兵器の訓練も行っているのでしょう。

金正恩からすれば、この訓練がいつのまにか本当の作戦行動になり、いつ北朝鮮が石器時代にもどり、自分がこの世から消えるかもしれいないという恐怖に苛まされているはずです。

北朝鮮は朝鮮中央通信を通じた声明で米朝首脳会談を中止する可能性に言及したといいますが、北朝鮮にそれを選択できる余地などありません。

米朝会談に主席するか、出席しないで、米国に北朝鮮攻撃の格好の理由を与えるかのいずれかのみです。

米朝会談に出席したとしても、米国の要求を飲まなければトランプ大統領は途中で退席することになるでしょう。まさに、金正恩の判断一つで北朝鮮は石器時代を迎えるかもしれません。

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