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2019年2月26日火曜日

米朝首脳会談…同じ船に乗るトランプ氏と正恩氏 キーワードは北朝鮮に眠る「驚くべき資源」―【私の論評】米朝首脳会談次第で北はどうする?あらゆる可能性を視野に(゚д゚)!

米朝首脳会談…同じ船に乗るトランプ氏と正恩氏 キーワードは北朝鮮に眠る「驚くべき資源」

金正恩(左)とトランプ(右)

ドナルド・トランプ米大統領と、北朝鮮の金 正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は27、28日、ベトナムの首都ハノイで2回目の首脳会談を行う。

 世上では、米朝首脳会談はトランプ氏が前のめりで、正恩氏のペースで進められるのではないか-と懸念する向きが多い。

 果たして、この指摘は正しいのか、検証してみる。

 注視すべきは、同首脳会談実現に向けて繰り返された、米朝実務者協議の米側代表であるスティーブン・ビーガン北朝鮮政策特別代表が1月31日、米スタンフォード大学で行った講演(全文3800語)である。

 注目すべき箇所は、次のフレーズだ。

 「トランプ大統領が、金正恩委員長に(シンガポールで)会ったとき、堅固な経済開発が北朝鮮にどのような意味を付与するかについてビジョンを示しました。それは、朝鮮半島の驚くべき資源を利用して構築される投資、外部との交流、そして貿易などの明るい未来と、計画の成功のためのわれわれの戦略の一部です」

 キーワードは「驚くべき資源」である。

 トランプ氏は2月8日のツイッターで、首脳会談の開催地がハノイに決まったと明らかにした。

 と同時に、かつてミサイル実験を繰り返す正恩氏を「ロケットマン」と揶揄(やゆ)したが、このツイッターでは「北朝鮮は違うロケットに、すなわち経済のロケットになるだろう」と、ヨイショしたのだ。

 では、困窮する北朝鮮経済を「経済のロケット」にする「驚くべき資源」とは、いったい何なのか。

 米地質調査所(USGS)や、日本貿易振興機構(JETRO)などの「資料」によると、半端ない量のマグネサイト、タングステン、モリブデン、レアアースなどのレアメタル(希少金属)が埋蔵されているという。

 さらに、石油の埋蔵量も有望とされる。だが、「千三つ」(=試掘井を1000カ所掘削しても3カ所出るかどうかの確率)と言われるほど投資リスクが高く、高度の掘削技術が必要である。米国が構想しているのは、エクソン・モービルなど米石油メジャーとの共同開発なのだ。

 一方のレアメタルについても、中国の習近平国家主席が進める「宇宙強国」構想に負けないためにも、宇宙・航空産業が喉から手が出るほど欲しい。

 遠くない将来、かの地で採掘・精製施設建設まで実現できれば、計り知れない「利」が期待できる。地政学的に採算ベースに合うのだ。

 トランプ、正恩両氏は同床異夢であれ、取りあえず同じ船に乗ろうとしているのだ。(ジャーナリスト・歳川隆雄)

【私の論評】米朝首脳会談次第で北はどうする?あらゆる可能性を視野に(゚д゚)!

金正恩氏を乗せた特別列車=2019年2月26日午前、広西チワン族自治区憑祥

「朝は輝けこの山河 金銀の資源も満ち 三千里美しきわが祖国」

北朝鮮の朝鮮中央放送は、放送開始と終了時に、北の国歌「愛国歌」を流します。その歌詞にあるように、この国の地下資源は豊富です。冒頭の記事にもあるように、鉄鉱石や石炭、燐灰石、マグネサイト、ウランなど、2百種類を超える有用鉱物が確認されており、経済的な価値がある鉱物資源も40種を超えます。

近年とみに価値が高まっている希少金属のタングステン、ニッケル、モリブデン、マンガン、コバルト、チタニウムなども豊富とされています。

これらの「価値」の評価は、国際的な価格の変動や調査機関によって異なります。韓国の大韓鉱業振興公社は2008年月に総額2千2百87兆ウォン(約176兆円)と推定しましたが、韓国の統一省は09年10月に国会に提出した資料で6千9百84兆ウォン(08年基準=約5百37兆円)とまで見積もりました。評価額に差があっても鉱物資源が「宝の山」であることに変わりはありません。

米国の資源探査衛星による調査で、軍需産業などには欠かせないタングステンも世界の埋蔵量のほぼ半分がある可能性が報告されました。
さらに、ウランも約4百万トンの埋蔵量があるとされます。これは北を除く世界の採取可能な推定埋蔵量とほぼ同じ量との見方もあります。北が自前の原子力発電や核に固執する理由のひとつは、その燃料を豊富に持っていることです。原子力発電を実現できれば北のエネルギー不足は大きく改善されます。

無論石炭の埋蔵量も多く、韓国の研究者の推計によれば、北朝鮮全体の石炭埋蔵量は90億であり、そのうち61億トンが採掘可能と見られる。後者の内訳は無煙炭が16億トン、褐炭が34億トン、超無煙炭が11億トンである。なお、瀝青炭は産出されないため、鉄鋼生産などに使用する分は全量を輸入に頼っています。

日本の統治時代には、石炭は様々な産業の基盤だったこともあり、北朝鮮のほうが南よりも産業基盤が整っていました。南にはほとんど産業基盤がなく、農業が主体でした。そのため大東亜戦争終戦直後からしばらくは、北朝鮮のほうがGDPも南より大きく、韓国が北朝鮮のGDPを追い抜いたのは1970年代に入ってからことです。

ところが、現時点で北朝鮮の鉱物資源は「宝の持ち腐れ」に近いです。施設の老朽化や、機材や技術、エネルギー不足などの理由から、生産性が上がらないためです。たとえば、鉄鉱石の生産は1985年の9百80万トンをピークに減少に転じ、98年には2百89万トンまで減りました。その後の経済回復で08年には5百31万トンまで戻ったのですが、状況は他の鉱物資源も同様であり、国民は「金の山」の上で暮らしながら飢餓と闘っているのが現実です。

鉱物資源協力は資源の「貿易」以上の経済的便益を南北の両側にもたらす可能性があります。朝鮮半島は面積は狭いですが南と北の地下資源の賦存環境が大きく異なります。韓国は世界5位の鉱物資源の輸入国で鉱物自給率が極めて低く、全体鉱物の輸入依存度は88.4%にのぼります。



政治的緊張がなければ、隣接した両地域の格段の鉱物資源分布の差が経済的側面で自然と相互に鉱物資源貿易・投資をもたらした可能性もあります。

北朝鮮の鉱物資源開発の過程でまず必要なのは、鉱山開発に使われる莫大な量の電力供給を解決することです。文大統領が金委員長に渡した新経済構想の資料に「発電所」が含まれていたのは、これと無関係ではないと見られています。2007年、鉱物資源公社が端川地域の鉱山開発の妥当性の検討に乗り出すときも、北朝鮮の水力発電設備を改・補修して電力を供給する案を検討したことがありました。

経済を対外開放した国の大部分は、地下資源の採掘権を海外に与えて、国富を蓄積してきた。ミャンマーやカンボジアのように、比較的最近に民主化した国家も、中国などに鉱山開発を任せ、一定の収益を受け取ってきました。

北朝鮮が次なる経済協力案件として地下資源を本格化させれば、北朝鮮の経済成長に大きく寄与できるのは明らかです。韓国のエネルギー経済研究院によれば、北朝鮮のGDPにおいて鉱業は全体の13.4%であり、北朝鮮の輸出額の70%を鉱物が占めます。

鉱山を開発すれば、製鉄や精錬のような加工産業に対する投資が行われ、雇用拡大と付加価値創出にもつながります。南北鉱物資源開発協力がスムーズに行われれば、北朝鮮に対する財政的支援という負担がなくても、北朝鮮の経済開発と経済協力事業を同時に推進できます。

米朝首脳会談の行方を見守る必要がありますが、現在は国連による経済制裁で北朝鮮の物資を韓国へ持ち込めません。経済制裁が解除されない状況では、当然協力もないです。米朝会談ではこれも話し合われることになるでしょう。

制裁解除は北朝鮮への米国の意思が重要です。現実的な問題もあります。韓国政府は2007年に8000万ドルを借款形式で北朝鮮に提供したのですが、2010年以降、南北経済協力はほかの協力事業とともに、中断したままです。

2012年にこの借款を提供した韓国の輸出入銀行が、5年の返済猶予が終了した後に償還の開始を北朝鮮側に要求したのですが、なしのつぶてだといいます。南北経済協力事業を経験した韓国政府側関係者は「経済協力を始めるなら、まず北朝鮮が8000万ドルの借款を償還すべきだ。南北合弁で開発した鉱山の契約も履行すべき」と言います。

この関係者は「ただ今回の首脳会談が関係回復に優先順位を置いていたので、経済協力が再開されたとしても、問題が経済的な論理で解決されるとは思えない」と打ち明けます。

資源を共同開発しても、その果実を収穫できるインフラ建設と、投資への安全性保障も必要です。しかし、開城(ケソン)工業団地が突然閉鎖されたように、投資家が人質のような形に追いやられる余地が残っているのなら、経済協力の軸となる民間企業が資源開発投資を行うことはできなです。

現在、北朝鮮の地下資源投資に関する法律は、北南経済協力法と外国人投資関連法、地下資源法があります。北南経済協力法は宣言的な内容にすぎないため、投資への安全を保障することはできないです。

地下資源法によれば、廃鉱も許可制とされています。経済性がなくても投資家が自律的に廃鉱を決定できないことになります。開発主体も北朝鮮国内機関に限定されています。外国人投資法でも資源輸出を目的とする外国人企業の投資は禁止されています。北朝鮮の法意識上、最高統治者と朝鮮労働党、政府との関係が複雑であることや既存の関連法が存在するだけに、特別法やこれに準ずる具体的な協議が必要とされるでしょう。

実は北朝鮮の資源をめぐる争奪戦は、すでに始まって久しいです。2004年から11年の間に北朝鮮で合弁事業を開始した世界の企業は350社を超します。中国以外ではドイツ、イタリア、スイス、エジプト、シンガポール、台湾、香港、タイが積極的ですが、そうした国々よりはるかに先行しているのは、意外にも英国です。

英国は01年に北朝鮮と国交を回復し、平壌に大使館を開設。06年には、金融監督庁(FSA)が北朝鮮向けの開発投資ファンドに認可を与えたため、英国系投資ファンドの多くが動き出しました。

具体的には、アングロ・シノ・キャピタル社が5000万ドル規模の朝鮮開発投資ファンドを設立し、鉱山開発に名乗りを上げました。北朝鮮に眠る地下資源の価値は6兆ドルとも見積もられています。そのため、投資家からの関心は非常に高く、瞬く間に1億ドルを超える資金の調達に成功しました。また、英国の石油開発会社アミネックス社は、北朝鮮政府と石油の独占探査契約を結び、1000万ドルを投資して、西海岸地域の海と陸の両方で油田探査を行う計画を進めています。

一方、ロシアは冷戦時代に開発した超深度の掘削技術を武器に、北朝鮮に対し油田の共同探査と採掘を持ちかけています。この技術は欧米の石油メジャーでも持たない高度なものであり、ベトナムのホーチミン沖で新たな油田が発見されたのも、ロシアの技術協力の賜物といわれています。15年4月には、ロシアと北朝鮮は宇宙開発でも合意しています。両国の関係は近年急速に進化しており、ロシアは新たに北朝鮮の鉄道整備のために250億ドルの資金提供を約束しています。

韓国の現代グループは、1998年から独占的に金剛山の観光事業を行っていますが、数百億円に及ぶ赤字を出しながらも撤退しないのは、金剛山周辺に眠っているタングステン開発への足がかりを残しておきたいからでしよう。

米国からは、超党派の議員団がしばしば平壌を訪問していますが、核開発疑惑が表沙汰になる前の98年6月には、全米鉱山協会がロックフェラー財団の資金提供を受け、現地調査を行いました。その上で、5億ドルを支払い北朝鮮の鉱山の試掘権を入手しています。当面の核問題が決着すれば、すぐにでも試掘を始めたいといいます。

韓国はじめ、中国、ロシアといった周辺国や米国、英国の支援を得ることで、豊富な地下資源を開発することに成功すれば、北朝鮮は現在の中国のように急成長することが期待されます。今が安く先物買いをする絶好のチャンスだと宣伝しているのです。実は、2015年4月、北朝鮮のリスユン外相はインドを訪問し、スワラジ外相との間で北朝鮮の地下資源開発と輸出契約の基本合意に達しています。

インドにとっては、中国と北朝鮮の関係が変化するなか、北朝鮮との資源外交を強化しようとの思惑が見え隠れします。要は、国境紛争やインド洋への影響力を強めつつある中国をけん制するためにも、北朝鮮を懐柔しようとするのがインドの狙いと思われます。

日本人の大半はそのような動きにはついていけず、発想そのものに抵抗を感じるでしょうし、金儲けを最優先する投資ファンドの動きには嫌悪感すら抱くに違いないでしょう。しかし、これが世界の現実なのです。

文在寅(左)と習近平(右)

さらに、これは以前からこのブログに掲載していることですから、米国側からみると、北朝鮮の核は結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。以前からこのブログに掲載しているように、北朝鮮は中国からの完全独立を希求しています。韓国は、以前から中国に従属しようとしている国です。

北朝鮮の核は、日米だけではなく、中国にとっても大きな脅威なのです。もし、北に核がなければ、はやい時期に朝鮮半島は中国のものになっていたか、傀儡政権によって南北統一がなされていたかもしれません。これは、最悪の事態です。

であれば、現在中国と対立している米国からすれば、米国に到達するICBMは別にして、北朝鮮に現在ある中短距離核ミサイルは中国に対する牽制になります。

そのため、今回の米朝首脳会談では、ICBMの撤去を最初に行い、中短距離は後でということになる可能性が高いです。

日本人の大半は金儲けを最優先する投資ファンドの動きについていけないのと同様に、軍事戦略的そのものに抵抗を感じるでしょうし、このような米国や北朝鮮の動きには嫌悪感すら抱くに違いないでしょう。しかし、これも世界の現実なのです。

21日には、トランプ大統領がTwitterで「第3回目の会談開催の可能性」を示唆しました。これは、第3回目の可能性をテーブルに挙げておくことで、米国が満足する結果が得られるまで、延々と会談は続けられ、それまでは対北朝鮮制裁の締め付けは緩めないというメッセージであると考えられます。

そして、報道されない現状として、米軍の攻撃部隊がアジアに集結してきているという事実もあります。これは、第2回首脳会談の結果次第では、米国は対北朝鮮攻撃に踏み切るという無言のプレッシャーでしょう。つまり、表向きに伝えられているよりも、米朝間の関係をめぐる緊張感は思いのほか高まっているのです。

そして、その緊張感は、北朝鮮側に立っている中国やロシアの動きを封じ込める役割も果たしています。両国とも米国が北朝鮮を攻撃するという事態は最悪のシナリオとなり、さらに朝鮮戦争時と違い、とても迎え撃つことはできないため、27日までは両国とも沈黙を保っています。同時に考え得る混乱に備え、すでに中朝国境やロシア・北朝鮮国境付近には、北朝鮮からの難民の流入を阻止するために軍隊が配備されています。つまり、北朝鮮は実際には孤立しているとも言えます。

しかし、その孤立を和らげているのが、文大統領率いる韓国政府です。国連安全保障理事会で合意された対北朝鮮制裁の内容に公然と違反して、包囲網を破っていますし、同盟国であるはずの日米両国をあの手この手で激怒させて、意図的に長年の友人を遠ざける戦略を取っています。その反面、北朝鮮との融和をどんどん進め、もしかしたら朝鮮半島の統一は近いのではないか、との幻覚を抱かせる効果も出ています。

それを演出しているのは、中国でしょう。日米韓の同盟は長年、中国にとってはとても目障りな存在でしたが、このところ韓国が日米に反抗するようになり、同盟の基盤が崩れ去る中、中国にとっては国家安全保障上の懸念が薄まってきています。北東アジア地域における覇権を握るために、北朝鮮を通じて韓国に働きかけを行い、日米の影響力を削ごうとする願いが見え隠れしているように思います。

もし、米国が従来通りに北朝鮮への攻撃をためらってくれるのであれば、中国の思惑通りに進みますが、仮にトランプ大統領が攻撃にゴーサインを出してしまったら、中国は究極の選択を迫られることになります。それは、あくまでも北朝鮮の後ろ盾として米国への対抗姿勢を貫くか、もしくは、北朝鮮・韓国を見捨てて自らの安全保障・存続を選ぶかの2択です。普通に考えると後者を選択するでしょうが、今、それが許されるための手はずを整えているように思います。

では、そのような際に日本はどうでしょうか?まず拉致問題については、直接的かつ迅速な解決は望めないと思いますが、第1回首脳会談と同じく、トランプ大統領が拉致問題の解決の重要性を強調することには変わりないと思われるため、何らかのブレイクスルーが起こるかもしれません。

また、メディアでは悲観的かつ絶望的な見方が多数を占めていますが、実際には水面下で日朝首脳会談に向けた調整も行われており、北朝鮮の経済的な発展へのサポートの見返りに、拉致問題に関わる様々な問題に対する“答え”を得るという折衝も続けられていますので、第2回米朝首脳会談に対しては大いに期待していることと思います。

そして第2回米朝首脳会談が終わる2月28日は、いみじくも米中貿易戦争における報復関税猶予期間の最終日ですので、第2回米朝首脳会談の結果は、米中が様々な局面で争う新冷戦時代に大きな影響力を与えることにもなりかねません。

明日から運命の会談は開催されますが、どのような結果になるのか、固唾を飲んで見守りたいと思います。

この首脳会談の結果が出次第、日本としては国際政治経済ならびに安全保証の動きを冷静にとらえ、北朝鮮に対する戦略を練り直す必要があるでしょう。

仲が良いと思っていた金委員長と韓国の文在寅大統領がある日突然離反し、北と米国が、中国に対峙するという観点から急接近するかもしれません。あるいは、大方の予想を裏切り米国が最終的に北に対して軍事攻撃をするかもしれません。そうなれば、朝鮮戦争当時とは違い今ややり返す力のない中国やロシアは仰天することでしょう。

特に、中国にはかなりの見せしめになります。習近平は、金正恩や金正日と同じ恐怖を味わうことになります。ありとあらゆる状況を視野に入れておくべきです。「想定外」では済まされないです。

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2019年1月13日日曜日

レーダー照射で逆ギレ「韓国」が米国と訣別する日―【私の論評】文在寅の甚だしい誤認、北は反中もしくは嫌中、親中にあらず(゚д゚)!

レーダー照射で逆ギレ「韓国」が米国と訣別する日



同盟消滅が現実味を帯びている

 河井克行・総裁外交特別補佐は訪米先ワシントンで8日、講演をして、韓国が中国、北朝鮮陣営に傾いていることへの懸念を表明した。河合氏は、アメリカにこの地域で引き続き存在感を示してもらいたい旨も語ったが、そのように事態が進むかはますます怪しくなっている。

 直近の問題は、韓国側の「逆ギレ」的対応により、出口が見えづらくなっている韓国軍のレーダー照射事件だろう。日本側はアメリカに仲裁を期待しているといった報道もあるが、実のところ、アメリカがどこまで関与するか、そして韓国がそもそも聞く耳を持っているかも不透明な状況のままである。

 評価は様々にせよ、アメリカの存在が北東アジアの平和に貢献していたことは間違いない。しかし、現在の韓国大統領がそのような「恩義」を感じているかは極めて怪しいのもまた事実だ。北朝鮮に対して異常なほどの接近を示す韓国は、とてもアメリカの同盟国とは見えないというのは衆目の一致するところだろう。この流れが続けば、アメリカが韓国を見捨てる日も遠くない――昨年末来、この危うい状況に警鐘を鳴らしていたのが、半島情勢に詳しいジャーナリストの鈴置高史氏だ。鈴置氏の新著『米韓同盟消滅』の冒頭にはこうある(以下、引用は同書より)。

「この本の目的は米韓同盟が消滅しかかっていると日本人に知らせることにある。米国の後ろ盾を失えば、韓国は表向きは中立を唱えるだろうが、実質的には中国の勢力圏に入る可能性が高い。朝鮮半島は日清戦争以前の状態に戻り、百数十年ぶりに日本は大陸と直接向き合うことになる。(中略)

 反米的で民族の和解を掲げる文在寅(ムン・ジェイン)政権は同盟破棄に協力的だ。韓国の親米保守は米国との同盟を失うことに絶望感を抱く。だが、米国から見捨てられる以上、どうしようもない」

 鈴置氏は、同盟消滅が現実味を帯びていることを示すファクトをいくつも挙げている。たとえば、昨年、文政権の統一外交安保特別補佐官は、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に「(南北の)平和協定が締結されれば、在韓米軍の持続的な駐留を正当化しにくくなる」と書いたという。

「米韓同盟の打ち切りに大統領のブレーンが言及したのだ。1人の不規則発言ではない。青瓦台(大統領府)は『反米親北』の人々で占められている。

 中枢組織である秘書室の秘書官31人のうち、政権ナンバー2の秘書室長を含め61%の19人が左派の学生運動か市民運動の出身者だ。保守系紙、朝鮮日報が2018年8月8日に報じた。根っからの『反米親北』政権なのだ」

 こうした動きに対して歯止めをきかせる役目を本来、担っていたはずの親米保守派が存在していたのだが、彼らは現在沈黙を強いられている。

「対話ムードに抗せなくなったのだ。韓国の政界から北朝鮮との対決を主張する党派が消滅した。それは米韓同盟の死守を叫ぶ勢力が消えることも意味した」

 南北の間の緊張が緩和すること自体は、多くが歓迎する動きだろう。しかし、だからといって、これまでの同盟の歴史を無視するかのような韓国の振る舞いについて、日本人には理解しがたいところがある。朝鮮戦争では数多くの米国兵が犠牲になっているのだ。

 しかし、韓国では定期的に反米機運が国レベルで高まることがある。2002年には、米軍の装甲車に韓国人の女子中学生がはねられて死亡した事件をきっかけに激しい反米デモが勃発。当時のブッシュ大統領が2度にわたって遺憾の意を表明したが、国民は収まらなかった。当時の世論調査では、アメリカよりも北朝鮮にシンパシーを感じる人が多いという結果が出ている。同盟国よりも「休戦中の敵国」に対して親しみを持っていたのだ。

 かつて、鈴置氏はこうした「反米気運」について素朴な疑問を保守系紙の編集幹部にぶつけてみたことがある。

「日本は戦争で米国に負け、原爆まで落とされた。だが、今は同盟を結んでいる。韓国は米国によって日本から解放してもらい、朝鮮戦争の時にも救われた。米国に徹頭徹尾、世話になったではないか」

 これに対する答えはこうだったという。

「世話になったからこそ、韓国人は反米になるのだ。全力で戦った日本に対し、米国人は敬意を払う。少なくとも下に見はしない。だから日本と米国は対等の関係にある。だが米国人は『いつも助けてやっている韓国』をまともな国として扱わない。この悔しさは日本人には分かるまい」

 こうした恨みもまた、同盟消滅の推進力となるのだろうか。

デイリー新潮編集部

【私の論評】文在寅の甚だしい誤認、北は反中もしくは嫌中、親中にあらず(゚д゚)!

金正恩(左)と文在寅(右)

文在寅は、自身が親中派であり、金正恩氏もそうであると思っているでしょう。親中派とまではいかなくても、少なくとも金正恩氏は米国などより中国のほうを信頼しているだろうと無意識に思っているに違いありません。これは、全くの文在寅の誤認です。

金正恩は、親中派ではないどころか、反中派です。

「中国の奴らに昔と今は違うということを見せつけてやる」

2015年8月米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、北朝鮮の現役幹部の証言として、金正恩第一書記の口から「爆弾発言」が出たことを報じました。

建国以来「血の友誼」と呼ばれる固い同盟関係を築いてきた北朝鮮と中国ですが、核実験の強行や張成沢氏の処刑などをきっかけに中朝関係は悪化。「爆弾発言」が事実なら、金正恩氏が中国との関係改善に関心がないことを示すことから、北朝鮮権力内で衝撃が走ったようです。

「爆弾発言」は、当時金正恩氏が幹部たちを集めた席で語られたといいます。発言を聞いた幹部たちの多くは拍手しましたが、国際社会からの孤立を自ら招きかねないと不安視する幹部もいたとのことだそうです。

発言の真偽は不明ですが、金正恩氏は、2015年6月に長江で起きた旅客船沈没事故に関連して「中国に公式の弔意を示すな」との指示をしたとRFAの北朝鮮内部情報筋が伝えていました。

金正恩氏が、中国との関係改善に消極的で「反中感情」を抱いている可能性は充分にあります。上から目線で「先輩風を吹かせる」中国を毛嫌いしているようです。

北朝鮮が、ロシアとの関係改善に注力していることも、金正恩氏の反中感情が反映されていると見られますが、「政府は、朝ロ関係に積極的に動いているが、それほど大きな効果は得られていない」という見方もあります。

2015年9月3日には中国の北京で「抗日戦争勝利70週年」記念式典が行われました。当時の韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は参加しましたが、金正恩第1書記は欠席しました。ただし、金正恩の腹心である崔竜海・朝鮮労働党書記を派遣しました。

ごく最近は、金正恩氏は習近平と頻繁に首脳改題を開催するようになりましたが、これはあくまで、米国による非核化要求に関わる協議のためであり、やはり金正恩氏自身は、親中派ではなく、どちらかというと反中派もしくは嫌中派とみなすべきでしょう。

では、北朝鮮の人民はどうなのでしょうか。

「私が会った北朝鮮の人たちは米国よりも中国を嫌っているようだった」

こう語るのは元駐平壌英国大使のジョン・エバラード氏です。2012年6月下旬、米ワシントンのブルッキングス研究所で講演し、北朝鮮の中国嫌いを端的に指摘しました。

元駐平壌英国大使のジョン・エバラード氏

エバラード氏は2006年2月から2008年7月まで大使として北朝鮮に駐在し、その体験をまとめた『Only Beautiful, Please』を出版したのを記念して講演しました。

北朝鮮が中国から膨大な経済支援を受けていながら、中国が嫌い理由についてエバラード氏は「中国人は傲慢で横柄、生意気だと思っている。実は北朝鮮は中国から“独立”したいと思っているのだ」と分析しました。

同氏は、平壌在住のマッサージ師の話を引き合いに出して、「ロシア人やドイツ人にはマッサージを施したが、中国人だけは相手にしなかった。奴らは体臭がきついんだ」とのエピソードも紹介しました。

北朝鮮が「米帝国主義」などとして激しく批判する米国については「一般の国民はそれほど敵対的ではなく、米国が北朝鮮を攻撃すると考える住民は多くはない」と語りました。さらに、韓国が北朝鮮に攻撃をするかどうかについて、「北朝鮮国民は韓国を米国の傀儡政権みなしていることから、韓国が単独で北朝鮮を攻撃するとも思っていないようだ」と解説しました。

「ただ、北朝鮮は絶対に核を放棄しない。核が外部の敵から自国を守る唯一の武器だと考えているからだ」と同氏は強調し、米国や中国が北朝鮮に核の放棄を求めても、絶対に応じないとの見方を示しました。

一方、国際社会の北朝鮮への食糧支援などについて、「支援物資などは権力集団の体制維持に活用されているようだ」と述べて、食糧不足に苦しむ一般住民の手には渡らず、北朝鮮の指導部や軍の段階で止まっているとの見方を明らかにしています。

以上から、どうやら、金正恩も、一般人民も中国を嫌っているようです。

そうして、北朝鮮のミサイルの射程距離を思い浮かべてください。以下に2017年度チャートを掲載します。


左から
火星5 飛距離300Km
火星6 飛距離500Km
ラドン 飛距離1300Km
テポドン1 飛距離2500Km
ムスタン 飛距離3000Km
KN−08 飛距離6000Km (開発中・未テスト)
テポドン2 飛距離6700Km (開発中・未テスト)
テポドン1は1998年、2006年、2009年、2012年に発射実験が行われており、その射程距離圏内には、日本全域、中国東側の大部分、ロシア極東部などが含まれます。現在開発中のKN-08やテポドン2ではアメリカのアラスカ州が射程距離内に入ります。

2017年7月4日に発射された大陸間弾道ミサイルは高く打ち上げて飛距離を抑えるロフテッド軌道を利用したと見られており、発射角度を調整すればアメリカも射程距離に入っていたと見られます。

この射程距離、日本では米国や日本への到達などばかりが報道していますが、上のチャートのラドンから右のミサイルは、すべて中国の中枢に到達します。ムスダンから右は、中国内のほぼ全域に到達します。

そもそも、北朝鮮は中国の東北地方(旧満州)と国境を接していますから、どのミサイルも中国の領域に到達します。

中国は、こうした北朝鮮のミサイルに脅威を感じるのは当然のことだと思います。

金正恩が、中国嫌い、北朝鮮人民も中国が嫌い、そうして北が核ミサイルを保有しているという事実から何が浮かんでくるかといえば、昨日もこのブログに掲載したように、結果として、北朝鮮の核保有は北朝鮮の独立を保証すると同時に、中国の影響力を朝鮮半島全土に浸透させることも防いでいます。米国にとって、朝鮮半島が南北に分断され、北朝鮮が核を保有している現状が中国をにらみ望みうる最善の状態です。

北の核は、確かに米国にとって脅威ではありますが、もう一方からみれば、中国にとっても脅威なのです。

現状は、米国にとっては中国封じ込めという観点からは、朝鮮半島はうまくバランスがとれているのです。

昨日も掲載したように、トランプ政権はこのバランスを継続させることに大きな意味があると考えていることでしょう。

そうして、昨日も述べたように、中国が体制を変えるか、経済が落ち込んで、他国に影響を及ぼせないほどになれば、そのとき本格的に北朝鮮との非核化協議にはいることになるでしょう。それまでは、

そうして、昨日も述べたように、中国に接近する韓国は中国の影響力を朝鮮半島全土に及ぼす役割は担っていないのです。それを今は北朝鮮が担うという皮肉な状況になっているのです。

北も中国との関係を大事にするだろうと思いこんでいる、文在寅は、日米はもとより、北朝鮮からも、これからはしごを外されっぱなしなることでしょう。

そうして、他ならぬ中国からもはしごを外された状況に陥るでしょう。なぜなら、韓国は未だ米国との関係もありますし、何よりも嫌中の北朝鮮に両手を上げて接近しようとしています。

この対局を文在寅は全く理解していないでしょう。北と接近し、中国とも同時に接近することが、韓国の国益にかなうことと無邪気に信じているのでしょう。

北に強く接近すれば、中国からは疎まれるということを理解していないようです。そのことを理解させるため、中国はさらに韓国に対する制裁を強めるかもしれません。それでも、大局を理解してない文は、なぜ中国がそのようなことをするのか、理解せず、さらに北朝鮮に入れあげ、挙げ句の果てに自滅するかもしれません。

最悪の場合、韓国は日米中の制裁の対象になるかもしれません。そうなれば、韓国はお手上げになります。

米国としては、このバランスを継続することに注力するようになるでしょう。米韓同盟が消滅したとしても、このバランスを保つことに支障がないと判断すれば、シリアから撤退したように、あっさりと米韓同盟を解消し、米軍を韓国から撤退させるかもしれません。

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2019年1月12日土曜日

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「金王朝」死守したい金正恩の頼みの綱はやっぱり核

2回目の米朝首脳会談に向けて動き出した米中朝の思惑

中国・北京の人民大会堂で、写真撮影に臨む北朝鮮の
金正恩朝鮮労働党委員長夫妻(左)と習近平国家主席夫妻(右)。

 年明け早々の1月7日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。過去1年間に中朝首脳会談は、①2018年3月26日(北京)、②5月7~8日(北京・大連)、③6月19~20日(北京)に開かれており、今回が4度目である。

 昨年は、6月12日にシンガポールで歴史的な米朝首脳会談が開かれたが、その後半年が経つのに、両国関係に際だった進展がないままである。近いうちに第2回目の首脳会談を開催すべく、アメリカと北朝鮮の間で調整が行われている。今回の金正恩の訪中は、その準備のためのものと考えてよい。

核こそが「金ファミリー体制」保障する最大のカード

 朝鮮半島情勢を長年にわたり観察してきた者としては、半年前の米朝首脳会談を境にして従来とは異なる局面が出てきているように見える。それは、北朝鮮のみならず、アメリカ、中国、韓国、ロシア、日本についてでもある。

 建国以来の北朝鮮の国家戦略を振り返ってみると、最優先課題は「金王朝」の継続である。実際に、金日成→金正日→金正恩と、父から息子への権力継承が行われてきた。この点では、同じ共産党一党独裁体制であっても、ソ連や中国の権力継承のあり方とは大きく異なっている。

 体制の維持という最大の目的を達するための第一の方法は、核のカードの活用である。

 金王朝を崩壊させる能力と意思とを持った国はアメリカである。北朝鮮の後ろ盾には中国とロシア(ソ連)がいるが、彼らには、アメリカの攻撃を受けた北朝鮮を救う力はない。そこで、自らの体制を守ろうとするならば、自らアメリカに反撃できる軍事力を持つべきであり、それは核兵器である。アメリカ本土に到達する核爆弾を一つ持つだけで、その効果は計り知れないものがある。そこで、国民の生活を犠牲にしても核開発に力を注いできたのである。

 実はこの発想、フランスのドゴール大統領に似ている。米ソ冷戦下で、フランスがソ連から核攻撃を受けたら、アメリカはソ連に対して報復の核攻撃を行ってくれるか。ドゴールの答えは、「ノン(否)」である。アメリカはパリのためにワシントンDCを犠牲にはしない。フランスがモスクワに到達する核を持つことによってしか、ソ連の核から身を守ることはできない。それがドゴールの出した結論だった。

 金ファミリーも同様な核思想を持ち、それは期待以上の効果を生んだ。核開発というカードを活用すれば、開発中止の代価として経済協力を得ることができるからである。「米朝枠組み合意」がその典型である。

 北朝鮮は、1993年に核拡散防止条約(NPT)から脱退し、核開発を進めたため、国際社会は何とか話し合いで北の核開発を終わらせようと努力した。その結果、1994年10月21日に米朝間で「米朝枠組み合意」が締結された。北朝鮮は核開発プログラムを凍結する見返りとして、黒鉛減速炉から軽水炉への転換支援と毎年50万トンの重油供給を受けることが決まった。その実行組織として、米韓日などが参加して朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が組織された。その結果、北朝鮮はNPTに残留することを決める。

 しかし、2002年10月に北朝鮮がウラン濃縮プログラムを進めているという疑惑が浮上し、2003年1月には北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)からの再脱退を決めた。この年12月にはKEDOは軽水炉の建設工事を中断し、2006年5月には軽水炉計画は完全に中止されたのである。

金正恩から見たら「アメリカは約束違反」

 短命に終わったこの「米朝枠組み合意」の歴史は、アメリカにとっても、北朝鮮にとっても快いものではなかった。しかし、「核というカードがいかに有効なものであるか」を北朝鮮は十分に認識したのである。

 そこから、アメリカ本土を核攻撃する能力を持つために、大陸間弾道ミサイルと核爆弾の開発に全力をあげる。そして、度重なる実験の結果、その実現間近まで行ったところで、米朝首脳会談という運びになったのである。北朝鮮のような小国が世界一の大国アメリカと対等の立場で首脳会談ができるのは、「核兵器のお陰」なのである。

 したがって、北朝鮮は、然るべき見返りがないかぎり、核開発を容易には放棄することはないと考えたほうがよい。

 体制維持のための第二の方法は、アメリカのみを相手にするということである。中国やロシアは支援してくれる兄貴分であり、日本や韓国はアメリカの手下である。北朝鮮は、アメリカと話をつけることができれば、体制は維持できると考えている。日韓両国は、経済的な協力を得られるかぎりにおいて付き合うが、それ以上に期待することはない。

 祖父や父が推進してきたこの姿勢を金正恩も踏襲しているが、問題なのは、米朝首脳会談を行ったにもかかわらず、1994年の米朝枠組み合意のようなメリットがまだ何も現れてこないことである。

 北朝鮮の最大の不満は、核実験もミサイル発射も中止しているのに、制裁解除がないことである。昨年6月の米朝首脳会談では、アメリカは「一括、即座の非核化」という要求を、北朝鮮に譲歩し「段階的非核化」で決着させた。金正恩にしてみれば、非核化が段階的ならば、制裁解除も段階的でよいはずである。

 米朝首脳会談後の共同声明では、非核化については、「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けて取り組む」と記されている。しかし、アメリカが要求するCVIDのうち、V(検証可能な)やI(非可逆的な)については一切言及がない。しかし、トランプ政権は、CVIDが実現しなければ、制裁解除はないと言い続けている。

 金正恩はこれを約束違反と判断しても不思議ではない。そこで、1日の「新年の辞」で、「制裁を続けるなら新たな道を模索せざるを得なくなる」と述べて、アメリカを牽制したのである。

新年の辞を伝える北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長

韓国ソウルの鉄道駅のテレビに流れた、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長による新年の辞を伝えるニュース映像(2019年1月1日撮影)。(c)Jung Yeon-je / AFP〔AFPBB News

 昨年6月の共同声明では、「トランプ大統領は、北朝鮮に対して安全の保証を提供することを約束した」とあるが、金正恩は、これで本当に金王朝の継続がアメリカに認められたとは思っていないであろう。

北朝鮮が習近平の「対米交渉カード」になる可能性も

 このような北朝鮮側の不満と不安に対して、来たるべき第2回目の米朝首脳会談でトランプはどこまで金正恩に「お土産」を渡すことができるのであろうか。

 金正恩は、訪中して習近平と会談し、「非核化の立場を引き続き堅持し、対話を通じて問題を解決する。2回目の米朝首脳会談が、国際社会が歓迎する成果が得られるよう努力する」と強調した。これに対して、習近平は、非核化を目指す北朝鮮の立場を支持すると表明した。制裁緩和については、「米朝が歩み寄ることを望む」、「北朝鮮側の合理的な関心事項が当然解決されるべきだ」と述べている。

 しかし、米中は国際社会で熾烈な覇権争いを展開しており、中国がどこまで北朝鮮の後見人として振る舞えるか疑問である。むしろ、米中摩擦の緩和のために、北朝鮮をカードとして使い、金正恩に「見返りなしの非核化」を求める可能性もある。

 アメリカの研究機関は、衛星写真の解析から北朝鮮がウラン濃縮を再開していると判断している。北朝鮮の非核化、経済改革などの目的は、すぐには達成されそうもない。

【私の論評】韓国は中国の朝鮮半島浸透の防波堤の役割を北に譲ってしまった(゚д゚)!

「金王朝」死守したい金正恩の頼みの綱としての核という考えは別にして、北朝鮮国内には非核化に反対する勢力が存在し、金正恩朝鮮労働党委員長が国内の権力闘争に生き残りつつ非核化にこぎ着けるのは「極めて困難」だと考えられます。

そのような勢力は北朝鮮に間違いなく存在します。それを理解するには、北朝鮮経済の現代史や韓国の歴史を知る必要があります。

北朝鮮の経済はかつて、社会主義的な「計画経済」一辺倒でした。国民の生活に必要なモノの種類と量を国家が決定し、工場や農場に生産を指示。出来上がったモノを国民に配給するというものでした。

ところが、このシステムは1990年代に崩壊してしまう。北朝鮮を経済的に支えていた旧ソ連・東欧の社会主義圏が消滅し、さらには数十万単位の人が餓死したと言われ大飢饉「苦難の行軍」に襲われたからです。

中学生くらいの少女が露天の食堂で客の食べ残しに手を伸ばしている。
1999年12月咸鏡北道の清津市にて撮影キム・ホン(アジアプレス)

これにより、国民を養えなくなった国家は、人々がそれまで禁じられていた「商売」に乗り出すのを黙認するようになりました。北朝鮮の人々の生存本能は、金儲けの楽しさを知るのとともに「商魂」へと変じ、国の経済をなし崩し的に資本主義化させてしまったのです。

「苦難の行軍」が発生した当初、人々が売ったのは衣類や家財道具などのなけなしの財産でした。それを売り払ってからは、やむなく売春に走る女性たちもいました。

ところが今では、資本家と呼べる人々まで登場しています。たとえば、中国との小規模な密輸で原資を蓄え、そのカネをエネルギー不足で開店休業状態の国営工場に投資。海外から燃料と発電機、原材料を輸入し、中国企業からの委託生産で大規模な輸出を行う――といったパターンです。

しかしこれも、国家の力が弱まったからこそ可能になったことです。非核化によって経済制裁が解除され、韓国や中国から大規模な経済支援が行われたら金正恩体制がパワーを取り戻し、強力な中央集権に回帰してしまうことになります。

これが、現在の北朝鮮経済で既得権を握る高官や富裕層の心配事なのです。

だからこそ、金正恩はすぐに非核化に走ることができないのです。これを前提として、現状をみまわすと、朝鮮半島の独立を中国からの独立を守っているのは実は北朝鮮の核であり、韓国ではないという皮肉な結果になっています。無論、これは金正恩や、北の高官や富裕層が期せずしてそうなっています。

そうして、これは何も北朝鮮の核保有を認めよなどと言っているわけではありません。しかし、現状、北朝鮮がすぐに非核化をすすめた場合、朝鮮半島は中国に飲み込まれてしまう可能性が大です。

そもそも、韓国は自ら独立を勝ち取った経験などなく、歴史的に中国や日本、米国の支配下に置かれてきた経緯からみても自国の防衛や独立に関心がないです。
中国に抵抗しようという気もありません。

最近の海自哨戒機へのレーダー照射事件をみても、韓国は本気で中国と対峙しようという考えがあるなら、そもそもあのようなことはしないし、したとしても早期に解決したでしょう。韓国は、中国の覇権に対抗するための国際連携の一員に加わることはできません。



もし、韓国が自らの独立に関心があるのであれば、在日米軍基地がある日本に安全保障を全面的に依存しているのに、日本と無用ないさかいを起こしたりはしないはずです。韓国が反日であるということは、韓国が本質的な外交政策に関心がないことを意味するものとみなすべきです。

日本との関係や米韓同盟をないがしろにする形で北朝鮮との融和政策を進める韓国の文在寅政権は、これまで米国に保護されていたのを中国に保護してもらうよう打算的に移行しているにすぎないです。

朴槿恵時代から、中国に急速に接近した韓国は中国の朝鮮半島浸透の防波堤の役割を北に譲ったも同じです。

結果として、北朝鮮の核保有は北朝鮮の独立を保証すると同時に、中国の影響力を朝鮮半島全土に浸透させることも防いでいます。米国にとって、朝鮮半島が南北に分断され、北朝鮮が核を保有している現状が中国をにらみ望みうる最善の状態です。

おそらく、トランプ政権も最近では、そのようにみているのでしょう。ただし、米国が北朝鮮を核保有国として認めることは、永遠にないでしょう。今すぐではないにしても、いずれ非核化したいと望んているのは間違いないです。だからこそ、現在は、この均衡を崩さないようにしつつ、対中国冷戦Ⅱを発動しつつ、北に対する制裁も同時に実行しているのです。

この均衡が崩れるのは、どのような場合かというと、北がまたミサイル発射実験を頻繁に行うようになるか、実際に核兵器を使用してしまうこと、中国が、朝鮮半島を自国に併合するために実行動をすること、その他ロシアや韓国の動きなどが考えられます。

今のところ、このような動きはみられず、現状は絶妙なタイミングで、均衡しています。米国としては、ここしばらくこの均衡を崩さないようにして、様子を見ることでしょう。均衡が敗れれば、米国は何らかの行動をするでしょう。その中には当然のことながら、北朝鮮への武力行使などのオプションも含まれているはずです。

逆にいうと、この均衡が続く限りは、北朝鮮に対して、米国は目立った動きはしないということです。今年はそのような状況が続くかもしれません。

この均衡が続くことを前提として、米国の対中冷戦Ⅱが継続し、中国が体制を変えるか、経済力が現在のロシアなみ(GDPで韓国を若干下回る)に弱った場合、北と米国の本当の交渉が始まることでしょう。その日は、今から10年後かもしれないですし、ひょっとすると20年後かもしれません。

ただし、いずれの国であれ、この均衡を破りそうなときには、軍事オプションを含め、米国は何らかの動きをするのは間違いないでしょう。

金正恩も、当然のことながら、この均衡を崩さないことを前提にしつつ、少しでも自らに有利になるように立ち回ることでしょう。

第二回米朝首脳会談において、その方向性をうかがうことができるかもしれません。

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2018年11月12日月曜日

米、韓国へ“制裁”秒読み…北の“番犬”文政権の「制裁破り」にトランプ氏激怒―【私の論評】日台は、中国から離れる政策を実施つつ、国内経済浮揚の両方を同時に実行しなければならない(゚д゚)!

米、韓国へ“制裁”秒読み…北の“番犬”文政権の「制裁破り」にトランプ氏激怒

5月には日中韓ビジネス・サミットを開いた安倍晋三首相(中央)と
中国の李克強首相(右)、韓国の文在寅大統領

 米国との貿易戦争に苦しむ中国。いわゆる「元徴用工」をめぐる反日・異常判決を出した韓国は、露骨に北朝鮮寄りの姿勢を見せる。中韓両国と関係のある日本企業も危険な立場となりかねないと警告するのが国際投資アナリストの大原浩氏だ。寄稿で大原氏は、「自由」や「民主主義」とかけ離れている中国や、米国の制裁対象となれば経済の混乱が不可避の韓国との取引を考え直すべきだと訴える。

 トランプ米大統領は、米国が旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する意向を表明した。これによって、米中貿易戦争と呼ばれていたものが、世界を巻き込む「第二次冷戦」の始まりであることが確定した。

 そもそも、1989年のベルリンの壁崩壊、91年のソ連邦の崩壊の後、世界中のだれもが共産主義の崩壊によって東西冷戦は終了したと思った。鎖国状態の共産主義国家群が「鉄(竹)のカーテン」を開けて自由主義経済圏と交流すれば、いずれ共産主義は消滅し、それらの国々にも「自由」と「民主主義」が広がると思ったのである。

 ところが、その考えは甘かった。中国を典型的例として、共産主義国家の大半(悪の帝国)は、西側の「自由市場」に参加してメリットを最大限に享受したにもかかわらず、国内の専制的支配に変化はなかった。それどころか、経済的に豊かになったことで、独裁政権が国民への締め付けを強化する事態すら招いた。

 こうしたなかで米中貿易戦争が勃発したのは、決してトランプ氏の気まぐれではない。日本企業だけではなく、中国に進出した米国企業も、無理やり先端技術を提供させられたり、当然認可されるべき申請を保留にされたりするなど数々の嫌がらせを受けてきた。

 しかし、被害企業は共産主義中国という巨大な相手とけんかできず、泣き寝入りしてきた。トランプ氏は、それらの企業の「声なき声」を代弁したに過ぎない。

 現在、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は悪の帝国の一画である北朝鮮の番犬になり下がり、制裁破りともとられかねない言動を繰り返している。トランプ氏は北朝鮮を手なずけようとしているが、「しつけ」をしている最中に、横からエサを放り投げられたら激怒するのも当然だ。韓国の銀行や企業に対して米国が制裁を発動する日も近いのではないだろうか。

 もちろん、そうなれば韓国経済は混乱するし、韓国企業と取引をする日本企業も危険な立場に立たされる。

 さらに大きな問題が「悪の帝国」の本丸である共産主義中国である。中国には相当数の日本企業が進出したり、取引を行ったりしている。しかし、共産主義中国がいまも人権無視の蛮行を続けていることが誰の目にも明らかにされつつある。

 サウジアラビア政府が関与した記者殺害事件では、体を切り刻むなどの残酷な手口で世界中の国々から激しい非難を受け、サウジからファンドに出資を受けているソフトバンクグループは窮地に立たされている。

 しかし、ウイグルでの中国政府の行いは、それとは比較にならないほど大規模で悪辣(あくらつ)である。

 今でこそナチス・ドイツは繰り返し批判されているが、第二次世界大戦が始まるまでは米国などの企業は好意的だった。米国を代表する企業のトップもヒトラーから勲章を受けていた。後に勲章を返還したため事なきを得たが、そうでなければその企業は存在できなかったかもしれない。

1938年、デトロイト駐在のドイツ領事(右)がヘンリー・フォード(中央)に
「ドイツ大鷲十字章」を贈り、ヒトラーの謝辞を伝えた

 これまでマスコミでもてはやされてきた中国だが、日本企業としては、取引を即刻中止するのが正しい「危機管理」であり、「コンプライアンス(法令順守)」ではないだろうか。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】日台は、中国から離れる政策を実施つつ国内経済浮揚の両方を同時に実行しなければならない(゚д゚)!

日本企業は、日中友好にぬか喜びしているようですが、台湾は政府ぐるみで中国から離れる政策をとりつつあります。本日は、現在の日本とは対照的な、台湾の状況を掲載します。

中国国内はすでに数年前から、経済成長の鈍化、債務急増問題、信用バブル、人民元安など様々な経済問題に直面していました。これらが主因で、現在中国からの資本流出が加速していました。それを阻止するために、中国当局は近年個人や企業に対して流出規制を強化しました。

ペンス副大統領は、中国に対して最後通牒とも受け取れる演説を行い、米国による「対中国冷戦Ⅱ」は中国の体制が抜本的変わるか、体制を変えないなら、経済的にかなり弱体化させ他国への影響をそぎ取るまで続けられることになりました。

そのような中、台湾企業ははここ数年中国から離れる、努力をしています。台湾金融監督当局である金融監督管理委員会の最新統計によると、昨年1~3月期に約9社の台湾企業が中国本土から撤退し、過去最多となりました。この傾向は、米国が対中国貿易戦争を開始してからますます顕著になっています。

多くの台湾企業が中国本土に進出しているのですが、その収益に占める本国送金比率は12%で、帳簿価値の5.4%にとどまります。主因は中国当局の資本流出規制だというのです。

1970後半~80年代にかけて改革開放に転換した中国当局には、資金が必要でした。このため、当局は台湾企業や香港企業を「外資企業」として積極的に誘致しました。「現在の中国経済発展には、台湾企業と香港企業が大きく貢献しました。しかし、いったん中国本土に入った台湾と香港の資本は中国からでることができないようです。

実は台湾などの多くの経営者たちは、中国当局が資金流出制限を強化しているため、資金を台湾や香港に送金ができなくなっていると知っています。台湾企業が大陸中国の本土で、投資等を通じて儲けがあったとしても、その収益をどうしても台湾送金できず、結局大陸中国本土に再投資するしかないようです。

1980~90年代、数多くの台湾企業などの進出で、当時中国の資金および技術の不足が解決されました。当局はその後、さらに欧米諸国との間で「手厚い」貿易協定を結び、中国経済がより大きく拡大しました。この結果、中国当局にとって、リーマンショックまで資金問題は存在しませんでした。

ではなぜ、台湾企業などの資金を中国国内に留まらせたのでしょうか。これは、中国当局の本質に関係があるようです。個人の資産を認めず、他人の財産を奪ってきた中国共産党は、もちろん台湾企業の資本を手に握りたいとの政治的な狙いがあったのでしょう。

中国共産党は政権を奪ってから今現在まで、数々の政治運動を起こし、「暴力」と「恐怖」で国民に対して圧制を敷いてきました。

とはいいながら、長期的に政権を維持していくには暴力だけではダメだと当局は心得ているようです。そのため、中国当局は経済成長を通して、国民に当局は『偉大』だと思い込ませ、中国共産党統治の当地の正当性を強調してきたのです。

そのため、中国当局は長年経済指標をねつ造してきました。この偽装された経済データで作り上げられた虚偽である「世界第2位の経済体(実体はドイツ以下ともされている)」に、多くの海外企業が引き付けられました。

しかし、外資企業が中国本土でビジネス展開を始めると、海外への送金を制限して、人民元を海外の本国通貨に自由に両替させないことで、資金が本国に戻ることを阻止しました。

また、当局は中国企業が外資企業の製品を模倣し、知的財産権を侵害するのを黙認し外資企業の技術を盗んできました。このように、当局が入手した外資企業の資金と技術を用いて、国有大手企業を扶養し大きく育ててきたのです。

現在中国経済は不動産バブル、株価大暴落、元安、企業や政府の債務急増問題など多くの難題に直面しており、ねつ造された「経済の繁栄」はまもなく消えます。最近の米国による対中国「冷戦Ⅱ」は、それを加速することでしょう。そうして、多くの投資家が「中国リスク」を認識し、中国市場から続々と撤退しています。

一部の台湾経営者の中で、中国本土と台湾は密な関係かあることから、中国経済が崩壊すれば、台湾経済も大きな打撃を受けると危惧しています。

中国当局は台湾政府に対して、長年経済に台湾企業を通じて圧力をかけてきました。しかし、台湾国民と政府は今その危機感を強めています。いわゆる台湾政府による「新南向政策」(投資先を中国本土から東南アジアにシフトする)で、台湾政府は中国経済に依存する現状を打破しようとしています。

「新南向政策」を示す台湾のチャート

今すぐにはその政策の効果が目に見えないとしても、中国経済への依存を断ち、中国共産党政権からの指図を受けないために、この政策を堅持していく必要があります。

このように、台湾は中国から離れる政策を政府が音頭をとりつつ、民間企業が協力して行っています。日本も、この台湾の姿勢を見習うべきです。

今年11月24日、台湾では統一地方選挙(「九合一」)が行われます。投票まで100日を切ったとあって、メディアの報道も熱を帯びています。

ただその反面、気になるのが、肝心な台湾の有権者の政治への関心が一向に高まっていないことです。その理由は、有権者の“政治離れ”に歯止めがかからないからです。

中国との関係で政策が対立する台湾では、台湾独立の受け皿となる与党・民主進歩党(民進党)と大陸との統一を掲げる国民党という二大政党の対立の構造が定着しています。

互いに象徴するカラーを定め、民進党の緑に対して国民党が青。有権者の選択はずっと、緑か青かという単純なものでした。

民主進歩党(左)のシンボル・カラーは緑、国民党(右)のそれは青

しかし、ここにきて顕著になりつつあるのが緑にも青にも「ノー」という空気です。いわゆる「無色」勢力の伸長と呼ばれる傾向です。

いったいなぜこんなことになったのでしょうか。

日本では、台湾の選挙といえば、緑か青のどちらが勝ったかで、台湾の人々の対中国観をはかろうとするのですが、対外政策が選挙の中心に来るケースは極めて稀で、実際はそうではないことの方が多いです。

では、人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善です。

その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられました。

だが、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいでしょう。

そうして、その理由は、蔡英文政権がマクロ政策を重視していないからです。積極的な金融緩和策、財政出動などで、台湾経済に協力にテコ入れするなどの政策は行わず、もっぱら「新南向政策」ばかりでは、国民の生活は改善されません。

ここは、金融政策で雇用を画期的に改善した日本の安倍政権を見習っていただきたいものです。

ただし、日本の安倍政権も、来年10月から消費税増税を実施する予定です。もし、これを実行してしまえば、せっかくの金融緩和策で改善された雇用等がまた後ずさりすることになります。

日本も台湾も、中国から離れる政策を実施つつ、国内経済を浮揚するという両方を実行しなければならないのです。両政府とも、どちらが欠けても、うまくはいかないでしょう。

日本は、国内経済が良くなりさえすれば日本企業もその対応に追われ、危険な中国ビジネスへの関心は薄れることでしょう。

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2018年8月14日火曜日

「米朝決裂なら、最大の戦犯は文氏だ」米情報当局関係者が衝撃発言 北の日本人男性に拘束に外事警察関係者は怒り爆発 ―【私の論評】朝鮮半島問題は米にとって対中国戦略を実行する上での制約条件の一つに過ぎない(゚д゚)!

「米朝決裂なら、最大の戦犯は文氏だ」米情報当局関係者が衝撃発言 北の日本人男性に拘束に外事警察関係者は怒り爆発 

スクープ最前線

北の金正恩氏と南の文在寅氏(左から)

 北朝鮮の卑劣な謀略が警戒されている。ツアー旅行で訪朝した日本人男性が拘束されたが、「対日カード」として悪用しかねないのだ。「北朝鮮の非核化」をめぐり、ドナルド・トランプ米政権の堪忍袋の緒が切れかかるなか、「日米同盟の絆」を揺さぶる狙いなのか。トランプ政権の、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に対する激しい怒りとは。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情勢をリポートする。

 「人質以外の何ものでもない。スパイなど100%あり得ない。なぜ、いまなのか。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮は、人質解放を武器に『3つの謀略』を考えていそうだ。あまりにも卑劣だ」

 旧知の外事警察関係者は、こう怒りを爆発させた。

 拘束された日本人男性は、滋賀県出身の映像クリエーター(39)とみられる。外国の旅行会社のツアーで北朝鮮に入り、軍事施設もある西部の港湾都市・南浦(ナムポ)で拘束された。

 「3つの謀略」とは以下の通りだ。

 (1)「北朝鮮の非核化」問題で、日本は米国と協力して対北強行姿勢を止めない。日本を黙らせて、北朝鮮側に寝返らせる。

 (2)9月の自民党総裁選前に、工作員と左派メディアを動員して「安倍晋三首相だから事件が起きた」と世論操作、安倍首相の「総裁3選」を徹底的に潰す。

 (3)人質解放を条件に、「日本人拉致問題は解決済み」と認めさせ、日本に北朝鮮への経済支援を行わせる。

 「ふざけるな!」だ。日本政府は現在、北京の大使館ルートなどを通じて早期釈放を呼び掛けている。

 米大学生、オットー・ワームビア氏のケースとの類似点も心配だ。

 ワームビア氏は一昨年1月、北朝鮮旅行の帰国直前、スパイ容疑の濡れ衣を着せられ、17カ月間拘束された。昨年6月、昏睡(こんすい)状態で解放された。だが直後に死亡した。

 トランプ大統領以下、米政府高官は激怒し、「ワームビア氏は正恩政権に殺された。責任は(正恩氏に)負わせる」という糾弾声明を出した。日本も断固たる声明を出すべきだ。

金も文もどちらも信用できないトランプ大統領は憤懣やるかたない

 実は、米朝関係が再び緊張している。

 外務省関係者は「米国は北朝鮮への圧力をさらに高める。北朝鮮が米朝首脳会談での約束、『非核化』を裏切っているからだ。北朝鮮は『朝鮮戦争の終戦宣言』だけを要求し、具体策をすべて拒否している。米朝決裂もある」と語った。

 こうしたなか、北朝鮮が「死神」と恐れるジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が5日、FOXニュースの番組で「正恩氏は今年4月、板門店(パンムンジョム)での南北首脳会談で、韓国の文大統領に対して、『非核化を進める、1年以内にやるつもりだ』と約束した」と、爆弾事実を暴露した。

 これは、文氏側がトランプ氏側に報告した機密情報だ。トランプ氏は、同盟国の文氏を信じて、6月に米朝首脳会談を強行した。

 ところが、韓国大統領府(青瓦台)の報道官は、ボルトン氏の発言について「私は知らない」と逃げた(朝鮮日報7日)。何たる対応だ。以下、複数の米情報当局関係者から入手した情報だ。

 「韓国の対応は『文氏が正恩氏と組んで、ウソで米国をだました』と白状したようなものだ。ボルトン氏の発言は、南北双方に『米国をなめるな!』と突き付けた最終警告だ。韓国はいま、康京和(カン・ギョンファ)外相以下、韓国政府要人が『終戦宣言を出してくれ』『経済制裁を緩和してくれ』と、米国に泣きついている。徹頭徹尾、北朝鮮の言いなり。米国は激怒している。米朝決裂の場合、最大の戦犯は文氏だ」

 トランプ政権は、国連安保理の対北制裁決議を破って、北朝鮮産の石炭を「ロシア産」などとして偽装輸入していた韓国企業に対し、独自制裁を科す構えをみせている。

 米情報当局関係者の情報はこう続く。

 「韓国関税庁が10日、韓国企業の偽装輸入を発表したが、米国は昨年から何度も警告していた。文政権が米国を裏切り、偽装輸入を黙認していた重大疑惑がある」

 トランプ氏は「あいつは何者だ!」「恩知らず!」と周囲に口にするほど、「反米反日従北」の文氏が嫌いだ。

 最後に、米軍筋から入手した重要情報を報告する。

 「米国は密かに『米朝決裂Xデー』の設定と、その直後に展開する対北軍事作戦(=海上封鎖や軍事攻撃を含む)の再検討を始めた」

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】朝鮮半島問題は米にとって対中国戦略を実行する上での制約条件の一つに過ぎない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事のような見方は当然あると思います。特に、ツアー旅行で訪朝した日本人男性が拘束されたことは断じて許すことはできません。

ただし、私は米朝が決裂したとして、その戦犯は文在寅であるとの見方は、一方的であるかもしれないと思っています。

何しろ、文在寅が何をいおうが、それどろか、文在寅が存在しようがしまいが、米国は「北が核放棄」をしなければ、北を攻撃する腹積もりでいると思うからです。

なぜそのようなことがいえるかといえば、米朝会談は米国の一方的な大勝利に終わっているからです。しかし、日本のマスコミなどはそのような見方をしていないようです。

米中首脳会談で大勝利したトランプ大統領(左)

確かに、マイク・ポンペオ国務長官は訪朝し、北朝鮮の高官らと交渉を進めているし、安倍首相や河野太郎外相とも会談を重ねているのですが、北朝鮮に具体的な非核化の動きがないのは事実です。

そのため、日本のマスコミなどは米朝首脳会談において、トランプ大統領はさしたる成果もあげることができず、失敗だったとみるむきも多いようです。

しかしこの見方は全くの間違いです。今後の北朝鮮の行く先は三択そうして、究極的には二択しかありません。ここに北朝鮮を追い込んだことが、シンガポール会談の成功なのです。
三択の一つ目は、朝鮮半島の非核化により、北朝鮮が核を放棄することです。
二つ目は、一応サインしたけれども、北朝鮮が引き延ばし策を駆使して、核施設の廃棄をしないということです。

この場合、アメリカの対応は明確で、経済制裁の一層の強化です。あまりに長引くようであれば、アメリカ側から交渉の中止・中断を通告することになるでしょう。

一つのメルクマールは、今年中の現地査察でしょう。今年中に米軍がIAEA(国際原子力機関)の査察に同行して北朝鮮国内に入らなかったら、アメリカが断固とした対応措置をすることは間違いないです。この場合は、その後米国による北攻撃ということになるでしょう。

三つ目は、北朝鮮が会談の約束をすべて反故にして、核・ICBMの実験を再開する場合です。この場合、米国は北を攻撃することになるでしょう。

煎じ詰めていえば、北が核を放棄して米軍の攻撃を免れるか、核を放棄せず結局米国の攻撃を受けるかの二択しかないということです。

この二択、北朝鮮がいずれを選んでも、米朝首脳会談を成功と評することができます。
 
なぜなら、北が核を放棄しなかった場合、米国は攻撃できる絶好の正当性を確保できることになったからです。世界が注視している中、両首脳が共同声明にサインを交わしています。その約束を北が破り捨ててしまったら、その見返りとして攻撃をされても「致し方ない」と、世界中の誰もが思うことでしょう。

もし、北が核放棄をせずに、米国が北を攻撃した場合、中国やロシアなど表面上は米国を非難するかもしれませんが、他国のほとんどはそれに同調することはなく、中露が米国に対して具体的措置をとるということはできないでしょう。

トランプは非常に巧みな交渉術によって、北朝鮮を究極の二択に追い込むことに成功したのです。これがシンガポール会談が大成功だったと私が評価する所以です。

トランプ政権はこれを最初から企図して、米朝首脳会談を開催し、北朝鮮を追い込んだのです。だから、そもそも、韓国などの北との交渉など、最初からほとんど意味を持たず、今後も持ち得ないのです。

そうして、北問題というともう一つの側面があります。それは、米国の本命は対中国戦略だということです。米国にとっては、北の問題など対中国戦略を実行する上での制約条件の一つに過ぎないということです。

米国にとって、北朝鮮は対中国戦略を実行する上での一つの駒に過ぎず、金正恩が対中国の駒として動くつもりで、その証として核放棄をすれば、北の存続を認めるかもしれません。

この意味では、歴史は繰り返しているのかもしれません。日露戦争当時も、日本にとっては半島は日本の対露戦略を実行する上での制約条件の一つに過ぎませんでした。本命はあくまで露でした。露の脅威がなければ、日本が半島に進出することもなかったでしょう。

しかし、北が核放棄もせず、金正恩が米国の駒として動くつもりがないならば、米国は中国に対する見せしめとして、北を攻撃することでしょう。そうして、先にも述べたように、その場合、米国は世界中のいずれの国からも非難されたり、報復されたりすることも危惧せずに、北をフリーハンドで攻撃することができるのです。

米国が北を攻撃すれば、中国が実行支配する南シナ海の環礁埋立地も攻撃されるかもしれないと脅威や疑念を抱かせるには十分効果があるものと思います。

南沙諸島の現状(黄色が中国の実効支配)クリックすると拡大します

トランプ政権としては、徹底的に対中国貿易戦争で中国を追い込んだ上で、北を攻撃して崩壊させ、中国の様子をみて、米中会談を開催し南シナ海からの撤退を約束させるかもしれません。

これも、米国側は米朝首脳会談で北朝鮮を追い込んだのと同じように、中国も二択に追い込み、結局米国が南シナ海の環礁埋立地を攻撃しても、米国は世界中のいずれの国からも非難されたり、報復されたりすることも危惧せずに、攻撃することができるようにすることでしょう。

これは、一見困難なようにもみえますが、私は意外と簡単だと思います。何しろ、中国による南シナ海の実効支配は、国際司法裁判所でも正当なものとは認められてないからです。

国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年7月12日、南シナ海での中国の海洋進出を巡り、中国が主権を主張する独自の境界線「九段線」に国際法上の根拠がないと認定しています。


もともと、中国は国際法を破っているわけですから、これを米国が軍事攻撃して、原状復帰させても、中国が文句を言えた筋ではないのです。

ただし、現状のまますぐに米軍が攻撃すれば、中国・露はこれを批判し、それだけでなく何らかの対抗措置をうちだしてくる可能性は大きいです。

ただし、先ほど述べたように、対中国貿易戦争や、これから始まる本格的な対中国金融制裁で、中国が経済的にかなり弱体化し、さらに露も中国弱体化に参画させた暁には、米中首脳会談を開催して、中国を南シナ海から撤退するか、そのまま居座るかの二択に追い込み最終的に決着をつけるというやり方もできると思います。

ただし、これは今すぐにではなく、5年もしくは10年後くらいに可能になることでしょう。そのときはトランプ政権でない可能性もありますが、ポストトランプ政権でも、習近平が終身主席すなわち現代の皇帝になることを宣言してからは、パンダハガー(対中国融和派)は影を潜め、ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)が力をつけているので、この路線はトランプ政権が基礎をかため、継承されることになるでしょう。

このように全体の方向性を俯瞰してみると、やはり韓国の存在など、米国の対中国戦略における一つの制約条件にすぎず、文も金もこれに大きな影響を及ぼすことなどできないでしょう。

そうして、最後に忘れてはならないことがあります。それは、やはり拉致被害者問題や、今回日本人男性が拘束されたことです。これらの人は、もし米国が北を攻撃することになれば、今のままだとその救出は米国や韓国などに依頼するしかありません。

自国民を救出できないような国は独立国とはいえません。憲法改正が間に合わないというのなら、憲法解釈の変更や時限立法などもあわせて、自衛隊が北に赴いて救出することができるようにすべきです。

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2018年6月19日火曜日

安倍首相&トランプ氏の“罠”にはまった正恩氏 トランプ氏「拉致解決拒否なら経済発展はない」―【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!


安倍首相

米朝首脳会談を受け、日本政府は「拉致問題」解決のための日朝首脳会談の実現に向けて動き出している。これに対し、北朝鮮の国営ラジオ「平壌放送」は「(拉致問題は)すでに解決された」「(日本は)稚拙かつ愚か」との論評を流すなど、いつもの揺さぶりをかけてきた。ただ、水面下では、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮の関係者が、安倍晋三政権への接触を図ってきているという。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情報に迫った。  

 「私は北朝鮮にダマされない」「(米朝首脳会談で、ドナルド・トランプ大統領が、正恩氏に拉致問題を提起した)次は私の番だ」「日本が北朝鮮と直接(日朝首脳会談で)向き合い、拉致問題を解決していく」

 安倍晋三首相は14日、首相官邸で、拉致被害者家族に、断固たる決意をこう表明した。

 さらに、安倍首相は16日、読売テレビ系「ウェークアップ!ぷらす」に生出演し、「(拉致問題は)すべての拉致被害者を日本に帰国させたとき、初めて解決する」「拉致問題が解決しなければ、経済支援は行わない」「正恩氏が、大きな決断をすることが求められる」と断言した。

 いまが拉致被害者全員奪還の最大のチャンスだ。

 驚かないでいただきたい。米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている。

 旧知の米情報当局関係者は「すべては、安倍首相とトランプ氏が綿密に仕組んだ罠(わな)だ。正恩氏は完全にはまった。逃げられない」といい、続けた。

 「米朝首脳会談の席上、トランプ氏は『戦争か、非核化か』と決断を迫り、『完全非核化すれば、北朝鮮に素晴らしい経済発展がある』とバラ色のビデオを見せた。正恩氏は大喜びだった。そのうえで『完全非核化後、経済制裁は解く。だが、米国は1セントもカネは出さない。中国や韓国もほぼ同じだ。頼れるのは日本だけだ。拉致問題を解決すれば安倍首相は応じる。解決拒否なら経済発展はない。いま決めろ!』とやった。正恩氏は震えながら『(安倍首相と)会いたい』といった」

 米朝首脳会談後の夜、トランプ氏は安倍首相に次のように電話している。

 「今後は非核化と同時に、拉致問題を交渉して進めていかなければならない。シンゾー、ビッグ・プレーヤーとして関わってほしい」「100%、シンゾーを信頼している」

 トランプ氏の勝利宣言ではないか!

 現時点で、官邸が検討している日朝首脳会談の候補は以下の3つだ。

 (1)8月中に、安倍首相が電撃訪朝し、平壌(ピョンヤン)で開催する。

 (2)9月11~13日に、ロシア極東ウラジオストクで国際会議「東方経済フォーラム」が開かれる。ウラジーミル・プーチン大統領が、正恩氏を招待し、フォーラムの合間に安倍首相と会談する。

 (3)9月中~下旬、米ニューヨークでの国連総会に合わせて設定する。

 衝撃情報がある。水面下で、北朝鮮はとんでもない行動に出ている。以下、日米情報当局から入手したものだ。

 「米朝首脳会談から帰国後、正恩氏は幹部らに『日朝首脳会談の早期実現』を命令した。幹部らは『このままでは、正恩氏と北朝鮮のメンツが立たない』と頭を抱え、日本国内の北朝鮮協力者に『正恩氏礼賛、安倍潰しの世論工作をやれ!』と秘密指令を出した」

 「首相官邸や自民党の周辺に、北朝鮮関係者とされる人々が秘密接触している。彼らは『(拉致被害者を帰したら)安倍首相は本当に北朝鮮を支援するのか。信用していいのか』『拉致被害者を帰して、日本で激しい北朝鮮バッシングが起きたら、抑えられるのか』と泣きついている」

 日本はこのチャンスを絶対に逃してはならない。何度でもいう。拉致被害者全員の帰国は日本人全員の悲願だ。日本の主権がかかっている。

 だが、問題は左派野党の方々だ。

 政府・与党が「国会会期の1カ月延長」を申し入れたら、断固拒否したのだ。

 はぁ? 能天気もいい加減にしろ! 現状が分かっているのか。ゴールデンウイーク前後には職場放棄の「18連休」で、国民からは「税金ドロボウ!」と批判された。反省すらない。あきれてものが言えない。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!

この記事の冒頭の記事で、"米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている"というのは間違いないでしょう。

これは、トランプ大統領が意図的にそのように仕向けたのだと思います。何しろ、米国は北朝鮮に長年にわたって騙され続けてきたという経緯があります。

その米国がまた北朝鮮に援助などの面で直接関われば、また同じことを繰り返す可能性が大きいです。だからこそ、トランプ大統領は援助の部分は安倍総理に任せたのでしょう。

実際安倍総理なら、かなり前から北朝鮮と交渉してきたという経緯があります。北朝鮮との交渉ということでは、各国首脳の中では最も経験のあるうちの一人であることは間違いありません。

長年北と交渉をしてきた経験のある安倍総理

まさに、日本が北への支援にあたるということになれば、拉致問題の解決に関して北に譲ることはないでしょうし、拉致問題は、核の完全放棄に対する正確なリトマス試験紙なる可能性が高いです。

拉致問題を積極的に解決しようとしない北が、核の完全放棄だけを積極的にするなどということは考えにくいです。

このブログでは、米朝首脳会談後すみやかに、中朝首脳会談が開催されるか否かが、リスマス試験紙になるのではないかという見方をしていましたが、それよりも、拉致問題のほうがより正確なものになることでしょう。

実際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が19日、空路で北京に到着し、2日間にわたる訪中日程を開始しています。中国の習近平国家主席は金氏の滞在中、3月と5月に続き3度目となる首脳会談を実施。朝鮮半島の非核化や平和体制構築を巡る米朝間での協議本格化を見据え、中国の立場を伝え、積極的に関与する姿勢を強調する構えのようです。

6月12日の米朝首脳会談で北朝鮮は完全な非核化を約束しました。ただ米側は対北朝鮮制裁解除は完全非核化実現後になるとの立場で、非核化の行動ごとに北朝鮮が見返りを得る「段階的措置」を求める北朝鮮側の主張とは隔たりがあります。

この隔たりを埋めなおかつ、拉致問題を解決しなければ、日本は北朝鮮を支援することはありません。というより、日本の国民感情を考慮すればそのようなことはできないでしょう。



日本だけが、拉致問題を北朝鮮に迫っても、日本は北朝鮮に憲法の制約上軍事オプションを用いることは難しいので、たとえ援助をするという約束をしても、北が拉致問題解決に応じることはなかなかないと考えられますが、同時に米国の強大な軍事力を背景にすれば、話は違ってきます。

拉致問題を解決しなければ、日米による制裁はさらに強化され、それても北が応じなければ、次の段階では、機雷封鎖や一部爆撃をして、北朝鮮を完璧に孤立させることもできます。最後の段階では米国が軍事オプションを用いることになります。その時は、金正恩がこの世から姿を消すことになります。

これだと、北朝鮮は結局日本の経済支援を受け入れざるをない状況になります。

現在、トランプ政権は中国と貿易戦争を行っています。これに関しても、米国だけではなく、日本も絡めばかなりのことができるはずです。

いずれにせよ、トランプ大統領としては日米の協力のもとに北を早い段階で屈服させ、中国に対してさらに激しい締め付けを行い、いずれ屈服させたいと考えていることでしょう。


トランプ大統領は15日に、中国からの輸入品500億ドル相当への25%の追加関税措置を発表したばかりで、その際、中国が報復措置を講じた場合は追加関税を課すと述べていた。中国は直ちに報復措置を発表しました。

トランプ米大統領は18日、中国が発表済みの報復措置を実施すれば、同国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)相当に追加関税を適用すると警告した。中国側は直ちに対抗する姿勢を打ち出し、このまま行けば米中貿易摩擦の一段の激化は必至の様相です。

この貿易戦争、以前もこのブログでも掲載したように、中国には全く勝ち目がありません。この貿易戦争、いずれかの段階化で日米が協力して、中国に対する制裁という形にもっていけば、中国はかなり窮することでしょう。

中国も、北朝鮮も、まともに先進国などと貿易をしたいのなら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化することを迫られることになります。

しかし、これを実行するとすれば、両国とも現体制は崩壊するしかなくなります。

その日が来るのは案外近いかもしれません。

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2018年6月17日日曜日

【田村秀男のお金は知っている】国連制裁ルールを守れ 強欲な対北朝鮮投資家に警告せよ―【私の論評】無制限の対北投資は、北を小中国にするという結果を招くことに(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】国連制裁ルールを守れ 強欲な対北朝鮮投資家に警告せよ

 「今や世界全体はお前がバカだと知ることになったぞ」-。シンガポール在住の著名投資家、ジム・ロジャース氏は12日、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が握手するや、ただちに日本の市民団体「アジア調査機構」の加藤健さんに対して、子供じみた電子メールを送り付けてきた。(夕刊フジ)

アジア調査機構の加藤健代表

 加藤さんは長年にわたって対北朝鮮国連制裁破りを調べ、各国政府や議会、国連に告発活動を続けてきた。対北投資を推奨するロジャース氏については、国連安保理、米財務省、さらに米上下院議員百数十人に不当だと訴えた。加藤さんは本人にも直接、警告した。

 ロジャース氏はかなりのプレッシャーを感じていたようだ。米朝首脳が「非核化で合意」したなら、今後は国際社会の対北経済制裁が緩和され、西側からの対北投資のチャンスになる。どうだ、俺の投資判断は正しい、とうれしさ爆発というわけだ。

ジム・ロジャーズ 写真はブログ管理人 挿入

 軍事国家北朝鮮の国民生活は犠牲にされ、インフラ、産業設備も老朽化が激しい。しかし、戦前に日本の朝鮮総督府が調べたデータによると、北朝鮮の鉱物資源は極めて豊富である。金、ウランなど希少金属にも恵まれている。それに着目した有象無象の投資家や企業が対北投資のチャンスを狙ってきた。

 ロジャース氏の他にもっと「大物」の仕掛け人が西側にいる。最近は鳴りを潜めているが、英国の投資家、コリン・マクアスキル氏が代表例だ。英海軍情報将校上がりの同氏は1970年代から北朝鮮産の金塊をロンドンで商い、87年には対外債務不履行を引き起こした北朝鮮の代理人となって西側民間銀行と交渉した。2006年からは北朝鮮の隠し口座のあるマカオの銀行BDAを対象とする米国の金融制裁解除に向けマカオとワシントンの当局と交渉、解決した。

 08年にブッシュ政権(当時)が北に対するテロ支援国家指定解除に踏み切ると、大型の対北投資ファンドを準備したが、その後の情勢緊迫化とともに休眠に追い込まれた。昨年には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に接触を試みるなど、活動再開の様子だ。

 米欧系投資ファンドに対し、対北投資の主役の座を狙うのは韓国と中国だろう。中国は、地政学的利益の点からも北への開発投資での主導権に固執する。グラフは中国の対北投資と貿易の推移だが、投資面では12年をピークに急減している。金正恩氏が亡父、金正日(キム・ジョンイル)氏の権力を継承したのが11年末で、13年12月には中国資本の導入に熱心だった叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を粛清した。


 米朝首脳会談開催決定後、中国の習近平国家主席が停滞してきた対北投資の再活性化をめざすとの期待が中朝国境地帯に高まっている。遼寧省の丹東市の不動産価格はこの数カ月で2倍になったという。

 核・ミサイルばかりでなく、横田めぐみさんら拉致問題の全面解決を最優先すべき日本は毅然として、ムード先行の強欲な対北投資・貿易には、国連制裁ルール厳守を求めるべきだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】無制限の対北投資は、北を小中国にするという結果を招くことに(゚д゚)!

この記事の冒頭の田村氏の記事のように、このブログでも昨日無制限に北に投資をすることを懸念する記事を掲載しました。

その懸念とは、民間だろうが、日本政府のものであろうが、無制限に投資を続ければ、北は拉致問題はもとより、核廃棄やその他の約束を破る可能性があることです。

さらにその先にあるのは、民主化も、政治経済の分離も、法治国家化も不十分なまま、国家資本主義的に経済だけが肥大してしまうことです。

そうして、これは人口等の規模は違うものの、現在の中国のような体制です。まかり間違って、北がまともな体制をとらないまま、韓国なみの経済をもしくはそれを上回るような経済を身につければ、それはまさに小中国です。

これは、全く荒唐無稽な話ということもないと思います。半島の歴史を振り返ると、北朝鮮と、韓国が独立したばかりの頃は、北のほうが多く日本の産業基盤を引き継ついだ一方、韓国の当時の主要産業は農業であり、北のほうがGDPは大きかったということがあります。

韓国のほうが、北の経済を上回るようになったのは、1970年代からのことです。そうして、これは日韓基本条約による日本からの韓国への大規模な支援によるものが大きいです。さらに、北には鉱物資源がかなり豊富です。このようなことから、北が再び韓国の経済を上回るということはあり得ることです。

そうして、その小中国は現在の中国のようなことを実行する可能性もあります。

中国の場合は、広大な陸に囲まれていてまわりにたまたま蒙古や東トルキスタン、チベットなどの軍事的には強くない国々があったので、これらの国々の領内に侵攻しました。

北の場合は、北は中国に、南には韓国が控えており、西東は海です。そうなると、はやい時期から、海洋進出をする可能性があります。まずは、延坪(ヨンピョン)島砲撃事件で有名になった延坪島に侵攻するかもしれません。

延坪(ヨンピョン)島砲撃事件

その後は日本の南西諸島や、台湾などにも目をつけるかもしれません。そうすると、日本は小中国による第二の尖閣列島事件に巻き込まれるかもしれません。また、台湾本島は無理にしても、台湾の領海内には金門砲戦でも有名になった金門島などの島々もあります。

ただし、このようなことが起こったとしても、無論来年や再来年ということではなく、10年後かもっと先ということになるかもしれません。

その頃には、現在の中国は、米国からの貿易戦争や、国内経済の低迷で、かなり力を落としていて、それでも台湾は中国の一部と主張していても、結局何もできず、北の好き放題にされるということもあり得ます。

北朝鮮に無制限に民間企業などが、投資を実施するということにでもなれば、いずれこのようなことになりかねないのです。

とにかく、何が何でも半島に小中国ができることは、避けなければなりません。これを防ぐためには、北が経済成長をしたいというのなら、昨日も述べたように、まずは北が自身で民主化、経済と政治の分離、法治国家化を実施することにより、中間層の社会活動を活発化させる必要があります。

そこである程度経済を自力で大きくすることができれば、海外からの北への投資もある程度自由にできるようにするというような措置が必要です。

しかし、そのようなことをすれば、北の社会は、現在の金王朝体制とは相容れない社会となります。そうなれば、金正恩体制は崩壊せざるを得ません。国民が許せば、イギリス王朝のような形で残る可能性もありますが、歴史の短い金王朝にはそれは困難であると考えられます。おそらくは、ソ連への亡命ということにかもしれません。

現在は、19世紀ではなく、21世紀なのですから、これは当然といえば当然なのかもしれません。

とにかく、現在の金王朝体制は、金正恩が米国側につき、米国の対中国戦略の駒として北が動いている限りは暫くは持ちこたえることでしょう。米国から見れば、毒を持って毒を制するということです。

金王朝を象徴する金日成と金正日の巨大像

それにしてもそのまま続くことはなく、数十年のスパンでみれば、必ず崩壊することになります。

現在の米国においては、過去の米国の対中国戦略は間違いであったことが明らかになっています。過去の戦略の前提は、中国が経済発展さえすれば、いずれ米国や他の先進国なみに、民主化、政治と経済の分離、法治国家化するであろうというものでした。しかし、それは、数十年の年月を経ても成就しませんでした。

そうして、それは今日ではすっかり間違いであったことが明らかになりました。現在の中国は、南シナ海を実効支配したり、一対一路で中国の価値観を世界におしつけようとしたりで、米国の価値観と真っ向から対決するようになりました。

こうした苦い経験を持っている米国政府は、北朝鮮が小中国になることは絶対に許容しないでしょう。比較的はやい段階で、北にある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を迫ることになるでしょう。

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2018年6月15日金曜日

「在韓米軍撤退すれば日本が最前線」 安保パニックに陥った日本―【私の論評】日本は北と韓国を拮抗させ日本の国益を最大化せよ(゚д゚)!

「在韓米軍撤退すれば日本が最前線」 安保パニックに陥った日本

朝鮮日報日本語版

トランプ大統領は今年の3月にも在韓米軍の撤退について言及している

「ドナルド・トランプ米大統領が在韓米軍の撤退に言及したが、絶対に言ってはならないことだった。在韓米軍が撤退するということは韓国の軍事境界線が対馬海峡になるということで、日本の安全保障にとって計りしれない危機だ」(深谷隆司・元国家公安委員長)

 「(在韓米軍撤退の話を聞いて)目と耳を疑った。米国自ら将棋の駒を捨てたような行動だ」(香田洋二・元自衛艦隊司令官)

 トランプ米大統領が在韓米軍撤退の可能性に言及して以降、日本列島が「安保パニック」に陥っている。首相官邸、外務省、防衛省、それぞれが記者会見するたびに「在韓米軍が撤退すれば日本の安全保障にも影響が出るのではないか」との質問が相次ぎ、官房長官、外相、防衛相が「米国は今すぐ撤退すると言っているわけではない」と火消しに躍起になっている。

 菅義偉官房長官は14日の定例記者会見で「米国は現時点で在韓米軍の撤退・縮小を検討しているわけではない」として「韓米同盟に基づく抑止力が、北東アジアの安全保障に不可欠な役割を果たしている」と述べた。河野太郎外相は「韓米同盟と日米同盟はアジアの平和と安定を維持してきた『公共財』だ」と述べ、小野寺五典防衛相は「在韓米軍の縮小はあってはならない」と強調した。

 政界やメディア、官僚、安全保障専門家の間でも「韓米軍事演習の中止や在韓米軍の撤退はあってはならない」「中国と北朝鮮だけがホクホク顔だ」などという声が噴出している。

 日本経済新聞は「米朝会談の合意には、非核化のプロセスが北朝鮮ペースにはまりかねない三つのわながある」と指摘した。一つ目のわなは、米朝が非核化を段階的に進めるということを明言しなかった点だ。北朝鮮が非核化の措置に一つ着手するごとに、韓米日は「見返り」を支払わなければならない一方、北朝鮮は時間を稼ぐ上にカネももらえるというわけだ。二つ目のわなは、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は米国本土まで到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射を中止するとは言ったが、韓日を狙った短・中距離ミサイル1000基については一言も言及していない点だ。三つ目のわなは、米国が自国の利益だけを手にしたまま在韓米軍の縮小や撤退を実施した場合、北東アジアの勢力バランスが急激に中国側に傾きかねないという点だ。

 このような「安保パニック」の裏には「トランプ氏を信じすぎた」という自責の念もある。日本政府は今回の米朝首脳会談に合わせ「安倍首相の外交ブレーン」とされる谷内正太郎・国家安全保障局長をシンガポールに派遣した。朝日新聞は「谷内局長が米国の実務チームと接触した際『在韓米軍の話は出ないだろう』という話を聞いたため、日本政府が安心していた」と報じた。トランプ氏の口からどんな言葉が出てくるのか、日本も知らなかったというわけだ。

 これまで安倍首相は日本国民の前で「私とトランプ大統領は『ドナルド』『シンゾー』とファーストネームで呼び合う関係」「いつどんな話でもできる仲」と何度も強調してきた。しかし、いざ米朝首脳会談が近づくと、トランプ大統領は11月に行われる米国の中間選挙を意識してICBMの発射実験を中止させることに集中し、「(非核化の見返りである)北朝鮮への経済支援は韓国と日本がやるだろう」と韓日に請求書を突き付けた。今回の会談で、中国だけが今以上に強くなるとの分析も出ている。

米国の軍事力評価機関、グローバル・ファイヤーパワー(GFP)が発表した2018年の世界の軍事力ランキングで、日本は8位、中国は3位だったが、日本は中国に比べ人口は10分の1、兵力は9分の1、防衛予算は3分の1にすぎない。経済も既に中国に抜かれた。慶応大の渡辺靖教授は「今は北朝鮮について議論しているが、中長期的に見れば日本にとって問題の核心となるのは中国の存在」だとして「台湾と南シナ海での中国の振る舞いを考えると、(今回の米朝首脳会談によって)日本が中国と対峙(たいじ)する最前線の国になるか、日米同盟で今以上の負担を強いられる可能性がある」と指摘した。

【私の論評】日本は北と韓国を拮抗させ日本の国益を最大化せよ(゚д゚)!

今回の米朝会談ではっきりと分かったのは、米国が韓国を見捨てることであり、米韓合同演習も中止されて、在韓米軍も近いうちに撤退する可能性も出てきたことです。韓国政府や国民の反応が気になりますが、朝鮮日報では自国のことよりも日本を心配をしているようです。

在韓米軍

このように、米韓同盟が危機的状態にあるのに韓国のマスコミの動きは意外に小さな反応しかありません。米韓合同演習の中止は韓国にとっては、米朝会談よりも大きなニュースだと思うのですが、どうも韓国はそう受け止めていはいないようです。

米韓同盟はすでに空洞化しており、トランプ大統領は旗幟を鮮明にしない韓国を見捨てて、北朝鮮と手を組むつもりなのかもしれません。

このブログでも最近、トランプ大統領は金正恩が米対中国戦略の駒として動くつもりなら、北を存続させるだろうし、もしその気がないなら、制裁をさらに強化して北を自滅させるか、場合によって軍事オプションを使うこともあり得るだろうことを掲載しました。

そうして、米朝首脳会談においては、トランプ大統領は、そのことついて会談中に金正恩に対して因果を含めたであろうということを主張しました。さらに、トランプ大統領は、金正恩が、米朝首脳会談以降半年以内くらいに中朝会談が開催されれば、トランプ大統領は金正恩は米国の駒ではなく、中国の駒でいることを選択したとみなすであろうことも掲載ました。

まさに、今後すぐに中朝会談を開催するかしないかが、金正恩の踏み絵になるということを掲載しました。

すぐに中朝会談を開催すれば、金正恩はトランプに見限られるだろう

北朝鮮の外交は従来から、二つの大国をうまく操ってバランスをとるというスタイルでしたが、ソ連崩壊とともに中国一国に頼らざるを得なくなりました。それとともに北朝鮮は核とミサイル開発に全力を注いで、米国を挑発し続けてきました。ところが現実には、米国向けに核とミサイルを開発していると見せかけつつ、中国に対抗できる軍事力を身につけてきたという側面は否めません。

米国としては、北朝鮮が核とミサイルをほぼ手にした段階で、トランプが手を伸ばしてきたわけですが、中国にはバレないように金正恩とトランプは派手なプロレスを中国の前で演じてきました。北朝鮮は中国の鉄砲玉として振舞ってきたわけですが、このままでは米国に蹂躙されるとみせかけたのです。

金正恩は、米国に「どうか攻撃しないでください」とお願いするように会談を呼びかけました。これはトランプと金正恩の猿芝居であり、中国を騙すためのプロレスショーなのです。その状況は、現状も続いているのですが、そのようなことも知らず中国の習近平は今回の米朝会談で「よくやった」と喜んでいるに違いありません。なぜなら、金正恩はなんの具体的な約束も米国と結ばなかったからです。

しかし二人だけの秘密会談では、トランプと金正恩はがっちりと手を組んで、米国の対中包囲網に加わる事を合意したのでしょう。その為には米国は対北朝鮮への経済制裁を解除して、大規模な経済援助をしなければならないのですが、そのカネは韓国と日本に出させるつもりのようです。

中国の習近平はそのような動きを察知して見抜いているのでしょうか。中国は今頃その動きに気がついても、トランプと金正恩はすでにがっちりと手を組んでしまいました。中国が金正恩を何とかしようと思っても、殺してしまえば北朝鮮は大混乱して大量の難民が中国に押し寄せることになりかねません。

金正恩は、まさに中国と米国との間を綱渡りしているのです。中国に対抗できるのは世界の中では、現状では米国だけであり、米中との間の綱渡り外交で行くことを金正恩は決断したのでしょう。これからあらわになる米中冷戦体制の現実を目にして、金正恩はトランプに対中包囲網で協力をすることを約束したのです。金正恩は現在は冷戦においては、中国の勝ち目は全くないとみているのでしょう。


今回の米朝会談は、中国の一人勝ちと言う人もいますが、実際はそうではなく北朝鮮が米国に寝返ったと見れば、そうではないということが理解できます。韓国は韓国で米国から中国に寝返ったとも言えるような状況であり、実際に米国よりも中国の言いなりになっている部分があります。というより、どっちつかずで、米国からも中国からも信頼されていません。

このような状況から、トランプ大統領は、北朝鮮が対中包囲網に加入ることを引き換えに、日本からのカネを出させることを約束したのでしょう。無論、カネを出させる条件としては、核の完全放棄、拉致問題の完全解決を外せないことをしっかり伝えたのでしょう。

さらに南北統一についても言及する人もいますが、北朝鮮の核とミサイル廃棄と南北統一は別問題です。米国としては、本土に届き中東に渡る可能性がある核とミサイルは許せないわけです。日中を含めた、周辺諸国も北朝鮮の難民を望んでいません。

金正恩は、国の枠組みは変えたくはありません。金体制維持に最も邪魔なものは自由や人権です。南北統一で人の往来が始まれば政権が脅かされることになります。当面は、南北統一はないでしょう。平昌五輪で、北が南北統一を演出したのは単なる猿芝居に過ぎません。

そうなると、朝鮮半島は米国の駒となった北朝鮮と、中国の駒か米国の駒か良くわからない韓国が対峙するという奇妙な状況ができあがるわけです。北朝鮮が日本や韓国から資金援助を受けるということになれば、この奇妙な状態がしばらく続くことになるのでしょう。

日本が北に対して援助をするということになれば、韓国での失敗を反省して、援助にもさまざまな条件をつけるべきです。拉致問題の解決は絶対条件です。さらには、人権擁護に関しても、ある程度の基準を満たすようにさせるべきです。それと、いきなり巨大な額を一度に援助とするというのではなく、様子をみながら少しずつ援助し、約束を守らないなら、中止するというような方式をとるべきです。

それと、韓国に対しては、援助にしても何にしても、目の前に北という協力なライバル現れて、慰安婦問題などでグズグズすれば、すべて北にかっさらわれてしまうという脅威を与えるべきです。

また、北に援助をしてもなかなか約束など破らないなどのことがあれば、すぐに援助を打ち切り、韓国への援助を厚くするなどのことをすべきです。

両方を拮抗させ、日本の国益にとって最も良くなるように、バランスをとって援助をしていくべきです。ただし、あまり長い間朝鮮半島にはかかわらないようすべきです。そもそも、ここしばらくは朝鮮半島には上で述べたような奇妙な状態が続くでしょうが、このような状態がいつまでも続くと考えるべきではありません。

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