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2018年6月19日火曜日

安倍首相&トランプ氏の“罠”にはまった正恩氏 トランプ氏「拉致解決拒否なら経済発展はない」―【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!


安倍首相

米朝首脳会談を受け、日本政府は「拉致問題」解決のための日朝首脳会談の実現に向けて動き出している。これに対し、北朝鮮の国営ラジオ「平壌放送」は「(拉致問題は)すでに解決された」「(日本は)稚拙かつ愚か」との論評を流すなど、いつもの揺さぶりをかけてきた。ただ、水面下では、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮の関係者が、安倍晋三政権への接触を図ってきているという。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情報に迫った。  

 「私は北朝鮮にダマされない」「(米朝首脳会談で、ドナルド・トランプ大統領が、正恩氏に拉致問題を提起した)次は私の番だ」「日本が北朝鮮と直接(日朝首脳会談で)向き合い、拉致問題を解決していく」

 安倍晋三首相は14日、首相官邸で、拉致被害者家族に、断固たる決意をこう表明した。

 さらに、安倍首相は16日、読売テレビ系「ウェークアップ!ぷらす」に生出演し、「(拉致問題は)すべての拉致被害者を日本に帰国させたとき、初めて解決する」「拉致問題が解決しなければ、経済支援は行わない」「正恩氏が、大きな決断をすることが求められる」と断言した。

 いまが拉致被害者全員奪還の最大のチャンスだ。

 驚かないでいただきたい。米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている。

 旧知の米情報当局関係者は「すべては、安倍首相とトランプ氏が綿密に仕組んだ罠(わな)だ。正恩氏は完全にはまった。逃げられない」といい、続けた。

 「米朝首脳会談の席上、トランプ氏は『戦争か、非核化か』と決断を迫り、『完全非核化すれば、北朝鮮に素晴らしい経済発展がある』とバラ色のビデオを見せた。正恩氏は大喜びだった。そのうえで『完全非核化後、経済制裁は解く。だが、米国は1セントもカネは出さない。中国や韓国もほぼ同じだ。頼れるのは日本だけだ。拉致問題を解決すれば安倍首相は応じる。解決拒否なら経済発展はない。いま決めろ!』とやった。正恩氏は震えながら『(安倍首相と)会いたい』といった」

 米朝首脳会談後の夜、トランプ氏は安倍首相に次のように電話している。

 「今後は非核化と同時に、拉致問題を交渉して進めていかなければならない。シンゾー、ビッグ・プレーヤーとして関わってほしい」「100%、シンゾーを信頼している」

 トランプ氏の勝利宣言ではないか!

 現時点で、官邸が検討している日朝首脳会談の候補は以下の3つだ。

 (1)8月中に、安倍首相が電撃訪朝し、平壌(ピョンヤン)で開催する。

 (2)9月11~13日に、ロシア極東ウラジオストクで国際会議「東方経済フォーラム」が開かれる。ウラジーミル・プーチン大統領が、正恩氏を招待し、フォーラムの合間に安倍首相と会談する。

 (3)9月中~下旬、米ニューヨークでの国連総会に合わせて設定する。

 衝撃情報がある。水面下で、北朝鮮はとんでもない行動に出ている。以下、日米情報当局から入手したものだ。

 「米朝首脳会談から帰国後、正恩氏は幹部らに『日朝首脳会談の早期実現』を命令した。幹部らは『このままでは、正恩氏と北朝鮮のメンツが立たない』と頭を抱え、日本国内の北朝鮮協力者に『正恩氏礼賛、安倍潰しの世論工作をやれ!』と秘密指令を出した」

 「首相官邸や自民党の周辺に、北朝鮮関係者とされる人々が秘密接触している。彼らは『(拉致被害者を帰したら)安倍首相は本当に北朝鮮を支援するのか。信用していいのか』『拉致被害者を帰して、日本で激しい北朝鮮バッシングが起きたら、抑えられるのか』と泣きついている」

 日本はこのチャンスを絶対に逃してはならない。何度でもいう。拉致被害者全員の帰国は日本人全員の悲願だ。日本の主権がかかっている。

 だが、問題は左派野党の方々だ。

 政府・与党が「国会会期の1カ月延長」を申し入れたら、断固拒否したのだ。

 はぁ? 能天気もいい加減にしろ! 現状が分かっているのか。ゴールデンウイーク前後には職場放棄の「18連休」で、国民からは「税金ドロボウ!」と批判された。反省すらない。あきれてものが言えない。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】北を屈服させつつある日米の次のターゲットは中国(゚д゚)!

この記事の冒頭の記事で、"米朝首脳会談(12日)以降、「北朝鮮の完全非核化」を含め、北朝鮮が生きるか死ぬかのカギは、日本が握っている"というのは間違いないでしょう。

これは、トランプ大統領が意図的にそのように仕向けたのだと思います。何しろ、米国は北朝鮮に長年にわたって騙され続けてきたという経緯があります。

その米国がまた北朝鮮に援助などの面で直接関われば、また同じことを繰り返す可能性が大きいです。だからこそ、トランプ大統領は援助の部分は安倍総理に任せたのでしょう。

実際安倍総理なら、かなり前から北朝鮮と交渉してきたという経緯があります。北朝鮮との交渉ということでは、各国首脳の中では最も経験のあるうちの一人であることは間違いありません。

長年北と交渉をしてきた経験のある安倍総理

まさに、日本が北への支援にあたるということになれば、拉致問題の解決に関して北に譲ることはないでしょうし、拉致問題は、核の完全放棄に対する正確なリトマス試験紙なる可能性が高いです。

拉致問題を積極的に解決しようとしない北が、核の完全放棄だけを積極的にするなどということは考えにくいです。

このブログでは、米朝首脳会談後すみやかに、中朝首脳会談が開催されるか否かが、リスマス試験紙になるのではないかという見方をしていましたが、それよりも、拉致問題のほうがより正確なものになることでしょう。

実際、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が19日、空路で北京に到着し、2日間にわたる訪中日程を開始しています。中国の習近平国家主席は金氏の滞在中、3月と5月に続き3度目となる首脳会談を実施。朝鮮半島の非核化や平和体制構築を巡る米朝間での協議本格化を見据え、中国の立場を伝え、積極的に関与する姿勢を強調する構えのようです。

6月12日の米朝首脳会談で北朝鮮は完全な非核化を約束しました。ただ米側は対北朝鮮制裁解除は完全非核化実現後になるとの立場で、非核化の行動ごとに北朝鮮が見返りを得る「段階的措置」を求める北朝鮮側の主張とは隔たりがあります。

この隔たりを埋めなおかつ、拉致問題を解決しなければ、日本は北朝鮮を支援することはありません。というより、日本の国民感情を考慮すればそのようなことはできないでしょう。



日本だけが、拉致問題を北朝鮮に迫っても、日本は北朝鮮に憲法の制約上軍事オプションを用いることは難しいので、たとえ援助をするという約束をしても、北が拉致問題解決に応じることはなかなかないと考えられますが、同時に米国の強大な軍事力を背景にすれば、話は違ってきます。

拉致問題を解決しなければ、日米による制裁はさらに強化され、それても北が応じなければ、次の段階では、機雷封鎖や一部爆撃をして、北朝鮮を完璧に孤立させることもできます。最後の段階では米国が軍事オプションを用いることになります。その時は、金正恩がこの世から姿を消すことになります。

これだと、北朝鮮は結局日本の経済支援を受け入れざるをない状況になります。

現在、トランプ政権は中国と貿易戦争を行っています。これに関しても、米国だけではなく、日本も絡めばかなりのことができるはずです。

いずれにせよ、トランプ大統領としては日米の協力のもとに北を早い段階で屈服させ、中国に対してさらに激しい締め付けを行い、いずれ屈服させたいと考えていることでしょう。


トランプ大統領は15日に、中国からの輸入品500億ドル相当への25%の追加関税措置を発表したばかりで、その際、中国が報復措置を講じた場合は追加関税を課すと述べていた。中国は直ちに報復措置を発表しました。

トランプ米大統領は18日、中国が発表済みの報復措置を実施すれば、同国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)相当に追加関税を適用すると警告した。中国側は直ちに対抗する姿勢を打ち出し、このまま行けば米中貿易摩擦の一段の激化は必至の様相です。

この貿易戦争、以前もこのブログでも掲載したように、中国には全く勝ち目がありません。この貿易戦争、いずれかの段階化で日米が協力して、中国に対する制裁という形にもっていけば、中国はかなり窮することでしょう。

中国も、北朝鮮も、まともに先進国などと貿易をしたいのなら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化することを迫られることになります。

しかし、これを実行するとすれば、両国とも現体制は崩壊するしかなくなります。

その日が来るのは案外近いかもしれません。

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2018年5月25日金曜日

【米朝会談中止】北、中国傾斜加速か 正恩氏、目算外れ窮地―【私の論評】正恩はオバマが大統領だった頃とは全く状況が違うということを見抜けなかった(゚д゚)!

【米朝会談中止】北、中国傾斜加速か 正恩氏、目算外れ窮地

金正恩

   米朝首脳会談に向け、「いかなる核実験も必要がなくなった。核実験場も使命を終えた」との宣言を実行するかのように北東部、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長。爆破直後のトランプ米大統領の反応はまさかの首脳会談の中止通告だった。自らが描いた行程表通りに事を進めていた金正恩氏だが、目算は完全に外れた。

 金正恩氏は1月の「新年の辞」で対米非難の一方、韓国に「緊張緩和のためのわが方の誠意ある努力に応えていくべきだ」と主張。以降、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮の期待に応じ続け、南北首脳会談を行い、「歴史的」な初の米朝首脳会談を控える段階にあった。

 今回の核実験場爆破を北朝鮮は、外国メディアに現地取材させ「核実験中止の透明性の確保」(4月20日の党中央委員会総会での政策決定)を誇示した。米朝首脳会談に向け非核化の意思を行動で示すことで、北朝鮮が米国に対し「一方的な廃棄要求には応じない」と相応の措置を求めてくるのは必至とみられていた。

 現に実験場廃棄の表明段階から、ロシアが米国と韓国に「適切に呼応する措置を取るべきだ」(露外務省の声明)と呼びかけるなどの“後押し”が金正恩氏を勇気づけた可能性もある。だが、トランプ政権の米国は、はるかにその上を行った。トランプ氏以下、米政府高官はこれまで「北朝鮮には二度とだまされない」と繰り返していた。

 北朝鮮は2008年にも海外メディアを前に寧辺(ニョンビョン)の核関連施設を爆破したが、その後も核実験を継続。最終的に金正恩氏が昨年11月末に宣言した「国家核戦力完成」に至った。

 今回爆破した実験場も「過去の実験で崩壊状態にあり、価値がない」(南成旭(ナム・ソンウク)高麗大教授)との見方が多い。6回の核実験を行った用済みで不要な核実験場を廃棄しただけの可能性もある。核開発中止の保証はなく、北朝鮮は核を廃棄せず保有している。

 「朝鮮半島非核化のためにわが国が主導的に講じている極めて有意義かつ重大な措置」と強調し核実験場爆破を見せた北朝鮮。金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官の16日の談話に続き、24日にも崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官の談話で、米朝首脳会談の再考を警告した。

崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官

 譲歩の姿勢を見せる一方、要求が受け入れられないと交渉決裂を繰り返してきた北朝鮮。その裏切りの前例から疑念を捨てていない米国を、北朝鮮は甘く見ていた。金正恩氏にとって、米国の即座の反応は予想外だったに違いない。

 追い込まれた金正恩氏としては、3月以降、2度訪問し関係改善に努めている中国から手を差し伸べてもらうしかない。選択肢は限られ、北朝鮮が中国への傾斜を強めるのは必至とみられる。

 今年、平昌五輪を機に韓国に接近し、南北首脳会談で笑顔を振りまいた金正恩氏だったが、局面は一気に変わり、窮地に追い込まれた。同時に北朝鮮をめぐる“つかの間の春”は暗転し、朝鮮半島情勢は混迷と緊張が再現しそうな状況となった。

【私の論評】正恩はオバマが大統領だった頃とは全く状況が違うということを見抜けなかった(゚д゚)!

今回の米国の反応は、予想どおりのものでした。これについては、以前何度か掲載してきした。一番新しいのは以下のものです。
米韓首脳会談、文氏「仲介」は完全失敗 トランプ氏は中朝会談に「失望」怒り押し殺し…米朝会談中止も―【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!
文大統領(左)と会談したトランプ大統領(右)。金正恩氏の勝手にはさせない

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみ掲載させていただきます。
いずれにせよ、金正恩が過去1年間で恐喝、融和、手のひら返しのような様々な策を弄しているうちに、米軍は目的、目標、期間、規模、効果の観点からありとあらゆる方式で北朝鮮を攻撃する方法をシミレーションならびに演習を通じて実行できる体制を整えているのは間違いないです。軍はすぐにでも行動に移せる状態になっていることでしょう。
現在の米軍の北朝鮮対応力は1年前から比較すれば、格段に向上しています。昨年は、北朝鮮の海域に空母打撃群を3つも派遣しながら、結局攻撃しなかったのは、準備が整っていなかったからです。

そもそも、政治や安全保障に経験がないトランプ氏が大統領になったばかりでしたし、米軍のほうは、オバマ政権による軍事予算の削減で、かなり弱体化していました。さらに、オバマ前大統領のいわゆる「戦略的忍耐」が追い打ちをかけ、米軍が北朝鮮を攻撃することを思いとどまらせました。

「忍耐」と言えば、その背後に高尚な戦略、ないしは哲学が控えていると受け取る楽天主義者がいるかもしれませんが、オバマ氏の「忍耐」の場合、どうやらその文字のごとく、もっぱら黙ってきただけです。もしオバマ氏が戦略的「忍耐」ではなく、関与政策を実施していたならば、金正恩ものんびりと核開発に専心できなかったでしょう。
オバマ前大大統領

北は2006年に最初の核実験に成功しました。それから着実に核の小型化、核弾頭搭載可能の弾頭ミサイルの開発、プルトニウム爆弾だけではなくウラン原爆にも手を広げ、水爆実験も実施しました。

これらのことが全て事実とすれば、北は11年余りで、核計画を急速に進展させたことになります。その11年間のうち8年間はそっくりオバマ前政権下でした。北の核開発問題ではオバマ政権の責任が問われる理由はまさにここにあるわけです。

もちろん、オバマ大統領は国連安全保障理事会を通じて北に制裁を課してきましたが、その政策は終始中途半端でした。オバマ政権は北が核開発を急速に進めている中、米独自の軍事的圧力の行使は控えていました。

金正恩氏は父親から“金王朝”を継承した後、計4回の核実験を実施しました。そして北の過去6回の核実験のうち、4回はオバマ政権下でした。北側からオバマ政権は軽く見られていたことが推測できます。「オバマなら口で批判するが、何もしない。軍事制裁など全く視野にないだろう」と受け取られてきたわけです。

オバマ政権の8年間は北がその核開発を急速に進歩させた期間と重なります。
2006年10月 9日 1回目の核実験。プルトニウム型
09年 5月24日 2回目。プルトニウム型 (同年オバマ政権誕生)
13年 2月12日 3回目。小型化成功と主張  (同年オバマ政権二期目に入る)
16年 1月 6日 4回目。水爆成功と主張
9月 9日 5回目。核弾頭爆発実験成功と主張
17年 9月 3日 6回目。大陸間弾道ミサイル(ICBM)弾頭部に装着する水爆実験成功と発表。
18年 1月 トランプ政権誕生
(出所・時事通信)
繰返しますが、「核の小型化」、「核弾頭爆発実験」、「水爆実験」、「ICBM用の水爆実験」といった核開発計画の重要ステップはオバマ氏が忍耐している最中、北側が着実に達成していった技術的成果です。

クリントン米政権時代の国防長官を務めたウィリアム・J・ペリー氏は昨年初め、オバマ政権の対北政策「戦略的忍耐」について、「核・ミサイル開発はむしろ進み、状況は悪化した」と指摘している一人です。

いかなる軍事活動にもそれを指示した指導者の責任が問われる。北朝鮮の核問題では、オバマ氏は「忍耐」という名でその責任を回避してきた大統領だったといえます。

オバマ政権ではない政権が米国に誕生したという事実が、米国の対北朝鮮政策を根本的に変えたてのです。ただし、過去の1年間は、先に述べたように、政治や安全保障に経験がないトランプ氏が大統領になったばかりであったこと、軍事予算の削減で米軍がかなり弱体化していたこと、オバマ前大統領の「戦略的忍耐」による負の遺産により米軍が北朝鮮を攻撃することを思いとどまらせただけだったのです。

もしオバマ大統領が「戦略的忍耐」で責任を回避せず、本格的な制裁や、軍事制裁を検討していたとしたら、金正恩は今そこにある危機に対応するため、核兵器開発など後回しにし、通常兵力を強化していたに違いありません。

ところが、オバマの「忍耐」を良いことに、金正恩は通常兵器の強化は後回しにして、核兵器の開発に多くの資源を割当あてました。

そのため、現状の北朝鮮軍の通常兵器はかなり遅れています。まずは、防空体制ゼロといっても良いような状況になっています。北朝鮮のレーダーは40年前のもので、これでは現在のステルス機に対しては全くの無防備です。

戦闘機も、40年前からほとんど新しいものは導入されておらず、かつて中東上空や、ベトナム上空で米軍など先進国の空軍ととわたりあったこともある北の面影は今は全くありません。


たとえば、上は北朝鮮空軍の防空訓練の様子を撮影したとされる写真です。撮影日時、場所は不明です。写っている軍用機は、旧ソ連製のMIG21戦闘機とみられます。MIG21は1956年に初飛行し、東西冷戦時代には東側の主力戦闘機となった代物です。北朝鮮空軍ではこの古い機体が今でも使われています。

陸軍も、装備は貧弱で50~60年代のものが主力となっており、なかには第二次世界大戦で運用された兵器もあります。

個人装備もベトナム戦争で南ベトナム解放戦線(ベトコン)がアメリカ軍を相手に使ったAK-47が主力のようです。

ただし、数は多く、旧式といえども戦車だけでも3000両以上を保有しており、数だけならば自衛隊の定数300両を大幅に超えます。しかし、数が多くても、米韓軍の敵ではありません。

なぜこのようなことになったかといえば、核兵器の開発に力を奪われ、通常兵力の整備がおろそかになったからです。

実際に、通常兵力同士の戦いになったとしたら、北朝鮮には全く勝ち目はありません。頼みの綱の核兵器は、実際に使えば、米国に北核攻撃の格好の口実を与えることになり、おいそれと使えるものではありません。

それでも、国家破綻の淵に追い込まれれば、使う可能性もありますが、その兆候がみられれば、今や北朝鮮の情報に隅々まで精通した米軍により発射の前に叩かれてしまうことでしょう。叩きもらしも若干でるかもしれませんが、発射された核ミサイルも撃ち落とされる可能性は高いです。

金正恩は戦略を誤りました、昨年米軍が北を攻撃しなかったため、事態を軽くみてオバマが大統領だった1年前とは全く状況が違うということを見抜けませんでした。

一方米朝首脳会談が中止されたことで、アメリカは中国への圧力をさらに強めることになるでしょう。すでに貿易摩擦に発展している中興通訊(ZTE)への制裁に関しても、トランプ大統領は最大13億ドルの罰金を科すとともに経営陣の刷新を求める案を明らかにしています。

ウィルバー・ロス商務長官はアメリカ側が選んだ人物をZTEに送り込み、同社に法令順守部門を設置させる可能性も示唆しています。中国としては、アメリカによる査察体制の受け入れを許せば他業種にも波及する恐れがあるため、この条件はのみたくてものめないでしょう。

それに先立って行われた米中通商協議では、中国がアメリカの製品やサービスの輸入を大幅に増やすことで合意しましたが、アメリカが求めていた対米貿易黒字の2000億ドル削減については具体策な言及がなく、成果は乏しいものでした。

中国としてはZTEの制裁を緩和してもらいたいのはやまやまでしょうが、米議会が強硬に反対している以上は望み薄です。そこで、輸入拡大でお茶を濁しているという苦しい事情が見て取れます。

アメリカの国防権限法案には先端技術を保有する企業同士の買収を禁じる項目なども入っており、このままいけば、かつての対共産圏輸出統制委員会(ココム)のような仕組みがつくられる可能性もあるでしょう。

冷戦期に自由主義陣営を中心に構成されたココムは、共産圏諸国への軍事技術や戦略物資の輸出規制を目的とした組織です。すでにアメリカは知的財産権の侵害を理由に中国製品に対する制裁を進めていることからも、今後は中国を狙い撃ちにするかたちの21世紀版ココムがつくられたとしてもおかしくないです。

ココムというと、日本では東芝機械ココム違反事件が有名です。これは、1987年に日本で発生した外国為替及び外国貿易法違反事件です。共産圏へ輸出された工作機械によりソビエト連邦の潜水艦技術が進歩しアメリカ軍に潜在的な危険を与えたとして日米間の政治問題に発展しました。

習近平(左)と金正恩(右)

このような厳しい規制がさらに強化され制裁の次元に高まれば、中国経済はガタガタになります。そうなると、中国とて北朝鮮の後見をしたとしても、自国が苦しむだけになります。北朝鮮に肩入れすることはやめることになるでしょう。

いずれにしても、米中が本格的貿易戦争ということになれば、中国には全く勝ち目はありません。であれば、中国はいずれ北を完璧に見放すことになるでしょう。そのとき北朝鮮の命運は完璧に絶たれることになるでしょう。

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2018年4月3日火曜日

トランプ氏、5月に正恩氏「死刑宣告」 北の魂胆見抜き「戦争内閣」構築 ―【私の論評】北朝鮮問題は、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれない(゚д゚)!

トランプ氏、5月に正恩氏「死刑宣告」 北の魂胆見抜き「戦争内閣」構築 

IOCのバッハ会長に笑顔をみせる金正恩氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、狡猾な「延命工作」を続けている。電撃訪中に続き、先月30日には、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長と、平壌(ピョンヤン)で会談したのだ。平和友好ムードを演出しているが、北朝鮮は「核・ミサイル開発」放棄を一切進めておらず、国際社会をダマしている。ドナルド・トランプ米大統領は魂胆を見抜き、「戦争内閣」を立ち上げ、米韓合同軍事演習も1日始まった。米朝首脳会談(5月予定)の開催場所と、正恩氏の「亡命準備」情報とは。ジャーナリストの加賀孝英氏が核心に迫った。

 ご承知の通り、トランプ氏は先月、レックス・ティラーソン国務長官を更迭し、後任にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名した。続いて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も解任し、後任にジョン・ボルトン元国連大使を内定した。

マイク・ポンペオ氏(左)とジョン・ボルトン氏(右)

 以下、後任2人に関する関係者情報だ。

 「ポンペオ氏は、『正恩氏排除=斬首作戦』に賛成している。CIA内に初の北朝鮮専門部隊『朝鮮ミッションセンター』をつくった。結果、正恩氏の隣に協力者を構築し、反正恩一派が結成された。朝鮮人民軍の一部は命乞いを始め、クーデターを計画し始めた。正恩氏が一番憎む男だ」

 「ボルトン氏は、対北先制攻撃を公言している。ジェームズ・マティス米国防長官は3月末、国防総省でボルトン氏を迎えた際、『あなたは“悪魔の化身”だと聞いている』といった。イラク戦争(2003年~11年)時にも、北朝鮮とイランへの攻撃を強硬に主張した。正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記は2週間も地下に隠れて震えていた。『ボルトン』という言葉は、北朝鮮では『死神』と同じだ」

 トランプ氏が、対北強硬派2人を抜擢したのには、明確な意志がある。

 旧知の米情報当局関係者は「トランプ氏は『戦争内閣』を構築した。ポンペオ、ボルトン両氏を信頼し、対北朝鮮政策の最終形を組み立てている」「米国が要求する『核・ミサイル開発』放棄は、ボルトン氏がいう『リビア方式』だ。正恩氏は『武装解除だ』と激しく拒否している」「米国の要求を飲まなければ、5月の米朝首脳会談は、正恩氏への『死刑宣告=宣戦布告の場』になる」と語った。

 リビア方式とは、「アラブの狂犬」こと、リビアの独裁者、カダフィ大佐が03年、核放棄に合意し、査察団を受け入れ、06年に国交正常化した方法だ。「北朝鮮が先にすべての核兵器と核物質などを放棄し、その後に制裁解除などの補償を行う」というもの。

 ちなみに、カダフィ氏は11年、「ジャスミン革命」で、反政府勢力に捕まり、命乞いをするも、射殺された。

カダフィ氏

 正恩氏は間違いなく、自分をカダフィ氏に重ねて震えている。この間、何があったか。以下、複数の日米情報当局関係者から入手した情報だ。

 「中朝首脳会談(3月26日)は、ボルトン氏起用に慌てた正恩氏が、習近平国家主席に泣きついた結果だ。習氏に、リビア方式を否定してもらった。さらに、『韓米の平和・安定雰囲気の醸成=米韓合同軍事演習の中止・在韓米軍撤退』などを主張した。だが、手は震え、顔は哀れなほど、強張っていた」

 当たり前だ。正恩氏は最近まで「中国は千年の敵」と公言していた。屈辱的な命乞いといえる。さらに情報は続く。

金正恩(左)と習近平(右)

 「北朝鮮は水面下で、5月の米朝首脳会談の開催場所としてフィンランドを提示している。2つ理由がある。1つは、ロシアの領空だけを飛んでいける。安心だ。もう1つは、亡命準備だ。フィンランド滞在中、万が一、北朝鮮国内でクーデターが起きたら、正恩氏はロシアに亡命するという情報がある」

 そして、結論はこうだ。

 「日米主導で進めてきた経済制裁が効いている。北朝鮮の人民と軍部は飢餓状態だ。数十万人の餓死者が出る恐れがある。正恩氏はまだ、圧力に屈して『核放棄の意思』を伝えたことを人民や軍の末端に隠している。公表すれば、人民と軍の怒りが爆発する」

 河野太郎外相は3月31日、高知市での講演で、「北朝鮮が新たな核実験に向けた用意を一生懸命やっている」と明言し、北朝鮮に核放棄の意思がないことを指摘した。北朝鮮はまた、国際社会を欺く気なのだ。

 安倍晋三首相は今月18日、トランプ氏と日米首脳会談を行う。

 米軍関係者がこういう。

 「南北首脳会談が同月27日に行われるが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は『反米・反日・従中・従北』の裏切り者だ。何を話しても関係ない。すべては5月の米朝首脳会談だ。日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをする。リビア方式の確認や、日本人拉致問題。北朝鮮の運命が決まる。全世界が注目している」

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】北朝鮮問題は、マスコミ報道等とは全く異なる形で収束するかもしれない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にあるように、日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをします。その中ではリビア方式の確認や、日本人拉致問題も話し合われるでしょう。北朝鮮の運命がこの会議で決まることになります。

マスコミなどは、北朝鮮問題に関しては日本は蚊帳の外におかれているということを報道したりしていますが、日米首脳2人だけが、米朝首脳会談の打ち合わせをするということから考えてみても、そんなことはあり得ないです。

日本蚊帳の外論に関しては、北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、米政府関係者と北朝鮮当局者が昨年12月上旬に北京で極秘協議を行っていたことや、同じ時期にカナダ政府が日本政府に「対北圧力」方針の見直しを迫っていたことなどを根拠にしていたようです。

さらに、一連の動きの直後、ティラーソン米国務長官(当時)は北朝鮮との無条件対話に応じる考えを表明したため、トランプ政権内で対北融和派が巻き返しを図っているとみられたことも、その根拠のようです。

北朝鮮との極秘協議を主導したのは米国務省情報調査局のジョン・メリル=元北東アジア室長です。「トラック1.5」と呼ばれる官民合同の意見交換会の形をとったとされています。北朝鮮側の出席者ははっきりしませんが、対話の再開条件や枠組みなどについても協議したとみられます。

直後の12月12日にティラーソン氏は講演で「前提条件なしで北朝鮮との最初の会議を開く用意がある」と発言しました。メリルらの報告を踏まえ、対話再開に向けたシグナルを北朝鮮側に送った可能性もあります。

米朝間では、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表と北朝鮮外務省の崔善姫米州局長も度々接触しているとされています。

以上のことをもって、マスコミや一部の識者は、日本は蚊帳の外におかれているとしたのですが、その後ティラーソン国務長官を更迭し、後任にマイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官を指名し、続いて、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も解任し、後任にジョン・ボルトン元国連大使を内定し、さらに米朝会談の前には、日米首脳会談が行われることから、日本は蚊帳の外に置かれているどころか、当事者である米国に最も近い、あるいは当事者そのものといって良いです。

ブログ冒頭の記事では、以下のような下りがあります。
北朝鮮は水面下で、5月の米朝首脳会談の開催場所としてフィンランドを提示している。2つ理由がある。1つは、ロシアの領空だけを飛んでいける。安心だ。もう1つは、亡命準備だ。フィンランド滞在中、万が一、北朝鮮国内でクーデターが起きたら、正恩氏はロシアに亡命するという情報がある。
これも、注目に値する情報です。金ファミリーは、ロシアに亡命するかもしれないということが以前から言われていて、ロシア亡命受け入れ先と考えられていたのが、フインランドに近い、 スヴァールバル諸島なのです。

これについては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下にに掲載します。
トランプ氏、正恩氏に亡命促す? 異例ツイートで“真意”注目、識者「行き着く先はロシアのプーチン大統領」―【私の論評】金ファミリーの亡命も選択肢の一つ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を以下に引用します。
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スヴァールバル諸島とは、北極海に浮かぶ群島です。第一次世界大戦の頃、ロシア、ノルウェーなど、多くの国が領有権を争ったため、大戦終結後のパリ講和会議で、スヴァールバル諸島を、永久非武装地帯としました。以下にその位置を地図で示します。


このスヴァールバル条約には、ロシアやアメリカなど40ヵ国以上が加盟していますが、島内にはロシア人居住地区があり、ロシアの法律が適用されています。ここには、世界でもっとも北端に位置するレーニン像があります。

スヴァールバル諸島の面積は、ちょうど九州と四国を足し上げたくらいの大きさです。夏は4〜6度くらいまで気温が上がりますが、冬は-12〜-16度にもなる極寒の島です。

大部分の島が永久凍土に閉ざされ、人が住める島は1つのみ。植物はほとんど生えていません。

「スヴァールバル条約」を批准している国の国民であれば、スヴァールバル諸島に「ビザなし」で住め、しかも「外国人の戸籍のまま商売」ができます。ちなみに、日本もこの条約を批准しています。

2012年時点で、2642人が島で暮らしています。大部分がノルウェー人ですが外国人も暮らしていて、439人のロシア人、10人のポーランド人、その他タイ、デンマーク、スウェーデンの人が暮らしています。

この条約は、今から100年近く前の条約ですが、1920年代から'30年代にかけて各国が加盟しました。ところが昨年になって突然、このスヴァールバル条約に、ロシアの後押しを受けて、北極海になど、何の縁もない北朝鮮が加盟したのです。これは朝鮮人労働者の受け入れの他は、金ファミリーの亡命目的以外には考えにくいです。

しかも現在、島内のロシア人居住地区で、大邸宅の建設が始まっていることまで分かっています。

スヴァールバルはスピッツベルゲン島という名前でも知られている。
今でもロシア人が生活している唯一のバレンツブルクという集落
これを知れば、なぜ金正恩委員長があそこまで強気でいられるのか、その理由が理解できます。いざとなればロシアが逃がしてくれるという「保険」があるのです。

プーチン政権は、核の技術もミサイルの技術も提供したあげく、亡命先まで用意したのです。金正恩にとってこれほど頼もしい庇護者はいません。

しかもプーチン政権には、シリアがあれほど激烈な内戦のさなかにあっても、6年半にわたってアサド政権を守り続けてきたという実績があります。

プーチン政権がそこまで金正恩政権に肩入れする理由としては、やはり極東におけるアメリカと中国という両大国への剥き出しの牽制だと考えられます。

米中露「3大国」とは言うものの、ロシアの経済力は米中に較べて圧倒的に脆弱です。ロシアの現在のGDPは日本の1/5程度であり現在の韓国と同水準です。ロシアの人口は日本よりわずかに多い、1億4千万人、そうして極東には600万人くらいしかロシア人が住んでおらず、強い危機意識を抱いています。だから「東アジアのシリア」を作りたいのです。

もう一つは、天然ガスのパイプラインを、韓国まで引きたいという野望があります。9月6日、7日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムに、プーチン大統領と韓国の文在寅大統領が揃って参加し、この話を詰めています。気をよくした文在寅大統領は、北朝鮮に800万ドルの人道支援を表明しました。

これも、人道支援を大義名分にしてシリアを支配したプーチン大統領の入れ知恵でしょう。

プーチンロシア大統領
ロシアから韓国に天然ガスのパイプラインを引く計画は、'08年に李明博大統領がロシアを訪問した際に盛り上がった話です。ロシアのハバロフスク、ハサンから北朝鮮の元山を経て、韓国の仁川まで約2000kmを結ぶ壮大な計画です。

北朝鮮にはパイプラインの通行料として年間1億ドルを支払う予定でしたが、韓国の命脈を北朝鮮に握られるという懸念からご破算になりました。


2011年10月3日のボイスオブロシアによれば、ロシアのウラジーミル・プーチン首相は、ロシアの半国営の天然ガス:PNG独占企業であるガスプロム Gazpromに対して、日本、韓国と中国などとの協力発展についての拡大的な提案を準備するよう指示したとあります。

つまり、プーチンの頭の中には、日本、韓国、中国を巻き込んだ「国家成長プログラム」が出来上がったと言う事でした。

東北の大震災直後、当時民主党政権だった、日本政府は将来のエネルギー不足を見越してロシアの天然ガス取得に対して積極策に出ることをロシアに伝え、ロシアはこれを受け、一連の開発を前倒しにし、同時に韓国、中国への供給も早める対応を取りました。

これには、当時次期大統領を着々と狙う、プーチン首相の思惑が働いたとみるべきでしょう。恐らく彼は、日本の大震災を好機と取ったはずです。

すでに、サハリン州の天然ガス田から日本海側の港湾都市ウラジオストクを結ぶ全長約1820キロのパイプラインの完成式典が2011年9月8日ウラジオストクVladivostokで行われ、プーチン氏も参加しました。

次はこれを北朝鮮経由で韓国に送り込む事(2017年稼動予定で、その際には経由する北朝鮮内700kmに1億ドルの収入が見込まれる)の実現で、2011年8月、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が9年ぶりに訪露し、協議の場でロシアは、北朝鮮の協力に対し食糧援助を約束し、これをロシアは2011年9月末に完了しました。

全ては着々と進行し、全てが完成したときに、ロシアは日中韓の経済を握るとの目論見だったのでしょう。しかし、この計画は日本では、民主党政権の崩壊とともに潰え、韓国でも、命脈を北朝鮮に握られるという懸念からご破算となりました。

その計画を、9年ぶりにロシアと韓国、北朝鮮で復活させようというわけです。そんな「密談」が進んでいるところに、安倍首相が出かけて行って、プーチン大統領に「北朝鮮への圧力」を説いたのです。

これを考えると、文在寅の最近の不可解な動きも理解できます。米国は朝鮮半島周辺海域に、原子力空母3隻を集め、11~14日(ブログ管理人注:昨年11月)に米日韓3カ国の合同軍事演習を行い、北朝鮮に圧力をかける予定でした。ところが、韓国が突然『日本とやるのは嫌だ』と言い出し、米日、米韓とバラバラになったのです。北朝鮮やロシアは大喜びでしょう。

文在寅は、中国に踊らされただけではなく、裏ではロシアにも踊らされたというわけです。最近、米国のWSJ紙が韓国に対して痛烈な批判を行いましたが、背景にはこのようなこともあったのです。

文在寅とプーチン
さて、いざとなれば、ロシアが金ファミリーを亡命させるという選択肢があるということは、我々も認識しておくべきです。

これに関しては、当然のことながら、トランプ大統領、安倍総理、習近平も知っていることでしょう。その上で、ポスト北朝鮮危機後の世界をなるべく自分たちに有利になるように立ち回っているというのが、実体でしょう。
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金正恩は、リビア方式での核廃棄を米国に確約しなければなりません。しかし、そうなると、後にカダフィーのような運命をたどることになるかもしれない恐怖に苛まされているに違いありません。

であれば、米朝首脳会談では、トランプ大統領にリビア方式での核廃棄を確約するとともに、その直後に家族もろともにロシアに亡命し、そのままスヴァールバル諸島に行くというシナリオも十分に考えられます。

それに向けての準備のため、金正恩は習近平に会ったのかもしれません。自分が亡命した後は、中国に近い人間を指導者とした新たな指導者をたてることなどを相談にいき、自らの亡命に賛同してもらったかもしれません。

それがその通りになるかどうかは別にして、金正恩とその家族はそれで延命をはかることはできるかもしれません。

そうして、その後の北朝鮮の運命に関しては、すでに日米中露の間で一定のコンセンサスに達している可能性があります。これについては、従来の日米中露の首脳会談等で話し合われ(この話あいを私はこのブログでは北朝鮮版ヤルタ会談と呼んでいます)、おそらく日米中露にとって譲れる範囲内のコンセンサスとなっていることでしょう。八方美人的で経済的にも軍事的にも重要ではない韓国は蚊帳の外でしょう。

日米首脳会談を直前に行うのは、このコンセンサスに向けての韓国抜きの同盟国としての最終的な準備に入ることと、拉致被害者問題の対処についての話し合いを行うためでしょう。

北朝鮮問題の解決は、マスコミ報道などとは全く異なったものになるかもしれません。

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2018年3月16日金曜日

【日本の選択】正恩氏が狙う「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」 南北、米朝首脳会談は目的のための手段でしかない―【私の論評】最終的には北を複数の国々で50年以上統治して中立的かつ民主的な新体制を築くしかない(゚д゚)!

【日本の選択】正恩氏が狙う「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」 南北、米朝首脳会談は目的のための手段でしかない

金正恩 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が南北首脳会談、米朝首脳会談を行う希望を表明した。歓迎する向きもあるようだが、「これで北朝鮮問題が解決した」とするのは全くの間違いだ。今ほど冷静な判断が求められている瞬間はないだろう。

 憂慮すべきは、「親北左派」で知られる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の今後の行動だ。文氏は、今回の首脳会談に前のめりになり、「不都合な真実」から目を背け、実体のない「友好」という観念に耽溺(たんでき=不健全な遊びにおぼれること)するであろうことは、火を見るより明らかだ。

文在寅

 北朝鮮が、韓国、そして、米国をも欺き、「核・ミサイル開発」の時間を稼ごうとしているという可能性を直視することが重要なのだが、文氏にそれを期待することはできない。

 今回の北朝鮮から韓国特使団に向けられたメッセージの中で重要なのは、次の箇所だ。

 「北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消されて、北朝鮮の体制の安全が保障されるならば、核を保有する理由はない」

 このメッセージの後半部分の「北朝鮮の体制の安全が保障されるならば」という部分に注目し、金一族による独裁体制が保障されれば、北朝鮮が核兵器を放棄するとみなすのは間違いだ。

 重要なのは、前半の「北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消されて」の部分だ。ここでの「軍事的な脅威」とは、具体的には在韓米軍の存在を意味している。すなわち、この個所は「在韓米軍が撤退すれば」と読み替えて解釈すべきなのだ。従って、在韓米軍を撤退せよとの要求が通らなければ、北朝鮮には核の保有が必要であると宣言していることになる。

 正恩氏の望みが「在韓米軍の撤退」であることは、亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の米国下院における証言からも明らかだ。

太永浩(テ・ヨンホ)氏

 太氏は証言で、核開発を完了させた後、米国と交渉することで在韓米軍を撤退させようとする、正恩氏の戦略を明らかにしている。正恩氏はベトナム戦争を参考にし、韓国を(消滅した)南ベトナムに見立て、在韓米軍を撤退させ、韓国の体制崩壊を狙っているというのだ。

 南北首脳会談、米朝首脳会談も、基本的には「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」が目的であり、両首脳会談自体は目的のための手段でしかないと見做すべきであろう。

 北朝鮮の口先の言葉ではなく、実際の行動に注視することが肝要である。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

岩田温氏

【私の論評】最終的には北を複数の国々で50年以上統治して中立的かつ民主的な新体制を築くしかない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で岩田氏が主張する"南北首脳会談、米朝首脳会談も、基本的には「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」が目的であり、両首脳会談自体は目的のための手段でしかない"という主張は妥当なものです。そうして、北朝鮮の最終目的は、北朝鮮主導で南北朝鮮を統一することです。最終的には、朝鮮半島全部を北が支配することです。

北の核と、南の経済力、技術力を融合して、半島に先進国並の経済力のある、軍事独裁政権を樹立することです。

このようなことは、まともな人なら、薄々気づいているのではないでしょうか。最近の情勢をみて、米国が北朝鮮を武力攻撃することなどないなどと判断するのは、全くの早計です。

ここ数カ月から、1〜2年くらいはもしかすると、ないかもしれませんが、その後北朝鮮が核を廃棄しないというなら、米国は必ず武力攻撃します。これに関しては、中国も、ロシアも反対はしません。なぜなら、彼らも朝鮮半島に核武装した経済力のある、軍事独裁政権が出来上がることを望まないからです。

そうして、日本としては、まず第一に米国が武力攻撃をした後、朝鮮半島はどうなるのか、それを想定して今から準備しておくべきです。

もし米軍の武力行使が行われ、瞬時に北朝鮮側の核ミサイル能力が完全に除去されたとして、その後の朝鮮半島はいったいどうなるでしょうか。

軍事的に大打撃を受けた北朝鮮の体制が存続しうることは考えにくいです。それでは、北の体制崩壊後、朝鮮半島は統一されるのでしょうか。それ以前に「北の脅威」がなくなったあとの在韓米軍や米韓同盟はどうなるのでしょうか。

大統領選でトランプ氏は在韓米軍の撤退に言及しましたが、仮にそれが行われたら日米同盟は根底から揺さぶられることになります。米国の一部で唱えられているような米中両国による共同分担作戦によって事が進められれば、戦後の朝鮮半島では中国の影響力が画期的に高まることは明らかです。

第二に、米朝対話などによって査察体制など細部の合意も含め「北の非核化」が進むとすれば、その後に北朝鮮の現体制は存続しうるのでしょうか。あれだけ派手に核危機を演出しておいて、揚げ句、核放棄を約束して体制が揺らがないとは考えにくいです。

さらに、北が米本土に届く核搭載の大陸間弾道ミサイル開発を放棄すれば、残りの核はいわゆる「凍結」で事態が収められるでしょうか。そうなると、日韓を含む東アジアでは北の核脅威は恒常化することから、米国の「核の傘」や対米同盟の信頼性は低下することになります。その場合も、この地域の地政学的現状は決定的に変化することになります。

要するに、どのような事態変化があったにしても、日本周辺の地域の秩序は、この数十年続いてきたものとは大きく変容したものになるということです。これだけはどう考えても避けられないです。

そしてここで大きく浮上してくるのが、「習近平の中国」です。

今回の米中首脳会談で、権力基盤を強化した習近平国家主席はトランプ大統領と朝鮮半島の将来像についてかつてなく突っ込んだ話し合いをすることになるでしょう。対北制裁の強化とともに、米中間で将来の朝鮮半島の運命が決められるかもしれません。

その一つとして、この数カ月、米マスコミが繰り返し報じている「キッシンジャー構想」があります。

それは、北の核廃棄に向けて中国のかつてない強力な取り組みを求めるために、米国が北の非核化(つまりは北の体制崩壊)の後に、在韓米軍の大半を撤退させることをあらかじめ中国に約束する、というものです。

キッシンジャー氏はトランプ大統領、とりわけイバンカ氏の夫で親中派とされるクシュナー上級顧問に対して影響力が大きく、またティラーソン国務長官にはすでにこの助言を行っていると噂されています。

キッシンジャー構想は成り立たない?

ただし、私としては、この構想は容易には成り立たないと思います。その根拠として、2つがあげられます。一つ目としては、まずはキッシンジャー氏はすでに過去の人物であり、かつてのように大きな影響力はないといことです。

二つ目には、習近平はすべてを掌握しているわけではないということです。

第1次習政権で試みた、「朝鮮半島を、南(韓国)から属国化していく戦略」も見事に失敗し、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)が配備されています。かつては「兄弟国」だった北朝鮮との関係も史上最悪で、「1000年の敵」呼ばわりされるまで悪化しました。

頼みの綱だったロシアとの関係も、中国政府が1月下旬、「(中国主導の広域経済圏構想)『一帯一路』構想に北極海航路を入れる」と発表したことで、プーチン大統領を激怒させてしまいました。

朝鮮半島情勢について、表向きは「米朝対話」を主張しながら、本音は大きく違う可能性が高い。「金王朝の崩壊」を狙っているはずの習氏が、それを察知する金王朝の核ミサイルや生物化学兵器の脅威にさらされているとすれば、トランプ政権が軍事オプションに踏み切ることを、内心で期待していてもおかしくはないです。

中国は長さ約1400キロという中朝国境に、数千人から数万人とされる人民解放軍を配備しました。ところが、いざ戦闘状態に突入すれば、朝鮮族の多い北部戦区(旧瀋陽軍区)の部隊が、どこに銃口を向けるか分からないです。習近平と、江沢民を比較すると後者のほうが、北部戦区や北朝鮮と親和的です。

そもそも、北部戦区の受け持つ地区は、旧満州(中国東北部)といわれるところに位置していて、この地はもともとは満州族のものでした。この地には数は減ったとはいえ、今でも満州族が1千万人以上も住んでいるのです。

朝鮮半島と接する中国東北部(赤とピンクの部分)

さらにこの地域は、今日急速な少子高齢化に見舞われ、人口流出が深刻化しています。経済的にもこの地域は北朝鮮という地理的な障壁があって経済が中国の他の地域から比較すると遅れていることから、不満が鬱積しています。

こうした人口の減少と高齢化は、当然のことながら中国がいま進めている養老保険(年金)の整備に大きなマイナスの効果を与えています。国家開発銀行の元副行長の劉国によれば東北部の年金の負担率(年金を支払う労働者と年金受給者の比率)は、1.55であり、これも全国平均の2.88にはるかに及んでいません。これらは「火薬庫」としての東北部の火種が将来的にもなかなか消えない可能性を示唆しています。

そうなると、米国が中途半端をして、北の核関連施設を完全破壊するのと、金王朝を潰すだけで手を引いてしまえば、北が無政府状態の混乱した状態になってしまう可能性が高いです。今の中東のように多数の勢力の衝突による不安定な地域になる可能性が高いです。

これを防ぐには米軍が少なくと50年以上の長期にわたり、この地域に軍隊を送り込み統治して、中ロ寄りでもない、日米寄りでもない、中立的な民主的な体制をつくりだすしかありません。

米国一国だけでは無理というのであれば、複数の国々で構成される国連軍を派遣して長期間統治して、北に新たな秩序を構築するしかありません。そうして、その中で韓国との関係をどうするのかも十分に考慮したうえで、新たな秩序を模索して、アジアから不安定要因を取り除くべきです。

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2017年11月15日水曜日

トランプ氏、正恩氏に亡命促す? 異例ツイートで“真意”注目、識者「行き着く先はロシアのプーチン大統領」―【私の論評】金ファミリーの亡命も選択肢の一つ(゚д゚)!

トランプ氏、正恩氏に亡命促す? 異例ツイートで“真意”注目、識者「行き着く先はロシアのプーチン大統領」

トランプ氏と正恩氏は水面下で「ディール」を続けているのか? 写真はブログ管理人挿入以下同じ
 ドナルド・トランプ米大統領の“真意”が注目されている。国際社会の警告を無視して「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に、原子力空母3隻を集結させる「最大限の圧力」をかける一方で、ツイッターに「友人になれるよう懸命に努力する」と投稿したのだ。米朝による水面下接触のサインなのか、軍事行動前に外交努力をした実績づくりなのか…。関係者の中には、正恩氏の「亡命」を推察する声もあり、具体的国名まで指摘されている。

トランプ大統領のツイート

 日米中露など18カ国が参加する東アジアサミット(EAS)を含む、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議が14日、フィリピン・マニラで開かれた。「核・ミサイル開発」で暴走する北朝鮮をめぐる情勢や、南シナ海問題への対処が主な議題となる。

 ASEAN首脳会議の議長声明案では、北朝鮮の「核・ミサイル開発」について「挑発的で脅迫的な行動」と批判。北朝鮮に一連の行動をやめるよう求め、「完全かつ検証可能で不可逆的な朝鮮半島の非核化」への支持を再確認している。

 議長声明では、北朝鮮の行動について「重大な懸念」を表明する見通し。

 軍事的圧力も強まっている。

 世界最強の米軍が誇る原子力空母3隻が11日から、日本海で合同軍事演習を実施した。トランプ氏の「北朝鮮の核・ミサイル保有は許さない」という強い決意の表れに他ならない。

 こうした朝鮮半島の緊張状態と、トランプ氏が12日に投稿したツイッターの内容は相反している。これまで正恩氏を「リトル・ロケットマン」と嘲笑し、強く非難してきたが突然、友人関係を求めたのだ。

 北朝鮮にも変化が見られる。9月15日に北海道上空を通過した弾道ミサイル発射以降、軍事的威嚇を行っていない。

 日米情報当局関係者は「北朝鮮の『核・ミサイル』実験などの中止は、正恩氏が『いま動いたら殺される』『軍事行動の大義にされる』と確信したからだろう。米国としては、北朝鮮が米本土を狙う核ミサイルを持つことは認められない。甚大な被害が出かねない第2次朝鮮戦争も、できれば避けたい」と話した。

 こうしたなか、注目されるのが、米国と中国が8月、「事実上の往復書簡」で交わしたとされる“暗黙の了解”だ。

 往復書簡とは、中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」の社説と、米紙「ウォールストリート・ジャーナル」に、レックス・ティラーソン国務長官とジェームズ・マティス国防長官の連名寄稿を指したもの。

 前出の日米情報当局関係者は「米中は『北朝鮮という国家は(緩衝地帯として)残す』『正恩氏は排除し、核・ミサイルを放棄させる』『米中戦争にはさせない』という暗黙の了解をしたと受け止められている。トランプ氏は中国訪問(8~10日)で、これを確認したのではないか」と語る。

 北朝鮮を残したままでの「正恩氏の排除」となれば、「暗殺」か「亡命」が考えられる。この延長線上で、トランプ氏の異例のツイートが注目されるのだ。

 日米情報当局関係者は「外交の駆け引きは字面だけで判断できない。ツイートの背景としては、(1)米朝の水面下接触が進んでいる(2)軍事行動前に『外交努力をしたが、北朝鮮が蹴った』という実績づくりのため(3)正恩氏に亡命を促すメッセージ-などが考えられる」と分析する。

 現実として、正恩氏が亡命するような事態が起こり得るのか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「金王朝が滅びることになれば亡命せざるを得なくなるだろう。例えば、米軍機に北朝鮮がミサイルを撃ち、米朝の緊張が高まり、中国人民解放軍が北朝鮮に入ってくるような大混乱となれば、正恩氏は国内を統制できなくなるかもしれない。中国共産党の息のかかった連中がクーデターをやる可能性もある。北朝鮮が体制崩壊となった場合、正恩氏が一番頼りにしているのは、ロシアのプーチン大統領だ。正恩氏の亡命先はロシアしかないだろう」と語る。

 朝鮮半島情勢は、どう展開していくのか。

【私の論評】金ファミリーの亡命も選択肢の一つ(゚д゚)!

いまの北朝鮮は、言ってみれば「プーチンランド」と化しています。ディズニーランドに行けばミッキーマウスに会えますが、北朝鮮に行けば、随所にロシアの「痕跡」が見られます。もはや金正恩政権は、ロシアの傀儡政権と言っても過言ではありません。

北朝鮮のロシア人ツアー客。ロシアでは7月1日から、「オールインクルーシブ」プラン
での5日間の観光ツアーで北朝鮮を訪れることができるようになった
解放記念日(8月15日)の『労働新聞』に、金正恩委員長がプーチン大統領を称えた書簡が大きく掲載されていました。

ロシアの有力紙『モスコフスキー・コムソモーレツ』(9月7日付)には、17kmあるロ朝国境近くに位置するハサン村のルポが掲載されており、村の事務所には、金日成・金正日・プーチンの3人の写真が、並んで掲げられていたのです。

これは、平壌最大の目抜き通り「栄光通り」が、「スターリン大通り」と呼ばれていた時代を髣髴させます。そもそもソ連極東軍88旅団所属の金成柱を、ソ連が「金日成将軍」に仕立て上げて平壌に連れてきたのが、北朝鮮の始まりでした。

現在の北朝鮮は、それから70年近く経て、またもとに戻りつつあるようです。ロシアの最新の世論調査によれば、米朝対立の原因が北朝鮮にあるという回答は、わずか12%。ロシアは北朝鮮の味方です。

9月3日の北朝鮮による水爆実験にも、プーチン政権の影を感じられます。なぜなら5日前の8月29日に、ロシア政府がハサン村の住人約1500人に突然、避難命令を出していたのです。

羅先とウラジオストクを結ぶ北朝鮮の貨客船『万景峰号』も、8月24日に突然、運航中止となりました。

日本のメディアは、「北朝鮮がウラジオストクの港湾使用料を未払いだったため、ロシア側が停泊を拒否した」と報じていましたが、これはとんでもない誤解です。あれも水爆実験の被害を避けようとした措置であるとみられています。

ちなみに実験場所からわずか100kmしか離れていない中国には、事前通告さえなかったそうです。だからこそ、あの水爆実験は、北朝鮮とロシアによる「合作」であるとみなすべきなのです。

そもそも、広島型原爆の10倍規模の威力もある高度な水爆技術を、北朝鮮がこれほど短期間で独自に持てるはずはないです。

カギを握るのは、ウラジオストクに本社がある「ロシア極東山岳建設」という会社です。元はソ連の国土交通省の一組織で、プーチンが大統領になって平壌を訪問した2000年に民営化された「プーチン系」企業です。

ウラジオストックのメインストリート・スヴェトランスカヤ通り
この会社が、北朝鮮のインフラ整備にフル稼働しています。中でも、最も得意とするのが山岳地帯のトンネル建設であり、豊渓里の核実験場の工事を請け負ったのではないかとされています。

これは、坑道を800mも掘ったり、人間の大腸のような複雑な構造にしたりして、放射能漏れを防いでいます。とても北朝鮮の技術とは思えません。

このロシア極東山岳建設は、坑道建設ばかりか、羅先-ハサン間54kmのロ朝間の鉄道建設も請け負っています。

この鉄路建設は、先代の金正日総書記が、'01年から'02年にかけて2年連続でロシアを訪問する中で決めたものです。

その後、建設が延期され、'08年に、ロシアが羅津港を49年間、租借することと引き換えに着工。'13年9月に、羅津港で開通式が行われました。

ロシア極東沿海地方のハサンと北朝鮮北東部・羅先経済特区の羅津港を結ぶ
鉄道区間の改修に伴って実施された列車の試験運行。(2011年10月12日)
開通式には、ロシア鉄道のヤクーニン社長も、モスクワから駆け付けました。その際、一つ不可解なことがありました。計画から着工まで7年もかかったのは、北朝鮮側が建設費用の負担を渋ったからでした。かつて100億ドルも北朝鮮に債務不履行されたロシアが、二の足を踏んだようです。

ところが、着工から竣工までも、丸5年もかかっているのです。もともと植民地時代に日本が敷いた鉄路があり、しかもわずか54kmにもかかわらず、この工事期間は、あまりに長いです。

ロシア極東山岳建設の最も得意な分野は、地下トンネルの建設です。おそらくこの鉄路の地下に、有事の際、金正恩一族が亡命するためのトンネルを建設したのではないかと推察されます。

加えて、両国を結ぶ鉄道建設という名目なので、アメリカのスパイ衛星も警戒心を抱かないです。この鉄路によってロシアとの貿易が急増すると同時に、トップの身の安全も図れるのです。北朝鮮にとっては、まさに一石二鳥です。

これも金正日総書記時代の話ですが、ある高位の亡命者が有事の際の金ファミリーの亡命ルートを告白したということがありました。

その亡命者によれば、平壌の金正日官邸の地下から、黄海の南浦まで、60km近く秘密の地下道が繋がっているそうです。南浦からは空路か海路で中国に亡命すると聞きました。

しかし、いまや習近平政権は、犬猿の仲の金正恩ファミリーを受け入れるはずもないので、このルートは使えません。それでロシアルートを作ったのでしょう。

アメリカから攻撃されて、金ファミリーが、羅先から地下トンネルを伝ってハサンまで逃げたとします。そこから一路、軍港があるウラジオストクまで行くに違いないです。

しかし極東にいたのでは、いつアメリカ軍に襲われるか気が気でないはずです。ロシアとしても、独裁者を匿っていると国際社会から非難を浴びることになります。

実は中国政府も、かつて金正日ファミリーの亡命について、密かに内部で検討したことがありました。'02年にブッシュJr.大統領が、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難して、米朝関係が悪化した頃です。

その時の結論は、「ファン・ジャンヨプ方式にする」というものでした。北朝鮮の序列26位だったファン・ジャンヨプ書記が、'97年に北京の韓国領事館に亡命を申請した時、中国政府は、3ヵ月以内に出国することと、米韓以外の第三国に向かうことを条件に、身の安全を保障しました。

同様に金正日ファミリーに対しても「3ヵ月以内の滞在」しか認めないようです。ロシアもそのあたりは熟考したはずです。

それでロシアの結論は、金正恩ファミリーを、ウラジオストクから北極海に面したムルマンスク軍港まで軍用機で運び、そこから約1000km離れたスヴァールバル諸島に、亡命先を用意することです。

この任務を担うロシア保安庁(旧KGB)の特殊部隊RSBが、すでに金ファミリーのボディガードを務めています。

スヴァールバル諸島とは、北極海に浮かぶ群島です。第一次世界大戦の頃、ロシア、ノルウェーなど、多くの国が領有権を争ったため、大戦終結後のパリ講和会議で、スヴァールバル諸島を、永久非武装地帯としました。以下にその位置を地図で示します。


このスヴァールバル条約には、ロシアやアメリカなど40ヵ国以上が加盟していますが、島内にはロシア人居住地区があり、ロシアの法律が適用されています。ここには、世界でもっとも北端に位置するレーニン像があります。

スヴァールバル諸島の面積は、ちょうど九州と四国を足し上げたくらいの大きさです。夏は4〜6度くらいまで気温が上がりますが、冬は-12〜-16度にもなる極寒の島です。

大部分の島が永久凍土に閉ざされ、人が住める島は1つのみ。植物はほとんど生えていません。

「スヴァールバル条約」を批准している国の国民であれば、スヴァールバル諸島に「ビザなし」で住め、しかも「外国人の戸籍のまま商売」ができます。ちなみに、日本もこの条約を批准しています。

2012年時点で、2642人が島で暮らしています。大部分がノルウェー人ですが外国人も暮らしていて、439人のロシア人、10人のポーランド人、その他タイ、デンマーク、スウェーデンの人が暮らしています。

この条約は、今から100年近く前の条約ですが、1920年代から'30年代にかけて各国が加盟しました。ところが昨年になって突然、このスヴァールバル条約に、ロシアの後押しを受けて、北極海になど、何の縁もない北朝鮮が加盟したのです。これは朝鮮人労働者の受け入れの他は、金ファミリーの亡命目的以外には考えにくいです。

しかも現在、島内のロシア人居住地区で、大邸宅の建設が始まっていることまで分かっています。

スヴァールバルはスピッツベルゲン島という名前でも知られている。
今でもロシア人が生活している唯一のバレンツブルクという集落
これを知れば、なぜ金正恩委員長があそこまで強気でいられるのか、その理由が理解できます。いざとなればロシアが逃がしてくれるという「保険」があるのです。

プーチン政権は、核の技術もミサイルの技術も提供したあげく、亡命先まで用意したのです。金正恩にとってこれほど頼もしい庇護者はいません。

しかもプーチン政権には、シリアがあれほど激烈な内戦のさなかにあっても、6年半にわたってアサド政権を守り続けてきたという実績があります。

プーチン政権がそこまで金正恩政権に肩入れする理由としては、やはり極東におけるアメリカと中国という両大国への剥き出しの牽制だと考えられます。

米中露「3大国」とは言うものの、ロシアの経済力は米中に較べて圧倒的に脆弱です。ロシアの現在のGDPは日本の1/5程度です。ロシアの人口は日本よりわずかに多い、1億4千万人、そうして極東には600万人くらいしかロシア人が住んでおらず、強い危機意識を抱いています。だから「東アジアのシリア」を作りたいのです。

もう一つは、天然ガスのパイプラインを、韓国まで引きたいという野望があります。9月6日、7日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムに、プーチン大統領と韓国の文在寅大統領が揃って参加し、この話を詰めています。気をよくした文在寅大統領は、北朝鮮に800万ドルの人道支援を表明しました。

これも、人道支援を大義名分にしてシリアを支配したプーチン大統領の入れ知恵でしょう。

プーチンロシア大統領
ロシアから韓国に天然ガスのパイプラインを引く計画は、'08年に李明博大統領がロシアを訪問した際に盛り上がった話です。ロシアのハバロフスク、ハサンから北朝鮮の元山を経て、韓国の仁川まで約2000kmを結ぶ壮大な計画です。

北朝鮮にはパイプラインの通行料として年間1億ドルを支払う予定でしたが、韓国の命脈を北朝鮮に握られるという懸念からご破算になりました。


2011年10月3日のボイスオブロシアによれば、ロシアのウラジーミル・プーチン首相は、ロシアの半国営の天然ガス:PNG独占企業であるガスプロム Gazpromに対して、日本、韓国と中国などとの協力発展についての拡大的な提案を準備するよう指示したとあります。

つまり、プーチンの頭の中には、日本、韓国、中国を巻き込んだ「国家成長プログラム」が出来上がったと言う事でした。

東北の大震災直後、当時民主党政権だった、日本政府は将来のエネルギー不足を見越してロシアの天然ガス取得に対して積極策に出ることをロシアに伝え、ロシアはこれを受け、一連の開発を前倒しにし、同時に韓国、中国への供給も早める対応を取りました。

これには、当時次期大統領を着々と狙う、プーチン首相の思惑が働いたとみるべきでしょう。恐らく彼は、日本の大震災を好機と取ったはずです。

すでに、サハリン州の天然ガス田から日本海側の港湾都市ウラジオストクを結ぶ全長約1820キロのパイプラインの完成式典が2011年9月8日ウラジオストクVladivostokで行われ、プーチン氏も参加しました。

次はこれを北朝鮮経由で韓国に送り込む事(2017年稼動予定で、その際には経由する北朝鮮内700kmに1億ドルの収入が見込まれる)の実現で、2011年8月、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が9年ぶりに訪露し、協議の場でロシアは、北朝鮮の協力に対し食糧援助を約束し、これをロシアは2011年9月末に完了しました。

全ては着々と進行し、全てが完成したときに、ロシアは日中韓の経済を握るとの目論見だったのでしょう。しかし、この計画は日本では、民主党政権の崩壊とともに潰え、韓国でも、命脈を北朝鮮に握られるという懸念からご破算となりました。

その計画を、9年ぶりにロシアと韓国、北朝鮮で復活させようというわけです。そんな「密談」が進んでいるところに、安倍首相が出かけて行って、プーチン大統領に「北朝鮮への圧力」を説いたのです。

これを考えると、文在寅の最近の不可解な動きも理解できます。米国は朝鮮半島周辺海域に、原子力空母3隻を集め、11~14日に米日韓3カ国の合同軍事演習を行い、北朝鮮に圧力をかける予定でした。ところが、韓国が突然『日本とやるのは嫌だ』と言い出し、米日、米韓とバラバラになったのです。北朝鮮やロシアは大喜びでしょう。

文在寅は、中国に踊らされただけではなく、裏ではロシアにも踊らされたというわけです。最近、米国のWSJ紙が韓国に対して痛烈な批判を行いましたが、背景にはこのようなこともあったのです。

文在寅とプーチン
さて、いざとなれば、ロシアが金ファミリーを亡命させるという選択肢があるということは、我々も認識しておくべきです。

これに関しては、当然のことながら、トランプ大統領、安倍総理、習近平も知っていることでしょう。その上で、ポスト北朝鮮危機後の世界をなるべく自分たちに有利になるように立ち回っているというのが、実体でしょう。

ブログ冒頭の記事にある、トランプ大統領のツイートは、やはり金ファミリーの亡命を示唆したものであると考えられます。トランプ大統領としては、金ファミリーが亡命し、北朝鮮の体制が変わることを望んているのだと思います。そうなれば、金ファミリーの命は、助けるという意思表示であると考えられます。

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2017年8月18日金曜日

半島緊迫ウラで権力闘争 習氏と正恩氏“絶縁”にプーチン氏、米中手玉の“漁夫の利” 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】半島情勢を左右するロシアの動き(゚д゚)!

半島緊迫ウラで権力闘争 習氏と正恩氏“絶縁”にプーチン氏、米中手玉の“漁夫の利” 河添恵子氏緊急リポート

習近平
朝鮮半島危機の裏で、中国とロシア、北朝鮮が狡猾に動いている。中国の習近平国家主席は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と“絶縁状態”で北朝鮮への影響力はゼロに近いが、米国と北朝鮮の緊張を権力闘争に利用しようとたくらむ。ロシアのプーチン大統領は、北朝鮮を抱き込み、米国と中国を手玉に取る。正恩氏は、米国と中国、ロシアの間でしたたかに立ち回っている。ドナルド・トランプ米大統領は、彼らの計略に気付いているのか。東アジア情勢に精通するノンフィクション作家、河添恵子氏が緊急リポートする。

 中国共産党幹部にとって、今年夏はとりわけ暑い。最高指導部が大幅に入れ替わる5年に一度の党大会を秋に控え、引退した大物長老も含めた幹部が河北省の避暑地、北戴河に集まり、非公開の会議で人事を固める重要な時期だからだ。

 一部の中国語メディアは、習氏が宿泊する豪華別荘「ゼロ号」には、暗殺防止のために防弾ガラスが設置され、習氏が海水浴をする際には、厳格な審査を経て選抜された200人以上の水上警察官が警護にあたっている-と報じた。

ロシア人のリゾート地にもなっている北戴河
 習体制が船出して5年、習氏は権力掌握と勢力拡大を目指し、盟友の王岐山・党中央規律検査委員会書記(序列6位)とタッグを組み、「トラもハエもたたく」の掛け声で、宿敵・江沢民元国家主席派の大物を次々と刑務所や鬼籍へ送り込む“死闘”を繰り広げてきた。

 昨年10月の党中央委員会総会で、習氏は、トウ小平氏や江氏と並ぶ「核心」の地位を得たが、依然として「権力の掌握ができない」というジレンマを抱えている。習政権が掲げた夢は「中華民族の偉大なる復興」だが、習氏の夢は「江一派の無力化」であり、いまだ道半ばだからだ。

 習氏の不安・焦燥はそれだけではない。

 4月の米中首脳会談で、習氏は、北朝鮮の「核・ミサイル」対応をめぐり、トランプ氏から「100日間の猶予」を取り付けたが、7月中旬までに“宿題”をこなせなかった。北朝鮮と直結するのは江一派であり、習氏は北朝鮮に何ら力を持たないのだ。

 北朝鮮は5月、「中国が中朝関係を害している」と初めて名指しで批判した。これは建国以来の「兄弟国」中国に対してではなく、習氏や習一派への罵倒と読み取るべきだ。正恩氏は強硬姿勢を崩さず、ミサイル発射を繰り返している。こうしたなか、プーチン氏の存在感が際立っている。

 中国共産党最高指導部「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)のうち、4月に、江一派の張徳江・全人代常務委員(序列3位)と、張高麗副首相(同7位)が訪露し、プーチン氏と会談した。

 習氏(同1位)も7月、2泊3日でモスクワ入りし、プーチン氏と複数回会談した。これほど短期間に「プーチン詣で」が続いた背景は、北朝鮮問題である。

 北朝鮮の金王朝は1961年、旧ソ連と軍事同盟の性格を持つ「ソ朝友好協力相互援助条約」を締結するなど、古くから特別な関係にあった。プーチン氏は大統領就任直後の2000年、ロシアの最高指導者として初めて平壌(ピョンヤン)を訪れ、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記から熱烈な歓迎を受けた。

 この2年前、北朝鮮は「人工衛星の打ち上げ」と称して、事実上の中距離弾道ミサイルを発射した。北朝鮮のミサイルは旧ソ連の技術が基盤とされる。

 プーチン氏の訪朝後、ロシア下院は「露朝友好善隣協力条約」を批准する。正日氏は2001年以降、公式・非公式で何度も訪露をするなど「プーチン氏との関係強化に邁進(まいしん)した。

 北朝鮮は一方、江一派の息がかかる瀋陽軍区(現北部戦区)ともつながってきた。瀋陽軍区は、米国や日本の最先端技術を盗み、金王朝と連携して「核・ミサイル開発」を進め、資源や武器、麻薬など北朝鮮利権を掌握したとされる。

 江一派と敵対する習氏としては、北朝鮮のミサイルの矛先が北京・中南海(中国共産党中枢)に向かないよう、プーチン氏との「特別な関係」に注目しながら、江一派の“無力化工作”に心血を注いでいる。

 習氏がモスクワ訪問中の7月4日、北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射した。訪露にあたり、習氏は「110億ドル(約1兆2170億円)規模の経済支援」という手土産を持参した。北朝鮮をコントロールできない苦境を物語っているようだ。

 これに対し、プーチン氏はロシア最高位の「聖アンドレイ勲章」を習氏に授与した。習氏を手下にしたつもりだろうか? ロシアはすでに、北朝鮮を抱き込んでいると考えられる。

 北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」は、北朝鮮北東部・羅津(ラジン)と、ロシア極東ウラジオストク間を定期運航している。真偽は定かでないが、プーチン氏が送り込んだ旧KGBの精鋭部隊が、正恩氏の警護や、北朝鮮人民軍の訓練にあたっているという情報もある。

 一連の危機で“漁夫の利”を得るのは、間違いなくプーチン氏である。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)など。

【私の論評】半島情勢を左右するロシアの動き(゚д゚)!

結局、今回の朝鮮半島情勢も、ロシアが漁夫の利を得るだけなのかもしれません。これは、第二次世界大戦における真の勝者は誰だったのかを考えることが、参考になります。

さて、戦争の勝敗は何によって決まるでしょうか。もちろん死傷者も重要です。領土や財産を奪ったか奪われたかも重要です。しかし、本質は「目的を達成したか」どうかです。

当時のソ連の、戦争目的は、まず東欧の赤化です。これには完璧に大成功しました。次の目的は、満州の獲得です。これも成功です。それどころか、北朝鮮まで手中に収めました。ちなみに、現在の中ロ関係は良いとはいえないですが、スターリンが存命中には、毛沢東は忠実な手下です。

米国は結局ほとんど何も得られませんでした。英国は、失うものばかりが多く、本当にソ連の一人勝ちです。

ウェデマイヤーレポートの日本語版のタイトルは『第二次大戦に勝者なし』との題名なのですが、内容は「第二次大戦の勝者はソ連だけだ」です。


そうして、今日ロシアを支配しているのは、徹底した『力の論理』です。自分より強い相手とはケンカをせず、また、自分より弱い相手の話は聞かないというものです。

日本からの投資などで、ロシア側の姿勢を軟化させ北方領土問題を一歩でも進めよう、などという声もあるようですが、話を進める気のない相手に交渉を持ち込んだところで、条件を吊り上げられるのがオチです。

そもそも、戦争で取られたものは戦争で取り返すしかない、というのが国際社会の常識です。力の裏づけもないまま、話し合いで返してもらおうなどと考えている時点で、日本は甘すぎます。これは、それこそ子どもの論理と謗られてもしかたありません。
 
これは、プーチンとメドヴェージェフの役回りを考えてもわかります。子分が大袈裟に騒ぎ立てたところへ、親分が『まあまあ』と薄ら笑いで入ってくるのは、弱肉強食のマフィア社会などでは常套手段です。にもかかわらず子どものままの日本は、プーチンの薄ら笑いを友好的なスマイルだと勘違いしてしまっています。要するに、マフィアの社交辞令を真に受けているわけです。

プーチンとメドベージェフ
そもそも、多くの日本人はロシアを知らなさすぎます。ウクライナの問題にしても、ロシアの歴史を知っていれば『またやってるよ』で終了です。『アメリカの影響力の低下』を論じる向きもありますが、そもそも、旧ソ連邦であるウクライナ、とくにクリミア半島に欧米が手出しできるわけがありません。メキシコにロシアが介入できないのと一緒です。

これは、世界の通史を知れば国際社会の定石が学べ、おのずと理解できることです。そうして、文明国として、日本が強くなるべき理由やその方法も理解できるはずです。

プーチン大統領にとって、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物です。元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。ウクライナを狙うのは、彼が旧ソ連を取り戻そうとする行為の一環なのです。

プーチンは故郷であるソ連邦の歴史をムダにしたくないし、ソ連の崩壊が敗北だったとは決して認めたくないのです。例えばプーチンは、ガスプロムという天然ガスの企業を使って、ロシア人から搾取を続けています。

かつてイギリスが東インド会社でやっていたような植民地化を自国で行っているわけです。この事実だけ見ても、彼がロシアの愛国者ではなく、ソ連への忠誠心が高いと見ていいです。

ソ連の愛国者プーチン
このやり口を理解しなければ、トランプ大統領もプーチンにしてやられるだけです。

日本では、半島情勢というと、米朝の二国間だけに注目しがちであるし、マスコミもこの側面ばかり報道します。

しかし、これらの背後にあるロシアの動きも注目しなければならないということです。

ロシアが対北朝鮮で融和政策を取る最大の理由は、北朝鮮の振る舞いに対し、アメリカやその同盟国と非常に異なった解釈をしているからです。長年ロシアは、北朝鮮とわずかに国境を接しているにも関わらず、金一族に対してアメリカよりはるかに楽観的な見方をしてきました。冷戦初期、北朝鮮とソ連は共産主義の価値観を共有していましたが、そうしたイデオロギー上の連帯感はとうの昔に消え去りました。

ロシアは金一族は奇妙だが、合理的だとも考えているようです。金正恩が核兵器を手にしたのは本当です。しかし、ロシアのアナリストは、北朝鮮が核兵器で先制攻撃すれば、アメリカによる核の報復を受けて金も北朝鮮も破滅することを、金は承知しているとみています。

冷戦時代に米ソに核兵器の使用を思いとどまらせた核抑止の論理が、北朝鮮の攻撃を回避するうえでも役に立つというのです。そのため多くのロシアのアナリストは、北朝鮮が国家の安全保障に自信をもてて、アメリカによる軍事攻撃を抑止できるという点で、北朝鮮の核開発は朝鮮半島情勢の安定化に役立つと主張しています。

ロシア政府が北朝鮮問題でアメリカと一線を画すのには、他にも理由があります。ロシアは中国と同じく、朝鮮半島が統一されて北朝鮮の政権がアメリカの同盟国に取って代わられる事態をまったく望んでいません。

ロシア政府は中国に同調し、米軍による韓国への最新鋭迎撃ミサイル「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」配備に強く反発しています。アメリカが東アジア地域に重点を置く限り、ロシアが今も最優先に掲げるソ連崩壊後の地域をめぐる争いにアメリカの目は行き届きにくいです。そのうえ、金が譲歩しないことでアメリカが怒りの矛先を向けるのは中国だから、ロシアがアメリカに同調しないでいることは簡単です。

実際ロシアの見方では、朝鮮半島を緊張させた責任は、北朝鮮だけでなく同じくらいアメリカにあります。そうした見方からすると、そもそも金一族がミサイルや核を開発するのは自己防衛のためだといいます。「北朝鮮は通常、自分から仕掛けるよりやられたらやり返すタイプだ」と、ロシアの外交政策分析の第一人者で政治学者のフョードル・ルキヤノフは述べました。

「北朝鮮は、強がるのは賢明でないことをイラクのサダム・フセイン元大統領やリビアのムアマル・カダフィ元大佐の末路から学んだ上で、ミサイルや核を開発している。ミサイルや核の存在が、他国による介入の代償を許容できないほど押し上げている」。ロシアのアナリストの多くは、アメリカが北朝鮮を体制転換させると言って脅しさえしなければ、そもそも北は核兵器開発の必要性を感じなかっただろうと主張しています。

悲惨な末路を遂げたサダム・フセイン(左)とカダフィ(右)
アメリカは北朝鮮に対して核開発をやめるよう圧力をかける意思も能力もない中国に苛立ち、新たな選択肢を模索しています。アメリカとしては、このまま北朝鮮に米本土を射程に収めるミサイルの開発や実験を続けさせる事態は避けたいです。

トランプが今年1月、北朝鮮が核弾頭を搭載したICBMで米本土を攻撃する能力を持つ可能性はないと約束した手前もあります。米軍が北朝鮮の核関連施設を攻撃すれば、韓国や日本を巻き込む大規模な戦争に発展する危険性があります。

もしアメリカが北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるなど、北朝鮮政策を穏健なものにしていたら、ロシアも他国と足並みを揃え、北朝鮮に核・ミサイルの開発や実験をやめさせるよう圧力をかけたかもしれません。しかしアメリカが北朝鮮への軍事攻撃や体制転覆を選択肢として残している限り、ロシアは金正恩だけでなくトランプにも責任を負わせ続けるでしょう。

米国としては、中途半端はもうするべきではないのです。道は2つしかありません。北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるか、北朝鮮を攻撃し核の脅威を取り除きいずれ、北朝鮮に民主的な政権を根付けるかです。

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