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2017年8月28日月曜日

習政権、朝日新聞見捨てたか 「新チャイナセブン」読売スクープ報道の深層 河添恵子氏が緊急リポート―【私の論評】日本には中国と本気で対峙しなければならない時が間近に迫っている(゚д゚)!

習政権、朝日新聞見捨てたか 「新チャイナセブン」読売スクープ報道の深層 河添恵子氏が緊急リポート

胡錦濤(左)と習近平(右)
 中国共産党最高指導部「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)が大幅に入れ替わる、5年に一度の党大会が今年秋、開催される。習近平国家主席への権力掌握が注目されるが、読売新聞は24日朝刊で「中国次期指導部リスト判明」と、驚くべきスクープを放った。この顔ぶれが事実なら、習一派と胡錦濤前国家主席派が、江沢民元国家主席率いる「上海閥」を葬り、今後、北朝鮮とつながる党幹部を粛清しそうだという。東アジア情勢に精通するノンフィクション作家、河添恵子氏が緊急リポートする。

 中国の次期最高指導部リストが、8月下旬に報道されるのは異例中の異例だ。河北省の避暑地で例年行う「北戴河会議」が終わったとはいえ、この時期に報じられた理由を推測すると、いくつかの背景が浮かび上がる。

 まず、このリストは、筆者(河添)含む、世界のチャイナウォッチャーにとって、おそらく意外な人物はいない。


 北朝鮮の「核・ミサイル開発」をめぐり、ドナルド・トランプ米大統領と、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が一触即発で対峙(たいじ)するなか、金王朝と近い“江沢民派の一掃”を誇示したかったのだろう。

 習氏は、金王朝に何ら影響力を持っていない。

 このため、習氏らが4月に米国を訪問(命乞い?)すると、北朝鮮は翌月、中国を「敵」と吠えた。トランプ氏が出した「宿題」通りに、習一派が北朝鮮と密接な北部戦区(旧瀋陽軍区)の江一派を一網打尽にすれば、北朝鮮のミサイルで北京・中南海(中国共産党中枢)が火の海になる可能性も捨てきれなかった。

 習氏はこれを防ぐため、7月に北朝鮮に隠然たる力を持つロシアを訪問し、プーチン大統領と数回会談した。多額の経済援助も用意した。必死だった。

 読売新聞のリストの6番目に入っている栗戦書・党中央弁公庁主任は、習氏とプーチン氏との特別な関係を、ここ数年、下支えしてきた。第2期習政権にとっても、プーチン氏との関係をより深めることが、政権の“命綱”になるためだ。

 3番目に入っている汪洋副首相は、栗氏と同様、習氏の4月訪米に同行した“渡航組”の1人だ。彼の対面はレックス・ティラーソン国務長官だった。汪氏は「米国対応の要」になるのだろう。

 習氏が提唱する「一帯一路」構想の起点は重慶市である。7番目に入った陳敏爾・重慶市党委書記は習一派で、孫政才・前重慶市党委書記が今年夏に失脚した後に後任となった。「一帯一路」構想を維持発展させるためのロケット出世といえそうだ。

 習体制発足から5年、習氏が「一強」の体制固めに邁進(まいしん)してきたことは、多くの識者が指摘している。そのうえで、結論から言うと、この新リストが暗示するのは2期目指導部は「習近平-胡錦濤体制」になるということだ。

 胡前主席は、総書記と、中央軍事委員会主席、国家主席でありながら、江沢民元主席によるかいらい政権のまま2期10年間、悶々(もんもん)としてきた。

 中国の一部メディアにも「習-胡連盟の流れが加速している」との記述が散見していた。胡氏が、息子の胡海峰(浙江省嘉興市市長)のロケット出世を願って、習氏と手を組んだと考えてもおかしくはない。

 香港の雑誌『争鳴』6月号にも、興味深い内容が記されていた。

 「5月10日から11日、中国共産党中央政治局常務委員拡大生活大会が中南海で行われた。胡錦濤、朱鎔基、宋平、李瑞環、呉邦国、温家宝、賈慶林、李嵐清ら退職した中央政治局常務委員が参加し、江沢民、李鵬、曽慶紅、賀国強は欠席した」

 「胡錦濤は、腐敗キャンペーンを進める習近平を高く評価」「胡錦濤は、自身の“科学的発展観”を代価とし、江沢民の“三つの代表”を削除するよう提出。犠牲的に江沢民を攻撃する習近平を助けると発言した」

 この報道が事実なら、胡氏は「共産主義青年団派」(共青団派=団派)のドンとして、習一派らが果敢に繰り広げる江一派の粛清を「大歓迎」していることが分かる。

 最近、重要な会合や葬儀にも江氏の姿はない。「入院中で心臓が動いているだけの状態」という噂も流れている。胡氏にとっても「本格的リベンジ」の時なのではないか。

 ほかにも、リスト公表を早めた理由が考えられる。

 依然として影響力を持つ曽慶紅元国家副主席(別名『江派2号』)や、北朝鮮と直結する江一派の大物を一刻も早く粛清したいためではないか。

 もう1つ、読売新聞が、このリストを「世界初」で入手したとすれば、そのことにも意味がありそうだ。実は、中国は日本メディアの影響力をよく理解している。朝日新聞が慰安婦問題の大誤報などで、読者の信頼を失い、不買運動も広がっている。

 習政権が、朝日新聞を見捨てて、「読売新聞に乗り換える」というサインなのかもしれない。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)など。

【私の論評】日本には中国と本気で対峙しなければならない時が間近に迫っている(゚д゚)!

以下に、まずは現在のチャイナセブンを示す表と、その下に新チャイナセブンのリストをならべて掲載します。



この表を比較すると、新チャイナセブンからは、江沢民派は完璧に姿を消しています。大子党は習派であり、共青団派は、胡錦濤派であることから、現状のチャナセブンの習派3人、胡錦濤派1人、江沢民は3人から、新チャイナセブンでは、習派4人、胡錦濤派3人、江沢民派0人であり、これは習・胡錦濤派の大勝利です。

今月15日付の産経新聞が報じたように、今秋開かれる中国共産党大会で、習近平総書記の思想・理念が「習近平思想」として党規約に明記される可能性が高まっていました。そうして、この新チャイナセブンのリストをみると、その可能性はほぼ100%と見て間違いないです。

中国共産党史上、指導者個人の思想が党の指導思想として認定された前例には「毛沢東思想」があります。1936年に党の主導権を握った毛沢東は、それから9年間をかけて権力基盤を固めたのち、45年開催の共産党第7回党大会で「毛沢東思想」を党規約に盛り込むことに成功しました。

「毛沢東思想」をコンパクトにまとめた『毛沢東語録』
これで毛沢東は、党の政治的指導者の地位だけでなく、党の思想的「教祖」としての権威も手に入れました。その時からわずか4年後の49年、「教祖」となった毛沢東の指導の下で、中国共産党は国民党政府との内戦で奇跡的な勝利を収め、天下を取って中華人民共和国を建国しました。

そうして76年の毛沢東の死去まで、毛沢東思想が至高のイデオロギーとして党と全国人民を完全支配するようになっていました。一個人の思想がそれほど権威を持った背景には当然、中国共産党を内戦の勝利へと導いて国を開いた毛沢東の「偉業」がありました。

毛沢東思想を広める先兵となった紅衛兵の少女たち 「毛沢東語録」を読み上げている
毛沢東の死後、次の最高指導者となった鄧小平は、改革・開放路線を推し進めて中国経済を成長路線に乗せ、かつての貧困国家・中国を世界第2の経済大国へ変貌させました。この歴史的業績をもって、彼の死後の97年、「鄧小平理論」が党規約に明記されることになりましたが、それは毛沢東思想よりは一段格が下の「理論」にとどまりました。

それに対し、総書記になってからわずか5年、これといった業績もない習近平氏が、建国の父の毛沢東と肩を並べて自らの「思想」を党規約に盛り込もうとしているのです。

党規約に「習近平思想」を記載するのは簡単ですが、「習近平思想」が本物の指導思想として自らの絶対的権威を確立させていくのはかなり困難なことです。毛沢東思想や鄧小平理論の権威確立は、この2人の政治指導者の歴史的業績によって裏付けられたものであり、今の習近平氏にはそれがありません。

したがって秋の党大会以後、自らの「思想」の権威確立のために、習氏はかつての毛沢東や鄧小平と比肩するほどの業績を作っていかなければならないことになります。しかし今の中国には、指導者が内政の面において毛沢東の建国や鄧小平の改革開放に匹敵するほどの業績を立てる余地はもはやありません。これからの習氏にとって、歴史的業績を作り上げるための新天地は、「国の外」にしかありません。

1978年10月22日日本を訪れた鄧小平氏(一番手前)
つまり、習近平は、毛沢東と鄧小平が夢見ていてついに達成できなかった、アジアと世界における中国の覇権樹立という「偉業」を、成し遂げることによって初めて彼の「思想」は本物の「指導思想」となって習近平の統治の正当性を主張できることになります。そのとき初めて、習近平は毛沢東や鄧小平を超える「教祖」として中国に君臨することができることになります。

そうなると、今秋の党大会において「習近平思想」を首尾よく党規約に明記させた後、2期目からの習近平政権は不退転の決意を持って南シナ海と東シナ海に対する軍事的支配と、「一帯一路」の展開による世界への経済支配を両輪とする世界制覇戦略を全面的に推し進めていくこととなるでしょう。

今後、中国の海洋進出や一帯一路による世界のブラック化はさらに加速されることになるどころか、とどまるところを知らなくなります。

「教祖」になろうとする中国共産党独裁者の野望はこうして、アジアと世界に災いをもたらすことになります。その野望を打ち砕き、アジアの平和と安定を守るため、日米はより同盟関係を強める必要があります。さらに、他国の強力を得て、中国包囲網をさらに堅固なものにする必要があります。

さらに、日本は中国と対峙するためにも、憲法改正等急ぎ、少なくとも防衛戦争ができる国にならなければなりません。

なぜなら、今の日本は習近平からみれば、最も与し易い体制だし、日本を屈服させ、属国にでもすれば、「習近平思想」は、絶対のものとなり、習近平の中国内での、統治の正当性は盤石のものになるからです。

7月17日、青森県の艫作崎沖の領海に中国海警局の船2隻が相次いで侵入したり、中国の爆撃機6機が24日、沖縄本島と宮古島の間の上空を通過して紀伊半島沖まで飛行したことは、その前触れです。これから、このようなことが頻繁に起こることになります。

日本には北朝鮮どころか、その数十倍の中国と本気で対峙しなければならない時が間近に迫っています。

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2017年8月18日金曜日

半島緊迫ウラで権力闘争 習氏と正恩氏“絶縁”にプーチン氏、米中手玉の“漁夫の利” 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】半島情勢を左右するロシアの動き(゚д゚)!

半島緊迫ウラで権力闘争 習氏と正恩氏“絶縁”にプーチン氏、米中手玉の“漁夫の利” 河添恵子氏緊急リポート

習近平
朝鮮半島危機の裏で、中国とロシア、北朝鮮が狡猾に動いている。中国の習近平国家主席は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と“絶縁状態”で北朝鮮への影響力はゼロに近いが、米国と北朝鮮の緊張を権力闘争に利用しようとたくらむ。ロシアのプーチン大統領は、北朝鮮を抱き込み、米国と中国を手玉に取る。正恩氏は、米国と中国、ロシアの間でしたたかに立ち回っている。ドナルド・トランプ米大統領は、彼らの計略に気付いているのか。東アジア情勢に精通するノンフィクション作家、河添恵子氏が緊急リポートする。

 中国共産党幹部にとって、今年夏はとりわけ暑い。最高指導部が大幅に入れ替わる5年に一度の党大会を秋に控え、引退した大物長老も含めた幹部が河北省の避暑地、北戴河に集まり、非公開の会議で人事を固める重要な時期だからだ。

 一部の中国語メディアは、習氏が宿泊する豪華別荘「ゼロ号」には、暗殺防止のために防弾ガラスが設置され、習氏が海水浴をする際には、厳格な審査を経て選抜された200人以上の水上警察官が警護にあたっている-と報じた。

ロシア人のリゾート地にもなっている北戴河
 習体制が船出して5年、習氏は権力掌握と勢力拡大を目指し、盟友の王岐山・党中央規律検査委員会書記(序列6位)とタッグを組み、「トラもハエもたたく」の掛け声で、宿敵・江沢民元国家主席派の大物を次々と刑務所や鬼籍へ送り込む“死闘”を繰り広げてきた。

 昨年10月の党中央委員会総会で、習氏は、トウ小平氏や江氏と並ぶ「核心」の地位を得たが、依然として「権力の掌握ができない」というジレンマを抱えている。習政権が掲げた夢は「中華民族の偉大なる復興」だが、習氏の夢は「江一派の無力化」であり、いまだ道半ばだからだ。

 習氏の不安・焦燥はそれだけではない。

 4月の米中首脳会談で、習氏は、北朝鮮の「核・ミサイル」対応をめぐり、トランプ氏から「100日間の猶予」を取り付けたが、7月中旬までに“宿題”をこなせなかった。北朝鮮と直結するのは江一派であり、習氏は北朝鮮に何ら力を持たないのだ。

 北朝鮮は5月、「中国が中朝関係を害している」と初めて名指しで批判した。これは建国以来の「兄弟国」中国に対してではなく、習氏や習一派への罵倒と読み取るべきだ。正恩氏は強硬姿勢を崩さず、ミサイル発射を繰り返している。こうしたなか、プーチン氏の存在感が際立っている。

 中国共産党最高指導部「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)のうち、4月に、江一派の張徳江・全人代常務委員(序列3位)と、張高麗副首相(同7位)が訪露し、プーチン氏と会談した。

 習氏(同1位)も7月、2泊3日でモスクワ入りし、プーチン氏と複数回会談した。これほど短期間に「プーチン詣で」が続いた背景は、北朝鮮問題である。

 北朝鮮の金王朝は1961年、旧ソ連と軍事同盟の性格を持つ「ソ朝友好協力相互援助条約」を締結するなど、古くから特別な関係にあった。プーチン氏は大統領就任直後の2000年、ロシアの最高指導者として初めて平壌(ピョンヤン)を訪れ、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記から熱烈な歓迎を受けた。

 この2年前、北朝鮮は「人工衛星の打ち上げ」と称して、事実上の中距離弾道ミサイルを発射した。北朝鮮のミサイルは旧ソ連の技術が基盤とされる。

 プーチン氏の訪朝後、ロシア下院は「露朝友好善隣協力条約」を批准する。正日氏は2001年以降、公式・非公式で何度も訪露をするなど「プーチン氏との関係強化に邁進(まいしん)した。

 北朝鮮は一方、江一派の息がかかる瀋陽軍区(現北部戦区)ともつながってきた。瀋陽軍区は、米国や日本の最先端技術を盗み、金王朝と連携して「核・ミサイル開発」を進め、資源や武器、麻薬など北朝鮮利権を掌握したとされる。

 江一派と敵対する習氏としては、北朝鮮のミサイルの矛先が北京・中南海(中国共産党中枢)に向かないよう、プーチン氏との「特別な関係」に注目しながら、江一派の“無力化工作”に心血を注いでいる。

 習氏がモスクワ訪問中の7月4日、北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射した。訪露にあたり、習氏は「110億ドル(約1兆2170億円)規模の経済支援」という手土産を持参した。北朝鮮をコントロールできない苦境を物語っているようだ。

 これに対し、プーチン氏はロシア最高位の「聖アンドレイ勲章」を習氏に授与した。習氏を手下にしたつもりだろうか? ロシアはすでに、北朝鮮を抱き込んでいると考えられる。

 北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」は、北朝鮮北東部・羅津(ラジン)と、ロシア極東ウラジオストク間を定期運航している。真偽は定かでないが、プーチン氏が送り込んだ旧KGBの精鋭部隊が、正恩氏の警護や、北朝鮮人民軍の訓練にあたっているという情報もある。

 一連の危機で“漁夫の利”を得るのは、間違いなくプーチン氏である。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)など。

【私の論評】半島情勢を左右するロシアの動き(゚д゚)!

結局、今回の朝鮮半島情勢も、ロシアが漁夫の利を得るだけなのかもしれません。これは、第二次世界大戦における真の勝者は誰だったのかを考えることが、参考になります。

さて、戦争の勝敗は何によって決まるでしょうか。もちろん死傷者も重要です。領土や財産を奪ったか奪われたかも重要です。しかし、本質は「目的を達成したか」どうかです。

当時のソ連の、戦争目的は、まず東欧の赤化です。これには完璧に大成功しました。次の目的は、満州の獲得です。これも成功です。それどころか、北朝鮮まで手中に収めました。ちなみに、現在の中ロ関係は良いとはいえないですが、スターリンが存命中には、毛沢東は忠実な手下です。

米国は結局ほとんど何も得られませんでした。英国は、失うものばかりが多く、本当にソ連の一人勝ちです。

ウェデマイヤーレポートの日本語版のタイトルは『第二次大戦に勝者なし』との題名なのですが、内容は「第二次大戦の勝者はソ連だけだ」です。


そうして、今日ロシアを支配しているのは、徹底した『力の論理』です。自分より強い相手とはケンカをせず、また、自分より弱い相手の話は聞かないというものです。

日本からの投資などで、ロシア側の姿勢を軟化させ北方領土問題を一歩でも進めよう、などという声もあるようですが、話を進める気のない相手に交渉を持ち込んだところで、条件を吊り上げられるのがオチです。

そもそも、戦争で取られたものは戦争で取り返すしかない、というのが国際社会の常識です。力の裏づけもないまま、話し合いで返してもらおうなどと考えている時点で、日本は甘すぎます。これは、それこそ子どもの論理と謗られてもしかたありません。
 
これは、プーチンとメドヴェージェフの役回りを考えてもわかります。子分が大袈裟に騒ぎ立てたところへ、親分が『まあまあ』と薄ら笑いで入ってくるのは、弱肉強食のマフィア社会などでは常套手段です。にもかかわらず子どものままの日本は、プーチンの薄ら笑いを友好的なスマイルだと勘違いしてしまっています。要するに、マフィアの社交辞令を真に受けているわけです。

プーチンとメドベージェフ
そもそも、多くの日本人はロシアを知らなさすぎます。ウクライナの問題にしても、ロシアの歴史を知っていれば『またやってるよ』で終了です。『アメリカの影響力の低下』を論じる向きもありますが、そもそも、旧ソ連邦であるウクライナ、とくにクリミア半島に欧米が手出しできるわけがありません。メキシコにロシアが介入できないのと一緒です。

これは、世界の通史を知れば国際社会の定石が学べ、おのずと理解できることです。そうして、文明国として、日本が強くなるべき理由やその方法も理解できるはずです。

プーチン大統領にとって、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物です。元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。ウクライナを狙うのは、彼が旧ソ連を取り戻そうとする行為の一環なのです。

プーチンは故郷であるソ連邦の歴史をムダにしたくないし、ソ連の崩壊が敗北だったとは決して認めたくないのです。例えばプーチンは、ガスプロムという天然ガスの企業を使って、ロシア人から搾取を続けています。

かつてイギリスが東インド会社でやっていたような植民地化を自国で行っているわけです。この事実だけ見ても、彼がロシアの愛国者ではなく、ソ連への忠誠心が高いと見ていいです。

ソ連の愛国者プーチン
このやり口を理解しなければ、トランプ大統領もプーチンにしてやられるだけです。

日本では、半島情勢というと、米朝の二国間だけに注目しがちであるし、マスコミもこの側面ばかり報道します。

しかし、これらの背後にあるロシアの動きも注目しなければならないということです。

ロシアが対北朝鮮で融和政策を取る最大の理由は、北朝鮮の振る舞いに対し、アメリカやその同盟国と非常に異なった解釈をしているからです。長年ロシアは、北朝鮮とわずかに国境を接しているにも関わらず、金一族に対してアメリカよりはるかに楽観的な見方をしてきました。冷戦初期、北朝鮮とソ連は共産主義の価値観を共有していましたが、そうしたイデオロギー上の連帯感はとうの昔に消え去りました。

ロシアは金一族は奇妙だが、合理的だとも考えているようです。金正恩が核兵器を手にしたのは本当です。しかし、ロシアのアナリストは、北朝鮮が核兵器で先制攻撃すれば、アメリカによる核の報復を受けて金も北朝鮮も破滅することを、金は承知しているとみています。

冷戦時代に米ソに核兵器の使用を思いとどまらせた核抑止の論理が、北朝鮮の攻撃を回避するうえでも役に立つというのです。そのため多くのロシアのアナリストは、北朝鮮が国家の安全保障に自信をもてて、アメリカによる軍事攻撃を抑止できるという点で、北朝鮮の核開発は朝鮮半島情勢の安定化に役立つと主張しています。

ロシア政府が北朝鮮問題でアメリカと一線を画すのには、他にも理由があります。ロシアは中国と同じく、朝鮮半島が統一されて北朝鮮の政権がアメリカの同盟国に取って代わられる事態をまったく望んでいません。

ロシア政府は中国に同調し、米軍による韓国への最新鋭迎撃ミサイル「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」配備に強く反発しています。アメリカが東アジア地域に重点を置く限り、ロシアが今も最優先に掲げるソ連崩壊後の地域をめぐる争いにアメリカの目は行き届きにくいです。そのうえ、金が譲歩しないことでアメリカが怒りの矛先を向けるのは中国だから、ロシアがアメリカに同調しないでいることは簡単です。

実際ロシアの見方では、朝鮮半島を緊張させた責任は、北朝鮮だけでなく同じくらいアメリカにあります。そうした見方からすると、そもそも金一族がミサイルや核を開発するのは自己防衛のためだといいます。「北朝鮮は通常、自分から仕掛けるよりやられたらやり返すタイプだ」と、ロシアの外交政策分析の第一人者で政治学者のフョードル・ルキヤノフは述べました。

「北朝鮮は、強がるのは賢明でないことをイラクのサダム・フセイン元大統領やリビアのムアマル・カダフィ元大佐の末路から学んだ上で、ミサイルや核を開発している。ミサイルや核の存在が、他国による介入の代償を許容できないほど押し上げている」。ロシアのアナリストの多くは、アメリカが北朝鮮を体制転換させると言って脅しさえしなければ、そもそも北は核兵器開発の必要性を感じなかっただろうと主張しています。

悲惨な末路を遂げたサダム・フセイン(左)とカダフィ(右)
アメリカは北朝鮮に対して核開発をやめるよう圧力をかける意思も能力もない中国に苛立ち、新たな選択肢を模索しています。アメリカとしては、このまま北朝鮮に米本土を射程に収めるミサイルの開発や実験を続けさせる事態は避けたいです。

トランプが今年1月、北朝鮮が核弾頭を搭載したICBMで米本土を攻撃する能力を持つ可能性はないと約束した手前もあります。米軍が北朝鮮の核関連施設を攻撃すれば、韓国や日本を巻き込む大規模な戦争に発展する危険性があります。

もしアメリカが北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるなど、北朝鮮政策を穏健なものにしていたら、ロシアも他国と足並みを揃え、北朝鮮に核・ミサイルの開発や実験をやめさせるよう圧力をかけたかもしれません。しかしアメリカが北朝鮮への軍事攻撃や体制転覆を選択肢として残している限り、ロシアは金正恩だけでなくトランプにも責任を負わせ続けるでしょう。

米国としては、中途半端はもうするべきではないのです。道は2つしかありません。北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるか、北朝鮮を攻撃し核の脅威を取り除きいずれ、北朝鮮に民主的な政権を根付けるかです。

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2017年4月7日金曜日

米中会談、習氏土下座懇願 権力闘争も臨戦態勢 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】米による北の外科手術と正恩斬首を黙認する習近平?

米中会談、習氏土下座懇願 権力闘争も臨戦態勢 河添恵子氏緊急リポート

習近平
 ドナルド・トランプ大統領と、中国の習近平国家主席による米中首脳会談が6、7日、米フロリダ州パームビーチで開かれる。最大の焦点は、弾道ミサイルの発射に続き、「6回目の核実験」をチラつかせる、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮への対応だ。中国の動向が注目されるが、何と、正恩氏の強硬姿勢の裏には、中国共産党最高指導部の暗闘が潜んでいるという。「北朝鮮崩壊」を見据えた、安倍晋三首相とトランプ氏の日米首脳電話会談。習氏は、トランプ氏の「斬首作戦」「限定空爆」を黙認することで、「命乞い」するのか。ノンフィクション作家、河添恵子氏による衝撃の緊急リポート。

 結論から言えば、習氏には、正恩氏の軍事的暴発を阻止する力はない。

 なぜなら、金王朝(北朝鮮)との関係は、現在の「チャイナセブン」(=中国共産党最高指導部、中央政治局常務委員7人)の序列3位で、「朝鮮エキスパート」である張徳江・全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員長ら、江沢民派が掌握しているからだ。

張徳江・全国人民代表大会常務委員長
 江沢民派は別名「上海閥」と呼ばれる。だが、中華人民共和国の建国(1949年)から間もないころの江氏のキャリアは、北朝鮮に隣接する中国北東部・吉林省(省都・長春市)にある。

 江氏は50年代、長春第一汽車製造廠(自動車製造工場)に勤務し、モスクワのスターリン自動車工場で研修を受けた。江氏は昇格していく段階で、前出の張氏をドンとする「吉林バン」(ジーリンバン)を形成する。吉林省の幹部を、次々と高級幹部候補に抜擢(ばってき)していったのだ。

 張氏は中国・延辺大学朝鮮語学部で学び、北朝鮮・金日成総合大学経済学部に留学しており、朝鮮語が巧みだ。

 そして、江氏が国家主席就任翌年の1990年3月、初の外遊先は「兄弟国」の北朝鮮だった。金正日(キム・ジョンイル)総書記と会談した際に、張氏が通訳を務めた。正日氏が2006年1月に中国・広東州大学街を視察した際も、当時、広東省委員会書記だった張氏が随行し、江氏は同伴している。

 中朝友好協力相互援助条約の締結50周年を記念して、11年7月、中国から中朝友好協会や中国人民対外友好協会などが訪朝し、正日氏と後継者の正恩氏と面会した。このときも、親善代表団を引率したのは副首相だった張氏である。

江沢民(左)と金正日(右)
 金王朝との2代にわたる緊密な関係を築き、「金(正日)の中国の代理人」の異名まで持っていた張氏は、現政権で序列3位にまで昇格した。

 習政権は「(南北)朝鮮半島の植民地化」を目指して船出した。ただ、習氏は相性が悪い北朝鮮との関係を半ば放棄するかたちで、朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時、現容疑者)率いる韓国の属国化に動いた。2015年9月、北京の天安門広場で行われた「抗日戦勝70年」の記念式典と軍事パレードで、朴氏は“異例の厚遇”を受けた。しかし、朴氏は昨年7月、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を決めた。つまり、習氏が主導した朝鮮半島工作は失敗したのだ。

 それだけではない。張氏は一昨年6月、韓国大統領選(5月9日投開票)の世論調査でトップを走る、最大野党「共に民主党」の公認候補、文在寅(ムン・ジェイン)前代表とも面談している。文氏は「親北・反日」で知られる人物だ。

 もう1つ注目すべきは、中国人民解放軍の再編である。

 中国は昨年2月、7大軍区から5大戦区に再編された。だが、習氏の「5大戦区すべてを北京で管轄したい」という思惑はかなわなかった。

 逆に、正日氏が生前、何度も訪れている張氏のテリトリー、中国北東部を管轄する旧瀋陽軍区は「北部戦区」となって拡大増強したのだ。

 中国国内外の軍事専門家の間では「瀋陽軍区が正恩体制を支援している」「中国の核開発拠点は成都軍区だが、瀋陽軍区が北朝鮮とともに核開発を進めていた」「食糧もエネルギーも瀋陽軍区や遼寧省の国境町、丹東市周辺の軍産企業から北朝鮮へ流れている」というのが一致した見解だ。

 習一派はここ数年、李克強首相ら共産主義青年団派(共青団派)とも結託しながら、朝鮮半島につながる江沢民派の企業摘発と責任者逮捕、東北3省の幹部の首のすげ替えなどに邁進(まいしん)してきた。その結果、中国は現在、想像を絶する事態に直面している。

 北朝鮮の弾道ミサイルは、米国や日本だけでなく、習氏がいる北京も射程に入れている。中南海(=中国政府や中国共産党の本部がある北京の中心部)への核・ミサイル攻撃や、金正男(キム・ジョンナム)氏暗殺事件と同じ、猛毒の神経ガスVXなどの生物化学兵器攻撃の危険性が高まっているのだ。

 中国一党独裁政権-。この表看板はメッキのごとく剥げ落ちた。北朝鮮の強硬姿勢の「核・ミサイル恫喝」の陰で、「習一派と江沢民派との権力闘争」は、朝鮮半島の38度線にも匹敵する臨戦態勢といえる。

とすれば、習氏は米国へ密かに「命乞い」するしかない。

河添恵子(かわそえ・けいこ)

【私の論評】米による北の外科手術と正恩斬首を黙認する習近平?

北朝鮮が今月5日強行した弾道ミサイルの発射の内容

北朝鮮が5日強行した弾道ミサイルの発射は、米中首脳会談に衝撃を与えました。北朝鮮「単独解決」に傾いている米国と、中国のメンツを省みない北朝鮮の強硬姿勢の間で、習近平国家主席は窮地に立たされ会談に臨みました。

両者は約1時間、双方の夫人と通訳のみで会談した後、夕食会を開きましたた。米政府関係者によると、会談でトランプ氏は習氏に対し、北朝鮮の対外貿易の約9割を占める中国に対し、圧力を強めるよう要求。中国が協力しない場合は、米政府が独自に北朝鮮と取引がある中国企業を制裁対象に加える新たな政策を検討していることを伝えたといいます。

トランプ氏は夕食会の冒頭、習氏のそばで「我々はすでに長く話し合ってきているが、私はまだ何も得ていない。全く何もだ」と強調。トランプ氏の要請に対し、習氏が同調しなかったことにいらだちを見せました。

そうして、米軍のシリアへのミサイル攻撃が、米中首脳の夕食会とほぼ同時に行われたことで、習近平国家主席は、トランプ大統領との会談議題である北朝鮮の核・ミサイル開発阻止をめぐっても、同様の結末が中朝国境を流れる鴨緑江の対岸で現実に起き得ることを認識せざるを得なくなりました。

米軍によるシリアへのミサイル攻撃
一方、中国国営新華社通信によると、習氏はこうした双方の意見が異なる敏感な問題について「適切に処理し、建設的に管理しなければならない」とかわしました。さらに米側が批判を強めている対中貿易赤字を意識し、「両国間で貿易や投資をさらに進め、インフラやエネルギー分野での協力を推進する」と訴えました。トランプ氏に年内の訪中を提案し、快諾を得たといいます。

また、新華社によると、習氏は「良好な中米関係は両国民だけでなく、世界に利益となる。関係を良くするには千の理由があるが、悪くする理由は一つもない」と述べ、まずは両国の関係改善という大きな方向性で一致を目指していく方針を強調しました。

一方トランプ米大統領は6日米中首脳会談に先立ち、米中会談のため滞在先の南部フロリダ州パームビーチで記者団に対し、アサド政権軍の飛行場への軍事攻撃を命じたと述べた上で、「化学兵器の拡散と使用を阻止し抑止することは、米国の安全保障にとり死活的に重要だ」と強調しました。

トランプ氏はまた、「アサド大統領の態度を変えさせようとする過去の試みは全て失敗し、そのせいで地域の不安定化が進んだ」と指摘。その上で国際社会に対し、「シリアでの流血を終わらせ、あらゆる形のテロを終結に導こう」と呼びかけました。

NBCテレビによると、米軍の攻撃では、シリア中部ホムスにある空軍基地が標的となりました。この基地は、化学兵器による空爆で使われたとみられています。


米国はシリアでイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を展開しているが、アサド政権を対象にした直接攻撃は初めてです。

トランプ氏は6日、ティラーソン国務長官、マティス国防長官らと対抗措置を協議。米艦船から巡航ミサイルを発射し、レーダー施設などアサド政権軍の防空システムを破壊する案が検討されていたといいます。

米軍の攻撃に先立ち、ティラーソン氏は6日、ロシアに対してアサド政権への支援を見直すよう要求し、トランプ政権として対抗措置の検討に入ったと明らかにしていました。CNNテレビによると、米政府はロシア側に攻撃を事前に通告していたそうです。

それにしても、和やかな宴席が衝撃の舞台に急転した例は、中国の史書に多く登場しています。明の永楽帝が帝位を奪取したクーデターも朝廷の役人と宴会中に突然、役人を斬殺したことが始まりでした。

米中首脳の夕食会は予定通り終了したのですが、習氏の心中はどうだったのでしょうか。北朝鮮の弾道ミサイルが北京なども射程に収め、朝鮮労働党指導部が中国に反感を抱く現状は、中国の安全保障を脅かすレベルです。

会談を前に、中国の対米安保専門家の間では、米国の「外科手術」との言葉が頻繁(ひんぱん)に交わされ始めていました。中朝国境付近に多い北朝鮮の核・ミサイル関連施設に対して、米軍が精密誘導兵器によるピンポイント爆撃を加える可能性が「現実味を帯びた」との認識です。

中国は「朝鮮半島の非核化」を掲げつつも、緩衝地帯として北朝鮮を存続させる必要から、労働党政権を追い詰めきませんでした。

米中間では、2013年6月に行われた習氏とオバマ前大統領の初会談でも北の核開発阻止を「米中の共通目標」と表明していました。今まさに4年後の現実が習氏の眼前に突きつけられています。

ところが、王毅・中国外相は、北の大量破壊兵器開発と米韓軍事演習を同列において「同時停止」を提案するなど、なおも“内科治療”での対話解決をめざしています。

中国側は「核問題の主要当事者は米朝だ」(王氏)という逃げ腰で首脳会談に臨みましたが、逆に米朝の強硬姿勢の板挟みで会談を迎える事態となりました。

王毅・中国外相
そうして、北朝鮮による会談直前を狙ったミサイル発射で、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備をめぐる中国の反発は、さらに説得力を失った形になりました。

外交筋は「この状況認識が準備不足の中で対米会談に応じた主な理由だ」と指摘しています。ただ、中国が北朝鮮への米軍攻撃を認めれば、同国を緩衝地帯としてきた朝鮮戦争以来の安保指針が揺らぐことになります。

訪米に先立ち、習氏は「主権や領土、核心的利益の相互尊重」を表明。訪米を前に強硬手段への難色を米側に示唆した形となっていました。北朝鮮問題で、会談では米の強硬策と中国の実効的な制裁をめぐる米中の駆け引きが見込まれます。

米のシリア攻撃という「宴席の衝撃」は、さらに習近平を追い詰めた可能性があります。習近平は、北朝鮮問題で米国と一定の合意が形成されたとしても、張徳江のような強いパイプを持っているわけではないので、北朝鮮の暴走を止めることはできません。

その状況で、江沢民派との権力闘争を勝利に導かなければなりません。中国共産党大会を控え、習氏は米への弱腰を国内には見せられません。もともと強硬論の強い軍部も対米硬化を深めることは確実であり、中国の軍拡はさらに強まることも懸念されます。

そうして、ブログ冒頭の中国通の河添恵子氏の記事に"北朝鮮の強硬姿勢の「核・ミサイル恫喝」の陰で、「習一派と江沢民派との権力闘争」は、朝鮮半島の38度線にも匹敵する臨戦態勢といえる。とすれば、習氏は米国へ密かに「命乞い」するしかない"とあります。

これだけ、権力闘争が激烈になれば、習近平としては、北朝鮮という江沢民派と強く結びついた、不安要素を一つでも減らしたいと望んでいるかもしれません。

それに関するヒントになるような記事を昨年台湾メディアが報じています。台湾中国時報は昨年9月18日、外交関係者と学者の言葉を引用し、「すでに中国政府は北朝鮮が崩壊しないという前提のもと『金正恩(キム・ジョンウン)除去』策略を完成し、該当計画には米国が北朝鮮の核兵器施設に対する『外科手術式』打撃と金正恩委員長を除去する『斬首作戦』を黙認するという内容も含まれている」と報じました。

中国外交消息筋は「米国のオバマ政権は今年初めに北朝鮮核施設打撃計画を出したが、中国の反対で確定できなかった」とし「しかし北朝鮮が9日、豊渓里(プンゲリ)核実験場で5回目の核実験を敢行し、実戦配備を控えて中国の立場が変わった」と説明しました。

今回の会談では、この中国政府=習近平の米国による外科手術と、斬首作戦の黙認が、習近平に確認されることになるかもしれません。ただし、これは、直接表に出ることはないかもしれません。

これによって、北朝鮮には江沢民派に近い、金正恩に変わって、習近平に近い指導者が生まれるかもしれません。そうなると、習近平が北朝鮮を御しやすくなります。そうなると、権力闘争で習近平に有利な状況が展開されることも予想されます。

米国による外科手術と斬首作戦は、トランプ大統領と習近平の双方にとって、利益をもたらすことになりそうです。

トランプ大統領にとっても、まずは北朝鮮問題を解決して、今度は南シナ海問題を解消しようとしていると考えられます。

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北朝鮮「テロ支援国家」再指定なら金正恩氏の「破れかぶれ」が加速する―【私の論評】北が日本に報復の場合、野党はそれを政治利用する?



2017年2月20日月曜日

正男氏毒殺…支那「政変」引き金 カード失った習氏激怒 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】正男氏殺害は、支那の火薬庫旧満州に油を注ぐか?

正男氏毒殺…支那「政変」引き金 カード失った習氏激怒 河添恵子氏緊急リポート 

習近平
 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏がマレーシアで殺害された事件は、女性2人と男性1人が逮捕された。犯行に致死性の高いVXガスが使用された可能性が浮上し、事件の背景に注目が集まっている。こうしたなか、正男氏を擁護してきた習近平国家主席率いる支那は不気味な沈黙を続けている。貴重なカードを奪われ、大打撃を受けた習氏が激怒しているとの情報と、背後にある共産党最高指導部内の激烈な権力闘争とは。ノンフィクション作家、河添恵子氏による緊急リポート。

 正男氏がとうとう暗殺された。反共産党系メディアなどによると、古くは2004年、正男氏がオーストリア訪問中に暗殺の危機にひんしたが、現地の情報機関が事前に察知して未遂に終わったという。10年には、支那で交通事故を偽装してひき殺す計画があり、12年には北京で北朝鮮工作員とみられる者に襲われたが、支那当局が防いだとされる。

 このように、金王朝の第2代最高指導者、金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男、正男氏の暗殺計画は十数年前から蠢(うごめ)いてきた。背景には、支那政府が抱き続ける野望と、熾烈化する権力闘争が見え隠れする。

 支那にとって、北朝鮮は建国以来「兄弟国」の位置付けにある。

 江沢民元国家主席が党総書記に就任した翌年の1990年3月、初めての外遊先は北朝鮮だった。その時、現在は全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員長の張徳江氏が通訳として同行している。


 胡錦濤前国家主席も就任翌年の2004年に正日氏と会談し、「中朝友好協力関係を高める」ことで一致。習氏も08年3月、国家副主席に就任して初めて訪問した外国が北朝鮮だった。

 そして、習政権が発足(12年に党総書記、13年に国家主席選出)して以来、“朝鮮半島の植民地化”への工作を強めてきた。

 それは現在の「チャイナセブン」(=支那共産党の最高指導部、中央政治局常務委員7人)の布陣からも明らかだ。

 習氏、李克強首相に続く序列3位は、前出の張氏だが、北朝鮮の金日成総合大学経済学部で2年間の留学経験があり、支那東北3省に多い朝鮮族を含む、“朝鮮半島のエキスパート”である。序列5位の劉雲山政治局常務委員と、序列7位の張高麗筆頭副首相を合わせた3人が、「北朝鮮との関係が密接」な江沢民派なのだ。


 歴代の支那政府が「兄弟国」の金王朝に配慮してきた目的は、属国化することにある。

 そのため、支那の改革開放政策を支持する正男氏を、正日氏の後継者候補と見据えて、義理の叔父、張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長を後見人とする体制の実現を目指してきた。

 ところが、金王朝の3代目に指名されたのは3男の正恩氏だった。「支那に近づきすぎた」張氏は13年12月、無残な最期を遂げる。支那政府は以来、正男氏の身辺警護をより強化してきた。

 チャイナセブン内で近年、金王朝をめぐる対立が激しくなっている。

 正恩氏のカウンターパートは劉氏だが、習一派は劉氏を含む江沢民派を完全に敵視していた。そのうえで、習氏は、オバマ米政権時代からの密約とされる「北朝鮮の核開発無力化」へ舵を切った。この1年、北朝鮮の核開発を支援する支那企業の摘発と責任者の逮捕、東北3省の幹部の首のすげ替えなどに邁進(まいしん)してきた。

 習氏は、正男氏の“出番”をひそかに伺っていたのだ。

 1月に就任したドナルド・トランプ米大統領は13日、北朝鮮が日米首脳会談に合わせて弾道ミサイルを発射したことを受け、「北朝鮮に非常に強力に対応する」と極めて強い口調で断言した。

 こうしたなか、習一派らに江沢民派が一掃されれば、正恩体制そのものが危うくなる。

 だとすれば、正恩氏にとって最大の不安要因である正男氏を、是が非でも抹殺するしかない。正恩体制を支持する江沢民派も生き残りと利権確保のため、正男氏の暗殺を許容した可能性もゼロではない。

 支那共産党最高指導部内のすさまじい権力闘争と、支那の影響力が強いマレーシアでの暗殺劇。カードを失った習氏は激怒しているとみられる。支那政府と公式メディアの不気味な沈黙は、次の一手に向けた情報収集と、策を練っている可能性がある。

 いずれにしても、正男氏が支那の野望の中で擁護され、その揚げ句、犠牲となったことは確かである。

河添恵子氏
【私の論評】正男氏殺害は、支那の火薬庫旧満州に油を注ぐか?

北朝鮮と、支那との関係でまず注目しなければならないのは、現在の支那の東北部、かつての満州国と呼ばれた地域と、北朝鮮の関係です。

特に、支那東北部では、現在急速な少子高齢化で疲弊しているということに注目すべきです。これについては、以前もこのブログにとりあげたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国東北部 急速な少子高齢化で「火薬庫」になる可能性―【私の論評】満州再独立の条件が揃った!後は、瀋陽軍区の出方次第(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただものとして、以下に朝鮮半島と、旧満州 (遼寧省、黒竜江省、吉林省)の位置関係を示す地図と、この記事からの引用を掲載します。

現在の支那経済が直面する問題の一つが、無軌道に拡大された設備投資に反し、国内外の需要が急速に弱まったことを背景にした生産過剰であることは言うまでもない。その中心が炭坑と鉄鋼であり、ともに中心は東北三省にある。
すでに賃金の遅配などの問題が起きていることは、国内メディアの報道でも明らかになっているが、現地ではもはやそれどころでない問題が持ち上がってきているようなのだ。 
その実態を明らかにしたのが2016年10月25日に放送された瀋陽テレビの報道番組である。 
タイトルは、〈東北部で人口危機が逼迫 出生率は低下 人口流出が深刻化〉だ。 
記事によれば東北部は元々出生率が低く、1982年の統計では遼寧省、吉林省、黒竜江省はそれぞれ1.773、1.842、2.062でいずれも全国平均の2.584に及ばなかった。それがいま、2010年の調査で3省の平均値が0.75まで落ちてしまったというから深刻である。 
10月19日、中国国家衛生委員会が公表した「中国流動人口発展報告2016」によれば2006から2015年に至る東北部の年平均人口増加率は、わずかに0.21%で全国平均の0.5%にはるかに及ばなかった。 
同時に進行した高齢化は深刻で、2015年の東北部の人口の年齢の中間値は43歳で、これは全国平均の38歳よりも5歳高く、全国の高齢化予測では2027年に相当する水準であるという。 
こうした人口の減少と高齢化は、当然のことながら中国がいま進めている養老保険(年金)の整備に大きなマイナスの効果を与えている。国家開発銀行の元副行長の劉国によれば東北部の年金の負担率(年金を支払う労働者と年金受給者の比率)は、1.55であり、これも全国平均の2.88にはるかに及んでいない。 
これは「火薬庫」としての東北部の火種が将来的にもなかなか消えない可能性を示唆している。
中朝の分岐点――中朝国境友誼橋
このようなことから、詳細はこの記事をご覧いただくものとして、私は、旧満州地域と北朝鮮が結びつき、旧満州が支那から離脱する可能性もあり得ることをこの記事で主張しました。

そもそも、支那東北部(旧満州にあたる部分)の経済成長が滞っているのは、海に抜ける東側を北朝鮮に遮られているからだという不満が以前から支那特に旧満州には渦巻いていました。民間貿易は国境付近だけで、それも制限されれば庶民は南下し東北部はさらにさびれることになるだけです。

◆東北部の経済の全国比と衰退する理由
2015年上半期における中国東北三省のGDP成長率は「吉林省6.1%」、「黒竜江省5.1%」、「遼寧省2.6%」と全国ランキングからいくとそれぞれ最後から1番目、2番目、3番目という、非常に不名誉なものでした。全国平均7%をひとり引き下げているのは東北三省であると中国人は嘆いています。

2015年上半期における東北三省の財政収入変動に関しても、前年度同期の変動が全国平均6.6%増に対して、
遼寧省  : -22.7% 
黒竜江省 : -19% 
吉林省  : +0.9%
と、軒並みに異常なほど低いです。

個人の平均年収も、全国平均が49,969元であるのに対し
東部地域:64,239元 
西部地域:51,204元 
中部地域:46,828元 
東北地域:46,512元
と低いです。失業率も全国平均より2%高く、結果、東北の労働人口は北京、天津、河北省や山東省へと流れていき、東北部の過疎化とともに少子高齢化が極端に進んでいます。

その原因としては、もともと石炭などの資源地域であったことと、それに伴う重工業が盛んで、改革開放前の「国営企業」の占有率が高かったため、資源の枯渇とともに改革開放を伸びやかに発展させていけないことなどがあります。

それ以上に決定的なのが、北朝鮮の存在なのです。

◆改革開放を阻む北朝鮮の「鎖国」

東北部の経済発展が改革開放に見合って伸びていかないのは、ひとえに岩盤のように立ちはだかっている北朝鮮が鎖国しているからだと、支那庶民の北朝鮮への恨みは大きいです。

もし北朝鮮が改革開放を推進して、南の「深セン」のような役割を果たしてくれれば、東北経済は日中韓貿易の拠点になり、東北地方は一気に大きな経済成長を遂げるだろうと、中国の多くのメディアが北朝鮮への不満をぶちまけています。

金正恩の父親・金正日は、晩年、中国の呼びかけに応じて改革開放に乗り出そうとしたのですが、金正恩になってからは閉ざす方向にしか動いていません。

かつてこの地が満州国だったときには、現在の北朝鮮はもとより、現在の韓国も日本領であり、満州国が発展する可能性は多いにありました。やはり、支那の満州が発展するためには、朝鮮半島を支那の属国にすることが一番なのです。

中国政府寄りの香港メディア「鳳凰網」には、「中国はアメリカより先に絶対に(北)朝鮮をやっつければならない」とするブログを載せています(作者:余以為)。

そこには以下のような激しい言葉が連ねてあります。
 北朝鮮は東北アジアの中心にあり、日韓が海路を通して支那や世界と交易をできる場所にありながら、支那の東北部は北朝鮮のために、まるで「内陸」のような位置づけになっている。これこそが、東北部に経済不振をもたらしている最大の原因であり、労働人口が(南に)流出する最大の原因だ。北朝鮮問題を解決しない限り、支那がどんなに「東北振興」戦略に金を注いだところで無駄になるだけだ。 
 改革開放以来、支那経済が「南強北弱」となっているのは、北朝鮮が鎖国を続けているからに他ならない。そこでブロックされてしまっている。 
 ソ連崩壊後、ベトナムは中国を「兄貴分」と思っているが、北朝鮮は中国を兄貴分とは思っていない。核武器を発展させて、「アメリカの弟分になろうとしている」のだ! 
 アメリカが北朝鮮をやっつけて「弟分」にさせてしまう前に、中国が一刻も早く北朝鮮をやっつけて、中朝市場の一体化を推進しなければならない。そうすれば韓国だって喜ぶし、東北一帯は朝鮮半島を一体化して一気に経済発展を遂げるだろう。 
 日本が東北部に「満州国」を樹立していたとき、実は東北部の経済は発展し、日本本国の経済成長をも上回っていた。その理由は決して日本人が優秀だったからではなく、「日韓満」という三つの地域の市場が統一されて相乗効果を上げていたからだ。北朝鮮の鎖国が、がいかに東北経済発展を阻害する岸壁となっているかが分かるだろう。 
 だから、アメリカに持っていかれる前に、どんなことがあっても中国は先に北朝鮮の金王朝をやっつけなければならない。(1979年に中越戦争を起こした)トウ小平の勇気に学べ! アメリカが北朝鮮と戦うか否かに関係なく、今こそ北朝鮮(金王朝)をやっつけるチャンスだ。この機を逃すな!
これほどまでに激しい声が支那人民特にその中でも満州族の中にはあるのです。人民だけではありません。中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」も黙っていません。

◆朝鮮半島で戦争が起きても「抗美援朝」の再演はもうない

「抗美援朝」とは、朝鮮戦争時代に中国が中国人民志願軍を結成して北朝鮮に派兵したときの、「アメリカに抵抗し北朝鮮を支援しよう」という意味のスローガンです。

環球時報は「朝鮮半島で戦争が起きても“抗美援朝”は再演されない」という労木氏の評論を載せている(2016年2月17日)。それが数多くのウェブサイトに転載されています。

労木氏は、おおむね以下のようなことを書いています。
1.北朝鮮の行動は、アメリカが2020年までに兵力の60%をアジア太平洋に配備するという計画を助長し、その時期を早めている。北朝鮮の挙動は支那を威嚇することはあっても、アメリカには利益をもたらしているだけだ。 
2.北朝鮮が支那国境付近に核施設を設置しているのは、実は下心がある。北朝鮮の核施設の性能は低いので核漏洩(放射能汚染)の危険性が大きい。支那東北部には大きな脅威となる。それもあって支那は北朝鮮の非核化を必死になって叫んでいるのだが、北はどうしても言うことを聞かない。もし核開発を続けるというのなら、各施設を平壌付近に移動させてくれ。支那はもうこれ以上、すぐ隣に核の谷を作るような北の核政策を容認することはできない。 
3.中韓関係の離間工作に関して米朝は「同床異夢」ならぬ「異床同夢」を見ているのだ。目的は同じで、手段が違うだけ。アメリカは遥か遠くにいて自分は放射能汚染の危害に合わないので、平気で北朝鮮をけし掛けている。犠牲になるのは支那なのだ。 
4.民意調査を見てみろ。どれだけ多くの人民が北朝鮮を嫌っているか。北朝鮮よ、支那の安全を脅かすのはいい加減にしてくれ。もし朝鮮半島で戦争が起きても、二度と再び「抗美援朝」が再演されるとは思うな。
おおむね、以上のような論評だ。環球時報が載せたということは、支那共産党がそう考えているという何よりの証拠です。これが支那政府の本音でしょう。

事実、ネットでは96%のユーザーが北朝鮮を嫌っているというデータもあります。

支那は安保理による北朝鮮制裁決議に賛同の意を表しているのですが、北朝鮮との間の支朝国境貿易が制限あるいは完全に遮断されたときに何が起き得るのかを、これらの評論は示唆しているように思われます。

中国商務省は18日、北朝鮮からの石炭輸入を全面的に停止するとの通達をウェブサイト上で発表しました。北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁を強化する狙いがあります。

輸入禁止措置は19日から今年いっぱいとなります。北朝鮮は12日に弾道ミサイルの発射実験を行こないました。

支那は昨年4月、国連の制裁を受けて北朝鮮からの石炭輸入を停止する方針を示したのですが、核やミサイル開発に関係せず人道上不可欠な場合は除くとしていました。

米国務省の報道官は「全ての国が北朝鮮に関する決議を完全で透明な形で実行する必要がある」と強調。「北朝鮮が核開発に関する真剣な協議に復帰するように、同国の最大の貿易相手国である支那に引き続き影響力を行使するよう求めていく」としました。

今回の金正男氏の殺害によって、「火薬庫」としての支那東北部の火種が将来的にもなかなか消えない可能性が高まったと思います。なぜなら、支那としては、北朝鮮属国化としての切り札を一つ失ったことになるからです。

雪中訓練をする人民解放軍瀋陽軍区の将兵
現在支那経済はかなり減速しています。そうなると、旧満州はますます苦しい状況に追い込まれるわけで、この火薬庫を除去するために、習近平は何らかの対応を迫られることになることでしょう。

さて今回は、支那東北地方を管轄する、人民解放軍「瀋陽軍区」と北朝鮮との関係については、掲載しませんでした。

「瀋陽軍区」は、反習近平派の拠点ともなっており、これが北と通じてクーデターを計画しているという噂もあります。これについては、いずれまた、レポートするつもりです。

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2014年6月14日土曜日

【妄想暴走中国】“言うだけ”オバマ大統領に乗じ沖縄本土強奪を画策する中国―【私の論評】日本の国益を守る立場ではなく、戦勝国の戦後体制を守る立場からみても、中国の暴挙は許せないはずなのに・・・・・・(゚д゚)!

 
河添恵子さん
★(5)

「米国による日本への琉球返還(沖縄返還、1972年5月)は国際法的には根拠はない。日米2カ国間の授受であり、中国は承認しない」「明治政府が中国から琉球を強奪した」

中国共産党系メディアで最近、沖縄の領有に関する挑発的な論文が散見される。

李克強首相が昨年5月に訪独した際は、ブランデンブルク州にあるポツダム会談の会場跡地を見学し、「日本がポツダム宣言を受け入れ、無条件降伏したことを人々は忘れない」「ポツダム宣言第8条は、カイロ宣言の条項を履行すべきことを明確に指摘している。カイロ宣言は、日本が中国から盗み取った領土を中国に返還するよう規定している」などと発言している。

いつもの情報戦のほか、習近平政権はさまざまな手段を駆使しつつ、欧米戦勝国が第2次世界大戦後に決めた世界地図やルールをリセットさせ、自国に都合のいい“オレ様流”に塗り替えていこうと必死だ。

那覇市の首里城公。中国は沖縄全体の強奪を狙っている

そのため、中国政府が近年、とりわけ関係強化に腐心してきた国がロシア、そして、ドイツである。中国はEU(欧州連合)の原動力であるドイツ経済との緊密化、ロシアとの同盟関係の強化が、米国と日米同盟の牽制につながり、欧州を黙らせ、中国の立場を有利にすると考えている。


ウクライナ騒乱後、ロシアはウクライナ南部にあるクリミア半島を軍事的に制圧し、ロシア連邦に編入した…。冷戦終結後の秩序破壊が進むなか、習国家主席率いる中国は、欧州パワーの低下を見極め、オバマ大統領を“言うだけ番長”とせせら笑い、「地図や歴史の塗り替えには千載一遇のチャンス」と捉えているはずだ。



南シナ海や東シナ海で暴れてみせる中国は、台湾併合だけでなく、沖縄県・尖閣諸島を実効支配する機会をうかがい、沖縄本土の強奪まで視野に入れ始めている。しかし、「反米」「反基地」が売りの地元紙『沖縄タイムス』『琉球新報』は、中国の脅威をまともに報じようとしない。沖縄本土や尖閣諸島の歴史や領有権についても、政府見解と異なる、読者の混乱を招く内容ばかりを掲載している。



■河添恵子(かわそえ・けいこ) 

この記事は、要約記事です。詳細は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】日本の国益を守る立場ではなく、戦勝国の戦後体制を守る立場からみても、中国の暴挙は許せないはずなのに・・・・・・(゚д゚)!

上の記事の河添さんの、「いつもの情報戦のほか、習近平政権はさまざまな手段を駆使しつつ、欧米戦勝国が第2次世界大戦後に決めた世界地図やルールをリセットさせ、自国に都合のいい“オレ様流”に塗り替えていこうと必死だ」という見解は、正しいです。

もともと、韓国や中国は第二次世界大戦後に、いわゆる戦勝国から第三国と呼ばれていました。この当時、第二次世界大戦の戦勝国は、戦争に参加した国、戦争が行われた国々などを分類する基準として以下を設定していました。
第一国、第二次世界大戦に参戦して勝利した国。 
第二国、第二次世界大戦に参戦して敗北した国。 
第三国,第二次世界大戦に参加しなかった当事国以外の国。戦争問題などに直接関係のない国。
中国人や、韓国人、朝鮮人などを第三国人と呼ぶと、差別用語のように考えている人もいますが、そんなことはありません。もともと、戦勝した連合国の分類用語にすぎません。

第二次世界大戦後直後においては、中華人民共和国はまだ成立していなかったことと、朝鮮半島は大戦中は日本に属していたことから、中国と南北朝鮮は、第三国と呼ばれていました。

中国に関しては、終戦直後には蒋介石率いる中華民国が中国であるという認識もありました。トルーマン大統領の時期には、新しく成立した中華人民共和国に対してアメリカは台湾防衛方針を明示、朝鮮戦争で米中対立は決定的になりました。

それでしばらくの間は国連の中国体表は中華民国(台湾)のままになってたのですが、米中和解に外交を転換したニクソン大統領の時期に、中華民国(台湾)から、中華人民共和国の方に、国連代表権と共に常任理事国も移りました。

第三国は、本来第二次世界大戦の当事国ではないわけです。だから、本来は、中国の領土は蒋介石の中華民国が主張していた中国領が戦勝国によってつくられた戦後体制の中での正しい版図となるはずです。

その中には、チベット、ウイグルなどは含まれていないのは当然のこととして、ましてや現在の東シナ海の尖閣列島や、南シナ海の島々など含まれているはずはないのです。

第二次世界大戦の戦勝国である戦勝国のための戦後体制の枠組みからしても、現在中国が行っている海洋進出など、相容れないものであるし、本来は中華人民共和国が戦勝国の機関である、国連の安全保障理事会の常任理事国になっていること自体も奇異なことです。

そうはいいながら、いまさら中華民国(台湾)が、中華人民共和国に成り代わるということも不可能ですから、常任理事国入りは認めたにしても(管理人注釈:本当は認めないほうが戦勝国にとっては良かった)、中国の版図としては、第二次世界大戦直後に中華民国が主張していた領土に限るべきです。

それ以上のことをすれば、第二次世界大戦の戦勝国は、中国の侵略行為とみなすべきです。そうして、現在の中国はすでにチベット、ウィグルなどに侵略してわが物にし、その次は海洋進出をして尖閣列島や、南シナ海の島々を侵略しようと狙っています。

こんなことは、戦勝国は絶対に許してはいけないことです。許してしまえば、戦後体制が崩れます。

戦勝国の筆頭は無論アメリカですが、この国の元首でもあるオバマ大統領の態度が煮えきりません。

これについては、以前のこのブログにも掲載したので、以下にその記事のURLを掲載します。

「オバマ政権は尖閣は日本領と表明せよ」 米紙ウォールストリート・ジャーナルが主張―【私の論評】オバマは尖閣日本領表明によって、自ら頭の中のお花畑の虚構に生きるルーピーではないことを証明せよ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、米紙ウォール・ストリート紙が、「オバマ政権は尖閣は日本領と表明せよ」という記事を掲載したことを受け、
そうして、忘れてならないのは、アメリカの煮え切らない態度です。尖閣は、日本の固有の領土であることは、あまりにも明らかな事実なのに、アメリカはこの問題に関して煮え切らない態度をとり続けています。尖閣問題が起こってからこのかた、未だアメリカは尖閣は日本固有の領土であり、日本と中国の間で尖閣の領土問題はないと、はっきりとした公式見解は発表していません(管理人注:当時は全く発表されていなかった)。 
上の記事のように、WSJが指摘しているように、アメリカが、はっきりとした公式見解を発表すれば、中国が引き下がる可能性は多いにあります。 
無論、アメリカがそのような発表をすれば、中国は反発するでしょうが、それでも実質的に尖閣での領空・領海侵犯がかなり減るというようなことにはなる可能性は高いです。

カイロ宣言における中国代表は、国民党軍の蒋介石

そもそも、アメリカ側の立場にたっても、尖閣問題に関しては、戦後体勢を維持するという観点からも、中国の示威行動はやめさせるべぎです。ここで、アメリカが何もしなければ、中国は本来戦後体制の利得者ではないにもかかわらず、結果として戦後体制利得者であることを認めることになります。現在の中国共産党中央政府は、日本とは戦争をしていません。戦ったのは、蒋介石率いる国民党軍です。戦後の国々は、戦後体制によって三つに分類されました。第一国は、米英などの第二次世界大戦での戦勝国、第二国は、日独などの敗戦国、第三国は、そもそも戦争に参加して直接戦わなかった国々です。 
現在の中国、韓国、北朝鮮は、あくまで第三国であり、戦後体制の利得者ではありません。そもそも現代中国が独立したのは、戦後のことです。にもかかわらず、もし今後も尖閣について日本の領土であると、アメリカが表明しなければ、アメリカは中国の戦後体制の利得を認めることになります。 
それを許せば、中国は他の戦後体制の利得を次々と要求することになるのは必定です。そんなことは、少し考えれば理解できることです。中国は、明らかに戦後体制利得者になる道を模索しています。 
アメリカがこのように、煮え切らない態度をとり続けてきたのは、最近の中国の台頭をみて、今後中国国内が世界最大の消費市場になると見込んだ米国内親中・媚中派が、中国側の巧みな誘導にのって戦後体制の次の新しい世界の体制は、米中二極体制であると思い込みこみ、アメリカ国内でも、大きな影響力を発揮しているからです。

この記事には明示はしていませんが、現在の中国は戦後利得者になることを模索しており、それだけならまだしも、中華民国の戦後利得からさらに大きな利得を得ようとたくらんでいます。

まさに、中国は、上の記事で河添さんが語っている、「 欧米戦勝国が第2次世界大戦後に決めた世界地図やルールをリセットさせ、自国に都合のいい“オレ様流”に塗り替えていこうと必死」なのです。

こんな横暴は許しておくわけにはいきません。ご存知のように、日本は戦後体制の中に組み込まれ、その体制はアメリカの属国といっても良い状態です。

戦後体制や、属国であるという立場を認めたとしても、今のアメリカのオバマの煮え切らない態度は許容できるものではありません。確かに、自分の国を属国であると考えるのは嫌なことです。しかし、属国になるには、属国となるメリットがあるから属国になるわけです。

それは最低限、属国の宗主国は、属国が他国の侵略を受けたら守るとか、侵略を受けそうになったら、毅然とした態度で侵略国家に対して臨むという義務を果たさなければなりません。

しかし、オバマは戦後体制を破綻させようとする中国の妄想暴走に煮え切らない態度をとり続けています。オバマは、米国の戦後利得を守ろうという気がないのかもしれません。戦後体制を守らないというのなら、戦後体制に飲み込まれた日本も、戦後体制から離脱するしかありません。

宗主国が義務を果たさないというのであれば、属国になっている意味がありません。

日本としては、いつまでもオバマが煮え切らない態度をとりつづけるというのなら、属国の地位から独立の道を勝ち取るしかありません。

言うだけ番長とも、日本国内では揶揄されている、煮え切らない態度をとりつづけるオバマ


そのために、今からできることは進め、アメリカとの同盟関係は維持してもかまいはしませんが、それ以上でも以下でもない関係構築するべく準備を進めていくべきです。

最終的には、憲法改正も必要でしょうが、現行憲法内でもできることを模索して、備えていくしかありません。そのためには、集団的自衛権などが問題になるような、平和ボケではどうにもなりません。長期的にみれば、アメリカの凋落も明らかです。いつまでも、属国根性でいては、いずれ日本は中国領になってしまいかねないという危機感を日本国内で共有すべきです。

経営学大家であるドラッカー紙は、日本の明治維新を賞賛し、日本は全国的コンセンサスがとれた場合は一夜にして変わることができるとしていました。

今は、確かに戦後体制から脱却は絶望的に見えるかもしれません。しかし、江戸末期の幕藩体制は誰もが崩壊させることなど困難に見えたことでしょうが、崩壊しました。ある臨界的に達すれば、今の日本も、明治維新のように一夜にして変わることができるかもしれません。

ただし、それを実現するためには、それなりの準備が必要です。倒幕には桜田門外の変などの前触れがありました。明治維新を実現するにも、それなりの準備や、時宜を得るということが必要でした。

今の私たちも、まずは世論を形成するなどして、日本の戦後体制から離脱を準備していく必要があります。河添さんが指摘するように、あのような反日メディアニ紙がある沖縄でも、県民は徐々に意識しつつあるとしています。日本国内でも、そのような機運は徐々に醸成されつつあります。これを空気にまで高めていく必要があります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2013年3月7日木曜日

【40×40】河添恵子 日本欺くダブルスタンダード―【私の論評】社会の変革を後回しにしたつけが効いてきた中国、習近平はラストエンペラーになる!!【3】

【40×40】河添恵子 日本欺くダブルスタンダード
河添恵子さん

新しい布陣による中国が、本格始動する。この新体制について一言でいうと「海洋利権の習近平国家主席と環境利権の李克強首相のツートップ」。共産党政府には5年、10年単位での国家戦略(=野望)があり“派閥”が変わろうとその路線を爆走している。しかもその手法は常に、日本を欺くダブルスタンダードなのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

では、中国が今なぜ環境汚染の最悪な実態を積極的に発信しているのか? 次なる5年の表看板を「環境・省エネ」に掛け替え、能天気な日本からさらに巨額のカネ&最先端技術を巻き上げるためのキャンペーンと考えるべきなのだ。と同時に日本の世論の分断工作のため、売国・媚中(びちゅう)人間、民主化活動家すら使いこなす。日本はまだ騙(だま)され続けるのか?

これからも「日本の問題」と絡め、世界を破壊しかねない中国を取材、解析していきたい。(ノンフィクション作家)

この記事の詳細はこちらから!!


【私の論評】社会の変革を後回しにしたつけが効いてきた中国、習近平はラストエンペラーになる!!【3




河添さんは、長い間中国を取材してきており、特に最近は日本国内での中国の動きに関しても詳細を丹念に取材されており、情報源としては優れています。ですから、上の記事の内容には、諸手を上げて賛成です。

ただし、上記のダブルスタンダードという表現は、まだ甘いのではないかと思います。そもそも、スタンダードないのが中国です。自分の都合の良いように何でもでっちあげて、挙句の果てには、自国領土にしていまいます。それは、今の中国の版図を見ても明らかです。

下の地図をみれば、現在中国に含まれている、チベット(自治区)、チベット(自治区),モンゴル,満州などどう考えても、もともとは中国の領土ではありません。それに、実際に第二次世界大戦直後、これらの国々も中国の版図ではありませんでした。それが、今日中国の領土なっています。これは、中国が侵略して手に入れた領土です。


それに、昨年の11月には、以下のようなとんでもない報道がなされています。


中国「ハワイ領有権も主張できる」 米国務長官、協議の一幕明かす2012.11.30 20:06 
 【ワシントン=犬塚陽介】クリントン米国務長官は11月29日、ワシントン市内で講演した際の質疑応答で、過去に南シナ海の領有権問題を中国と協議した際、中国側が「ハワイ(の領有権)を主張することもできる」と発言したことを明らかにした。長官は「やってみてください。われわれは仲裁機関で領有権を証明する。これこそあなた方に求める対応だ」と応じたという。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 ハワイをめぐっては、太平洋軍のキーティング司令官(当時)が2007年5月に訪中した際、中国海軍幹部からハワイより東を米軍、西を中国海軍が管理しようと持ちかけられたと証言したこともあった。

ハワイといえば、もともとは独立国であり、それを結局はアメリカが武力を行使して奪いとったものです。これに関しては、アメリカ政府が正式に謝罪しています。中国は、アメリカに対してもともと、お前たちが力づくで奪いとったものだから、俺たちだって権利があるという事を語っているわけです。とんでもない連中です。確かに歴史を遡ればそうかもしれませんが、もうアメリカの侵略からすでに随分時がたち、ハワイもすっかりアメリカの領土として馴染んでしまった現在、こういうことを主張できるというセンスが理解できません。

それに、このブログでは、過去には中国は、日本の西半分を東海省とし、東半分を日本自治区にしようという長期国家戦略があることを掲載したことがあります。それどころか、中国は以下のような領土的野心を持っていることは間違いないです。




この中には、無論ハワイも含まれています。だから、先ほどの話もあながち中国が思いつきで言っているということではないのです。今は不可能であっても、いずれはやろうとしていて、もし、機会があれば必ずやるということです。


実際、以前、オーストラリアを訪れた、当時中国の総理李鵬が当時、「もう20年もすれば、日本という国はなくなる」と発言しています。これを語った李鵬の頭の中には、中国の長期国家戦略戦略があったことは確かだと思います。それにしても、中国のこの領土的野心、とどまるところを知りません。領土を拡張しても、良いことなどあまりないと思います。


それは、あのロシアを見れは良くわかることだと思います。現在のロシアは、GDPは日本の1/5、人口は1億4千万人で、日本よりわずかに多いだけ、その中でも支配階級のロシア人の数は日本人よりも少ないです。中国もいずれそうなります。もうなりかけているかな?それにしても、そうなるまでには時間がかかるし、何よりも日本を含む周辺諸国に迷惑をかけどうしということになります。困ったものです。それでも、習近平は、社会変革に取り組もうにも何ともできず、規制路線を歩んでいずれ旧ソ連邦共産党(今でもありますが、もはや国家を担う存在ではありません)のように滅んでいくのが現代中国共産党政府です。

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