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2018年10月31日水曜日

TPP12月30日発効 世界GDPの13%経済圏誕生へ―【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!


TPPの年内発効が決まり、記者会見する茂木敏充経済再生担当相=
31日午前、東京外千代田区の中央合同庁舎第8号館

茂木敏充(としみつ)経済再生担当相は31日、東京都内で記者会見し、米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP11)について、日本時間の12月30日午前0時に発効すると発表した。域内の工業製品や農産品の関税は段階的に引き下げられ、投資や知的財産権保護など幅広い分野で高水準のルールを定めた。世界の国内総生産(GDP)の約13%を占め、総人口で約5億人を抱える巨大な自由貿易圏が誕生する。

 茂木氏は会見で「保護主義が強まる中、自由で公正な21世紀型のルールが確立するという強いメッセージの発信になる」と、発効の意義を強調した。

 また、茂木氏は新規加盟を希望する国の手続きなど今後の運営の詳細を協議する閣僚級の「TPP委員会」を来年1月にも日本で開催する方針も明らかにした。参加国の拡大により、保護主義の対抗軸となる経済圏づくりを目指す。



 日本は自動車など工業製品の輸出で追い風となるが、牛肉など安い農産品の流入で国内農業は打撃を受ける可能性もある。

 昨年1月にTPPから離脱した米国の製品は域内で関税引き下げの恩恵を受けられず、不利になる。日本は米国との関税交渉を来年1月中旬以降に開始する見通しで、引き続き米国にTPP復帰を促す考えだ。

 TPP11は6カ国以上の国内手続きが終了してから60日後に発効する。6カ国目となるオーストラリアが手続きを完了したため、年内に発効することになった。

 参加国で手続きを終えたのはオーストラリアのほか、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダの6カ国。ベトナムも11月半ばに手続きを終える見通しで、残るブルネイ、チリ、ペルー、マレーシアも手続きを進める。

【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!

オバマ前政権が推進してきたTPPには、「中国包囲網」という裏の目的がありました。

中国は、日本、韓国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の締結を主導して進めています。RCEPは「中国版TPP」ともいえる通商協定です。日本政府がTPP協定に固執し続けたのも、RCEPがアジアの通商ルールとして定着することを阻止するためでした。


TPPには、「国有企業の優遇禁止」や「知的財産の保護」などのルールが盛り込まれていますが、これはこのルールを守っていない中国を念頭に置いています。つまり今のままでは中国はTPPに参加できないため、こうしたルールを守るよう、中国に暗に迫っていたということです。

ところが、アメリカがTPPを離脱したことで、「中国包囲網」としてのTPPの有効性は、かなり毀損されました。

トランプ大統領が「TPPは正しい考え方ではなく、我々は貿易でTPP以上の成果を得られる」とTPPを否定する理由は、関税自主権を行使して、中国などとの貿易不均衡を是正したいからです。昨年のアメリカの対中貿易赤字は3470億ドル(約40兆円)。これを関税などによって解消しようというのが、米国の対中貿易戦争です。

「弱いアメリカ」がTPP参加国とともに中国経済に対抗する方針から、「強いアメリカ」として二国間交渉で中国に臨む方針に変わったということのようです。そうして、米国は実際に対中国貿易戦争を開始しました。これは、もうトランプ政権による貿易戦争の次元から、超党派の米国議会による経済冷戦の次元にまで高まっています。

1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、TPPからの正式離脱に関する大統領令に署名した

おそらく、中国の体制が変わるまで、かなり長い間、米国は対中国制裁をやめないどころか、あらゆる手段を講じて、中国を追い詰めるでしょう。

中国は、アメリカを抜いて世界の覇権を握ることを目指していますが、まだ米国と全面対決できるほどの力はありません。

米国が問題視している国際貿易機関(WTO)で規定されていない、知的財産権や技術移転要求については、日本は米国に協調できます。その手段として考えられるのがTPPの活用です。米国が中国に対して懸念していることのすべてはTPP協定でカバーしています。

タイ、インドネシア、台湾、英国、コロンビアなどを加入させてTPPが拡大し、また米国がTPPに復帰するなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなります。その時、中国に知的財産権や投資についての高度な規定を課すことができます。努力すべきはTPP参加国の拡大です。

ただし、中国はTPPに加入するということになれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革を実施しなければなりません。これを実行しなければ、TPPには加入できません。

この構造改革を実施することになれば、中国共産党は、統治の正当性を失うことになるでしょう。それは中共の崩壊を意味します。

最悪、米国や中国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。

TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。

この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPPは加盟国だけではなく世界にとって、有用な協定になる可能性が高まってきたのは事実です。
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2018年3月16日金曜日

【日本の選択】正恩氏が狙う「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」 南北、米朝首脳会談は目的のための手段でしかない―【私の論評】最終的には北を複数の国々で50年以上統治して中立的かつ民主的な新体制を築くしかない(゚д゚)!

【日本の選択】正恩氏が狙う「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」 南北、米朝首脳会談は目的のための手段でしかない

金正恩 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が南北首脳会談、米朝首脳会談を行う希望を表明した。歓迎する向きもあるようだが、「これで北朝鮮問題が解決した」とするのは全くの間違いだ。今ほど冷静な判断が求められている瞬間はないだろう。

 憂慮すべきは、「親北左派」で知られる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の今後の行動だ。文氏は、今回の首脳会談に前のめりになり、「不都合な真実」から目を背け、実体のない「友好」という観念に耽溺(たんでき=不健全な遊びにおぼれること)するであろうことは、火を見るより明らかだ。

文在寅

 北朝鮮が、韓国、そして、米国をも欺き、「核・ミサイル開発」の時間を稼ごうとしているという可能性を直視することが重要なのだが、文氏にそれを期待することはできない。

 今回の北朝鮮から韓国特使団に向けられたメッセージの中で重要なのは、次の箇所だ。

 「北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消されて、北朝鮮の体制の安全が保障されるならば、核を保有する理由はない」

 このメッセージの後半部分の「北朝鮮の体制の安全が保障されるならば」という部分に注目し、金一族による独裁体制が保障されれば、北朝鮮が核兵器を放棄するとみなすのは間違いだ。

 重要なのは、前半の「北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消されて」の部分だ。ここでの「軍事的な脅威」とは、具体的には在韓米軍の存在を意味している。すなわち、この個所は「在韓米軍が撤退すれば」と読み替えて解釈すべきなのだ。従って、在韓米軍を撤退せよとの要求が通らなければ、北朝鮮には核の保有が必要であると宣言していることになる。

 正恩氏の望みが「在韓米軍の撤退」であることは、亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の米国下院における証言からも明らかだ。

太永浩(テ・ヨンホ)氏

 太氏は証言で、核開発を完了させた後、米国と交渉することで在韓米軍を撤退させようとする、正恩氏の戦略を明らかにしている。正恩氏はベトナム戦争を参考にし、韓国を(消滅した)南ベトナムに見立て、在韓米軍を撤退させ、韓国の体制崩壊を狙っているというのだ。

 南北首脳会談、米朝首脳会談も、基本的には「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」が目的であり、両首脳会談自体は目的のための手段でしかないと見做すべきであろう。

 北朝鮮の口先の言葉ではなく、実際の行動に注視することが肝要である。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

岩田温氏

【私の論評】最終的には北を複数の国々で50年以上統治して中立的かつ民主的な新体制を築くしかない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で岩田氏が主張する"南北首脳会談、米朝首脳会談も、基本的には「在韓米軍の撤退」と「韓国の崩壊」が目的であり、両首脳会談自体は目的のための手段でしかない"という主張は妥当なものです。そうして、北朝鮮の最終目的は、北朝鮮主導で南北朝鮮を統一することです。最終的には、朝鮮半島全部を北が支配することです。

北の核と、南の経済力、技術力を融合して、半島に先進国並の経済力のある、軍事独裁政権を樹立することです。

このようなことは、まともな人なら、薄々気づいているのではないでしょうか。最近の情勢をみて、米国が北朝鮮を武力攻撃することなどないなどと判断するのは、全くの早計です。

ここ数カ月から、1〜2年くらいはもしかすると、ないかもしれませんが、その後北朝鮮が核を廃棄しないというなら、米国は必ず武力攻撃します。これに関しては、中国も、ロシアも反対はしません。なぜなら、彼らも朝鮮半島に核武装した経済力のある、軍事独裁政権が出来上がることを望まないからです。

そうして、日本としては、まず第一に米国が武力攻撃をした後、朝鮮半島はどうなるのか、それを想定して今から準備しておくべきです。

もし米軍の武力行使が行われ、瞬時に北朝鮮側の核ミサイル能力が完全に除去されたとして、その後の朝鮮半島はいったいどうなるでしょうか。

軍事的に大打撃を受けた北朝鮮の体制が存続しうることは考えにくいです。それでは、北の体制崩壊後、朝鮮半島は統一されるのでしょうか。それ以前に「北の脅威」がなくなったあとの在韓米軍や米韓同盟はどうなるのでしょうか。

大統領選でトランプ氏は在韓米軍の撤退に言及しましたが、仮にそれが行われたら日米同盟は根底から揺さぶられることになります。米国の一部で唱えられているような米中両国による共同分担作戦によって事が進められれば、戦後の朝鮮半島では中国の影響力が画期的に高まることは明らかです。

第二に、米朝対話などによって査察体制など細部の合意も含め「北の非核化」が進むとすれば、その後に北朝鮮の現体制は存続しうるのでしょうか。あれだけ派手に核危機を演出しておいて、揚げ句、核放棄を約束して体制が揺らがないとは考えにくいです。

さらに、北が米本土に届く核搭載の大陸間弾道ミサイル開発を放棄すれば、残りの核はいわゆる「凍結」で事態が収められるでしょうか。そうなると、日韓を含む東アジアでは北の核脅威は恒常化することから、米国の「核の傘」や対米同盟の信頼性は低下することになります。その場合も、この地域の地政学的現状は決定的に変化することになります。

要するに、どのような事態変化があったにしても、日本周辺の地域の秩序は、この数十年続いてきたものとは大きく変容したものになるということです。これだけはどう考えても避けられないです。

そしてここで大きく浮上してくるのが、「習近平の中国」です。

今回の米中首脳会談で、権力基盤を強化した習近平国家主席はトランプ大統領と朝鮮半島の将来像についてかつてなく突っ込んだ話し合いをすることになるでしょう。対北制裁の強化とともに、米中間で将来の朝鮮半島の運命が決められるかもしれません。

その一つとして、この数カ月、米マスコミが繰り返し報じている「キッシンジャー構想」があります。

それは、北の核廃棄に向けて中国のかつてない強力な取り組みを求めるために、米国が北の非核化(つまりは北の体制崩壊)の後に、在韓米軍の大半を撤退させることをあらかじめ中国に約束する、というものです。

キッシンジャー氏はトランプ大統領、とりわけイバンカ氏の夫で親中派とされるクシュナー上級顧問に対して影響力が大きく、またティラーソン国務長官にはすでにこの助言を行っていると噂されています。

キッシンジャー構想は成り立たない?

ただし、私としては、この構想は容易には成り立たないと思います。その根拠として、2つがあげられます。一つ目としては、まずはキッシンジャー氏はすでに過去の人物であり、かつてのように大きな影響力はないといことです。

二つ目には、習近平はすべてを掌握しているわけではないということです。

第1次習政権で試みた、「朝鮮半島を、南(韓国)から属国化していく戦略」も見事に失敗し、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)が配備されています。かつては「兄弟国」だった北朝鮮との関係も史上最悪で、「1000年の敵」呼ばわりされるまで悪化しました。

頼みの綱だったロシアとの関係も、中国政府が1月下旬、「(中国主導の広域経済圏構想)『一帯一路』構想に北極海航路を入れる」と発表したことで、プーチン大統領を激怒させてしまいました。

朝鮮半島情勢について、表向きは「米朝対話」を主張しながら、本音は大きく違う可能性が高い。「金王朝の崩壊」を狙っているはずの習氏が、それを察知する金王朝の核ミサイルや生物化学兵器の脅威にさらされているとすれば、トランプ政権が軍事オプションに踏み切ることを、内心で期待していてもおかしくはないです。

中国は長さ約1400キロという中朝国境に、数千人から数万人とされる人民解放軍を配備しました。ところが、いざ戦闘状態に突入すれば、朝鮮族の多い北部戦区(旧瀋陽軍区)の部隊が、どこに銃口を向けるか分からないです。習近平と、江沢民を比較すると後者のほうが、北部戦区や北朝鮮と親和的です。

そもそも、北部戦区の受け持つ地区は、旧満州(中国東北部)といわれるところに位置していて、この地はもともとは満州族のものでした。この地には数は減ったとはいえ、今でも満州族が1千万人以上も住んでいるのです。

朝鮮半島と接する中国東北部(赤とピンクの部分)

さらにこの地域は、今日急速な少子高齢化に見舞われ、人口流出が深刻化しています。経済的にもこの地域は北朝鮮という地理的な障壁があって経済が中国の他の地域から比較すると遅れていることから、不満が鬱積しています。

こうした人口の減少と高齢化は、当然のことながら中国がいま進めている養老保険(年金)の整備に大きなマイナスの効果を与えています。国家開発銀行の元副行長の劉国によれば東北部の年金の負担率(年金を支払う労働者と年金受給者の比率)は、1.55であり、これも全国平均の2.88にはるかに及んでいません。これらは「火薬庫」としての東北部の火種が将来的にもなかなか消えない可能性を示唆しています。

そうなると、米国が中途半端をして、北の核関連施設を完全破壊するのと、金王朝を潰すだけで手を引いてしまえば、北が無政府状態の混乱した状態になってしまう可能性が高いです。今の中東のように多数の勢力の衝突による不安定な地域になる可能性が高いです。

これを防ぐには米軍が少なくと50年以上の長期にわたり、この地域に軍隊を送り込み統治して、中ロ寄りでもない、日米寄りでもない、中立的な民主的な体制をつくりだすしかありません。

米国一国だけでは無理というのであれば、複数の国々で構成される国連軍を派遣して長期間統治して、北に新たな秩序を構築するしかありません。そうして、その中で韓国との関係をどうするのかも十分に考慮したうえで、新たな秩序を模索して、アジアから不安定要因を取り除くべきです。

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