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2019年1月12日土曜日

「金王朝」死守したい金正恩の頼みの綱はやっぱり核―【私の論評】韓国は中国の朝鮮半島浸透の防波堤の役割を北に譲った(゚д゚)!

「金王朝」死守したい金正恩の頼みの綱はやっぱり核

2回目の米朝首脳会談に向けて動き出した米中朝の思惑

中国・北京の人民大会堂で、写真撮影に臨む北朝鮮の
金正恩朝鮮労働党委員長夫妻(左)と習近平国家主席夫妻(右)。

 年明け早々の1月7日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。過去1年間に中朝首脳会談は、①2018年3月26日(北京)、②5月7~8日(北京・大連)、③6月19~20日(北京)に開かれており、今回が4度目である。

 昨年は、6月12日にシンガポールで歴史的な米朝首脳会談が開かれたが、その後半年が経つのに、両国関係に際だった進展がないままである。近いうちに第2回目の首脳会談を開催すべく、アメリカと北朝鮮の間で調整が行われている。今回の金正恩の訪中は、その準備のためのものと考えてよい。

核こそが「金ファミリー体制」保障する最大のカード

 朝鮮半島情勢を長年にわたり観察してきた者としては、半年前の米朝首脳会談を境にして従来とは異なる局面が出てきているように見える。それは、北朝鮮のみならず、アメリカ、中国、韓国、ロシア、日本についてでもある。

 建国以来の北朝鮮の国家戦略を振り返ってみると、最優先課題は「金王朝」の継続である。実際に、金日成→金正日→金正恩と、父から息子への権力継承が行われてきた。この点では、同じ共産党一党独裁体制であっても、ソ連や中国の権力継承のあり方とは大きく異なっている。

 体制の維持という最大の目的を達するための第一の方法は、核のカードの活用である。

 金王朝を崩壊させる能力と意思とを持った国はアメリカである。北朝鮮の後ろ盾には中国とロシア(ソ連)がいるが、彼らには、アメリカの攻撃を受けた北朝鮮を救う力はない。そこで、自らの体制を守ろうとするならば、自らアメリカに反撃できる軍事力を持つべきであり、それは核兵器である。アメリカ本土に到達する核爆弾を一つ持つだけで、その効果は計り知れないものがある。そこで、国民の生活を犠牲にしても核開発に力を注いできたのである。

 実はこの発想、フランスのドゴール大統領に似ている。米ソ冷戦下で、フランスがソ連から核攻撃を受けたら、アメリカはソ連に対して報復の核攻撃を行ってくれるか。ドゴールの答えは、「ノン(否)」である。アメリカはパリのためにワシントンDCを犠牲にはしない。フランスがモスクワに到達する核を持つことによってしか、ソ連の核から身を守ることはできない。それがドゴールの出した結論だった。

 金ファミリーも同様な核思想を持ち、それは期待以上の効果を生んだ。核開発というカードを活用すれば、開発中止の代価として経済協力を得ることができるからである。「米朝枠組み合意」がその典型である。

 北朝鮮は、1993年に核拡散防止条約(NPT)から脱退し、核開発を進めたため、国際社会は何とか話し合いで北の核開発を終わらせようと努力した。その結果、1994年10月21日に米朝間で「米朝枠組み合意」が締結された。北朝鮮は核開発プログラムを凍結する見返りとして、黒鉛減速炉から軽水炉への転換支援と毎年50万トンの重油供給を受けることが決まった。その実行組織として、米韓日などが参加して朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が組織された。その結果、北朝鮮はNPTに残留することを決める。

 しかし、2002年10月に北朝鮮がウラン濃縮プログラムを進めているという疑惑が浮上し、2003年1月には北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)からの再脱退を決めた。この年12月にはKEDOは軽水炉の建設工事を中断し、2006年5月には軽水炉計画は完全に中止されたのである。

金正恩から見たら「アメリカは約束違反」

 短命に終わったこの「米朝枠組み合意」の歴史は、アメリカにとっても、北朝鮮にとっても快いものではなかった。しかし、「核というカードがいかに有効なものであるか」を北朝鮮は十分に認識したのである。

 そこから、アメリカ本土を核攻撃する能力を持つために、大陸間弾道ミサイルと核爆弾の開発に全力をあげる。そして、度重なる実験の結果、その実現間近まで行ったところで、米朝首脳会談という運びになったのである。北朝鮮のような小国が世界一の大国アメリカと対等の立場で首脳会談ができるのは、「核兵器のお陰」なのである。

 したがって、北朝鮮は、然るべき見返りがないかぎり、核開発を容易には放棄することはないと考えたほうがよい。

 体制維持のための第二の方法は、アメリカのみを相手にするということである。中国やロシアは支援してくれる兄貴分であり、日本や韓国はアメリカの手下である。北朝鮮は、アメリカと話をつけることができれば、体制は維持できると考えている。日韓両国は、経済的な協力を得られるかぎりにおいて付き合うが、それ以上に期待することはない。

 祖父や父が推進してきたこの姿勢を金正恩も踏襲しているが、問題なのは、米朝首脳会談を行ったにもかかわらず、1994年の米朝枠組み合意のようなメリットがまだ何も現れてこないことである。

 北朝鮮の最大の不満は、核実験もミサイル発射も中止しているのに、制裁解除がないことである。昨年6月の米朝首脳会談では、アメリカは「一括、即座の非核化」という要求を、北朝鮮に譲歩し「段階的非核化」で決着させた。金正恩にしてみれば、非核化が段階的ならば、制裁解除も段階的でよいはずである。

 米朝首脳会談後の共同声明では、非核化については、「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けて取り組む」と記されている。しかし、アメリカが要求するCVIDのうち、V(検証可能な)やI(非可逆的な)については一切言及がない。しかし、トランプ政権は、CVIDが実現しなければ、制裁解除はないと言い続けている。

 金正恩はこれを約束違反と判断しても不思議ではない。そこで、1日の「新年の辞」で、「制裁を続けるなら新たな道を模索せざるを得なくなる」と述べて、アメリカを牽制したのである。

新年の辞を伝える北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長

韓国ソウルの鉄道駅のテレビに流れた、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長による新年の辞を伝えるニュース映像(2019年1月1日撮影)。(c)Jung Yeon-je / AFP〔AFPBB News

 昨年6月の共同声明では、「トランプ大統領は、北朝鮮に対して安全の保証を提供することを約束した」とあるが、金正恩は、これで本当に金王朝の継続がアメリカに認められたとは思っていないであろう。

北朝鮮が習近平の「対米交渉カード」になる可能性も

 このような北朝鮮側の不満と不安に対して、来たるべき第2回目の米朝首脳会談でトランプはどこまで金正恩に「お土産」を渡すことができるのであろうか。

 金正恩は、訪中して習近平と会談し、「非核化の立場を引き続き堅持し、対話を通じて問題を解決する。2回目の米朝首脳会談が、国際社会が歓迎する成果が得られるよう努力する」と強調した。これに対して、習近平は、非核化を目指す北朝鮮の立場を支持すると表明した。制裁緩和については、「米朝が歩み寄ることを望む」、「北朝鮮側の合理的な関心事項が当然解決されるべきだ」と述べている。

 しかし、米中は国際社会で熾烈な覇権争いを展開しており、中国がどこまで北朝鮮の後見人として振る舞えるか疑問である。むしろ、米中摩擦の緩和のために、北朝鮮をカードとして使い、金正恩に「見返りなしの非核化」を求める可能性もある。

 アメリカの研究機関は、衛星写真の解析から北朝鮮がウラン濃縮を再開していると判断している。北朝鮮の非核化、経済改革などの目的は、すぐには達成されそうもない。

【私の論評】韓国は中国の朝鮮半島浸透の防波堤の役割を北に譲ってしまった(゚д゚)!

「金王朝」死守したい金正恩の頼みの綱としての核という考えは別にして、北朝鮮国内には非核化に反対する勢力が存在し、金正恩朝鮮労働党委員長が国内の権力闘争に生き残りつつ非核化にこぎ着けるのは「極めて困難」だと考えられます。

そのような勢力は北朝鮮に間違いなく存在します。それを理解するには、北朝鮮経済の現代史や韓国の歴史を知る必要があります。

北朝鮮の経済はかつて、社会主義的な「計画経済」一辺倒でした。国民の生活に必要なモノの種類と量を国家が決定し、工場や農場に生産を指示。出来上がったモノを国民に配給するというものでした。

ところが、このシステムは1990年代に崩壊してしまう。北朝鮮を経済的に支えていた旧ソ連・東欧の社会主義圏が消滅し、さらには数十万単位の人が餓死したと言われ大飢饉「苦難の行軍」に襲われたからです。

中学生くらいの少女が露天の食堂で客の食べ残しに手を伸ばしている。
1999年12月咸鏡北道の清津市にて撮影キム・ホン(アジアプレス)

これにより、国民を養えなくなった国家は、人々がそれまで禁じられていた「商売」に乗り出すのを黙認するようになりました。北朝鮮の人々の生存本能は、金儲けの楽しさを知るのとともに「商魂」へと変じ、国の経済をなし崩し的に資本主義化させてしまったのです。

「苦難の行軍」が発生した当初、人々が売ったのは衣類や家財道具などのなけなしの財産でした。それを売り払ってからは、やむなく売春に走る女性たちもいました。

ところが今では、資本家と呼べる人々まで登場しています。たとえば、中国との小規模な密輸で原資を蓄え、そのカネをエネルギー不足で開店休業状態の国営工場に投資。海外から燃料と発電機、原材料を輸入し、中国企業からの委託生産で大規模な輸出を行う――といったパターンです。

しかしこれも、国家の力が弱まったからこそ可能になったことです。非核化によって経済制裁が解除され、韓国や中国から大規模な経済支援が行われたら金正恩体制がパワーを取り戻し、強力な中央集権に回帰してしまうことになります。

これが、現在の北朝鮮経済で既得権を握る高官や富裕層の心配事なのです。

だからこそ、金正恩はすぐに非核化に走ることができないのです。これを前提として、現状をみまわすと、朝鮮半島の独立を中国からの独立を守っているのは実は北朝鮮の核であり、韓国ではないという皮肉な結果になっています。無論、これは金正恩や、北の高官や富裕層が期せずしてそうなっています。

そうして、これは何も北朝鮮の核保有を認めよなどと言っているわけではありません。しかし、現状、北朝鮮がすぐに非核化をすすめた場合、朝鮮半島は中国に飲み込まれてしまう可能性が大です。

そもそも、韓国は自ら独立を勝ち取った経験などなく、歴史的に中国や日本、米国の支配下に置かれてきた経緯からみても自国の防衛や独立に関心がないです。
中国に抵抗しようという気もありません。

最近の海自哨戒機へのレーダー照射事件をみても、韓国は本気で中国と対峙しようという考えがあるなら、そもそもあのようなことはしないし、したとしても早期に解決したでしょう。韓国は、中国の覇権に対抗するための国際連携の一員に加わることはできません。



もし、韓国が自らの独立に関心があるのであれば、在日米軍基地がある日本に安全保障を全面的に依存しているのに、日本と無用ないさかいを起こしたりはしないはずです。韓国が反日であるということは、韓国が本質的な外交政策に関心がないことを意味するものとみなすべきです。

日本との関係や米韓同盟をないがしろにする形で北朝鮮との融和政策を進める韓国の文在寅政権は、これまで米国に保護されていたのを中国に保護してもらうよう打算的に移行しているにすぎないです。

朴槿恵時代から、中国に急速に接近した韓国は中国の朝鮮半島浸透の防波堤の役割を北に譲ったも同じです。

結果として、北朝鮮の核保有は北朝鮮の独立を保証すると同時に、中国の影響力を朝鮮半島全土に浸透させることも防いでいます。米国にとって、朝鮮半島が南北に分断され、北朝鮮が核を保有している現状が中国をにらみ望みうる最善の状態です。

おそらく、トランプ政権も最近では、そのようにみているのでしょう。ただし、米国が北朝鮮を核保有国として認めることは、永遠にないでしょう。今すぐではないにしても、いずれ非核化したいと望んているのは間違いないです。だからこそ、現在は、この均衡を崩さないようにしつつ、対中国冷戦Ⅱを発動しつつ、北に対する制裁も同時に実行しているのです。

この均衡が崩れるのは、どのような場合かというと、北がまたミサイル発射実験を頻繁に行うようになるか、実際に核兵器を使用してしまうこと、中国が、朝鮮半島を自国に併合するために実行動をすること、その他ロシアや韓国の動きなどが考えられます。

今のところ、このような動きはみられず、現状は絶妙なタイミングで、均衡しています。米国としては、ここしばらくこの均衡を崩さないようにして、様子を見ることでしょう。均衡が敗れれば、米国は何らかの行動をするでしょう。その中には当然のことながら、北朝鮮への武力行使などのオプションも含まれているはずです。

逆にいうと、この均衡が続く限りは、北朝鮮に対して、米国は目立った動きはしないということです。今年はそのような状況が続くかもしれません。

この均衡が続くことを前提として、米国の対中冷戦Ⅱが継続し、中国が体制を変えるか、経済力が現在のロシアなみ(GDPで韓国を若干下回る)に弱った場合、北と米国の本当の交渉が始まることでしょう。その日は、今から10年後かもしれないですし、ひょっとすると20年後かもしれません。

ただし、いずれの国であれ、この均衡を破りそうなときには、軍事オプションを含め、米国は何らかの動きをするのは間違いないでしょう。

金正恩も、当然のことながら、この均衡を崩さないことを前提にしつつ、少しでも自らに有利になるように立ち回ることでしょう。

第二回米朝首脳会談において、その方向性をうかがうことができるかもしれません。

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2018年1月23日火曜日

【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず―【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず


 新聞各紙は「中国の外貨準備、3年ぶり増加」(日経新聞8日付朝刊)などと報じた。日経新聞は北京の資本規制によるものと解説しているが、それだけでは習近平政権の窮状がわからない。(※1月13日の記事を再掲載しています)

 中国の外準の増加は外部からの外貨による借金で支えられているだけで、外準が増えることは中国経済の強さではなく、脆弱(ぜいじゃく)さを物語るのだ。

 まずはグラフを見よう。習政権発足後の外準、対外負債の推移を追っている。外準の減少が昨年初めに底を打ち、徐々に持ち直してきたのだが、トレンドは2014年後半以来、下向きが続いている。対照的に対外負債は増え続け、昨年9月時点で負債は外準の1・6倍以上に達する。

 1年前と比べた増減を見ると、外準は昨年12月にプラスに転じたものの、15年初めから昨年9月まではマイナス続きだ。負債のほうは16年末から急増し、その一部が外準に流用されている。負債は外国からの直接投資と外債発行や融資に分かれるが、昨年からは外債・融資が急増している。直接投資のほうは外資の撤退が相次いでおり、新規投資から撤退分を差し引いた「純」ベースは黒字を保っているものの急減している。

 外部からの投資と言っても、多くは中国や華僑系企業が香港経由でケイマン諸島などタックスヘイブン(租税回避地)に設立したペーパーカンパニーによるもので、逃げ足が速い。不動産バブル崩壊不安が生じると、途端に引き上げる。しかも、中国系企業は資本逃避の術を心得ているので、当局の規制の網の目をくぐり抜ける。

 そこで、習政権はルールに従う日米欧などの外資系企業に目を付け、さまざまな難癖や規則を持ち出し、あの手この手で外貨の対外送金に待ったをかける。

 他方で、中国人の海外旅行者はアリババなどのスマホ決裁を利用して、日本などでショッピングする。代金は中国国内の銀行口座から引き落とされて対外送金されるので、それも外貨流出要因だ。安心・安全で高品質の日本製品は共産党幹部とその家族も欲しいから、購入を規制しない。おかげで、東京や大阪の百貨店や家電量販店、レストランなどはほくほく顔で、スマホ決済を受け入れる店舗が急速に増えている。

中国の企業が開発したスマホ決済システムの決済画面
 おまけに、トランプ米政権の大型減税や米金利上昇のあおりを受けて、中国からの資金流出圧力は高まる一方だ。思い余った習政権は今月からカードによる海外でのカネの引き出しを制限したようだが、中国人にとって対外送金の抜け道はいくらでもある。

 こうみると、習氏が日本に対し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や広域経済圏構想「一帯一路」への参加を懇願する理由がよくわかるだろう。中国は外部からの借金なしには、習氏の野望を前進させられない。

 人民元国際化は打開策だが、海外で元の自由市場が生まれると、中国本土の元管理相場が脅かされる。習氏の膨張主義は限界に直面している。日本は一帯一路など手助け無用だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!

上の記事簡単にいってしまうと、中国の外貨準備は対外負債によって賄われているということです。トランプ大統領の訪中は、「総額2500億ドル(約28兆円)相当の大型商談」のサプライズで終焉しましたが、この商談も借金によって賄われているということです。

この他にも中国は世界各地で大盤振る舞いをしていますが、それも借金によるものとということです。日本は、対外純金融資産(要するに外国に貸し付けているお金)が、世界一であることからみても、このような状況からは程遠い状況ですし、日本の外貨準備は無論海外からの借金で賄っているものではありません。

そのため、高橋洋一氏などは、円高ではなくなったことから、含み益もでてきたこの外貨準備の含み益分を取り崩して経済対策に使えと主張しています。日本は、そのようなことをやろうと思えばすぐにできます。ただし、とにかく何でも溜め込みたい財務省はなかなか首をたてに振らないので、できないだけです。しかし、日本が本当に金に困れば、これは財務省も使わざるを得ないことになるでしょう。

しかし中国の場合は、これは外国からの借金で賄っているわけですから、他の目的につかうことはなかなかできないわけです。これらの金は、AIIBや一帯一路で用いるのでしょうが、これも限界があります。

過去の中国は、国内のインフラ投資で経済を急速に発展させてきましたが、それも限界です。そのため、海外でインフラ投資をしてそれによって過去のような成長を維持させようというのが、AIIB、一帯一路の最終目的です。


しかし、AIIBも一帯一路もうまくはいかないでしょう。AIIBは結局のところ、アジア開発銀行(ADB)が銀行だとすれば、高利のサラ金のような事業しかできず先細りになるだけです。一帯一路に関しては、すでに世界には最適な航路などの輸送手段が合理的につくられてしまっているところに、今更中国が主導でそれをつくったとしても、さらに最適なものをつくることは不可能です。

そもそも、現在ある物流インフラは、人為的につくられたものではなく、各国の輸送業者などが、長年にわたって死に物狂いの競争を繰り広げた結果できあがったものであり、そこに後から中国が人的に作成してそれを上回るインフラをつくれるはずもありません。

シンガポールをハブとした東南アジアの物流
それでも、中国は無理やり資金を投下して、コストパフォーマンスの良さを演出するかもしれませんが、これも長続きはせず、結局破綻します。もし、これがうまくいくというのなら、社会主義・共産主義もうまくいっていたはずです。

中国は大きな妄想を抱いています。中国国内では、特に優れたノウハウがなくても、金貸しや、インフラの整備に成功したかもしれませんし、失敗して人民の不満が爆発してもそれを抑えることができましたが、外国相手ではそうはいきません。

もう、すでに綻びがではじめています。いつまでも対外負債にたよって、海外に投資を続けることなど不可能です。本来であれば、中国国内で内需を拡大してさらに経済を大きくするなどのことをして、それを実行すべきなのでしょうが、中国にはそのノウハウがないですし、そのためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通れないのですが、それを実行すると現中国の体制は崩壊します。

一帯一路で中国主導のインフラ整備を行う、そのための資金提供を行うという中国の目論見は単なる幻影にすぎません。今のままでは、八方塞がりで、自滅するしかありません。

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