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2018年1月23日火曜日

【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず―【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず


 新聞各紙は「中国の外貨準備、3年ぶり増加」(日経新聞8日付朝刊)などと報じた。日経新聞は北京の資本規制によるものと解説しているが、それだけでは習近平政権の窮状がわからない。(※1月13日の記事を再掲載しています)

 中国の外準の増加は外部からの外貨による借金で支えられているだけで、外準が増えることは中国経済の強さではなく、脆弱(ぜいじゃく)さを物語るのだ。

 まずはグラフを見よう。習政権発足後の外準、対外負債の推移を追っている。外準の減少が昨年初めに底を打ち、徐々に持ち直してきたのだが、トレンドは2014年後半以来、下向きが続いている。対照的に対外負債は増え続け、昨年9月時点で負債は外準の1・6倍以上に達する。

 1年前と比べた増減を見ると、外準は昨年12月にプラスに転じたものの、15年初めから昨年9月まではマイナス続きだ。負債のほうは16年末から急増し、その一部が外準に流用されている。負債は外国からの直接投資と外債発行や融資に分かれるが、昨年からは外債・融資が急増している。直接投資のほうは外資の撤退が相次いでおり、新規投資から撤退分を差し引いた「純」ベースは黒字を保っているものの急減している。

 外部からの投資と言っても、多くは中国や華僑系企業が香港経由でケイマン諸島などタックスヘイブン(租税回避地)に設立したペーパーカンパニーによるもので、逃げ足が速い。不動産バブル崩壊不安が生じると、途端に引き上げる。しかも、中国系企業は資本逃避の術を心得ているので、当局の規制の網の目をくぐり抜ける。

 そこで、習政権はルールに従う日米欧などの外資系企業に目を付け、さまざまな難癖や規則を持ち出し、あの手この手で外貨の対外送金に待ったをかける。

 他方で、中国人の海外旅行者はアリババなどのスマホ決裁を利用して、日本などでショッピングする。代金は中国国内の銀行口座から引き落とされて対外送金されるので、それも外貨流出要因だ。安心・安全で高品質の日本製品は共産党幹部とその家族も欲しいから、購入を規制しない。おかげで、東京や大阪の百貨店や家電量販店、レストランなどはほくほく顔で、スマホ決済を受け入れる店舗が急速に増えている。

中国の企業が開発したスマホ決済システムの決済画面
 おまけに、トランプ米政権の大型減税や米金利上昇のあおりを受けて、中国からの資金流出圧力は高まる一方だ。思い余った習政権は今月からカードによる海外でのカネの引き出しを制限したようだが、中国人にとって対外送金の抜け道はいくらでもある。

 こうみると、習氏が日本に対し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や広域経済圏構想「一帯一路」への参加を懇願する理由がよくわかるだろう。中国は外部からの借金なしには、習氏の野望を前進させられない。

 人民元国際化は打開策だが、海外で元の自由市場が生まれると、中国本土の元管理相場が脅かされる。習氏の膨張主義は限界に直面している。日本は一帯一路など手助け無用だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!

上の記事簡単にいってしまうと、中国の外貨準備は対外負債によって賄われているということです。トランプ大統領の訪中は、「総額2500億ドル(約28兆円)相当の大型商談」のサプライズで終焉しましたが、この商談も借金によって賄われているということです。

この他にも中国は世界各地で大盤振る舞いをしていますが、それも借金によるものとということです。日本は、対外純金融資産(要するに外国に貸し付けているお金)が、世界一であることからみても、このような状況からは程遠い状況ですし、日本の外貨準備は無論海外からの借金で賄っているものではありません。

そのため、高橋洋一氏などは、円高ではなくなったことから、含み益もでてきたこの外貨準備の含み益分を取り崩して経済対策に使えと主張しています。日本は、そのようなことをやろうと思えばすぐにできます。ただし、とにかく何でも溜め込みたい財務省はなかなか首をたてに振らないので、できないだけです。しかし、日本が本当に金に困れば、これは財務省も使わざるを得ないことになるでしょう。

しかし中国の場合は、これは外国からの借金で賄っているわけですから、他の目的につかうことはなかなかできないわけです。これらの金は、AIIBや一帯一路で用いるのでしょうが、これも限界があります。

過去の中国は、国内のインフラ投資で経済を急速に発展させてきましたが、それも限界です。そのため、海外でインフラ投資をしてそれによって過去のような成長を維持させようというのが、AIIB、一帯一路の最終目的です。


しかし、AIIBも一帯一路もうまくはいかないでしょう。AIIBは結局のところ、アジア開発銀行(ADB)が銀行だとすれば、高利のサラ金のような事業しかできず先細りになるだけです。一帯一路に関しては、すでに世界には最適な航路などの輸送手段が合理的につくられてしまっているところに、今更中国が主導でそれをつくったとしても、さらに最適なものをつくることは不可能です。

そもそも、現在ある物流インフラは、人為的につくられたものではなく、各国の輸送業者などが、長年にわたって死に物狂いの競争を繰り広げた結果できあがったものであり、そこに後から中国が人的に作成してそれを上回るインフラをつくれるはずもありません。

シンガポールをハブとした東南アジアの物流
それでも、中国は無理やり資金を投下して、コストパフォーマンスの良さを演出するかもしれませんが、これも長続きはせず、結局破綻します。もし、これがうまくいくというのなら、社会主義・共産主義もうまくいっていたはずです。

中国は大きな妄想を抱いています。中国国内では、特に優れたノウハウがなくても、金貸しや、インフラの整備に成功したかもしれませんし、失敗して人民の不満が爆発してもそれを抑えることができましたが、外国相手ではそうはいきません。

もう、すでに綻びがではじめています。いつまでも対外負債にたよって、海外に投資を続けることなど不可能です。本来であれば、中国国内で内需を拡大してさらに経済を大きくするなどのことをして、それを実行すべきなのでしょうが、中国にはそのノウハウがないですし、そのためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通れないのですが、それを実行すると現中国の体制は崩壊します。

一帯一路で中国主導のインフラ整備を行う、そのための資金提供を行うという中国の目論見は単なる幻影にすぎません。今のままでは、八方塞がりで、自滅するしかありません。

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