2019年2月25日月曜日

価値観遠い3カ国“中韓北”排除で新「脱亜論」 日本は米英と連携強化を 識者「中韓北も豊かになれば…それは間違い」―【私の論評】東方の悪友を心で謝絶せよ(゚д゚)!


大原浩氏

いわゆる元徴用工の異常判決や国会議長の天皇陛下への謝罪要求など、反日なら何でも許される韓国。日本人拉致など人権侵害国家の北朝鮮。そして共産党一党独裁の中国。距離は近いが価値観が遠い3カ国と、日本は距離を置くべきだと主張するのは国際投資アナリストの大原浩氏だ。「脱・中韓北」の一方で「民主主義、人権、平等、契約」など基本的価値観を共有できる欧州やアジア各国と連携を強めるべきだと訴える。


 福沢諭吉が創刊した日刊紙「時事新報」で唱えられた「脱亜論」はあまりにも有名だが、ここで脱出すべきアジアとしたのは、現在の中国、韓国と北朝鮮の3カ国を意味しているといえるだろう。

 いまの中韓北の外交政策を見ても、「どのようなことにも謝罪しないで逆に威張る」のが通例だ。一度非を認めたら相手より立場が下になり、悲惨な状況に追い込まれると考える「自称・儒教国家」の側面だといえる。

 それぞれの国には、それぞれの文化・風習があるから、日本やその他の先進国と違うこと自体は非難すべきではない。しかし、「民主主義、人権、平等、契約」といった「基本的価値観」を共有できない国と貿易などできないことは、米中貿易戦争が明らかにした。

長年、西洋先進国は、中韓北も豊かになれば西洋の価値観を共有できると考えていたのだが、それは明らかな間違いであった。

 もちろん、日本は江戸時代のような鎖国をするべきではないから、価値観を共有できる国々とはもっと連携を強めることが必要だ。同じアジアでも、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国などは、中韓北が引き起こす厄災から日本を守るためにも協調すべき存在だといえよう。

 アベノミクスは、世間で言われているほどの効果はなかったと考えているが、民主党政権のように日本経済回復の邪魔をしなかっただけで、日本はここまでよくなった。

一方、外交面では、安倍晋三首相は明治以来の歴代首相の中でもトップクラスといえる大活躍をしているのではないか。特に、米国が離脱し空中分解しかけた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を「TPP11」という形でまとめ上げた。安倍首相はトランプ米大統領に高く評価されているだけではない。世界中の政治家をひきつける人望を持っているからこそ、難問を解決できたのである。

 実はTPP11加盟国のうち、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドは現在の英連邦16カ国に含まれる。そしてマレーシア、シンガポールはかつて英国領であった。

 TPP11の加盟国ではないが、インドもかつて英連邦に属していた。米国は独立戦争で英国と戦火を交えたが、文化的ルーツは英国にある。

 そして、戦略上最も重要な秘密情報を共有する「UKUSA協定」(ファイブアイズ)の加盟国は、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国である。

 このUKUSA協定は、もともと第二次世界大戦中にドイツの暗号システム「エニグマ」を米英共同で解読したことに端を発する。お互いの秘密情報を交換できるほどの信頼関係が英米間には今でも存在し、湾岸戦争やテロとの戦いなど今日の戦争でも米国は英国を『頼り』にしている。

 今年1月に米英海軍が、共産主義中国を牽制(けんせい)するために南シナ海で合同軍事演習を行ったことは象徴的である。

 英国は間もなく欧州連合(EU)を離れるが、そうなればTPP11に加盟することが可能だ。トランプ氏もTPP11の成功を見て、復帰の希望を持っているといわれる。

 TPP11は軍事戦略上も重要な意味を持っているし、もし米国と英国が加盟すれば世界の国内総生産(GDP)の40%に及ぶような巨大な経済圏になる。

 日本は米国とは黒船以来の付き合いだし、英国は明治維新で新政府軍を支持した。どちらの国も第一次世界大戦では「友軍」であった。日本は第一次大戦の戦勝国である。

 いいことずくめの「入英米(英連邦)」だが、懸案事項が一つある。「スパイ防止法」が整備されていない日本は、今のところ秘密情報を交換するUKUSA協定に加盟できる見込みがないということだ。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】東方の悪友を心で謝絶せよ(゚д゚)!

福沢諭吉

ブログ冒頭の大原氏が主張している考え方は、昔からありました。韓国の不実はいまに始まったことではありません。明治の傑出した知識人、福澤諭吉は当時すでにそのことを看破していました。「脱亜論」で彼はなぜ朝鮮を見限ったのでしょうか。いまこそその背景にある思想に学ぶべきです。
左れば斯る国人に対して如何なる約束を結ぶも、背信違約は彼等の持前にして毫も意に介することなし。既に従来の国交際上にも屡ば実験したる所なれば、朝鮮人を相手の約束ならば最初より無効のものと覚悟して、事実上に自ら実を収むるの外なきのみ。(『時事新報』明治三十年十月七日)
明治15年3月1日に発行された時事新報

これは福澤諭吉の言葉ですが、まさに現在の日韓関係の本質を言い当てていると思います。ただし福澤は決して「嫌韓」論者なのではありませんでした。後で引く有名な「脱亜論」もそうです。彼は西洋列強のアジアへの帝国主義的な侵略にたいして、明治維新によって近代化の道を拓いた日本こそが、中国や朝鮮にたいして力を貸して共に連帯して抗すべきであると考えていました。

また亜細亜という言葉から中国(清朝)と朝鮮を同じく捉えていたのではなく、むしろ朝鮮をアジア同胞として清韓の宗属関係から脱却させ日本のように文明化させることの必要性を説き尽力したのです。李氏朝鮮の旧体制(血族や門閥による支配)のままでは早晩、清国やロシアの植民地となり、それはそのまま日本の国難になるからです。

李朝末期のこの腐敗した絶望的な国を変革しようとした開化派を福澤は積極的に支援し、そのリーダーであった金玉均らの青年を個人的にも受け入れ指導教育を惜しみませんでした。また朝鮮に慶應義塾の門下生を派遣する行動を起こし、清朝の体制に取りこまれるのをよしとする朝鮮王朝の「事大主義」の変革をうながしました。


清仏戦争が勃発し、清国軍が京城から退却したのを機に開化派がクーデターを企てるが(甲申事件・明治十七年)、それが失敗に帰したことから、朝鮮における清国の影響力は決定的となりました。福澤のなかにあった日本による朝鮮の文明化の期待も潰えました。

日本に十年余り亡命した金玉均も明治二十七年上海で朝鮮の刺客に暗殺され、その遺体は無残に切断され国中に晒されました。福澤に「脱亜論」を書かしめたのも、朝鮮の開明派、独立派の人々への必死の支援がことごとくその固陋(ころう)な中国従属の封建体制によって無に帰したことによるものです。
我日本の国土はアジアの東辺に在りと雖ども、その国民の精神は既にアジアの固陋を脱して西洋の文明に移りたり。然るに爰に不幸なるは近隣に国あり、一を支那と云い、一を朝鮮と云う。
この近隣にある「二国」は、その古風旧慣に恋々するの情は百千年の古に異ならず……教育の事を論ずれば儒教主義と云い、学校の教旨は仁義礼智と称し、一より十に至るまで外見の虚飾のみを事として……道徳さえ地を払うて残刻不廉恥を極め、尚傲然として自省の念なき者の如し 。(「脱亜論」明治十八年三月十六日) 
福澤の文章の烈しさは、そのまま朝鮮の開化を祈念していた彼の思いの裏返しの憤怒でした。しかし福澤は「文明化」自体に絶対的な価値を置いていたのではありません。「脱亜論」の冒頭でも「文明は猶麻疹の流行の如し」といい、「有害一偏の流行病にても尚且その勢いには激すべからず」として文明化は利害相伴うものであることも語っています。

ちなみに、麻疹 とは、麻疹ウイルスによる急性熱性発疹性感染症のことです。中国由来の呼称で、発疹が麻の実のようにみえます。罹患すると、医療が整った先進国であっても死亡することもあります。

むろん福澤はアジアのなかで唯一文明化に成功した日本の選択を正しい選択であったとしています。大切なのは西洋文明の波がかくも急速に高く押し寄せているときに、旧態依然の「外見の虚飾」を捨てない朝鮮の政体と人民への絶望と苛立ちをはっきりと表明してみせた言論人としての姿勢です。
左れば今日の謀を為すに我国は隣国の開明を待て共に亜細亜を興すの猶予あるべからず、寧ろその伍を脱して西洋の文明国と進退を共にし、その支那、朝鮮に接するの法も隣国なるが故にとて特別の会釈に及ばず、正に西洋人が之に接するの風に従て処分すべきのみ。悪友を親しむ者は共に悪名を免かるべからず。我れは心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり。
当時も今も国際社会のなかで外交を「謝絶」することはできないです。問題は「心に於て」、すなわち日本はユーラシア・中華帝国の膨張の現実を前にして、この世界史に参与すべく如何なる「思想」を自ら打ち建てるかです。

韓国に関していえば日韓基本条約(一九六五年)で国交正常化をなし、日本から韓国への膨大な資金提供もあり「漢江の奇跡」と呼ばれた経済復興を成し遂げたにもかかわらず、日本のおかげというその現実を認めたくないがために慰安婦問題や戦時徴用工などの「歴史問題」を繰り出し続けてやみません。

その国家としての態度に日本は毅然とした「処分」を示さねばならないです。韓国がやっているのは、福澤のいうまさに「外見の虚飾のみを事として」の「背信違約」の狼藉三昧です。

かかる「悪友」への処し方を、われわれは今こそ明治国家の多極的な外交戦略と、その背後にあった福澤諭吉のような近代日本の思想的先達によくよく学ぶべきです。

現在の私達も「心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶」すべきと思います。

以下に資料として、「脱亜論」の現代語訳を掲載します。

 現在、西洋人の地球規模での行動の迅速さには目を見張るものがあるが、ただこれは科学技術革命の結果である蒸気機関を利用しているにすぎず、人間精神において何か急激な進歩が起こったわけではない。したがって、西洋列強の東洋侵略に対してこれを防ごうと思えば、まずは精神的な覚悟を固めるだけで充分である。西洋人も同じ人間なのだ。とはいえ西洋に起こった科学技術革命という現実を忘れてはならない。国家の独立のためには、科学技術革命の波に進んで身を投じ、その利益だけでなく不利益までも受け入れる他はない。これは近代文明社会で生き残るための必須条件である。

 近代文明とはインフルエンザのようなものである。インフルエンザを水際で防げるだろうか。私は防げないと断言する。百害あって一利も無いインフルエンザでも、一度生じてしまえば防げないのである。それが、利益と不利益を相伴うものの、常に利益の方が多い近代文明を、どのようにして水際で防げるというのだろう。近代文明の流入を防ごうとするのではなく、むしろその流行感染を促しつつ国民に免疫を与えるのは知識人の義務でさえある。 
 西洋の科学技術革命について日本人が知ったのはペリーの黒船以来であって、これによって、国民も、次第に、近代文明を受け入れるべきだという認識を持つようになった。ところが、その進歩の前に横たわっていたのが徳川幕府である。徳川幕府がある限り、近代文明を受け入れることは出来なかった。近代文明か、それとも幕府を中心とした旧体制の維持か。この二者択一が迫られた。もしここで旧体制を選んでいたら、日本の独立は危うかっただろう。なぜなら、科学技術を利用しつつ互いに激しく競いながら世界に飛び出した西洋人たちは、東洋の島国が旧体制のなかにひとり眠っていることを許すほどの余裕を持ち合わせてはいなかったからである。 
 ここに、日本の有志たちは、徳川幕府よりも国家の独立を重んじることを大義として、皇室の権威に依拠することで旧体制を倒し、新政府をうちたてた。かくして日本は、国家・国民規模で、西洋に生じた科学技術と近代文明を受け入れることを決めたのだった。これは全てのアジア諸国に先駆けており、つまり近代文明の受容とは、日本にとって脱アジアという意味でもあったのである。 
 日本は、国土はアジアにありながら、国民精神においては西洋の近代文明を受け入れた。ところが日本の不幸として立ち現れたのは近隣諸国である。そのひとつはシナであり、もうひとつは朝鮮である。この二国の人々も日本人と同じく漢字文化圏に属し、同じ古典を共有しているのだが、もともと人種的に異なっているのか、それとも教育に差があるのか、シナ・朝鮮二国と日本との精神的隔たりはあまりにも大きい。情報がこれほど速く行き来する時代にあって、近代文明や国際法について知りながら、それでも過去に拘り続けるシナ・朝鮮の精神は千年前と違わない。この近代文明のパワーゲームの時代に、教育といえば儒教を言い、しかもそれは表面だけの知識であって、現実面では科学的真理を軽んじる態度ばかりか、道徳的な退廃をももたらしており、たとえば国際的な紛争の場面でも「悪いのはお前の方だ」と開き直って恥じることもない。 
 私の見るところ、このままではシナ・朝鮮が独立を維持することは不可能である。もしこの二国に改革の志士が現れて明治維新のような政治改革を達成しつつ上からの近代化を推し進めることが出来れば話は別だが、そうでなければ亡国と国土の分割・分断が待っていることに一点の疑いもない。なぜならインフルエンザのような近代文明の波に洗われながら、それを避けようと一室に閉じこもって空気の流れを絶っていれば、結局は窒息してしまう他はないからである。 
『春秋左氏伝』の「輔車唇歯」とは隣国同志が助け合うことを言うが、現在のシナ・朝鮮は日本にとって何の助けにもならないばかりか、この三国が地理的に近い故に欧米人から同一視されかねない危険性をも持っている。すなわちシナ・朝鮮が独裁体制であれば日本もそうかと疑われ、向こうが儒教の国であればこちらも陰陽五行の国かと疑われ、国際法や国際的マナーなど踏みにじって恥じぬ国であればそれを咎める日本も同じ穴の狢かと邪推され、朝鮮で政治犯への弾圧が行われていれば日本もまたそのような国かと疑われ、等々、例を挙げていけばきりがない。これを例えれば、一つの村の村人全員が無法で残忍でトチ狂っておれば、たとえ一人がまともでそれを咎めていたとしても、村の外からはどっちもどっちに見えると言うことだ。実際、アジア外交を評する場面ではこのような見方も散見され、日本にとって一大不幸だと言わざるを得ない。 
 もはや、この二国が国際的な常識を身につけることを期待してはならない。「東アジア共同体」の一員としてその繁栄に与ってくれるなどという幻想は捨てるべきである。日本は、むしろ大陸や半島との関係を絶ち、先進国と共に進まなければならない。ただ隣国だからという理由だけで特別な感情を持って接してはならないのだ。この二国に対しても、国際的な常識に従い、国際法に則って接すればよい。悪友の悪事を見逃す者は、共に悪名を逃れ得ない。私は気持ちにおいては「東アジア」の悪友と絶交するものである。(明治18年3月16日)
以下に原文も掲載します。

世界交通ノ道便ニシテ西洋文明ノ風東ニ漸シ到ル處草モ木モ此風ニ靡カザルハナシ蓋シ西洋ノ人物古今ニ大ニ異ルニ非ズト雖ドモ其擧動ノ古ニ遲鈍ニシテ今ニ活發ナルハ唯交通ノ利器ヲ利用シテ勢ニ乘ズルガ故ノミ故ニ方今東洋ニ國スルモノヽ爲ニ謀ルニ此文明東漸ノ勢ニ激シテ之ヲ防キ了ル可キノ覺悟アレバ則チ可ナリト雖ドモ苟モ世界中ノ現狀ヲ視察シテ事實ニ不可ナルヲ知ラン者ハ世ト推シ移リテ共ニ文明ノ海ニ浮沈シ共ニ文明ノ波ヲ掲ケテ共ニ文明ノ苦樂ヲ與ニスルノ外アル可ラザルナリ文明ハ猶麻疹ノ流行ノ如シ目下東京ノ麻疹ハ西國長崎ノ地方ヨリ東漸シテ春暖ト共ニ次第ニ蔓延スル者ノ如シ此時ニ當リ此流行病ノ害ヲ惡テ之ヲ防カントスルモ果シテ其手段アル可キヤ我輩斷ジテ其術ナキヲ證ス有害一偏ノ流行病ニテモ尚且其勢ニハ激ス可ラズ况ヤ利害相伴フテ常ニ利益多キ文明ニ於テヲヤ啻ニ之ヲ防カザルノミナラズ力メテ其蔓延ヲ助ケ國民ヲシテ早ク其氣風ニ浴セシムルハ智者ノ事ナル可シ西洋近時ノ文明ガ我日本ニ入リタルハ嘉永ノ開國ヲ發端トシテ國民漸ク其採ル可キヲ知リ漸次ニ活潑ノ氣風ヲ催フシタレドモ進歩ノ道ニ横ハルニ古風老大ノ政府ナルモノアリテ之ヲ如何トモス可ラズ政府ヲ保存セン歟、文明ハ决シテ入ル可ラズ如何トナレバ近時ノ文明ハ日本ノ舊套ト兩立ス可ラズシテ舊套ヲ脫スレバ同時ニ政府モ亦廢滅ス可ケレバナリ、然ハ則チ文明ヲ防テ其侵入ヲ止メン歟、日本國ハ獨立ス可ラズ如何トナレバ世界文明ノ喧嘩繁劇ハ東洋孤島ノ獨睡ヲ許サヾレバナリ是ニ於テカ我日本ノ士人ハ國ヲ重シトシ政府ヲ輕シトスルノ大義ニ基キ又幸ニ帝室ノ神聖尊嚴ニ依頼シテ斷シテ舊政府ヲ倒シテ新政府ヲ立テ國中朝野ノ別ナク一切萬事西洋近時ノ文明ヲ採リ獨リ日本ノ舊套ヲ脫シタルノミナラズ亞細亞全洲ノ中ニ在テ新ニ一機軸ヲ出シ主義トスル所ハ唯脫亞ノ二字ニ在ルノミ
我日本ノ國土ハ亞細亞ノ東邊ニ在リト雖ドモ其國民ノ精神ハ既ニ亞細亞ノ固陋ヲ脫シテ西洋ノ文明ニ移リタリ然ルニ爰ニ不幸ナルハ近隣ニ國アリ一ヲ支那ト云ヒ一ヲ朝鮮ト云フ此二國ノ人民モ古來亞細亞流ノ政敎風俗ニ養ハルヽヿ我日本國ニ異ナラズト雖ドモ其人種ノ由來ヲ殊ニスルカ但シハ同樣ノ政敎風俗中ニ居ナガラモ遺傳教育ノ旨ニ同シカラザル所ノモノアル歟、日支韓三國相對シ支ト韓ト相似ルノ狀ハ支韓ノ日ニ於ケルヨリモ近クシテ此二國ノ者共ハ一身ニ就キ又一國ニ關シテ改進ノ道ヲ知ラズ交通至便ノ世ノ中ニ文明ノ事物ヲ聞見セザルニ非ザレドモ耳目ノ聞見ハ以テ心ヲ動カスニ足ラズシテ其古風舊慣ニ戀々スルノ情ハ百千年ノ古ニ異ナラズ此文明日新ノ活劇塲ニ敎育ノ事ヲ論ズレバ儒教主義ト云ヒ學校ノ敎旨ハ仁義禮智ト稱シ一ヨリ十ニ至ルマデ外見ノ虚飾ノミヲ事トシテ其實際ニ於テハ眞理原則ノ知見ナキノミカ道徳サヘ地ヲ拂フテ殘刻不廉耻ヲ極メ尚傲然トシテ自省ノ念ナキ者ノ如シ我輩ヲ以テ此二國ヲ視レバ今ノ文明東漸ノ風潮ニ際シ迚モ其獨立ヲ維持スルノ道アル可ラズ幸ニシテ其ノ國中ニ志士ノ出現シテ先ヅ國事開進ノ手始メトシテ大ニ其政府ヲ改革スルヿ我維新ノ如キ大擧ヲ企テ先ヅ政治ヲ改メテ共ニ人心ヲ一新スルガ如キ活動アラバ格別ナレドモ若シモ然ラザルニ於テハ今ヨリ數年ヲ出デズシテ亡國ト爲リ其國土ハ世界文明諸國ノ分割ニ歸ス可キヿ一點ノ疑アルヿナシ如何トナレバ麻疹ニ等シキ文明開化ノ流行ニ遭ヒナガラ支韓兩國ハ其傳染ノ天然ニ背キ無理ニ之ヲ避ケントシテ一室内ニ閉居シ空氣ノ流通ヲ絶テ窒塞スルモノナレバナリ輔車唇齒トハ隣國相助クルノ喩ナレドモ今ノ支那朝鮮ハ我日本國ノタメニ一毫ノ援助ト爲ラザルノミナラズ西洋文明人ノ眼ヲ以テスレバ三國ノ地利相接スルガ爲ニ時ニ或ハ之ヲ同一視シ支韓ヲ評スルノ價ヲ以テ我日本ニ命ズルノ意味ナキニ非ズ例ヘバ支那朝鮮ノ政府ガ古風ノ專制ニシテ法律ノ恃ム可キモノアラザレバ西洋ノ人ハ日本モ亦無法律ノ國カト疑ヒ、支那朝鮮ノ士人ガ惑溺深クシテ科學ノ何モノタルヲ知ラザレバ西洋ノ學者ハ日本モ亦陰陽五行ノ國カト思ヒ、支那人ガ卑屈ニシテ耻ヲ知ラザレバ日本人ノ義俠モ之ガタメニ掩ハレ、朝鮮國ニ人ヲ刑スルノ慘酷ナルアレバ日本人モ亦共ニ無情ナルカト推量セラルヽガ如キ是等ノ事例ヲ計レバ枚擧ニ遑アラズ之ヲ喩ヘバ比隣軒ヲ並ベタル一村一町内ノ者共ガ愚ニシテ無法ニシテ然カモ殘忍無情ナルトキハ稀ニ其町村内ノ一家人ガ正當ノ人事ニ注意スルモ他ノ醜ニ掩ハレテ堙沒スルモノニ異ナラズ其影響ノ事實ニ現ハレテ間接ニ我外交上ノ故障ヲ成スヿハ實ニ少々ナラズ我日本國ノ一大不幸ト云フ可シ左レバ今日ノ謀ヲ爲スニ我國ハ隣國ノ開明ヲ待テ共ニ亞細亞ヲ興スノ猶豫アル可ラズ寧ロ其伍ヲ脫シテ西洋ノ文明國ト進退ヲ共ニシ其支那朝鮮ニ接スルノ法モ隣國ナルガ故ニトテ特別ノ會釋ニ及バズ正ニ西洋人ガ之ニ接スルノ風ニ從テ處分ス可キノミ惡友ヲ親シム者ハ共ニ惡名ヲ免カル可ラズ我レハ心ニ於テ亞細亞東方ノ惡友ヲ謝絶スルモノナリ

明治18年(1885年)3月16日
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