2018年5月11日金曜日

北海道で安倍晋三首相、李克強首相をおもてなし 帰国見送る―【私の論評】李克強の来道には中国の壮大な目論見が関係している?

北海道で安倍晋三首相、李克強首相をおもてなし 帰国見送る

安倍首相(右から2人目)から説明を受ける李克強首相(中央)、
豊田社長(左から2人目)=11日、北海道苫小牧市

 安倍晋三首相は11日、訪問先の北海道で、来日中の中国の李克強首相の自動車工場視察に同行し、昼には食事会を開いて李首相をもてなした。安倍首相は同日午後、特別機で帰国する李首相を新千歳空港(千歳市)で見送った。

 両首脳は11日午前、苫小牧市内のトヨタ自動車北海道の工場を訪問し、トヨタ自動車の豊田章男社長から、次世代電気自動車(EV)や燃料電池自動車について説明を受けた。李首相はEVの走行距離やコストなどに関して熱心に質問し、自動運転技術に関する同社と中国側の共同研究の成果に期待を示した。

 その後、安倍首相は、恵庭市内の農業テーマパーク「えこりん村」で昼食会を主催し、懇親を深めた。

恵庭市内の農業テーマパーク「えこりん村」 写真はブログ管理人挿入

 これらに先立ち両首脳は同日午前、札幌市内で開かれた日中知事省長フォーラムに出席。安倍首相は「大切なことは両国の戦略的互恵関係を目に見える形で実行に移すことだ」などと述べた。

【私の論評】李克強の来道には中国の壮大な目論見が関係している?

なぜ今この時期に、李克強氏が北海道を訪問したのか、様々な憶測が飛び交っています。特に、北海道の土地が中国によって相当購入されていることと関連付けてサイト上では様々な憶測が流れています。産経新聞では、以下のように掲載しています。
李克強首相の北海道視察の狙いは? 日本の代表的な農業地視察で米牽制か
中国の李克強首相(右)と握手を交わす
北海道の高橋はるみ知事=10日夜、札幌市

 中国の李克強首相が就任後初の日本訪問で北海道を視察先に選んだ目的については、日本の代表的な農産地を訪れることで貿易摩擦が激化する米国を牽制する狙いがあると指摘される。

 巨額の貿易赤字削減を求めて制裁措置を連発する米国に対し、中国は牛肉や大豆などの米農産物に高関税を課して対抗。こうした措置には食糧安全保障上のリスクも存在するが、指導者が“代替地”を訪れることで「輸入先を失う危険性については懸念していないとの政治的シグナルを発することができる」(中国筋)というわけだ。

 中国の孔鉉佑外務次官は李氏訪日前の記者会見で視察の狙いを問われ、「北海道の農業は加工技術などに特色があり、中国農業の重要な参考になる」と発言。自動車メーカーの先端技術の見学も挙げた。

 中国の習近平国家主席は外交や経済分野でも自らへの権力集中を進めているが、今回の訪日は李氏が日本との“パイプ役”を担うチャンスだ。ただ日本への接近は国内の対日強硬派から足をすくわれるリスクにもなる。北海道は中国の人気映画のロケ地として観光客も多く、視察先として国内世論から受け入れられやすい無難な地でもあるといえそうだ。
 李克強といえば、中国の経済をみるときの指標として李克強指数が有名です。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
「ヤバい数字」を隠すため…?中国全人代の幹部人事のウラを読む―【私の論評】李克強の力を削いでも、中国の経済社会の矛盾がさらに蓄積されるだけ(゚д゚)!
中国副首相 左より 韓正、孫春蘭、胡春華、劉鶴 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、李克強指数に関する部分のみ以下に引用します。
これまで、経済政策は李克強首相が主導してきた。李氏は遼寧省の党委員会書記だったころ、「李克強指数」で有名になった。

これは、中国が発表するGDP統計は信頼できず、それよりも鉄道貨物の輸送量、銀行融資残高、電力消費の各統計から経済指数を導き出したほうが、信頼度が高いと発言したことに由来する。実際欧米のシンクタンクでは「李克強指数」を使って中国の経済の実力を測ろうとしてきた。

このエピソードが示すとおり、李氏は中国の経済の実態に通じていて、なかなか指摘しづらい政府のごまかしを率直に指摘してきた人物でもある。

さて、この記事では、李克強副首相について以下のようなことも掲載しています。
 筆頭副首相には共産党序列7位で政治局常務委員の韓正氏が就き、その他の副首相は習近平氏の側近で経済ブレーンの劉鶴氏らが担う。また、中国人民銀行の総裁は同行副総裁の易綱氏が昇格するなど、経済政策に強い人物を中央に固めた形となった。 
この人事は、習近平国家主席の「一強独裁」体制が色濃くなるなか、長期政権の運営には経済政策の強化が欠かせないと政府が考えてのことだろう。だがもうひとつの側面から見れば、習氏の独裁を維持するため、強力な「ナンバー2」の登場を阻止するためとも見てとれる。 

筆頭副首相には共産党序列7位で政治局常務委員の韓正氏が就き、その他の副首相は習近平氏の側近で経済ブレーンの劉鶴氏らが担う。また、中国人民銀行の総裁は同行副総裁の易綱氏が昇格するなど、経済政策に強い人物を中央に固めた形となった。 
この人事は、習近平国家主席の「一強独裁」体制が色濃くなるなか、長期政権の運営には経済政策の強化が欠かせないと政府が考えてのことだろう。だがもうひとつの側面から見れば、習氏の独裁を維持するため、強力な「ナンバー2」の登場を阻止するためとも見てとれる。 
しかし、劉氏の副首相起用で、李首相の影響力は一段と低下するだろう。筆頭副首相に共産党序列7位の韓正氏をあてたのも、政権運営で反抗分子となる存在を作らないためだと考えれば合点がいく。
なぜ、このような人事が行われ、李克強氏の力を削いでいようにみえるかといえば、李克強副首相は、胡錦濤派からでしょう。現在の習近平の独裁体制は、習近平と胡錦濤の接近によりもたらされたものですが、それにしても習近平は胡錦濤派の李克強のことを牽制しておきたいということだと思います。

この李克強がわざわざ北海道に来たわけです。そうして、北海道というと中国関連の企業などによりかなり土地が買い占められているということがわかっています。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道―【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない(゚д゚)!

 経済発展が続く中国では、人びとの購買意欲は止まるところを知らない。日本国内でも中国人投資家がマンションを購入するなどの事例は多く聞かれるが、中国メディアの今日頭条はこのほど、中国資本が北海道の不動産を購入していることを伝えつつ、「北海道が中国の省の1つになってしまうほど」の勢いだと伝えている。 
 農林水産省が2017年4月に発表した「外国資本による森林買収に関する調査の結果」によれば、2016年に外国資本が買収した日本の森林面積は202ヘクタールに及び、前年の約3倍になった。買収された森林の多くが北海道にあり、外国資本のうち8割が中国企業や中国資本だった。中国資本による買収に対し、日本では危惧の声があがっているが、購入の際に日本人の名前や架空の会社の名前を用いる中国企業が存在するために対策は難しいようだ。 
李克強が北海道に来た事自体は、直接は中国資本の不動産の購入とは関係ないかもしれませんが、李克強はこの事実については当然知っていて訪問していると思います。産経新聞の調査では、北海道ではすでに7万ヘクタール以上の土地が中国資本によって購入されているといわれています。

李克強としては、中米の貿易戦争の果てには、北海道の土地を中国資本がさらに購入して、北海道を中国への牛肉や大豆などの農産物の供給基地にしてみせるという意思を表明するために来道したのかもしれません。

さらには、北海道に中国の集積回路の工場と研究施設を設置し日本の技術者を厚遇で雇入れ、米国の集積回路が輸入できなくなっても、自前で製造できるようにするという目論見があるのかもしれません。あるいは、さらにはもっと壮大な目論見があるのかもしれません。

国際政治学者で福井県立大学教授の島田洋一氏は、「氷上のシルクロード」が日本の安全保障の不安材料になると指摘しています。中国当局が南シナ海周辺諸国の主張を無視して島嶼を占拠し、軍事目的と考えられる人工島の建造を続けていることを例に挙げました。

この地図では北極航路は宗谷海峡を通ることになっているが、
中国は補給基地として苫小牧や釧路を狙っている


「長い間、中国が軍事目的で北極海を利用したがっていることは、公然の秘密だった」と島田氏は英字紙サウスチャイナ・モーニングポストに対してこう述べました。「中国側は経済的なチャンスについて多く話している。貿易とビジネスの機会が増えることは確かだが、しかし、北京の決定は人民軍の動きを念頭に置いたものだ」

「南シナ海の島嶼を奪うために同様の論理的根拠を用いていた。中国側が単純にビジネスの思惑で動いていると捉えるのは、全く甘い考えだ」。

北海道を中心に外国資本による土地や資源買収を調査する前北海道議会議員・小野寺まさる氏は今年2月8日、時事評論番組「虎ノ門ニュース」に出演し、氷上のシルクロードにおいて北海道の釧路や苫小牧は中国当局の注目する港になっていると述べました。

小野寺氏の作成した解説地図によると、日本海に接しない中国本土は、中国当局が借款する北朝鮮の羅津港、清津港を使い津軽海峡を通り、北海道の釧路港と苫小牧港へ繋ぐといいます。

釧路日中友好協会によると、中国政府は、北海道最北の稚内と露サハリンの間にある宗谷海峡ではなく、北海道と青森県の間の津軽海峡が「国際航路の主流になることを確認している」というのです。

新千歳空港にも近い苫小牧港には、中遠海運の幹部2人が視察。昨年6月には北極海ルートで巡った貨物船が初入港しました。また、日本政府により国際バルク戦略港湾に選定された釧路港では大規模開発が進んでおり、ここ3年で中国大使館公使、程永華大使、一等書記官が視察しました。


1等書記官は釧路日中友好協会2016年12月例会に出席し、「北極海航路の試験運用に本腰を入れている。アジアの玄関口として、釧路には『北のシンガポール』となるような成長性を期待している」と述べまし。

同会会長の中村圭佐氏は2018年1月26日『日中友好・新春の集い』北海道・札幌日中友好協会に出席し、あいさつのなかで「習近平政権のめだま政策である『一帯一路』『氷上のシルクロード』では、釧路が国際的にも大変注目を集めている。 釧路市の発展はそのまま北海道の活性化に直結する命題」と強調しました。

中国共産党政権主導の経済計画が北海道に浸透していることが垣間見えます。小野寺氏は「これは(私の)妄想などではなく、中国による世界戦略の一つとして北海道が含まれているということを確認していただきたい」と述べ、広く周知を呼び掛けました。

李克強としては、この壮大な試みに関わることによって、習近平に恭順の意を表するという目論見があるのかもしれません。

なお、李克強はわざわざ日本に来て東京に一泊、北海道に二泊しています。この時点で異常であることがわかるはずです。 しかし、マスコミはどこもこれを指摘しませんでした。
高橋はるみ知事をはじめとして、日本の政治家たちはこれを理解しているのでしょうか。沖縄は従来から中国が影響力を及ぼしていることが知られていますが、北海道についてはほとんど知られてきませんでした。

今後の北海道での中国の動き、これからもこのブログでレポートしていきます。

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