アメリカのドナルド・トランプ大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(右) |
北朝鮮が南北閣僚級会談の中止を表明し、6月12日に予定されている史上初の米朝首脳会談の取りやめも示唆した。
これは、アメリカによる「核放棄の強要」や米韓合同軍事演習に対する反発が理由とされているが、瀬戸際外交を続けてきた北朝鮮の常套手段といえる。核実験場の閉鎖や拘束していたアメリカ人3人の解放など、融和に向けて動き出したと見せておいて、相手の態度が軟化しそうなタイミングで揺さぶりをかけるわけだ。
しかし、アメリカはあくまで制裁緩和よりも核放棄を優先する「リビア方式」を主張しており、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「北朝鮮による『完全で検証可能で不可逆的な非核化』という目標を取り下げることはしない」と表明している。
また、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は「北朝鮮が会談したければ、その用意はある。もし会談したくないのなら、それでもかまわない」と語っているが、北朝鮮はこの問いに対して「Yes」と言うしかないだろう。そもそも、会談が実現しても物別れに終わればアメリカが軍事攻撃に出る可能性すら取り沙汰されるなかで、「No」は空爆や斬首作戦の決行を意味するといっても過言ではない。
サラ・サンダース報道官 |
また、北朝鮮の発表は中国の劉鶴副首相らがアメリカを訪れるタイミングで行われた。5月15日から訪米している劉副首相は、17日からワシントンでスティーブ・ムニューシン財務長官らとの通商協議に臨む。アメリカは中国の通信機器大手である中興通訊(ZTE)に対して、「北朝鮮やイランへの輸出規制に違反した」という理由でアメリカ企業との取引禁止措置を取っており、それを受けてZTEは主力事業停止に追い込まれている。
中国はZTEへの制裁を解いてもらおうと必死で、同協議でも主題にのぼるとみられている。また、同協議は5月初旬に北京で第1回が行われたが成果は芳しくなく、中国にとっては今回が正念場といわれているのだ。
かねてドナルド・トランプ大統領は中国に北朝鮮問題への対応を迫っており、中国が解決に動けば貿易交渉などで譲歩する姿勢を示してきたという経緯がある。そんななか、このタイミングで北朝鮮が態度を変えたことは中国にとって大きなマイナス要因であり、メンツを潰されたといってもいいだろう。北朝鮮としてはアメリカのみならず中国に対しても強く牽制した格好であり、中国に対するなんらかの不満の表れと見ることもできる。
さらにいえば、可能性は限りなく低いが、仮に米朝首脳会談が直前で中止となれば、中国のメンツは完全に潰れることになると同時にアメリカの対中制裁もさらに容赦ないものになるだろう。
突然“韓国外し”に動いた北朝鮮の思惑
当日になって閣僚級協議を“ドタキャン”された韓国は「遺憾の意」を表明しているが、北朝鮮にとって韓国はすでに“用済み”の存在といえる。かねて北朝鮮はアメリカとの直接対話を望んでおり、そのために韓国を利用してきた側面がある。そして、平昌オリンピックの南北合同チーム結成をはじめとする融和ムードを醸成することで、アメリカは北朝鮮との直接交渉に乗り出した。
それにともない、中国も北朝鮮との話し合いを再開した。つまり、北朝鮮とすれば米中の2大国と韓国抜きで交渉できる体制が整ったことになり、それゆえ“韓国外し”を始めたわけだ。そもそも、朝鮮戦争の休戦協定は、アメリカ主導の国連軍と朝鮮人民軍、中国人民義勇軍によって締結されたもので、休戦に反対していた韓国は署名していない。つまり、韓国は休戦協定に関しては当事国ではなく、韓国抜きで話し合いが進められたとしても不自然ではない。
また、将来的に考えても、金正恩体制にとって韓国の存在はプラスにはならないだろう。南北間の交流が盛んになりヒトやモノの移動が自由化されれば、北朝鮮内に民主化の動きが生まれる可能性が高いからだ。言うまでもなく、それは金正恩体制の崩壊につながる。北朝鮮の最大の目的は現体制の維持であり、そのためにマイナスとなる要素は徹底的に排除する方向だ。そう考えると、北朝鮮としてはクーデターの萌芽となり得る事態は避けたいのが本音だろう。
中国・ZTEへの制裁緩和に米議会が反対
米中の貿易摩擦も、予断を許さない状況だ。ZTEへの制裁緩和について、トランプ大統領が検討を示唆したことで既定路線になるかと思われたが、議会は共和党、民主党ともに反対しているため実現の可能性は低い。
すでに、国防権限法案にはアメリカ政府機関がZTEの製品を使用することを禁止する項目が盛り込まれており、共和党のマック・ソーンベリー下院軍事委員長は「(同項目について)議員らが削除を求めるとは見込んでいない」と発言している。
毎年、アメリカは同法で軍事的な予算や計画を策定しており、そこには経済制裁なども含まれている。同法案の内容を修正するには議会の承認を得なければならず、これは大統領の一存で強行することはできない。上下両院を通過後に大統領が署名しないという手段もあるが、そうなるとすべての軍事的案件がストップしてしまいかねない。そのため、法案の審議過程で同項目を削除する必要があるわけだが、トランプ大統領が議会の強い反対を押しのけてまで実行するメリットがあるとは思えない。
いずれにせよ、米朝首脳会談に向けて、もう一波乱も二波乱もありそうな展開だ。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
【私の論評】中・韓・北の常套手段に惑わされることなく、我が国は独自の道を歩むべき(゚д゚)!
ムニューシン米財務長官 |
冒頭の記事にある米中貿易戦争ですが、ムニューシン米財務長官は20日、米中貿易戦争をいったん「保留」にする、と述べました。
米中両政府は19日、ワシントンで17─18日に開いた通商協議の共同声明を発表しました。中国が米国の製品やサービスの購入を大幅に増やすことで合意しましたが、米国が求めていた対米貿易黒字の2000億ドル削減への言及はありませんでした。
ムニューシン氏は、農業分野の中国向け輸出は今年だけでも35─40%増加し、エネルギー分野の輸出に関しては向こう3─5年で2倍になると述べ、公表はしないが業界別に特定の目標があると説明しました。
中国の在ワシントン大使館はムニューシン氏の発言に関し、コメント要請に応じていません。
ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は20日付の声明で、米国製品に対する中国市場の開放拡大は重要だが、中国で米企業が技術の移転を強いられている問題やサイバー空間での産業情報の窃盗を解決するほうが重要度が高いと指摘しました。
「真の構造的変革が必要とされている。それが果たされなければ多数の米国人の雇用が将来的に脅かされることになる」と強調した。
米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長はCBSテレビの報道番組で、中国が約束した米国製品・サービスの購入について、対米貿易黒字の2000億ドル削減を確定するのは時期尚早だと指摘。「詳細はやがて明らかになる。こういった取り決めはそれほど綿密ではない」とした。
同氏はABCテレビの番組で、大枠では問題への対応が約束されており、中国は関税や非関税障壁の引き下げといった「構造改革」を進める意向を示したと説明。トランプ大統領は「これについて非常に好印象を受けている」とした。
ただ、両国間の通商協定に関する合意はまだないと表明しました。
ムニューシン長官とカドロー氏によると、今後は、ロス商務長官を中国に派遣し、エネルギーや液化天然ガス(LNG)、農業、製造業など大幅な輸出増を目指す分野について検討することになります。
米国は一時は中国との貿易戦争を保留しますが、これはあくまで保留であって、中国の出方によってはどうなるかはわかりません。そうして、このブログにも以前掲載したように、真っ向から米中が貿易戦争をした場合には、中国には全く勝ち目はありません。
韓国企業の輸出競争力の低下が懸念される中、韓国は突然、米国を除く11カ国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP11)への加入や金融危機時に日韓で通貨を融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」の再開に意欲を示し始めています。
しかし、このブログにも以前掲載したように、知的財産権に無頓着な韓国は、そもそも最初からTPPに参加できるような国ではありません。さらに、通貨スワップも日本にとってメリットなど何もありません。
そもそも、日韓合意を反故にしようという国が、TPPに加盟したいとか、通貨スワップを再開せよなどいっても、我が国がそれに応じる義理などありません。拉致被害者問題にしても、北朝鮮の直接交渉すれば良いので、韓国と付き合う意味もありません。
日本としては、北朝鮮とその後ろ盾とみられる中国に対しても、「北朝鮮による『完全で検証可能で不可逆的な非核化』ならびに「拉致被害者問題の完全解決」以外は受け付けず、北がそれに応じないというのなら、さらに徹底した制裁を継続すべきです。
瀬戸際外交を続けてきた北朝鮮が融和に向けて動き出したと見せておいて、相手の態度が軟化しそうなタイミングで揺さぶりをかけるという常套手段などにだまされることなく、制裁を続行すべきです。
そうして、皆さんもお気づきでしょうが、この常套手段は何も北朝鮮だけではありません。韓国も中国も同じような常套手段を良く使います。
融和的態度をみせながら、日本が軟化しそうなタイミングで反日や尖閣付近での示威行動などありとあらゆる手段を用い、揺さぶりをかけるのです。
日本としては中国、北朝鮮、韓国のこうした常套手段に幻惑されることなく、我が国の進むべき道を歩むべきです。
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