海上自衛隊は7日、米国、インドの海軍と沖縄本島の東方海域で共同訓練を行うと発表した。10日から17日まで。昨年10月のインド洋に続き、日本の南西諸島周辺で3カ国が共同訓練をすることで、海洋進出を強める中国をけん制する。
海上自衛隊からは空母のような形をした大型護衛艦や、新型の国産哨戒機、インドとの間で輸出協議を進めている救難飛行艇が参加する。対潜水艦や対空などの戦闘訓練を行う。米海軍からは空母が参加する見込み。
この訓練は「マラバール」と呼ばれ、もともとは米印2カ国が毎年行ってきた。日本は2007年に初めて加わり、今回で5回目となる。前回は昨年10月、インド洋のベンガル湾での訓練に参加した。
南シナ海とインド洋、東シナ海で動きを活発化させる中国に対し、米国やインド、日本などは警戒を強めている。米国は、中国が南シナ海で造成する人工島の近くに艦船を派遣。また、懸念を共有する各国が、共同訓練や装備協力を通じて連携しつつある。
【私の論評】南西諸島における海自による「航行の自由作戦」の予兆か(゚д゚)!
インド海軍 手前は空母「ヴィラート」 |
マラバールは1992年に始まりました。インドの核実験が原因で1998年から中断していたのですが、2002年に再開、その後は毎年行われています。基本的には米印の2国で行われるものですが、他国が招待国としてゲスト参加することがあります。日本も過去2007年、09年、14年、15年のマラバールに参加している。
昨年までのマラバール
以下に昨年までのマラバールについて振り返っておきます。
2007年に2度あったマラバールのうち、インド洋ベンガル湾で行われた2回目は、日本、オーストラリア、シンガポールが参加し、5ヶ国で行われたが、中国がこれに対して強く反発しました。ロイターによると、中国国内ではこの演習について、ヨーロッパのNATOのようなアメリカ主導の安全保障グループ作りとみなす者もいて動揺が引き起こされたそうです。
印英字紙ビジネス・スタンダード(BS)のウェブサイトによると、その後、中国政府は外交的攻撃を行ったそうです。米国営放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、インド政府は中国の圧力に屈して、その後、マラバールがインド洋で行われる際には、印米の2国演習に限定した、と伝えていました。BSは、マラバールは1年おきに西太平洋で実施されることになった、と伝えていました(例外あり)。
しかし、昨年のマラバールは2007年と同じくインド洋ベンガル湾で行われました。日本がインド洋でのマラバールに参加したのは8年ぶりでした。ロイターは、中国をいら立たせそうな海上軍事演習、と伝えていました。VOAは、戦略専門家らが、昨年「今年の日本の参加を、日米印3国間の安保協力の強化にとって重大なターニングポイントとみなしている」と伝えていました。また専門家らは、インドのアメリカとその同盟国への接近に対して中国が過敏に反応するという従来の懸念を、モディ首相が振り払いつつあることの表れともみなしていました。
昨年のマランバールに参加した海上自衛隊の「ふゆづき」 |
日本が固定メンバーとしてマラバールに継続的に参加するようになることについては、昨年9月のモディ首相訪日時の日印首脳会談で両首脳が「重視した」、と共同宣言で伝えられている。
中国は日本がマラバールの固定メンバーになることを警戒していました。昨年10月10日付の印英字紙ヒンズーは、日本が継続的な参加国となるかを判断するために、中国はやがて行われるマラバールを注意深く監視している、と伝えました。また国営新華社通信が、米政府が「印米のマラバール海上軍事演習を、日本を継続的な参加国として含む3国合同の枠組みに変えることを追求」しているとしたことを引用しました。
昨年、9月にアメリカで行われた日米印外相の初の3者会合のために、中国の懸念が強まった、とオブザーバーらが指摘していると同紙は伝えました。その会合の共同メディアノートでは、日米印3ヶ国の外相は、インド太平洋地域における3ヶ国の利益の更なる一致を強調した、とされています。また、日米印の外相は、南シナ海におけるものを含め、国際法及び紛争の平和的解決、航行及び上空飛行の自由、ならびに阻害されない法に従った通商活動の重要性も強調した、とされていました。ヒンズー紙はこれらを中国への遠回しな言及としていました。
初の3者会合で握手する(左から)岸田文雄外相、ケリー米国務長官、 インドのスワラジ外相=昨年9月29日 ニューヨーク |
今年のマラバール
さて、昨年はこのマラバールのあった月である、10月の下旬から米国による「航行の自由作戦」が実行され、南シナ海にイージス艦「ラッセン」が派遣されました。
そうして、今年のマラバールは、日本の南西諸島周辺で3カ国が共同訓練することになっています。
南西諸島周辺とは一体どの地域を指すのでしょう。その地域を以下に示します。
南西諸島 |
「南西諸島」という名称は、現在の海上保安庁の前身である水路部が中心となって1887年(明治20年)頃に命名した地名とされ、翌年発行した海図『石垣泊地 日本・南西諸島・石垣島』にその名称が初めて記載されています。1894年(明治27年)発行の『日本水路誌』以降の海図から本格的に使用され、また国土地理院の前身の1つである日本陸軍陸地測量部による1937年(昭和12年)発行の陸図にも記載されています。しかし、「南西諸島」は公共機関が決定した行政名称であって、地理学・地球科学で用いられる専門用語ではありません。
これらの地域には、大隅諸島 、吐噶喇列島、奄美群島、琉球諸島、沖縄諸島 (沖縄島、久米島、硫黄鳥島など)、慶良間列島、先島諸島、宮古列島、八重山列島、尖閣諸島、大東諸島が含まれています。この広大な地域のいずれかで、演習が行われるということで、一体どこで実施するのかは、わかりませんが、これは当然のことながら、尖閣列島や、沖縄に対する中国に向けての牽制であることは、間違いありません。
新たな「航行の自由作戦」の始まりか
さて、尖閣といえば、読売新聞は今年の1月12日付で、日本政府が、中国軍艦が尖閣諸島周辺の12海里(22キロメートル)以内の領海に侵入することに備える新たな措置として、国際法上許容されている無害通航権を認めず、すぐに海上警備行動を発令する方針を決めたことが確認されたと報じました。今後、中国軍艦が尖閣諸島周辺12海里以内へ侵犯すれば、海上自衛隊がすぐに現場に投入され、即刻退去を要求することになります。
現行の国際海洋法条約によると、軍艦を含むすべての船は、その国の平和、安全、秩序などを脅かさない限り、他国の領海を自由に航行できる無害通航権が認められていますが、日本は中国の軍艦に対してこれを認めないことにしたのです。日本政府関係者は、「中国が無害通航権を主張することは、日本の尖閣諸島領有を認めることと同義になる」とし、中国がこれに対して抗議する可能性はないと見ています。
日本政府がこのような方針転換に乗り出したのは、昨年11月に中国海軍の情報収集船が尖閣諸島周辺の接続水域(陸から24海里以内)を一日かけて東西方向に反復航行するなど、最近になって中国海軍の不審な動きが急激に増えたからです。海上警備行動が発令されると、自衛隊は正当防衛に当たる場合などには、武器を使用できるようになっており、日中海軍間の偶発的な衝突が発生する可能性もあります。日本でこれまで海上警備行動が発令されたのは、1999年に北朝鮮の工作船と推定される船が日本の海岸に姿を現した場合など、3回しかありません。
現行の国際海洋法条約によると、軍艦を含むすべての船は、その国の平和、安全、秩序などを脅かさない限り、他国の領海を自由に航行できる無害通航権が認められていますが、日本は中国の軍艦に対してこれを認めないことにしたのです。日本政府関係者は、「中国が無害通航権を主張することは、日本の尖閣諸島領有を認めることと同義になる」とし、中国がこれに対して抗議する可能性はないと見ています。
日本政府がこのような方針転換に乗り出したのは、昨年11月に中国海軍の情報収集船が尖閣諸島周辺の接続水域(陸から24海里以内)を一日かけて東西方向に反復航行するなど、最近になって中国海軍の不審な動きが急激に増えたからです。海上警備行動が発令されると、自衛隊は正当防衛に当たる場合などには、武器を使用できるようになっており、日中海軍間の偶発的な衝突が発生する可能性もあります。日本でこれまで海上警備行動が発令されたのは、1999年に北朝鮮の工作船と推定される船が日本の海岸に姿を現した場合など、3回しかありません。
菅義偉・官房長官は12日の定例記者会見で、「昨年5月に閣議決定している。日本領海で無害通航に該当しない航行を行う外国軍艦への対処に関し、海上警備行動を発令し、自衛隊の部隊により退去要求と措置を行うことを基本としている。昨年11月に中国海軍の情報収集艦が尖閣諸島周辺を反復航行した際には、外交ルートを通じた関心を表明をした。具体的な内容については(言及を)控えたい」と述べました。
今年のマラバールが南西諸島で行われるのは、当然のことながら、このことと多いに関係があるものとみられます。
日本としては、今年のマラバールは、「中国に無害通航権を認めず、すぐに海上警備行動を発令する方針」を中国に通知するだけではなく、この方面で日米印の共同演習を行うことにより、中国を牽制する意味があったものと考えられます。
さて、昨年のマラバールの直後に、南シナ海での「航行の自由作戦」があったことを考えると、今年のマラバールの直後にも何かがあるかもしれません。
もしかすると、日本の海上自衛隊による尖閣、沖縄付近の海域の「航行の自由作戦」が始まるかもしれません。
日本としては、南西諸島の領海と尖閣諸島周辺12海里のみを海自の護衛艦がパトロールすれば良いものと思います。
昨日は、このブログで、中国の孫建国連合参謀部副参謀長が、アジア安全保障会議において、「南シナ海は昔から中国のものだ」と自説を繰り返し、「一部の国が問題を過熱させている」「ある国は『航行の自由』を都合良く解釈して武力をひけらかし、徒党を組んで中国に対抗している」と、強い調子で米国などを牽制(けんせい)したことを掲載しました。
そうなると、南シナ海における「米中激突」は、まさに「いまそこにある危機」ということになります。
ある日本政府関係者は、こう漏らしたそうです。
「先の伊勢志摩サミットでの日米首脳会談で、オバマ大統領は、『日本も自衛隊を南シナ海に派遣する覚悟はできているんだろうな』と、安倍総理に問い質した。南シナ海問題は、日本にとっても、いよいよ対岸の火事ではなくなってきた」
たしかに、南シナ海が中国の「内海」となれば、中東から日本へ至るシーレーンを中国が支配することになり、日本の生殺与奪を中国に握られることになります。そのようなことは、最初からわかつていたことで、南シナ海問題は、まさに対岸の火事ではないのです。
「先の伊勢志摩サミットでの日米首脳会談で、オバマ大統領は、『日本も自衛隊を南シナ海に派遣する覚悟はできているんだろうな』と、安倍総理に問い質した。南シナ海問題は、日本にとっても、いよいよ対岸の火事ではなくなってきた」
たしかに、南シナ海が中国の「内海」となれば、中東から日本へ至るシーレーンを中国が支配することになり、日本の生殺与奪を中国に握られることになります。そのようなことは、最初からわかつていたことで、南シナ海問題は、まさに対岸の火事ではないのです。
日本としては、まずは尖閣・沖縄は自らの手で守ることを要求され、さらに南シナ海においては、直接イージス艦などの艦艇を派遣することはできないかもしれませんが、対潜哨戒機などの派遣による監視活動などが求められることになるかもしれません。
そうして、その第一段階として、もし中国が今後も、尖閣諸島周辺の接続水域(陸から24海里以内)南西諸島付近における航行をやめないならば、日本の海上自衛隊による「航行の自由作戦」が行われることになるでしょう。
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