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2016年6月9日木曜日

政府 中国軍艦艇の接続水域入り受けNSC開催へ―【私の論評】日本の南西諸島付近の日米印演習「マラバール」に対する牽制か?

政府 中国軍艦艇の接続水域入り受けNSC開催へ

本日の産経新聞の号外 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

政府は、中国海軍の艦艇が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に初めて入ったことを受けて、9日夜、NSC=国家安全保障会議の4大臣会合を開き、情報の分析結果などについて報告を受けたうえで、警戒・監視に万全を期すことなどを確認する見通しです。

9日午前0時50分ごろから午前3時10分ごろにかけて、沖縄県の尖閣諸島の周辺海域で、中国海軍のフリゲート艦1隻が日本の領海のすぐ外側にある接続水域に入ったほか、ロシア海軍の駆逐艦など3隻も8日夜から9日未明にかけて付近の接続水域に入りました。

尖閣諸島の領有権を主張する中国の軍の艦艇が接続水域に入るのは初めてで、政府は、安倍総理大臣が訪問先の山形県から戻りしだい、午後7時ごろからNSC=国家安全保障会議の4大臣会合を開くことを決めました。会合では、外務省や防衛省から、中国海軍の艦艇が接続水域に入った状況や、日本側がとった対応などに加えて、これまでに入っている情報の分析結果などについて報告を受け、情報の共有を図ることにしています。そして、会合では、安倍総理大臣の指示を踏まえ、アメリカなどと緊密に連携して、不測の事態に備え警戒・監視に万全を期すことなどを確認する見通しです。

中国国防省 「合法」と主張

中国の国防省は9日午後、中国海軍の艦艇が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に入ったことについてコメントを発表しました。この中で、尖閣諸島について「中国固有の領土だ」としたうえで、「中国軍の艦艇が自国の管轄海域を航行することは、合理的かつ合法であり、ほかの国がとやかく言う権利はない」と主張しました。

中国政府は、今回の航行の目的など詳しいことは明らかにしていません。ただ、中国政府は、南シナ海での急速な海洋進出を日本がアメリカと共に強く批判していることなどにいらだちを募らせており、今回、尖閣諸島周辺の接続水域内に海軍の艦艇を派遣することでこの海域への自国の主張を強め、日本をけん制するねらいがあった可能性があります。

東シナ海の上空では7日に、中国軍の殲10戦闘機2機が、アメリカ海軍の偵察機RC135の飛行を妨害し、このうち1機が急接近したとして、アメリカ軍が中国側に危険な行為だと抗議しています。

ロシア大使館「中国と関係ない」

ロシア海軍の駆逐艦など3隻が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に入ったことについて、東京にあるロシア大使館はツイッター上で、「誤解がある」としてコメントを出しました。この中で、「当海域では、中国と関係なく、ロシア海軍が定例の演習を行い、日本の領海に入ることは当然ない」と説明しています。そのうえで、「ほかの諸国、ならびに日本とアメリカも主張する『航海の自由』の原則どおりで、心配はない」として、中国が実効支配を強める南シナ海にアメリカ軍の艦艇を派遣する「航行の自由」作戦を引き合いに出して、ロシア海軍による航行には問題ないと主張しています。

中ロの艦艇は以前にも日本周辺を航行

今回、尖閣諸島沖の接続水域を航行した艦艇は、以前にも、日本周辺海域での航行が確認されています。

このうち中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦は、去年12月、沖縄本島と宮古島の間の公海上を東シナ海から太平洋に向けて航行しているのが確認されています。

ジャンカイI級フリゲート艦
また、ロシア海軍の艦艇のうち1隻はウダロイI級ミサイル駆逐艦で、ことし3月、対馬海峡を南下し、日本海から東シナ海に向けて航行しているのが確認されています。

ウダロイI級ミサイル駆逐艦
中ロ艦艇の航行目的は

尖閣諸島を巡っては、中国側が領有権を主張しているのに対し、ロシア側は領有権を主張していないため、防衛省は、中国とロシアの艦艇では、接続水域を航行することの意味は異なるとしています。

防衛省によりますと、ロシア海軍の艦艇は、過去にも尖閣諸島の沖合の接続水域を通過したことがあるということです。

一方、今回、中国海軍の艦艇は、ロシア海軍の艦艇の動きに対応して接続水域を航行した可能性もあるとみられ、尖閣諸島の領有権を主張する中国側が、今回、どのような目的で艦艇を航行させたのかについて分析を進めています。

統合幕僚長「事態のエスカレーション避けたい」

自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長は9日の定例の記者会見で、「事態をエスカレーションさせることは避けたい」と述べました。

会見で、河野統合幕僚長は「今回のことは、緊張を高める一方的な行動であり、深刻な懸念を持っている」と述べました。一方で、河野統合幕僚長は「中国側が、日本側の今回の抗議を真剣に受け止めることを期待している。外交ルートで解決するのがベストであり、自衛隊として、事態をエスカレーションさせることは避けたい」と述べました。

元海将 日米のリアクション

今回のケースについて、金沢工業大学虎ノ門大学院の教授で、海上自衛隊で呉地方総監を務めた伊藤俊幸元海将は、「海軍の艦艇を航行させており、国家としての意思を反映したものと言える。中国の海洋政策に対し、日米が『間違っている』と主張していることに対するリアクションとも受け取れる。中国当局の船による領海への侵入にとどまらず、今後、軍艦による航行へと既成事実を積み重ねながら、仮に中国側が事態をエスカレーションさせていくとすれば非常に危険なことだ」と指摘しました。

一方で、今後の対応について、「国際法上は問題のない海域での航行なので、冷静に対応すべきだ。同時に、中国側は、日米がどのような反応を示すのかを見ており、日本はアメリカをはじめ広く国際社会に、今回のような中国側の行動が受け入れらないものであると訴え、事態のさらなるエスカレーションを中国側に踏みとどまらせる必要がある」と話しています。

【私の論評】日本の南西諸島付近の日米印演習「マラバール」に対する牽制か?

さて、この中国の軍艦の動き、そうしてもしかするとロシアの軍艦の動きも、先日このブログでも掲載した、今月の10日から17日まで、日本の南西諸島付近で行う、日米印で行う演習である「マラバール」と関係しているのではないかと思います。

「マラバール」に関連した今月7日のこのブログの記事のリンクを以下に掲載します。
海自が米・インドと共同訓練、中国にらみ沖縄の東方で―【私の論評】南西諸島における海自による「航行の自由作戦」の予兆か(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、海上自衛隊は7日、米国、インドの海軍と沖縄本島の東方海域で共同訓練を行うと発表したことを掲載しました。これは、10日から17日まで、昨年10月のインド洋に続き、日本の南西諸島周辺で3カ国が共同訓練「マラバール」をすることで、海洋進出を強める中国をけん制をするというものです。さらにこの記事では、昨年までの「マラバール」についても詳細を解説しました。

中国側からすれば、今回の「マラバール」が尖閣列島も含まれる南西諸島周辺で行われること、さらには昨年の「マラバール」の直後には、米国は南シナ海で「航行の自由作戦」を開始しているという事実もあり、当然のことながらこの演習には神経を尖らせているはずです。

ブログ冒頭の記事には、掲載されていませんが、日本政府が中国軍の艦艇がこの水域に入ったことに神経を尖らすには、それなりの理由があります。

その理由とは、その部分をこの記事から以下に引用します。
さて、尖閣といえば、読売新聞は今年の1月12日付で、日本政府が、中国軍艦が尖閣諸島周辺の12海里(22キロメートル)以内の領海に侵入することに備える新たな措置として、国際法上許容されている無害通航権を認めず、すぐに海上警備行動を発令する方針を決めたことが確認されたと報じました。今後、中国軍艦が尖閣諸島周辺12海里以内へ侵犯すれば、海上自衛隊がすぐに現場に投入され、即刻退去を要求することになります。 
現行の国際海洋法条約によると、軍艦を含むすべての船は、その国の平和、安全、秩序などを脅かさない限り、他国の領海を自由に航行できる無害通航権が認められていますが、日本は中国の軍艦に対してこれを認めないことにしたのです。日本政府関係者は、「中国が無害通航権を主張することは、日本の尖閣諸島領有を認めることと同義になる」とし、中国がこれに対して抗議する可能性はないと見ています。 
日本政府がこのような方針転換に乗り出したのは、昨年11月に中国海軍の情報収集船が尖閣諸島周辺の接続水域(陸から24海里以内)を一日かけて東西方向に反復航行するなど、最近になって中国海軍の不審な動きが急激に増えたからです。海上警備行動が発令されると、自衛隊は正当防衛に当たる場合などには、武器を使用できるようになっており、日中海軍間の偶発的な衝突が発生する可能性もあります。日本でこれまで海上警備行動が発令されたのは、1999年に北朝鮮の工作船と推定される船が日本の海岸に姿を現した場合など、3回しかありません。
菅義偉・官房長官は12日の定例記者会見で、「昨年5月に閣議決定している。日本領海で無害通航に該当しない航行を行う外国軍艦への対処に関し、海上警備行動を発令し、自衛隊の部隊により退去要求と措置を行うことを基本としている。昨年11月に中国海軍の情報収集艦が尖閣諸島周辺を反復航行した際には、外交ルートを通じた関心を表明をした。具体的な内容については(言及を)控えたい」と述べました。
このように、日本政府は、中国軍艦が尖閣諸島周辺の12海里(22キロメートル)以内の領海に侵入することに備える新たな措置として、国際法上許容されている無害通航権を認めず、すぐに海上警備行動を発令する方針を決めたことと、今月10日から尖閣列島を含む、南西諸島付近で「マラバール」を実行するわけですから、これは中国にとって脅威です。

その直前に中国軍の艦船が、尖閣諸島周辺の接続水域に初めて入ったわけですから、これは当然のことながら、中国側の牽制とみるのが自然です。

ロシアに関しては、情報が少ないので何ともいえませんが、少ない情報の中から考えられることは、かつては旧ソ連との関係が強かったインドが、最近ではアメリカとの関係を強化、さらに日本とも強化し、日米印の共同訓練「マラバール」を日本の南西諸島付近で実行するというのですから、それに対する牽制という意味があるのかもしれません。

さらに、中国は、実際に接続水域に中国の軍艦が入った場合、日本がどのような行動をするのか、試しているというところがあると思います。接続水域に軍艦を派遣しても、日本が抗議をするだけで、実行動を起こさなければ、さらに何度も軍艦を派遣して、いずれ軍艦を派遣するのは当たり前であるかのような状況をつくりだそうとしているのかもしれません。

しかし、現状でも尖閣付近領海を侵犯はしていません。ここを侵犯すれば、中国の艦船が待っているのは、2001年に北朝鮮の工作船が領海侵犯ときのような運命をたどることでしょう。この工作船は、ご存知のように、海上保安庁の船に追跡され、銃撃され最終的には逃げきれないと判断して自爆しました。以下にそのときの顛末が掲載された動画を掲載します。



この時は、相手が不審船であり、軍艦ではなかったので、海上保安庁の巡視船が不審船に対して銃撃をしました。今回は中国は、公船ではなく、軍艦を派遣してきているわけですから、これは当然のことながら、海上自衛隊が対峙することになります。

もし中国が軍艦の派遣を繰り返すなら、当然のことながら、日本も海上自衛隊の護衛艦および潜水艦や対潜哨戒機も派遣することになります。

そうなると、中国は海軍力では日本にはかなり劣っているので、中国側はなす術がなくなります。特に潜水艦の能力と、対潜哨戒能力は日本に比較するとかなり劣っています。もし、領海を侵犯すれば、間違いなく撃沈ということになります。

日本側としては、中国側が領海を1mmでも侵犯したら、すぐに撃沈すべきでしょう。この記事でも、掲載したのですが、中国の軍艦が接続水域を頻繁に航行するようになれば、日本もこれに対抗せざるを得ないことになるでしょう。

いずれにせよ、中国にとっては、このような状況は最も避けたかったことでしょう。中国にとって、一番忌避したいのは、安倍総理が軍事力によって、この海域から中国軍を排除することです。

今後の中国の動きに注目したいです。今後も頻繁に接続水域などに軍艦を派遣するならば、日本の海上自衛隊による南西諸島付近での、「航行の自由作戦」が実行されるようになることでしょう。「マラバール」実施中に、中国が接続水域に軍艦を派遣するようなことでもあれば、海上自衛隊による定期的なパトロールは必ず実施すべきです。

我が国としては、尖閣列島などを中国に実行支配され、南シナ海の環礁のように軍事基地化され、沖縄侵攻のための前進基地などにされてはたまったものではありません。絶対阻止です。

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2016年6月7日火曜日

海自が米・インドと共同訓練、中国にらみ沖縄の東方で―【私の論評】南西諸島における海自による「航行の自由作戦」の予兆か(゚д゚)!

海自が米・インドと共同訓練、中国にらみ沖縄の東方で 



海上自衛隊は7日、米国、インドの海軍と沖縄本島の東方海域で共同訓練を行うと発表した。10日から17日まで。昨年10月のインド洋に続き、日本の南西諸島周辺で3カ国が共同訓練をすることで、海洋進出を強める中国をけん制する。

海上自衛隊からは空母のような形をした大型護衛艦や、新型の国産哨戒機、インドとの間で輸出協議を進めている救難飛行艇が参加する。対潜水艦や対空などの戦闘訓練を行う。米海軍からは空母が参加する見込み。

この訓練は「マラバール」と呼ばれ、もともとは米印2カ国が毎年行ってきた。日本は2007年に初めて加わり、今回で5回目となる。前回は昨年10月、インド洋のベンガル湾での訓練に参加した。

南シナ海とインド洋、東シナ海で動きを活発化させる中国に対し、米国やインド、日本などは警戒を強めている。米国は、中国が南シナ海で造成する人工島の近くに艦船を派遣。また、懸念を共有する各国が、共同訓練や装備協力を通じて連携しつつある。

【私の論評】南西諸島における海自による「航行の自由作戦」の予兆か(゚д゚)!

インド海軍 手前は空母「ヴィラート」
昨年の「マラバール」には、日本の海上自衛隊も、戦術技量の向上と米印海軍との連携の強化を目的として参加し、護衛艦「ふゆづき」と人員約200名を派遣しました。昨年の「マラバール」では、日本の参加に関して2つのことが注目を集めていました。1つは、昨年のマラバールがインド洋で行われたということです。もう1つは、日本が昨年以降から、招待国としてではなく、固定メンバーとしてマラバールに参加することで合意した、と報じられた点でした。どちらも、印メディアなどから「ターニングポイント」と評されていました。

マラバールは1992年に始まりました。インドの核実験が原因で1998年から中断していたのですが、2002年に再開、その後は毎年行われています。基本的には米印の2国で行われるものですが、他国が招待国としてゲスト参加することがあります。日本も過去2007年、09年、14年、15年のマラバールに参加している。

昨年までのマラバール

以下に昨年までのマラバールについて振り返っておきます。

2007年に2度あったマラバールのうち、インド洋ベンガル湾で行われた2回目は、日本、オーストラリア、シンガポールが参加し、5ヶ国で行われたが、中国がこれに対して強く反発しました。ロイターによると、中国国内ではこの演習について、ヨーロッパのNATOのようなアメリカ主導の安全保障グループ作りとみなす者もいて動揺が引き起こされたそうです。

印英字紙ビジネス・スタンダード(BS)のウェブサイトによると、その後、中国政府は外交的攻撃を行ったそうです。米国営放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、インド政府は中国の圧力に屈して、その後、マラバールがインド洋で行われる際には、印米の2国演習に限定した、と伝えていました。BSは、マラバールは1年おきに西太平洋で実施されることになった、と伝えていました(例外あり)。

しかし、昨年のマラバールは2007年と同じくインド洋ベンガル湾で行われました。日本がインド洋でのマラバールに参加したのは8年ぶりでした。ロイターは、中国をいら立たせそうな海上軍事演習、と伝えていました。VOAは、戦略専門家らが、昨年「今年の日本の参加を、日米印3国間の安保協力の強化にとって重大なターニングポイントとみなしている」と伝えていました。また専門家らは、インドのアメリカとその同盟国への接近に対して中国が過敏に反応するという従来の懸念を、モディ首相が振り払いつつあることの表れともみなしていました。

昨年のマランバールに参加した海上自衛隊の「ふゆづき」
さらに、BSは、印国防省筋の情報として、今後、日本がマラバールの正式メンバーとなる、と伝えました。これによりマラバールは、今後は米印2国でなく、日米印3国の合同演習と称されるようになる、としていました。インド政府にとって大きな転換、とBSは報道しました。VOAは、これによりマラバールは3国による力の誇示の機会となる、としました。専門家らは、「非常に意義深い」ものになると語っていると伝えました。ロイターは、中国を不安にさせそうな動きだとしました。米防衛専門紙ディフェンス・ニュースは、インドの防衛専門家Nitin Mehta氏の、「日本がマラバールに固定メンバーとして加わることは、地域におけるインド、アメリカ、日本の海軍間の関係におけるターニングポイントとなる」という言葉を伝えていました。

日本が固定メンバーとしてマラバールに継続的に参加するようになることについては、昨年9月のモディ首相訪日時の日印首脳会談で両首脳が「重視した」、と共同宣言で伝えられている。

中国は日本がマラバールの固定メンバーになることを警戒していました。昨年10月10日付の印英字紙ヒンズーは、日本が継続的な参加国となるかを判断するために、中国はやがて行われるマラバールを注意深く監視している、と伝えました。また国営新華社通信が、米政府が「印米のマラバール海上軍事演習を、日本を継続的な参加国として含む3国合同の枠組みに変えることを追求」しているとしたことを引用しました。

昨年、9月にアメリカで行われた日米印外相の初の3者会合のために、中国の懸念が強まった、とオブザーバーらが指摘していると同紙は伝えました。その会合の共同メディアノートでは、日米印3ヶ国の外相は、インド太平洋地域における3ヶ国の利益の更なる一致を強調した、とされています。また、日米印の外相は、南シナ海におけるものを含め、国際法及び紛争の平和的解決、航行及び上空飛行の自由、ならびに阻害されない法に従った通商活動の重要性も強調した、とされていました。ヒンズー紙はこれらを中国への遠回しな言及としていました。

初の3者会合で握手する(左から)岸田文雄外相、ケリー米国務長官、
インドのスワラジ外相=昨年9月29日 ニューヨーク
中国が警戒するのも無理はなかったかもしれません。ディフェンス・ニュースは、マラバール2015の最重要点は敵潜水艦、水上艦、航空機の破壊のシナリオの演習となる、とインド海軍将校が語ったことを伝えていました。BSは、「人民解放軍」という名前は演習で用いられないだろうが、何を訓練しているかについて、疑問の余地はほとんどないだろう、と語っていました。

今年のマラバール

さて、昨年はこのマラバールのあった月である、10月の下旬から米国による「航行の自由作戦」が実行され、南シナ海にイージス艦「ラッセン」が派遣されました。

そうして、今年のマラバールは、日本の南西諸島周辺で3カ国が共同訓練することになっています。

南西諸島周辺とは一体どの地域を指すのでしょう。その地域を以下に示します。

南西諸島
南西諸島(なんせいしょとう)は、九州南端から台湾北東にかけて位置する島嶼群のことです。

「南西諸島」という名称は、現在の海上保安庁の前身である水路部が中心となって1887年(明治20年)頃に命名した地名とされ、翌年発行した海図『石垣泊地 日本・南西諸島・石垣島』にその名称が初めて記載されています。1894年(明治27年)発行の『日本水路誌』以降の海図から本格的に使用され、また国土地理院の前身の1つである日本陸軍陸地測量部による1937年(昭和12年)発行の陸図にも記載されています。しかし、「南西諸島」は公共機関が決定した行政名称であって、地理学・地球科学で用いられる専門用語ではありません。

これらの地域には、大隅諸島 、吐噶喇列島、奄美群島、琉球諸島、沖縄諸島 (沖縄島、久米島、硫黄鳥島など)、慶良間列島、先島諸島、宮古列島、八重山列島、尖閣諸島、大東諸島が含まれています。この広大な地域のいずれかで、演習が行われるということで、一体どこで実施するのかは、わかりませんが、これは当然のことながら、尖閣列島や、沖縄に対する中国に向けての牽制であることは、間違いありません。

新たな「航行の自由作戦」の始まりか

さて、尖閣といえば、読売新聞は今年の1月12日付で、日本政府が、中国軍艦が尖閣諸島周辺の12海里(22キロメートル)以内の領海に侵入することに備える新たな措置として、国際法上許容されている無害通航権を認めず、すぐに海上警備行動を発令する方針を決めたことが確認されたと報じました。今後、中国軍艦が尖閣諸島周辺12海里以内へ侵犯すれば、海上自衛隊がすぐに現場に投入され、即刻退去を要求することになります。

現行の国際海洋法条約によると、軍艦を含むすべての船は、その国の平和、安全、秩序などを脅かさない限り、他国の領海を自由に航行できる無害通航権が認められていますが、日本は中国の軍艦に対してこれを認めないことにしたのです。日本政府関係者は、「中国が無害通航権を主張することは、日本の尖閣諸島領有を認めることと同義になる」とし、中国がこれに対して抗議する可能性はないと見ています。

日本政府がこのような方針転換に乗り出したのは、昨年11月に中国海軍の情報収集船が尖閣諸島周辺の接続水域(陸から24海里以内)を一日かけて東西方向に反復航行するなど、最近になって中国海軍の不審な動きが急激に増えたからです。海上警備行動が発令されると、自衛隊は正当防衛に当たる場合などには、武器を使用できるようになっており、日中海軍間の偶発的な衝突が発生する可能性もあります。日本でこれまで海上警備行動が発令されたのは、1999年に北朝鮮の工作船と推定される船が日本の海岸に姿を現した場合など、3回しかありません。


菅義偉・官房長官は12日の定例記者会見で、「昨年5月に閣議決定している。日本領海で無害通航に該当しない航行を行う外国軍艦への対処に関し、海上警備行動を発令し、自衛隊の部隊により退去要求と措置を行うことを基本としている。昨年11月に中国海軍の情報収集艦が尖閣諸島周辺を反復航行した際には、外交ルートを通じた関心を表明をした。具体的な内容については(言及を)控えたい」と述べました。

今年のマラバールが南西諸島で行われるのは、当然のことながら、このことと多いに関係があるものとみられます。

日本としては、今年のマラバールは、「中国に無害通航権を認めず、すぐに海上警備行動を発令する方針」を中国に通知するだけではなく、この方面で日米印の共同演習を行うことにより、中国を牽制する意味があったものと考えられます。

さて、昨年のマラバールの直後に、南シナ海での「航行の自由作戦」があったことを考えると、今年のマラバールの直後にも何かがあるかもしれません。

もしかすると、日本の海上自衛隊による尖閣、沖縄付近の海域の「航行の自由作戦」が始まるかもしれません。

日本としては、南西諸島の領海と尖閣諸島周辺12海里のみを海自の護衛艦がパトロールすれば良いものと思います。

昨日は、このブログで、中国の孫建国連合参謀部副参謀長が、アジア安全保障会議において、「南シナ海は昔から中国のものだ」と自説を繰り返し、「一部の国が問題を過熱させている」「ある国は『航行の自由』を都合良く解釈して武力をひけらかし、徒党を組んで中国に対抗している」と、強い調子で米国などを牽制(けんせい)したことを掲載しました。


オバマ政権は、あと半年余りですが、現在の米国はカーター国防長官ら、強硬派の国防総省主導で進むため、今年後半は、「航行の自由作戦」を拡大していくことでしょう。一方の中国も、南シナ海での埋め立てをますます加速させていくことが想定されます。

そうなると、南シナ海における「米中激突」は、まさに「いまそこにある危機」ということになります。

ある日本政府関係者は、こう漏らしたそうです。

「先の伊勢志摩サミットでの日米首脳会談で、オバマ大統領は、『日本も自衛隊を南シナ海に派遣する覚悟はできているんだろうな』と、安倍総理に問い質した。南シナ海問題は、日本にとっても、いよいよ対岸の火事ではなくなってきた」

たしかに、南シナ海が中国の「内海」となれば、中東から日本へ至るシーレーンを中国が支配することになり、日本の生殺与奪を中国に握られることになります。そのようなことは、最初からわかつていたことで、南シナ海問題は、まさに対岸の火事ではないのです。

日本としては、まずは尖閣・沖縄は自らの手で守ることを要求され、さらに南シナ海においては、直接イージス艦などの艦艇を派遣することはできないかもしれませんが、対潜哨戒機などの派遣による監視活動などが求められることになるかもしれません。

そうして、その第一段階として、もし中国が今後も、尖閣諸島周辺の接続水域(陸から24海里以内)南西諸島付近における航行をやめないならば、日本の海上自衛隊による「航行の自由作戦」が行われることになるでしょう。

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