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2020年4月28日火曜日

金正恩氏、新型コロナ感染!? 中国医療団が北朝鮮へ「ECMO」「アビガン」持ち込み情報 感染者は「国内にいない」としているが―【私の論評】米空軍と空自の日本海や沖縄周辺空域で共同訓練は、北朝鮮より中国と韓国を牽制するものと見るべき(゚д゚)!


“暴走”北朝鮮

金正恩氏

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の、健康不安情報が飛び交っている。「心臓手術説」や「重篤・脳死説」「療養説」などがあり、北朝鮮メディアは「根拠のないデマだ」と否定しているが、何らかの異変があった可能性は高い。中国の医療チームが、新型コロナウイルス対応の医療機器や薬を北朝鮮に持ち込んだとの情報もある。こうしたなか、米空軍と航行自衛隊が、朝鮮半島周辺で共同訓練を行ったことが注目されている。北朝鮮が国内の動揺を抑え、他国を牽制(けんせい)するために、弾道ミサイル発射を強行することなどを警戒しているようだ。


 「大体分かっている」「遠くない将来に、あなたたちも知ることになるだろう」

 ドナルド・トランプ米大統領は27日の記者会見で、健康不安説が浮上している正恩氏の状態について、こう語った。

 菅義偉官房長官も同日の記者会見で、「(正恩氏の動向と、北朝鮮によるミサイル発射の兆候などについては)重大な関心を持って常日ごろから情報収集、分析に努めており、米国を含む関係国とさまざまなやりとりを行っている」と語った。

 正恩氏については、米CNNが20日、正恩氏が手術を受けた後、重体に陥ったとの情報を報道。韓国の北朝鮮専門ニュースサイト「デイリーNK」も同日、正恩氏が心血管系の手術を受けたと報じ、ロイター通信は25日、「中国、北朝鮮に医療専門家などのチームを派遣」と伝えた。

 確かに、正恩氏は11日の党政治局会議に出席したと国営メディアが翌12日、写真とともに報じたのを最後に、視察活動などは明らかになっていない。北朝鮮最大の祝日であり、毎年必ず出席していた15日の「金日成(キム・イルソン)主席生誕記念日」にも姿を見せなかった。

 一連の健康不安報道に対し、北朝鮮の対外宣伝雑誌「今日の朝鮮」は28日までに、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」の公式アカウントで、「全く根拠のないデマだ」と非難した。北朝鮮の公的メディアが正恩氏の重体説を否定したのは初めてとみられる。

 北朝鮮の朝鮮中央通信も27日、正恩氏が同日、南アフリカの祝日である「自由の日」に際してシリル・ラマポーザ大統領に祝電を送ったと伝えた。ただ、正恩氏が健在ぶりを示さない限り、動揺は続きそうだ。

 CNNが衝撃報道をした直後、日米同盟が存在感を見せた。

 米空軍と空自は22日、日本海や沖縄周辺空域で共同訓練を実施し、米軍のB1戦略爆撃機1機とF16戦闘機4機、空自のF15戦闘機8機とF2戦闘機7機が参加したのだ。

 B1爆撃機は、全長約44メートル、全幅約41メートル。航続距離1万2000キロ。「死の白鳥」の異名を持ち、超音速で敵地に侵入し、精密誘導兵器で重要拠点を攻撃できる。

日本海や沖縄周辺空域で行われた日米共同訓練(航空自衛隊HPから)

 正恩氏は現在、東部元山(ウォンサン)に滞在しているとみられる。最新の衛星写真によると、21日以降、特別列車とみられる列車が金一族の専用駅に停車しているという。B1爆撃機は元山から約900キロ離れた上空を通過したとされる。

 米空軍は共同訓練の意義について、「われわれはこの地域の平和と安定への関与を続け、新型コロナが世界的に猛威を振るう状況下でも、世界のどの地域にでも同盟国と即応できる能力があると示した」と説明した。

 北朝鮮が今後、中・長距離弾道ミサイルを発射する可能性があり、米空軍と空自は警戒監視を続けている。

 中国の医療チームについても、興味深い情報が飛び込んできた。

 日米情報当局関係者は「中国の医療団が、新型コロナウイルスの重症患者に使用する人工心肺装置『ECMO』(エクモ)や、新型コロナウイルスへの効果が期待されるインフルエンザ治療薬『アビガン』を、北朝鮮に持ち込んだという情報がある」と明かす。

 北朝鮮は、世界保健機関(WHO)に対し、新型コロナウイルスの感染者が「国内にいない」と報告しているが、実は感染が広がっているとの見方は強い。

 エクモやアビガンが北朝鮮に持ち込まれたのが事実なら、正恩氏や党指導部の要人が罹患(りかん)したか、罹患した場合に備えたものと考えられそうだ。

 日米共同訓練を、識者はどう分析するのか。

 軍事ジャーナリストで評論家の潮匡人氏は「米空軍のB1爆撃機は、北朝鮮がこれまでミサイルを発射した場所や、元山も射程に入れて飛行したとの情報がある。これに対し、北朝鮮も戦闘機を飛ばして、つばぜり合いを演じたようだ。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、米軍は、戦略爆撃機の配備をグアムから米本土に移した。抑止力低下が懸念されるが、米軍としては、不穏な動きをみせる北朝鮮と、東・南シナ海から西太平洋に進出しようとする中国に対して、『いつでも来るぞ』と強い意志を示したといえる」と語っている。

【私の論評】米空軍と空自の日本海や沖縄周辺空域で共同訓練は、北朝鮮より中国と韓国を牽制するものと見るべき(゚д゚)!

このブログでは、以前北朝鮮と北朝鮮の核が、結果として中国の朝鮮半島への浸透を防いでいるということを何度か掲載したことがあります。北朝鮮のミサイルは、北京や上海なども目標にしうるので、これは当然といえば当然です。

それに、金正恩もその父親の金正日も、中国の干渉を極度に嫌うという点は一致していたようです。祖父の金日成のときは、ソ連の力が圧倒的に中国よりも強く、そのような心配はありませんでした。

金日成の時代には、ソ連の力が圧倒的に強く、朝鮮戦争が休戦になり、米中ソは、韓国などの意向とは全く関係なく、38度線を動かしたり、越境したりすることはせずに、現状維持をするということで、米・ソ・中・朝で休戦協定(韓国は関係なし)を結んでいます。

さらに、金日成、金正日、金正恩の三代の金一族の根底に流れているのは、金王朝の未来永劫の存続です。これだけは、現体制の北朝鮮は譲りたくないところです。

金日成時代の中国は経済的にはとるに足りない国であって、当時のソ連は世界第2の経済大国でした。そのソ連は経済で日本に追い越され、その後は、その日本を中国が国全体の経済では追い越しました。現在のロシアの経済は日本でいえば、東京都、国でいえば韓国と同程度の経済規模にまで落ちました。インドにも追い越されて、10位以下です。

ただし、経済の専門家は、中国の経済統計は全くの出鱈目で現実には、中国のGDPは未だに、ドイツ以下とするものもいます。それが事実だとしても、少なくとも国全体のGDPでは、ロシアや韓国よりははるかに大きいことは事実でしょう。


中国の経済が相対的に大きくなったこともあり、これに備えるためにも、金正日のときから核とミサイルを開発し始め、金正恩にもそれが引き継がれて、今日に至っています。

そうして、米国のトランプ大統領もそのような見方を最初はしていなかったのでしょうが、ここ数年は、そのような見方をしているようです。そのせいか、最近は北朝鮮が米国本土に到達することのない、中短距離ミサイルなどを発射しても強く非難することはなくなりました。

その背景には、韓国の反日、反米、従北、親中の姿勢もあったからでしょう。もし北に核がなかった場合には、もう相当前に朝鮮半島は、中国の覇権の及ぶ範囲になっていたかもしれません。

その傾向は近年ますます強まっています、韓国の4月15日の韓国総選挙(定数300)で、文在寅大統領率いる与党「共に民主党」が、系列の比例代表政党「共に市民党」と合わせて改選前の128議席から50議席以上伸ばし、180議席を獲得して圧勝しました。

与党が国会で法案処理が極めて有利になる5分の3の議席を占めるのは、1987年の大統領直接選挙導入以降初めてで、革新系政党が単独で過半数を得たのも2004年以来です。

言うまでもなく、文在寅大統領および与党「共に民主党」は、反日、反米、従北、親中を鮮明にする左翼革新政権です。

今般の選挙結果を受けて、さらにその路線への傾斜を強めるのではないかと懸念され、日韓関係の改善は期待できないばかりか、「米韓相互防衛条約」を締結している同盟国・米国との関係にも亀裂拡大の恐れが指摘されています。

韓国総選挙で当選した与党「共に民主党」の李洛淵前首相(左)=ソウルで15日

このようなことを前提に考えると、米空軍と空自が22日、日本海や沖縄周辺空域で共同訓練を実施したことの意味がまた別の方向からみえてきます。

まずは、この種の訓練には、従来なら韓国空軍も参加していましたが、今回は参加していません。これは、最早米国は、韓国を信用しておらず、朝鮮半島に危機があった場合は、日米が共同で事に臨むことはあっても、親中・従北の韓国は外すという明確な意思表示であることがうかがえます。

そうして、この演習は、北朝鮮に向けての演習でもあるのでしょうが、それはサブの扱いくらいにすぎず、どこに向けての演習かといえば、それは中国でしょう。

もし、中国が軍事的な意図を持って、北を脅かそうとした場合、米国としては何らかの軍事行動をし、中国の意図を挫く意思があることをみせつけ、牽制したとみるのが妥当です。それも、韓国抜きでそれを実行するという意思をみせつけたのでしょう。

さらに、この演習では、日本の最新鋭の戦闘機F35が参加していないのは、日本ではまだ導入したばかりなので、使いこなしがまた時を要するということで理解できるのですが、米国のB35も参加していません。

これは、韓国や中国に対して、手の内を見せないという意味があるものと考えられます。そのため、これは単なる意思表示という側面があるのかもしれません。

金正恩に何があったのかは、未だわかりませんが、今月の11日から消息が不明ということです。習近平も一時的に消息が不明になったことがありますが、1週間から、長くても10日でした。金正恩は、2週間以上も不明であり、何か金正恩の身にあったかもしれないということは、十分に想定されることです。

そのため、これは金正恩に何かあった場合に、中国がなんらかの動きを示した場合、それに対して米国側も動く可能性があることを、中国に対して示して、牽制したものと考えられます。

それにしても、日本人の中には、北朝鮮は中国の傀儡政権のような考えている人もいるようですが、それは完全な間違いです。金正恩は実の兄金正男を暗殺したとされていますが、金正男は中国に近いとされていました。処刑された、実の叔父である張成沢氏も、中国に近いとされていました。

もし、金正恩が死亡して、何らかの構造変化があり、北と中国の関係が強化されることでもあれば、半島の軍事バランスは一気に崩れる可能性もあります。そのことだけは、多くの人が記憶にとどめておくべきものと思います。

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2019年1月19日土曜日

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制―【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制


TPP協定発効記念式典で各国の関係者と談笑する安倍晋三首相
(中央右)と茂木敏充経済再生担当相(同左)=19日午後、首相官邸

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加11カ国が19日、新規加盟の拡大を目指すことで一致したのは、米中による貿易戦争が激化する中で、世界経済の先行きに不透明感が強まっているからだ。広い分野の関税撤廃と高水準のルールを共有する“仲間”を増やすことで、米国の保護主義的な動きや中国の不公正な貿易慣行を牽制(けんせい)する狙いだ。(大柳聡庸)

 現在、新規加盟に最も近いとされるのがタイ。近隣のベトナムに比べ農産品分野などで競争力が低下することに危機感を抱いているからだ。タイの加盟申請は総選挙後になるとみられる。2月末と想定されていた総選挙は延期の公算が大きいが、早ければ今年前半にも新規加盟に向けた交渉が始まる可能性がある。3月に欧州連合(EU)からの脱退を予定する英国も加盟に強い意欲を示す。

 TPPを離脱した米国の産品は関税が下がらず輸出競争力が低下するため、TPPに復帰を促す契機になる可能性がある。閣僚級会合で議長を務めた茂木敏充経済再生担当相は19日の記者会見で、「多くの国・地域の参加を期待している。米国も同様だ」と述べた。

 また、TPPは知的財産権の保護で模倣品などに対する厳格な規律をもうけるなど、高水準のルールを定めており、不公正な貿易慣行を続ける中国に対する抑止効果も期待できる。

 米中の貿易戦争は、中国による知財侵害に対し、米国が追加関税といった保護主義的な動きで対抗したのがきっかけだ。

 安倍晋三首相は会合で「不満が保護主義への誘惑を生み出し、国と国との間に激しい対立を生み出すが、私たちは時計の針を決して逆戻りさせてはならない」と述べ、米中の貿易戦争を念頭に、自由貿易体制の重要性を訴えた。

【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の発効後、初めて参加11か国の閣僚らが集まり、本日加盟国の拡大に向け共同声明を発表しました。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐっては、冒頭の記事にあるインドネシアやタイだけではなく、台湾、コロンビアといった国や地域が新規加盟に関心を示しています。「TPPは世界とアジア太平洋地域の経済・貿易の発展に重要な意義を持つ」(台湾)などと、新規メンバーの早期受け入れを求める声も上がっています。

中でも注目されるのが、3月末に欧州連合(EU)からの離脱を控える英国です。離脱後は、米国などEU以外の国々との貿易関係の強化が急務となりますが、メイ英政権は各国との自由貿易協定(FTA)締結に加え、TPPへの加盟に意欲を見せています。

英国メイ首相

フォックス国際貿易相は先月30日のTPP発効に際し、「(英国が)TPPに参加すれば、カナダや日本のような古くからの友人との強い経済的な結びつきを固めることになるだろう」とする声明を出しました。今月10日の日英首脳会談で安倍晋三首相は、英国がTPPに加盟意欲を示していることを歓迎しています。

加盟希望国に共通しているのは、巨大な経済圏内に入ることによる輸出拡大など経済的な恩恵への期待感です。また、TPPの枠内で新たな国際ルールの整備が進めば、自国が取り残されるという警戒感もあります。

一方、TPP加入の積極論と慎重論がせめぎ合っている国もあります。

「TPP参加で板挟みにある韓国」

韓国の英字紙、コリア・タイムズ(電子版)は今月上旬、同国でTPP参加の可否が割れていると報じました。

TPPに入らないことで加盟国と比べて貿易面で不利な立場に置かれる恐れがある一方、加盟すれば関税の引き下げで自動車など日本製品との激しい競争に国産製品がさらされるとの懸念を指摘。そのため韓国政府は「取引に積極的に参加すべきかどうか迷っている」のが現状だといいます。

TPPの最大の意義は、米国の保護主義的な動きや中国の不公正な貿易慣行を牽制(けんせい)できる可能性が大きいことです。これに関しては、以前のこのブロクにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
TPP12月30日発効 世界GDPの13%経済圏誕生へ―【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 トランプ大統領が「TPPは正しい考え方ではなく、我々は貿易でTPP以上の成果を得られる」とTPPを否定する理由は、関税自主権を行使して、中国などとの貿易不均衡を是正したいからです。昨年のアメリカの対中貿易赤字は3470億ドル(約40兆円)。これを関税などによって解消しようというのが、米国の対中貿易戦争です。 
「弱いアメリカ」がTPP参加国とともに中国経済に対抗する方針から、「強いアメリカ」として二国間交渉で中国に臨む方針に変わったということのようです。そうして、米国は実際に対中国貿易戦争を開始しました。これは、もうトランプ政権による貿易戦争の次元から、超党派の米国議会による経済冷戦の次元にまで高まっています。
昨年1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、TPPからの正式離脱に関する大統領令に署名した

おそらく、中国の体制が変わるまで、かなり長い間、米国は対中国制裁をやめないどころか、あらゆる手段を講じて、中国を追い詰めるでしょう。 
中国は、アメリカを抜いて世界の覇権を握ることを目指していますが、まだ米国と全面対決できるほどの力はありません。 
米国が問題視している国際貿易機関(WTO)で規定されていない、知的財産権や技術移転要求については、日本は米国に協調できます。その手段として考えられるのがTPPの活用です。米国が中国に対して懸念していることのすべてはTPP協定でカバーしています。 
タイ、インドネシア、台湾、英国、コロンビアなどを加入させてTPPが拡大し、また米国がTPPに復帰するなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなります。その時、中国に知的財産権や投資についての高度な規定を課すことができます。努力すべきはTPP参加国の拡大です。 
ただし、中国はTPPに加入するということになれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革を実施しなければなりません。これを実行しなければ、TPPには加入できません。 
この構造改革を実施することになれば、中国共産党は、統治の正当性を失うことになるでしょう。それは中共の崩壊を意味します。 
最悪、米国や中国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。 
TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。 
この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。
米国が中国に対して懸念していることの全てはTPP協定がカバーしています。これは、当然米国も理解しているでしょう。だから、TPPから脱退したトランプも、良い条件が得られるならという留保を付けたにせよ、TPPに復帰してもよいという発言をしたのでしょう。

タイ、インドネシア、韓国、台湾、イギリス、コロンビア等を加入させてTPPが拡大し、また、米国がTPPに復帰して来るなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなるか、参加せず(参加することは中国社会の構造改革をすることを意味する)に米国の制裁を受け続け経済的にかなり弱体化し他国に対する影響力を失うことになります。

農地の視察をする習近平(中央)

いずれにせよ、TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

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2018年8月8日水曜日

いつの間にか「日本主導」のTPP 自由主義圏の「対中連携」に期待 デタラメと無知露呈の反対派 ―【私の論評】TPPは加入できない中国と、保護主義に走りそうな米国の両方を牽制する強力な武器(゚д゚)!

いつの間にか「日本主導」のTPP 自由主義圏の「対中連携」に期待 デタラメと無知露呈の反対派 

TPPにはかつて、世界中で反対運動が巻き起こった
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 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐっては根強い反対論があったが、現状では英国の参加支援などでも日本が中心的役割を担っているようにみえる。

 TPPのメリットは自由貿易の恩恵だ。これは約200年の経済学の歴史で最も確実な理論だといえる。ただ、自由貿易でメリットを受けるのは輸出者、そして消費者だ。一方で、デメリットになるのが輸入品と競合する国内生産者だ。「自由貿易の恩恵」とは、メリットがデメリットを上回ることを言う。

 これは経済理論だけではなく、定量的にも国際標準の方法で確かめられる。それに基づく政府試算で「おおむね10年間で実質国内総生産(GDP)3兆円増」とされている。これは、「おおむね10年後に今よりGDPが差し引きで3兆円増加し、それが続く」というもので、反対論者が唱えていた「10年間累積で3兆円」ではない。反対論者は経済分析もできずに、意味不明なまま反対していたのだ。

 国家間紛争ルールを定めたISD条項など一般になじみのないものを毒素条項だと脅す反対論者もいた。この条項を利用して、米企業が日本を訴えて日本は負けるというものだ。

 しかし、この条項は、これまでの国際協定ではかならず盛り込まれており、日本が不利益を被ったこともない。法律上の不備があるとまずいが、日本の精緻な法体系ではこれまでやられたことはない。このように、反対論者は無知で、かなりでたらめだった。

 米国がTPPから離脱すると、反対派は一気にトーンダウンしたのだが、TPPから米国がいなくなっても、TPP加盟国の中には米系企業があるので、ISD条項の脅威は同じだ。反対派がいかに感情的で、ロジカルでない意見を言っていたかがここでも分かる。

 米国のおかげで、日本の存在感が高まったのは間違いない。米国がTPPに失望したのは、かつて本コラムで書いたように医薬品などで日本が交渉をうまくやって勝ちすぎたのもある。

 加盟国のバイオ医薬品の独占的に販売を認めるデータ保護期間(製薬会社に独占的に販売を認める期間)が基本は各国の法制度、実質8年間となって日本の主張がほぼ認められた。米国の国内法は12年であり、米国は医薬メーカーのために、独占期間をできるだけ長くと主張していたが、日本などの主張に負けた格好だ。

 こうした交渉にもまして、基本的なスタンスとして、日本は自由貿易のメリットを強調し、粘り強く交渉したのが大きい。経済的な連携は政治や軍事での同盟関係と密接な関係があり、TPPは中国抜きの経済連携として重要であることを日本は一貫して主張した。自由主義圏の日本はその点でぶれないのが、TPPの中でも主導的な役割を果たしている最大の理由だろう。

 中国の国際覇権的な野望が明らかになるにつれて、対中国の関係で、日本に期待する国は少なくない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】TPPは加入できない中国と、保護主義に走りそうな米国の両方を牽制する強力な武器(゚д゚)!

日米などアジア太平洋地域の12カ国が署名した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から米国が離脱したため、残る11カ国でまとめ直した新協定をTPP11といいます。2018年3月に署名しました。

参加国は日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ。6カ国以上が国内手続きを完了すると、60日後に発効します。

この、TPPに参加する11カ国が加盟国拡大に向け、一歩踏み出しました。協定が発効すれば世界の貿易額の15%を占める巨大な自由貿易圏が誕生し、加盟国が増えれば経済効果はさらに高まります。

TPPには中国の「包囲網」の意味合いもあったが今では保護主義に走る米国も同様、自由で公正な貿易を守るためにも加盟国拡大が急がれるところです。

先月19日に閉幕したTPPの首席交渉官会合は、後から加盟したい国が次々と手を挙げました。このような、貿易枠組みは世界初です。参加に意欲を示す6カ国・地域のうち、タイとコロンビアは協定発効直後にも参加の意思を正式に通知してくる可能性があります。

TPPは地域や経済の発展段階が異なる国が集まりますが、知的財産権保護など幅広い分野のルールを定め、企業がビジネスを展開しやすくする質の高い協定です。11カ国は新規加盟国にも高水準のルールを当てはめる方針で、受け入れ側としても準備を急がなければならないです。

ただし、トランプ米政権は11月の中間選挙を意識してか、日本にも自動車や鉄鋼の輸入に関して一方的な要求を突きつけてきました。国際通貨基金(IMF)は事態が激化すれば、世界の国内総生産(GDP)が最大0・5%縮小すると試算しています。

経済政策を重視する安倍晋三首相は「保護主義からは何も生まれない」として、自由貿易体制の維持に取り組みます。今月は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の年内大筋合意の方向性を打ち出し、欧州連合(EU)と経済連携協定(EPA)にも署名しました。

TPPはEPAの一種でもあり、2018年2月に署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)及び2018年3月に署名した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、いずれも内容的にはEPAです。協定名は「パートナーシップ協定」となっています。

このEPA、TPPには中国は参加できません。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!
記者会見を終え、トゥスク欧州理事会議長(右)と握手を交わす
ユンケル欧州委員会委員長。中央は安倍晋三首相=7月17日午後、首相官邸
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、中国がEPAやTPPに最初から入ることができない理由を掲載した部分のみ以下に引用します。
中国においては、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされていません。
わかりやすい事例をだすと、たとえば戸籍です。すべての中国人の戸籍は、農村戸籍(農業戸籍)と都市戸籍(非農業戸籍)に分けられています。農村戸籍が約6割、都市戸籍が約4割で、1950年代後半に、都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために導入さました。 
以来、中国では農村から都市への移動は厳しく制限されていて、日本人のように自分の意思で勝手に引っ越ししたりはできないです。ちなみに都市で働く農民工、いわゆる出稼ぎ労働者がいるではないか、と思われるでしょうが、彼らは農村戸籍のまま都市で働くので、都市では都市住民と同じ社会保障は受けられません。これでは、民主的とはいえば、EPAには入れないのは当然です。
株価が急落したため落ち込む中国の個人投資家
株価が急落すると政府が介入して株式取引を中止することもある
さらに、中国は国家資本主義ともいわれるように、政治と経済が不可分に結びついており、先進国にみられるような、政府による経済の規制という範疇など超えて、政府が経済に直接関与することができます。実際中国の株式市場で株価が下落したときに、政府が介入して株式を売買できないようにしたこともあります。

中国にも司法組織なるものが存在するが、
その組織は中国共産党の下に位置している

中国は30年にわたる「改革開放」政策により、著しい経済発展を成し遂げました。ところが、依然として法治国家ではなく「人治国家」であるとの批判が多いです。それに対して中国政府はこれまでの30年間の法整備を理由に、「法制建設」が著しく進んでいると主張しています。 

確かに30年前に比べると、中国の「法制」(法律の制定)は進んでおり、現在は憲法、民法、刑法などの基本法制に加え、物権法、担保法、独占禁止法などの専門法制も制定されています。それによって、人々が日常生活の中で依拠することのできる法的根拠ができてはいます。 

その一方で、それを効率的に施行するための施行細則は大幅に遅れています。何よりも、行政、立法、司法の三権分立が導入されていないため、法の執行が不十分と言わざるを得ないです。中国では、裁判所は全国人民代表会議の下に位置づけられている。つまり、共産党の指導の下にあるわけです。  

このような中国は、とても日米をはじめとする先進国と、まともな自由貿易などできません。検討するまでもなく、最初から経済連携協定(EPA)など締結できないのです。
このようなTPPは、中国包囲網となるばかりではなく、保護主義に走りそうな米国に対する大きな牽制ともなります。ただし、首席交渉官会合では関係者によれば、米国の復帰や保護主義への懸念は一切話題にならなかったそうです。

また、新規加盟の可能性がある国・地域もさまざまな事情を抱えています。英国はEU離脱の行方が定まらないです。韓国や台湾も、日本や米国、中国との関係に影響が出ないように情勢を見極める可能性があります。米国と強固な同盟関係を結ぶ日本の重要性が、ひときわ高まってきました。

日本が自由貿易に邁進することが、世界の安定に寄与することは間違いないです。米国が中国に対して、金融などの分野での市場開放や人民元の完璧な自由相場にすることを迫ったり、知的財産権の保護を迫ったりすうちは良いですが、その範疇を超えて他国にまで保護主義的になることは、絶対に防がなければなりません。

これに関しては、やはりTPPが強力な武器になることは言うまでもありません。TPPにより域内が発展し、これに乗り遅れた米国が脅威に感じるくらいに域内を発展させていくべきです。

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2018年7月24日火曜日

中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!

中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 

高橋洋一 日本の解き方

記者会見を終え、トゥスク欧州理事会議長(右)と握手を交わす
ユンケル欧州委員会委員長。中央は安倍晋三首相=17日午後、首相官邸

 日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の署名は、安倍晋三首相が西日本豪雨で訪欧できなかったため、欧州側が来日する形で行われた。日欧EPAは、早ければ来年3月までに発効する見通しだ。これによって何が変わるのか。

 マスコミがこの件を報道する際、分かりやすくするために物品の関税で説明することが多い。日本はEUからのワイン、チーズ、チョコレートなどに関税を課している。ワイン関税は即時撤廃となり、750ミリリットル入りのボトルで最大約94円安くなる。チーズはEU産に優遇枠を設けて、段階的に無税枠を拡大する。チョコレートは関税を段階的に引き下げて、将来は撤廃する-といったものだ。

 これは間違いではないが、EPAの一面に過ぎない。協定全体は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のように大部である。外務省のウェブサイトに協定の原文が掲載されているが、本文だけで500ページ弱、これに附属書が加わり、全体で1200ページを超える。目次は、第1章総則、第2章物品貿易などあり、最終規定まで23章もある。

 第2章の物品貿易には、物品貿易に関し関税撤廃・削減のほか内国民待遇等の基本的なルール等が規定されている。関税の話はここに記載されている。

 具体的な中身は、附属書に書かれている。関税率表というものがあるが、興味があれば一見しておくといい。世の中のありとあらゆるものが全て記載され、その一つ一つに関税率が定められている。筆者は役人時代に関税率表を見て、そのボリュームに感動した覚えがある。今では、税関のサイトで誰でも見ることができるし、書籍としても販売されている。ちなみに本の関税率表は1200ページを超える分厚いものだ。

 いずれにしても、附属書の中に、関税率表がどのように変わるかが記載されている。マスコミがその中身を確認することはできないだろうから、役所に聞いて、その中の2、3品目を選んで報道しているわけだ。

 23章のうち1章だけ、しかも何千品目もある中から2、3品目では全体像の理解はできない。筆者は、今回の日欧EPA協定の中で、第8章サービス貿易、投資の自由化及び電子商取引、第13章国有企業、特別な権利または特権を付与された企業及び指定独占企業、第14章知的財産、第15章企業統治などに着目している。これらの規定は、資本主義国であれば当然のルールであるが、社会主義国では適用困難なものだ。

 EPAはこれらの規定を含む点で、自由貿易協定(FTA)と異なっている。逆にいえば、中国はFTAはできるが、EPAはできないのだ。

 安倍首相は「自由民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値をEUとともに力強く発展させ、世界の平和と繁栄に貢献する」と述べた。このEPAには中国は参加できず、中国主導の国際秩序ではないと宣言したようなものだ。中国に取り込まれるドイツを牽制し、EUを資本主義体制に戻している。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!

経済連携協定(英: Economic Partnership Agreement、EPA)とは、自由貿易協定(FTA)の柱である関税撤廃や非関税障壁の引き下げなどの通商上の障壁の除去だけでなく、締約国間での経済取引の円滑化、経済制度の調和、および、サービス・投資・電子商取引などのさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進などをも含めた条約です。

自由貿易協定(FTA)は、特定の国や地域の間で,物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定です]。

一方、経済連携協定(EPA)は、貿易の自由化に加え、投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定です。

日本ではEPAを軸に推進しており、GATT(関税および貿易に関する一般協定)およびGATS(サービスの貿易に関する一般協定)に基づくFTAによって自由化される物品やサービス貿易といった分野に加え、締結国と幅広い分野で連携し、締約国・地域との関係緊密化を目指すとしています。

近年世界で締結されているFTAの中には、日本のEPA同様関税撤廃・削減やサービス貿易の自由化にとどまりません。様々な新しい分野を含むものも見受けられるようになっているため、国によってはFTAとEPAを区別せずに包括的にFTAに区分することも少なくないです。

2018年6月時点で日本政府が外国または特定地域と締結した協定(発効ずみのもの)はすべてEPA(経済連携協定)となっています。2018年2月に署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)及び2018年3月に署名した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、いずれも内容的にはEPAです。協定名は「パートナーシップ協定」となっています。

外務省によると、日本はFTAだけでなくEPAの締結を軸に求めています。理由として、関税撤廃だけでなく、投資やサービス面でも、幅広い効果が生まれることを期待していることによります。

以下に、日本が締結したEPAの一覧を掲載します。
日本・シンガポール新時代経済連携協定:2002年11月30日発効(改正議定書2007年9月2日発効) 
日本・メキシコ経済連携協定:2005年4月1日発効(改正議定書2012年4月1日発効) 
日本・マレーシア経済連携協定:2006年7月13日発効 
日本・チリ経済連携協定:2007年9月3日発効 
日本・タイ経済連携協定:2007年11月1日発効 
日本・インドネシア経済連携協定:2008年7月1日発効 
日本・ブルネイ経済連携協定:2008年7月31日発効 
日本・ASEAN包括的経済連携協定:2008年12月1日より順次発効し、2010年7月1日に最後のフィリピンについて発効し、すべての署名国について発効となった。ただし、インドネシアについては、国内の実施のための手続きが遅れ、インドネシアの財務大臣規定が2018年2月15日に公布され、2018年3月1日より施行されたことにより、2018年3月1日より、協定の運用が開始され、日本とインドネシアとの間ではAJCEP協定に基づく特恵関税率が適用されることになった。 
日本・フィリピン経済連携協定:2008年12月11日発効 
日本・スイス経済連携協定:2009年9月1日発効 
日本・ベトナム経済連携協定:2009年10月1日発効 
日本・インド経済連携協定:2011年8月1日発効
日本・ペルー経済連携協定:2012年3月1日発効 
日本・オーストラリア経済連携協定:2015年1月15日発効 
日本・モンゴル経済連携協定:2016年6月7日発効 
環太平洋パートナーシップ協定(TPP):2016年2月4日署名[8]、日本は2017年1月20日締結。未発効。 
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、TPP11):2018年3月8日署名、日本は2018年7月6日締結。未発効。 
日本・EU経済連携協定:2018年7月17日署名。未発効。
TPPも、EPA(経済連携協定)に含まれます。日本が最後に署名した「日本・EU経済連携協定」の効果についてまとめた表を以下に掲載します。

クリックすると拡大します

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事に、EPAには中国は参加できないと掲載されていますが、これはなぜでしょうか。それは、EPAには貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含むからです。

中国においては、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされていません。


わかりやすい事例をだすと、たとえば戸籍です。すべての中国人の戸籍は、農村戸籍(農業戸籍)と都市戸籍(非農業戸籍)に分けられています。農村戸籍が約6割、都市戸籍が約4割で、1950年代後半に、都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために導入さました。

以来、中国では農村から都市への移動は厳しく制限されていて、日本人のように自分の意思で勝手に引っ越ししたりはできないです。ちなみに都市で働く農民工、いわゆる出稼ぎ労働者がいるではないか、と思われるでしょうが、彼らは農村戸籍のまま都市で働くので、都市では都市住民と同じ社会保障は受けられません。これでは、民主的とはいえず、EPAには入れないのは当然です。

株価が急落したため落ち込む中国の個人投資家
株価が急落すると政府が介入して株式取引を中止することもある
さらに、中国は国家資本主義ともいわれるように、政治と経済が不可分に結びついており、先進国にみられるような、政府による経済の規制という範疇など超えて、政府が経済に直接関与することができます。実際中国の株式市場で株価が下落したときに、政府が介入して株式を売買できないようにしたこともあります。

中国にも司法組織なるものが存在するが、
その組織は中国共産党の下に位置している

中国は30年にわたる「改革開放」政策により、著しい経済発展を成し遂げました。ところが、依然として法治国家ではなく「人治国家」であるとの批判が多いです。それに対して中国政府はこれまでの30年間の法整備を理由に、「法制建設」が著しく進んでいると主張しています。

確かに30年前に比べると、中国の「法制」(法律の制定)は進んでおり、現在は憲法、民法、刑法などの基本法制に加え、物権法、担保法、独占禁止法などの専門法制も制定されています。それによって、人々が日常生活の中で依拠することのできる法的根拠ができてはいます。

その一方で、それを効率的に施行するための施行細則は大幅に遅れています。何よりも、行政、立法、司法の三権分立が導入されていないため、法の執行が不十分と言わざるを得ないです。中国では、裁判所は全国人民代表会議の下に位置づけられている。つまり、共産党の指導の下にあるわけです。 

このような中国は、とても日米をはじめとする先進国と、まともな自由貿易などできません。検討するまでもなく、最初から経済連携協定(EPA)など締結できないのです。

しかし、このような国中国と貿易を推進しようとする愚かな国がありました。それがドイツです。

ドイツはEU随一の経済大国ですが、EU設立・加盟後は単独での自由貿易協定は締結せず、EUとして通商協定の交渉や締結を行っていました。

そのドイツのメルケル首相と同国を訪問した中国の李克強首相が今月の9日、会談を開き、200億ユーロ(235億1000万ドル)規模の取引で合意したのです。ただし、これは、FTAではありません。

ただ、この会談の席上で、李克強は「自由貿易」という言葉をしきりに使っていました。しかし、これは、噴飯ものでしょう。元々中国は上記で掲載したように、まともに自由貿易などできるような状態ではありません。

民主的でもなく、政治と経済が分離されてもおらず、法治国家ですらない中国が、他国と普通に貿易したとしても、これらを守っている国と貿易をすれば、不平等条約にならざるを得ません。

ドイツが中国と貿易を続ければ、最初は儲けることができるかもしれませんが、いずれ中国から富を収奪される結果となります。

これについては、すでにこのブログでもとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い―【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!
メルケルと李克強
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、ドイツは緊縮財政で主力戦闘機であるユーロファイターが4機しか稼働しない状態にあり、さらに中国とは貿易を推進しようとしてまいます。

以下にこの記事の結論部分だけを引用します。
いくら中国から地理的に離れているとはいえ、ドイツも含まれる戦後秩序を崩し世界の半分を支配しようとする中国に経済的に接近するとともに、緊縮財政で戦闘機の運用もままならないという、独立国家の根幹の安全保障を蔑ろにするドイツは、まさにぶったるみ状態にあります。ドイツの長い歴史の中でも、これほど国防が蔑ろにされた時期はなかったでしょう。 
このような状況のドイツにトランプ大統領は活をいれているのです。ドイツにはこのぶったるみ状態からはやく目覚めてほしいものです。そうでないと、中国に良いように利用されるだけです。

そうして、ドイツを含めたEUも、保護主義中国に対して結束すべき時であることを強く認識すべきです。
しかも、これはあまりにタイミングが悪すぎます、トランプ政権の米国が中国に対して貿易戦争を開始したときとほぼ同時にメルケルは李克強と会談し、貿易を推進させることを公表しているのです。

この状況はトランプ大統領からみれば、まさにドイツは「ぶったるみ」状態にあると写ったことでしょう。だから先日のNATO総会でも「NATO諸国が国防費の目標最低値として設定しているGDP比2%はアメリカの半分であり、アメリカ並みに4%に引き上げるべきである」とトランプ大統領は主張したのです。

安倍政権はドイツの「ぶったるみ状況」とは対照的です。そもそ、日本の安倍総理ははやい段階から「安全保障のダイヤモンド」により、中国を封じ込めようと提唱しています。その日本がEUとEPAを結ぶことにより、これに入れない中国に対して、先進国の結束ぶりを誇示することができました。

ドイツの企業も、EUもドイツも、EPAすら締結していない中国と貿易をすることに危険性に目覚めることになったと思います。ドイツ企業が中国に肩入れすれば、知的財産権も蔑ろにされ、中国に取り込まれる可能性が大です。

一方、EUとEPAを締結している日本となら、そのあたりは厳格に守られることになります。

これから、ドイツ国内でも企業によって明暗が別れることになると思います。目先の利益に目がくらみ中国に過度に肩入れした企業は衰退し、そうではない企業は繁栄の道を歩むことになるでしょう。

さらに、ドイツを見習い中国に肩入れをしようとしている他のEU諸国にとっても、かなりの牽制になったことでしょう。

米国は、本格的に中国に貿易戦争を挑んでいます。そうして、トランプ政権は、中国が現在の体制を変えるか、あるいは米国を頂点とする、戦後秩序に対抗心むき出しの中国を経済的に疲弊させ、二度と戦後秩序に対抗できないくらいに弱体化するまで、戦争を続けます。まさに、天下分け目の大戦に突入したのです。

そうして、この戦争は中国には全く勝ち目はありません。中国は、現在の体制を変えて、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めるとすれば、現状の共産党独裁体制を崩さざるを得ません。しかし、それはなかなかできそうにもありません。

それができないとすれば、米国から経済が完璧に弱体化するまで、貿易戦争や、金融制裁で経済戦争を挑まれ、最終的にはこれに敗北し、図体が大きいだけの、凡庸なアジアの独裁国家に成り果てることになります。

そのような中国に肩入れしようとする「ぶったるみドイツ」にまさに日米は、二連発でパンチを喰らわしたといえそうです。

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2017年7月5日水曜日

国の税収減で騒ぐ人の思惑 「アベノミクスの限界」は言い過ぎ、増税派が牽制か―【私の論評】再増税でまた失われた20年に突入しても良いのか?

国の税収減で騒ぐ人の思惑 「アベノミクスの限界」は言い過ぎ、増税派が牽制か



 2016年度の国の一般会計税収が7年ぶりに前年割れとなったことを受けて、「アベノミクスの限界」「成長頼みの行き詰まり」などと報じられている。

 数字を確認しておくと、16年度の国の一般会計税収は、15年度実績の56・2兆円から0・4兆円以上減る見込みである。

 これまでの統計をみれば、税収の伸び率は名目経済成長率にリンクしている。

 税収の増加率が名目経済成長率の何倍になるかを示す「税収の弾性値」は、財務省の計算では「1・1」という数字が使われる。もっとも、景気低迷期で赤字企業が多い場合、少し景気が良くなると、赤字企業が減少し、黒字転換で法人税を払うようになるので、税収弾性値は1・1より大きくなる。実際に、過去20年くらいの実績をみると「3」程度となっている。1・1というのは、所得税の累進税率を勘案した長期的な数字とされている。

 経済学の理論では、税収弾性値はプラスであり、名目経済成長率がプラスであれば、税収もそれなりにプラスになるはずだ。しかし、名目経済成長率がプラスでも低い場合、税収がマイナスになることもある。16年度がその例に当たる。

 16年度の名目経済成長率は1・1%にすぎなかったため、税収は0・7%程度も減少した。

 過去にも03年度に似たようなことは起こっている。名目経済成長率が0・7%にとどまったので、税収が1・1%も減少したのだ。

 いずれにせよ、筆者は14年4月の消費増税の影響について「2~3年程度は継続する」と本コラムでも予想していたが、この増税の影響で16年度の名目経済成長が伸び悩んだことが、税収減の主な原因だといえる。

 さらに、16年度前半の円高進行により企業が納める法人税収が伸び悩んだのも大きかった。

 これらをもって「アベノミクスの限界」「成長頼みの行き詰まり」というのは言い過ぎである。消費増税の悪影響や一時的な円高により、アベノミクスの効果が損なわれたとみるほうが正しい。

 「アベノミクスの限界」という人の多くは、6月に決めた骨太の方針で、財政再建姿勢が後退したと批判する。こうした人たちは14年4月の消費増税についてはやるべきだと主張していた。増税で経済成長が腰折れしたことが税収減の主因であるにもかかわらず、再び消費増税を主張するのは理解に苦しむ。確実な税収増のためには、より高い名目経済成長が必要なだけなのだが。

 消費税率10%への再増税は、当初は15年10月からとされていた。しかし、安倍晋三政権が17年4月に延期し、さらに経済状況の悪化で19年10月に再延期した。実際に、それを実行するかどうかは18年中に決めなければいけない。安倍政権は20年の憲法改正を目指しており、国民投票もあるかもしれない。

 こうしたことを背景として、三たび消費増税が見送られないように、増税派が今から牽制(けんせい)球を投げているとみたほうがいいだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】再増税でまた失われた20年に突入しても良いのか?

税収の推移のグラフを以下に掲載します。これは2016年12月22日に作成されたものです。

この時点て、2017年度の一般会計税収は、57兆7120億円となると見込まれています。1991年度(決算ベース、59兆8204億円)以来、26年ぶりの高い水準。安倍政権は経済成長による税収増を「アベノミクスの果実」と位置付けており、円安に伴う企業業績の好転などを追い風に、16年度当初予算に比べ1080億円の増額を確保すると見込んだのです。

税目別の内訳を見ると、所得税が16年度当初比で270億円減の17兆9480億円。企業の賃上げの動きを背景に、15年度(決算)から3年連続で17兆円台後半となります。

法人税は企業業績の改善が見込まれるため、1580億円増の12兆3910億円、消費税は470億円減の17兆1380億円。相続税は2兆1150億円と1940億円増加する一方、酒税は1兆3110億円と480億円減少します。

16年度補正後の一般会計税収は当初予算から1兆7440億円減額し、55兆8600億円になると見積もっていました。年度前半の円高に伴う法人税収の落ち込みを織り込んだものです。

16年度に税収が落ち込むことは、いわば予定帳場です。これを、「アベノミクスの限界」「成長頼みの行き詰まり」というのは、全くあたりません。

こういうことを言う人たちには、必ずしも増税=増収ではなかったことを思い起こしてほしいです。


1989年の増税では翌年の1990年は、前年と比べて税収が5兆円増えて60兆円となりました。しかし、その年をピークとして、その後20年間、日本経済は長い停滞期に入り、一度たりとも90年時の税収を上回ることはありませんでした。

97年に消費税を5%へ増税するとすぐに税収は減少しました。消費税率を5%に上げた1997年とその翌年98年を比較すると、消費税収は増加したものの、所得税収と法人税収はそれぞれ2兆円減少。トータルで見ると53.9兆円から49.4兆円へと4.5兆円も減った。

この違いは、1989年には消費税増税はあったものの、当初から所得税、法人税の減税がありました。一方1991年は、当初は減税措置がなく、年末に特別対策として実施されたという違いがあったからです。

いずれにせよ、消費税増税しても結局税収は長い目では伸びなかったのです。これは、どういうことかといえば、消費税増税でGDPの6割を占める個人消費が減ってしまったからです。

一方2014年の増税では、税収が減るということはありませんでしたが、2016年度には減ることになりました。政府は2017年度には増えるとしてはいますが、それもどうなるかはわかりません。

結局、消費増税を行うと、いっとき消費税収は増えるのですが、やがて国民や企業はその負担に耐え切れなくなり、景気が後退していくのです。その結果、企業の収益は悪化し、雇用者の所得も減少します。そうなれば、法人税収、所得税収が減ってしまい、トータルの税収は増えないのです。

こうしたデータを見れば、消費増税をしても税収が増えないことは明白な事実です。しかし、財務省はこうした事実を説明することなく、「増税しないと財政赤字が拡大する」というワンパターンのフレーズで国民の不安をあおってきました。

省益を拡大するために消費増税の嘘を覆い隠してきた財務省には大きな罪があります。さらに問題なのは、消費税の問題点を知りながら片棒を担いでいるエコノミストやマスコミです。もし、消費税の問題点を知らないというなら「無知」の罪があり、国民に判断材料を提供する公人の使命を果たしているとはいえません。

税収を増やしたいならば、デフレから回復しきっていない日本の場合は、結局は経済発展するしかないのです。消費増税は愚策中の愚策です。

「アベノミクスの限界」「成長頼みの行き詰まり」などのフレーズで騙されて、安易な増税に突き進み、またまた失わた20年に突入し、私達の子どもや孫の世代を途端の苦しみに追いやるべきではありません。

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2016年6月9日木曜日

政府 中国軍艦艇の接続水域入り受けNSC開催へ―【私の論評】日本の南西諸島付近の日米印演習「マラバール」に対する牽制か?

政府 中国軍艦艇の接続水域入り受けNSC開催へ

本日の産経新聞の号外 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

政府は、中国海軍の艦艇が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に初めて入ったことを受けて、9日夜、NSC=国家安全保障会議の4大臣会合を開き、情報の分析結果などについて報告を受けたうえで、警戒・監視に万全を期すことなどを確認する見通しです。

9日午前0時50分ごろから午前3時10分ごろにかけて、沖縄県の尖閣諸島の周辺海域で、中国海軍のフリゲート艦1隻が日本の領海のすぐ外側にある接続水域に入ったほか、ロシア海軍の駆逐艦など3隻も8日夜から9日未明にかけて付近の接続水域に入りました。

尖閣諸島の領有権を主張する中国の軍の艦艇が接続水域に入るのは初めてで、政府は、安倍総理大臣が訪問先の山形県から戻りしだい、午後7時ごろからNSC=国家安全保障会議の4大臣会合を開くことを決めました。会合では、外務省や防衛省から、中国海軍の艦艇が接続水域に入った状況や、日本側がとった対応などに加えて、これまでに入っている情報の分析結果などについて報告を受け、情報の共有を図ることにしています。そして、会合では、安倍総理大臣の指示を踏まえ、アメリカなどと緊密に連携して、不測の事態に備え警戒・監視に万全を期すことなどを確認する見通しです。

中国国防省 「合法」と主張

中国の国防省は9日午後、中国海軍の艦艇が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に入ったことについてコメントを発表しました。この中で、尖閣諸島について「中国固有の領土だ」としたうえで、「中国軍の艦艇が自国の管轄海域を航行することは、合理的かつ合法であり、ほかの国がとやかく言う権利はない」と主張しました。

中国政府は、今回の航行の目的など詳しいことは明らかにしていません。ただ、中国政府は、南シナ海での急速な海洋進出を日本がアメリカと共に強く批判していることなどにいらだちを募らせており、今回、尖閣諸島周辺の接続水域内に海軍の艦艇を派遣することでこの海域への自国の主張を強め、日本をけん制するねらいがあった可能性があります。

東シナ海の上空では7日に、中国軍の殲10戦闘機2機が、アメリカ海軍の偵察機RC135の飛行を妨害し、このうち1機が急接近したとして、アメリカ軍が中国側に危険な行為だと抗議しています。

ロシア大使館「中国と関係ない」

ロシア海軍の駆逐艦など3隻が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に入ったことについて、東京にあるロシア大使館はツイッター上で、「誤解がある」としてコメントを出しました。この中で、「当海域では、中国と関係なく、ロシア海軍が定例の演習を行い、日本の領海に入ることは当然ない」と説明しています。そのうえで、「ほかの諸国、ならびに日本とアメリカも主張する『航海の自由』の原則どおりで、心配はない」として、中国が実効支配を強める南シナ海にアメリカ軍の艦艇を派遣する「航行の自由」作戦を引き合いに出して、ロシア海軍による航行には問題ないと主張しています。

中ロの艦艇は以前にも日本周辺を航行

今回、尖閣諸島沖の接続水域を航行した艦艇は、以前にも、日本周辺海域での航行が確認されています。

このうち中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦は、去年12月、沖縄本島と宮古島の間の公海上を東シナ海から太平洋に向けて航行しているのが確認されています。

ジャンカイI級フリゲート艦
また、ロシア海軍の艦艇のうち1隻はウダロイI級ミサイル駆逐艦で、ことし3月、対馬海峡を南下し、日本海から東シナ海に向けて航行しているのが確認されています。

ウダロイI級ミサイル駆逐艦
中ロ艦艇の航行目的は

尖閣諸島を巡っては、中国側が領有権を主張しているのに対し、ロシア側は領有権を主張していないため、防衛省は、中国とロシアの艦艇では、接続水域を航行することの意味は異なるとしています。

防衛省によりますと、ロシア海軍の艦艇は、過去にも尖閣諸島の沖合の接続水域を通過したことがあるということです。

一方、今回、中国海軍の艦艇は、ロシア海軍の艦艇の動きに対応して接続水域を航行した可能性もあるとみられ、尖閣諸島の領有権を主張する中国側が、今回、どのような目的で艦艇を航行させたのかについて分析を進めています。

統合幕僚長「事態のエスカレーション避けたい」

自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長は9日の定例の記者会見で、「事態をエスカレーションさせることは避けたい」と述べました。

会見で、河野統合幕僚長は「今回のことは、緊張を高める一方的な行動であり、深刻な懸念を持っている」と述べました。一方で、河野統合幕僚長は「中国側が、日本側の今回の抗議を真剣に受け止めることを期待している。外交ルートで解決するのがベストであり、自衛隊として、事態をエスカレーションさせることは避けたい」と述べました。

元海将 日米のリアクション

今回のケースについて、金沢工業大学虎ノ門大学院の教授で、海上自衛隊で呉地方総監を務めた伊藤俊幸元海将は、「海軍の艦艇を航行させており、国家としての意思を反映したものと言える。中国の海洋政策に対し、日米が『間違っている』と主張していることに対するリアクションとも受け取れる。中国当局の船による領海への侵入にとどまらず、今後、軍艦による航行へと既成事実を積み重ねながら、仮に中国側が事態をエスカレーションさせていくとすれば非常に危険なことだ」と指摘しました。

一方で、今後の対応について、「国際法上は問題のない海域での航行なので、冷静に対応すべきだ。同時に、中国側は、日米がどのような反応を示すのかを見ており、日本はアメリカをはじめ広く国際社会に、今回のような中国側の行動が受け入れらないものであると訴え、事態のさらなるエスカレーションを中国側に踏みとどまらせる必要がある」と話しています。

【私の論評】日本の南西諸島付近の日米印演習「マラバール」に対する牽制か?

さて、この中国の軍艦の動き、そうしてもしかするとロシアの軍艦の動きも、先日このブログでも掲載した、今月の10日から17日まで、日本の南西諸島付近で行う、日米印で行う演習である「マラバール」と関係しているのではないかと思います。

「マラバール」に関連した今月7日のこのブログの記事のリンクを以下に掲載します。
海自が米・インドと共同訓練、中国にらみ沖縄の東方で―【私の論評】南西諸島における海自による「航行の自由作戦」の予兆か(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、海上自衛隊は7日、米国、インドの海軍と沖縄本島の東方海域で共同訓練を行うと発表したことを掲載しました。これは、10日から17日まで、昨年10月のインド洋に続き、日本の南西諸島周辺で3カ国が共同訓練「マラバール」をすることで、海洋進出を強める中国をけん制をするというものです。さらにこの記事では、昨年までの「マラバール」についても詳細を解説しました。

中国側からすれば、今回の「マラバール」が尖閣列島も含まれる南西諸島周辺で行われること、さらには昨年の「マラバール」の直後には、米国は南シナ海で「航行の自由作戦」を開始しているという事実もあり、当然のことながらこの演習には神経を尖らせているはずです。

ブログ冒頭の記事には、掲載されていませんが、日本政府が中国軍の艦艇がこの水域に入ったことに神経を尖らすには、それなりの理由があります。

その理由とは、その部分をこの記事から以下に引用します。
さて、尖閣といえば、読売新聞は今年の1月12日付で、日本政府が、中国軍艦が尖閣諸島周辺の12海里(22キロメートル)以内の領海に侵入することに備える新たな措置として、国際法上許容されている無害通航権を認めず、すぐに海上警備行動を発令する方針を決めたことが確認されたと報じました。今後、中国軍艦が尖閣諸島周辺12海里以内へ侵犯すれば、海上自衛隊がすぐに現場に投入され、即刻退去を要求することになります。 
現行の国際海洋法条約によると、軍艦を含むすべての船は、その国の平和、安全、秩序などを脅かさない限り、他国の領海を自由に航行できる無害通航権が認められていますが、日本は中国の軍艦に対してこれを認めないことにしたのです。日本政府関係者は、「中国が無害通航権を主張することは、日本の尖閣諸島領有を認めることと同義になる」とし、中国がこれに対して抗議する可能性はないと見ています。 
日本政府がこのような方針転換に乗り出したのは、昨年11月に中国海軍の情報収集船が尖閣諸島周辺の接続水域(陸から24海里以内)を一日かけて東西方向に反復航行するなど、最近になって中国海軍の不審な動きが急激に増えたからです。海上警備行動が発令されると、自衛隊は正当防衛に当たる場合などには、武器を使用できるようになっており、日中海軍間の偶発的な衝突が発生する可能性もあります。日本でこれまで海上警備行動が発令されたのは、1999年に北朝鮮の工作船と推定される船が日本の海岸に姿を現した場合など、3回しかありません。
菅義偉・官房長官は12日の定例記者会見で、「昨年5月に閣議決定している。日本領海で無害通航に該当しない航行を行う外国軍艦への対処に関し、海上警備行動を発令し、自衛隊の部隊により退去要求と措置を行うことを基本としている。昨年11月に中国海軍の情報収集艦が尖閣諸島周辺を反復航行した際には、外交ルートを通じた関心を表明をした。具体的な内容については(言及を)控えたい」と述べました。
このように、日本政府は、中国軍艦が尖閣諸島周辺の12海里(22キロメートル)以内の領海に侵入することに備える新たな措置として、国際法上許容されている無害通航権を認めず、すぐに海上警備行動を発令する方針を決めたことと、今月10日から尖閣列島を含む、南西諸島付近で「マラバール」を実行するわけですから、これは中国にとって脅威です。

その直前に中国軍の艦船が、尖閣諸島周辺の接続水域に初めて入ったわけですから、これは当然のことながら、中国側の牽制とみるのが自然です。

ロシアに関しては、情報が少ないので何ともいえませんが、少ない情報の中から考えられることは、かつては旧ソ連との関係が強かったインドが、最近ではアメリカとの関係を強化、さらに日本とも強化し、日米印の共同訓練「マラバール」を日本の南西諸島付近で実行するというのですから、それに対する牽制という意味があるのかもしれません。

さらに、中国は、実際に接続水域に中国の軍艦が入った場合、日本がどのような行動をするのか、試しているというところがあると思います。接続水域に軍艦を派遣しても、日本が抗議をするだけで、実行動を起こさなければ、さらに何度も軍艦を派遣して、いずれ軍艦を派遣するのは当たり前であるかのような状況をつくりだそうとしているのかもしれません。

しかし、現状でも尖閣付近領海を侵犯はしていません。ここを侵犯すれば、中国の艦船が待っているのは、2001年に北朝鮮の工作船が領海侵犯ときのような運命をたどることでしょう。この工作船は、ご存知のように、海上保安庁の船に追跡され、銃撃され最終的には逃げきれないと判断して自爆しました。以下にそのときの顛末が掲載された動画を掲載します。



この時は、相手が不審船であり、軍艦ではなかったので、海上保安庁の巡視船が不審船に対して銃撃をしました。今回は中国は、公船ではなく、軍艦を派遣してきているわけですから、これは当然のことながら、海上自衛隊が対峙することになります。

もし中国が軍艦の派遣を繰り返すなら、当然のことながら、日本も海上自衛隊の護衛艦および潜水艦や対潜哨戒機も派遣することになります。

そうなると、中国は海軍力では日本にはかなり劣っているので、中国側はなす術がなくなります。特に潜水艦の能力と、対潜哨戒能力は日本に比較するとかなり劣っています。もし、領海を侵犯すれば、間違いなく撃沈ということになります。

日本側としては、中国側が領海を1mmでも侵犯したら、すぐに撃沈すべきでしょう。この記事でも、掲載したのですが、中国の軍艦が接続水域を頻繁に航行するようになれば、日本もこれに対抗せざるを得ないことになるでしょう。

いずれにせよ、中国にとっては、このような状況は最も避けたかったことでしょう。中国にとって、一番忌避したいのは、安倍総理が軍事力によって、この海域から中国軍を排除することです。

今後の中国の動きに注目したいです。今後も頻繁に接続水域などに軍艦を派遣するならば、日本の海上自衛隊による南西諸島付近での、「航行の自由作戦」が実行されるようになることでしょう。「マラバール」実施中に、中国が接続水域に軍艦を派遣するようなことでもあれば、海上自衛隊による定期的なパトロールは必ず実施すべきです。

我が国としては、尖閣列島などを中国に実行支配され、南シナ海の環礁のように軍事基地化され、沖縄侵攻のための前進基地などにされてはたまったものではありません。絶対阻止です。

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2016年2月18日木曜日

【北朝鮮情勢】金正恩氏、米軍の急襲恐れる?正日氏の遺体集団参拝に加わらず―【私の論評】中国に対する牽制のためにも、米による金正恩斬首は大いに有り得る(゚д゚)!


平壌の錦繍山太陽宮殿
北朝鮮の金正恩第1書記が16日の金正日総書記の生誕記念日に取った異例の行動が、韓国で話題となっている。金正恩氏は例年、午前0時に金正日氏の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を幹部らと集団参拝するが、今年は零時の集団参拝には加わらなかった。国営メディアは「16日に夫人と参拝した」と報じるのみだ。

韓国メディアは18日、金正恩氏が例年と異なる行動を取ったのは、F22戦闘機など戦略兵器を韓国周辺に展開する米軍の急襲を恐れたためとの見方を伝えた。

【私の論評】中国に対する牽制のためにも、米による金正恩斬首は大いに有り得る(゚д゚)!

錦繍山太陽宮殿 とは、主体思想の神殿であり、金日成と金正日の死屍保管所となっています。北韓政権は偶像崇拝体制ですが、この宮殿には、この二つの偶像がミイラになって横たわっています。この宮殿は北朝鮮の人民の精神を支配する聖地なのです。

金日成遺体 
金正日遺体
下の写真は、朝鮮戦争の休戦協定締結62年となった昨年7月27日午前0時、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を参拝した折の写真です。


ブログ冒頭の記事では、今年金正恩が、この宮殿を訪問しなかった理由を"F22戦闘機など戦略兵器を韓国周辺に展開する米軍の急襲を恐れたため"としています。

確かにその動きはありました。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
在韓米軍、「金正恩斬首」の特殊部隊を配備―【私の論評】戦争に傾く混迷の2016年以降の世界を日本はどう生き抜くのか(゚д゚)!
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、米軍はF22戦闘機など戦略兵器を韓国周辺に展開するどころか、在韓米軍は今年から、第1空輸特戦団と第75レンジャー連隊所属の特殊部隊を韓国にローテーション配備したことを掲載しました。。ローテンション配備とは、韓国に一時的に駐屯するというのではなく、長期間にわたり、継続的に交代させながら配備をするということです。

その他、在韓米軍は、あの海軍の特殊部隊のSEALDsも派遣、すでに訓練も行っていたことも掲載しました。

戦略兵器の他に、このような舞台を配置するとはどのような意図があるのでしょうか。それは、はっきりしています。錦繍山太陽宮殿をもし、金正恩が訪問した場合、戦略兵器でこの宮殿を破壊することはもとより、北朝鮮の偶像にもなっている、金日成、金正日の遺体を完璧に破壊し、その上さらに金正恩を殺害するか、捕獲するということです。

そうなと、どうなるかといえば、2つの偶像と、現在のトップ指導者を3つとも米国により、捕獲されたり、破壊、斬首されれば、それは北朝鮮の崩壊につながるからです。


宮殿内の金日成と金正日の巨大像

金正恩とその追従者たちにとって、錦繍山記念宮殿は金正日と金日成の死屍が安置されているため神聖視する神殿あるいは聖殿も同然です。錦繍山記念宮殿は金正恩北鮮の最大の弱点でありかつ急所でもあります。

米軍にとっては、格好の標的です。金日成、金正日の死屍は避難させることができますが、その宮殿を地下に避難させることはできません。錦繍山記念宮殿を爆撃することで、主体思想の魂を抜いてしまうことができます。そうすれば、金正恩はびっくり驚天し心理的恐慌に陥りいるとともに、北鮮が恐慌に陥ることになります。

錦繍山記念宮殿は文化財でないため、爆撃しても国際社会の非難を受ける恐れはありません。むしろ多くの北鮮住民を餓死させながら8億ドルもかけて建てた宮殿であるため破壊されて当然の建築物ともいえます。また、そこには一般住民が居住していないため人道的な側面でも標的として不適切な場所ではありません。錦繍山記念宮殿を完全破壊することと、金一家の遺体と、金正恩を米軍確保するか、破壊してしまえば、北朝鮮の金王朝は崩壊することになります。

さて、これを恐れる金正恩は何を画策しているかといえば、韓国へのテロを想定しているようです。

本日は以下のようなニュースもありました。
金正恩氏、韓国へのテロの準備か…韓国情報機関が報告
韓国の国家情報院によると、北朝鮮の金正恩第1書記が、対南テロとサイバーテロの準備を進めているという。18日、国会で開かれた安保点検党政協議で、韓国国会情報委員会のイ・チョルウ議員(セヌリ党)が、国家情報院から受けた報告として明らかにした。 
国家情報院は、「金正恩氏が対南テロとサイバーテロ能力結集を指示して、対南工作機関である偵察総局が準備していることが把握された」と明らかにしながら、次のようなテロの可能性を指摘した。 
●反北朝鮮・脱北政府要人などに対する毒劇物攻撃、拉致
●北朝鮮に批判的な政府・政界要人や言論人へ脅迫小包や手紙の発送、身辺危害
●地下鉄やショッピングモール、電力・交通施設などへのテロ
こうした北朝鮮のテロの可能性を踏まえたうえで、国家情報院は、テロ防止法が必要だと強調した。
先の米軍の動きは、このような金正恩の動きを牽制するためのという側面もあると考えられます。

金正恩からすれば、自ら核開発は実施、弾道ミサイルは発射、さら上記のようなテロも画策しているということで、自分もこれらを実行したのだから、当然米国も実行する可能性は十分あると見ていると思います。

私自身は、米国はそれこそ、オサマ・ビンラディンの殺害の時のように、様々な条件が揃えば、これら一連の行動を取る可能性は十分にあると思います。米国は、かつてこのようことを実行していたということを忘れるべきではありません。



だからこそ、金正恩は、今年は16日の金正日総書記の生誕記念日には、錦繍山太陽宮殿を訪問しなかったのです。

さらに、米国側からすれば、最近の南シナ海での中国の傍若無人な振る舞いを牽制するという意味もあると思います。もし、様々な条件が揃って、仮に米国が、金正恩を斬首したり、 錦繍山太陽宮殿を破壊したり、遺体を破壊したり、捕獲したとしたら、これは中国にとってもかなりの脅威です。

中国が、二超大国幻想にふけり、世界を米国と中国の二国体制で仕切ろうなどという夢想を捨て去ることができない場合、中南海爆撃と、要人殺害あるいは捕獲という事態にもなりかねないということで、パニックに陥ることでしょう。習近平などの要人らも、金正恩のように、警備が手薄になりがちなところには、姿を現さなくなるかもしれません。

米国がこのような局面にある現在、日本はおそらく何もできないのだろうと思います。本来ならば、拉致問題を解決するため、日本も米軍の動きに呼応して、北朝鮮に自衛隊や特殊部隊などを派遣して、拉致された人たちを直接救助したり、直接ではなくても、北朝鮮の拉致の実態を知る高官を捕獲するなどのことをすべきです。

このようなことを日本がしたとしても、もともと北朝鮮が拉致をしたことが大犯罪なので、どこの国も日本を非難することはないでしょう。しかし、国内では批判が巻き起こることでしょう。本当に、今の日本が普通の国ではないということには、いつも忸怩たる思いをさせられます。

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