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2018年3月2日金曜日

習近平氏、不気味な“沈黙”の思惑 終身独裁狙うも実際は内憂外患、国家分裂の危機―【私の論評】習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候(゚д゚)!

習近平氏、不気味な“沈黙”の思惑 終身独裁狙うも実際は内憂外患、国家分裂の危機

独裁を強めようとする習近平氏だが、実際は内憂外患の状態にあるようだ

 韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪が終わり、国際社会の関心は、「核・ミサイル開発」に狂奔する北朝鮮と、ドナルド・トランプ米政権との緊張状態に移りつつある。「従北」で知られる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、緩和演出に必死だが、トランプ大統領は世界の脅威を高める「核放棄なき融和」など認めない。こうしたなか、不気味な沈黙を続けるのが中国の習近平国家主席だ。朝鮮半島有事を見据えた中国の思惑と、国家分裂の危機とは。中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏が迫った。

河添恵子氏

 政治色が前面に出た五輪期間中、存在感が極めて薄かったのが中国の習主席だ。その沈黙を破るようなニュースが、五輪閉幕式当日の2月25日、中国国営新華社通信によって報じられた。

 中国共産党中央委員会が、国家主席の任期を連続2期10年までとする「3選禁止規定」を撤廃する憲法改正案を、3月開幕の全国人民代表大会(全人代=国会)に提出したという。

 改憲案は、習氏への忠誠を誓うか否かを表明する、いわば「踏み絵」となる。反対すれば粛清の対象になりかねないため、出世への野心を抱く次世代には面従腹背しか残された道がない。

 つまり、5日に開幕する全人代で改憲案は可決されるはずだ。2期目をスタートしたばかり、64歳の習氏だが、国家主席として2023年以降の3期目どころか、その先まで視野に入れていると推測する。

 人民解放軍に対し、「死を恐れるな!」と激しい言葉で訓示する習氏が目指すのは、「革命は銃口から生まれる」という毛沢東主席の言葉を上書きした「習軍独裁政権」「終身独裁体制」なのだ。

 ただ、北京から「この1カ月ほど、習氏は震え上がっていた」という情報が漏れ伝わってきた。トランプ政権が1月に発表した「国家防衛戦略」(National Defense Strategy)の内容に驚愕したというのだ。

 同戦略は、習氏の中国を、米国の優位を覆そうとする「ライバル強国」の第一に掲げ、中国やロシアとの「長期的かつ戦略的な競争」が、テロとの戦いに代わる米国の最重要懸案であると強調していた。すなわち、「米中露の新冷戦時代」の幕開けを意味した。

 こうしたなか、習政権の足元はグラついていた。敵対する江沢民元国家主席派の粛清に次ぐ粛清や、軍幹部の強引な入れ替えなどの影響で、「この5年あまりで9回目」とされる暗殺未遂も報じられた。

 第1次習政権で試みた、「朝鮮半島を、南(韓国)から属国化していく戦略」も見事に失敗し、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)は配備された。かつては「兄弟国」だった北朝鮮との関係も史上最悪で、「1000年の敵」呼ばわりされるまで悪化した。

 頼みの綱だったロシアとの関係も、中国政府が1月下旬、「(中国主導の広域経済圏構想)『一帯一路』構想に北極海航路を入れる」と発表したことで、プーチン大統領を激怒させてしまった。

 内憂外患の習氏だが、朝鮮半島情勢について、表向きは「米朝対話」を主張しながら、本音は大きく違う可能性が高い。「金王朝の崩壊」を狙っているはずの習氏が、それを察知する金王朝の核ミサイルや生物化学兵器の脅威にさらされているとすれば、トランプ政権が軍事オプションに踏み切ることを、内心で期待していてもおかしくはない。

 ただ、習氏のジレンマは、その先にある。

 中国は長さ約1400キロという中朝国境に、数千人から数万人とされる人民解放軍を配備した。だが、いざ戦闘状態に突入すれば、朝鮮族の多い北部戦区(旧瀋陽軍区)の部隊が、どこに銃口を向けるか分からない。

 習氏は、その際のロシアの動向も懸念している。

 4年前のソチ冬季五輪直後、クリミア半島を電撃的に併合したプーチン氏は「ハイブリッド戦争」(=軍事・非軍事の掛け合わせ)を得意とし、正恩氏とは良好な関係を築いている。

 朝鮮有事に乗じて、大量の北朝鮮難民を中国東北三省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)に送り込み、“緩衝ベルト”にして極東シベリアとつなぐ、世界地図の塗り替えを画策しているフシがあるのだ。すなわち、習氏が掌握しきれていない旧満洲の地が無政府状態となり、国家分裂の危機に陥りかねない。

 プーチン氏は、埠頭(ふとう)1つを租借した北朝鮮の羅津(ラジン)港だけでなく、韓国の釜山港をも租借地にしたいと考え、「北朝鮮主導の朝鮮統一」にも力を貸すはずだ。

 これらが現実となれば、中国だけでなく、日本の安全保障にも甚大な影響が出かねない。

 “同床異夢”の米中露の勝者は誰なのか?

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。

【私の論評】習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候(゚д゚)!

ブログ冒頭の河添恵子氏の記事の見方は、私の見方に近いです。特に中国の内憂に関する見方は近いです。その見方を掲載した記事のリンクを以下に掲載します。この記事では、ブログ冒頭の川添氏の記事にもある、昨年暮に発生した「この5年あまりで9回目」とされる習近平暗殺未遂の時に習近平がとった行動に注目しました。
中国 国家主席「2期10年」任期に関する制限撤廃へ―【私の論評】憲法改正ができたから習近平政権が安定しているとの見方は間違い(゚д゚)!
昨年暮の爆発事件のときに習近平が駆け込んだとされる301病院
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
現在の中国は他国とは随分変わっていますが、その中でもかなり変わっているのが、憲法の上に共産党がある国という点です。こういう国では、憲法改正は他国と比較すればかなり簡単にできます。 
習近平が憲法改正ができたからといって、他国のように国内で他者よりはるかに力があるはずであり習政権は安定しているはずだと、考えるべきではないです。実際、習近平の力の限界を示すような事件が発生しています。 
中国の習近平国家主席が年の瀬の差し迫った昨年12月下旬、人民大会堂での会議が終わった駐車場で専用車両に乗ろうとした際、爆発物が破裂。習氏は腹痛を起こし、そのまま北京市内の中国人民解放軍直属の「中国人民解放軍総医院(略称「301病院」)に緊急搬送されていたことが分かりました。
301病院には“南楼”と呼ばれる病棟がありますが、厳重な警備が敷かれ、出入りには証明書の提示が必要です。情報によると、ここは共産党指導部の高官専用の病棟だそうです。

中共の301病院は不可思議な所で、昔は中共元老たちが治療の名目で、ここで画策を練っていました。一方、301病院は中央弁公庁主任の管轄下にあります。中央弁公庁主任は最高権力者の執事のような役目です。

言うことを聞かない人は、中共の内部闘争の中で治療の名目でここに入れられる人もいますが、事実上は政敵の手中に入ったことに等しく、生死を握られているのです。

たとえば、楊尚昆元国家主席。風邪を引いて301病院に入ってまもなく、不審な死を遂げました。
この記事では習近平がこの病院に入院した真相を以下のように分析してみました。
私自身は、爆破事件直後には習近平はこの暗殺未遂事件そのものの幅や奥行きがどの程度のものかすぐには判断できなかったと思います。場合によっては、はるかに規模の大きいクーデターや内戦である可能性も考えられたかもしれません。その場合には、一部の側近など除いて誰も信用できません。 
だからこ、そのような場合に備えて、習近平はそれに対する情報収集と備えをするために、ごく一部の信頼できる側近とともに、301病院へと急遽駆け込んだのではないかと見ています。その後の情報収集によってこの事件はさほど規模の大きなものではないことが了解できたので、翌日退院という形で病院から出たのだと思います。
 私は、習近平の腹痛というのは単なるごまかしであって、習は爆発事件が大規模なクーデターか内戦の一部かもしれないという危惧を抱いていたので、まずは病院に駆け込み前後策を練ったのだと睨んでいます。

2012年の共産党第18回大会以降、要人の日程などに関する最高機密の情報漏えいが原因で、習氏や王氏はたびたび暗殺の危険にさらされました。そのほとんどは計画的な犯行とされていますが、未だに捜査中のものも多くあるといいます。

香港メディアによると、習近平陣営と江沢民派の衝突が激しさを増していた中、犯した罪の清算から逃れるため江沢民派は必死に抵抗し、習氏や王氏の暗殺をも繰り返し試みたといいます。習氏はこれまで少なくとも9回の暗殺未遂に遭っており、いずれも内部関係者による犯行であることが判明しています。

香港「東方日報」2013年12月の報道によると、江沢民派の大物で当時の中央政法委員会の書記長である周永康が、2012年8月に少なくとも二回は習氏の暗殺を計画し、一回は北戴河の会議室に時限爆弾をセットしました、もう一回は軍301病院で健診を受ける習氏に毒を注射しようとしたといいます。消息筋によると、暗殺計画を実行したのは、周永康の側近で警備担当の談紅です。談は2013年12月1日に逮捕され、周永康は現在汚職等の罪で無期懲役に処されています。

法廷に出廷した周永康 従来頭が真っ黒だったが真っ白になっていたことが中国内で話題となった

3回目は、2013年8月末~9月中旬習近平は公に姿を見せず様々な憶測が流れていたところに、『交通事故で入院』との発表がありましたが、どうやら、車のタイヤに細工をされ事故を起こしたようです。その後も頻発しており、昨年の暮で9回の暗殺未遂事件があったとされています。

一方、習近平の片腕ともいわれる王岐山氏に対する暗殺未遂は少なくとも12件以上発生しているといわれています。さらに、2016年には、習近平夫人の専用車に爆発物が仕掛けられ、犯人は武装警察部隊の隊員だったとされています。

これだけ、暗殺未遂事件が発生する背景には、やはり習氏が終身独裁を狙っていたことと無関係ではないと考えられます。それに先立つ、不正の撲滅に名を借りた権力闘争により、多くの犠牲者が出たし、これからも粛清されることを恐れる人間が多数存在していると見られます。

習近平の暗殺未遂は過去9回だそうですが、実は、共産党支配の終焉の可能性が過去に3度あったとされています。最初は1989年6月の天安門事件の後、第2波は91年にソ連が崩壊した時、第3波は00年代の前半だといわれています。

1992年頃に米中央情報局(CIA)が、米国の中国専門家を集めて、20年後の中国を予測した。その結果、中国は3〜4つの国家に分裂する可能性が高いという予測を出しました。また、その影響でしょうかか、日本国内でも「中国崩壊」関連の著書が多数出版されました。しかし、依然として中国共産党独裁体制は健在です。

そのような中で、昨年10月17日発売の「ニューズウィーク日本版」(10月24日)は、「中国予測はなぜ間違うのか」という特集記事を組んでいました。この予測とは、つまり“なぜ中国共産党独裁体制の予測は外れたのか"ということです。そこで、特集記事の内容を紹介するとともに、将来の展望を考えてみます。



この特集では、英ケンブリッジ大学の調査によれば、政治体制が崩壊する確率は平均して2・2%前後であるとしています。つまり、誰かが体制崩壊を予測しても、100回中98回までは外れるそうです。また、別の調査によれば、1950〜2012年の間に権力を追われた独裁者は473人いますが、そのうち民衆の反乱によって追放されたのはわずか33人(7%)。必要条件は、比較的に分かりやすいです、インフレ率や失業率の上昇、経済成長率の低下などといわれています。

一般に独裁政権崩壊の直接的な引き金となる事象には4つのタイプがあります。選挙での不正、軍事的な敗北、近隣国での独裁体制崩壊、そしてアラブの春のような偶発的暴動の民衆蜂起への拡大です。しかし、政権の崩壊にはエリート層、とりわけトップレベルの軍人や政治家の離反が必要です。

中国共産党は、経済的繁栄のみが政治的正当性を生み出せることを熟知しています。その意味で、崩壊のリスクは長期間低水準にとどまっていても、突如として急上昇することになります。中国の場合、中所得国であることから、今後20年の間に崩壊のリスクが高まると予想されます。

独裁政権の崩壊の研究で分かったことは2つあります。それを中国に適用すると、第一は中所得国の地位を達成すると3倍近く高くなるということです。第二は独裁政権に支配された中所得国は、財産権の保護が不十分で、腐敗が著しいため、持続的な経済成長を達成し、高所得国になることができません。言うまでもなく、経済が停滞すれば共産党政権の存続は危ぶまれることになります。

共産党政権が永続するという主張に対して、私たちは健全な懐疑を抱き続けたほうかいい。かつてマーク・トウェインが、「予言は難しい。特に未来についての予言は」と言ったように、という一文で特集記事は終わっています。

要するに、特集記事では「中国崩壊」の出版物を多少冷やかしているのですが、将来的に中国共産党独裁体制が崩壊することを予測しています。しかし、ここで注意しなければならないことは、予測が往々にして“願望"になることです。つまり、米国もロシアも日本も、14億人の中国が3〜4つに分裂することを願っているからです。その背景を考慮して、我々は予測記事を理解する必要があります。

さて、私としては、以下のように今後の中国をみています。まずは、江沢民、胡錦濤の元前総書記には鄧小平に指名されたとの統治の正当性がありました。しかし習近平以後の党指導者には何もないです。

さらに、習近平が、如何に腐敗と戦っても、腐敗は古来中国の伝統であり、撲滅することは不可能です。それどころか、習近平自身がファミリー・ビジネスなどで、腐敗しています。腐敗しているものが、腐敗撲滅するなど、撲滅される側にとっては理不尽以外の何ものでもありません。日本を含めた先進国の感覚では、中国の幹部で全く腐敗していないものなどいません。それを考えると、この先の10年も30年先も、中国共産党独裁政権が続いていることは想像しにくいです。

この背景には、上で述べた習近平氏に対する9回にも及ぶ暗殺未遂事件の発生以外にも以下のようなことがあります。
  • ノーベル平和賞を受賞した劉暁波が、まともな治療を受けずに刑務所で死亡した。つまり、中国共産党に殺された。
  • 国境なき記者団の17年度世界報道自由ランキングで、180カ国中176位であった。
  • 15年7月9日、人権派弁護士など約300人が一斉に検挙された。この事実は記録映画「709の人たち」として映画化された。
これらの人権無視の実態を見せつけられると、どうしても中国共産党の独裁体制が、これからも永遠に続くとは考えられません。その意味で、私達は、中国共産党の動向や中国軍の軍備増強と同時に、中国国内の動向把握にも務めなければならないと思います。

実際、過去にも述べたように、中国は巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによって信頼を失っています。

これからも、中国は「内向き」であり、国内の事情が最優先します。中国の外交や、外に対する行動の動機は、すべて中国の国内事情によるものです。日本でいわれているような外圧で動く国ではありません。かつての日本のように外圧で動くのも問題ですが、外圧を無視するのも問題です。ここが中国の最大の欠点です。この欠点を解消できない中国は、いずれ分裂することになるのは明白です。実際、過去数千年もそうでした。

集合して大帝国をつくりとその後また分散し、また集合して大帝国をつくるということを繰り返してきました。そうして、過去の大帝国と次の大帝国は完璧に分断されています。

現在の中国も同じことを繰り返すことになるでしょう。そうならないことのほうが、確率としては相当低いとみるべきです。私は、習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候ではないかとみています。

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2017年12月8日金曜日

中国の“微笑み外交”要警戒 「分断工作だ」尖閣衝突回避策で日中大筋合意にチラつく思惑 河添恵子氏リポート―【私の論評】台湾の今そこにある危機を認識せよ(゚д゚)!

中国の“微笑み外交”要警戒 「分断工作だ」尖閣衝突回避策で日中大筋合意にチラつく思惑 河添恵子氏リポート

福岡市で開催された日中両政府の高級事務レベル海洋協議
では「海空連絡メカニズム」についても協議された=29日午前
 習近平国家主席率いる中国が軟化してきたのか。日中両政府は、沖縄県・尖閣諸島のある東シナ海での偶発的な衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の構築と早期運用に向けて「前向きな進展」があったと発表した。「日中関係の改善の象徴」と報じるメディアもあるが、歴史的に計略を用いる中国を簡単に信用していいのか。北朝鮮と台湾をめぐる、中国の思惑もささやかれている。

 「彼らの『工作』の可能性を疑った方がいい。中国は『微笑み外交』をしてきたときこそ警戒すべきだ」

 中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏は言い切った。

 海空連絡メカニズムは、自衛隊と中国軍が接近時の連絡方法などをあらかじめ定め、衝突を防ぐ仕組み。中国・上海で5、6日開かれた、日中の外務、防衛、海上保安当局などの高級事務レベル海洋協議で、主要論点がほぼ一致したという。

 河添氏は「北朝鮮と台湾の問題が背景にあるはずだ」といい、続けた。

 「習政権と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の関係は劣悪で『事実上の敵』といえる。加えて、習氏は2020年以降、本気で台湾を取りに行こうとしている。こうなると、中国人は『敵の敵は味方』のフリをするモードになる。日本政府や自衛隊に笑顔で接近して、話し合いの環境をつくろうとする。彼らの本音は、日本人を油断させて『日米同盟の分断』と『自衛隊内のシンパ構築』を狙っているのではないか」

 習氏は10月の共産党大会で、「3つの歴史的任務の達成」を宣言した。この1つに「祖国統一の完成」があり、武力侵攻も含めた「台湾統一」と受け止められている。

 「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮に対しては、米国の軍事的制圧も視野に入ってきた。中国は、緊迫する東アジア情勢の中で巧妙に立ち回り、台湾統一の邪魔になる「日米同盟の分断」に着手したのか。

 河添氏は「習氏にとって、安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領が体現している『日米同盟の絆』は脅威だ。ここにクサビを打ち込もうとしているのではないか。中国人は『台湾は中国の一部。尖閣諸島は台湾の一部』と考えている。無人島の尖閣諸島は後回しにして、台湾を先に取ろうと考えているのだろう」と分析している。

【私の論評】台湾の今そこにある危機を認識せよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にある、川添氏の「無人島の尖閣諸島は後回しにして、台湾を先とろうとしている」という懸念については根拠があります。

今年10月、米国で出版された一冊の書籍によって、中国の習近平指導部が準備を進めている「計画」が暴かれました。
大規模なミサイル攻撃の後、台湾海峡が封鎖され、40万人の中国人民解放軍兵士が台湾に上陸する。台北、高雄などの都市を制圧し、台湾の政府、軍首脳を殺害。救援する米軍が駆けつける前に台湾を降伏させる…
米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」で、アジア・太平洋地域の戦略問題を専門とする研究員、イアン・イーストンが中国人民解放軍の内部教材などを基に著した『The Chinese Invasion Threat(中国侵略の脅威)』の中で描いた「台湾侵攻計画」の一節です。

イアン・イーストン氏
イーストン氏は「世界の火薬庫の中で最も戦争が起きる可能性が高いのが台湾だ」と強調しました。その上で「中国が2020年までに台湾侵攻の準備を終える」と指摘し、早ければ、3年後に中台戦争が勃発する可能性があると示唆しました。

『The Chinese Invasion Threat(中国侵略の脅威)』の表紙
この、衝撃的な内容は台湾で大きな波紋を広げました。中国国内でも話題となりました。
具体的な時間は分からないが、台湾当局が独立傾向を強めるなら、統一の日は早く来るだろう。
国務院台湾弁公室副主任などを歴任し、長年、中国の対台湾政策制定の中心となってきた台湾研究会副会長、王在希は中国メディアに対し、イーストンの本の内容を半ば肯定しました。

王在希氏
その上で「平和手段か、それとも戦争か、台湾当局の動きを見てから決める」と踏み込みました。近年、中国の当局関係者が台湾への武力行使に直接言及するのは極めて異例です。

ブログ冒頭の記事にもあるように、10月24日に閉幕した共産党大会で、党総書記の習近平(国家主席)は「3つの歴史的任務の達成」を宣言しました。「現代化建設」「世界平和の維持と共同発展の促進」とともに掲げられた「祖国統一の完成」とは、台湾を中国の地図に加えることにほかならないものです。

党大会終了後、北京市内で開かれた政府系シンクタンクが主催するシンポジウムで、軍所属の研究者が「中国近未来の6つの戦争」と題する発表しました。

その研究者は、習近平指導部が隠してきた、中国が主権を主張する領土を奪還するための2050年までの予定表を明かしました。台湾統一の時期は20~25年。イーストンの指摘と一致します。

習近平は、東シナ海や南シナ海、インド、ロシアとの国境周辺などにも版図を広げる心づもりだといいます。同発表では、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を奪還する時期は40~45年とされています。

中国の情報機関はここ数年、台湾軍の内情を探るため深く潜り始めています。
台湾の蔡英文政権が2016年5月に発足して、中国国内の各情報機関の台湾担当部署の予算も人員も大幅に増加しました。
ある中国共産党関係者は、こうした変化も台湾への軍事侵攻に向けた準備だととらえています。

今年5月、台湾軍中枢の参謀本部ミサイル防衛指揮部(当時)の前指揮官、謝嘉康(少将)が、中国側に重要な軍事情報を漏らしたとして、「国家安全法」違反容疑で拘束されました。

謝嘉康
同指揮部は陸上配備のミサイル部隊を統括しており、米国製の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などの防空網や、上海を射程に収めるとされる自主開発の巡航ミサイル「雄風2E」の情報が漏れた可能性があります。

謝嘉康を中国側につないだのは退役後、旅行業を営んでいた元上官の男でした。男は、中国の国家安全部門に籠絡されて、その手先となっていました。09年と10年、元上官からタイやマレーシアへの家族連れの無料旅行に招待された謝嘉康は、たくらみに気付かず、誘いに乗ってしまったのです。

11年には、陸軍少将の羅賢哲が、指揮通信情報(C4ISR)を統合するシステムの情報を漏洩(ろうえい)した疑いなどで逮捕されました。

羅賢哲
羅賢哲は武官として駐在したタイで、歓楽街での買春現場を中国の工作員に撮られて脅されました。04年から情報提供を始め、毎回10万~20万ドル(約1120万~2240万円)の報酬を受け取っていました。羅賢哲は12年、無期懲役となりました。

台湾当局はスパイ事件の詳細や判決を公表していません。それ自体が手の内を明かすことになるからです。

羅賢哲にハニートラップをかけたとされる美女間諜:李佩琪
台湾軍内部には中国側の協力者が数多くおり、明るみに出たのは氷山の一角と指摘する声があります。ある現役将校は「中国側や軍内部の協力者に見せつけるため、逮捕案件自体を選別している可能性がある」と指摘しました。

台湾軍幹部の中には、中国大陸から来た「外省人」とその子孫が多いです。特に年齢層の高い退役軍人や高級幹部は「大中国」意識が強いです。退役・現役軍人の中には「台湾人意識」を支持基盤とする民主進歩党に反感を持つ者も多く、もともと中国に利用される素地があるといいます。

昨年11月には、北京の人民大会堂で開かれた孫文の生誕150周年記念式典に、台湾の退役将官32人が出席しました。中国の国歌斉唱時に起立し、国家主席、習近平の演説を神妙に聞き入る姿が問題となりました。

危機感を抱いた蔡英文政権は今年7月、改正法案を提出し、退役した軍高官が中国で政治活動に参加することを禁じましたが、後手に回っていることは否めません。

「世界一流の軍隊」の建設を目指す習近平は共産党大会で、20年までの「機械化、情報化の実現による戦略能力の大幅な向上」を宣言しました。台湾軍は「内と外」からの脅威にさらされています。
日本としては、先日もこのブログで述べたように、地政学的に重要な位置にある台湾との協力を強化する必要があります。まずは、日本は台湾を主権国家として認めなければなりません。
その道筋をつけるために、台湾にTPP加盟をすすめたり、日台の経済関係を強化したりするなど、協力関係を強化していくことが重要です。

さらには、日米台の関係を深め、安倍総理の安全保障のダイヤモンド政策をさらに充実・拡充するべきです。

そのためには、沖縄にある米海兵隊の一部を台湾に駐留させるようにし、いずれ半分もしくは全部を台湾に駐留させるということも考えられます。

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2017年7月5日水曜日

国の税収減で騒ぐ人の思惑 「アベノミクスの限界」は言い過ぎ、増税派が牽制か―【私の論評】再増税でまた失われた20年に突入しても良いのか?

国の税収減で騒ぐ人の思惑 「アベノミクスの限界」は言い過ぎ、増税派が牽制か



 2016年度の国の一般会計税収が7年ぶりに前年割れとなったことを受けて、「アベノミクスの限界」「成長頼みの行き詰まり」などと報じられている。

 数字を確認しておくと、16年度の国の一般会計税収は、15年度実績の56・2兆円から0・4兆円以上減る見込みである。

 これまでの統計をみれば、税収の伸び率は名目経済成長率にリンクしている。

 税収の増加率が名目経済成長率の何倍になるかを示す「税収の弾性値」は、財務省の計算では「1・1」という数字が使われる。もっとも、景気低迷期で赤字企業が多い場合、少し景気が良くなると、赤字企業が減少し、黒字転換で法人税を払うようになるので、税収弾性値は1・1より大きくなる。実際に、過去20年くらいの実績をみると「3」程度となっている。1・1というのは、所得税の累進税率を勘案した長期的な数字とされている。

 経済学の理論では、税収弾性値はプラスであり、名目経済成長率がプラスであれば、税収もそれなりにプラスになるはずだ。しかし、名目経済成長率がプラスでも低い場合、税収がマイナスになることもある。16年度がその例に当たる。

 16年度の名目経済成長率は1・1%にすぎなかったため、税収は0・7%程度も減少した。

 過去にも03年度に似たようなことは起こっている。名目経済成長率が0・7%にとどまったので、税収が1・1%も減少したのだ。

 いずれにせよ、筆者は14年4月の消費増税の影響について「2~3年程度は継続する」と本コラムでも予想していたが、この増税の影響で16年度の名目経済成長が伸び悩んだことが、税収減の主な原因だといえる。

 さらに、16年度前半の円高進行により企業が納める法人税収が伸び悩んだのも大きかった。

 これらをもって「アベノミクスの限界」「成長頼みの行き詰まり」というのは言い過ぎである。消費増税の悪影響や一時的な円高により、アベノミクスの効果が損なわれたとみるほうが正しい。

 「アベノミクスの限界」という人の多くは、6月に決めた骨太の方針で、財政再建姿勢が後退したと批判する。こうした人たちは14年4月の消費増税についてはやるべきだと主張していた。増税で経済成長が腰折れしたことが税収減の主因であるにもかかわらず、再び消費増税を主張するのは理解に苦しむ。確実な税収増のためには、より高い名目経済成長が必要なだけなのだが。

 消費税率10%への再増税は、当初は15年10月からとされていた。しかし、安倍晋三政権が17年4月に延期し、さらに経済状況の悪化で19年10月に再延期した。実際に、それを実行するかどうかは18年中に決めなければいけない。安倍政権は20年の憲法改正を目指しており、国民投票もあるかもしれない。

 こうしたことを背景として、三たび消費増税が見送られないように、増税派が今から牽制(けんせい)球を投げているとみたほうがいいだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】再増税でまた失われた20年に突入しても良いのか?

税収の推移のグラフを以下に掲載します。これは2016年12月22日に作成されたものです。

この時点て、2017年度の一般会計税収は、57兆7120億円となると見込まれています。1991年度(決算ベース、59兆8204億円)以来、26年ぶりの高い水準。安倍政権は経済成長による税収増を「アベノミクスの果実」と位置付けており、円安に伴う企業業績の好転などを追い風に、16年度当初予算に比べ1080億円の増額を確保すると見込んだのです。

税目別の内訳を見ると、所得税が16年度当初比で270億円減の17兆9480億円。企業の賃上げの動きを背景に、15年度(決算)から3年連続で17兆円台後半となります。

法人税は企業業績の改善が見込まれるため、1580億円増の12兆3910億円、消費税は470億円減の17兆1380億円。相続税は2兆1150億円と1940億円増加する一方、酒税は1兆3110億円と480億円減少します。

16年度補正後の一般会計税収は当初予算から1兆7440億円減額し、55兆8600億円になると見積もっていました。年度前半の円高に伴う法人税収の落ち込みを織り込んだものです。

16年度に税収が落ち込むことは、いわば予定帳場です。これを、「アベノミクスの限界」「成長頼みの行き詰まり」というのは、全くあたりません。

こういうことを言う人たちには、必ずしも増税=増収ではなかったことを思い起こしてほしいです。


1989年の増税では翌年の1990年は、前年と比べて税収が5兆円増えて60兆円となりました。しかし、その年をピークとして、その後20年間、日本経済は長い停滞期に入り、一度たりとも90年時の税収を上回ることはありませんでした。

97年に消費税を5%へ増税するとすぐに税収は減少しました。消費税率を5%に上げた1997年とその翌年98年を比較すると、消費税収は増加したものの、所得税収と法人税収はそれぞれ2兆円減少。トータルで見ると53.9兆円から49.4兆円へと4.5兆円も減った。

この違いは、1989年には消費税増税はあったものの、当初から所得税、法人税の減税がありました。一方1991年は、当初は減税措置がなく、年末に特別対策として実施されたという違いがあったからです。

いずれにせよ、消費税増税しても結局税収は長い目では伸びなかったのです。これは、どういうことかといえば、消費税増税でGDPの6割を占める個人消費が減ってしまったからです。

一方2014年の増税では、税収が減るということはありませんでしたが、2016年度には減ることになりました。政府は2017年度には増えるとしてはいますが、それもどうなるかはわかりません。

結局、消費増税を行うと、いっとき消費税収は増えるのですが、やがて国民や企業はその負担に耐え切れなくなり、景気が後退していくのです。その結果、企業の収益は悪化し、雇用者の所得も減少します。そうなれば、法人税収、所得税収が減ってしまい、トータルの税収は増えないのです。

こうしたデータを見れば、消費増税をしても税収が増えないことは明白な事実です。しかし、財務省はこうした事実を説明することなく、「増税しないと財政赤字が拡大する」というワンパターンのフレーズで国民の不安をあおってきました。

省益を拡大するために消費増税の嘘を覆い隠してきた財務省には大きな罪があります。さらに問題なのは、消費税の問題点を知りながら片棒を担いでいるエコノミストやマスコミです。もし、消費税の問題点を知らないというなら「無知」の罪があり、国民に判断材料を提供する公人の使命を果たしているとはいえません。

税収を増やしたいならば、デフレから回復しきっていない日本の場合は、結局は経済発展するしかないのです。消費増税は愚策中の愚策です。

「アベノミクスの限界」「成長頼みの行き詰まり」などのフレーズで騙されて、安易な増税に突き進み、またまた失わた20年に突入し、私達の子どもや孫の世代を途端の苦しみに追いやるべきではありません。

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2015年5月6日水曜日

日銀審議委員の後任は「円安」派 無難な人選だが官邸サイドの思惑は貫かれた―【私の論評】日銀法を改正して、本来の姿に戻し、マクロ金融政策をまともにせよ(゚д゚)!

日銀審議委員の後任は「円安」派 無難な人選だが官邸サイドの思惑は貫かれた

政府は衆参両院の議院運営委員会理事会で、2015年6月末に任期が満了する日銀の森本宜久審議委員の後任に、トヨタ自動車元副社長で現相談役の布野幸利氏を充てる人事案を提示した。

大規模な金融緩和を主張する「リフレ派」の抜てきを予想する向きもあったが、東京電力元副社長の森本氏と同じ産業界出身者の枠が維持され、「無難な人選」との見方が多い。ただ、官邸周辺では以前から「円安に肯定的な人材が後任にふさわしい」との声が根強くあり、円安メリットを享受する自動車業界からの起用になったようだ。

日本銀行
リフレ派の女性は見当たらず

日銀が追加緩和を決めた昨年10月の金融政策決定会合では、メンバーである政策委員9人のうち、森本氏を含む4人が反対し、1票差での可決という異例の事態になった。「森本委員の古巣の東電は、円高の方が燃料調達に有利。だから円安を招く追加緩和に否定的なのではないか」。官邸関係者は苦々しい表情で語っていた。

森本氏が古巣のために追加緩和に反対したとはさすがに考えられないが、官邸周辺はこの薄氷の決定をきっかけに、アベノミクスの「第一の矢」である大規模な金融緩和路線を安定的に継続するためには、リフレ派の投入が必要との危機感を強めていったようだ。実際、3月に退任した宮尾龍蔵前審議委員の後任には、リフレ派の論客として名高い原田泰・元早稲田大教授が選ばれた。

原田氏の人事案が国会に提示されたころ、水面下では森本氏の後任選びが本格化していた。リフレ派の学識経験者のほか、安倍晋三政権が掲げる「女性活躍推進」に歩調を合わせて女性の登用も模索されたが、「リフレ派の女性はなかなか見当たらない」(政府関係者)。政策委員のうち2人を占めてきた産業界出身者の枠が減ることに経済界の反発も予想され、結局は産業界から人選を進める流れとなった。

自動車業界からは初めて

ただし、官邸が譲れなかったのは「円安否定論者ではないこと」(関係者)。トヨタをはじめ、自動車メーカー各社は円高局面の際、日本のものづくりの「六重苦」の一つに円高を挙げ、円高を是正する政策を求めていた。日銀の異次元緩和とその後の追加緩和で急加速した円安の追い風を受け、トヨタ自動車の足元の業績は絶好調だ。布野氏の金融政策に対する考え方は明らかになっていないが、「少なくとも現在の緩和路線を支持するだろう」(アナリスト)との見方が強い。金融緩和の恩恵を最大限に受けているトヨタの関係に白羽の矢が立ったのは自然な成り行きだったといえる。

これまで産業界枠の審議委員の出身母体は銀行や商社、エネルギー業界などで、自動車業界は初めて。布野氏は海外駐在経験も長く、トヨタのグローバル戦略を推し進めた国際派で、世界経済の知見も豊富だ。衆参両院で人事案が同意されれば、布野氏は7月から金融政策決定会合に加わることになる。黒田東彦総裁の「綱渡り」の金融政策運営への援軍となるのか、そのスタンスが注目される。

【私の論評】日銀法を改正して、本来の姿に戻し、マクロ金融政策をまともにせよ(゚д゚)!

上の記事を読んで、本当に日本の金融政策の決定システムは異常だと思います。産業界から日銀政策決定委員会の新議員を入れるだの、女性を入れるだの、そんなことは本来全くどうでも良いはずです。

出身はどこからでも良いですが、少なくともマクロ金融政策に熟知した人でなければならないはずです。

それに、このブログにも何度も述べてきたように、日銀という政府の下部組織に過ぎない組織のこれまた、政策決定委員会なるものの審議員の多数決で、日本国の金融政策が決定されるというのは、本当に異常なことです。

このような委員会が本当に責任をとることができるのでしょうか。日銀の官僚も、審議員も、国民から選挙で選ばれた議員でもなんでもありません。こういう組織が、日本国全体の金融政策を決定するというシステムは本当に異常であり、世界的にみても特異なものです。

まともな国であれば、国の金融政策の目標は、あくまで国が設定し、中央銀行(日本では日銀)は、その目標を達成するために、専門家の立場から手段を自由にえらぶことができるようになっています。これを中央銀行の独立性といいます。

しかし、日本では、なぜか日銀の政策委員会が、国の金融政策の目標を設定してしまうという、世界のスタンダードからみれは完璧に逸脱した異様なシステムになっています。

このことについては、このブログでも過去に何度か掲載してきました。その記事の一つのURLを以下に掲載します。

日銀法改正、将来の選択肢として視野に入れていきたい=安倍首相―【私の論評】日銀の政策決定委員会が日本の金融政策を決定するのではなく、政府が定められるようにしなければ、いつまでも日銀人事が重大な意味を持つという異常状況にさいなまされることになる(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、日銀政策委員会が日本国の金融政策の目標を設定する限りにおいては、審議員がどのような考えを持つかによって、日本の金融政策が左右され、非常に不安定であることを述べました。

以下に、その一部をコピペさせていただきます。
そもそも、日銀の政策決定委員会が日本国の金融政策の方針を決めるのが問題であって、これは政府が定めるべきです。政府が定める、金融政策の方針に従い、日銀の政策決定委員会が、専門家的立場から、その具体的実施方法を選択するという具合にすべきです。 
実際、世界標準の中央銀行の独立性は、政府が国の金融政策の方針を定め、中央銀行はその方針に従い、専門家的な立場から、具体的な金融政策の方法を他から独立して、自由に選択し実行できるし、それに失敗すれば、責任をとるというものです。 
特に、中央銀行の「目標の独立性(goal independence)と手段の独立性(instrument independence)の違いを認識すべきです。中央銀行が自由に目標を設定できるという目標の独立性を民主主義社会で正当化することはできません。なぜなら、中央銀行のメンバーは全員が官僚であって、国民から選挙で選ばれるわけではないし、国民から信託を受けた人々ではありません。 

しかし、中央銀行が干渉を受けずに適切な金融政策を実施できるような手段の独立性は、経済安定のために極めて重要です。手段の独立性は守られるべぎてす。 
しかし、現状の日銀法では、「目標の独立性」が保障されているのです。 
日本銀行も、このような世界標準の中央銀行の役割を担うようにすべきであって、そのためには、日銀法の改正が必要です。
ブログ冒頭の記事でもわかるように、官邸はこの日銀人事に相当やきもきしている様子がうかがえます。まさに、今回も日銀人事が重大な意味を持つという異常状況が繰り返されています。

今回は、円安容認派、すなわち金融緩和派が審議員になるということで、確かにこれで、よほどのことがない限り、しばらく金融緩和政策がとられることになりそうですが、それにしても、いつどこでこれが崩れるかなど保証の限りではありません。

布野幸利氏 2006年当時

また、次の審議員の選出のときにどうなるかなど、全くわかったものではありません。このような異常な状況はもうやめるべきです。この異常状況をやめるため、すぐにでも日銀法を改正して、政府が日本の金融政策の目標を定め、日銀は政府の目標に従い、専門家的立場から、その方法を選ぶことができるという本来に姿に戻すべきです。

そうでないと、いつまでも金融政策がまともに機能しなくなって、デフレやインフレ等になっても、責任体制が曖昧で、いつまでたっても過去のように金融政策が是正されることなく、デフレが際限なく続くという馬鹿げたことが起こるかもしれません。


【日本の解き方】インフレ目標2%に黄信号 黒田日銀は審議委員人事でピンチも ―【私の論評】日本国がまともな金融政策ができるようにする立場からすると、いつも薄氷を踏むような人事にハラハラするのはおかしい。やはり、政府が人事権を握るのが当然、そのため日銀法改正を実現すべき(゚д゚)!

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【関連図書】
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