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2017年4月18日火曜日

日銀審議委員候補に「リフレ派」片岡氏-三菱UFJ銀の鈴木氏も―【私の論評】片岡氏登場で日本がデフレに舞い戻る確率はかなり減ったが(゚д゚)!

日銀審議委員候補に「リフレ派」片岡氏-三菱UFJ銀の鈴木氏も

片岡剛司氏 写真はブログ管理人が挿入 以下同じ
  政府は18日、日本銀行の審議委員に三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部上席主任研究員の片岡剛士氏、三菱東京UFJ銀行取締役常勤監査等委員の鈴木人司氏を充てる人事案を国会に提示した。

  任期は5年間。参院が記者団に資料を配布した。

  ブルームバーグが入手した政府の国会提出資料によると、片岡氏は44歳。経済政策の調査に約20年間携わっており、理論やデータに基づく「分析手法は高い評価を得ている」という。「アベノミクスのゆくえ-現在・過去・未来の視点から考える」(光文社新書)などの著書がある。慶応大学大学院商学研究科修士課程修了。

  昨年4月、自民党の有志議員の勉強会「アベノミクスを成功させる会」(会長・山本幸三地方創生担当相)に講師として出席し、消費増税の凍結を提唱した。代替の社会保障財源として相続税や資産課税の強化を挙げていた。

  昨年11月4日付の片岡氏のリポートでは、「2%のインフレ目標に向けたモメンタムが維持されているとは全く思えない」とした上で、「早期の追加緩和という具体的なアクションを行うことが定石であり、かつ必要である」との見解を示していた。

  鈴木氏は63歳。1977年に慶応大学経済学部を卒業後、当時の三菱銀行に入行した。東京三菱インターナショナル・ロンドン副社長を経て、三菱東京UFJ銀行の市場企画部長や副頭取などを歴任し、2016年6月から現職。金融市場の実務に精通していることや国内外の幅広い人脈が評価された。
量にこだわり

  片岡氏は木内登英氏、鈴木氏は佐藤健裕氏の後任で、木内、佐藤両氏の任期は7月23日まで。日銀審議委員人事は国会の同意が必要だが、自民、公明の与党が過半数を占めるため、6月18日までの今国会中に衆参両院で承認される見通し。承認が得られれば、片岡氏と鈴木氏は9月20、21両日の金融政策決定会合から参加する。

  岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミストは、片岡氏について、金融緩和に積極的な「リフレ派の中心的な人物」と評価。ただ金融政策の実務では「あまり極端な主張に走らず、事務方と調整してバランスの取れた投票行動を取るのではないか」とみる。鈴木氏についても、銀行の経営に携わっていることから、金融緩和の「出口戦略の議論において貢献できるのではないか」と述べた。

  SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは片岡氏について「リフレ派であることは間違いない」とした上で、岩田規久男副総裁、原田泰審議委員の路線に近く、金融緩和の「量にこだわりのある人が選ばれた」と指摘する。鈴木氏については「出口政策に向けて必要な、知見のある方が選ばれてよかった」と評価。2人の加入で「金融政策の方向性が変わることはないだろう」と分析している。

【私の論評】片岡氏登場で日本がデフレに舞い戻る確率はかなり減ったが(゚д゚)!

片岡剛司氏については、ぶれないリフレ派としてかねてから有名でした。私自身はそのことを前から知っていて、ツイッターで以前から片岡氏をフォローしていました。それに、書籍も2冊くらいは購入したことがあります。

片岡氏は、少し前からツイッターをやめていたようです。以前もあまりにくだらないコメントがあったりしたのか、一度やめたことがあり、今度もそのためかなとも思っていたのですが、今回は日銀の審議員になるということもあってやめたのかもしれません。

ツイッターではかなり今回の件で、片岡氏のことがツイートされているようですが、あまり知らない人もいるものと思いますので以下に略歴など掲載します。
愛知県常滑市出身。1991年3月、愛知県立半田高等学校、1996年3月 慶應義塾大学商学部卒業後、同年4月、三和総合研究所に入社(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。2001年3月、慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了(計量経済学専攻)。 
2010年6月から2ヶ月の間、東北大学大学院法学研究科客員教授を担当。2012年4月、早稲田大学政治経済学術院非常勤講師。 
また、公職として、2015年10月から参議院第二特別調査室客員調査員と会計検査院特別調査職を担当し、客員調査員は2016年6月迄担当。

2012年時点で、円高が問題であると主張していました。 
消費税の8%への増税に批判的であり、2014年4月1日には、財務省の広報戦略の中で「ご説明」の際に渡される資料の数々の写真を公開しつつ、批評を行っていました。
民間シンクタンクという実践的な場でリサーチャーとして活躍する一方で、日本のデフレーション脱却を果たすために、インフレターゲットの設定を主張していました。
片岡氏のような民間のエコノミストなどに関しては、私はほとんど信用していないのですが、片岡氏は例外です。 例外どころか、他のエコノミストなどとは異なり、まともな経済感覚と過去の研究をもとに、まさにその時々で日本経済に対する適切で妥当な提言を行ってきました。

だからこそ、私は片岡氏のことを信頼しているのです。他のエコノミストに関しては、ほとんど信用していません。なにせ、彼らは、為替でも何でも、目の前の数ヶ月間のことをもとにしか、予測などできないようですし、実際そうなのだと思います。

そうして、なぜか経済に関する一般常識はもとより、日本や世界の経済史的なことも知らずに、日々頓珍漢な発言や、素っ頓狂な予言を出してほとんど当たった試しもありません。しかし、片岡氏は、過去には妥当な発言をし、予測はほとんど当たっています。

そうして、何よりもも片岡剛司氏は、あの悪手中の悪手であるデフレから回復しきっていない時期の8%増税に対して反対の意見を主張していたことです。これについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

【お金は知っている】消費増税の災厄もたらす御用学者と無責任議員 自身の「誤り」にダンマリ ―【私の論評】増税推進派の似非論評に騙されない方法(゚д゚)!
衆院第1委員室に到着し、質問者の民主・野田佳彦前首相(左)とあいさつ
しながら着席する安倍晋三首相=国会内で2016年2月19日午後0時58分
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から以下に、2013年当時政府の指揮者会議で2014年4月からの8%増税に関して、賛成・反対の意見をまとめたリストを掲載します。


さて、このリストの一番右の「☓反対」の欄の上から二番目に片岡剛司氏の名前が掲載されています。この有識者会議には、民間のエコノミスト・アナリストも参加していますが、その中で増税に反対したのは片岡剛司氏ただ一人です。

民間エコノミスト・アナリストの中で私が信用するのは、片岡剛司氏と村上尚樹氏くらいなものです。他にも、信用できる人はいるのかもしれませんが、本当の実数は少ないです。

それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
NHK日曜討論「徹底分析 日本経済のゆくえは」―【私の論評】いつも予想を外す酷すぎる分析をするエコノミストの提言は、完全無視せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、NHK日曜討論で昨年の2月のNHK日曜討論という低劣な番組で、大学教授と民間のエコノミストらがとんでもない経済の分析と提言を行っていたことを中心に掲載しました。

以下に、一部分を掲載します。
本日のNHK日曜討論の内容は、本当に酷いものでした。特にひどかったのは、昨年の10-12月期のGDPのマイナス成長に関して、討論参加者の誰からも、8%増税の悪影響をあげた人はいなかったということです。 
もうこの時点で、この討論は奇妙奇天烈、摩訶不思議で、まともに聴いている価値はないと判断しましたが、それでも我慢して聴いていると、マイナス金利についてもなにやら筋違いの話ばかりしていました。 
この討論を聴いていると、本当に脱力感を感じてしまいました。この人たちは全員見当違い、筋違いの話をしているとしか思えませんでした。 
ここで討論している人たちは、経済分析や予想を大外ししている人たちばかりです。それに、8%増税の日本経済に与える影響は軽微と予測していました。こんな人たちが、偉そうに日本の実体経済を語る資格はないです。ツイッターのつぶやきをみていると、こう思うのは私だけではないことが良くわかります。以下にいくつかあげておきます。
私自身は、このような経験がこの番組だけではなく、過去にも何度も重なったため、民間のエコノミスト・アナリストという人たちは、結局自社の商品を売るために、出鱈目の話をして売り込みをする人たちなのではないかと思っています。

しかし、このブログには片岡剛士氏の記事そのものを元記事として掲載したこともあります、その記事のリンクを以下に掲載します。
GDPマイナス成長は暖冬のせいではない―【私の論評】増税派はどこまでも、8%増税が大失敗だったことを認めたくない(゚д゚)!

この記事は、昨年2月の季節外れの気温の高さがGDPが伸びない原因であるなどと、8%増税賛成派が、屁理屈を主張したことに対して片岡氏が反論したものです。

以下に一部を引用します。
 今回公表されたGDP統計では、家計消費の推移が自動車や家電製品といった耐久財、衣料品などの半耐久財、食品などの非耐久財、輸送・通信・介護・教育などを含むサービスといった4つの品目群(GDP統計では形態と言う)別にまとめられている。2015年7-9月期と比較しても、1年前の2014年10-12月期と比較しても、家計消費の落ち込みに最も大きく影響しているのは耐久財消費の落ち込みである。石原大臣の述べるとおり、家計消費の落ち込みの主因が冬物衣料品などが大きく落ち込んだことにあるのならば、その影響は半耐久財消費の大幅減という形で現れるはずだが、統計データを参照する限り、そうはなっていない。 
 思い起こせば、天候不順が消費低迷の主因であるという指摘は、2014年4月の消費税増税以降繰り返されてきた。確かに天候不順が消費を落ち込ませる可能性はゼロではない。しかし消費意欲が旺盛であれば、多少の天候不順でも、消費の落ち込みがこれほど長くかつ深刻な形で続くことはないだろう。GDP速報値の結果からは、2015年10-12月期の民間最終消費支出の値は304.5兆円だが、これは、消費税増税直後に大幅な落ち込みとなった2014年4-6月期の305.8兆円をも下回っているのである。これほどの大きな変動が天候不順で生じると考えられるのだろうか? 
 やや長い目で民間最終消費支出の推移をみれば、2002年から2012年までの10年間の民間最終消費支出は前期比0.2%程度のペースで緩やかに増加していたことがわかる。2013年に入るとこのペースがやや拡大したが、2014年4-6月期以降になると、民間最終消費は落ち込みが続き、2015年10-12月期の民間最終消費支出は、統計的に見て、前期比0.2%増のトレンドから有意に下ぶれしたと結論できる。つまり、統計的に「消費の底割れ」が生じたというのが今回の結果だということだ。
いたって、まともな分析です。私も、当然のことながら、当時GDPがマイナスだったのは、天候のせいであるとはとても思えませんでした。

それにしても、8%増税をしても日本経済に与える影響は軽微であるとか、実際に8%増税して、GDPがマイナスになると、今度は天候のせいにするような人たちを雇っている企業は、このことを何とも思わないのかと疑問に感じてしまいます。

その中にあって、片岡剛司氏や村上尚樹氏などは例外で、まともな経済感覚を持ち、まともな提言を行っています。

片岡剛士に関して8%増税に反対したことをあげましたが、当然のことながら、日銀の金融緩和政策に関してもまともな判断力を持っておられます。それについてもこのブログでとりあげたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
アベノミクスの破綻を煽る「金融岩石理論」は簡単に論破できる―【私の論評】常識を働かせば金融岩石論にははまらない(゚д゚)!
晴れ着姿の女性が見守る中でスタートした東京株式市場
この記事は、今年の1月17日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、いわゆる「金融岩石理論」が、理論的にも実証的にも成立しがたいことを、丁寧に解説した『アベノミクスは進化する』(中央経済社)を原田泰・片岡剛士・吉松崇編著で出版したことを掲載しました。

ちなみに、「金融岩石理論」とは坂に岩石があり、びくともしません。しかしこれをいったん動かすと、猛烈な勢いで坂を転がりだしてしまう。これと同じで、日銀がマネーをどんどん増やしても物価はまったくあがらない。しかしいったん上がりだすと、どんどん物価は上昇してハイパーインフレ(猛烈なインフレ)になってしまう、という理論です。

片岡剛士氏は、この書籍の中でも、明確に金融岩石理論が成り立たないことを示しています。

このまともな経済感覚を持ち、まともな分析をする数少ない民間のエコノミストの一人である、片岡剛士氏が今回日銀の審議員になったことはまことに喜ばしいことです。

片岡氏が日銀新議員になったことで、また日銀の誤った金融政策で、日本がデフレに舞い戻る確率はかなり減ったと思います。
これからも、片岡氏のような民間エコノミストが大勢出てきて、まともな予測や提言を行い、日銀の審議員や、政府の中でも大勢活躍するようになってほしいです。そうなれば、デフレの最中に増税したり、金融引締めをしたりするようなバカマネをするようなことはなくなると思います。

しかし、これはまだ政府が人事案を国会に提出したという段階です。これに対して、野党はどう反応するのでしょうか。よもや、また反対というということになってしまったら、本格的に堪忍袋の尾が切れると思います。そうなれば、私だけではなく他の多くの人々もそうなるでしょうから、次の選挙では大惨敗して、雲散霧消するでしょう。

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2015年5月6日水曜日

日銀審議委員の後任は「円安」派 無難な人選だが官邸サイドの思惑は貫かれた―【私の論評】日銀法を改正して、本来の姿に戻し、マクロ金融政策をまともにせよ(゚д゚)!

日銀審議委員の後任は「円安」派 無難な人選だが官邸サイドの思惑は貫かれた

政府は衆参両院の議院運営委員会理事会で、2015年6月末に任期が満了する日銀の森本宜久審議委員の後任に、トヨタ自動車元副社長で現相談役の布野幸利氏を充てる人事案を提示した。

大規模な金融緩和を主張する「リフレ派」の抜てきを予想する向きもあったが、東京電力元副社長の森本氏と同じ産業界出身者の枠が維持され、「無難な人選」との見方が多い。ただ、官邸周辺では以前から「円安に肯定的な人材が後任にふさわしい」との声が根強くあり、円安メリットを享受する自動車業界からの起用になったようだ。

日本銀行
リフレ派の女性は見当たらず

日銀が追加緩和を決めた昨年10月の金融政策決定会合では、メンバーである政策委員9人のうち、森本氏を含む4人が反対し、1票差での可決という異例の事態になった。「森本委員の古巣の東電は、円高の方が燃料調達に有利。だから円安を招く追加緩和に否定的なのではないか」。官邸関係者は苦々しい表情で語っていた。

森本氏が古巣のために追加緩和に反対したとはさすがに考えられないが、官邸周辺はこの薄氷の決定をきっかけに、アベノミクスの「第一の矢」である大規模な金融緩和路線を安定的に継続するためには、リフレ派の投入が必要との危機感を強めていったようだ。実際、3月に退任した宮尾龍蔵前審議委員の後任には、リフレ派の論客として名高い原田泰・元早稲田大教授が選ばれた。

原田氏の人事案が国会に提示されたころ、水面下では森本氏の後任選びが本格化していた。リフレ派の学識経験者のほか、安倍晋三政権が掲げる「女性活躍推進」に歩調を合わせて女性の登用も模索されたが、「リフレ派の女性はなかなか見当たらない」(政府関係者)。政策委員のうち2人を占めてきた産業界出身者の枠が減ることに経済界の反発も予想され、結局は産業界から人選を進める流れとなった。

自動車業界からは初めて

ただし、官邸が譲れなかったのは「円安否定論者ではないこと」(関係者)。トヨタをはじめ、自動車メーカー各社は円高局面の際、日本のものづくりの「六重苦」の一つに円高を挙げ、円高を是正する政策を求めていた。日銀の異次元緩和とその後の追加緩和で急加速した円安の追い風を受け、トヨタ自動車の足元の業績は絶好調だ。布野氏の金融政策に対する考え方は明らかになっていないが、「少なくとも現在の緩和路線を支持するだろう」(アナリスト)との見方が強い。金融緩和の恩恵を最大限に受けているトヨタの関係に白羽の矢が立ったのは自然な成り行きだったといえる。

これまで産業界枠の審議委員の出身母体は銀行や商社、エネルギー業界などで、自動車業界は初めて。布野氏は海外駐在経験も長く、トヨタのグローバル戦略を推し進めた国際派で、世界経済の知見も豊富だ。衆参両院で人事案が同意されれば、布野氏は7月から金融政策決定会合に加わることになる。黒田東彦総裁の「綱渡り」の金融政策運営への援軍となるのか、そのスタンスが注目される。

【私の論評】日銀法を改正して、本来の姿に戻し、マクロ金融政策をまともにせよ(゚д゚)!

上の記事を読んで、本当に日本の金融政策の決定システムは異常だと思います。産業界から日銀政策決定委員会の新議員を入れるだの、女性を入れるだの、そんなことは本来全くどうでも良いはずです。

出身はどこからでも良いですが、少なくともマクロ金融政策に熟知した人でなければならないはずです。

それに、このブログにも何度も述べてきたように、日銀という政府の下部組織に過ぎない組織のこれまた、政策決定委員会なるものの審議員の多数決で、日本国の金融政策が決定されるというのは、本当に異常なことです。

このような委員会が本当に責任をとることができるのでしょうか。日銀の官僚も、審議員も、国民から選挙で選ばれた議員でもなんでもありません。こういう組織が、日本国全体の金融政策を決定するというシステムは本当に異常であり、世界的にみても特異なものです。

まともな国であれば、国の金融政策の目標は、あくまで国が設定し、中央銀行(日本では日銀)は、その目標を達成するために、専門家の立場から手段を自由にえらぶことができるようになっています。これを中央銀行の独立性といいます。

しかし、日本では、なぜか日銀の政策委員会が、国の金融政策の目標を設定してしまうという、世界のスタンダードからみれは完璧に逸脱した異様なシステムになっています。

このことについては、このブログでも過去に何度か掲載してきました。その記事の一つのURLを以下に掲載します。

日銀法改正、将来の選択肢として視野に入れていきたい=安倍首相―【私の論評】日銀の政策決定委員会が日本の金融政策を決定するのではなく、政府が定められるようにしなければ、いつまでも日銀人事が重大な意味を持つという異常状況にさいなまされることになる(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、日銀政策委員会が日本国の金融政策の目標を設定する限りにおいては、審議員がどのような考えを持つかによって、日本の金融政策が左右され、非常に不安定であることを述べました。

以下に、その一部をコピペさせていただきます。
そもそも、日銀の政策決定委員会が日本国の金融政策の方針を決めるのが問題であって、これは政府が定めるべきです。政府が定める、金融政策の方針に従い、日銀の政策決定委員会が、専門家的立場から、その具体的実施方法を選択するという具合にすべきです。 
実際、世界標準の中央銀行の独立性は、政府が国の金融政策の方針を定め、中央銀行はその方針に従い、専門家的な立場から、具体的な金融政策の方法を他から独立して、自由に選択し実行できるし、それに失敗すれば、責任をとるというものです。 
特に、中央銀行の「目標の独立性(goal independence)と手段の独立性(instrument independence)の違いを認識すべきです。中央銀行が自由に目標を設定できるという目標の独立性を民主主義社会で正当化することはできません。なぜなら、中央銀行のメンバーは全員が官僚であって、国民から選挙で選ばれるわけではないし、国民から信託を受けた人々ではありません。 

しかし、中央銀行が干渉を受けずに適切な金融政策を実施できるような手段の独立性は、経済安定のために極めて重要です。手段の独立性は守られるべぎてす。 
しかし、現状の日銀法では、「目標の独立性」が保障されているのです。 
日本銀行も、このような世界標準の中央銀行の役割を担うようにすべきであって、そのためには、日銀法の改正が必要です。
ブログ冒頭の記事でもわかるように、官邸はこの日銀人事に相当やきもきしている様子がうかがえます。まさに、今回も日銀人事が重大な意味を持つという異常状況が繰り返されています。

今回は、円安容認派、すなわち金融緩和派が審議員になるということで、確かにこれで、よほどのことがない限り、しばらく金融緩和政策がとられることになりそうですが、それにしても、いつどこでこれが崩れるかなど保証の限りではありません。

布野幸利氏 2006年当時

また、次の審議員の選出のときにどうなるかなど、全くわかったものではありません。このような異常な状況はもうやめるべきです。この異常状況をやめるため、すぐにでも日銀法を改正して、政府が日本の金融政策の目標を定め、日銀は政府の目標に従い、専門家的立場から、その方法を選ぶことができるという本来に姿に戻すべきです。

そうでないと、いつまでも金融政策がまともに機能しなくなって、デフレやインフレ等になっても、責任体制が曖昧で、いつまでたっても過去のように金融政策が是正されることなく、デフレが際限なく続くという馬鹿げたことが起こるかもしれません。


【日本の解き方】インフレ目標2%に黄信号 黒田日銀は審議委員人事でピンチも ―【私の論評】日本国がまともな金融政策ができるようにする立場からすると、いつも薄氷を踏むような人事にハラハラするのはおかしい。やはり、政府が人事権を握るのが当然、そのため日銀法改正を実現すべき(゚д゚)!

日銀 追加の金融緩和を決定―【私の論評】日銀が、追加金融緩和を実行し、政府が積極財政に踏み切れば、数十年ぶりの快挙になるのは間違いない。そうなれば、安倍政権支持率はかつてないほどに上昇することだろう(@@)

安倍政権に奪われた雇用政策 日銀法改正を主張する気概を 民主党代表選 ―【私の論評】日銀の金融政策は雇用と多いに関係あること、中央銀行の独立性とは目標ではなく、手段の独立性であるべきことを理解できない政党・政治家は結局何もできずに破滅するものと心得よ!!

【関連図書】
国の金融政策はどうあるべきか、以下の書籍をごらんいただければ、理解することができます。

マネーの支配者: 経済危機に立ち向かう中央銀行総裁たちの闘い
ニール・アーウィン
早川書房
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アメリカ連邦準備制度(FRS)の金融政策 (〔世界の中央銀行〕)
田中 隆之
きんざい
売り上げランキング: 28,053

経済学者たちの闘い―脱デフレをめぐる論争の歴史
若田部 昌澄
東洋経済新報社
売り上げランキング: 300,868

2015年2月24日火曜日

衆院が原田早大教授の日銀審議委員起用を可決、参院も同意見通し―【私の論評】日銀人事は、衆院選よりも重要(゚д゚)!安倍総理の国会での"やじ"は、民主党の目を日銀人事から逸らし、自らに塩を送らせるための陽動作戦か?


原田泰氏

衆院は24日午後の本会議で、日銀審議委員に早稲田大学・政治経済学術院特任教授の原田泰氏を起用する政府の同意人事案を与党などの賛成多数で可決した。

国会同意人事は衆参両院の同意を得なければ白紙となるが、両院とも与党が多数を占めており、25日開会で調整中の参院本会議でも同意を得られる見通し。

原田氏は、3月25日に任期を迎える宮尾龍蔵審議委員の後任となる。大胆な金融緩和を提唱するリフレ派の中でも、岩田規久男・日銀副総裁と並ぶ代表的な論客。岩田氏や浜田宏一・米イエール大名誉教授との共著もある。

日銀審議委員は、日銀の最高意思決定機関である政策委員会のメンバーで、同委員会は総裁1人、副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成。月に1─2回、定例開催している金融政策決定会合では当面の金融政策運営の方針などを決めている。

●原田 泰(はらだ・ゆたか)氏

1950年生まれ。74年東大農卒、経済企画庁入庁、財務省財務総合研究所次長、大和総研専務理事などを経て2012年早稲田大学政治経済学術院教授。経済学(学習院大)博士。

【私の論評】日銀人事は、衆院選よりも重要(゚д゚)!安倍総理の国会での"やじ"は、民主党の目を日銀人事から逸らし、自らに塩を送らせるための陽動作戦か?

日銀の人事に関しては、このブログにも何回か掲載してきたように、かなり重要です。これに関しては、倉山満氏が、その重要性について記事を書いていますので、それを引用させていただきます。
日銀人事は衆院選よりはるかに重要 アベノミクスの“死活問題”
倉山満氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の要約を以下に掲載させていただきます。
 景気を回復させるのに必要なのは、経済学の知識ではない。後の日本経済を左右するのは、3月と6月の日銀人事だ。昨年10月1日、当時の木下康司財務事務次官に屈服し、これ以上ないほどみっともない形で消費増税の決断に追い込まれた増税の痛みを和らげるには追加金融緩和しかなかったが、もはや政権にそれを行う力はなかった。息を吹き返したのは、本田悦朗内閣府参与が獅子奮迅の活躍で増税阻止の流れをつくってからだ。 
 今年10月31日、日銀は追加金融緩和を行った。ただし、日銀金融政策決定会合は5対4の薄氷の勝利だ。では誰の1票が決定的だったのか。追加緩和反対の4票は、森本宜久・石田浩二・佐藤健裕・木内登英。いずれもデフレ派で反アベノミクスだ。特に、木内委員は毎月の日銀金融政策決定会合で、“黒田バズーカ”の即時停止を求める筋金入りだ。 
日本銀行内の多数派は彼らと同意見で、アベノミクスを敵視している。 
 対して、賛成派は黒田東彦総裁・岩田規久男と中曽宏の両副総裁・宮尾龍蔵・白井さゆりの5票。アベノミクスの中核である金融緩和を基軸としたリフレ政策の理論的支柱の岩田副総裁はともかくとして、宮尾・白井の両委員は総裁に追従しているにすぎない。 
 仮に黒田総裁が増税の痛みを和らげるべく金融緩和をしたくても、日銀出身の中曽副総裁が賛成してくれなければ不可能なのだ。かつて、福井俊彦総裁時代の日銀は、かの小泉純一郎内閣の景気回復を破壊した前科がある。それを承知で、今年10月に安倍内閣が息を吹き返して最初の日銀会合で追加緩和を提案した黒田総裁は絶妙だった。 
 中曽副総裁の背後にいる日銀は、安倍内閣との対決を避けた。そして金融緩和が行われ、増税の悪影響で停滞気味だった景気は、株高円安が一気に進んだ。 
 3月にアベノミクス賛成派の宮尾委員、6月に反対派の森本委員が交代する。安倍首相は意に沿う委員を送り込めるか。3月に負ければアベノミクスは即死、6月まで2連勝すれば安泰だろう。 
 日本経済はたった9人の日銀政策委員会に握られている。彼らの人事は衆議院総選挙などよりはるかに重要なのだ。 
 日銀政策委員会は総裁をトップに、副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成されている。メンバー全員が衆参両院の同意を経て内閣が任命する国会同意人事で任期は5年。宮尾氏が3月25日に、森本氏が6月30日にそれぞれ任期満了を迎えるため、今後水面下で激しいバトルが展開されることになる
今回衆院で審議員に選ばれた原田泰氏はリフレ派です。そうして、何か特になければ、ブログ冒頭の記事にも掲載されているように、よほどのことがない限り、参院でも選ばれることになりそうです。そのため、何とか今回は、アベノミクス即死にはならないですみそうです。次の6月の人事の時がどうなるかが、天下の分かれ目になるということです。

今回の人事では、過去にそうであったように、民主党あたりが、また人事に横槍を入れたりするのではないかと思い、ヒヤヒヤしました。実際、過去にはそのようなことが何度も繰り返されました。しかし、当の民主党はそもそも、金融政策の重要性に関してはほとんど関心がないし、現状の国会では人格攻撃ばかりしていて、何やら、日銀人事のことも忘れているかのごとくです。

今回日銀の審議員を原田氏のようなリフレ派ではなく、反リフレ派にしてしまえば、アベノミクスの息の根を止めることができ、安倍政権を窮地に追い込むことになります。人格攻撃などよりも、はるかに効果的なのですが、彼らはそのことに気がついていないようです。

そもそも、金融政策ははなから興味もないし、日本経済復活の切り札であり、雇用条件の改善なることも理解不能なのだと思います。だから、日銀人事などさほど重要ではないと思っているので、彼らの頭の中では、日銀人事などより、人格攻撃のほうが、大きな比重を占めているのだと思います。哀れといえば、哀れです。

そういう意味では、現状の国会が馬鹿な民主党の人格攻撃に終始していることは良いことかもしれません。これは、うがった見方かもしれませんが、安倍総理が「やじ」を飛ばしたのは、民主党が日銀人事に横槍を入れないようにするための、一種の目くらましの陽動作戦だったかもしれないと私は思います。


現状で、日銀の審議員が反インフレ派にでもなられたら、国会で予算審議が遅れることなどよりも、はるかに代償は大きいです。安倍総理としてしても、それだけは避けたいはずです。

もし、そうだとすれば、安倍総理はしたたかです。民主党のまともな政策論争もできない、頭の悪さを徹底的に活用というところでしょうか。安倍総理を懸命に非難する民主党の人たちは、ひよっとして、自分ではそう思わずに、安倍総理に塩を送っているのかもしれません。

安倍総理に目隠しされた民主党?

それにしても、なぜ日銀の審議員程度の人事で、こんなにピリピリしなければならないのか、上記の倉山満氏の説明でもだいたいお分かりとは思いますが、これ以外にも、日銀の独立性という問題があります。

これについては、このブログにも何度か掲載してきました。その代表的なもののURLを以下に掲載します。
【日本の解き方】インフレ目標2%に黄信号 黒田日銀は審議委員人事でピンチも ―【私の論評】日本国がまともな金融政策ができるようにする立場からすると、いつも薄氷を踏むような人事にハラハラするのはおかしい。やはり、政府が人事権を握るのが当然、そのため日銀法改正を実現すべき(゚д゚)!
消費増税による景気の落ち込みを予測できなかった黒田東彦日銀総裁
そもそも、日銀の政策決定委員会が日本国の金融政策の方針を決めるのが問題であって、これは政府が定めるべきです。政府が定める、金融政策の方針に従い、日銀の政策決定委員会が、専門家的立場から、その具体的実施方法を選択するという具合にすべきです。

実際、世界標準の中央銀行の独立性は、政府が国の金融政策の方針を定め、中央銀行はその方針に従い、専門家的な立場から、具体的な金融政策の方法を他から独立して、自由に選択し実行できるし、それに失敗すれば、責任をとるというものです。

特に、中央銀行の「目標の独立性(goal independence)と手段の独立性(instrument independence)の違いを認識すべきです。中央銀行が自由に目標を設定できるという目標の独立性を民主主義社会で正当化することはできません。なぜなら、中央銀行のメンバーは全員が官僚であって、国民から選挙で選ばれるわけではないし、国民から信託を受けた人々ではありません。

しかし、中央銀行が干渉を受けずに適切な金融政策を実施できるような手段の独立性は、経済安定のために極めて重要です。手段の独立性は守られるべぎてす。

しかし、現状の日銀法では、「目標の独立性」が保障されているのです。

日本銀行も、このような世界標準の中央銀行の役割を担うようにすべきであって、そのためには、日銀法の改正が必要です。

もう、まともな金融政策を実行したい人々の立場からすれば、現状のように、日銀の政策決定委員会の人事を巡って薄氷を踏みような思いをしなければならない現状のシステムは、変更するのかだ当然です。
日銀のいわゆる現状の独立性は、中央銀行の権限としてはあまりにも大きすぎますそうして現状では、権限ばかりが大きすぎ、責任がともなっていません。

過去の日銀は、20年近くも景気が悪いにもかかわらず、馬鹿げた金融引締め政策をひたすら繰り返し、結局デフレと円高の番人のような有り様でした。にもかかわらず、誰も責任をとりません。

なぜこんなことになってしまったかといえば、1997年に日銀法が改悪されたからです。このときから、日本国の金融政策を政府ではなく、日銀が定めることができるようになりました。それも、日銀の政策決定委員会が定めるようになってしまいました。

これは、ほんとうにおかしなことです、責任も取らない日銀の政策決定委員会のメンバ゛ーが日本の金融政策の目標を決定するなど、言語道断であり、全くの本末転倒です。

これは、会社の最終的な意思決定を取締役会で決定するのではなく、素人や、会社の歴史も良く知らないような、第三者委員会などに委ねているようなものです。

日銀法は、改正して、日本国の金融政策の目標は、政府が定めて、手段は日銀が選ぶようにさせ、なおかつ、目標をクリアできなかったら、当然のこととして、日銀に責任を追わせるようにすべきです。

今回の日銀人事は、委員がリフレ派だったので良かったのですが、6月の人事ではまだどうなるかわかりません。まあ、今回のように安倍総理がやじを飛ばしても、二番煎じとなりますから、何か他の手で、民主党の目線を日銀人事から引き離すことが肝要だと思います。

安倍総理としては、そのあたりはキチンと考えてるいるでしょうから、何とか、6月の人事もリフレ派の審議員になるとは思います。

しかし、日銀法が改正されていない現在、6月の日銀人事次第では、アベノミクスが葬られる可能性もゼロではありません。

やはり、今から徹底的にリフレの正しさ、反リフレ派の間違いを再度徹底させるような世論を盛り上げていく必要があると思います。そうして、いくいくは、日銀法を改正すべきです。

もし、6月の日銀人事で反リフレ派が審議員になれば、またぞろ日銀がデフレ、円高の番人となって、日本はデフレ・スパイラルの底に沈み、中国や韓国が大喜びするかもしれません。そんなことになっては、たまったものではありません。

私は、そう思います。みなさんは、どう思われますか?

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