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2015年5月6日水曜日

日銀審議委員の後任は「円安」派 無難な人選だが官邸サイドの思惑は貫かれた―【私の論評】日銀法を改正して、本来の姿に戻し、マクロ金融政策をまともにせよ(゚д゚)!

日銀審議委員の後任は「円安」派 無難な人選だが官邸サイドの思惑は貫かれた

政府は衆参両院の議院運営委員会理事会で、2015年6月末に任期が満了する日銀の森本宜久審議委員の後任に、トヨタ自動車元副社長で現相談役の布野幸利氏を充てる人事案を提示した。

大規模な金融緩和を主張する「リフレ派」の抜てきを予想する向きもあったが、東京電力元副社長の森本氏と同じ産業界出身者の枠が維持され、「無難な人選」との見方が多い。ただ、官邸周辺では以前から「円安に肯定的な人材が後任にふさわしい」との声が根強くあり、円安メリットを享受する自動車業界からの起用になったようだ。

日本銀行
リフレ派の女性は見当たらず

日銀が追加緩和を決めた昨年10月の金融政策決定会合では、メンバーである政策委員9人のうち、森本氏を含む4人が反対し、1票差での可決という異例の事態になった。「森本委員の古巣の東電は、円高の方が燃料調達に有利。だから円安を招く追加緩和に否定的なのではないか」。官邸関係者は苦々しい表情で語っていた。

森本氏が古巣のために追加緩和に反対したとはさすがに考えられないが、官邸周辺はこの薄氷の決定をきっかけに、アベノミクスの「第一の矢」である大規模な金融緩和路線を安定的に継続するためには、リフレ派の投入が必要との危機感を強めていったようだ。実際、3月に退任した宮尾龍蔵前審議委員の後任には、リフレ派の論客として名高い原田泰・元早稲田大教授が選ばれた。

原田氏の人事案が国会に提示されたころ、水面下では森本氏の後任選びが本格化していた。リフレ派の学識経験者のほか、安倍晋三政権が掲げる「女性活躍推進」に歩調を合わせて女性の登用も模索されたが、「リフレ派の女性はなかなか見当たらない」(政府関係者)。政策委員のうち2人を占めてきた産業界出身者の枠が減ることに経済界の反発も予想され、結局は産業界から人選を進める流れとなった。

自動車業界からは初めて

ただし、官邸が譲れなかったのは「円安否定論者ではないこと」(関係者)。トヨタをはじめ、自動車メーカー各社は円高局面の際、日本のものづくりの「六重苦」の一つに円高を挙げ、円高を是正する政策を求めていた。日銀の異次元緩和とその後の追加緩和で急加速した円安の追い風を受け、トヨタ自動車の足元の業績は絶好調だ。布野氏の金融政策に対する考え方は明らかになっていないが、「少なくとも現在の緩和路線を支持するだろう」(アナリスト)との見方が強い。金融緩和の恩恵を最大限に受けているトヨタの関係に白羽の矢が立ったのは自然な成り行きだったといえる。

これまで産業界枠の審議委員の出身母体は銀行や商社、エネルギー業界などで、自動車業界は初めて。布野氏は海外駐在経験も長く、トヨタのグローバル戦略を推し進めた国際派で、世界経済の知見も豊富だ。衆参両院で人事案が同意されれば、布野氏は7月から金融政策決定会合に加わることになる。黒田東彦総裁の「綱渡り」の金融政策運営への援軍となるのか、そのスタンスが注目される。

【私の論評】日銀法を改正して、本来の姿に戻し、マクロ金融政策をまともにせよ(゚д゚)!

上の記事を読んで、本当に日本の金融政策の決定システムは異常だと思います。産業界から日銀政策決定委員会の新議員を入れるだの、女性を入れるだの、そんなことは本来全くどうでも良いはずです。

出身はどこからでも良いですが、少なくともマクロ金融政策に熟知した人でなければならないはずです。

それに、このブログにも何度も述べてきたように、日銀という政府の下部組織に過ぎない組織のこれまた、政策決定委員会なるものの審議員の多数決で、日本国の金融政策が決定されるというのは、本当に異常なことです。

このような委員会が本当に責任をとることができるのでしょうか。日銀の官僚も、審議員も、国民から選挙で選ばれた議員でもなんでもありません。こういう組織が、日本国全体の金融政策を決定するというシステムは本当に異常であり、世界的にみても特異なものです。

まともな国であれば、国の金融政策の目標は、あくまで国が設定し、中央銀行(日本では日銀)は、その目標を達成するために、専門家の立場から手段を自由にえらぶことができるようになっています。これを中央銀行の独立性といいます。

しかし、日本では、なぜか日銀の政策委員会が、国の金融政策の目標を設定してしまうという、世界のスタンダードからみれは完璧に逸脱した異様なシステムになっています。

このことについては、このブログでも過去に何度か掲載してきました。その記事の一つのURLを以下に掲載します。

日銀法改正、将来の選択肢として視野に入れていきたい=安倍首相―【私の論評】日銀の政策決定委員会が日本の金融政策を決定するのではなく、政府が定められるようにしなければ、いつまでも日銀人事が重大な意味を持つという異常状況にさいなまされることになる(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、日銀政策委員会が日本国の金融政策の目標を設定する限りにおいては、審議員がどのような考えを持つかによって、日本の金融政策が左右され、非常に不安定であることを述べました。

以下に、その一部をコピペさせていただきます。
そもそも、日銀の政策決定委員会が日本国の金融政策の方針を決めるのが問題であって、これは政府が定めるべきです。政府が定める、金融政策の方針に従い、日銀の政策決定委員会が、専門家的立場から、その具体的実施方法を選択するという具合にすべきです。 
実際、世界標準の中央銀行の独立性は、政府が国の金融政策の方針を定め、中央銀行はその方針に従い、専門家的な立場から、具体的な金融政策の方法を他から独立して、自由に選択し実行できるし、それに失敗すれば、責任をとるというものです。 
特に、中央銀行の「目標の独立性(goal independence)と手段の独立性(instrument independence)の違いを認識すべきです。中央銀行が自由に目標を設定できるという目標の独立性を民主主義社会で正当化することはできません。なぜなら、中央銀行のメンバーは全員が官僚であって、国民から選挙で選ばれるわけではないし、国民から信託を受けた人々ではありません。 

しかし、中央銀行が干渉を受けずに適切な金融政策を実施できるような手段の独立性は、経済安定のために極めて重要です。手段の独立性は守られるべぎてす。 
しかし、現状の日銀法では、「目標の独立性」が保障されているのです。 
日本銀行も、このような世界標準の中央銀行の役割を担うようにすべきであって、そのためには、日銀法の改正が必要です。
ブログ冒頭の記事でもわかるように、官邸はこの日銀人事に相当やきもきしている様子がうかがえます。まさに、今回も日銀人事が重大な意味を持つという異常状況が繰り返されています。

今回は、円安容認派、すなわち金融緩和派が審議員になるということで、確かにこれで、よほどのことがない限り、しばらく金融緩和政策がとられることになりそうですが、それにしても、いつどこでこれが崩れるかなど保証の限りではありません。

布野幸利氏 2006年当時

また、次の審議員の選出のときにどうなるかなど、全くわかったものではありません。このような異常な状況はもうやめるべきです。この異常状況をやめるため、すぐにでも日銀法を改正して、政府が日本の金融政策の目標を定め、日銀は政府の目標に従い、専門家的立場から、その方法を選ぶことができるという本来に姿に戻すべきです。

そうでないと、いつまでも金融政策がまともに機能しなくなって、デフレやインフレ等になっても、責任体制が曖昧で、いつまでたっても過去のように金融政策が是正されることなく、デフレが際限なく続くという馬鹿げたことが起こるかもしれません。


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【関連図書】
国の金融政策はどうあるべきか、以下の書籍をごらんいただければ、理解することができます。

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