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2018年3月2日金曜日

習近平氏、不気味な“沈黙”の思惑 終身独裁狙うも実際は内憂外患、国家分裂の危機―【私の論評】習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候(゚д゚)!

習近平氏、不気味な“沈黙”の思惑 終身独裁狙うも実際は内憂外患、国家分裂の危機

独裁を強めようとする習近平氏だが、実際は内憂外患の状態にあるようだ

 韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪が終わり、国際社会の関心は、「核・ミサイル開発」に狂奔する北朝鮮と、ドナルド・トランプ米政権との緊張状態に移りつつある。「従北」で知られる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、緩和演出に必死だが、トランプ大統領は世界の脅威を高める「核放棄なき融和」など認めない。こうしたなか、不気味な沈黙を続けるのが中国の習近平国家主席だ。朝鮮半島有事を見据えた中国の思惑と、国家分裂の危機とは。中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏が迫った。

河添恵子氏

 政治色が前面に出た五輪期間中、存在感が極めて薄かったのが中国の習主席だ。その沈黙を破るようなニュースが、五輪閉幕式当日の2月25日、中国国営新華社通信によって報じられた。

 中国共産党中央委員会が、国家主席の任期を連続2期10年までとする「3選禁止規定」を撤廃する憲法改正案を、3月開幕の全国人民代表大会(全人代=国会)に提出したという。

 改憲案は、習氏への忠誠を誓うか否かを表明する、いわば「踏み絵」となる。反対すれば粛清の対象になりかねないため、出世への野心を抱く次世代には面従腹背しか残された道がない。

 つまり、5日に開幕する全人代で改憲案は可決されるはずだ。2期目をスタートしたばかり、64歳の習氏だが、国家主席として2023年以降の3期目どころか、その先まで視野に入れていると推測する。

 人民解放軍に対し、「死を恐れるな!」と激しい言葉で訓示する習氏が目指すのは、「革命は銃口から生まれる」という毛沢東主席の言葉を上書きした「習軍独裁政権」「終身独裁体制」なのだ。

 ただ、北京から「この1カ月ほど、習氏は震え上がっていた」という情報が漏れ伝わってきた。トランプ政権が1月に発表した「国家防衛戦略」(National Defense Strategy)の内容に驚愕したというのだ。

 同戦略は、習氏の中国を、米国の優位を覆そうとする「ライバル強国」の第一に掲げ、中国やロシアとの「長期的かつ戦略的な競争」が、テロとの戦いに代わる米国の最重要懸案であると強調していた。すなわち、「米中露の新冷戦時代」の幕開けを意味した。

 こうしたなか、習政権の足元はグラついていた。敵対する江沢民元国家主席派の粛清に次ぐ粛清や、軍幹部の強引な入れ替えなどの影響で、「この5年あまりで9回目」とされる暗殺未遂も報じられた。

 第1次習政権で試みた、「朝鮮半島を、南(韓国)から属国化していく戦略」も見事に失敗し、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)は配備された。かつては「兄弟国」だった北朝鮮との関係も史上最悪で、「1000年の敵」呼ばわりされるまで悪化した。

 頼みの綱だったロシアとの関係も、中国政府が1月下旬、「(中国主導の広域経済圏構想)『一帯一路』構想に北極海航路を入れる」と発表したことで、プーチン大統領を激怒させてしまった。

 内憂外患の習氏だが、朝鮮半島情勢について、表向きは「米朝対話」を主張しながら、本音は大きく違う可能性が高い。「金王朝の崩壊」を狙っているはずの習氏が、それを察知する金王朝の核ミサイルや生物化学兵器の脅威にさらされているとすれば、トランプ政権が軍事オプションに踏み切ることを、内心で期待していてもおかしくはない。

 ただ、習氏のジレンマは、その先にある。

 中国は長さ約1400キロという中朝国境に、数千人から数万人とされる人民解放軍を配備した。だが、いざ戦闘状態に突入すれば、朝鮮族の多い北部戦区(旧瀋陽軍区)の部隊が、どこに銃口を向けるか分からない。

 習氏は、その際のロシアの動向も懸念している。

 4年前のソチ冬季五輪直後、クリミア半島を電撃的に併合したプーチン氏は「ハイブリッド戦争」(=軍事・非軍事の掛け合わせ)を得意とし、正恩氏とは良好な関係を築いている。

 朝鮮有事に乗じて、大量の北朝鮮難民を中国東北三省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)に送り込み、“緩衝ベルト”にして極東シベリアとつなぐ、世界地図の塗り替えを画策しているフシがあるのだ。すなわち、習氏が掌握しきれていない旧満洲の地が無政府状態となり、国家分裂の危機に陥りかねない。

 プーチン氏は、埠頭(ふとう)1つを租借した北朝鮮の羅津(ラジン)港だけでなく、韓国の釜山港をも租借地にしたいと考え、「北朝鮮主導の朝鮮統一」にも力を貸すはずだ。

 これらが現実となれば、中国だけでなく、日本の安全保障にも甚大な影響が出かねない。

 “同床異夢”の米中露の勝者は誰なのか?

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。

【私の論評】習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候(゚д゚)!

ブログ冒頭の河添恵子氏の記事の見方は、私の見方に近いです。特に中国の内憂に関する見方は近いです。その見方を掲載した記事のリンクを以下に掲載します。この記事では、ブログ冒頭の川添氏の記事にもある、昨年暮に発生した「この5年あまりで9回目」とされる習近平暗殺未遂の時に習近平がとった行動に注目しました。
中国 国家主席「2期10年」任期に関する制限撤廃へ―【私の論評】憲法改正ができたから習近平政権が安定しているとの見方は間違い(゚д゚)!
昨年暮の爆発事件のときに習近平が駆け込んだとされる301病院
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
現在の中国は他国とは随分変わっていますが、その中でもかなり変わっているのが、憲法の上に共産党がある国という点です。こういう国では、憲法改正は他国と比較すればかなり簡単にできます。 
習近平が憲法改正ができたからといって、他国のように国内で他者よりはるかに力があるはずであり習政権は安定しているはずだと、考えるべきではないです。実際、習近平の力の限界を示すような事件が発生しています。 
中国の習近平国家主席が年の瀬の差し迫った昨年12月下旬、人民大会堂での会議が終わった駐車場で専用車両に乗ろうとした際、爆発物が破裂。習氏は腹痛を起こし、そのまま北京市内の中国人民解放軍直属の「中国人民解放軍総医院(略称「301病院」)に緊急搬送されていたことが分かりました。
301病院には“南楼”と呼ばれる病棟がありますが、厳重な警備が敷かれ、出入りには証明書の提示が必要です。情報によると、ここは共産党指導部の高官専用の病棟だそうです。

中共の301病院は不可思議な所で、昔は中共元老たちが治療の名目で、ここで画策を練っていました。一方、301病院は中央弁公庁主任の管轄下にあります。中央弁公庁主任は最高権力者の執事のような役目です。

言うことを聞かない人は、中共の内部闘争の中で治療の名目でここに入れられる人もいますが、事実上は政敵の手中に入ったことに等しく、生死を握られているのです。

たとえば、楊尚昆元国家主席。風邪を引いて301病院に入ってまもなく、不審な死を遂げました。
この記事では習近平がこの病院に入院した真相を以下のように分析してみました。
私自身は、爆破事件直後には習近平はこの暗殺未遂事件そのものの幅や奥行きがどの程度のものかすぐには判断できなかったと思います。場合によっては、はるかに規模の大きいクーデターや内戦である可能性も考えられたかもしれません。その場合には、一部の側近など除いて誰も信用できません。 
だからこ、そのような場合に備えて、習近平はそれに対する情報収集と備えをするために、ごく一部の信頼できる側近とともに、301病院へと急遽駆け込んだのではないかと見ています。その後の情報収集によってこの事件はさほど規模の大きなものではないことが了解できたので、翌日退院という形で病院から出たのだと思います。
 私は、習近平の腹痛というのは単なるごまかしであって、習は爆発事件が大規模なクーデターか内戦の一部かもしれないという危惧を抱いていたので、まずは病院に駆け込み前後策を練ったのだと睨んでいます。

2012年の共産党第18回大会以降、要人の日程などに関する最高機密の情報漏えいが原因で、習氏や王氏はたびたび暗殺の危険にさらされました。そのほとんどは計画的な犯行とされていますが、未だに捜査中のものも多くあるといいます。

香港メディアによると、習近平陣営と江沢民派の衝突が激しさを増していた中、犯した罪の清算から逃れるため江沢民派は必死に抵抗し、習氏や王氏の暗殺をも繰り返し試みたといいます。習氏はこれまで少なくとも9回の暗殺未遂に遭っており、いずれも内部関係者による犯行であることが判明しています。

香港「東方日報」2013年12月の報道によると、江沢民派の大物で当時の中央政法委員会の書記長である周永康が、2012年8月に少なくとも二回は習氏の暗殺を計画し、一回は北戴河の会議室に時限爆弾をセットしました、もう一回は軍301病院で健診を受ける習氏に毒を注射しようとしたといいます。消息筋によると、暗殺計画を実行したのは、周永康の側近で警備担当の談紅です。談は2013年12月1日に逮捕され、周永康は現在汚職等の罪で無期懲役に処されています。

法廷に出廷した周永康 従来頭が真っ黒だったが真っ白になっていたことが中国内で話題となった

3回目は、2013年8月末~9月中旬習近平は公に姿を見せず様々な憶測が流れていたところに、『交通事故で入院』との発表がありましたが、どうやら、車のタイヤに細工をされ事故を起こしたようです。その後も頻発しており、昨年の暮で9回の暗殺未遂事件があったとされています。

一方、習近平の片腕ともいわれる王岐山氏に対する暗殺未遂は少なくとも12件以上発生しているといわれています。さらに、2016年には、習近平夫人の専用車に爆発物が仕掛けられ、犯人は武装警察部隊の隊員だったとされています。

これだけ、暗殺未遂事件が発生する背景には、やはり習氏が終身独裁を狙っていたことと無関係ではないと考えられます。それに先立つ、不正の撲滅に名を借りた権力闘争により、多くの犠牲者が出たし、これからも粛清されることを恐れる人間が多数存在していると見られます。

習近平の暗殺未遂は過去9回だそうですが、実は、共産党支配の終焉の可能性が過去に3度あったとされています。最初は1989年6月の天安門事件の後、第2波は91年にソ連が崩壊した時、第3波は00年代の前半だといわれています。

1992年頃に米中央情報局(CIA)が、米国の中国専門家を集めて、20年後の中国を予測した。その結果、中国は3〜4つの国家に分裂する可能性が高いという予測を出しました。また、その影響でしょうかか、日本国内でも「中国崩壊」関連の著書が多数出版されました。しかし、依然として中国共産党独裁体制は健在です。

そのような中で、昨年10月17日発売の「ニューズウィーク日本版」(10月24日)は、「中国予測はなぜ間違うのか」という特集記事を組んでいました。この予測とは、つまり“なぜ中国共産党独裁体制の予測は外れたのか"ということです。そこで、特集記事の内容を紹介するとともに、将来の展望を考えてみます。



この特集では、英ケンブリッジ大学の調査によれば、政治体制が崩壊する確率は平均して2・2%前後であるとしています。つまり、誰かが体制崩壊を予測しても、100回中98回までは外れるそうです。また、別の調査によれば、1950〜2012年の間に権力を追われた独裁者は473人いますが、そのうち民衆の反乱によって追放されたのはわずか33人(7%)。必要条件は、比較的に分かりやすいです、インフレ率や失業率の上昇、経済成長率の低下などといわれています。

一般に独裁政権崩壊の直接的な引き金となる事象には4つのタイプがあります。選挙での不正、軍事的な敗北、近隣国での独裁体制崩壊、そしてアラブの春のような偶発的暴動の民衆蜂起への拡大です。しかし、政権の崩壊にはエリート層、とりわけトップレベルの軍人や政治家の離反が必要です。

中国共産党は、経済的繁栄のみが政治的正当性を生み出せることを熟知しています。その意味で、崩壊のリスクは長期間低水準にとどまっていても、突如として急上昇することになります。中国の場合、中所得国であることから、今後20年の間に崩壊のリスクが高まると予想されます。

独裁政権の崩壊の研究で分かったことは2つあります。それを中国に適用すると、第一は中所得国の地位を達成すると3倍近く高くなるということです。第二は独裁政権に支配された中所得国は、財産権の保護が不十分で、腐敗が著しいため、持続的な経済成長を達成し、高所得国になることができません。言うまでもなく、経済が停滞すれば共産党政権の存続は危ぶまれることになります。

共産党政権が永続するという主張に対して、私たちは健全な懐疑を抱き続けたほうかいい。かつてマーク・トウェインが、「予言は難しい。特に未来についての予言は」と言ったように、という一文で特集記事は終わっています。

要するに、特集記事では「中国崩壊」の出版物を多少冷やかしているのですが、将来的に中国共産党独裁体制が崩壊することを予測しています。しかし、ここで注意しなければならないことは、予測が往々にして“願望"になることです。つまり、米国もロシアも日本も、14億人の中国が3〜4つに分裂することを願っているからです。その背景を考慮して、我々は予測記事を理解する必要があります。

さて、私としては、以下のように今後の中国をみています。まずは、江沢民、胡錦濤の元前総書記には鄧小平に指名されたとの統治の正当性がありました。しかし習近平以後の党指導者には何もないです。

さらに、習近平が、如何に腐敗と戦っても、腐敗は古来中国の伝統であり、撲滅することは不可能です。それどころか、習近平自身がファミリー・ビジネスなどで、腐敗しています。腐敗しているものが、腐敗撲滅するなど、撲滅される側にとっては理不尽以外の何ものでもありません。日本を含めた先進国の感覚では、中国の幹部で全く腐敗していないものなどいません。それを考えると、この先の10年も30年先も、中国共産党独裁政権が続いていることは想像しにくいです。

この背景には、上で述べた習近平氏に対する9回にも及ぶ暗殺未遂事件の発生以外にも以下のようなことがあります。
  • ノーベル平和賞を受賞した劉暁波が、まともな治療を受けずに刑務所で死亡した。つまり、中国共産党に殺された。
  • 国境なき記者団の17年度世界報道自由ランキングで、180カ国中176位であった。
  • 15年7月9日、人権派弁護士など約300人が一斉に検挙された。この事実は記録映画「709の人たち」として映画化された。
これらの人権無視の実態を見せつけられると、どうしても中国共産党の独裁体制が、これからも永遠に続くとは考えられません。その意味で、私達は、中国共産党の動向や中国軍の軍備増強と同時に、中国国内の動向把握にも務めなければならないと思います。

実際、過去にも述べたように、中国は巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによって信頼を失っています。

これからも、中国は「内向き」であり、国内の事情が最優先します。中国の外交や、外に対する行動の動機は、すべて中国の国内事情によるものです。日本でいわれているような外圧で動く国ではありません。かつての日本のように外圧で動くのも問題ですが、外圧を無視するのも問題です。ここが中国の最大の欠点です。この欠点を解消できない中国は、いずれ分裂することになるのは明白です。実際、過去数千年もそうでした。

集合して大帝国をつくりとその後また分散し、また集合して大帝国をつくるということを繰り返してきました。そうして、過去の大帝国と次の大帝国は完璧に分断されています。

現在の中国も同じことを繰り返すことになるでしょう。そうならないことのほうが、確率としては相当低いとみるべきです。私は、習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候ではないかとみています。

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2017年8月7日月曜日

【沖縄が危ない!】全国に広がる「同調圧力」「沖縄メディア化」の不気味 決まり文句乱発、思考停止に似た危うさ ―【私の論評】沖縄本島を笑えない!財務省の同調圧力(゚д゚)!

【沖縄が危ない!】全国に広がる「同調圧力」「沖縄メディア化」の不気味 決まり文句乱発、思考停止に似た危うさ 

 2009年西表島に入港した護衛艦に反対する市民団体
反基地感情が強い沖縄の土地柄を語る際、よく使われるのが「同調圧力」という言葉だ。県民が内心、「沖縄を守るには、ある程度の基地が必要」と思うことがあっても、地域、職場、家庭などでの立場上、口にできない雰囲気がある。私の経験上、「同調圧力」が最も強いのは沖縄メディアの内部であり、特に駆け出しの記者は、徹底的に反基地イデオロギーの洗礼を受ける。

 十数年前、石垣島に海上自衛隊の艦船が休養のため寄港した。当時の石垣市長はガリガリの反自衛隊で、島全体が冷たい雰囲気だったが、港に集まった記者たちも、のっけからけんか腰だった。

 新人だった私がどう記事を書くか迷っていると、他社の先輩が「こう書けばいいよ」と、過去に自衛艦が寄港した際の新聞記事を渡してくれた。「武装した軍艦が平和な島に乱入し、住民を不安に陥れている」というような内容だ。親切な先輩には現在でも感謝しているが、沖縄の記者たちは、このように現場で「成長」していく。

 そのころ学校の平和教育で、戦争の悲惨さを強調するだけの授業に疑問を感じた私は「他国の脅威についても教えるべきだ」と指摘する短いコラムを書いた。

 すると上司は「戦争体験者たちの心を傷つける気か」と頭ごなしに怒鳴りつけ、原稿はボツ。当時、「中国が尖閣諸島を奪いに来る」などと口にしようものなら極右扱いされた。

 そんな石垣島を一変させたのは、皮肉にも当の中国だ。近年、尖閣周辺で傍若無人な領海侵犯を繰り返しているため、石垣島は今や、高校生でさえ堂々と「中国は脅威だ」と発言する時代になった。メディアの「同調圧力」もほぼ消えた。

 しかし、沖縄本島では時間が止まったままのようだ。「同調圧力」が怖いのは、長い間さらされ続けていると、他人に植え付けられた先入観で物事を見る癖がついてしまうことだ。沖縄メディアの反基地報道はまるで金太郎飴であり、思考停止に似た危うさを感じる。

 本土には「同調圧力」など存在しないと思っていたが、最近の全国紙やテレビを見ると、特に憲法改正や加計学園問題で「反安倍政権」のヒステリックな論調が台頭している。

 権力批判はいいのだが、言っていることがどれもそっくりなのが気になる。「安倍一強の緩み」などといった決まり文句の乱発など、自分の足で真剣に取材しているとはとても思えない。

 「同調圧力」「沖縄メディア化」が全国的に進行しているように見えるのは、不気味な現象だ。時流に流されない冷静さを、メディアはどこまで堅持できるだろうか。=おわり

 ■仲新城誠(なかしんじょう・まこと)1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県のメディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に『「軍神」を忘れた沖縄』(閣文社)、『翁長知事と沖縄メディア 「反日・親中」タッグの暴走』(産経新聞出版)、『偏向の沖縄で「第三の新聞」を発行する』(同)など。

【私の論評】沖縄本島を笑えない!財務省の同調圧力(゚д゚)!

同調圧力(どうちょうあつりょく 英: Peer pressure)とは、地域共同体や職場などある特定のピアグループ(英: Peer group )において意思決定を行う際に、少数意見を有する者に対して暗黙のうちに多数意見に合わせることを強制することを指します。

人生船出の新入社員集合写真。同じ服装同じ頭髪「クローン?」「既製品?」
少数意見を有する者に対して態度変容を迫る手段にはさまざまな方法があります。少数意見を有する者に対して物理的に危害を加える旨を通告するような明確な脅迫から、多数意見に逆らうことに恥の意識を持たせる、ネガティブ・キャンペーンを行って少数意見者が一部の変わり者であるとの印象操作をする、「一部の足並みの乱れが全体に迷惑をかける」と主張する、少数意見のデメリットを必要以上に誇張する、同調圧力をかけた集団から社会的排除を行うなどです。

日本は、ブログ冒頭の記事のように沖縄だけではなく、社会そのものに、とにかく本音でモノを雰囲気が醸し出されることがあります。組織に属する会社員は誰もが、程度の差はあれある程度感じるところではないかと思います。

本当に必要なのは忍耐なのに、我慢を美徳とし、嫌いな仕事を続ける姿を美化する。みんなと足並みを揃えて、どこか違う雰囲気を持つ人間を排他的に扱う。このようなことが、日本のあらゆる組織に多かれ少なかれ存在します。

そうして、日本には違いを間違いとみなし、周囲をコントロールして支配するという悪しき構造が根付いているようです。

実は、わが国の中枢に、自分たちにしか通じない非常識を頑なに守るため、周囲をコントロールして支配する集団がいることを御存じでしょうか。

それは何かといえば、財務省です。

安倍総理が消費増税は、予定通り行うとの発言が、新聞に掲載されていました。しかし、同時に安倍総理は同時に「デフレマインドを払拭するには至っていない。デフレから脱却すれば税収が安定的に増えていく」と述べ、デフレ脱却が最優先であると重ねて主張していました。

安倍総理
なぜ、このような発言をしなければならないのか、といえば、財務省に配慮してのことだと思います。非常識な財務省は、デフレであろうが何であろうが、何かといえば増税しようとします。そのような、財務省をいたずらに刺激したくなかったのでしょう。8%増税で大失敗した安倍総理は、10%増税をしてしまえば、日本経済はとてつもないことになり、自分自身にとっても、自民党にとっても良くないことは百も承知だと思います。

残念ながら、今の日本は、総理大臣ですら、財務省に一定の配慮しなればならないという歪な構造になっているのです。
そうして、相変わらず、多くの人間は財務省の言いなりで、まともな経済理論からするとおかしくて噴飯物の議論が、平気で公共の電波を通じて撒き散らされています。無知な政治家ならともかく、いわゆる主流派といわれる経済学者や評論家、アナリストまでそうなのですから、財務省の「同調圧力」は凄まじいものがあります。この日本という国はどこまで「財務省支配」がいきわたっているのか、本当に末恐ろしいです。

10%増税は、初歩的な間違いです。消費税率が8%から10%にあげると、それに連動して、自動的に2.5兆円×2%=5兆円の税収が上がると本当に思っている人がいることです。いや、そうとしか思えない議論をしている人がいると言った方が正確かもしれません。

典型的な例が、「社会保障の財源確保のためには10%増税が必要」「財政再建のためには10%増税が必要」等々です。私自身は、景気が良くなりすぎて、明らかにインフレとなり、さらにそれが経済に悪影響を及ぼすようになったときは、増税した方が良い場合もあることは認めます。しかし、景気が悪い時に増税すれば逆に税収が落ちることは歴史が証明することでもあり、絶対に反対です。

97年に消費税を3%から5%に上げてから、国の税収が54兆円(97年)から40兆円前後(2010年)まで落ち込んだことは記憶に新しいです。未だデフレから完璧に脱却していないここ日本で、無理やり消費税を10%に上げてその分だけ税収が上がる経済状況ではありません。

財務省が主張する、巨額の財政赤字は虚偽であることは、このブロクでにも何度か掲載してきました。しかし、この虚偽を虚偽でないと仮定してみても、財務省の言い分は間違っています。

証財政再建は「経済成長」「増税」「歳出削減」のベストミクスで達成されものです。これすらわかっていない人が多いです。もし本当に、1000兆円の借金があったとして、増税だけで返すのは不可能です。何しろ、これは消費増税400%分相当です。

歳出削減は徹底的に行うにしても一般会計予算が90兆円台だから限界があります。この大借金を持続的に何年かかっても返していくためには、経済成長による税収増しかないです。

10%増税を先送りすれば、国債の信認が低下し、国債が暴落し金利が急上昇して財政が破たんするという議論もあります。ここに至っては「笑止千万」と言わなければならないです。

これは、20年以上前から、増税したい財務省(当時は大蔵省)が国民を脅すために、「狼少年」のように言い募ってきたことですが、8%増税の大失敗が明らかになった現在でさえ、「財務省御用達」の経済学者やコメンテーターがこれを真顔で語るのには、呆れ果てて二の句が告げません。

そもそも、「国債の信認」は「経済のファンダメンタルズ」で決まり、その「ファンダメンタルズ」は頗る良いというのが厳然たる「事実」です。

すなわち、日本は最大の貯蓄超過国であり、国債はほとんど国内(96%)で極めて低金利(0.5%以下)で安定的に消化されています。日本は世界最大の債権国であり外貨準備も世界最高です。日本はまさに「強固なファンダメンタルズ」を有しています。さらに、日本の国債のほとんどは、自国通貨建てであり、とてもデフォルトするなどということはあり得ません。

たかだか10%増税を先送りしたところで「国債が暴落し長期金利が急上昇」することはありえない。そうして、上述したロジックは、財務省が2002年、日本国債の格付けが下げられた時、まさにその格付け会社に反論した、その通りのことを私が敷衍しているだけです。信じられない人は財務省のHPを見てほしい。今でも堂々とこのロジックはアップされています。財務省は、国内向けと対外向けと説明を変えているのです。完全な「二枚舌」を使っているのです。

よく日本の借金は1000兆円を超える。財政状況は最悪だ。だからこそ消費増税は必要だとも言われます。しかし、借金だけ取り出して「大変だ!大変だ!」と騒いでいる国は日本にはありません。日本には、資産も多数あります。

こういうと、資産とはいっても、土地や建物などすぐ売れないから、資産があるからといって、安心ではないなどとドヤ顔で言う人もいますが、日本の場合は純金融資産がとてつもない巨額であり、これを考慮にいれると、そもそも日本の借金はさほどではありません。

さらには、政府と日銀まで含めた総体を統合政府といいますが、統合政府ベースでは、もう日本は、借金など存在せず、黒字になっています。政府の借金だけ、統合政府ベースではみないというのでは、現実が見えなくなります。

これは、民間会社でも同じことです。あの超優良企業のトヨタですら、貸借対照表上の「借金」(負債)だけ取り出せば20兆円にのぼります。誰がそれでトヨタは破たん寸前だと評することができようか。財務省の「国の借金1000兆円」はまさにこの論理です。

統合ベースでの政府の借金の推移
かつて、麻生財務大臣は、消費増税は「国際公約」だと主張していたことがあります。これも財務省の振り付けです。日本人は「舶来」に弱い。しかし、国際社会の真意は、一国の税制に細かく注文をつけることより、「日本が経済成長して世界経済をけん引してほしいというのが、本音です。

そのためには「財政破綻してもらっては困るから増税も」という程度のことです。何が何でも予定通り増税して逆に日本経済が腰折れ、悪化したら、世界経済のけん引役も果たせず、それは困るというのが国際社会の真意でしょう。だからこそ、オバマ政権時代から、米財務長官や海外エコノミスト、メディアから「増税延期」という声が出ているのです。財務省のプロパガンダに惑わされてはいけないです。

事ほど左様に、本当に経済学的に財政学的におかしな議論がまかり通っているというのが今の日本の現状です。財務官僚が執拗に、オピニオンリーダーの所を回って、こうした「経済の非常識」「財政の非常識」を振れ回っているのです。財務省も財務省ですが、それにだまされるか、だまされたふりをしているのか、わかりませんが、したり顔でメディアでしゃべる御用学者やコメンテータの情けなさといったらありません。

彼らは、完璧に財務省の「同調圧力」に屈服しているのです。

「同調圧力」は沖縄だけの問題ではないのです。日本には様々な「同調圧力」がありとあらゆる組織に根付いているのです。

私たちは、それに屈服するわけにはいかないのです。いずれ、わが国の社会に深く根付いた「同調圧力」を払拭しなければならないのです。そうでなければ、まともな社会は構築できません。

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2013年3月23日土曜日

日銀・黒田新体制を待つ罠 異例の人事で不気味な兆候も…―【私の論評】日銀反リフレ派主流派の攻撃を阻止するには、縦深防御で臨め!!

日銀・黒田新体制を待つ罠 異例の人事で不気味な兆候も…
左より、岩田副総裁、黒田総裁、中曽副総裁

日銀は21日、黒田東彦(はるひこ)総裁(68)率いる新体制が本格始動する。黒田総裁は同日午後に日銀本店に初出勤、岩田規久男副総裁(70)とともに「2%のインフレ目標」早期達成へ、追加金融緩和の検討に着手する。だが、日銀内部の「抵抗勢力」が罠を張り巡らせているとの懸念もある。

黒田総裁と岩田副総裁は、従来の日銀に批判的で、国債購入の大幅な強化など金融政策を大胆に転換する構えだ。日銀プロパーにとって、これまでの政策ミスを突き付けられるだけに、歓迎ムードではないようだ。

ある元日銀マンは「正副総裁の講演原稿に日銀の意向に沿った文言を盛り込んで言質を取ったり、スケジュールを詰め込んで外部から情報を取れなくするなどしてコントロールしようとするだろう」と日銀プロパーによるレジスタンス活動に注意が必要とする。

すでに不気味な動きも出ている。日銀内で「将来の総裁候補」と目される雨宮正佳氏(57)が新体制発足直前、大阪支店長からわずか10カ月で理事に呼び戻される異例の人事があった。

「あれだけ批判された白川方明(まさあき)前総裁ですら、日銀内部では“最も金融緩和に積極的な人物”という評価」(前出の元日銀マン)だという。黒田、岩田両氏は“伏魔殿”に乗り込む覚悟が必要だろう。

【私の論評】日銀反リフレ派主流の攻撃を阻止するには、縦深防御で臨め!!

雨宮正佳氏

上の記事あまり長い記事ではないので、全文引用させていただきました。この中で気になるのは、異例の人事ということで、雨宮正佳氏が大阪支店長からわずか10ヶ月で理事に呼び戻されたという人事です。しかし、この人事はそんなに勘ぐらなくても良いと思います。

この人事は、おそらく日銀による維新の会対策ではなかろうかといわれていたからです。

この人事は昨年、5月11日付で発令されたものでした。この時に市場で関心をひいたのが、政策担当理事で「量的緩和政策」立案の中心人物だった雨宮正佳氏の大阪支店長への異動でした。

日銀は表向き、「雨宮氏に支店長経験がないため」と説明していましたが、この人事の正しい解釈は、橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」対策だったと言われています。

さて、大阪維新の会は当時日ごとにその存在感を増していました。消費税増税や原発再稼働問題ではことごとく民主党政権の逆の政策を打ち出し、ついには倒閣まで口にしていました。次期総選挙で台風の目になることは確実でしたし、場合によっては政権を握る可能性すら秘めていました。

その場合、日銀としては気がかりだったのが当時の橋下氏の言動でした。日銀に関しても、「独立性が強すぎる」「(金融政策の)目標は(日銀ではなく)政府が決めるべきだ」と世界標準の正論を語り、インフレターゲット設定などを盛り込む日銀法改正にも前向きとされていたからです。そして、そんな橋下氏を説得して路線変更させられる力量の持ち主は、雨宮氏しかいないというのが実情だったのです。

ここで、日銀がどうやって政治家に取り入ってきたかのべておきます。まずは目をつけた政治家に金融関係のデータをこまめに届けることが第一歩です。そのうち、「ご説明に上がりたい」と接触し、定期的にアポが取れるようになったら、しめたものです。次の段階で、夜の会合に誘い出します。そうして日銀は、人目を気にせず夜の宴会ができる立派な施設を各地に持っています。

強みはなんと言っても経済情報です。民間金融機関の懐具合を知っているので、かなりの極秘情報も持っています。また、金融機関やそのシンクタンクに天下りも大勢おり、彼ら元日銀マンたちは古巣の情報などを元に経済情勢などを上手に語るので、政治家の講演会などにはうってつけのゲストになります。こうしたマンツーマンの人間関係で政治家に食い込むのです。

橋下市長

問題は、こうした日銀のお家芸が橋下氏に通用したかどうかです。橋下氏は議論を徹底的にオープンにしています。部内の会議でさえ公開していますし、記者会見はユーチューブで見られるようにしています。日銀の得意技であるマンツーマンの対人戦法は橋下流とは対極にあります。

日銀の大阪支店は、御堂筋を挟んで大阪市役所の真正面に位置する。「地の利」は果たしてメリットになったでしょうか。おそらく、ならなかったものと思います。その証拠として、私は日々橋下市長のツイートも追跡してますが、日銀大阪支店長との会談のことなどついに一言もみられませんでした。

日銀伏魔殿

おそらく、日銀としては、過去の民主党の歴代の野田、菅、鳩山総理大臣それに自民党の谷垣総理大臣などに対して、上にように取り行って、もっともらしい情報をたれこみ、日銀のどうしようもない馬鹿げた金融政策を正しい政策のように思い込ませることに大成功したのだと思います。これらの馬鹿総理大臣は、日銀にも財務省にもたやすく懐柔されて、意のままの操り人形となっていたというのが実情です。財務省には、あたかも日本がすぐに財政破綻するように信じこまされ、日銀には、日銀は十分に金融緩和をやっているかのごとく幻惑され、信じこんでいたというのが実情だと思います。

勝栄二郎元財務次官

ただし、財務省においては、従来の勝栄二郎財務次官は、すでに財務省を放逐され、IT企業に天下りました。財務高級官僚にとって、銀行や財務省関連の外郭団体などへの天下りならば、順当な天下りですが、IT企業などへの天下りなどは、放逐、島流し以外のなにものでもありません。やはり、財務省主流派は、勝氏の増税路線などは問題外の挙動だったのだと思います。ちなみに、財務省引き際の勝氏は、真砂財務次官から、部屋を取り上げられたそうです。真砂氏は、まさに、神か悪魔かといわれるような凄まじい人間ではないかと思います。それに、勝氏は財務省出身者の元老たちからは、末席に座らせてもらえないというとてつもない、しっぺ返しをくらわされたということです。

財務省はこのような状況ですが、日銀は違います。あくまでも、金融引締めが主流派の考え方であり、白川元総裁は、主流派からみれば、手ぬるい引き締めしかしなかったという評価です。ですから、とにかく歴代の総理や、これから、勢力を強める政治家などには、とにかくとりいって、日銀主流派の考え方が正しいことを吹き込むというのが、 常道です。

しかし、橋下市長には全く通用しなかったのでしよう。だから、これ以上雨宮氏を大阪に置いておいても、意味がなくなったのだと思います。それに、橋下大阪維新の会は分裂傾向にありますし、そんなことよりも、日銀にとっては、安倍総理が徹底的な金融緩和を進めること、それを実現しそうな、黒田総裁、岩田総裁が日銀に入り、先日のブログでも掲載したように、日銀政策決定委員会9人のメンバーのうち、これで4人が強力なリフレ派になったというお家騒動にどう対処するかが、大問題であり、そちらのほうが、大阪のことよりもはるかに重要なので、今回の異例の人事で雨宮氏を本店に戻したものと考えられます。

日銀は日銀なりに徹底抗戦を挑むつもりです。この抗戦に対してどう対処するかが、これからの大きな課題となります。

先日のブログでは、日銀政策決定委員会のうち、4人がリフレ派、4人が反リフレ派、1人がどっちつかずの、日銀出身の中曽宏日銀理事だった副総裁ということで、おそらく金融緩和政策に転じることが可能になることを掲載しました。そのブログのURLを以下に掲載します。

黒田日銀、“実弾”100兆円投入へ! 給料アップ、株価「年内2万円も」―【私の論評】賃金上昇を信じられない人は、頑迷固陋(がんめいころう)なだけ!!これからは、インフレ圧力に頭を悩ます時代に突入するんだぜィ!!


詳細は、このブログを読んでいただくものとして、私はこの記事を書いた時点においては、かなり楽観的な見方をしていました。

しかし、上の記事では、厳しい内容になっています。やはり、こういう厳しい見方をしておいたほうが良いと思います。考えてみれば、日銀政策決定委員会のうち、4人だけがリフレ派で、あとの政策決定委員会のメンバーは反リフレ派、それに日銀の大部分の人間が反リフレ派ということです。中曽副総裁が、日銀主流派に懐柔されるなどいうことは多いに考えられることです。それに、マスコミは反リフレ派です。自民党の中でも、本当のリフレ派は少数派です。他政党でも、リフレ派は少数派です。ふりかえってみれば、ほとんどが安倍総理や黒田総裁、岩田副総裁それに、政策委員会の二人と一部のリフレ派を含めても、周りは敵だらけです。

現在の政策委員会審議委員 

職名 氏名 就任年月日 任期満了日 前職等 任命した内閣 年齢
総裁 黒田東彦 2013年3月20日
(平成25年)
2013年4月8日
(平成25年)
財務官
アジア開発銀行総裁
第2次安倍内閣 68歳
副総裁 中曽宏 2013年3月20日
(平成25年)
2018年3月19日
(平成30年)
日本銀行理事 第2次安倍内閣 59歳
副総裁 岩田規久男 2013年3月20日
(平成25年)
2018年3月19日
(平成30年)
学習院大学経済学部教授 第2次安倍内閣 70歳

宮尾龍蔵 2010年3月26日
(平成22年)
2015年3月25日
(平成27年)
神戸大学経済経営研究所教授 鳩山由紀夫内閣 48歳

森本宜久 2010年7月1日
(平成22年)
2015年6月30日
(平成27年)
東京電力取締役副社長 菅内閣 68歳

白井さゆり 2011年4月1日
(平成23年)
2016年3月31日
(平成28年)
慶應義塾大学総合政策学部教授 菅内閣 (2改) 50歳

石田浩二 2011年6月30日
(平成23年)
2016年6月29日
(平成28年)
三井住友ファイナンス&リース
代表取締役社長
菅内閣 (2改) 65歳

佐藤健裕 2012年7月24日
(平成24年)
2017年7月23日
(平成29年)
モルガン・スタンレーMUFG証券
マネージングディレクター
野田内閣 (2改) 51歳

木内登英 2012年7月24日
(平成24年)
2017年7月23日
(平成29年)
野村証券金融経済研究所
経済調査部長
野田内閣 (2改) 49歳

上の名簿のうち、黒田総裁、岩田副総裁、佐藤、木内審議員のみが、リフレ派であとは、反リフレ派です。

こうした、状況を打破するには、攻撃するよりも防御が重要になると考えます。防御とはいっても、単純な防御ではなく、縦深防御が必要になってきます。縦深防御(じゅうしんぼうぎょ、英語: defence in depth, elastic defence)は、戦闘教義の1つです。縦深防御は、攻撃側の前進を防ぐのではなく、前進を遅らそうとすることを目的とします。それにより、時間を稼ぎつつ、攻撃側の前進による占領地域の増加と引き換えに敵の犠牲者を増加させる戦略です。日本語では、深層防御(しんそうぼうぎょ)と呼ばれることもあります。対義語に水際作戦があります。

この縦深防御の考え方は、非軍事的な戦略の記述においても広く使われています。この場合、日本語では、階層的防御、多層防御、多重防御の名前で呼ばれます(英語での表記は同一である)。

この防御は、横一線に陣地を築いて防御するというのではなく、縦に深く陣地を構築して、侵入してきた敵を弱らせ、最終的に勝利を得るという方式です。これ は、第二次世界大戦の独ソ戦では、ソ連軍のゲオルギー・ジューコフ司令官がとった戦法で、この戦法により、優勢だったドイツ軍を敗退させました。

ゲオルギー・ジューコフ

とにかく、日銀側の攻勢に備えて、横一線の単純な防御をするにのではなく、深く深く防御をするのです。そのためには、たとえば、日銀主流派にとって、針のむしろを用意するにしても、このむしろを一重ではなく、二重、三重、四重、五重までつくって、徹底的にいたぶり、五重を突破したころには、へろへろにさせるのです。

日銀醜聞を流布するにしても、日銀官僚の身辺を徹底的に洗い、最初は週刊誌、次はテレビ、次は、新聞、次はネットとこれも、幾重にも防御をはりめぐらして、これも、全部を突破するまでにはへろへろになるまで徹底するのです。

次に、ネット上でも、最初は通常の文字によるものから、写真、その次は動画と幾重にも防御をはって徹底的に攻撃して、ここでも、ヘロヘロにするのです。

そうして、日銀法改正案についても、1次案では、比較的ゆるいもので、日銀側を安心させ、2次案では、それよりも厳しくして、案が出されるたびに厳しくし、10次案まで出すのです。最終的には、11次案をだして、そこには、本当に厳しい条項を盛り込みます。

そうなると、日銀側は、必死で旧来手法により、政治家などに接触などして、とにかくとりいって、日銀主流派の考え方が正しいことを吹き込み厳しい日銀法の成立を阻止しようとします。そのときがこちらのつけ目です。これら取り込み屋のうち数人が精神に異常をきたすまで追い込むくらいの勢いで責め立てるか、懐柔してこちらに取り込むかして、日銀主流派の攻勢を阻むべきです。

これからの裏の駆け引き、表には、出てこないでしょうが、これくらいの覚悟がないと、過去20年間とんでもない日銀の行状は直りません。それにしても、日本の戦後体制からの脱却への道はまだまだ遠いです。まず身内からこのようにして日本を防御しなければならないということが情けないといえば情けないです。しかし、現実は、現実です。

本格的にやるつもりなら、このくらい、あるいはもっと上をいくくらいの覚悟で取り組んでいただきたいものです。そうして、安倍総理には、その覚悟があると思います。そう思うのは私だけでしょうか?_

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