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2019年9月30日月曜日

中国建国70年 内憂外患の習主席 党長老ら不満、くすぶる火種―【私の論評】苦しい歴史修正でしか、自らを誇示できない哀れな習近平(゚д゚)!


建国70年の式典を前に、北京の天安門広場を行進する兵士ら=30日

中華人民共和国が建国70年を迎える10月1日、北京の天安門広場周辺では祝賀行事が開かれ、軍事パレードで最新鋭の兵器を誇示する。米国との貿易戦争や経済成長の減速、香港の混乱といった内憂外患に直面し、共産党長老の間では習近平国家主席(共産党総書記)への不満もくすぶるが、習氏は党の「団結」を演出し、自らの権威を守る構えだ。

 共産党理論誌「求是」は9月16日付で、習氏が「われわれは指導者の終身制を撤廃し、任期制度を実行している」と2014年に語った講話を掲載した。習氏は昨年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正に踏み切り、党内外から「終身制への道を開いた」との声も上がった。講話の掲載は批判をかわすとともに、指導者の終身制を撤廃して集団指導体制をつくったトウ小平を持ち上げる意図がありそうだ。

 建国70年を前に、党の宣伝工作はトウ氏や江沢民元国家主席、胡錦濤前国家主席ら過去の指導者たちの功績を強調する姿勢が目立っている。昨年12月の改革開放40年にあたり、習氏の功績ばかり強調してトウ小平を軽視しているとの批判が出たのとは対照的だ。

 数々の政敵を打倒した反腐敗運動など強気一辺倒で党内の権威を確立してきた習氏だが、ここにきて国内外の問題が山積し、党内の協調と団結を演出する必要性が出てきたようだ。

 7月末に北京で開かれた李鵬元首相の告別式には習氏ら7人の政治局常務委員や江沢民元国家主席が出席した一方、党の重要会議「北戴河会議」のため北京に隣接する河北省にいた胡錦濤氏は花輪を贈るにとどめた。温家宝元首相、朱鎔基元首相らも出席しない異例の事態だった。李鵬氏との政治的な距離感に加えて「現指導部に対する不満の表れ」(党関係者)との見方がある。

 党内で表立って習氏に対抗できる政治勢力は存在しないが、権力の足下では火種がくすぶっている。ただ米側が求める経済改革などは以前の指導部が先送りしてきた問題でもあり、習氏に同情する向きもある。

【私の論評】苦しい歴史修正でしか、自らを誇示できない哀れな習近平(゚д゚)!

10月1日の建国70周年で「古希」に達する中国は、この日に大規模な閲兵式を実施しようと着々と準備してきました。内容については8月下旬まで正式発表をしなかったものの、「新中国で最大規模になる」と北京のシンクタンク研究者は話していましたし、市民もそう予想していました。

9月21日の深夜からは、本番さながらの予行演習が天安門広場を中心に行われました。市内の一部幹線道路を「戒厳状態」にして、戦車と兵器の運搬車両を通過させました。シンクタンク関係者によると、最新の多弾頭型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「東風41」が披露されるといいます。米国本土を射程に収める最新兵器です。
本番さながらの、軍事パレード予行演習

軍事パレードの実施とその意義について、これまで積極的に国内外に説明してこなかったのは、習近平(シー・チンピン)体制が難題を多数抱えているからです。この時期に大規模なパレードを行う大義名分がどこにあるのでしょうか。一党独裁政権とはいえ、その根拠は決して明らかではありません。

まず、社会主義市場経済を基本とする中国は、国有企業への資金注入の停止など抜本的な構造改革をする気が全くありません。米中貿易戦争の開始以来、経済状況は悪化の一途をたどっています。

アフリカ豚コレラの流行などにより、豚肉の価格高騰が市民の食卓を直撃。南部の広西チワン族自治区などでは豚肉の配給券が印刷されています。物資が極端に不足していた文化大革命期、中国では買い物に貨幣のほか配給券が欠かせませんでした。
その時代さながらの状態が続いているのです。そして、複数の大都市部では不動産の価格も下落し、新車の販売台数も軒並み伸び悩んでいます。軍事パレードなんかやっている場合じゃない、という声も市民から聞こえています。
毛沢東を除き、最高指導者の在任期間中に複数回にわたって軍事パレードを実施するのも例外といえます。習は既に2015年9月と2017年に2度、閲兵式を行っています。江沢民(チアン・ツォーミン)元主席と胡錦濤(フー・チンタオ)前主席も建国50周年と60周年に閲兵式を行いましたが、それぞれ1回だけでした。

2015年は今や刑務所暮らしの朴槿恵(パク・クネ)・前韓国大統領や、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領らが参列。先進国では日本を除くG7各国が代表団を派遣して花を添えました。というのも、このパレードは「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年」を祝うのが目的だったからです。
                                 19年9月3日の軍事パレードではロシアのプーチン大統領、
                                 韓国の朴槿恵大統領(当時)が習近平主席と席を並べた。

ただし、このパレードは全く噴飯ものです。なぜなら、中共軍と日本軍は一度たりとも交戦したことはないからです。日本が戦ったのは、当時の国民党軍であり、中共軍ではないからてす。

国民党軍は後に台湾にわたり、台湾を統治しました。だから、台湾が抗日軍事パレードを実施するなら、わからなくもないですが、中共が行うのは、歴史修正と言わざるを得ないです。

実際、中国建国の父とされる毛沢東は、日本軍と国民党軍が戦ってくれたおかげで、国民党軍が疲弊し我々は中華人民共和国を設立できたと語っていたとされています。

この抗日軍事パレードは、中共が最近の若い世代の中国人に中共が日本軍と戦って、現在の中華人民共和国を設立したと思い込ませ、自らの統治の正当性を高める行為以外の何ものでもありません。ある程度年齢が上の中国人なら、誰もが中共軍と日本軍が戦ったことなどないことを知っています。

ただし、大東亜戦争当時の、国民党軍と日本軍の戦いを知っている人々は現在では少数派になったのと高齢になったため、社会の第一線からはほとんどが退いているので、中共としては、こうした歴史修正は実施しやすくなっているのは確かです。

元々、抗日軍事パレードが噴飯ものであるのに比して、今回はさらに国際的な正統性に欠けます。大国であるとはいえ、独裁体制がますます強化され、覇権主義的行動が目に余るため、日本以外の主要6カ国も距離を置いています。市民の中にも、そうした自国の姿勢に気付いている者はいます。

台湾問題もあります。「人民解放軍は戦争に勝つ軍隊でなければならない」、と習は就任以来、軍を視察するたびにそう強調してきました。解放軍の最大の任務は「台湾解放と祖国統一」です。

しかし、その台湾では民主主義体制が定着し、台湾人の自己認識も「中国人」から遠ざかっています。武力による威嚇では台湾人を屈服させることができず、逆に独立志向の民進党の支持率を高めつつあります。
南シナ海を占拠して島しょ部を要塞化したのには台湾包囲網を構築する狙いもあったようですが、こちらは米軍や英軍、それに自衛隊による「航行の自由」を招きました。
8月28日、南シナ海の海域で「航行の自由」作戦を実施するイージス艦「ウェイン・E・マイヤー」

祖国統一の理想も思わぬところから挫折し始めました。大英帝国の植民地から「祖国の懐に回帰」した香港です。「祖国に回帰」して幸せを実感するどころか、「香港人は中国人ではない」との主張を掲げた若者たちが6月からデモを続けており、いまだに収束の見通しが立っていません。中国政府が解放軍の武装警察部隊を香港に近いところに展開して恫喝しても効果はありませんでした。
内憂外患が続くなか、大金を投じて軍事パレードを強行するのは、ほかに選択肢がないからです。やらなければ負のスパイラルが始まります。いや、すでに始まっています。しかし、やっても負のスパイラルが継続するのは確実でしょう。
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2018年3月2日金曜日

習近平氏、不気味な“沈黙”の思惑 終身独裁狙うも実際は内憂外患、国家分裂の危機―【私の論評】習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候(゚д゚)!

習近平氏、不気味な“沈黙”の思惑 終身独裁狙うも実際は内憂外患、国家分裂の危機

独裁を強めようとする習近平氏だが、実際は内憂外患の状態にあるようだ

 韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪が終わり、国際社会の関心は、「核・ミサイル開発」に狂奔する北朝鮮と、ドナルド・トランプ米政権との緊張状態に移りつつある。「従北」で知られる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、緩和演出に必死だが、トランプ大統領は世界の脅威を高める「核放棄なき融和」など認めない。こうしたなか、不気味な沈黙を続けるのが中国の習近平国家主席だ。朝鮮半島有事を見据えた中国の思惑と、国家分裂の危機とは。中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏が迫った。

河添恵子氏

 政治色が前面に出た五輪期間中、存在感が極めて薄かったのが中国の習主席だ。その沈黙を破るようなニュースが、五輪閉幕式当日の2月25日、中国国営新華社通信によって報じられた。

 中国共産党中央委員会が、国家主席の任期を連続2期10年までとする「3選禁止規定」を撤廃する憲法改正案を、3月開幕の全国人民代表大会(全人代=国会)に提出したという。

 改憲案は、習氏への忠誠を誓うか否かを表明する、いわば「踏み絵」となる。反対すれば粛清の対象になりかねないため、出世への野心を抱く次世代には面従腹背しか残された道がない。

 つまり、5日に開幕する全人代で改憲案は可決されるはずだ。2期目をスタートしたばかり、64歳の習氏だが、国家主席として2023年以降の3期目どころか、その先まで視野に入れていると推測する。

 人民解放軍に対し、「死を恐れるな!」と激しい言葉で訓示する習氏が目指すのは、「革命は銃口から生まれる」という毛沢東主席の言葉を上書きした「習軍独裁政権」「終身独裁体制」なのだ。

 ただ、北京から「この1カ月ほど、習氏は震え上がっていた」という情報が漏れ伝わってきた。トランプ政権が1月に発表した「国家防衛戦略」(National Defense Strategy)の内容に驚愕したというのだ。

 同戦略は、習氏の中国を、米国の優位を覆そうとする「ライバル強国」の第一に掲げ、中国やロシアとの「長期的かつ戦略的な競争」が、テロとの戦いに代わる米国の最重要懸案であると強調していた。すなわち、「米中露の新冷戦時代」の幕開けを意味した。

 こうしたなか、習政権の足元はグラついていた。敵対する江沢民元国家主席派の粛清に次ぐ粛清や、軍幹部の強引な入れ替えなどの影響で、「この5年あまりで9回目」とされる暗殺未遂も報じられた。

 第1次習政権で試みた、「朝鮮半島を、南(韓国)から属国化していく戦略」も見事に失敗し、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)は配備された。かつては「兄弟国」だった北朝鮮との関係も史上最悪で、「1000年の敵」呼ばわりされるまで悪化した。

 頼みの綱だったロシアとの関係も、中国政府が1月下旬、「(中国主導の広域経済圏構想)『一帯一路』構想に北極海航路を入れる」と発表したことで、プーチン大統領を激怒させてしまった。

 内憂外患の習氏だが、朝鮮半島情勢について、表向きは「米朝対話」を主張しながら、本音は大きく違う可能性が高い。「金王朝の崩壊」を狙っているはずの習氏が、それを察知する金王朝の核ミサイルや生物化学兵器の脅威にさらされているとすれば、トランプ政権が軍事オプションに踏み切ることを、内心で期待していてもおかしくはない。

 ただ、習氏のジレンマは、その先にある。

 中国は長さ約1400キロという中朝国境に、数千人から数万人とされる人民解放軍を配備した。だが、いざ戦闘状態に突入すれば、朝鮮族の多い北部戦区(旧瀋陽軍区)の部隊が、どこに銃口を向けるか分からない。

 習氏は、その際のロシアの動向も懸念している。

 4年前のソチ冬季五輪直後、クリミア半島を電撃的に併合したプーチン氏は「ハイブリッド戦争」(=軍事・非軍事の掛け合わせ)を得意とし、正恩氏とは良好な関係を築いている。

 朝鮮有事に乗じて、大量の北朝鮮難民を中国東北三省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)に送り込み、“緩衝ベルト”にして極東シベリアとつなぐ、世界地図の塗り替えを画策しているフシがあるのだ。すなわち、習氏が掌握しきれていない旧満洲の地が無政府状態となり、国家分裂の危機に陥りかねない。

 プーチン氏は、埠頭(ふとう)1つを租借した北朝鮮の羅津(ラジン)港だけでなく、韓国の釜山港をも租借地にしたいと考え、「北朝鮮主導の朝鮮統一」にも力を貸すはずだ。

 これらが現実となれば、中国だけでなく、日本の安全保障にも甚大な影響が出かねない。

 “同床異夢”の米中露の勝者は誰なのか?

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。

【私の論評】習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候(゚д゚)!

ブログ冒頭の河添恵子氏の記事の見方は、私の見方に近いです。特に中国の内憂に関する見方は近いです。その見方を掲載した記事のリンクを以下に掲載します。この記事では、ブログ冒頭の川添氏の記事にもある、昨年暮に発生した「この5年あまりで9回目」とされる習近平暗殺未遂の時に習近平がとった行動に注目しました。
中国 国家主席「2期10年」任期に関する制限撤廃へ―【私の論評】憲法改正ができたから習近平政権が安定しているとの見方は間違い(゚д゚)!
昨年暮の爆発事件のときに習近平が駆け込んだとされる301病院
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
現在の中国は他国とは随分変わっていますが、その中でもかなり変わっているのが、憲法の上に共産党がある国という点です。こういう国では、憲法改正は他国と比較すればかなり簡単にできます。 
習近平が憲法改正ができたからといって、他国のように国内で他者よりはるかに力があるはずであり習政権は安定しているはずだと、考えるべきではないです。実際、習近平の力の限界を示すような事件が発生しています。 
中国の習近平国家主席が年の瀬の差し迫った昨年12月下旬、人民大会堂での会議が終わった駐車場で専用車両に乗ろうとした際、爆発物が破裂。習氏は腹痛を起こし、そのまま北京市内の中国人民解放軍直属の「中国人民解放軍総医院(略称「301病院」)に緊急搬送されていたことが分かりました。
301病院には“南楼”と呼ばれる病棟がありますが、厳重な警備が敷かれ、出入りには証明書の提示が必要です。情報によると、ここは共産党指導部の高官専用の病棟だそうです。

中共の301病院は不可思議な所で、昔は中共元老たちが治療の名目で、ここで画策を練っていました。一方、301病院は中央弁公庁主任の管轄下にあります。中央弁公庁主任は最高権力者の執事のような役目です。

言うことを聞かない人は、中共の内部闘争の中で治療の名目でここに入れられる人もいますが、事実上は政敵の手中に入ったことに等しく、生死を握られているのです。

たとえば、楊尚昆元国家主席。風邪を引いて301病院に入ってまもなく、不審な死を遂げました。
この記事では習近平がこの病院に入院した真相を以下のように分析してみました。
私自身は、爆破事件直後には習近平はこの暗殺未遂事件そのものの幅や奥行きがどの程度のものかすぐには判断できなかったと思います。場合によっては、はるかに規模の大きいクーデターや内戦である可能性も考えられたかもしれません。その場合には、一部の側近など除いて誰も信用できません。 
だからこ、そのような場合に備えて、習近平はそれに対する情報収集と備えをするために、ごく一部の信頼できる側近とともに、301病院へと急遽駆け込んだのではないかと見ています。その後の情報収集によってこの事件はさほど規模の大きなものではないことが了解できたので、翌日退院という形で病院から出たのだと思います。
 私は、習近平の腹痛というのは単なるごまかしであって、習は爆発事件が大規模なクーデターか内戦の一部かもしれないという危惧を抱いていたので、まずは病院に駆け込み前後策を練ったのだと睨んでいます。

2012年の共産党第18回大会以降、要人の日程などに関する最高機密の情報漏えいが原因で、習氏や王氏はたびたび暗殺の危険にさらされました。そのほとんどは計画的な犯行とされていますが、未だに捜査中のものも多くあるといいます。

香港メディアによると、習近平陣営と江沢民派の衝突が激しさを増していた中、犯した罪の清算から逃れるため江沢民派は必死に抵抗し、習氏や王氏の暗殺をも繰り返し試みたといいます。習氏はこれまで少なくとも9回の暗殺未遂に遭っており、いずれも内部関係者による犯行であることが判明しています。

香港「東方日報」2013年12月の報道によると、江沢民派の大物で当時の中央政法委員会の書記長である周永康が、2012年8月に少なくとも二回は習氏の暗殺を計画し、一回は北戴河の会議室に時限爆弾をセットしました、もう一回は軍301病院で健診を受ける習氏に毒を注射しようとしたといいます。消息筋によると、暗殺計画を実行したのは、周永康の側近で警備担当の談紅です。談は2013年12月1日に逮捕され、周永康は現在汚職等の罪で無期懲役に処されています。

法廷に出廷した周永康 従来頭が真っ黒だったが真っ白になっていたことが中国内で話題となった

3回目は、2013年8月末~9月中旬習近平は公に姿を見せず様々な憶測が流れていたところに、『交通事故で入院』との発表がありましたが、どうやら、車のタイヤに細工をされ事故を起こしたようです。その後も頻発しており、昨年の暮で9回の暗殺未遂事件があったとされています。

一方、習近平の片腕ともいわれる王岐山氏に対する暗殺未遂は少なくとも12件以上発生しているといわれています。さらに、2016年には、習近平夫人の専用車に爆発物が仕掛けられ、犯人は武装警察部隊の隊員だったとされています。

これだけ、暗殺未遂事件が発生する背景には、やはり習氏が終身独裁を狙っていたことと無関係ではないと考えられます。それに先立つ、不正の撲滅に名を借りた権力闘争により、多くの犠牲者が出たし、これからも粛清されることを恐れる人間が多数存在していると見られます。

習近平の暗殺未遂は過去9回だそうですが、実は、共産党支配の終焉の可能性が過去に3度あったとされています。最初は1989年6月の天安門事件の後、第2波は91年にソ連が崩壊した時、第3波は00年代の前半だといわれています。

1992年頃に米中央情報局(CIA)が、米国の中国専門家を集めて、20年後の中国を予測した。その結果、中国は3〜4つの国家に分裂する可能性が高いという予測を出しました。また、その影響でしょうかか、日本国内でも「中国崩壊」関連の著書が多数出版されました。しかし、依然として中国共産党独裁体制は健在です。

そのような中で、昨年10月17日発売の「ニューズウィーク日本版」(10月24日)は、「中国予測はなぜ間違うのか」という特集記事を組んでいました。この予測とは、つまり“なぜ中国共産党独裁体制の予測は外れたのか"ということです。そこで、特集記事の内容を紹介するとともに、将来の展望を考えてみます。



この特集では、英ケンブリッジ大学の調査によれば、政治体制が崩壊する確率は平均して2・2%前後であるとしています。つまり、誰かが体制崩壊を予測しても、100回中98回までは外れるそうです。また、別の調査によれば、1950〜2012年の間に権力を追われた独裁者は473人いますが、そのうち民衆の反乱によって追放されたのはわずか33人(7%)。必要条件は、比較的に分かりやすいです、インフレ率や失業率の上昇、経済成長率の低下などといわれています。

一般に独裁政権崩壊の直接的な引き金となる事象には4つのタイプがあります。選挙での不正、軍事的な敗北、近隣国での独裁体制崩壊、そしてアラブの春のような偶発的暴動の民衆蜂起への拡大です。しかし、政権の崩壊にはエリート層、とりわけトップレベルの軍人や政治家の離反が必要です。

中国共産党は、経済的繁栄のみが政治的正当性を生み出せることを熟知しています。その意味で、崩壊のリスクは長期間低水準にとどまっていても、突如として急上昇することになります。中国の場合、中所得国であることから、今後20年の間に崩壊のリスクが高まると予想されます。

独裁政権の崩壊の研究で分かったことは2つあります。それを中国に適用すると、第一は中所得国の地位を達成すると3倍近く高くなるということです。第二は独裁政権に支配された中所得国は、財産権の保護が不十分で、腐敗が著しいため、持続的な経済成長を達成し、高所得国になることができません。言うまでもなく、経済が停滞すれば共産党政権の存続は危ぶまれることになります。

共産党政権が永続するという主張に対して、私たちは健全な懐疑を抱き続けたほうかいい。かつてマーク・トウェインが、「予言は難しい。特に未来についての予言は」と言ったように、という一文で特集記事は終わっています。

要するに、特集記事では「中国崩壊」の出版物を多少冷やかしているのですが、将来的に中国共産党独裁体制が崩壊することを予測しています。しかし、ここで注意しなければならないことは、予測が往々にして“願望"になることです。つまり、米国もロシアも日本も、14億人の中国が3〜4つに分裂することを願っているからです。その背景を考慮して、我々は予測記事を理解する必要があります。

さて、私としては、以下のように今後の中国をみています。まずは、江沢民、胡錦濤の元前総書記には鄧小平に指名されたとの統治の正当性がありました。しかし習近平以後の党指導者には何もないです。

さらに、習近平が、如何に腐敗と戦っても、腐敗は古来中国の伝統であり、撲滅することは不可能です。それどころか、習近平自身がファミリー・ビジネスなどで、腐敗しています。腐敗しているものが、腐敗撲滅するなど、撲滅される側にとっては理不尽以外の何ものでもありません。日本を含めた先進国の感覚では、中国の幹部で全く腐敗していないものなどいません。それを考えると、この先の10年も30年先も、中国共産党独裁政権が続いていることは想像しにくいです。

この背景には、上で述べた習近平氏に対する9回にも及ぶ暗殺未遂事件の発生以外にも以下のようなことがあります。
  • ノーベル平和賞を受賞した劉暁波が、まともな治療を受けずに刑務所で死亡した。つまり、中国共産党に殺された。
  • 国境なき記者団の17年度世界報道自由ランキングで、180カ国中176位であった。
  • 15年7月9日、人権派弁護士など約300人が一斉に検挙された。この事実は記録映画「709の人たち」として映画化された。
これらの人権無視の実態を見せつけられると、どうしても中国共産党の独裁体制が、これからも永遠に続くとは考えられません。その意味で、私達は、中国共産党の動向や中国軍の軍備増強と同時に、中国国内の動向把握にも務めなければならないと思います。

実際、過去にも述べたように、中国は巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによって信頼を失っています。

これからも、中国は「内向き」であり、国内の事情が最優先します。中国の外交や、外に対する行動の動機は、すべて中国の国内事情によるものです。日本でいわれているような外圧で動く国ではありません。かつての日本のように外圧で動くのも問題ですが、外圧を無視するのも問題です。ここが中国の最大の欠点です。この欠点を解消できない中国は、いずれ分裂することになるのは明白です。実際、過去数千年もそうでした。

集合して大帝国をつくりとその後また分散し、また集合して大帝国をつくるということを繰り返してきました。そうして、過去の大帝国と次の大帝国は完璧に分断されています。

現在の中国も同じことを繰り返すことになるでしょう。そうならないことのほうが、確率としては相当低いとみるべきです。私は、習近平の独裁こそ、中国分裂の最初の兆候ではないかとみています。

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