2026年2月9日月曜日

高市政権は何を託されたのか──選挙が示した「エネルギー安全保障」という無言の民意


まとめ
  • 今回の選挙で与党が単独でも過去最大規模の議席を得たのは、単なる政権支持ではない。現状維持ではなく、「国家が止まらないための設計を進めよ」という、有権者からの委任だったのではないか。その民意が何だったのかを、本稿は問い直す。
  • エネルギー安全保障は争点にならなかったのではない。あまりに基礎的で、国家の前提条件に近すぎたため、語られずに共有されていた。ウクライナ戦争が示したように、国家は電力を失った瞬間から機能不全に陥る。その現実は、有権者の投票行動の底流に確かに存在していた。
  • 高市政権に託されたのは、強さと豊かさを同時に実現する国家設計である。エネルギー安全保障は我慢の政策ではない。SMRを含む現実的なエネルギー設計は、日本経済を一段引き上げ、将来世代も支える基盤になり得る。その責任の重さを、本稿は明らかにする。

1️⃣選挙結果が示したもの──「政権維持」ではなく「国家設計」の委任

札幌市手稲駅前で、中村氏の応援演説をする高市総理

直近の衆議院総選挙で、与党は単独でも過去最大規模の議席を獲得した。これは単なる政権の継続承認ではない。「現状維持」ではなく、「国家設計を前に進める権限」そのものを、有権者が与えた結果である。

選挙当日は全国的に天候が荒れ、一般に組織票が力を持ちやすい条件だった。それにもかかわらず、与党は地滑り的とも言える勝利を収めた。この事実は、野党の準備不足や野合といった説明だけでは説明がつかない。国民、有権者は決して愚かではない。表に出にくいが、より根源的な危機感が投票行動の底流にあったと見るべきだ。

その一つが、「国家が止まること」への不安である。すなわち、エネルギー安全保障に対する潜在的な認識だ。明示的な争点ではなかったが、重要でなかったわけではない。あまりに基礎的で、国家の前提条件に近すぎたがゆえに、争点として表に出なかったのである。

2️⃣国家はどこから崩れるのか──ウクライナと中国が示した現実


この問題を理解するうえで、昨日のこのブログにも掲載したウクライナ戦争の教訓は欠かせない。詳細は昨日の記事に譲るが、要点は明確だ。国家は、前線の勝敗よりも先に、電力とエネルギーを失った瞬間から機能不全に陥る。

ロシアのエネルギー・インフラ攻撃は、当初から周到に設計された戦略ではない。短期決着に失敗し、戦争が長期化する中で、最も費用対効果の高い手段として選び取られたものだ。だが結果として、「電力を断てば国家全体が同時に鈍る」という経路が、実戦で可視化された。

この現実は、戦争の常識を静かに書き換えている。勝敗は、どれだけ敵を倒したかではなく、どれだけ自国の機能を維持できたかで測られる時代に入った。

中国の動きも見誤ってはならない。中国は原子力、送電網、石炭、資源確保に巨額の投資を続けているが、それは一貫した国家設計の成果ではない。停電や供給不安が起きるたびに繕われてきた、弥縫策の集合体に近い。それでもなお、中国自身が「電力なくして国家は成り立たない」ことを認めざるを得なかった点は重要である。

3️⃣高市政権が描く国家像──エネルギー安保は「成長の制約」ではない


石破・岸田政権、さらには中道改革連合がエネルギー安全保障を前に進めにくかった理由は明確だ。マクロ経済への理解不足により、国債を将来世代への「借金」と誤認し、エネルギー投資をコストとしてしか見られなかったからである。この認識では、エネルギー安保に前向きになりようがない。

高市政権は違う。エネルギー安全保障を、成長を前提とした国家投資として捉える。安価なエネルギーと安全保障は、対立概念ではない。経済が成長すれば両立は可能であり、むしろ相互に強化し合う。

日本は、自国の産業基盤でエネルギー安全保障を構築できる数少ない国だ。その投資は経済を加速させ、将来世代も恩恵を受ける。だからこそ、建設国債で賄うのが合理的である。

ここで中核に位置づけられるのが、小型モジュール炉、いわゆるSMRだ。地下設置が可能で、分散配置に適し、有事には優先的に電力を割り当てられる。国家が止まらないための、極めて現実的な装置である。

実用化には時間がかかるが、それまでの間、既存原発の最大限活用、火力・送電網の強靭化、資源確保を組み合わせることで対応は可能だ。重要なのは、場当たりではなく、最初から国家存立を前提に設計するという意思である。

結語 強く、そして豊かな日本へ

エネルギー安全保障は、我慢や貧しさを強いる政策ではない。正しく設計すれば、日本経済を一段上のフェーズに引き上げる原動力になる。

日本は、強くなれる。そして同時に、豊かにもなれる。
それは理念ではない。設計の問題である。

【関連記事】

今回の選挙で語られないもの──金融に続き、エネルギー政策を国民の手に取り戻せ 2026年2月
今回の選挙で正面から語られなかった論点を整理し、なぜ金融とエネルギーが国家設計の核心なのかを掘り下げた一編。選挙結果をどう読み解くべきか、その「裏側」を知りたい読者に向けた記事である。

我が国は原発を止めて何を得たのか──柏崎刈羽と失われつつある文明の基礎体力 2025年12月
原発停止がもたらしたものは何だったのか。感情論や理念ではなく、国家の基礎体力という視点から冷静に検証する。エネルギー安全保障を考えるうえで避けて通れない論点を突く。

三井物産×米国LNGの20年契約──日本のエネルギー戦略を変える国家戦略 2025年11月
一企業の契約に見えて、実は国家戦略そのものだった長期LNG契約。その意味を読み解くことで、日本がどのようにエネルギー安保を構築し得るのかが立体的に見えてくる。

秋田から三菱撤退──再エネ幻想崩壊に見る反グローバリズムの最前線 2025年9月28日
再生可能エネルギーの理想と現実の乖離を、具体的な撤退事例から描き出す。エネルギー政策を「夢」ではなく「実装」で考える必要性を突きつける記事だ。

参院過半数割れ・前倒し総裁選のいま――エネルギーを制する者が政局を制す:保守再結集の設計図 2025年8月24日
政局とエネルギーを結びつけて論じた記事。なぜエネルギーが政治の力学を左右するのか、高市政権を読み解く前提としても示唆に富む内容となっている。

0 件のコメント:

高市政権は何を託されたのか──選挙が示した「エネルギー安全保障」という無言の民意

まとめ 今回の選挙で与党が単独でも過去最大規模の議席を得たのは、単なる政権支持ではない。現状維持ではなく、「国家が止まらないための設計を進めよ」という、有権者からの委任だったのではないか。その民意が何だったのかを、本稿は問い直す。 エネルギー安全保障は争点にならなかったのではない...