2026年2月13日金曜日

高市大勝利を中国はどう見ているか ――揺さぶりから管理段階へ、日本は構造転換点を越えた


まとめ

  • 本稿では、日本は中国依存国家ではないという“数字の事実”を突きつける。財ベースで見れば対中依存はGDPの数%水準にとどまり、日本は内需中心型の経済構造を持つ。一方で中国は日本の製造基盤に深く依存している。この非対称性が、日中関係の力学を根本から変えつつある。
  • 選挙前と選挙後で中国のトーンが変化した理由を時系列で解き明かす。岡田克也氏の訪中と国会での追及、その後の高市大勝利。中国が「揺さぶれる日本」から「制度として固定されつつある日本」へと認識を変えつつある構図を示す。
  • オーストラリアや米中関係の事例を踏まえ、中国が最終的に選ぶのは断絶ではなく“管理された競争”であることを提示する。高市政権が軍事・経済・技術の三層で実装を続ければ、日中関係は揺さぶりの段階を越え、管理モードへ移行する可能性が高い。その分岐点が、いま目の前にある。


今回の衆院選で変わったのは国内政治だけではない。中国の態度も変わった。選挙前には日本政治を揺さぶる報道や発言が目立ったが、選挙後は明らかに抑制的になった。この変化は偶然ではない。中国は、日本の政策が揺らぐのか、それとも制度として固定されるのかを見極めていたのである。


1️⃣岡田克也訪中と国会追及が示す政治的文脈


2024年8月28日、岡田克也 氏は訪中し、中国共産党との間で交流強化に関する覚書に署名したとされる。

2025年3月20日からは北京を訪問し、李書磊(中央宣伝部長)および 劉建超(中央対外連絡部長)と会談し、台湾問題への関与について中国側から牽制を受けたと報じられている。

その後、2025年11月7日の衆院予算委員会で、岡田氏は 高市早苗 首相に対し、台湾有事が存立危機事態に該当するかを問い、首相が肯定的見解を示すと「極めて重い発言だ」と述べ慎重姿勢を求めた。

重要なのは時系列である。中国中枢幹部との会談を経た後、台湾有事への関与を巡って首相を追及したという流れは、中国側にとって「日本国内にも慎重論が存在する」という材料になり得た。選挙前、中国が日本政治内部の揺らぎを観察し、そこに期待をかけていた可能性は否定できない。

しかし高市氏が大勝すると、そのような強調は弱まった。政治意思が明確化し、政策の方向性が制度として固定される可能性が高まったからである。

2️⃣財とサービスを分けて見ると、日本は内需中心国家である


日本の輸出と輸入が名目GDPに占める割合は概ね12〜15%で推移している。これは財とサービスを合計した数値である。

サービスには、観光収入、国際輸送、金融・保険取引、特許やソフトウェアの使用料などの知的財産収入、コンサルティングやITサービスが含まれる。安全保障や産業基盤の議論で問題となるのは主として「財」、すなわちモノの貿易である。

サービスを除いた財のみの輸出GDP比は概ね7〜9%程度と推定される。輸入も同様である。

日本の財輸出に占める中国比率は約17%前後である。仮に財輸出GDP比を8%とすれば、対中財輸出はGDPの約1.3%にとどまる。

一方、輸入について見ても、対中財輸入の規模はGDP全体から見れば数%水準にとどまる。

依存分野は存在する。コロナ初期のマスク、医薬品原料、一部電子部品などで中国依存が顕在化した。しかしそれらは分野依存であって国家依存ではない。マスクは国内増産と調達分散で対応された。医薬品原料にも代替先は存在する。時間とコストはかかるが、構造的に代替不能という性質のものではない。

1991年のソ連崩壊時、日本は対ソ貿易の混乱を経験した。しかし対ソ貿易の規模は当時の日本経済全体から見れば限定的であり、国家経済自体が大きな悪影響を受けることはなかった。この事例は、日本経済が特定国との貿易変動に対して一定の構造的耐性を持っていることを示している。

対照的に、ドイツや 韓国は財のみの輸出GDP比で見てもおおむね35〜40%前後の水準にあり、日本の約7〜9%とは構造的に大きな差がある。両国は明確な外需依存型経済である。

一方、米国の財輸出GDP比は約7〜8%程度であり、日本と同水準、あるいはそれ以下である。アメリカは世界最大の経済大国でありながら、内需中心型経済である。

日本の構造はドイツ型でも韓国型でもなく、むしろアメリカ型に近い。対中依存が国家全体を左右する構造ではないという点は、この統計的事実からも裏付けられる。

3️⃣中国の米豪対応は管理段階、そして日本の時間軸

オーストラリア、キャンベラの政府庁舎

2010年のレアアース問題では、中国は輸出規制という強い圧力をかけた。しかし日本が調達分散と代替技術開発を進めると、圧力は永続しなかった。対抗手段が制度化されると、関係は緊張を抱えつつも安定的な枠組みに収まった。


オーストラリアの例はさらに明確である。中国は関税措置や輸入停止などの経済圧力を段階的に行使したが、オーストラリアが姿勢を維持し制度対応を強化すると、全面断絶には至らず、現在は制御された競争関係に移行している。

アメリカと中国の関係も同様である。緊張は高いが、断絶はしていない。貿易は続き、対話も断続的に行われている。全面衝突ではなく、競争を前提とした安定化が図られている。

このように、中国は相手国が制度的に対抗能力を固定化した場合、永続的な揺さぶりよりも、制御された競争関係へ移行する傾向がある。

本稿では、この段階を「管理段階」と呼ぶ。

これは正式な外交用語ではないが、米国で用いられる「マネージド・コンペティション」や「ガードレール」といった概念に近い。ジョー・バイデン政権は中国との関係をマネージド・コンペティションと位置付け、ジェイク・サリバンはガードレールという概念で衝突回避を説明してきた。一方、マイク・ポンペオやマルコ・ルビオも、中国を戦略的競争相手としつつ制度的統制を重視する立場を取っている。

高市政権が進める軍事、経済、技術の三層での実装は、この超党派型モデルに近い。実装とは、法改正、予算措置、輸出管理強化、対内投資審査拡充、重要物資備蓄強化などを通じて政策を制度として固定することである。

これらが2026年通常国会で成立し、同年秋までに実務運用が定着すれば、2027年前半には中国側の対日対応は圧力中心から管理中心へ移行する可能性が高い。

逆に実装が止まれば、揺さぶりは再開される。歴史がそれを示している。

結語

日本には分野依存は存在する。しかし財ベースで見れば対中依存はGDPの数%規模にとどまり、国家全体を左右する構造ではない。一方、中国の対日依存は製造基盤の中枢部分に及び、代替は容易ではない。

高市政権の大勝は、日本の政策意思を明確にした。実装が継続されれば、2027年前半までに日中関係は揺さぶりの段階から管理の段階へと移行する可能性が高い。

鍵は、制度として固定できるかどうかである。

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