2017年9月7日木曜日

財務省の補正予算編成が日本のためにならない理由―【私の論評】日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てた財務省はこの世から消せ(゚д゚)!


 今月下旬から臨時国会が開催される予定だ。しかし、肝心要の補正予算編成についての動きが鈍い。

 これは、8月上旬に発表された4-6月期のGDP速報の数字が思いのほか良かったからだ。もっとも、その数字の中身を見れば、16年度の第2次補正予算が効いたとしか読みようがない(表1)。

◆表1:四半期別の実質成長率(季節調整系列)


つまりは、緊縮財政をしなければGDP(国内総生産)は成長するという当たり前の話なので、秋の補正予算で手抜きをしたらまずいだろう。だが、現実には補正予算の作業は、霞が関などから聞こえてこない。

 「2%物価目標」達成には20兆円規模の補正予算が必要

 8月10日付けの本コラム『安倍改造内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成』で明らかにしたように、物価目標2%、それと裏腹であるが、完全雇用になる2%半ばの失業率達成のためには、25兆円の有効需要が必要であり、財政出動に換算すれば20兆円になる。

 これをできるだけ、短期間で実施することが必要だ。財政赤字の問題を意識することはそれほど必要でなく、さらに市場における国債の品不足を考えれば、この秋の補正予算で20兆円のうちどれだけを用意できるのかがポイントだ。

 今回のコラムでは、2000年代以降の財政を考えながら、17年度補正予算の行方を考えてみよう。

 概算要求でカット、補正で積み上げ予算編成の“経験則”

 実は、財政支出にはある種の“経験則”がある。

 国の一般会計でいえば、夏に各省庁からの概算要求があり、それを12月末までに削って予算の政府原案を作る。その政府原案は、翌年1月からの国会審議で3月末までに成立し、当初予算となって、4月から予算執行される。

 一般会計は、その年度に行われる政策や公共サービスの財源を担保したものだから、各政権それぞれのカラーがある。

 各年度の財政支出水準について、概算要求の段階と当初予算、さらに補正で修正された予算で、それぞれの総額を見ると、以下の通りだ。(図1、図2、図3)


◆図1:予算歳出総額の推移(概算要求、兆円)

◆図2:予算歳出総額の推移(当初予算、兆円)

◆図3:予算歳出総額の推移(含む補正、兆円)


 これを見ると、政権交代によって、水準が大きく変わっていることがわかる。

 民主党政権時代は、途中でリーマンショックがあったこともあって、支出水準が大きくなっている。安倍政権への移行でも変化があった。

 それにもかかわらず、2001 年度から2017年度まで当初予算と概算要求の間には、リーマンショック(2008年9月15日)対応をせざるを得なかった2009年を除き、安定的な関係がある。当初予算は概算要求を4%程度カットした水準で決まっている。

 しかし、当初予算では足りないので、ほとんどの年度において年度途中に補正予算が編成され、それで当初予算に上乗せされる修正が行われている。その場合の歳出総額は、リーマンショックに対応せざるを得なかった09年度と東日本大震災(2011年3月11日)で予算規模を膨らまさざるを得なかった11年度を除いて、もともとの概算要求と同じ水準になっている。これが、筆者のいう経験則である(図4)。

◆図4:当初と補正の概算要求比率の推移



 補正で要求を復活し恩を売る“財務省流”霞が関操縦術

 どうしてこうなるかというと、何のことはない。事後的に見れば、概算要求を4%カットして当初予算を作るが、補正予算でカット分の予算をつけて、当初の概算要求と同じ水準になるわけだ。

 まず、基本的な考え方として、財務省はできるだけ予算を絞り込みたい。

 これは、財務省が国の「金庫番」である以上、仕方がないともいえるが、財政の健全化というのは建前であり、当初予算で絞り込めば、補正予算で復活させた時に、要求官庁がより恩を感じるようにしているだけだ。

 その恩のお返しに、要求官庁傘下の機関への天下りがあるわけで、これは日本のためになっていない。

 本コラムで何度も指摘しているように、本当に財政の健全化を図ろうとするのであれば、まずは名目成長が優先されるべきであり、歳出カットや増税を行うと、結果として財政の健全化から外れてしまう。

 財政の健全化は、筆者も重要だと思うが、現時点ではそれを過度に考慮する必要はない。これは、本コラムで繰り返して述べているように、日銀を含めた「統合政府」バランスシートで考えれば、財政危機という状況でないからだ。

 バランスシートはストックの話なので、フローはどうかなのかという質問も受けるが、ストックのバランスシートからわかることは、広い意味の政府で見て、フロー支出の国債の利払いは、フロー収入の税外収入でかなり賄われていることを意味している。

 この点は、4月29日付け本コラム『「「統合政府」で考えれば、政府の財政再建試算は3年早まる』で既に指摘している。政府の財政中期試算では、税外収入が低く見積もられており、不適切だ。

 財政再建一辺倒マクロ経済の視点欠ける

 いずれにしても、財政の健全化はマクロ経済の回復によって達成されるのに、財務省がマクロ経済からの視点がなく、必要以上に財政危機を煽るのは、日本の大きな構造問題といえよう。

 マクロ経済の観点からの最適解は、冒頭に掲げた8月10日付けの本コラムに書いたように、財政出動20兆円である。これが一気にできなければ、2年に分けてもいい。

 しかし、一向に政府内でその気配はない。財政出動20兆円のうち一部を防衛予算増とするのも、昨今の国際情勢では、世界に向けた有力な政治的メッセージになる。補正予算はそうした絶好の機会であることを、政治家は忘れてはいけない。

 それでは今年度の場合、こうした戦略的な話ではなく、財務省は事務的にどの程度の補正予算とするつもりなのだろうか。ひょっとしたら、補正なしというのもあり得るが、それでは政治的にもたないだろう。そこで、財務省的には、どの程度なら、財政健全化に支障がない許容範囲かという、つまらない次元で考えるのだろう。

 安倍政権で緊縮度増す2兆円規模の補正で終わる?

 それは、安倍政権になってから、年々、補正予算の緊縮度合いが増していることから予想できる。

 実は、最近15年度と16年度では、概算要求から当初予算で5%カットして、補正予算で3%増やすことになっており、概算要求の水準まで達していない。図4の補正で修正された予算と概算要求の比率を見ると、15年度と16年度は平均線を下回っている。

 17年度は、概算要求と当初予算を比べると、これまでの経験則通りに4%カットだった。

 補正予算後の予算総額が15年度と16年度並みの2%カット水準であればどうなるか。

 17年度の概算要求は101.5兆円だったので、概算要求の2%カットだと99.5兆円。当初予算は97.5兆円だったので、補正予算は2兆円程度、総計でも100兆円を切るショボいものになる可能性がある。

 その程度では、「物価目標2%」、それと裏腹の完全雇用になる2%半ばの失業率の達成は到底無理だ。金庫番の財務省が、達成すべきマクロ経済目標を無視しているのだから、、日本経済の本格的な回復が難しいのは当然だろう。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

【私の論評】日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てた財務省はこの世から消せ(゚д゚)!

上の記事を読むと、日本経済復活のボトルネックとなっているのが、財務省であるということが良くわかります。

ところで、ボトルネックとは何かといえば、システム設計上の制約の概念です。英語の「瓶の首」の意です。一部(主に化学分野)においては律速(りっそく、「速さ」を「律する(制御する)」要素を示すために使われる)、また『隘路(あいろ)』と言う同意語も存在します。

80-20の法則などが示すように、物事がスムーズに進行しない場合、遅延の原因は全体から見れば小さな部分が要因となり、他所をいくら向上させても状況改善が認められない場合が多いです。このような部分を、ボトルネックといいます。

瓶のサイズがどれほど大きくても、中身の流出量・速度(スループット)は、狭まった首のみに制約を受けることからの連想です。


大きなボトル(瓶)でも通り道が狭いネック(首)になっていると、一定時間当たりの出る液体の量は少なくなってしまいます。「ボトルネック」は、この現象に由来してさまざまなビジネスシーンに利用されているのです。

「ボトルネック」の意味はご理解いただけたでしょうか。ここでは「ボトルネック」の使い方を説明しましょう。
例えば、製造業では生産プロセスの複数の工程のうち、スピードが遅く全体の生産効率の低下をもたらしている工程が「ボトルネック」と呼ばれています。また、ITの業界などではシステムの処理や通信のスピードの低下を招く原因や要因として、「ボトルネック」が使われています。
経営管理では事業戦略上必要な資源の調達が難しい場合に、その資源を戦略遂行上の「ボトルネック」として認識されます。このようにビジネスを進める上で、その目的を困難にさせる問題や障害として「ボトルネック」が使われているわけです。
日本経済の最大のボトルネック(制約条件)は、ご存じの通り「クニノシャッキンガー」という嘘です。私ははこの「クニノシャッキンガー」という嘘、プロパガンダ・レトリックこそが、日本経済の復活の最大のボトル・ネックであると確信しています。
酷い人になると、国の借金どころか、「日本の借金は1000兆円!」と、あたかも「日本国」が外国から多額の借金をしており、財政破綻が迫っているかのごときレトリックを使います。このような主張をする人々は、世界最大の対外純資産国、すなわち「世界一のお金持ち国家」であることを知っているのでしょうか。

テレビ等で「国の借金」「日本の借金」という用語を安易に使う人がいますが、これは明らかな間違いです。本当は「政府の負債」です。そもそも、先に述べたように、日本は外国からお金を借りているわけではなく、世界で一番お金を外国に貸している国だからです。

政府の負債、と聞くと、皆さんは「政府の借り入れ」と認識します。それで正しいわけですが、「日本の借金!」「国の借金!」などという用語を使われると、皆さんはあたかも「自分たちの借金」であるかのごとく感じてしまい、財務省の緊縮財政プロパガンダに洗脳されてしまうわけです。

国の借金1000兆円という報道は以前から行われています。これについては、このブログでも過去何度か掲載してきたことがあります。その典型的なもののリンクを以下に掲載します。
国の借金1000兆円超」に騙されてはいけない 純債務残高は米英より健全 ―【私の論評】嘘を流布する官僚や学者、信じこむ政治家やマスコミは排除すべき時だ(゚д゚)!

詳細は、この記事をごらんいただくものとして、以下に要点だけ述べます。

この記事の結論は、純金融債務だけではなく、純金融資産も多いので、14年度末では、国債を含めた負債総額が1172兆円、資産総額が680兆円でした。つまり、国債を含めた債務残高は、負債から資産を差し引いたネットでみれば、492兆円です。

さらに重要なのは、政府だけではなく、「関連会社」を含めた連結ベースのバランスシートだ。これも公表されているのだが、重要な組織である日銀が連結対象になっていない。そこで、日銀を含めて連結ベースのバランスシートをみると、ネットの債務残高は170兆円にまで減少してしまう。

これが、本当の債務残高の姿である。国内総生産(GDP)比でみると2割以下であり、米国や英国と比較しても小さいです。このような状況ですから、現時点では財政破綻の可能性は極めて小さいです。だかこそ、国債金利がマイナスになるのです。

もし、日本が財政破綻の淵にあるというのなら、国債金利がマイナスになるなどということはありえません。

このようなことは、すでに私も何年もこのブログに繰り返し掲載してきました。さらに、高橋洋一氏などのまともな識者ら(消費税増税による日本経済への影響は警備とした日本の東大を頂点とする経済学の主流派は除きます)も繰り返し、これを主張しています。

しかし、マスコミや財務省は一向に「レトリック」を改めようとしません。そうして、財務省は、上記で高橋洋一氏が指摘しているように、財務省がマクロ経済からの視点がなく、必要以上に財政危機を煽るのは、日本の大きな構造問題です。

そうして、高橋洋一氏が、指摘する「17年度の概算要求は101.5兆円だったので、概算要求の2%カットだと99.5兆円。当初予算は97.5兆円だったので、補正予算は2兆円程度、総計でも100兆円を切るショボいものになる可能性がある」ということが現実になった場合には、また日本経済は低迷するのは目にみえています。

本来は、20兆円必要なのに、2兆円では焼け石に水です。

これでは、本来は日本経済を良くするのが仕事であるはずの財務省自体が、日本経済復活のボトルネックになっているとしかいいようがありません。こういう官庁に対しては、まずは内閣人事局において、徹底的に厳しい人事を実施すべきです。人事を軽く見るべきではありません。

平成26年5月30日、安倍総理は内閣人事局看板掛け及び職員への訓示を行った
人事は、いかなる組織においても、最大のコントロール手段です。その他の手段はどのようなものであれ、人事には及びません。いくら精緻な組織分析をしたとしても、それ自体がコントロール手段となるわけではありません。

役人たちを本当に政府の仕事に貢献させたいのであれば、本当に政府に貢献する人たちに報いなければならないです。それとは、反対に政府に貢献しない人たちには報いないようにしなければならないのです。省庁の組織としての精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まります。

かつてのように、国民や政府などには目もくれず、省益を最大限に重んじる人が昇進するようでは、政治主導など永遠に勝ち取ることはできません。

組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定です。それは組織が信じているもの、望んでいるもの、大事にしているものを組織の全構成員に対して明らかにします。

人事は、いかなる言葉よりも雄弁に語り、いかなる数字よりも明確に真意を明らかにします。

組織内の全員が、息を潜めて人事を見ています。小さな人事の意味まで理解しています。意味のないものにまで意味を付けます。

“国民への貢献”を組織の精神とするためには、誤ると致命的になりかねない“重要な昇進”の決定において、真摯さとともに、経済的な業績を上げる能力を重視しなければならないです。

致命的になりかねない“重要な昇進”とは、明日の高級官僚が選び出される母集団への昇進のことです。それは、組織のピラミッドが急激に狭くなる段階への昇進の決定です。

そこから先の人事は状況が決定していきます。しかし、そこへの人事は、もっぱら政府の下部組織としての価値観に基づいて行なわれるべきです。

高級官僚など、重要な地位を補充するにあたっては、政府の目標と成果に対する貢献の実績、証明済みの能力、政府全体のために働く意欲を重視し、報いなければならないのです。

それでも、ボトルネック状態が払拭できない場合は、財務省を分割するしかないでしょう。ただし、単純に分割すると、財務省は長い時間をかけても、他省庁を植民地にするという習性があるので、財務省を分割した上で、他省庁の下部組織にするという方式で分割すべきです。

もし、これを実施しなければ、旧財務省出身者がいずれかの官庁で、事務次官になり、この事務次官が分割された他省庁の旧財務省出身者と結託して、他省庁を時間をかけて植民化して、実質他省庁を支配し、結局旧財務省と同じようなグループを復活させることになります。

このような分割の仕方をすれば、旧財務省出身者は、どうあがいても、いずれの官庁においても事務次官にまで上り詰めることは不可能になり、政治に対して権力を振るうことは不可能になります。そうして、大蔵省のDNAは、財務省から新体制は受継がれなくなります。

そうして、官僚は本来の業務である、政府の目標設定に従い、専門家的立場から、それを実行するための手段を選び実行するという役割を果たすようになります。前川のような馬鹿で独善的な次官が生まれる余地はなくなります

これで、財務省はすっかりこの世から消えることなります。そうして、全省庁の高級官僚は、左遷されたり、それどころか、自分の属する省庁がこの世から消えることを恐れ、政府の方針に従った仕事をするようになります。そうなれば、日本経済は大復活することになります。

せっかく、内閣人事局を設置したわけですから、安倍政権には少し時間をかけても、これを実行して頂きたいです。これが成功すれば、日本経済が大復活するだけではなく、日本の政治主導の夜明けとなり、良いことずくめです。

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