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2018年11月6日火曜日

各国で「右派」が躍進する理由… 経済苦境と雇用悪化を招いた左派に対し、国民に「刺さる」政策で支持得る―【私の論評】雇用は他のどの指標よりも重要!ティラー・スウィフト効果は僅少!中間選挙は雇用をかなり良くしたトランプ共和党が断然有利(゚д゚)!

各国で「右派」が躍進する理由… 経済苦境と雇用悪化を招いた左派に対し、国民に「刺さる」政策で支持得る

ブラジル大統領選で勝利したボルソナロ下院議員

 ブラジル大統領選で、右派のボルソナロ下院議員が勝利した。このところ、各国で右派政治家が選挙で勝利しているのが目立つ。米国のトランプ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、ハンガリーのオルバン首相などだ。

 ドイツの地方議会選では、メルケル首相が党首を務める中道のキリスト教民主同盟が敗れたが、これも極右勢力と極左勢力の台頭によるものだ。

 主要7カ国(G7)でみると、米国のトランプ大統領、英国のメイ首相、日本の安倍晋三首相が右派、フランスのマクロン首相、ドイツのメルケル首相、イタリアのコンテ首相、カナダのトルドー首相が中道といったところではないだろうか。

 ブラジルの政治事情をみると、ボルソナロ氏の前は、左派・労働党の人物が大統領を長年務めていたが、国民の拒否感が強かったようだ。背景には深刻な不況があり、2015~17年はマイナス成長だった。不況に加えて政治汚職などのスキャンダルが、今回の右派大統領の誕生につながっている。

 フィリピンではドゥテルテ大統領が国内の治安問題への対処で高い支持率を得ている。

 ハンガリーは反移民の強硬策が国民の人気を博し、10年からオルバン首相の長期政権になっている。同じ欧州で、オルバン首相の強権政治と対極といわれていたのが、ドイツのメルケル首相だが、寛容な移民政策のために地方選挙で相次いで敗北し、キリスト教民主同盟党首を辞任することになった。首相は続けるが、レームダック化は避けられない。

 欧州では、移民政策への対応によって、それに反対する右派が勢いを増しているようだ。

 ハンガリーでは、経済成長率も10年の0・7%から上昇傾向で、17年には4・0%になった。一方、ドイツでの成長率は10年に4・1%だったが、その後はあまり振るわず17年は2・2%にとどまった。

 こうしてみると、右派は、左派の経済低迷を背景に、国民に「刺さる」政策で支持を得たときにできやすいようだ。

 経済苦境とも表裏一体であるが、左派政権下の雇用悪化を受けて右派政権が誕生し、雇用で一定の結果を出している国も多い。

 ブラジルは、11%を超える失業率を記録している。本来なら雇用がうたい文句のはずの左派政権では情けない数字で、右派政権ができても不思議ではない。

 米国もトランプ政権になってから雇用が好調で、失業率は4%とほぼ完全雇用状態である。フィリピンの失業率は5・4%で、ドゥテルテ大統領就任時より改善している。ハンガリーはオルバン政権になってから一貫して失業率が低下しており、今では3・7%と発足時の11・2%とは段違いの雇用環境だ。

 日本でも、第2次安倍政権が発足して以降、雇用が格段に良くなっているのは説明するまでもないだろう。

 左派政権が雇用を確保できないときに、右派が左派のお株を奪っているという現象が世界的に起きているのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】雇用は他のどの指標よりも重要!ティラー・スウィフト効果は僅少!中間選挙は雇用をかなり良くしたトランプ共和党が断然有利(゚д゚)!

冒頭の高橋氏の記事には、米国ではトランプ政権になってから雇用がよくなっているとありますが、確かにそのとおりです。以下に、直近(10月)はどうであったかを示します。

米国ではトランプ政権になってから毎月雇用が
増えているが10月は25万人の雇用が増えた

米労働省が発表した10月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が25万人増となり、市場予想の19万人増を上回りました。失業率は労働参加率の上昇にもかかわらず49年ぶりの低水準となる3.7%を維持したほか、賃金の伸びは9年半ぶりの高水準となりました。労働市場の一段の引き締まりが示されたことで米連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げを実施するとの観測が一段と裏付けられました。



トランプ大統領は雇用統計を歓迎し、ツイッターに「これらは信じられない数字だ」とつづりました。


10月はハリケーン「フローレンス」の影響で停滞したレジャー・接客部門の雇用が回復。製造、建設、専門職などの部門でも雇用は大きく拡大しました。

労働省は10月半ばにフロリダ州を直撃したハリケーン「マイケル」による10月の統計への影響は軽微だったとしています。

ただ9月分は11万8000人増と、13万4000人増から下方修正されました。

時間当たり平均賃金は5セント(0.2%)増加。前年比では3.1%増と、前月の2.8%増から加速し、2009年4月以来の高い伸びとなりました。

10月は週平均労働時間が34.5時間と、前月の34.4時間から増加しました。賃金の上昇は他の経済指標でも示されており、インフレ率が当面はFRBが目標としている2.0%近辺で推移するとの見方を裏付けるものとなります。

FRBは来週の連邦公開市場委員会(FOMC)では政策を据え置くとの見方が大勢となっていますが、エコノミストの間では、10月の労働市場関連の経済指標が力強かったことで12月のFOMCでは利上げに動くとの見方が濃厚になっています。FRBは9月に今年に入ってから3回目となる利上げを実施しています。

過去3カ月間の毎月の雇用増の平均は21万8000人。労働人口の増加に対応するためには毎月10万人前後の雇用増が必要とされていますが、この水準を倍以上上回っています。

10月の労働参加率は62.9%と、前月から0.2%ポイント上昇。現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は7.4%と、前月の7.5%から低下しました。

雇用率は60.6%と0.2%ポイント上昇し、09年1月以来の高水準となりました。

業種別ではレジャー・接客が4万2000人増加。小売は増加したものの2400人増にとどまりました。経営破綻した小売り大手シアーズ・ホールディングス(SHLDQ.PK)の店舗閉鎖などが影響した可能性があります。

建設は3万人増、製造は3万2000人増となりました。製造業は前月の1万8000人に続く増加。トランプ米政権は保護主義的な貿易政策を打ち出していますが、これまでのところ米製造業に対する雇用面での影響は顕在化していません。

この雇用の改善は、当然のことなが本日開票される、米国中間選挙には有利です。オバマ前大統領は、「米国の経済は、前民主党政権自体から良くなっていた」と中間選挙の応援演説で述べていました。確かにそのようなことはあります。ただし、雇用に関してはオバマ大統領のときも改善しつつありましたがが、トランプ大統領になってからは明らかにかなり改善しています。

今年6月11日のニューヨーク・タイムズには、「雇用の数字がどれほど良いものか表現する言葉がもうない」と題された、コラムが掲載されました。以下にその内容の日本語訳を掲載します。
「雇用の数字がどれほど良いものか表現する言葉がもうない」

ニール・アーウィン著
ニューヨーク・タイムズ「The Upshot」
2018年6月1日1日に発表された5月の雇用の数字を分析する時に本当に疑問となるのは、それを的確に表現するために『良い』の同義語がネットの類語辞典に十分存在するかどうかという点だ。 
例えば、「splendid(輝かしい)」や「excellent(卓越した)」といった言葉が当てはまる。そのような言葉が適切となるのは、米国経済で増加に至るまで9年間かかったにもかかわらず、1カ月に22万3千の雇用が追加された場合や、失業率が18年で最低の3.8パーセントに落ちた場合のことだ。 
「salubriousな(健康的)」「salutary(有益な)」「healthy(健全な)」は、平均時給が0.3パーセント上昇したことを表現する言葉として使える。しかもそれは、昨年全体で2.7パーセントの上昇であった・・・。

また広義の失業率には、失望から職探しを諦めてしまった人も含まれるが、それが7.6パーセントに低下した。アフリカ系アメリカ人の失業率は5.9パーセントに低下し、最低記録となった。「great(偉大な・すばらしい)」と見なすべきものだろう。

類語辞典には、雇用の数字に言及する際には通常使用しない同義語も他にあるが、この月に対しては適切だ。例えば様々なレポートが互いに合致しているという意味で、「congruous(適合する・調和する)」というものがある。つまり、雇用主がより多くの雇用を生み出して、より多くの人が仕事に就き失業者が少なくなるようにしており、給与が上昇することへつながっている。

5月の数字から引き出せることは、アメリカの景気が安定したペースで好調を続けており、仕事に就く人が増え賃金も徐々に上昇しているということだ。
出典:https://www.nytimes.com/2018/06/01/upshot/we-ran-out-of-words-to-describe-how-good-the-jobs-numbers-are.html 

このようなコラムがニューヨーク・タイムズに掲載されたわけですから、最近の雇用の回線はトランプ政権によるもの以外には考えられないといえると思います。

そうして、これは今回の中間選挙で決定的な追い風となることでしょう。この中間選挙については、昨日も掲載しました。
米中間選挙情勢 接戦6州が焦点 6日投開票―【私の論評】トランプ共和党は確実に過半数を維持する(゚д゚)!

さて、詳細はこの記事をご覧いただくものとして、このブログでは、カバノー最高裁判事の任命を巡って民主党が露骨な妨害をしたこと、中米から数千人の移民キャラバンが米国国境を目指していることが米国民の危機感をあおり、移民に寛容な民主党にとって不利な材料になっていること、さらにいわゆる「隠れトランプ共和党支持者」が大統領選挙のときよりも増えていることから、共和党は上院・下院とも過半数を維持するであろと予測しました。

ただし、一つ掲載し忘れていたことがあります。それが、雇用状況に大幅な改善です。これは、当たり前のことのようですが、雇用が良くなければ、他の何が良くても不利になります。

雇用が良ければ、かなりの追い風になります。経済指標は雇用も含めて様々なものがあります。その中で最も重要なのは雇用です。GDPも重要ではありますが、GDPが良くなっても雇用がまずければ、多くの国民は経済がよくなったとは実感できません。

多くの人がたとえ、経済が悪くなったとして、最悪解雇されたにしても、雇用情勢が良ければ、すぐに就職することができます。それだけ希望を持ち、希望を失わないで生活てきます。しかし、GDPや他の指標がいくら良くても、雇用が悪化すれば、その逆になります。希望が失われ、大きな社会不安がまきおこされることになります。

特に日本以外の国々では新卒一括採用などという制度はありません。あくまで、必要なとき募集します。そうなると、雇用が悪くなるとまず誰より見若者を直撃します。

雇用状況が良くなれば、若者も採用されやすくなります。最近、テイラー・スウィフトが民主党支持を表明しました、これを大きく評価するむきもありますが、私はそうではないと思います。

テイラー・スウィフト

これだけ雇用が改善されているて、ティラー・スウィフトが民主党を応援したとしても、それに新たに引きずられる若者はそう多くなるとは考えられません。

それだけ、雇用は重要なのです。どの国であれ、雇用が良くなったり、良さを維持できていれば、その時の政権は安定します。そうでない政権は逆に不安定になります。

最近は、韓国の文在寅大統領の退陣の危機もささやかれています。それについては、以下の記事をご覧になってください。
韓国内で非難炸裂!文大統領に“退陣”危機 『従北』傾斜に外交官OBら異例の緊急声明「文政権の国家安保蹂躙を弾劾する」

文在寅大統領

この記事には、雇用のことは書かれていませんが、文在寅大統領は、金融緩和せずに最低賃金をあげるという、マクロ経済的にはあり得ない政策を実行し、雇用が激減して大失敗しました。ちなみに、これは経済成長も金融緩和もしないで、再分配を強化するという、立憲民主党の枝野の氏の理論と全く同じです。

韓国の大統領、日本の野党第一党のリーダーがともに左翼系であり、その両者とも金融機緩和に関心がなく、よって雇用を状況良くすることができないのです。

私自身は、韓国があれだけ雇用が悪くなれば、文政権もおしまいになるのではないかと思っていたのですが、さすがにその気配がでてきたようです。実際は、どうなのかはわかりませんが、少なくとも雇用が良くなっていれば、若者を中心に大きな支持を得て、大統領退陣などということは全くありえなかったでしょう。

しかし、あれだけ雇用が不安が大きいと、国民情緒法なるものがある国柄ですから、弾劾ということもあり得るかもしれません。ちなみに、朴槿恵前大統領も、金融緩和をしなかったため、雇用がかなり悪化していました。そうして、あのようなことになりました。

韓国では、大統領になった人が金融緩和をしないと今後とも、雇用が悪化し続けて、国民の支持を失い続けると思います。反日などやっている場合ではないと思います。まずは、金融緩和をして雇用を改善すべきです。

いずれの国のリーダーも雇用を安定化させなけば、政権が不安定になるし、雇用を安定化できれば、政権も安定するということです。

以上のことを考えると、雇用は他のどの指標よりも重要であり、ティラー・スウィフト効果はこれに比較すれば僅少であり、やはり雇用をかなり良くしたトランプ共和党が両院ともに過半数を維持するのではないでしょうか。

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2016年5月20日金曜日

【緊迫・南シナ海】中国が「40カ国超が支持表明」と主張、各国への懐柔強め―【私の論評】国際法に基づいた裁定が出れば、米国は後腐れなく軍事行動をとることができる(゚д゚)!


華春瑩報道官

中国外務省の華春瑩報道官は20日の定例記者会見で、南シナ海の領有権問題について「既に40カ国以上が中国の立場に支持を表明した」と述べた。この問題でオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の判断が近く出されるのを控え、中国はアフリカ諸国など各国への働き掛けを強めている。

華氏は「政治的意図や偏見を持たない国は中国を支持すると信じている。今後も支持する国は増えるだろう」と述べた。

【私の論評】国際法に基づいた裁定が出れば、米国は後腐れなく軍事行動をとることができる(゚д゚)!

この裁判のきつかけともなつた問題簡単にふりかえっておきます。中国は従来から、南シナ海のほぼ全域を囲む9つの線からなる「九段線」(赤い舌)を引き、国際法を無視して南シナ海の大部分を「自国の領海だ」と主張。周辺国を力で恫喝し、複数の岩礁を埋め立てて軍事基地化を進めていました。これは、常軌を逸した暴挙以外の何ものでもありません。


では、この中国が主張する九段戦には何か根拠があるのかといえば、何もありません。ただの妄想です。米国の戦略家ルトワック氏は、そもそも、この九段線の元となった地図は、中国が実効的な支配力をほとんど持たなかった時期に国民党(現台湾)の軍の高官が酔っ払いながら描いたものであり、こんな馬鹿げたでっち上げの地図に拘る必要など初めから無いとしています。

アーミテージ元国務副長官は、冷戦後の米国の対中政策はクリントン政権から、ブッシュ政権を経てオバマ政権にいたるまで、中国を軍事的に適切に「ヘッジ」(Hedging)し、国際社会に「関与」(Engagement)させることにより、責任ある「利害関係国」(Responsible Stakeholder)にすることにあったと述べていました。

オバマ政権の発足時は米中で共同覇権体制を組むのではないか-G2(Government of Two)体制-とまでいわれるほどまで関与政策がとられました。それに対して、後期にはいり米中は激しく火花をちらし、米国の「対中封じ込め」と言われるほど対中強硬政策(Hedge)がとられました。

歴史的な訪中を果たした共和党のリチャード・ニクソン大統領と中国の毛沢東主席 (1972年)。
しかしながら、事実は、対中政策を関与とヘッジの二者択一の政策ではなく、両者を同時に追求しながら、バランスをとる「あいまい戦略」(Ambiguous Strategy)がとられたと考えられます。すなわち、前期はヘッジも行っていたが関与の政策傾向が強く、後期は関与も行うがヘッジの政策傾向が強かったと考えられます。

しかしながら、このあいまいな戦略が中国を増長させました。結局のところ、つい最近まで中国が南シナ海で何をしても、強く非難はしても、米国は直接軍事衝突することもなく中国の好き放題にさせてしまいました。

米国は従来は、「建設的関与」によって、中国を支援し、中国の根幹を強く豊かにすれば、国際社会への参加や協調力を促し、西側に同調すると考え、この関与政策を8代にわたり何十年も続けてきたのですが、全てが失敗で対中失望感につながっています。

しかし、力が強くなり、存在感がますます高まる中国を抜きに、世界秩序の維持ができないことも十分認識しており、今後は基本政策を関与に置き、脅威としても認識しつつ、力で関与を促す「軍経分離けあるいは「政経分離」政策へと移行しつつあります。

中国が人工島を建設している南シナ海スプラトリー諸島のミスチーフ礁。(2015年5月)
そのような時期に、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は昨年10月29日、フィリピン政府が申し立てていた南シナ海をめぐる中国との紛争の仲裁手続きを進めることを決めました。その後、フィリピン側の主張を検討するための聴聞会を開催しました。フィリピン政府は決定を歓迎。一方、中国は、仲裁手続きを受け入れない姿勢を示しました。

中国は、関係国間の交渉による解決を唱え、仲裁裁判所に管轄権はないとして仲裁手続きを一貫して拒否していました。南シナ海の領有権問題では中国は、フィリピンのほか、ベトナムや台湾、マレーシア、ブルネイなどとも対立しています。

仲裁裁判所は、フィリピンが国連海洋法条約に基づいて申請した7件の事項を取り上げる権限があり、中国が仲裁手続きをボイコットしているからといって裁判所の管轄権がなくなるわけではないとの判断を示めしていました。

米国防当局者は、仲裁裁判所の決定に歓迎の意を表明。「南シナ海の紛争に対する国際法の有効性が示されている。各国の領有権には論争の余地がないわけではなく、国際法と国際的慣行を基礎にしたこうした判断は、紛争を解決しないまでも管理を実現できる1つの方法といえる」と述べました。

フィリピンの同盟国でもある米国はこの頃、南シナ海にある中国が埋め立て工事をした人工島の12カイリ以内に海軍艦艇を派遣する「航行の自由」作戦を実施しました。

また米国務省のカービー報道官は定例会見で、仲裁裁判所の決定はフィリピンと中国の双方に法的拘束力を持つとの見方を示しました。

米上院軍事委員会のマケイン委員長も裁判所の決定を称賛した上で、米政府は航行の自由作戦を定期的に行うことなどで今後もフィリピンなどの同盟国や連携する国を支援するべきだと強調しました。

中国は仲裁手続きを受け入れない姿勢でした。

劉振民外務次官は、記者団に、「今回の決定は、南シナ海をめぐる歴史の事実と国際法に基づく中国の権利、主権に影響を及ぼすものでない」と述べ、フィリピンの目的は紛争の解決でなく、南シナ海における中国の権利を否定し自らの権利を確認することであることが、今回明らかになったと指摘しました。

劉振民外務次官
いずれにせよ、フィリピンはこの問題で中国と十分な交渉をしていないとする中国側の主張が裁判所の見解で明確に否定されていたわけですが、この時点で中国にとっては大打撃だったことでしょう。

フィリピン政府はこの「九段線」の合法性、またその内部での中国の行動について異議を唱えています。

フィリピン政府は、自国EEZ内での海域開発の権利について裁定を勝ち取ることにより、この海域内の複数の暗礁・岩礁から中国が撤退せざるをえなくなることを望んでいます。

仲裁裁判所の裁定がどのようになるか、今のところは予測はつきませんが、いずれにせよ、中国にとってはかなり不利な内容になるというか、もともと南シナ海での中国の暴挙は、国際法的に何の根拠もないわけですから、最終的には中国にとってかなり不利なものになることは確かでしょう。

不利な裁定になったとしても、中国がそのまま南シナ海の軍事基地化をやめない場合、米国は軍事衝突をすることになります。現在その戦略を徹底的に練っているところでしょう。

数十年もあいまいな対応を続けた結果が、今日の中国の増長につながっており、これを放置しておけば、第一列島線、第二列島線にまで触手を伸ばしてくるのは明らかです。

これを防ぐためにも、そそろ米国による軍事力の行使をすべきものと思います。そうして、仲裁裁判所の裁定は、米国にそれを実行させるための、きっかけを与えることになります。
オランダ・ハーグにある仲裁裁判所
仲裁裁判所の裁定は、無論のこと、国際法の原則にもとづいて行われることになります。そうしてその原則として、当事国の一方がそれを破れば他方は守る義務がないことになります。

国際法には「法」という字がついていますが、日常生活で「法律」という言葉からイメージするものとは大きな違いがあります。

民事や刑事の訴訟などで使われる法律は国内法です。国内法は主権を持った統一政府によって強制される法なので、「強制法」といいます。国内では、警察などの法執行機関が法律を破った人を取り締まるわけです。

一方、国際社会には警察のような強制力を持った組織はありません。国際法はあくまで主権国家同士の合意によって成り立っているものなので、「合意法」といいます。当事国のどれか一国が仲裁裁判所の裁定を破った場合は、その他の国は守る義務はありません。

この国際法の原則からいえば、現状のままだと、米国が軍事力を行使したとすると、中国は米国を強く非難することになります。それこそ、虚妄の南京虐殺や慰安婦問題などで鍛え上げた、ありもしない虚妄にもとづき歴史を修正して、米国に徹底的に噛みつきます。国連の場や、ありとあらゆる機会を利用して、様々な活動を展開して、米国を悩ますことでしょう。

それに対して米国は反論することもままならない状況に追い込まれることすら予想されますすが、裁定がおりた後なら、中国による力による現状変更を、力によって元に戻したということになるだけです。中国が、現状を変更しないかぎり、何の後腐れもなく、軍事行動に打って出ることができるのです。

米国が本格的に軍事行動にでれば、南シナ海における中国にはなすすべがありません。

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