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2016年6月15日水曜日

孤立浮き彫りの中国 ASEAN懐柔に失敗 あの外相が1人で会見の異常事態―【私の論評】海洋戦略を改めない限り、これから中国は大失態を演じ続けることになる(゚д゚)!

孤立浮き彫りの中国 ASEAN懐柔に失敗 あの外相が1人で会見の異常事態

中国の王毅外相
中国は外交でも国際社会から孤立を強めている。中国雲南省玉渓で開かれた中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相による特別会合で、ベトナムなど一部加盟国と中国が対立する南シナ海の領有権問題をめぐる議論が決裂、共同記者会見も開かれず、中国の王毅外相が1人で会見するという異常事態となった。

フィリピンが提訴した常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判断が近く示される見通しとなる中、中国は孤立回避に向けてラオスなどの友好国の取り込みを図り、対立国との一致点を模索したが、ASEAN側は中国との調整を放棄、南シナ海の人工島造成や施設建設について「信頼を損ねる動き」と非難、不信感をあらわにした。

王毅外相は単独で開いた記者会見で「中国とフィリピンの間の意見の相違はASEANとの問題ではなく、協力関係に影響はない」と強調。ASEANの対中交渉の窓口国であるシンガポールの外相が会見に参加しなかったことについては「フライトやスケジュールの問題」と説明せざるを得なかった。

4月には中国の劉振民外務次官がASEAN各国に対し、仲裁の結論に同調することは「危険な動きだ」と発言。これが「恫喝(どうかつ)」(シンガポール外務省高官)と受け止められ、反発が広がった可能性があり、中国外交は失敗に終わった。

【私の論評】海洋戦略を改めない限り、これから中国は大失態を演じ続けることになる(゚д゚)!

この記事、完璧に中国の外交が失敗だったことを示しています。このところ、中国の外交は失敗続きで何も良いことはありません。そうして、失敗続きの連続で、王毅外相のいらつきは極度に達しているようで、最近の行動は常軌を逸しているといっても過言ではありません。

その状況を物語るいくつかのエピソードを以下に掲載します。

今月はじめ中国の王毅外相が、中国の人権状況について質問したカナダ人記者に激怒し、話題になっていました。

今月1日、訪問先のカナダで、ディオン外相と共同記者会見した王氏は、カナダ人記者が、人権問題や南シナ海での軍事的覇権に懸念があるなか、「なぜ両国関係を強化するのか」とディオン氏に質問したところ、いきなり激高したのです。

「あなたの質問は、中国に対する偏見に満ちており、傲慢だ!」

さらに、王氏は「まったく容認できない。中国の人権状況について最もよく分かっているのは中国人だ!」と続けました。

カナダ放送協会(CBC)が世界に配信した映像をみると、王氏は両手を大きく動かして怒りをあらわにし、鬼のような形相で記者をにらみつけている。その時の動画を以下に掲載します。


王氏は、4月末に訪中した岸田文雄外相にも悪態をつくなど、常軌を逸した“暴走”が目立っていました。専門家は、習近平国家主席率いる中国の強硬外交が失敗続きで、「あちこちで八つ当たりしている」と指摘しています。

王氏の暴走はこれだけではありません。日本の岸田外相が4月末に訪中して日中外相会談を行った際、王氏は「中日関係が谷底に落ちた原因は、日本側が自分で分かっているだろう」「あなたが誠心誠意を持ってきたのなら、われわれは歓迎する」といい、日本側をあぜんとさせました。以下にそのときの動画を掲載します。


この非礼極まる態度に関しては、中国のインターネット上でも「外交儀礼は(粗末な)田舎の接待にも劣る」「低級だ」などの批判が相次いだそうです。

オバマ米大統領が5月27日、被爆地・広島を訪問して感動的なスピーチをした際にも、王氏は「南京も忘れてはならない。被害者は同情に値するが、加害者は責任逃れはできない」といい、日本たたきに必死でした。

知日派で知られる王氏なのですが、暴走の背景には何があるのでしょうか。

中国情勢に精通する評論家の石平氏は「王氏は、習氏の手先となって強硬外交を展開したが、ことごとく失敗し、逆に中国の孤立化を招いた。王氏自身が追い込まれており、あちこちで八つ当たりしているとみていい。このままでは更迭される可能性もあるのではないか」と語りました。

しかし、これは別に王毅外相による外交の失敗というわけではなく、最近の中国の行動そのものに問題があることは確かです。

そもそも、自らの領土でも何でもない南シナ海の環礁を埋め立て、環境破壊し、それに及ばず軍事基地化したのは中国です。このようなことをする国の外務大臣が、いくらまともに外交をしようとしてもできないのが当たり前です。

それに、今月の6月9日には、中国海軍の艦船が尖閣列島の接続水域に入りました。産経新聞は、当日号外(下の写真)でこの出来事を報じました。

本日の産経新聞の号外 写真はブログ管理人挿入 

そうしては本日は、 防衛相が、中国海軍の艦艇が鹿児島県の口永良部島周辺の領海に入ったと発表しました。中国艦はすでに領海を出ています。防衛省によると、中国軍艦による領海侵入は2004年の沖縄県先島諸島周辺での原子力潜水艦による侵入以来2例目です。外務省は15日、在日中国大使館に対し、中国軍の活動全般について懸念を伝えました。
口永良部島西方の領海に侵入したとされるドンディアオ型情報収集鑑
防衛省によると、15日午前3時30分ごろ、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦1隻が、口永良部島西方の領海を南東に進むのを海上自衛隊のP3C哨戒機が確認。午前5時ごろ、鹿児島県の屋久島南方から領海を出ました。

防衛省によると、中国海軍の情報収集艦は、沖縄周辺海域で実施中の海上自衛隊と米国、インド両海軍の共同訓練「マラバール」に伴い、日本領海を航行していたインド艦船2隻の後方を航行していたそうです。


中国側の直接的な狙いは以前にもこのブログで述べたように、『マラバール』への対抗措置だと考えられます。米海軍と日本の海上自衛隊を牽制(けんせい)する狙いが透けてみえます。東シナ海情勢は“第2フェーズ”に入りました。中国軍は、尖閣諸島への上陸という“第3フェーズ”も視野に入れて、今後、領海侵入を常態化させていくでしょう。自衛隊と中国軍の軍事衝突の可能性も格段に高まりました。海上警備行動の発令を迅速に出せる態勢を整えておくべきです。

そのためには、このブログでも以前掲載したように、南シナ海における米軍の「航行の自由作戦」のように、海自が尖閣を含む東シナ海の海を定期的にパトロールすべきです。今後領海を侵犯したときは、警告しても受け入れない場合は撃沈すべきでしょう。

公開された「マラバール」米空母「ジョン・ステニス」に着艦
する F/A-18ホーネット=15日、沖縄から東約290キロの洋上
さらに、インドに関しても以下のようなニュースがあります。

インドと中国が領有権を争い、インドの実効支配下にある印北東部アルナチャルプラデシュ州に今月9日、中国人民解放軍が侵入していたことが分かりました。印国防省当局者が15日、産経新聞に明らかにしました。中国は、インドが日米両国と安全保障で連携を強めていることに反発し、軍事的圧力をかけた可能性があります。

中国兵約250人は、州西部の東カメン地区に侵入し、約3時間滞在しました。中国兵は3月にも、中印とパキスタンが領有権を主張するカシミール地方でインドの実効支配地域に侵入し、インド軍とにらみ合いになっていました。アルナチャルプラデシュ州への侵入は、最近約3年間、ほとんど確認されていませんでした。

アルナチャルプラデシュ州 地図の赤い斜線の部分
中国側からすると、日米印の共同訓練「マラバール」への牽制のつもりなのでしょうが、そもそもなぜ「マラバール」を実施することになったかといえば、中国が随分まえから、南シナ海に進出して、最近では環礁を埋め立て軍事基地化し領有権を主張たり、尖閣諸島付近に海警の船を出没させ、最近では軍艦まで派遣するということで、本来日中には領土問題など存在しないのに、尖閣諸島は中国のものだと主張してみたりで、さんざん周辺諸国に対する脅威を煽ってきたからです。

これは、外交の失敗などではなく、中国の海洋戦略に問題があるのです。この状態が続けば、近いうちに王毅外相は外交で何も成果をあげられなくなることになります。

これは、たとえ王毅外相を更迭したにしても、他の外務大臣でも同じことで、海洋戦略を改めない限り、これから中国は外交で大失敗をし、大失態を演じ続けることになります。

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2016年5月20日金曜日

【緊迫・南シナ海】中国が「40カ国超が支持表明」と主張、各国への懐柔強め―【私の論評】国際法に基づいた裁定が出れば、米国は後腐れなく軍事行動をとることができる(゚д゚)!


華春瑩報道官

中国外務省の華春瑩報道官は20日の定例記者会見で、南シナ海の領有権問題について「既に40カ国以上が中国の立場に支持を表明した」と述べた。この問題でオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の判断が近く出されるのを控え、中国はアフリカ諸国など各国への働き掛けを強めている。

華氏は「政治的意図や偏見を持たない国は中国を支持すると信じている。今後も支持する国は増えるだろう」と述べた。

【私の論評】国際法に基づいた裁定が出れば、米国は後腐れなく軍事行動をとることができる(゚д゚)!

この裁判のきつかけともなつた問題簡単にふりかえっておきます。中国は従来から、南シナ海のほぼ全域を囲む9つの線からなる「九段線」(赤い舌)を引き、国際法を無視して南シナ海の大部分を「自国の領海だ」と主張。周辺国を力で恫喝し、複数の岩礁を埋め立てて軍事基地化を進めていました。これは、常軌を逸した暴挙以外の何ものでもありません。


では、この中国が主張する九段戦には何か根拠があるのかといえば、何もありません。ただの妄想です。米国の戦略家ルトワック氏は、そもそも、この九段線の元となった地図は、中国が実効的な支配力をほとんど持たなかった時期に国民党(現台湾)の軍の高官が酔っ払いながら描いたものであり、こんな馬鹿げたでっち上げの地図に拘る必要など初めから無いとしています。

アーミテージ元国務副長官は、冷戦後の米国の対中政策はクリントン政権から、ブッシュ政権を経てオバマ政権にいたるまで、中国を軍事的に適切に「ヘッジ」(Hedging)し、国際社会に「関与」(Engagement)させることにより、責任ある「利害関係国」(Responsible Stakeholder)にすることにあったと述べていました。

オバマ政権の発足時は米中で共同覇権体制を組むのではないか-G2(Government of Two)体制-とまでいわれるほどまで関与政策がとられました。それに対して、後期にはいり米中は激しく火花をちらし、米国の「対中封じ込め」と言われるほど対中強硬政策(Hedge)がとられました。

歴史的な訪中を果たした共和党のリチャード・ニクソン大統領と中国の毛沢東主席 (1972年)。
しかしながら、事実は、対中政策を関与とヘッジの二者択一の政策ではなく、両者を同時に追求しながら、バランスをとる「あいまい戦略」(Ambiguous Strategy)がとられたと考えられます。すなわち、前期はヘッジも行っていたが関与の政策傾向が強く、後期は関与も行うがヘッジの政策傾向が強かったと考えられます。

しかしながら、このあいまいな戦略が中国を増長させました。結局のところ、つい最近まで中国が南シナ海で何をしても、強く非難はしても、米国は直接軍事衝突することもなく中国の好き放題にさせてしまいました。

米国は従来は、「建設的関与」によって、中国を支援し、中国の根幹を強く豊かにすれば、国際社会への参加や協調力を促し、西側に同調すると考え、この関与政策を8代にわたり何十年も続けてきたのですが、全てが失敗で対中失望感につながっています。

しかし、力が強くなり、存在感がますます高まる中国を抜きに、世界秩序の維持ができないことも十分認識しており、今後は基本政策を関与に置き、脅威としても認識しつつ、力で関与を促す「軍経分離けあるいは「政経分離」政策へと移行しつつあります。

中国が人工島を建設している南シナ海スプラトリー諸島のミスチーフ礁。(2015年5月)
そのような時期に、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は昨年10月29日、フィリピン政府が申し立てていた南シナ海をめぐる中国との紛争の仲裁手続きを進めることを決めました。その後、フィリピン側の主張を検討するための聴聞会を開催しました。フィリピン政府は決定を歓迎。一方、中国は、仲裁手続きを受け入れない姿勢を示しました。

中国は、関係国間の交渉による解決を唱え、仲裁裁判所に管轄権はないとして仲裁手続きを一貫して拒否していました。南シナ海の領有権問題では中国は、フィリピンのほか、ベトナムや台湾、マレーシア、ブルネイなどとも対立しています。

仲裁裁判所は、フィリピンが国連海洋法条約に基づいて申請した7件の事項を取り上げる権限があり、中国が仲裁手続きをボイコットしているからといって裁判所の管轄権がなくなるわけではないとの判断を示めしていました。

米国防当局者は、仲裁裁判所の決定に歓迎の意を表明。「南シナ海の紛争に対する国際法の有効性が示されている。各国の領有権には論争の余地がないわけではなく、国際法と国際的慣行を基礎にしたこうした判断は、紛争を解決しないまでも管理を実現できる1つの方法といえる」と述べました。

フィリピンの同盟国でもある米国はこの頃、南シナ海にある中国が埋め立て工事をした人工島の12カイリ以内に海軍艦艇を派遣する「航行の自由」作戦を実施しました。

また米国務省のカービー報道官は定例会見で、仲裁裁判所の決定はフィリピンと中国の双方に法的拘束力を持つとの見方を示しました。

米上院軍事委員会のマケイン委員長も裁判所の決定を称賛した上で、米政府は航行の自由作戦を定期的に行うことなどで今後もフィリピンなどの同盟国や連携する国を支援するべきだと強調しました。

中国は仲裁手続きを受け入れない姿勢でした。

劉振民外務次官は、記者団に、「今回の決定は、南シナ海をめぐる歴史の事実と国際法に基づく中国の権利、主権に影響を及ぼすものでない」と述べ、フィリピンの目的は紛争の解決でなく、南シナ海における中国の権利を否定し自らの権利を確認することであることが、今回明らかになったと指摘しました。

劉振民外務次官
いずれにせよ、フィリピンはこの問題で中国と十分な交渉をしていないとする中国側の主張が裁判所の見解で明確に否定されていたわけですが、この時点で中国にとっては大打撃だったことでしょう。

フィリピン政府はこの「九段線」の合法性、またその内部での中国の行動について異議を唱えています。

フィリピン政府は、自国EEZ内での海域開発の権利について裁定を勝ち取ることにより、この海域内の複数の暗礁・岩礁から中国が撤退せざるをえなくなることを望んでいます。

仲裁裁判所の裁定がどのようになるか、今のところは予測はつきませんが、いずれにせよ、中国にとってはかなり不利な内容になるというか、もともと南シナ海での中国の暴挙は、国際法的に何の根拠もないわけですから、最終的には中国にとってかなり不利なものになることは確かでしょう。

不利な裁定になったとしても、中国がそのまま南シナ海の軍事基地化をやめない場合、米国は軍事衝突をすることになります。現在その戦略を徹底的に練っているところでしょう。

数十年もあいまいな対応を続けた結果が、今日の中国の増長につながっており、これを放置しておけば、第一列島線、第二列島線にまで触手を伸ばしてくるのは明らかです。

これを防ぐためにも、そそろ米国による軍事力の行使をすべきものと思います。そうして、仲裁裁判所の裁定は、米国にそれを実行させるための、きっかけを与えることになります。
オランダ・ハーグにある仲裁裁判所
仲裁裁判所の裁定は、無論のこと、国際法の原則にもとづいて行われることになります。そうしてその原則として、当事国の一方がそれを破れば他方は守る義務がないことになります。

国際法には「法」という字がついていますが、日常生活で「法律」という言葉からイメージするものとは大きな違いがあります。

民事や刑事の訴訟などで使われる法律は国内法です。国内法は主権を持った統一政府によって強制される法なので、「強制法」といいます。国内では、警察などの法執行機関が法律を破った人を取り締まるわけです。

一方、国際社会には警察のような強制力を持った組織はありません。国際法はあくまで主権国家同士の合意によって成り立っているものなので、「合意法」といいます。当事国のどれか一国が仲裁裁判所の裁定を破った場合は、その他の国は守る義務はありません。

この国際法の原則からいえば、現状のままだと、米国が軍事力を行使したとすると、中国は米国を強く非難することになります。それこそ、虚妄の南京虐殺や慰安婦問題などで鍛え上げた、ありもしない虚妄にもとづき歴史を修正して、米国に徹底的に噛みつきます。国連の場や、ありとあらゆる機会を利用して、様々な活動を展開して、米国を悩ますことでしょう。

それに対して米国は反論することもままならない状況に追い込まれることすら予想されますすが、裁定がおりた後なら、中国による力による現状変更を、力によって元に戻したということになるだけです。中国が、現状を変更しないかぎり、何の後腐れもなく、軍事行動に打って出ることができるのです。

米国が本格的に軍事行動にでれば、南シナ海における中国にはなすすべがありません。

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