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2016年5月20日金曜日

【緊迫・南シナ海】中国が「40カ国超が支持表明」と主張、各国への懐柔強め―【私の論評】国際法に基づいた裁定が出れば、米国は後腐れなく軍事行動をとることができる(゚д゚)!


華春瑩報道官

中国外務省の華春瑩報道官は20日の定例記者会見で、南シナ海の領有権問題について「既に40カ国以上が中国の立場に支持を表明した」と述べた。この問題でオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の判断が近く出されるのを控え、中国はアフリカ諸国など各国への働き掛けを強めている。

華氏は「政治的意図や偏見を持たない国は中国を支持すると信じている。今後も支持する国は増えるだろう」と述べた。

【私の論評】国際法に基づいた裁定が出れば、米国は後腐れなく軍事行動をとることができる(゚д゚)!

この裁判のきつかけともなつた問題簡単にふりかえっておきます。中国は従来から、南シナ海のほぼ全域を囲む9つの線からなる「九段線」(赤い舌)を引き、国際法を無視して南シナ海の大部分を「自国の領海だ」と主張。周辺国を力で恫喝し、複数の岩礁を埋め立てて軍事基地化を進めていました。これは、常軌を逸した暴挙以外の何ものでもありません。


では、この中国が主張する九段戦には何か根拠があるのかといえば、何もありません。ただの妄想です。米国の戦略家ルトワック氏は、そもそも、この九段線の元となった地図は、中国が実効的な支配力をほとんど持たなかった時期に国民党(現台湾)の軍の高官が酔っ払いながら描いたものであり、こんな馬鹿げたでっち上げの地図に拘る必要など初めから無いとしています。

アーミテージ元国務副長官は、冷戦後の米国の対中政策はクリントン政権から、ブッシュ政権を経てオバマ政権にいたるまで、中国を軍事的に適切に「ヘッジ」(Hedging)し、国際社会に「関与」(Engagement)させることにより、責任ある「利害関係国」(Responsible Stakeholder)にすることにあったと述べていました。

オバマ政権の発足時は米中で共同覇権体制を組むのではないか-G2(Government of Two)体制-とまでいわれるほどまで関与政策がとられました。それに対して、後期にはいり米中は激しく火花をちらし、米国の「対中封じ込め」と言われるほど対中強硬政策(Hedge)がとられました。

歴史的な訪中を果たした共和党のリチャード・ニクソン大統領と中国の毛沢東主席 (1972年)。
しかしながら、事実は、対中政策を関与とヘッジの二者択一の政策ではなく、両者を同時に追求しながら、バランスをとる「あいまい戦略」(Ambiguous Strategy)がとられたと考えられます。すなわち、前期はヘッジも行っていたが関与の政策傾向が強く、後期は関与も行うがヘッジの政策傾向が強かったと考えられます。

しかしながら、このあいまいな戦略が中国を増長させました。結局のところ、つい最近まで中国が南シナ海で何をしても、強く非難はしても、米国は直接軍事衝突することもなく中国の好き放題にさせてしまいました。

米国は従来は、「建設的関与」によって、中国を支援し、中国の根幹を強く豊かにすれば、国際社会への参加や協調力を促し、西側に同調すると考え、この関与政策を8代にわたり何十年も続けてきたのですが、全てが失敗で対中失望感につながっています。

しかし、力が強くなり、存在感がますます高まる中国を抜きに、世界秩序の維持ができないことも十分認識しており、今後は基本政策を関与に置き、脅威としても認識しつつ、力で関与を促す「軍経分離けあるいは「政経分離」政策へと移行しつつあります。

中国が人工島を建設している南シナ海スプラトリー諸島のミスチーフ礁。(2015年5月)
そのような時期に、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は昨年10月29日、フィリピン政府が申し立てていた南シナ海をめぐる中国との紛争の仲裁手続きを進めることを決めました。その後、フィリピン側の主張を検討するための聴聞会を開催しました。フィリピン政府は決定を歓迎。一方、中国は、仲裁手続きを受け入れない姿勢を示しました。

中国は、関係国間の交渉による解決を唱え、仲裁裁判所に管轄権はないとして仲裁手続きを一貫して拒否していました。南シナ海の領有権問題では中国は、フィリピンのほか、ベトナムや台湾、マレーシア、ブルネイなどとも対立しています。

仲裁裁判所は、フィリピンが国連海洋法条約に基づいて申請した7件の事項を取り上げる権限があり、中国が仲裁手続きをボイコットしているからといって裁判所の管轄権がなくなるわけではないとの判断を示めしていました。

米国防当局者は、仲裁裁判所の決定に歓迎の意を表明。「南シナ海の紛争に対する国際法の有効性が示されている。各国の領有権には論争の余地がないわけではなく、国際法と国際的慣行を基礎にしたこうした判断は、紛争を解決しないまでも管理を実現できる1つの方法といえる」と述べました。

フィリピンの同盟国でもある米国はこの頃、南シナ海にある中国が埋め立て工事をした人工島の12カイリ以内に海軍艦艇を派遣する「航行の自由」作戦を実施しました。

また米国務省のカービー報道官は定例会見で、仲裁裁判所の決定はフィリピンと中国の双方に法的拘束力を持つとの見方を示しました。

米上院軍事委員会のマケイン委員長も裁判所の決定を称賛した上で、米政府は航行の自由作戦を定期的に行うことなどで今後もフィリピンなどの同盟国や連携する国を支援するべきだと強調しました。

中国は仲裁手続きを受け入れない姿勢でした。

劉振民外務次官は、記者団に、「今回の決定は、南シナ海をめぐる歴史の事実と国際法に基づく中国の権利、主権に影響を及ぼすものでない」と述べ、フィリピンの目的は紛争の解決でなく、南シナ海における中国の権利を否定し自らの権利を確認することであることが、今回明らかになったと指摘しました。

劉振民外務次官
いずれにせよ、フィリピンはこの問題で中国と十分な交渉をしていないとする中国側の主張が裁判所の見解で明確に否定されていたわけですが、この時点で中国にとっては大打撃だったことでしょう。

フィリピン政府はこの「九段線」の合法性、またその内部での中国の行動について異議を唱えています。

フィリピン政府は、自国EEZ内での海域開発の権利について裁定を勝ち取ることにより、この海域内の複数の暗礁・岩礁から中国が撤退せざるをえなくなることを望んでいます。

仲裁裁判所の裁定がどのようになるか、今のところは予測はつきませんが、いずれにせよ、中国にとってはかなり不利な内容になるというか、もともと南シナ海での中国の暴挙は、国際法的に何の根拠もないわけですから、最終的には中国にとってかなり不利なものになることは確かでしょう。

不利な裁定になったとしても、中国がそのまま南シナ海の軍事基地化をやめない場合、米国は軍事衝突をすることになります。現在その戦略を徹底的に練っているところでしょう。

数十年もあいまいな対応を続けた結果が、今日の中国の増長につながっており、これを放置しておけば、第一列島線、第二列島線にまで触手を伸ばしてくるのは明らかです。

これを防ぐためにも、そそろ米国による軍事力の行使をすべきものと思います。そうして、仲裁裁判所の裁定は、米国にそれを実行させるための、きっかけを与えることになります。
オランダ・ハーグにある仲裁裁判所
仲裁裁判所の裁定は、無論のこと、国際法の原則にもとづいて行われることになります。そうしてその原則として、当事国の一方がそれを破れば他方は守る義務がないことになります。

国際法には「法」という字がついていますが、日常生活で「法律」という言葉からイメージするものとは大きな違いがあります。

民事や刑事の訴訟などで使われる法律は国内法です。国内法は主権を持った統一政府によって強制される法なので、「強制法」といいます。国内では、警察などの法執行機関が法律を破った人を取り締まるわけです。

一方、国際社会には警察のような強制力を持った組織はありません。国際法はあくまで主権国家同士の合意によって成り立っているものなので、「合意法」といいます。当事国のどれか一国が仲裁裁判所の裁定を破った場合は、その他の国は守る義務はありません。

この国際法の原則からいえば、現状のままだと、米国が軍事力を行使したとすると、中国は米国を強く非難することになります。それこそ、虚妄の南京虐殺や慰安婦問題などで鍛え上げた、ありもしない虚妄にもとづき歴史を修正して、米国に徹底的に噛みつきます。国連の場や、ありとあらゆる機会を利用して、様々な活動を展開して、米国を悩ますことでしょう。

それに対して米国は反論することもままならない状況に追い込まれることすら予想されますすが、裁定がおりた後なら、中国による力による現状変更を、力によって元に戻したということになるだけです。中国が、現状を変更しないかぎり、何の後腐れもなく、軍事行動に打って出ることができるのです。

米国が本格的に軍事行動にでれば、南シナ海における中国にはなすすべがありません。

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