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2020年1月31日金曜日

米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」―【私の論評】新型コロナウィルスで世界経済は短期的には悪影響を受けるが、長期的には良くなる(゚д゚)!

米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」

米国ウィルパー・ロス商務長官

<SARSにアフリカ豚コレラ、新型コロナウイルスと続き、感染症は企業が中国に進出する際の深刻なリスク要因だということがはっきりした、とロスは言う>

アメリカのウィルバー・ロス商務長官は1月30日、インタビューに答えて、中国発の新型コロナウイルスの感染拡大のおかげで、北米に雇用が戻ってくるかもしれない、と語った。

トランプ政権発足直後から商務長官の職にあるロスは、FOXビジネスの番組で、新型コロナウイルスが中国経済に及ぼす影響について問われた。世界各国は現在、ウイルスの侵入を食い止めるため、中国に出入りする渡航に制限をかけている。

ロスはまず、ウイルスの被害に遭った人たちへの同情を表した。「まず何よりも、アメリカ国民は新型コロナウイルスの犠牲者に対して追悼の気持ちを持たなければならない」

さらに「とても不幸でとても悪質な感染症が、(自分たちに)幸いしたなどとは語りたくはない。しかし事実として、外国企業は部品調達網の見直しを行う際、感染症のリスクを考慮せずにはいられないだろう」と続けた。

「まずはSARS(重症急性呼吸器症候群)、そしてアフリカ豚コレラもあった。今回は新型コロナウイルスで、これは人々が考慮せざるをえない新たなリスク要因だ。結果として、北米への雇用回帰は加速すると思う。アメリカだけでなく、メキシコにも雇用は戻るだろう」と語った。

中国の感染者数は1万人近くにまで増加

今回の新型コロナウイルスは、昨年12月に人口約1100万人の中国湖北省・武漢で発生し、中国本土を中心に世界各国へと拡大している。

米疾病対策センター(CDC)が公表した情報によると、新型ウイルスは肺炎による重度の呼吸器症状を引き起こす可能性がある。当初、感染源は武漢の海鮮市場と言われていたが、市場や、そもそも武漢に行っていない人からも感染者が出始めたことから、今ではウイルスは人から人への感染力を持ったと見られている。

中国当局は、1月24日から30日までの春節(旧正月)の期間に感染が拡大することを恐れていた。春節には、武漢の住民を含む多くの中国人が、故郷に帰ろうと大移動をするからだ。

中国当局の発表によると、31日時点で確認された新型コロナウイルスの中国国内の感染者数は9692人、死亡者数は213人に上っている。また、ウイルス感染はすでに日本を始め、韓国、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツなど世界約20カ国・地域に拡大している。

【私の論評】新型コロナウィルスで世界経済は短期的には悪影響を受けるが、長期的には良くなる(゚д゚)!

ロス長官の見方は、妥当だと思います。無論短期においては、混乱はみられるものの、長期的(3年から5年)のうちには、確かに米国にも雇用が戻ってくることでしょう。

2020年1月28日に、中国中央部の湖北省の武漢の通りに沿って、消毒剤を散布する城管

実際、中国を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大により、自動車や電子機器メーカーから観光関連企業に至るまで、世界中の企業が供給網や収益への影響について不安を募らせています。

ウイルス流行の中心地となっている中国湖北省武漢は、欧米や日本の自動車メーカーや電子部品メーカーの製造拠点です。ところが各国は現在、自国民を退避させるため航空機を手配しています。

一方、中国当局は、武漢以外の複数の都市でも封鎖などの措置を取っており、数百万人に影響が出ています。1週間の春節(旧正月)休暇が延長される中、企業への負の影響は避けられないです。

■自動車メーカー
自動車大手の米ゼネラル・モーターズや仏PSAグループ、仏ルノー、日産自動車、ホンダなどは武漢周辺を合弁企業の拠点としており、各社は状況を注意深く見守るとしています。

トヨタ自動車は、自社の従業員だけではなく、中国国内の部品メーカーなどの間でも混乱が生じる可能性を考慮し、少なくとも2月9日までは中国での製造を停止すると発表しています。

■電子機器メーカー
台湾の富士康科技集団(フォックスコン)は29日、中国本土の工場を2月中旬まで閉鎖すると発表しました。

同社は、米アップルのiPhone(アイフォーン)や薄型テレビ、ノートパソコンなどさまざまな機器を製造しており、この決定は世界中の取引先企業のサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。

アップル自体は28日、2020年1~3月期の売上高について、新型ウイルス流行が及ぼす影響は不透明だとして、異例に広い幅を取った予想を発表しました。

■観光
中国では現在、国外への団体旅行が禁止されています。そのため、高級ブランドや高級小売店が数多くある仏パリや伊ミラノなどの都市は、神経をとがらせています。航空各社も中国行きの便を大幅に減らしています。

オランダ金融大手INGグループの中国経済専門家アイリス・パン氏は、新型ウイルスの流行が中国からアジア各国、欧州、北米へと広がっていることにより、今年の世界全体の旅行者数は昨年比30%減となる見通しを示しました。

■小売りチェーン
米コーヒーチェーン大手スターバックスは、新型ウイルスの流行により状況が目まぐるしく変わっていると述べるにとどめ、売上高についての詳細な見通しは示していません。

中国本土はスターバックスにとって世界で2番目に大きい市場で4000店舗以上を展開していますが、新型ウイルス流行により、現在はその半数が休業しています。

米ファストフードチェーンのマクドナルドと米宅配ピザ大手ドミノ・ピザも、世界全体の売上高に占める割合から見ると同じく中国で大きな存在感を示しています。

一方、スウェーデンの家具大手イケアは29日、中国本土に展開する店舗のほぼ半数に当たる30店舗を一時休業すると発表しました。イケアは先週の段階で武漢の店舗を休業していました。

長引く混乱は今後、他の産業分野にも影響を及ぼす可能性があります。例えば中国は、欧米の製薬会社が多くの救命治療用にリパッケージしている医薬品の有効成分の生産で、世界首位を誇っています。

中国に拠点のある世界中の企業が今や供給網や収益への影響について不安を募らせているのです。

これが、今回だけのことならまだしも、SARSや豚コレラ、アフリカ豚コレラの問題もありました。中国では過去だけではなく、これからもこの種の問題は発生しうると考えられます。

そもそも、これらの問題は一時的なものではなく、中国の構造的な問題に根ざしています。その構造的な問題とは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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NBAのバスケット・ボールの試合中にフリー・チベットの活動をする他人事

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から少し長いですが一部を引用します。
不公正取引で先進諸国に「寄生」した新・悪の帝国 
 現在、中国はWTOに加盟して自由貿易の恩恵を最大限に受けているのにもかかわらず、国営企業を優遇し、海外のSNSをシャットダウンして国内の言論だけではなく、社会活動や経済活動にも多大な制限を加えている。 
 また、知財を盗むコピペ経済でもある。さらには、中国大陸に進出する外資系企業に、厳しい規制を加えるだけではなく、その優越的地位を乱用して「最先端技術を渡せ」などという無理難題を吹っ掛ける。 
 たまりかねた米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。 
 それでも彼らが儲かっているうちはまだいいが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になる。 
 そもそも、中国のWTO加盟交渉は、極めて特殊であった。 
 実は、第2次世界大戦の戦勝国である民主主義中国(中華民国、台湾)が、WTOの前身であった関税貿易一般協定(GATT)の原締約国であった。しかし、1949年の共産主義中国の建国とともに中華民国が中国大陸から追放され台湾に移ったことから、1950年にGATTからの脱退を通告している。 
 共産主義中国は、「台湾の1950年の脱退は無効である」との立場をとり続けていたが、1986年、「GATT締約国としての地位の回復」を申請した。 
 その後、1989年の天安門事件の影響などにより、加盟交渉は難航し、結局GATTには参加できなかった。 
 やっと、2001年に、中東・カタールのドーハで開かれたWTO(GATTの流れを継承)第4回閣僚会議において中国の加盟が認められることになったのだから、15年間も交渉したことになる。 
 この交渉では、「いつかは共産主義中国も民主主義国家になる」という甘い期待を持っていた米国の後押しも受けた。 
 だが、その後の中国共産党の後押しを受けた国営企業などによる不公正貿易の拡大や、知財だけでなく大量の軍事機密を盗み取る行為に米国民の堪忍袋の尾が切れたことを敏感に察知して、誕生したのがトランプ政権である。 
 米国の識者たちの多くは、共産主義中国に対して「恩をあだで返された」と感じているであろう。
米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。
まさに、 中国に拠点を置く、米国企業や、他国企業もそれでも彼らが儲かっているうちはまだ良いのですが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になります。まさに、新型肺炎でそのような状況になりつつあるのです。

しかも、中国の感染症は、これも社会構造に根ざしたものであり、中国が社会構造変革をしなければ、改善されることはありません。

そうして、これらの企業は、中國の感染症によって、サプライチェーン等が不安定になることを嫌い、中国の拠点を自国に戻すか、中国以外に拠点を移すでしょう。

そうして、この動きは、当初は混乱もあり、世界経済に悪い影響を与えるかもしれませんが、長期的には世界経済に良い影響を与えることになるでしょう。

バーナンキ氏

現在の世界経済は、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したように、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えてしまいました。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

中国は、自国内だけではなく、一帯一路構想などで、海外でも過剰生産を繰り返しています。結局、中国の企業は国営、国有、民間企業でも政府の厳しい管理下にあり、管理下にあるということは、よほどのことがない限り、倒産することはなく、先進国なら、とうに倒産しているような会社がゾンビ企業となりさらに、過剰生産を繰り返すということになるのです。

この過剰生産が、供給過剰、貯蓄過剰を生み出し、それが先進国では高インフレや高金利が生じなくなった原因です。このような状態になった直後には多くの先進国が、デフレに悩まされましたが、ここ数年では各国がこの状況に気づき、大規模な積極財政や金融緩和に踏み切るようになりました。

そのことにまだ気づいていないのは世界では、日本くらいなものになりました。そのため、日本の財務省は、デフレから抜けきっていないのに、増税をするとか、日銀も物価目標すら達成もしていないのに、イールドカーブコントローなどの抑制的な金融政策を採用する有様です。

いずれにしても、このような中国から各国が拠点を移し、中国国内で減産モードに入ると世界はどうなるかといえば、過剰生産とそれにともなう貯蓄過剰はなくなるわけです。

米国はこのようなことを企図して対中国冷戦で実行しようとしていたのですが、ここにきて中国の新型肺炎問題が起こり、これが加速されることになると考えられます。

これを見越したからこそ、米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」と発言したのてしょう。これは、無論米国だけのことではなく、日本も含めた先進国もそのようなことになるでしょう。

そうして、何よりも世界経済にとって良いことは、世界の国々が過剰生産に悩まされることがなくなることです。無論、中国以外の新興国は、これからも過剰生産を継続するでしょうが、規模的には中国のそれよりもはるかに小さく、世界経済に大きな影響を及ぼすことはないでしょう。

以前もこのブログで述べたように、中国としては、貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、もっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。

中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を根本的に変えなければできないことです。

中国が社会構造改革を本気で進めれば、また拠点を中国に戻す企業も出てくるかもしれません。しかし、それにはかなり長い時間を要することでしょう。

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2019年9月25日水曜日

中国、崩壊への警戒感高まる…共産党独裁体制が“寿命”、米国を敵に回し経済停滞が鮮明―【私の論表】中国崩壊で、世界経済は良くなる可能性のほうが高い(゚д゚)!

中国、崩壊への警戒感高まる…共産党独裁体制が“寿命”、米国を敵に回し経済停滞が鮮明
文=相馬勝/ジャーナリスト

中国の習近平主席

 中国は10月1日、建国70周年記念日を迎え、大規模な軍事パレードが北京市の天安門広場を中心に行われ、習近平国家主席は中国の共産革命の偉大さを高らかに世界に宣言することになるのだが、実は、そのような中国共産党の一党独裁体制はここ数年のうちに大きな危機にさらされるとの見方が急浮上している。

 しかも、このような不気味な予言は、中国問題の国際的な権威であり碩学である米クレアモント・マッケナ大学ケック国際戦略研究所センター所長(教授)のミンシン・ペイ氏と、米ハーバード大学名誉教授のエズラ・ボーゲル氏の2人が提起している。両氏とも、その最大の原因として、習氏の独断的な政策運営や独裁体制構築、さらに米中貿易戦争などによる中国経済の疲弊を挙げている。

一党独裁時代の終焉

 ペイ教授は「中国共産党の一党独裁統治は終わりの始まりにさしかっている」と題する論文を香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに寄稿。そのなかでペイ教授は、習氏が2012年の党総書記就任当初、「次の2つの100年」を目標に中国の国力を拡大し世界一の大国を目指すと宣言したが、1つ目の中国共産党創設100周年の2021年は極めて厳しい環境のなかで祝賀行事を行うことになると予言。その理由として、米中貿易戦争が激しさを増すことを根拠としている。

 そのうえで、ペイ教授は「2つ目の100年」である2049年の中国建国100周年には「(中国共産党による)一党独裁政権は生き残ることができないかもしれない」と大胆な予言を明らかにしている。

 ペイ教授は歴史的にもみても、一党独裁体制は「寿命に近づいている」と指摘。具体的な例として、74年にわたるソビエト連邦(1917~91年)の崩壊、73年にわたる中国国民党(27~49年の中国大陸での統治と49~2000年までの台湾での一党独裁体制)の統治が終わりを告げていること。さらに、メキシコの71年におよぶ革命政権(1929~2000年)である制度的革命党の一党独裁時代の終焉を挙げて、70年を迎える中国の一党独裁体制はすでに崩壊の兆しが見えていると分析する。

 ペイ教授は習指導部が米国を敵に回して、経済、軍事、安全保障、政治体制などの面で争っていることを問題視している。毛沢東時代の中国は米国を敵対視したものの、極力接触することを避け、直接的にやり合うことはほとんどなかった。その後のトウ小平時代において、中国は「才能を隠して、内に力を蓄える」という韜光養晦(とうこうようかい) 政策を堅持して、外交・安保政策では米国を敵対視することを極力回避した。

 しかし、習氏はこれら2人の偉大なる先人とは違って、牙をむき出しにして、米政権と争う姿勢を露わにした。これによって、中国経済はいまや成長も低迷しつつあり、習氏の独裁的な政治体制もあって、民心も離れつつあるようだ。

民間企業の成長を阻害

 一方、ボーゲル教授は近著『リバランス』(聞き手:加藤嘉一、ダイヤモンド社刊)のなかで、習氏について「予想外の事態といえば、習近平の政策がここまで保守的で、社会全体をこれほど緊張させていることもそうだ」と指摘しているほどだ。そのうえで、「昨今の中国を襲う最大の問題」として、経済悪化と自由の制限を挙げる。まず、前者については「中国の既存の発展モデルは持続可能ではない」と断言している。

 ペイ教授も同様の指摘をしている。これまでの驚異的な中国の経済成長は、若くて安い労働力が豊富にあったことや、農村部の急速な都市化による広範なインフラ整備、大規模な市場原理の導入や経済の国際化などが要因として挙げられるが、いまやこれらは減退しており、いずれ消滅すると分析している。

 さらに、両氏ともに、今後も中国経済が発展するには、民間企業の成長が不可欠だが、習政権は逆に、国有企業の肥大化、権限集中に力を入れ、民間企業の活性化を妨げていると強調。これに加えて、米中貿易戦争の影響が、ボディブローのように徐々に大きなダメージを与えることになる。

 ところで、ボーゲル教授が掲げる2つ目の問題点である自由の制限には、知識人を中心に多くの人が不満を抱えているほか、習氏の独裁的な体制についても、「仮に、習近平がこれから数年内に政治的局面を緩和させられなければ、中国が“崩壊”する可能性も否定できなくなるだろう」と結論づけている。

 このような折も折、中国共産党の理論誌「求是」が最新号で、習氏が5年前に行った指導者層の任期制度を重視する演説を掲載。習指導部は昨年の憲法改正で、習氏の長期独裁政権に道を開いているだけに、まさにボーゲル教授が懸念するように、指導部内で習氏批判が高まっており、「中国が“崩壊”する可能性が否定できなく」なっていることを示しているようだ。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

【私の論評】中国崩壊で世界経済は良くなる(゚д゚)!

冒頭の記事では、中国問題の国際的な権威であり碩学である米クレアモント・マッケナ大学ケック国際戦略研究所センター所長(教授)のミンシン・ペイ氏と、米ハーバード大学名誉教授のエズラ・ボーゲル氏の2人が提起した中国共産党の一党独裁体制はここ数年のうちに大きな危機にさらされるとの見方を解決していますが、以下に彼の書籍や、著作物などからさらに詳細に二人の見方を掲載します。

米ソ冷戦と比較しながらの新冷戦の行方(ミンシン・ペイ)

ミンシン・ペイ氏

米ソ冷戦初期のころ、ソ連がやがて米国を追い越すことになると考えられていました。共産主義が欧州に浸透し、ソ連経済は今の中国のように年6%近い成長でした。ブレジネフ時代には550万人の通常兵力を持ち、核戦力で米国を追い抜き、ソ連から東欧向けの援助が3倍に増えました。
ところが、おごるソ連システムに腐食が進みました。一党独裁体制の秘密主義と権力闘争、経済統計の水増しなど現在の中国とよく似た体質です。やがてソ連崩壊への道に転げ落ちていきました。

ソ連共産党が91年に崩壊したとき、もっとも衝撃を受けたのが中国共産党でした。彼らはただちにソ連崩壊の理由を調べ、原因の多くをゴルバチョフ大統領の責任とみました。しかし、ペイ教授によれば、党指導部はそれだけでは不安が払拭できず、3つの重要な教訓を導き出しました。

中国はまず、ソ連が失敗した経済の弱点を洗い出し、経済力の強化を目標としました。中国共産党は過去の経済成長策によって、一人当たりの名目国内総生産(GDP)を91年の333ドルから2017年には7329ドルに急上昇させ「経済の奇跡」を成し遂げました。

他方で中国は、国有企業に手をつけず、債務水準が重圧となり、急速な高齢化が進んで先行きの不安が大きくなりました。これにトランプ政権との貿易戦争が重なって、成長の鈍化は避けられなくなりました。しかも、米国との軍拡競争に耐えるだけの持続可能な成長モデルに欠く、とペイ教授はいいます。

第2に、ソ連は高コストの紛争に巻き込まれ、軍事費の重圧に苦しみました。中国もまた、先軍主義の常として軍事費の伸びが成長率を上回っています。25年に米国の国防費を抜き、30年代にはGDPで米国を抜くとの予測まであります。ところが、軍備は増強されても、経済の体力が続いていません。新冷戦に突入すると、ソ連と同じ壊滅的な経済破綻に陥る可能性が否定できないのです。

第3に、ソ連は外国政権に資金と資源を過度に投入して経済運営に失敗しています。中国も弱小国を取り込むために、多額の資金をばらまいています。ソ連が東欧諸国の債務を抱え込んだように、習近平政権は巨大経済圏構想「一帯一路」拡大のために不良債権をため込んでいます

確かに、スリランカのハンバントタ港のように、戦略的な要衝を借金のカタとして分捕りましたが、同時に焦げ付き債務も背負うことになりました。これが増えれば、不良債権に苦しんだソ連と同じ道に踏み込みかねないです。

かくて、ペイ教授は「米中冷戦がはじまったばかりだが、中国はすでに敗北の軌道に乗っている」と断定しています。
中国は民主化に進むのか? (エズラ・ボーゲル)

エズラ・ボーゲル氏

中国は数年後には、中国には今より政治的に緩和された体制、具体的に言えば、上からの抑圧があまりにも厳しい現状よりは、いくらか多くの自由が許される体制になっているのではないでしょうか。

中国共産党が、米国人が納得するほどの自由を人々や社会に提供することはないでしょうか、それでも数年以内に少しばかりは緩和されるでしょう。私はこう考える根拠の一つを、歴史的な法則に見出しています。

1949年に新中国が建国されて今年(2019年)で70年になりますが、この間、中国の政治は緩和と緊張を繰り返してきました。昨今の状況はあからさまに緊張しすぎていて、上からの引き締めが極端なほどに強化されています。

歴史的な法則からすれば、これから発生し得るのは緩和の動きだと推測できます。中国問題を思考し議論する際は、歴史の法則を無視することがあってはならないです。

中国も、司法の独立や宗教、言論、結社、出版などにおいて一定の自由を享受し、形式的だとしても選挙を実施しているシンガポールのようなモデルや、制度と価値観として自由民主主義を築いている台湾のようなモデルを試しつつ、一部の養分を吸収するかもしれないです。

シンガポールも台湾も、同じように華人が統治しているのです。どうして中国に限って不可能だと言えるでしょうか。彼らの間には、文化的に共通する部分が少なくないです。もちろん、中国はより大きく、国内事情は複雑で、解決しなければならない課題も多いです。ただ不可能ではないはずです。

私は少し前に台湾、北京、中国の東北地方を訪れたのだが、やはり台湾の政治体制のバランスは良いと感じました。そこには中国の文化が根づいている一方で、人々は自由と安定した社会を享受できているからです。

昨今の香港は、北京による抑圧的な政策もあり、緊張しすぎています。北京の中央政府の対応に問題があると思います。習近平がみずからの意思と決定に依拠して、全体的な局面を少しでも緩和できるかどうか、私にはわからないです。

以前と比べて楽観視できなくなった、というのが正直なところです。ただここで強調したいのは、中国の歴史の法則に立ち返って考えたとき、不可能ではない、という点です。習近平が政治状況を緩和させ、政治社会や経済社会に対してより多くの自由を供給する可能性はあります。

習近平が国家主席に就任した2013年の頃、私は彼に改革を推し進める決意と用意があり、「反腐敗闘争」に関しても、まずは権力基盤を固め、そのうえで改革をダイナミックに推し進めるという手順を取るのだと推察していました。

習は「紅二代(毛沢東と革命に参加した党幹部の子弟)」とはいえ、江沢民や胡錦濤とは違い、トウ小平によって選抜されたわけではありません。そうした背景から、権力基盤を固めるのに一定の時間を要することはやむを得ず、自然の流れと見ていました。ただ現況を俯瞰してみると、当時の推察とはかなり異なるようです。

習近平は憲法改正を通じて、国家主席の任期を撤廃してしまいました。これは近代的な政治制度に背反する行為です。習近平も人間であるから、いつの日か何らかの形で最高指導者の地位から退くことになりますが、誰が彼の後を継ぐのでしょうか。習近平が長くやればやるほど、後継者問題は複雑かつ深刻になるでしょう。

私には、習近平が誰を後継者として考えているのかはわからないし、現段階でその人物を予測するという角度から中国政治を研究してもいません。

ただ、仮に習近平が二期10年以上やるとしたら、相当な反発が出ることは容易に想像できます。三期15年あるいはもっと長くやることで、逆にみずからの権力基盤が弱体化し、結果的に共産党の統治や求心力が失われるのであれば、習近平は二期10年で退き、福建省、浙江省、上海市から連れてきた“自分の人間”を後継者に据えることで「傀儡政権」を敷く選択をするかもしれないです。

いずれにせよ、習近平は後継者に自分が連れてきた人物を指名すべく動くでしょう。

一方で、習近平が頭脳明晰で、能力のある人間ならば、トップ交代に伴って混乱が生じるリスクに気づいていた場合、彼は二期目(2017~2022年)の任期中に政治状況を緩和させるでしょう。

もちろん、私には習近平が心のなかで実際に何を考えているのかはわかりません。薄熙来(1949~)事件(注:重慶市共産党委員会書記だった薄のスキャンダルや汚職疑惑などが噴出し失脚した事件)や多くの軍隊内部の案件を含め、かなり多くの役人や軍人が捕まってしまいました。このような状況下だからこそ、習近平は、事態を緩和させられないのかもしれないです。

習近平みずからだけでなく、能力のある同僚に頼りながら、全体的な政治環境を緩和させられるのかも、一つの注目点です。習近平に、果たしてそれができるかどうか。いずれにせよ、私がこのような点から、現状や先行きを懸念しているのは間違いないです。

仮に、習近平がこれから数年内に政治的局面を緩和させられなければ、中国が“崩壊”する可能性も否定できなくなります。

現在の中国の体制が崩壊すればどうなるか

中国の崩壊、あるいは中国共産党の崩壊に関して悲観的な予想をする人が多いです。私は、そうは思いません。現在の中国が崩壊すれば、世界経済は今よりは良くなると考えています。

その根拠となるのは、なんと言っても中国の過剰生産です。中国は国内でも過剰生産をしていますが、海外でも過剰生産を繰り返しています。それが、世界に及ぼす悪影響は計り知れません。

これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!

野口旭氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より、野口旭氏の世界が反緊縮を必要とする理由について述べた部分を以下に一部引用します。
一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。
上の文書から中国に関する部分を抜書します。

『1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである』

中国の過剰生産は、国営・国有企業などによってもたらされています。これらの企業は、普通の国であれば、過剰生産でとうに倒産したような企業がほとんどです。しかし、国が強く関与しているため、倒産しません。倒産せずに、さらに過剰生産を継続するのです。

最近の中国は国内だけではなく、「一帯一路」などの名目で海外でも、過剰生産を繰り返す有様です。中国が崩壊しない限り、この過剰生産はなくなることはなく、多くの国々をデフレで苦しめることになるだけです。

中国の体制が変わり、国営・国有企業がなくなり、全部民間企業になれば、過剰生産すれば、倒産するだけなので、中国の過剰生産がなくなります。

現在では、旧共産圏や発展途上国(後進国)の大部分が供給過剰の原因になっていますが、その中でも最大の元凶は共産主義中国です。

WTOなどの自由貿易の恩恵を最大限に受けながら、自国内では、外国企業に対する恫喝を繰りかえす「ルール無用の悪党」が世界の市場から退場し、ルールを遵守するようになれば、世界の供給過剰=デフレは一気に好転し、日本や米国の経済は繁栄することになるでしょう。

無論一時的な混乱は避けられないかもしれませんが、長期的にみれば、このように考えられます。

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2018年8月18日土曜日

【日本の解き方】トルコリラ暴落の政治的背景 トランプ大統領流の揺さぶり…過小評価できない世界経済への打撃―【私の論評】世界にとって通貨危機よりもはるかに危険なトルコ危機の本質(゚д゚)!

【日本の解き方】トルコリラ暴落の政治的背景 トランプ大統領流の揺さぶり…過小評価できない世界経済への打撃

トルコ エルドアン大統領

 トルコの通貨リラが暴落したことで、一時、ユーロが売られたり株式市場が急落したりする場面があった。

 トルコは経済協力開発機構(OECD)加盟国であるが、インフレ率はその中でも一番高い。ここ10年間で、トルコの平均消費者物価上昇率は8・4%であり、OECD平均の1・8%を大きく上回っている。ちなみに、トルコはインフレ目標を採用しているが、その目標水準は5プラスマイナス2%としており、インフレ率は常時上限を超えている状態だ。

 これは、インフレ目標を上回るくらいの金融緩和をしているわけで、マネー増加率も常に2桁とOECDの中でも高い伸びになっている。このため、トルコリラは継続的に割安状態だ。

 長期的な為替は、ソロスチャートを持ちだすまでもなく、国際金融の基本理論から、2国間の通貨量の比率でだいたい決まる。これをトルコリラと米ドルで当てはめてみると、2007~16年では、通貨量の比率とリラ・ドル相場の相関係数は96%とほぼ予想された動きとなっている。

 しかし、17年に入ると、この理論で予想された為替動向とは乖離(かいり)するようになった。16年7月のトルコ国内でのクーデター未遂事件が関係しているようだ。

 この乖離はここ数カ月ではさらに大きくなっている。一時、1ドル=7リラ程度となっており、これは理論値の2倍以上のリラ安である。理論値とかけ離れている理由は政治的なものであろう。

 まず、インフレ率が目標以上に高いにもかかわらず金融引き締めを行わないことが主因であるが、それを中央銀行ではなく、エルドアン大統領が指導している。しかも、これは、中銀が「手段」の独立性を持つという先進国のスタイルとは異なり、この意味で政治的な問題だ。

 もっとも、この政治スタイルは今に始まったことではないので、これだけであれば、理論通りにリラ安になるだけだろう。しかし、今や米国とトルコは政治的な対立をしており、それがリラ安に拍車をかけている。

 トルコは、2年前のクーデター事件に関係したとする米国人牧師を拘束している。それに対して、米国はトルコ閣僚の資産凍結を決めた。さらに、リラ安に伴い、トルコから輸入する鉄鋼などの関税を引き上げることも表明した。

 米国の対トルコ投資・与信はそれほど多くない。欧州の対トルコのほうがはるかに大きいので、米国はリラ安の影響を受けにくく、トルコ問題は欧州への打撃が大きいのが実情だ。この意味では、新興国とはいえ世界経済への影響を過小に評価することはできないだろう。

 トルコは北大西洋条約機構(NATO)国でもあり、米軍はトルコ国内のインジルリク空軍基地を使用している。安全保障体制そのものではなく米国人牧師の解放というトランプ流の政治的な揺さぶりであるが、仕掛けられたトルコは思わぬ苦境になっている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】世界にとって通貨危機よりもはるかに危険なトルコ危機の本質(゚д゚)!

米連邦準備理事会(FRB)が基軸通貨でもあドル引き締めを継続している以上、遅かれ早かれ「新興国市場からの資本流出」自体は起こるべくして起こることだったということで、たまたま直近の要因でトルコが一番先だったといえるかもしれません。

そうして、「あとはきっかけ待ち」という状況にあったところ、今回のトルコリラ・ショックが起きたということでしょう。これを機に新興国市場からの資金流出が続く展開になると考えられます。

もともとトルコリラ安の底流には、ブログ冒頭の高橋洋一の記事にもあるように、中央銀行への政策介入をするエルドアン大統領の経済政策という内政要因がありましたが、対米関係の悪化という外交要因もありました。

とりわけクーデター容疑でトルコ当局に拘束されている米国人牧師を巡って問題がこじれた結果、「鉄鋼・アルミニウムに係る追加関税率を倍に引き上げる」という米政府の決定につながり、これによりトルコにも追加関税をかけることになり、トルコリラ急落のトリガーを引くに至っています。

トルコ・イズミルで、私服警官らによって自宅へと移送された
米国人牧師、アンドルー・ブランソン氏(2018年7月25日)

こうした状況下、トルコが現状を打開するために必要な選択肢は、1)緊急利上げに踏み切る、2)米国人牧師を解放する、3)資本規制の強化、4)国際金融(IMF)支援の要請です。

もっとも、「利下げをすればインフレ状況も落ち着く」という奇異な主張の持ち主であるエルドアン大統領は8月12日の演説で、1番目の選択肢については「自分が生きている限り、金利のわなには落ちない」と一蹴しており、その上で2番目にも応じない姿勢を明確にしています。

また、4番目の選択肢についても「政治的主権を放棄しろというのか」と述べ、これも退けたというか、元々IMFは米国が単独拒否権を保有しており、米国の合意なしでは利用できません。

今のところトルコは、3番目の選択肢を取っています。8月13日早朝、トルコ銀行調整監視機構は、国内銀行による海外投資家とのスワップ、スポット、フォワード取引を銀行資本の50%以内に制限すると発表し、投機的なリラ売りの抑制に踏み出しています。

しかし、投機のリラ売りを抑制しても同国が経常赤字国であるという事実は変わらないので実需のリラ売りは残ります。資本規制を強化するほど、トルコへの投資は敬遠されるはずですし、経常赤字のファイナンスは難しくなります。新興国が危機に陥る際の典型的な構図が見て取れます。

そのほか、8月に入って以降は、中銀が設定する各種準備率を調節することで市中への流動性供給を増やすという措置も取っています。それらの措置が市場の緊張緩和に寄与するには違いないでしょうが、利上げによる通貨防衛を期待する市場参加者にとって迂遠(うえん)な一手と言わざるを得ないでしょう。言い換えれると、政策金利の調整を決断できない「中銀の独立性の無さ」を逆に誇張しているようにすら見えてしまいます。

トルコ・ショックはどれほどの震度を持つと考えるべきなのでしょうか。トルコの国内銀行が外国銀行に対して持つ対外債務の約6割がスペイン・フランス・イタリアによって占められていることから、市場が「トルコ発、スペイン・フランス・イタリア経由、ユーロ圏行き」といった危機の波及経路を心配することも一理あります。

とはいえ、トルコにとって欧州が重要な債権者であるからと言って、欧州にとってトルコが同じくらい重要な債務者であるとは限らないです。例えば、国際与信残高(国外向けの与信残高)を見ると、スペインは約1.8兆ドル、フランスは約3.8兆ドル、イタリアは0.9兆ドルです。ちなみに、ドイツは約2兆ドルです。

ここで、それらユーロ圏4大国の国際与信残高合計に占めるトルコ向け与信残高の割合を計算してみると、2%にも満たないことが分かります。国別に見てもスペインの4.5%が最大であり、トルコ・ショックがそのまま欧州金融システムを揺るがすような話になるとは考えにくいです。

それでは、全く問題がないのかといえば、そうではありません。というのも、欧州連合(EU)はトルコに対して大きな借りがあるからです。2015年に勃発し「債務危機を超える危機」とも言われる欧州難民危機は今も根本的な解決には至っておらず、正確には解決のめどすら立っていません。しかし、その一方で大きな混乱も招いていません。

シリア難民のEUへのルートは主に3つだが、そのうち2つはトルコを経由している

これはなぜなのかといえば、ひとえにEUとの合意に従ってトルコが難民をせき止めているからです。EUに流入する難民の多くは内戦激化により祖国を飛び出したシリア人であり、トルコ経由でギリシャにこぎ着けてEUに入るというバルカン半島を経るルートを利用していました。そのため、EUとしては何とか経由地であるトルコの協力を得て流入をせき止める必要がありました。

2016年3月18日、ドイツが主導する格好でトルコとの間で成立した「EU・トルコ合意」は非常にラフに言えば、「カネをやるから難民を引き取ってくれ」という趣旨の危うい合意ですが、効果はてきめんでした。少なくとも、その合意がEU(とりわけドイツ)に余裕を与えているのは紛れもない事実です。

なぜこのような条件をトルコがのんだかといえば、日本では意外に知られていないのですが、トルコはEU加盟候補国でもあるからです。


これは裏を返せば、難民危機はトルコひいてはエルドアン政権次第ということです。ここに至るまでの大統領の言動を見る限り、今後、意図的に難民管理をずさんなものにするリスクはないとは言えないでしょう。

いや、故意ではなくともトルコの政治・経済自体が混乱を極めれば難民を管理しきれないという過失も考えられます。どちらにせよトルコがいつまでも欧州のために難民をせき止めてくれる保証はないのです。

率直に言って、EU域内に難民流入が再開するのは非常にまずいことです。そうなった場合、難民流入に不平不満を抱えるイタリアのポピュリスト政権が勢いづくことになるでしょう。ただでさえ、それを切り札として欧州委員会と交渉する雰囲気があるのですから、事態はより複雑になるはずです。

また、10月にバイエルン州選挙を控えるメルケル独政権も難渋することでしょう。難民受け入れのあり方を巡って長年の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)がメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と仲たがいを起こしたことが6月に話題になったばかりです。ここで状況が悪化したら余計に両者の溝が埋め難くなることでしょう。

さらに2019年5月には欧州議会選挙もあります。EU懐疑的な会派をこれ以上躍進させないためにも難民を巡る状況はやはり悪化させるわけにはいかないでしょう。

金融市場ではトルコの国内金融システム混乱がユーロ圏に波及する経路が不安視されていますが、現実的にはエルドアン政権が欧州難民危機ひいてはEU政治安定の生殺与奪を握っている事実の方がより大きな脅威であるようです。

こちらのほうが本質であり、難民危機が再びユーロ圏内を襲えば、そちらのほうがはるかに世界経済に悪影響を及ぼすことになりそうです。

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2018年7月13日金曜日

コラム:貿易戦争でも世界経済が失速しない「3つの理由」=村上尚己氏―【私の論評】米国から勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがない中国(゚д゚)!

コラム:貿易戦争でも世界経済が失速しない「3つの理由」=村上尚己氏
村上尚己 アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト

習近平(左)とトランプ大統領(右) 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

6月19日付の前回コラムで「市場心理はやや楽観方向に傾斜気味」と筆者は指摘したが、その後、中国などに対するトランプ米政権の関税引き上げ政策をきっかけに、世界経済の風向きが変わるとの懸念が高まっている。

政治・経済情勢への不確実性の高まりは、リスク資産の上値を抑え、米国債などへの投資を強める一因になっていると言えよう。実際、6月半ば以降、米国の長期金利は3%付近で頭打ちとなり、緩やかながらも低下。米国株市場も他国に比べれば底堅いとはいえ軟調に推移しており、ほぼ年初の水準にとどまっている。

確かに、米国などによる関税引き上げや投資制限措置は、グローバルで事業を展開する多くの企業の活動を抑制するため、個々のビジネスには大きな影響を与える可能性がある。一方で、保護主義的な通商政策の応酬が米国を中心に経済全体にどの程度ネガティブな影響をもたらすかについて見方はさまざまである。

率直に言って、トランプ政権がここまで強硬な関税引き上げ政策をとることは筆者にとって予想外であり、数カ月にわたり市場心理を圧迫する展開については、もっと慎重に見積もっておくべきだったことは認める。

7月10日には、追加で2000億ドル規模の中国からの輸入に関する関税リストが発表された。米国政府の強硬な姿勢に変化が現われるまでには、まだ時間を要するため、リスク資産は上下にぶれやすい状況が続く可能性がある。足元までの景気指標はサーベイ指標を含めて総じて堅調だが、関税引き上げへの備えで事業計画が滞るなど、製造業などのマインドが悪化するリスクもある。

<負のインパクトを相殺する要因>

経済指標の下ぶれは、当社にとってあくまでリスクシナリオだが、「貿易戦争」によって世界経済がソフトパッチ(景気の一時的足踏み)にとどまらず、米国を含めて景気後退に至るとの懸念が金融市場でさらに高まる可能性はある。

株式市場が調整した2016年前半にも米国経済の後退懸念が高まった局面があったが、今回も同様の市場心理の悪化があるかもしれない。

もっとも、現在想定されているように中国などへの関税引き上げの対象が広がり、世界経済の後退懸念が高まっても、米国経済の状況を踏まえると、実際には世界経済全体が景気失速に至るほどのショックは起きないと筆者は考えている。以下、3つの理由をあげる。

第1に、米国では減税政策などによる景気押し上げ効果が、関税引き上げによるネガティブインパクトをかなり相殺することが見込まれる。米議会予算局(CBO)の試算によれば、家計に対する減税政策だけで2019年までの2年間に年平均800億ドル、国内総生産(GDP)比0.5%相当の所得押し上げ効果がある。

すでにリストが発表された対中輸入2000億ドル規模まで関税引き上げが広がった場合は、累積的な関税負担は約435億ドルである。もちろん、これら以外にも、関税引き上げが製造業の活動を停滞させ、それが景気を押し下げる負の影響もある。ただ、米国経済全体でみれば、減税効果で家計部門の総需要が増え続けるため、潜在成長率を上回る経済成長が続く可能性が高い。

第2の理由は、政策金利サイクルと景気循環の経験則である。6月の米連邦準備理事会(FRB)による利上げで、政策金利がほぼ2%まで上昇したが、シンプルにインフレ率を控除した実質政策金利はほぼゼロだ。景気が後退局面に入る前には、多くの場合、実質政策金利が3%以上まで上昇、金融環境が景気抑制的に作用し、景気後退が訪れるのが経験則だ。

また、米国以外の中央銀行の金融政策が総じて緩和的な中で、長期金利は今年緩やかな上昇が続いているとはいえ低水準のままだ。金利サイクルと景気循環の観点からは、景気後退に至るにはまだ時間を要し、緩やかな利上げが続いても金融緩和的な状況はあまり変わらない。

<米景気後退の典型的パターンに合致せず>

第3の理由は、米国の景気後退をもたらす典型的なパターンと現状が合致していないことだ。米国が景気後退入りする前には、経済活動に何らかのブームや行き過ぎがあり、それが崩れることで需要縮小ショックが起きることが多い。

ところが、今の米国経済は失業率の低下こそ下限に近づいている可能性があるものの、景気後退をもたらすようなブームが起きている兆候はあまりみられない。例えば、米国の景気後退を招く典型的なケースは、住宅や自動車の総需要が増えて、金利上昇などでそれが大きく調整することだが、そこまでの総需要増が起きていることは確認できない。

住宅投資のGDP比率について、1940年代後半からの長期推移をみると、平均は4.6%。多くの場合、景気後退が発生する前には、この水準を超える住宅市場の盛り上がりが起きていたが、2018年初でこの比率は3.9%と、平均からかなり低い数値にとどまっている。2000年代半ばの住宅ブームの崩壊の余波がとても大きかったわけだが、住宅市場の回復は依然かなり遅れているように思われる。

同様のことは、自動車関連消費のGDP比率についても言える。家計の住宅・耐久財消費の状況から判断すれば、米国の景気後退入りはまだ遠いとみられる。

金融市場の値動きが、米国など各国の政治動向に起因する市場心理の揺らぎに支配される神経質な状況は、もう少し続くかもしれない。ただ、それがリスク資産の投資機会をもたらす可能性も十分あるのではないだろうか。

【私の論評】米国から勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがない中国(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事中の、「貿易戦争により、米国経済が落ち込み、世界経済全体が景気失速に至るほどのショックは起きないことの理由」を以下に再度まとめて簡単に掲載します。
第1に、米国では減税政策などによる景気押し上げ効果が、関税引き上げによるネガティブインパクトをかなり相殺することが見込まれる。 
第2の理由は、政策金利サイクルと景気循環の経験則である。米国では景気が後退局面に入る前には、多くの場合、実質政策金利が3%以上まで上昇、金融環境が景気抑制的に作用し、景気後退が訪れるのが経験則である。 
第3の理由は、米国の景気後退をもたらす典型的なパターンと現状が合致していないことだ。米国が景気後退入りする前には、経済活動に何らかのブームや行き過ぎがあり、それが崩れることで需要縮小ショックが起きることが多い。
米国による、中国に対する貿易戦争がさほど米国経済に悪影響を及ぼさないことは、貿易依存度からもうかがえます。

貿易依存度とは、一国の国内総生産(GDP)または国民所得に対する輸出入額の比率(輸出依存度、輸入依存度)をいいます。一般にGDPの小さい国ほど、貿易依存度は大きいです。

これは、GDPが小さい国の場合、自国市場だけで全ての産業を自給自足的に成立させることは難しく、国外市場への輸出もしくは国外供給地からの輸入に頼らざるを得ないためです。戦後の世界貿易は世界経済の伸びを上回って拡大しており、世界的に貿易依存度は高まってきているといえます。

2016年の米国の貿易依存度は、19.66%です。そうしてこの数値は、貿易依存度はGDPに対する貿易額の比率です。貿易額は貿易輸出総額と輸入総額の合計値で国際収支ベース(FOB価格ベース・所有権移転ベース)です。貿易額にサービス輸出・輸入は含めていません。

これは、米国のGDPに対する輸出+輸入の比率です。この中で、対中国の輸出・輸入ということになるとさらに比率は小さくなります。輸出がGDPに占める割合は、数%にすぎません。米国は経済の大きな国ですから、内需大国ということです。だから、もともと貿易の依存度はかなり低いのです。その中でさらに中国への依存となると微々たるものでしかありません。

ただし、米国の企業で直接貿易にかかわる企業でさらに、中国にかなり依存している企業はかなりの打撃をうけることでしょう。それと、米国の国家全体ということでは別次元の問題です。

さらに、米国は中国から様々な物品を輸入していますが、これらの物品のほとんどが、中国からしか輸入できないというものではありません。であれば、自国で生産するより、他国から輸入したほうが安い場合、他国から輸入することになるでしょう。このように考えていくと、確かに貿易戦争による米国への影響はさほどでもないといえそうです。

テレビ報道では貿易戦争が世界経済に大きな影響を与えるとしているものも多いが?

しかし、中国にとってはそうではないでしょう。

トランプ政権は中国との貿易戦争に本気です。第1弾の制裁500億ドル相当に加え、6031品目、2000億ドルにも及ぶ今回の追加制裁により、中国からの輸入額(約5055億ドル)の約半分が対象となりました。トランプ大統領はほとんど全ての中国からの輸入品に関税をかける可能性もあるとしています

11日の上海市場や深セン市場の株価指数は軒並み急落、人民元も対ドルで下落しました。

世界貿易機関(WTO)は11日、中国を対象にした貿易政策審査報告書を発表。中国政府の経済活動への介入により市場は閉鎖的な状態にあるとしたうえで、知的財産権侵害について「知財保護関連の法律に大きな変更はなく、改善が不十分」との見解を示しました。

米国の第1弾制裁に対して中国が報復措置を打ち出したことについて、USTRのライトハイザー代表は、「正当化できない」と批判する声明を発表。さらに中国による知財権侵害は「米経済を危険にさらす」と強調しています。

ライトハイザー代表

ホワイトハウスが6月に公表した報告書では、「中国国家安全部の諜報部員が国外に4万人いる」とし、「企業の部内者や企業秘密にアクセスできる者による産業スパイ」が行われていると指摘しています。

これを裏付けるような事件が発覚した。米連邦捜査局(FBI)は、米大手アップルの自動運転車の開発に関連する情報を盗んだとして元社員の男をカリフォルニア州の裁判所に訴追しました。男は母親が中国在住とみられ、自動運転車開発の中国企業に転職予定でした。退職を申し出る直前、広範囲の企業秘密のデータベースを検索し、ダウンロードしていたことが判明。今月7日、中国に向かうところを米サンノゼ空港で逮捕されましたた。


中国は対米貿易黒字で稼ぐドルを原資にした金融の量的拡大によって、経済の高度成長を達成したばかりか、軍拡路線を推進し、沖縄県尖閣諸島奪取の機をうかがい、南シナ海の岩礁を占拠、埋め立てて軍事拠点にしました。

拡大する市場に日米欧企業を引き寄せ、先端技術提供を強制しました。周辺の弱小国に輸出攻勢をかけて貿易赤字を膨らませ、返済難になると、インフラを接収するという暴挙を繰り広げました。

そうして、何よりも中国は自由貿易の前提でもある、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を不十分なまま放置し、改善しようという気が全くありません。

このような中国が、米国から全く勝ち目のない貿易戦争を挑まれても、自業自得としかいいようがありません。身の丈知らずにも程があるといえます。

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2016年11月9日水曜日

トランプ氏、激勝! 米国は「分断の危機」、世界経済や安全保障にも衝撃―【私の論評】米保守派の今まで声にならなかった声が、大声となった(゚д゚)!


ウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事とトランプ氏(今月1日)
全世界が注目した米大統領選は8日(日本時間9日)開票され、不動産王である共和党のドナルド・トランプ氏(70)が、激戦区で連勝を続け、第45代大統領に就任することが確実となった。民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(69)は想定外の劣勢だった。「米国第一」を唱え、経済協定や同盟関係の見直しにも言及しているトランプ氏が勝利し、世界の経済や安全保障に超ド級の衝撃を与えそうだ。

 トランプ陣営は、ニューヨークのホテルで支持者集会を開催し、大歓声の中で「勝利の瞬間」を待ち構えていた。正面玄関付近でも数十人がポスターや横断幕を掲げて「トランプ! トランプ!」と連呼するなど、熱気に包まれていた。

 日本時間9日午後3時10分時点で、トランプ氏は選挙人(計538人)の過半数(270人)まで26人まで迫った。

 「史上最低と史上最悪の候補の争い」といわれた選挙戦を盛り上げたのは、トランプ氏の「隠れ支持者」の存在だ。

 過激な言動を繰り返すトランプ氏には、共和党支持者も「差別的思考の持ち主と思われたくない」と距離を置く傾向があり、世論調査では正確な支持がつかめず、共和党内にも亀裂を残した。

 だが、「オバマ政治が米国の衰退を招き、世界を大混乱させた」「クリントン氏は既成政治家の代表」と感じる無党派層を含む有権者の間で、トランプ氏は着実に支持を広げ、最終盤で逆転した。

 「隠れ支持者」は500万人どころではなかったようだ。

 クリントン氏は「米国初の女性大統領」を目指して当初、選挙戦を優位に進めたが、政治の刷新を求める声の高まりや、「私用メール問題」や「財団疑惑」「健康問題」などが響いて支持を落としていた。

 選挙戦で、白人中間層や非エリート層はクリントン氏を「ウォール街の手先」と批判し、女性やヒスパニック、エリート層はトランプ氏を「差別主義者」と攻撃した。背景にある「貧富の差」や「人種間の亀裂」…。激しい中傷合戦で、米国は傷つき「分断の危機」に直面している。

 劇薬の「トランプ大統領」の誕生で、世界に多大な影響を与える。日本も例外ではない。

 トランプ氏は選挙戦で、過激な保護主義政策を訴え、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)からの脱退を主張した。口癖が「ディール(取引)する」だけに、条件闘争との見方もあるが、公約実現に踏み出した場合、世界経済の混乱は避けられない。

 日米同盟についても、トランプ氏は「われわれには日本を防衛する財政的余裕はない」「日本は、在日米軍の駐留経費の全額負担をすべきだ」「応じなければ在日米軍の撤収を検討する」と発言していた。

 日本は在日米軍の駐留経費として、別枠の米軍再編関連予算などを除き、2016年度予算で約5818億円を計上している。トランプ氏は今後、金銭的な「負担増」と「役割増」を要求してくる可能性がある。

 日本の安全保障の基軸は「日米安保条約」である。日本単独では、中国や北朝鮮などの脅威に対抗できないからだ。今後、日本の政界では「トランプ政権とどう向き合っていくか」という議論が起こりそうだ。

 安倍晋三首相率いる自民党は「日米同盟」を堅持する方針とみられるが、蓮舫代表の民進党は、党綱領に「日米安保条約の廃棄」を掲げている共産党との選挙共闘を進めている。次期衆院選の焦点となるのか。

 ちなみに、トランプ氏は「アンチ・チャイナ(反中国)」的な言動も繰り返している。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「トランプ氏が勝てば短期的にはマーケットの混乱があるが、長期的にみれば米経済は回復するので日本経済にとってもプラスだろう。日本の外交・安全保障を立て直すチャンスだ」といい、続けた。

 「トランプ氏は『在日米軍の半減』を求めてくるのではないか。日米安保条約の改定や、日本の防衛費をGDP(国内総生産)比2%まで引き上げることも必要になるかもしれない。憲法9条を改正し、緊迫する東アジア情勢に対応できるよう自衛隊を再編すべきだ。安倍首相からトランプ氏に逆提案し、日米関係を次のステージに進めるべきではないか」

【私の論評】米保守派の今まで声にならなかった声が、大声となった(゚д゚)!

日本では、あまり注目されませんが、大統領選と同時に行われたもう一つ重要な選挙の結果を以下に掲載します。それは、連邦議会上院、下院の結果です。

その結果は、上のグラフをご覧頂いたとおり、上院でも下院でも共和党が勝利しました。ただし、上院ではぎりぎりで、過半数を獲得しています。

なぜ、これが重要かといえば、たとえ共和党のトランプ氏が大統領選挙に勝利したとしても、議会選挙で共和党が勝てなければ、就任初日からトランプ政権は「レームダック」政権になってしまう可能性があるからです。

仮にトランプ政権が実現したとしても、その行方を握るのは連邦議会選挙の勝敗だから
です。アメリカの大統領の立法権限は極めて限られています。大統領側の政党が議会で多数派を握ってなければ、野心的な法案は何も通ることはありません。

振り返れば、オバマ大統領の大型景気刺激策、医療保険改革法など目玉の立法成果は、すべて1期目の最初の2年間だけでした。なぜなら、その時期だけ民主党が上下両院で多数党だったからです。その後は、移民関連法案の事例のようにほとんど法案を通すことができず、オバマ政権はレームダック化しました。

今回の結果をみると、上院・下院ともに共和党が勝利しています。上院に関しては僅差ですので、圧倒的に有利ということはないですが、少なくともトランプ政権が最初からレームダック化することはなくなりました。

少し前置きが長くなりましたが、今回なぜ、トランプ氏が圧勝したのか、もうすでにいろいろと分析されています。細かな票読みなどは、元々私にはできないので、他のメディアをご覧いただくものとして、私としてはその背景について掲載しようと思います。

このブログは個人ブログでもあるため、アメリカ社会を直接分析することもできないので、私が知り得る範囲で、なぜこのような結果になったのかを掲載します。

ちなみに、このブログでは、他の日米のメディアがクリントン氏有利を喧伝していても、選挙戦序盤から直前まで一環して、トランプ氏が圧倒的に不利であり、クリントン氏が絶対優位などとは掲載しませんでした。最初から、最後までトランプ氏の勝利はあり得るものと確信していました。

では、なぜこのような確信を持てたかといえば、決して希望的観測ではありません。多くの人が未だ気づいていないアメリカ社会の特徴について私が知っていたからです。

これについては、前からこのブログを良く読まれている方はすでに知っていることと思います。なぜなら、過去に何度がそれについてこのブログに掲載しているからです。

それについて掲載した代表的な記事のリンクを以下に掲載します。
米大統領選「隠れトランプ支持者」がカギ?―【私の論評】トランプ氏台頭の背景には、米保守派の憤懣の鬱積がある(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に部分的に引用します。
アメリカのメディアはかなり偏りがあって、リベラル・左派が9割方を占めている状況です。残りの1割が保守系メディアなので、保守系の声などはかき消されてしまいます。

現実のアメリカは、本当にリベラル・左派と保守派に真っ二つに割れていて、おそらく比率は半々くらいなのでしょうが、マスコミ・学界などが、完璧にリベラル・保守に握られており、これによって形成される世論は、リベリラル・左派的な価値観が大勢を占めているということです。

誰でも、保守派の家に生まれば、最初は当然「保守的」な考えを持つのでしょうが、学校に入ったり、もっと上の学校に行けば、そこはリベラル・左派が大勢を占めています。さらに、社会人になれば、職場でも表向きはリベラル・左派な考えが大勢を占めています。場合によっては、リベラル・左派的な考えを否定すれば、職場で周りと馴染めないどころか、場合によって追い出されてしまいかねません。

このようなことが長い間続くとどのようなことがおこるでしょうか。テレビを見ても、新聞を読んでも、保守派の考えはマイナーな扱いです。保守的な考えを持つ人々には、当然のことながら憤懣が鬱積していきます。その憤懣をぶつける場所は残念ながら従来のアメリカにはありませんでした。 
ところが、その憤懣を受け止める、トランプ氏という大統領候補が出てきたのです、そうして、この大統領候補はうわべを飾ることなく、ずけずけとものを言いますし、兵役経験者ならわかるように、何かを語って説得する場合でも決して丁寧な言葉など使いません。どちらかというと、汚いくらいの言葉を使って、話相手にショツクを与えて、これからおこることは相手が予測もしないことであることを悟らせるというような方式をとります。 
実は、アメリカは変わりつつあるのです。その先駆けとなったのが、当初泡沫候補であるといわれたトランプ氏がここまでしぶとく大統領選を闘いぬいているという事実なのです。
 ブログ冒頭の記事では、米国は「分断の危機」としていますが、アメリカはもともと分断していたのです。ただし、アメリカのメディアのほとんどがリベラル・左派であり、保守の声などかき消され、あたかも分断していなように見えただけなのです。今回の大統領選挙により、それが大きくクローズアップされただけです。

このような、自分の考えをなかなか表明できず、アメリカの現状に不満をつのらせた多数の生粋の保守派と、それに生粋の保守派ではないもののアメリカの現状に業を煮やしているものの、これまた自分の考えをなかなか表明することのできなかった「隠れトランプ支持者」が 大勢存在したのでしょう。

そうして、この両者ははっきりと分かれているのではなく、重なる部分も多いのでしょう。危機感をつのらせた、米保守派はかなり熱心に選挙活動をして、多くの人々に働きかけたのでしょう。そうして、両者をあわせると実数として無視できないくらいの数になっていたのでしょう。これらが、トランプ氏を支持したのです。そうして、その多くは、アンケートなどでは、クリントン支持と答えておきながら、実際の投票ではトランプに入れたのでしょう。

だからこそ、CNNなどの世論調査では圧倒的にクリントン有利と言われていたものが、今回のトランプ氏の大勝利につながったのです。

このアメリカの現状に不満をつのらせた、アメリカの保守派の気持ちは間接的ながら、私も理解できたことがあります。

それは、Googleがオンラインで提供している、英語学習サイト"English Central"を視聴していたときでした。

Googleは、大統領候補としてはヒラリー・クリントン氏を支持していて、トランプ氏の台頭には危機感を抱いていました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米産業界、トランプ氏へ懸念の声 グーグルも対策議論?―【私の論評】日本にとって自腹で動くトランプが大統領になるより、中華マネーで動くヒラリーのほうがはるかに危険(゚д゚)!
トランプ氏
詳細は、このブログをご覧いただくものとして、Googleがトランプ氏台頭への懸念を抱いていた部分をこの記事より抜粋します。
米国の産業界に、米国の大統領選の共和党候補者の指名争いで首位を走る不動産王トランプ氏の言動を懸念する声が広がっている。貿易や移民など経済政策での極端な持論が、堅調な米国経済の足を引っ張りかねないと心配するからだ。

ハイテク企業の集積地シリコンバレーの経営者らは、「移民敵視」発言に敏感だ。移民の力が技術革新を促してきた歴史があり、それを否定する考えに反対する。米メディアによると、アップルやグーグルなどの経営トップが3月上旬に共和党系会議に出席し、党の主流派議員も加わって、「トランプ対策」をテーマに話し合ったという。
この記事からもおわかりのように、Googleの経営層の考え方は、生粋のリベラル・左派なのだと思います。

ただし、検索エンジンの運用や、インターネット広告の運用などに関しては、特に生粋のリベラル・左派の考えなどあまり関係はないと思います。だからこそ、私自身も検索エンジンはGoogleをもちいていますし、このブログもGoogleが提供しているレンタル・ブログサービスであるBloggerを用いています。その他にもGoogle+やドライブやその他のサービスもかなり利用しています。

これらのサービスを利用している限りにおいては、あまりストレスを感じたことはありません。

しかし、英語学習サイト"English Central"は違いました。ただし、このサイト自体は英語学習サイトとしてかなりの優れものです。これは、現在ではGoogleの傘下にある、YouTubeの動画を英語教材に用いています。

英語学習サイト"English Central"の画面
動画をみるだけではなく、サイトで単語を学習したり、自分の発音をサイトが判定したりします。動画を見終わると、それを教材として英語の先生とskypeでレッスンを受けられるようになっています。

英語学習サイトとしては、申し分のない素晴らしいものだと思います。ところが、ひとつだけストレスを感じたことがありました。それは、この学習サイトで提供される動画の内容でした。

これは、当然誰かが世界中からYouTubeに投稿された動画の中から選んでいるのでしょうが、その内容がはっきりとリベラル・左派的なものを数多く選んでいるよう感じました。

全部が全部そうだというわけではないのですが、たとえば世界中の戦場で休戦日をある一定頻度で、一日設けるという考えを持った若者が、実際にそれを各国に訴えて、ほんの一部ですが、実際に受けいられている地域もあり、そのことが動画で流れてきました。

確かに、休戦日一日を設けること自体は、それはそれで良いこととは思いますが、それだけで根本問題が解消されるわけではありません。そうして、その若者の話すシーンもでてくるのですが、それが何というのか非常に軽いのです。

後は、アジアの動画を流すにしても、韓国の内容が不自然に多かったり、中国のものも流れるのに、日本はあまりないとか・・・・・。

その他にも、アメリカのリベラル・左派と思しき人のライフスタイルなどが結構流れてきたりで、何というから見終わると脱力感を感じることもありました。ある日PUNKの人生観に関する動画が流れきました。

punk的な生き方をするのは個人の自由だが、punkの
人生観を英語教材にされてはたまったものではない
それでも、最初は英語を学習するために、このサイトを使っているのだから、結局英語ができるようになればそれで良いと思い。視聴を続けていました。しかし、ある日とうとう耐え切れなくなて、これにお金と時間を使うくらいなら他のものに使ったほうが良いということで、視聴しはじめてから、数ヶ月で視聴を中止しました。

なんというか、一言でいえば軽佻浮薄とでもいうような内容に辟易としました。無論、私がそう感じただけのことかもしれないですが・・・・・。

無論、なぜこのようなことになったかといえば、私自身がどちらかというと保守的な人間だからだと思います。リベラル・左派の人ならば、これを見ても何とも思わないのかもしれません。だから、長い期間にわたり視聴して、それなりに英語力もアップできるのでしょう。

動画を選択している人も、おそらく自分がリベラル・左派なので特に意識しないで自分の価値観に従って選んでいるだけなのかもしれません。

しかし、私には、耐えられませんでした。このサイトでの学習は一日せいぜい1時間くらいなもので、休みの日などに長くても2時間くらいだったのに、この有様でした。日本のテレビなどの番組を見ていてもリベラル・左派的なものもありますが、これほど軽くはなかったものと思います。

しかし、これがアメリカに住んだとしたら、テレビをみてもラジオを聴いても、圧倒的にリベラル・左派的な内容がほとんどであり、それどころか、学校や会社に行ってもリベラル・左派的な内容の会話が多いのだと思います。

日本も無論そのような傾向はありますが、それにしてもアメリカほどではないのではないかと思います。

このような環境長年にわたって浸り続ければどうなるのかと考えてしまいました。アメリカの保守派は、それこそ、腹の中身と会話とは全く異なるものになり、本当に打ち解けた人にしか自分の本当の考えを話さなくなったのではないかと思います。これでは、アンケートも正確にはならないわけです。

今回のトランプ氏の大勝利は、米保守派の今まで声にならなかった声が、大きな声となった結果です。

それにしても、今回のトランプの圧勝で、米保守も見直されると思います。日米のメディアも反省して、保守の声も拾い上げるようにしていただきたいものです。

そうでないと、これからもメデイアは、今回のような大間違いをしでかすことになります。

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2016年3月12日土曜日

安倍首相のブレーン本田参与、6月スイス赴任に高まる“消費増税先送り”―【私の論評】日本の積極財政の夜明けがはじまり、世界経済を牽引することになる(゚д゚)!


本田参与の大使赴任遅れは、増税先送りのサインか
政府は11日の閣議で、駐スイス大使に、安倍晋三首相の経済ブレーンで、「反増税派の論客」として知られる本田悦朗内閣官房参与を充てる人事を決定した。発令は同日付だが、何と赴任は6月上旬という。国内外の有識者らを集め、世界経済の情勢を議論する「国際金融経済分析会合」に参加するためで、来年4月の消費税10%の先送りが高まってきた。

「アベノミクスの意義をしっかり議論していきたい」

本田氏は、16日から始まる「分析会合」について、産経新聞の取材にこう答えた。

同会議には、安倍首相や麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、石原伸晃経済再生担当相ら関係閣僚に加え、日銀の黒田東彦総裁、ノーベル経済学賞を受賞した米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授など、海外の著名な経済学者や国際機関の研究者などを招く。

ジョセフ・スティグリッツ教授 彼なら緊縮財政の無意味なことを明快に説明するだろう。
 中国経済の減速や原油価格の低下、金融市場の混乱などをテーマに、5月の伊勢志摩サミットまで5回程度開く予定で、永田町では「消費増税延期の地ならし」(自民党中堅)とみられている。

本田氏がスイス大使に転任するという一報が流れた際、財政再建を重視する政府・自民党内の一部には「反増税派の力が弱まる」という期待感が強まった。だが、本田氏は「分析会合」の全日程に出席し、サミットまでは参与職も兼務するという。

異例の措置に、官邸関係者は「安倍首相の『再増税には慎重』というメッセージが伝わってくる」と語っている。

【私の論評】日本の積極財政の夜明けがはじまり、世界経済を牽引することになる(゚д゚)!

上の記事、消費税10%見送りに向かって、安倍総理が着々と手を打っていることが理解できる記事です。

「国際金融経済分析会合」は、今月中頃からサミットまでに5回程度開催される予定です。伊勢志摩サミットは、5月に開催されます。

本田悦朗内閣官房参与のスイス赴任が、もっと早い時期、たとえば5月より以前であれば、10%増税が実行される可能性が高まったものと判断すべきだったでしょう。

これまでも消費増税決定の前に、経済財政諮問会議の「点検会合」が開かれていました。
2014年4月の5%から8%への消費増税の時には、13年8月26日から30日まで点検会合が開かれました。この会合では、有識者・専門家60人が参加し、消費増税すべきだとする意見が7割超、予定変更すべきだという意見が1割超で、結果として増税が実行されました。消費増税をすべきという意見の人たちは、たとえ増税したとしても、日本経済への影響は軽微としていました。

この点検会合の結果を踏まえ、結局平成14年4月から8%増税が実施されました。しかし、増税後に景気は腰折れし、点検会合で出された意見の多くは間違いだったことがはっきりしました。安倍総理は、これを重く受け止め、点検会合に不信感を抱いたのではないでしょうか。

さらに、当初15年10月に予定されていた8%から10%への消費再増税をめぐり、やはり経済財政諮問会議の点検会合が14年11月4日から18日まで開催されました。この会議でも、増税すべきという意見が大勢を占めました。

平成14年11月18日の点検会合 
一方、安倍首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議および、20カ国・地域(G20)首脳会合出席のために、同月9日から17日まで外遊しました。

G20に参加し、オバマ大統領と会談した安倍総理
首相はこの外遊期間中に海外から与党要人に個別に電話をかけて衆院解散を伝えた模様でした。総理は点検会合における再増税ありきの議論をまったく受け入れるつもりがなかったのです。

8%増税の悪影響は昨年10月-12月期のGDP成長率が、マイナスになったことでも明らかなように、未だに続いています。さらに、このままだと、アベノミックスの金融緩和による雇用の改善状況も、今年の夏あたりから悪化する可能性すらあります。

現状では、実際には増税による悪影響による景気の悪化を、アベノミクスは頓挫したなどと言い出す政治家や、識者などもでている状況です。これが、さらに夏になり、さらに悪化すれば、マスコミや他の識者まで、それに便乗し、増税は棚にあげ、アベノミクス自体が大失敗と大合唱し、またまた、10%増税を押し切られる可能性が高いです。

そうなれば、景気はさらに落ち込み、とんでもないことになるのはあまりにも明らかです。安倍総理自身もそうなることなど望んではいないことでしょう。

ところで、政府は、伊勢志摩サミットにおいて世界経済のために財政政策と金融政策を同時発動を打ち出す流れになっています。新たな点検会合もこれを補強するのであると考えられます。これは、増税などの緊縮財政とは真逆の積極財政を示すものなので、消費増税もこの流れからすると当然延期ということにならなければ、一貫性がありません。


5月26、27日に伊勢志摩サミット、6月1日に国会会期末という政治日程を考えると、安倍総理による次のシナリオが浮かび上がってきます。

まず、点検会合で「世界経済のためには緊縮財政からの脱却が必要」との方針を打ち出します。サミットで世界の首脳がその方針を確認します。このような外交成果も踏まえて、国会会期末に衆院解散を宣言します。

解散から40日以内の総選挙実施を定めた憲法54条により、7月10日に、衆参ダブル選挙をすることになります。

ダブル選挙の争点の第一は経済になることでしょう。緊縮財政からの脱却を掲げることになれば、増税延期と財源のダブルバズーカが発射されることになるでしょう。

増税推進派からは、積極財政の財源について追求される可能性もありますが、それは、以前もこのブログで掲載したように、外国為替資金特別会計と労働保険特別会計などの埋蔵金が存在します。

これらは、円高対策と、雇用対策にあたられるもので、金融緩和によって、円安傾向や雇用が上向いている現在、その全額を貯めこんでおく必要性などさらさらなく、今こそ経済対策に使うべきものです。そうして、これでも財源としては十分なのですが、さらに奥の手もあります。

これらを整合性を保って、日本の実情にあわせて、合理的に順序立てて誰にでも理解できるように説明できる人としては、現状では本田参与が一番です。

その本田参与が、駐スイス大使に決まってしまったのですが、その赴任がなんと6月ということです。

無論、このようなことは、安倍総理の意思決定によってのみ行われることですが、これはどう考えても、増税延期のスケジュール・シフトと考えて間違いないようです。

それと、本田参与が駐スイス大使になることについては、私なりに考えてみたのですが、最近の国連の動きを牽制するためだと思います。

このブログにも掲載したように、スイス・ジュネーブの国連女子差別撤廃委員会において、日本における「天皇男系継承は女性差別」と勧告しようとしてみたり、慰安婦問題に関する動きがあったたりで、この問題に対処する強力な人材を必要としています。

本田参与を駐スイス大使にするのは、こうした問題に対処させるという目的もあるのだと思います。

 日本の皇室典範の内容にまで、提言をしようとした、国連女子差別撤廃委員会
それにしても、とにかく、日本は積極財政と、金融緩和で、とっととデフレから完全脱却して、まともな経済に戻すべきです。

伊勢志摩サミットは8つの閣僚会議も開催されるという空前の大規模で行われます。これは、前回の洞爺湖サミットよりもかなりインパクトが大きいです。

このインパクトのある会議で、日本が世界の国々に向かって「緊縮財政からの脱却が必要」と訴えるわけです。そうして、最近では景気が悪いときに「緊縮財政」をしても全く効果はないということが、再確認されているので、各国首脳もこれに合意して、共同声明が出されるに違いありません。

そうなると、日本も当然積極財政をしなければならず、緊縮財政の手段である増税などできません。そうして、この直後に安倍総理が増税見送り、衆参両院同時選挙を宣言するわけです。素晴らしいシナリオという以外にありません。

中国経済が落ち込む中、原油安は日本にとっては良いことですし、中国のように構造的に重大な問題のない日本の経済が復活すれば、アジアや世界経済にとっても良いことです。

これを機に日本は、はやい時期にデフレから完全脱却し、世界経済を牽引することになると思います。そうして、世界の他の国々も、過去の日本のように、デフレなどの不景気なときに増税などの緊縮財政をして失敗するという二の轍を踏むこともなくなり、良い方向に向かうことになることでしょう。

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