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2020年5月13日水曜日

「昭和恐慌」に学ぶコロナ対策 金融緩和と積極財政が有効、リーマンの失敗繰り返すな! ―【私の論評】コロナ禍を奇貨として、日本は「シバキ倒し」社会から「まともな社会」に移行すべき(゚д゚)!

スペイン風蔓延時にマスクをする当時の女子学生たち

 いまから約100年前、スペイン風邪や関東大震災、昭和恐慌に見舞われた日本はどのように抜け出したのか。今回のコロナ・ショックからの脱出を目指すうえでどのような点を参考にすべきだろうのか。

 昭和恐慌は、1930年から31年にかけて起こった戦前日本の最も深刻な恐慌で、第一次世界大戦による戦時バブルの崩壊を契機としている。20年代、世界の主要国は金本位制へ復帰していたが、今ではその結果として20年代末期から世界大恐慌が起こったと分析されている。

 このような状況下、29年7月に成立した立憲民政党の濱口雄幸内閣は、金解禁・緊縮財政と軍縮促進を掲げた。このマクロ経済政策を今の言葉で言えば、金融引き締め政策と緊縮財政政策だ。濱口雄幸内閣の事情は、城山三郎著『男子の本懐』に書かれているので、ご存じの方も多いだろう。

 この本では、濱口首相は東京駅で銃撃され、非業の死を遂げた英雄として描かれている。その大前提として、立派な経済政策を遂行したとの評価があり、その信念を男の美学として「男子の本懐」としている。

 筆者は40年前、当時の大蔵省に入省したが、新人研修でこの本の感想文を書かされた。筆者以外の同僚は、信念に基づき命をかけてまで打ち込むことは素晴らしいというものだった。

 しかし筆者は、金解禁つまり金本位制への復帰をなぜ行ったのかが理解できなかった。そのため、正しいかどうかわからない政策に命をかけるのはいかがなものかという感想文を書いた。当時、金本位制に復帰することは金融引き締めであり、緊縮財政とセットで国民を「シバキ上げ」る政策は、失業を増加させマクロ経済運営で問題だったはずだからだ。

 これがユニークな感想だったため、筆者は同僚の前で大蔵省の先輩教官に面罵された。この教官はその後、事務次官になった。さすが緊縮策の権化の財務省ならでの人事だ。

 史実としては、この金融引き締めと緊縮財政政策は政変によって終わった。31年12月、立憲政友会の犬養毅内閣となったが、高橋是清蔵相はただちに金輸出を再禁止し金本位制から離脱、積極財政に転じた。積極財政では日銀引受を伴い、同時に金融緩和も実施され、民政党政権が行ってきたデフレ政策を180度転換した「リフレ」政策となった。その結果、先進国の中でも、恐慌から比較的早く脱出した。

 昭和恐慌は、世界恐慌とともに需要ショックによって引き起こされた。それは、日銀引受を伴う金融緩和と積極財政が最も有効な処方箋だ。

 コロナ・ショックも、世界的なサプライチェーンの寸断という供給ショックもあるが、人の移動制限の伴うビジネス停止により一気に需要が喪失する需要ショックの面が強く、昭和恐慌と同様の経済対策が必要だ。

 今回のコロナ・ショックは12年前のリーマン・ショックを上回るかもしれない。当時は金融緩和と積極財政が不十分だったが、今度こそ昭和恐慌を模範例とすべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】コロナ禍を奇貨として、日本は「シバキ倒し社会」から「まともな社会」に移行すべき(゚д゚)!

世界恐慌、日本では昭和恐慌がなぜ起こったのかは、謎でした。しかし、1990年代の研究によって今では明らかになっています。その答えとは、デフレです。米国をはじめ、世界中の政府が財政政策では緊縮政策、金融政策では引き締め政策をとったため、デフレに陥ったというのが、真相でした。

日本では、高橋是清による積極財政政策、金融緩和政策により、世界で一番はやく、教皇から脱出しました。米国が恐慌から完全に脱却できたのは、第二次世界大戦に入ってからしばらくしてからでした。

大蔵大臣として有能だった高橋是清だが、なぜか今の日本では高く評価されない

これらは、歴史研究から明々白々なのですが、なぜか日本では、高橋是清の業績が正しく理解されず、未だに不況になれば、緊縮財政をして、金融引締をすべきと思っている官僚や政治家が存在することには驚かされます。

挙げ句の果に、財務省では濱口雄幸氏を英雄視するのですから、さもありなんです。ほんらいであれば、恐慌の歴史研究の内容からすれば、濱口氏は、デフレを深刻化させた、無能宰相として、無能のそしりを受けるのが当然です。

財務省では英雄視させる総理大臣としては無能だった濱口雄幸氏

このような反省が真摯になされていないためか、今でも消費税増税等で、国民を「シバキ上げ」る政策は公然と継承されています。日本では、官僚も政治家も国民「シバキ上げ」が大好きです。

日本人はよほど「シバキ上げ」が大好きなようです。根性論で戦争を押し進め、国民を弱肉強食の戦地に送り込み、前代未聞の損害を与えた「軍官僚の暴走」の過去を反省したほうが良いと思います。

日本は「一億・総シバキ上げ社会」です。まず失われた30年。技術革新による人手余りで、徐々に労働環境が悪化しているのに、財務省は緊縮財政で国民をしばき。日銀はデフレを放置どころか金融引締で国民をしばき、企業は低賃金・長時間ブラック労働で労働者をシバキ倒しました。

仕事が減っているというのに、「所得の低下と失業は自己責任だー、社会(マクロ)に責任を転嫁するなー」と叩きまくる奴らが大量に発生して多くの国民をシバキ倒しました。特に若者に対するシバキは異常ともいえました。

新聞マスコミが総出で「消費税の増税と社会保障の削減をしろ」とシバキ倒し、労働者の政党であるはずの民主党(当時)が消費税の増税法案を強行して、止めを刺しました。

近頃、金融緩和でようやく人手不足になってきたと思ったら、人材派遣会社が賃金をピンはねでシバキ。新聞マスコミは人手不足だと大騒ぎするのですが、企業は消費税の増税が先に見えているから、安易に正社員を増やすより派遣を増やして様子を見るのは当然といえば当然です。

マスコミは、企業の過剰な留保を攻め立てましたが、実際にコロナ禍のようなことが起こってみれば、政府の保証などあてにならず、内部留保をしていた企業は余裕を持ってこれに対処できますが、そうでない企業は倒産し、従業員は露頭に迷うことになっています。

ただし、企業も、もしさらに不況になれば、派遣切りで、労働者を「シバキ倒す」気満々です。同一労働、同一賃金等の施策がとられたとしても、首を切られしまえば、元の木阿弥です。

マスコミ御用学者一体で、そんな茶番を繰り広げる一方で、政府は一億総活躍と称して、老若男女すべてを労働に刈り出すど根性政策にまい進しています。

そんなことより、普通の就労者が普通に仕事をしつつも、普通に生きていける、その中で少しでも努力すれば、その分報われるのが当たり前の社会にするのが本来のあり方のはずです。

まるで、今の政府、その中でもあたかも大きな政治集団のごとく振る舞う財務省は何としても働かなければ、国民に一円も与えないと思っているかのようです。女性が働かなくても子育てできる「所得保障社会」を実現するのではなく、女性を働かせるための政策を推進。女性を労働に駆り立てるために、新聞マスコミがイクメンなどとはやし立てる有様です。


すばらしき、一億・総「シバキ上げ」社会。日本では、何のために科学技術が進歩してるのでしょか、お答えください。

答えは、「シバキ拷問装置」を高度化するためとでもしておきます。

この「シバキ上げ」思想は完璧に間違っています。企業同士が、互いに「シバキ上げ」切磋琢磨して、次々とイノベーションを成し遂げ、社会を発展させていくというのならともかく、本来政府の役割は、企業同士が正々堂々と、不正な手段に訴えることなく互いに「シバキ上げ」競争するためのインフラを築くのが仕事のはずです。

しかし、いつの間にか日本では、政府や日銀が、国民や労働者を直接「シバキ倒す」のが仕事になってしまったようです。だからこそ、平成年間のほとんどの期間、日本はデフレでした。

令和年間はそのようなことにすべきではありません。コロナ禍は、多くの人命を失い大変なのですが、大きく社会を変える契機にもなり得るはずです。これを奇貨として、日本は「シバキ倒し社会」から「まともな社会」に移行できるようにすべきです。そのためには、直近では消費税減税は、必要不可欠です。

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2020年3月26日木曜日

国際的にも異常!財務省をサポートする「使えない学者」たち 震災でもコロナでも増税路線 マスコミも「アメ」与えられ…情けない日本の現状 ―【私の論評】異次元の積極財政と金融緩和を迅速に実行し、増税・コロナによるダブルパンチ不況をいち早く抜け出すべき(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方


 新型コロナウイルスによる景気後退がいよいよ現実のものになってきた。欧米では外出禁止などの行動制限や規制が行われ、実体経済がどんどん縮小しており、2008年のリーマン・ショック級になりつつある。

 米国では、200兆円規模の経済対策が検討されようとしている。しかし、日本では消費回復の起爆剤になる消費減税を有力政治家が否定している。その背後には財務省がいるからだ。

 財務省には、実は多くのサポーターがいる。それらは、学者、マスコミと財界だ。

 一部の経済学者が、コロナ・ショック対策として経済政策を発表した。提言では、消費増税による悪影響がまったく言及されず、消費減税は完全に否定されていた。経済政策の提言としてはまったくお粗末だといわざるをえない。

 しかし、提言者の名前を見ると納得する。11年の東日本大震災後の復興増税から、昨年10月の消費増税まで、増税一本やりの人たちだったのだ。

 本来、大震災のような500年に1度の危機の際には超長期国債で対応し増税しないというのは基本中の基本だ。日本の復興増税のような悪手は、古今東西でほぼ見当たらない。

 今回のコロナ・ショックは、リーマン・ショック級のインパクトを経済に与える。各国の政策担当者は、そうした認識だろう。

 そうした学者たちを持ち上げ、財務省の宣伝記事をしばしば書くのが日本の大半のマスコミだ。日本の財政事情が悪くないのに財政再建の必要性をたれ流し、減税政策にも否定的だ。

 日本の場合、日刊新聞紙法により新聞社の株式には譲渡制限があるので、新聞社を中核としてマスコミグループが形成されるケースが多い。財務省はその新聞社に消費税の軽減税率という「アメ」を与えた。このため、新聞業界は消費減税に賛成と言いにくい事情があるのだろう。

 経済界も、消費増税の代わりに法人税の減税を主張する財務省を支持している。また、社会保障の充実のためには、社会保険料負担が不可避であるが、財務省は企業にも負担が及ぶ社会保険料ではなく、消費者に負担が及ぶ消費税を推してくれている。そこで財界も目先の利益のために、財務省支持になっているのだと思われる。

 このように、財務省は、学者、マスコミと財界の支持を得て緊縮財政を行っているので、政治家としても簡単には財務省に反対できない。

 マスコミと財界が自分の利益で行動するのはどこの世界でもある話だが、それにしても日本の学者の体たらくぶりは、国際的にみてもちょっと尋常ではない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】異次元の積極財政と金融緩和を迅速に実行し、増税・コロナによるダブルパンチ不況をいち早く抜け出すべき(゚д゚)!

3月14日夕、安倍晋三首相は首相官邸で開いた記者会見で声を張り上げた

「現在はあくまで感染拡大の防止が最優先ですが、その後は日本経済を再び確かな成長軌道へ戻し、皆さんの活気あふれる笑顔を取り戻すため、一気呵成かせいにこれまでにない発想で思い切った措置を講じてまいります。その具体的な方策を政府・与党の総力を挙げて練り上げて参ります」

3月14日夕、安倍晋三首相は首相官邸で開いた記者会見で声を張り上げました。今の経済状況は極めて深刻です。会見から3日後の17日には日経平均株価(225種)の終値は1万7000円レベルでした。既に「危険水域」を突破しており、大胆な経済対策は待ったなしの状態です。

本来であれば新年度予算案の国会審議が続いている時に追加経済対策や補正予算の議論をするのはタブーだったかもしれません。野党側から「ならば本予算案を組み替えればいい」と横やりを入れられて予算案審議がストップする恐れがあるからです。しかし、今は、そんな悠長なことは言っていられない状況です。野党も審議を拒否すれば、自分たちに批判が集まることを知っているでしょう。

現段階で経済対策の柱として語られているのは、キャッシュレス決済時のポイント還元の延長・拡充や、子育て世帯などへの現金給付などがあります。ところが、これらはいずれも「想定の範囲内」の対策です。特に「ポイント還元」については、昨年10月に消費税率が10%に上がった際の景気冷え込み策と目されていたが、その期待を見事に裏切ったことは実証済みです。今は「異次元」の対応が求められているのです。

そこで浮上したのが消費税減税論でした。消費税は1989年に導入されて以来、約30年の間に3%、5%、8%、10%と税率が上がってきました。1度も下がっていません。

それは、財務省が消費税減税に絶対反対の立場を貫き、多くの自民党議員も財務省に同調するだけではなく、上の記事にもある通り、多くの経済学者やマスコミまでが同調しているからです。

財務省は、少子高齢化が進み社会保障費の増大が避けられない状態の中、安定的な税源である消費税は、税率を上げる議論をすることはあっても、下げる議論はあり得ないかのごとく、世論を操作し、実際世論はその方向に動きました。この議論に反対するのは、少数派という状況になっていました。

財務省にとっては、消費税は税率を上げる際、大変な政治的エネルギーを費やしてきました。1度下げると、再び上げるのは途方もない苦労がいる。それは回避したかったのでしょう。

破綻した山形県の老舗百貨店、大沼。コロナショックは構造不況業種の百貨店の淘汰も加速させる

しかし、それが許されたというか、なんとか財務省が抑えつけられたのは、コロナショック前のことです。それにしても、10%増税後の景気の落ち込みは酷く、内閣府が9日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比1.8%減、年率換算では7.1%減でした。

昨年10月の消費税の10%増税に対処するため、ポイント還元制度などを導入したのですが、これらは全く何の役にもたたかなかったことが実証されたのです。

それに、今回のコロナウイルスによる打撃は、リーマンショック以上といわれるのですから、消費税減税もタブーとせずに議論すべきなのです。

そうして、無論そのような動きは自民党の中でも起こりました。自民党の安藤裕衆院議員ら若手有志は11日、西村康稔経済再生担当相と面会し「消費税は当分の間軽減税率を0%とし、全品目に適用する」よう提案しました。形式的には軽減税率の拡大だが、実質的には「消費税を0%にする」という意味になります。

「消費税0%」は、昨年の参院選、れいわ新選組の山本太郎代表が主張したことで知られています。当時は他の野党でも荒唐無稽と受け止められたものです。しかし新型コロナ問題が起きてからはにわかに現実味を帯びてきました。

安藤氏ら以外にも、自民党若手・中堅を中心に消費税率の一時引き下げ論が高まっていました。

安倍総理は14日の会見で消費税減税について問われ「自民党の若手有志の皆さまからも、この際、消費税について思い切った対策を採るべきだという提言もいただいている。今回(昨年10月)の消費税引き上げは全世代型社会保障制度へと展開するための必要な措置ではあったが、今、経済への影響が相当ある。こうした提言も踏まえながら、十分な政策を間髪を入れずに講じていきたい」と発言。わざわざ若手の提言を口にして思わせぶりなことを語りました。

安倍総理はもともと財務省の「増税史観」に懐疑的で、消費税率アップを先送る決断も二度経験済みです。自民党内では消費税増税には最も慎重な考えの1人ともいえます。もし、昨年の今ごろ「新型コロナ」がまん延していたら、昨年10月の「消費税10%」は先送りしていたかもしれません。であれば、時限的に8%に戻す選択をしてもおかしくないです。

ところが、麻生太郎財務相は19日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気対策として浮上する消費税減税論について「現段階で消費税を考えているわけではない」と述べました。国民に現金を配る「現金給付」についても「今の段階で検討しているわけではない」と否定的な考えを示しました。

麻生財務大臣 19日日閣僚会議記者会見で

3月前半に大型経済対策の検討が伝わると、真っ先に動いたのは財務省でした。消費喚起策として、消費税率を5%程度に引き下げるべきとの主張が与野党の一部から出始めたため、その火消しに回ったのです。

消費税率引き下げについては、自民党の岸田文雄政調会長らも慎重な姿勢です。財務省の火消し作業は官邸や与党内で一定の成果を上げており、消費減税の可能性はかなり低くなってしまいました。

ただ、安倍首相は経済対策の考え方として「前例にとらわれた対応では、前例なき危機に対応できない」という言葉を繰り返しており、それが財務省との駆け引き材料として使われているようです。安倍首相は消費減税の可能性は排除していません。

そこで、消費減税に代わる経済対策案の目玉として浮上したのが、財務省自身も否定しない現金給付案です。目下の議論では、リーマンショック後の2009年4月の経済対策で配った1人当たり1.2万円(子どもと高齢者は2万円)を大幅に上回るのは確実です。最大で国民1人当たり10万円とする案が出ています。

しかし、これは明らかに財務省の政治的越権行為です。いつの間にか、消費減税と給付金が財務省の中でいずれをとるかの選択肢となっています。

これに沿った論評をする経済学者もでてきました。たとえば、Yahooニュースにもでていた、以下の記事です。
新型コロナショックに対しては、生活下支えが目的なら給付金、景気浮揚なら消費税減税が望ましい
詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事で著者は、経済対策の選択肢とそのシミレーションをあげ、以下のような結論を述べています。
このように、消費税減税が得になるか、給付金の支給が得になるかは、その人が置かれた所得水準やライフステージに依存することが分かります。つまり、誰もが納得する所得支持策はないのです。 
強いて言えば、低所得層や子育て世帯の生活底上げを目指すのであれば給付金の支給が望ましく、景気の底上げを目指すのであれば高所得階層に有利な消費税減税が望ましい、ということになるでしょうか。 
蛇足ながら付け加えれば、金持ちに給付金を渡すぐらいなら消費税減税の方が望ましいという意見も一部に見られますが、実際には消費税減税の方がお金持ち有利な政策であるということが明らかになります。
現状は、コロナによる経済の大停滞と未曾有の危機であり、かつ、消費税増税で景気が低迷しているわけですから、低所得層や子育て世帯の生活底上げを目指す給付金の支給と景気の底上げを目指す、消費税減税の両方を目指すべきなのです。

財源は、国債を大量に発行すれば良いだけです。これは、以前もこのブログに掲載したように、現状の日本では将来世代のつけにはなりません。それについては、以前のブログに掲載したことがあります。
政府、赤字国債3年ぶり増発へ 10兆補正求める与党も容認見込み―【私の論評】マイナス金利の現時点で、赤字国債発行をためらうな!発行しまくって100兆円基金を創設せよ(゚д゚)!

詳細は、このブログをご覧いただくものとして、この記事では、「国債は将来世代のつけにはならない」というラーナーの議論を掲載しました。

さらに、この記事ではマイナス金利の国債を大量に発行すれば、政府は国債で利益が得られることも掲載しました。

現状では、国債を大量に発行しても何の問題もないので、大量に発行し100兆円基金を創設べきことを掲載しました。この状況は現在もあまり変わってません。とにかく、現状はためらうことなく、国債を大量に発行し、異次元の積極財政を行うときなのです。

それと、先日もこのブログで述べたことですが、我が国のような変動相場制の国において、財政政策の効果は非常に低くなるので、金融緩和を同時に行う必要がります。

とにかく、現状では、減税・給付金による異次元の積極財政と異次元の金融緩和が必要であり、これらを迅速に実行して、いちはやく増税とコロナウイルスによるダブルパンチの不況をいち早く抜け出すべきなのです。

財務省の省益などに、かかずらわっている場合ではないのです。米国のように、挙党一致で、真に効果のある経済対策を打つときなのです。

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【日本の解き方】米と「ケタ違い」だった日銀緩和 80兆円の量的緩和復帰すれば、財政出動の効果も発揮される―【私の論評】簡単なことがわからない日銀総裁と、日本の政治家(゚д゚)!

2020年3月16日月曜日

見えてきた「新型コロナ終息」のタイミング…東京五輪に間に合うか?―【私の論評】日本は速やかにかつてないほどの積極財政と金融緩和策を実行しなければ、とんでもないことになる(゚д゚)!

政府のかわりに、データから予測する

「先行き不安」いつまで続くか

先週、内外の株式市場は大波乱だった。連日パニックになっているようだ。筆者は仕事柄、日頃から欧米のニュースを見ているが、話題は新型コロナウイルス一色だ。ほとんどの国で外国からの入国制限措置が取られ、イベント、遊園地や学校の休校と、少し前の日本での大騒ぎとほとんど同じである。

一部の国は入国制限を日本より強烈にやったので、一般国民の生活に大きな影響も出た。この結果、アメリカ株式市場は大乱高下している。恐怖指数(株式市場のボラティリティ予想)は80近くに達しており、リーマンショック時に近づいている。



リーマンショック時には、サブプライムローン問題により多くの金融機関が倒産した。倒産した金融機関が、すぐに復活するはずもない。アメリカ政府の財政支援の後、消え去った金融機関もあり、長い期間をかけて再生した金融機関もあった。

そして、アメリカ政府による積極財政と大規模な金融緩和政策が実施され、ダウ平均は半年後で底値となり、2年あまりでリーマンショック時の水準を回復した。

一方日本では、政策発動が遅れたばかりか、2009年の民主党への政権交代、2011年の東日本大震災などの影響もあり、日経平均は長らく振るわなかった。株価回復には、民主党から自民党安倍政権への政権交代を経て5年を要した。

今回の新型コロナショックの本質は、先行き不安である。人の移動制限による観光業への痛手は大きく、イベント休止など、目に見える形で「需要」が消滅している。

ただ救いといえるのは、まだ企業の倒産がそこまで顕在化していないことだ。需要の消滅も当面のものと考えられるので、感染拡大が落ち着き、ワクチンなどが開発できれば、再び経済も活発化してくるだろう。

こうした意味で、当面の企業倒産リスクを防止するとともに、一時的な需要の消滅を解消するために、可処分所得を増加させるような財政政策の発動が求められる。

「消費減税」もありうる

こうした状況において3月14日、安倍首相が記者会見し、「今後も必要かつ十分な経済財政政策を間髪入れず講じる」とした。具体的に消費減税などの可能性について述べたわけではないが、少なくとも「自民党内の提言を踏まえる」とし、否定はしなかった(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0314kaiken.html)。

消費減税については、水面下でいろいろとあるようだが、麻生財務相が13日の記者会見でかなり明確に否定した(https://www.sankei.com/economy/news/200313/ecn2003130032-n1.html)。それを安倍首相がやや引き戻した感じだった。

コロナショックで経済対策を打つことは決まっているが、はたしてどのような規模になるか、そこに消費減税が含まれるかどうかは、今後の政治次第であろう。

筆者は本コラムで、消費増税→コロナショック→東京五輪(中止・延期)ショックという最悪のシナリオをかなり前から懸念していた。そしてそれを防ぐために、消費減税を含むかなり大規模な経済対策の必要性を書いてきた。

そうした主張は、新型コロナウイルスの状況や五輪の検討状況からある程度理詰めで導出してきたが、今回は、新型コロナウイルスの今後の経過を考えてみよう。

「長期化」の具体的見通しは?
新型コロナウイルスは中国だけでなく、まず韓国、ついでイラン、イタリアやフランスなどでも爆発的に広がり、日本の専門家会議も長期化の可能性を指摘している。

現在はイベントの自粛や学校の休校、中韓からの入国規制といった措置が続いているが、今後どこかのタイミングで通常の生活に戻したほうがいいのか、それとも自粛や経済活動縮小も長期化を覚悟するべきか。

政府は2月26日、「この1~2週間が感染拡大防止に極めて重要」としてイベントなどの自粛を要請した。3月10日には、さらに10日間程度この自粛要請が延長された。

各国の感染状況については、新規感染者数を毎日丹念に追って見ていくのが基本だ。

新型コロナウイルスの発生元である中国では、2月中旬ごろにピークを超えたとの見方もあるようだが、2月中でも少なくとも3回の統計方法の変更があり、情報の信頼性が乏しく定かではない。習近平主席が号令をかけてウイルスが終息するわけでもない。いい加減なデータから中国の状況を過信し、日本が入国制限を解除したら、国益を保てない。

韓国はようやく落ち着いてきたが、イラン、イタリア、フランスなどでは依然感染拡大が落ち着いておらず、予断を許さない状況だ。

日本はそこそこ頑張っている

各国の状況は、下図のとおりだ。


この図の縦軸は、対数目盛である。つまり、目盛が一つ上がると桁数が一つ上がる。各国の数字から、おおよその傾向が見えてくる。

図の中で、「欧米・イラン・韓国」と「台湾・シンガポール・日本」の傾きが、明らかに異なっているのがわかる。こうしてみると、本コラムでも書いたように、日本はクルーズ船対応ではやや手違いがあったが、それなりに健闘している。台湾・シンガポールが優クラスとすれば、その次くらいの良クラスといえるだろう。

こうした評価をすると、「日本は検査数が少なすぎるから感染者数も少なく出ているのだ」という批判が必ず出てくる。筆者も、もう少し余計に検査すれば感染者数がやや多くなることは理解できるが、医療のキャパシティという事情もある。これは、3月2日の本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70767)を読んでほしい。

筆者も感染者数のデータだけを見ているわけではない。死亡者数や検査での陽性率などのデータも見ている。それらを国際比較すれば、結論としては、検査を増やしても、日本の感染者数の桁が変わるほどの顕著な違いは出ないと思う。

こうした意味でも、縦軸を対数目盛として各国を比較することに意味がある。日本はそこそこ頑張っていると評価できるだろう。

日本はこれからどうなる?

問題は、これから日本の状況がどうなるかだ。

これは極めて難しい問題だ。14日の安倍首相の記者会見について、一部野党から「終息予測を回避している」という批判があった(https://www.sankei.com/politics/news/200314/plt2003140032-n1.html)。

こうした批判を言うのは簡単だが、実際にいつごろ終息するのかをきちんと考えるのは難しい。

筆者が政府内にいたら、足を引っ張られるので正式には言わないだろう。ただし、今は自由な立場なので、本コラムで明かしておこう。

これは、感染者数予測モデルから計算することが可能だ。WHOルールに基づき、終息とは「新規感染者数ゼロが4週間続くこと」を指すとしよう。こうして厳密に言葉を定義しないと、計算できない。一部野党の議員などは、こうした定義もおそらく知らずに暢気に批判しているのだろうから、気楽なものだ。

これまでの厚労省データから、国内の累積感染者数について、筆者は次のように予測している。これは、筆者の「ドタ勘」も含まれたものだ。


ここから、新規感染者数を予測すれば、次のようになる。


筆者は、各種の移動制限が功を奏しているものの、ピークが後ズレしているので、今月中旬頃にピークが来ると予想している。そうであれば、4月上旬には新規感染者数が落ち着き、4月下旬から5月上旬にはあまり見られなくなると予想できる。各種の自粛や規制は、今月下旬か月末までが一つのメドになるだろう。

正直、あまりフィットしていないので、手持ちのデータから予測するのは心苦しいが、それでもおおよそのことはわかると思っている。少しでも今後の見通しを立てる一助となれば幸いだ。もっとも、筆者の予測は自己責任で扱ってほしい。あくまで、現在の施策が継続するとして機械的に計算したものだ。もちろん、時期もピンポイントではなく前後に一定の幅を持って見るべきものだ。

日本で「終息」といえる時期は、どう頑張っても、5月下旬から6月上旬にならざるを得ないだろう。もちろんそのときには、世界ではまだ「終息」していないことは言うまでもない。

まだ拡大のピークを迎えていない欧米で、強烈な規制が行われている。入国制限、イベント・スポーツ大会中止、学校休止など、日本と同じ政策が実施されている。どこの国でもやることは似たようなものだ。

こうなってくると、東京五輪にも暗雲が出始めた。リーマンショック時と同じような経済対策が必要になっている。

【私の論評】日本は速やかにかつてないほどの積極財政と金融緩和策を実行しなければ、とんでもないことになる(゚д゚)!

3月14日、首相官邸で開いた記者会見で、安倍首相は武漢ウイルスの感染拡大を受け、感染拡大防止に力を注いだうえで「機動的に必要かつ十分な経済財政政策を間髪を入れずに講じる」と強調しました。3月末に2020年度予算が成立次第、安倍首相は正式にその策定を指示する見込みです。

まだハードデータは少ないですが、足元の景気は広範囲にわたって急速に悪化しています。景気ウオッチャー調査(2月分)現状指数は27.4で、前の月から▲14.5pt悪化(消費税率が8%に引き上げられた2014年4月以来の大きな下落幅)、3月1~9日の東海道新幹線の乗客が前年同期比▲56%減と、びっくりするような数字が出始めています。自粛が一気に広がった3月のハードデータが明らかになる4月には、かなり広範囲にわたって経済活動が急速に収縮している姿が明らかになるでしょう。



3月15日、西村経済財政・再生相はテレビ番組に出演し、武漢ウイルスの拡大が日本経済に与える影響について、「リーマン・ショック並みか、それ以上かもしれない」との認識を示した上で、「インパクトに見合うだけの、それなりの規模のものをやらなくてはいけない」と発言しています。

2008年のリーマン・ショックは、生産などが3割以上減少するなど、実体経済に甚大な影響を与えました。その際、2009年4月に麻生内閣が出した経済対策は、事業規模で56.8兆円(真水115.4兆円)に上るものでした。安倍第二次政権における最大級の経済対策は、2016年8月「未来への投資を実現する経済対策」であり、事業規模は28.1兆円(真水6.2兆円)でした。今回策定される経済対策も、これらと同程度か、それ以上の規模が視野に入ってくるでしょう。

今回の対策は、感染拡大防止・医療体制強化、危機対応(できるだけ失業、倒産を回避する策)、需要喚起策などが柱となるでしょう。

現在、報じられている需要喚起策は、現金給付・クーポン支給策、テレワーク強化、観光業や外食産業を盛り上げるキャンペーン、企業の生産ラインの国内回帰を支援する策などです。

これだけ国内の消費活動が落ち込んで来ると、新型コロナウイルスが少し落ち着き始めた際には、消費行動を強烈に後押しする策が必要になるでしょう。現金給付や所得税減税なども検討の俎上にのせられるでしょうが、それらは貯蓄に回りがちなため、より積極的に消費者の背中を押す仕組みが必要になってきます。

実効性のある経済対策が出てこない限り、投資家の慎重姿勢は変えられず、金融市場も落ち着きません。今後、需要喚起策や生活支援策として、消費税の引き下げが焦点となるでしょう。安倍首相は、自民党の一部議員が訴えている消費税の税率引き下げについて、「何をすべきかはこうした提言も踏まえ、さまざまな可能性を想定しながら、経済財政政策を間髪を入れずに講じていきたい」と述べています。

ここで、注目しなければならないのは、慢性デフレ下の消費税増税という安倍晋三政権の自滅策です。増税は家計を圧迫し、内需を萎縮させ、前述した負の連鎖をより強固にする。12年12月にアベノミクスを始動し、円安、株高に誘導したものの、14年4月、そして19年10月の2度にわたる税率引き上げで内需を殺しました。

昨年10~12月期の国内総生産(GDP)第2次速報値は前期比年率7・1%減にも及ぶ。そこに新型コロナ・ショックの追い打ちだ。安倍首相は自身のメンツにこだわらず、増税の失敗を認め、大型消費税減税を打ち出すべきなのです。

安倍総理は、大型消費税減税を打ち出すべき
さらに、金融政策に関しては、以前のこのブログでも主張したように、FRBが利下げするのですから、日銀としては、利下げはもうできないので、量的緩和を実行すべきなのです。そうしないと、円高と深刻なデフレを招くのは必定です。

日本は、かつてない規模で、積極財政と量的金融緩和策の両方を速やかに実行しなければ、とんでもないことになります。

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2020年3月7日土曜日

前例のない大胆政策…安倍政権は「消費減税」決断を! 財務省は必死に抵抗するだろうが…ここが政権の「正念場」だ―【私の論評】積極財政と金融緩和政策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!


安倍総理

新型コロナウイルスが、世界と日本の経済に大打撃を及ぼしそうだ。株価はすでに急落している。これから、実体経済に波及するのは避けられない。どう対応すべきか。

 結論から先に言えば、私は昨年10月、10%に引き上げた消費税率を元の8%に戻すべきだ、と思う。財務省は必死で抵抗するだろうが、今回の事態はそれほど深刻、かつ前例がない。安倍晋三政権の英断を望みたい。

 多くの読者は、いくらなんでも増税したばかりの消費税を減税するとは「あり得ない」と思われるかもしれない。だが、私は単に自分が期待するだけでなく、「首相の政治判断としても、十分あり得る」と思っている。

 なぜなら、安倍首相は2月29日の記者会見で、次のように語っていた。

 「各地の主要な株式市場において、軒並み株価が大きく下落するなど、世界経済の動向も十分に注視しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行っていく」

 この「インパクトに見合うだけの政策」というフレーズは、私の記憶にない。安倍政権は「コロナ・ショック」がどれほどひどくなっても、それに見合う景気刺激策を展開する決意なのだ。そんな刺激策は減税しかない。

 これまで、日本で景気下支えと言えば、大型公共投資のような歳出拡大策ばかりが展開されてきた。だが、本来は歳出拡大だけでなく、減税もある。実際、ドナルド・トランプ政権を含め、米国では減税が多用されている。

 日本が減税に消極的なのは、財務省が抵抗するからだ。彼らは大きな声で言わないが、「予算のバラマキ」こそが権力の源泉になっている。減税すれば、それだけ原資が小さくなるので、彼らは必死で抵抗するのだ。

 だが、今回の事態は、財務省の都合に耳を傾けているような場合ではない。コロナ・ショックは、2008年のリーマン・ショックを上回る可能性もある。2月27日には、米国のダウ平均株価が過去最大の下げ幅を記録した。

 危機の終わりが見えないどころか、日本も米国も試練は始まったばかりなのだ。リーマンは金融の危機だったが、今回は金融にとどまらず、個人消費、設備投資はもちろん、製造業のサプライチェーンも直撃している。

 加えて、中国、北朝鮮、韓国の政権基盤も揺さぶっている。私は目を覚ますたびに「今日は何が起きているか」と緊張感に襲われる。人々の不安と恐怖は、とてつもなく大きい。そんな心細さはリーマンの時もなかった。

 そうであれば、安倍政権は前例のない大胆な政策で対応すべきだ。言葉ではなく、行動で「政府は国民とともにある」と訴える必要がある。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥ったのは、消費増税が原因だった。減税は増税の誤りを正す結果にもなる。

 最悪なのは、不十分で小出しの対応である。対応に失敗すれば、夏の東京五輪・パラリンピックは吹っ飛び、政権の足元も危うくなるだろう。ここが「本当の正念場」だ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

【私の論評】積極財政と金融緩和策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!

武漢肺炎の猛威はすさまじく、北海道では感染者はとうとう90人を超えました、100人を超えるのも間近いでしょう。これにともなう、経済的損失も凄まじいものになるでしょう。

週明けに発表される去年10月から12月までのGDP=国内総生産の改定値について、民間の調査会社の間では、年率でマイナス6.3%だった速報段階から下方修正され、マイナス幅がさらに拡大するという予測が多くなっています。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は、先月の速報段階では、消費税率の引き上げなどの影響で物価の変動を除いた実質でマイナス1.6%、年率に換算してマイナス6.3%となりました。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は速報値では−6.3%だったが
このGDPについて、最新の統計を反映した改定値が、週明け9日に発表される予定です。

民間の調査会社など11社の予測によりますと改定値は、実質でマイナス1.6%からマイナス2.0%、年率換算ではマイナス6.1%からマイナス7.9%となりました。

11社のうち10社は、速報段階から下方修正されマイナス幅がさらに拡大するとしています。

これは、最新の統計で企業の設備投資が下振れしたためで、2社は前回、6年前の消費税率の引き上げ直後の年率マイナス7.4%よりも落ち込みが大きくなると予測しています。

もうすでに、景気後退局面に入っている可能性もあります。ちなみに、景気後退局面とは一般的に、国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションとみなします。日本経済はすでに景気後退局面に入っている恐れもあります。

これは、武漢肺炎前の数字です。さらに、1月から3月までのGDPも新型コロナウイルスの感染拡大の影響でマイナスになるという予測も出ていて、そうなれば、日本は間違いなく景気後退局面に入ることになります。そうして、これはほぼ確実です。

すぐにでも、消費税減税をしたほうが良いのは言うまでもありません。消費税減税をするにしても、8%未満にするには、法的手続きが必要です。それには、ある程度時間がかかります。

しかし、すぐにできる方法があります。それは、消費税10%はそのままにして、全品軽減税率8%を適用することです。これなら、すぐにできます。これを実行するには、法律を変える必要はありません。安倍政権はまずはこれを速やかに実施すべきでしょう。


さらに、必要とあれば8%未満にできるようにするために新たな法律づくりに着手すべきでしょう。

積極財政には、減税の他にも様々な方法があります。例えば、香港で実施されたように、国民に対する現金の一律支給や、所得減税や社会保険料の減免も考えられます。公共事業の増額もあります。さらには、期限付きのクーポンの支給などもあります。

さらに、今の国債マイナス金利の環境を生かして、政府がマイナス金利で国債発行し、それをそのままマイナス金利で民間に貸し出す「緊急融資制度」を行うということもできます。武漢肺炎で損失を被った個人や企業はマイナス金利で一定額借入できるようにするという方法もあります。

日銀も、武漢肺炎がなかった時期ですら、物価目標を達成できなかったのですか、今後はイールドカーブ・コントロールなどはやめて、異次元の緩和に戻ってもらいたいものです。
中央銀行の資産は金融緩和の度合いに比例する、日銀は緩和しなかったことがわかる

このブログでは何度か掲載してきたように、リーマン・ショックのときには、欧米等が大規模な緩和に踏み切ったにもかかわらず、日銀はほとんど緩和をしなかったために、デフレが深刻化し、円高になりました。

そのため、震源地の米国や悪影響を受けた英国などではいち早く不況から立ち直ったのですが、日本一人だけがなかなか不況から立ち直れず、一人負けの状態になりました。

今回の武漢肺炎による景気に落ち込みは、リーマン・ショック時より酷いことになる可能性は高いです。日銀は、リーマン・ショック時の失敗を繰り返さないように、すみやかに従来の異次元緩和に踏み切るべきです。そうして、それを維持する旨をすぐ公表すべきです。

政府が景気後退局面からの脱出や武漢肺炎対策等のため、国債増発を通じて政府支出を増加させると、長期の市場金利に上昇圧力が加わり、これが次第に民間投資などを抑制するメカニズムが働きます。これに対して、政府支出が拡大するもとでも、中央銀行が市場金利の上昇を抑制すれば、民間投資などへのマイナスの影響は限られ、景気刺激効果の強まりが期待できます。

今般の、景気後退局面と武漢肺炎による経済活動の低下というダブルパンチに対処するためには、政府の積極財政と日銀の緩和政策の両輪で対処するしか方法はないのです。

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2019年3月23日土曜日

【日本の解き方】米財政赤字容認する「MMT」は数量的でなく“思想優先”の極論 日本財政は標準理論で説明可能―【私の論評】貯蓄過剰の現代の世界は桁外れの金融緩和、積極財政が必要だがMMTは不要(゚д゚)!


ドル紙幣でつくられたビキニ

 米国で財政赤字の拡大を容認する「現代金融理論」(Modern Monetary Theory=MMT)の議論が活発になっていると報じられている。

 MMTは、自国通貨を無制限に発行できる政府は、政府債務(国の借金)が増えても問題がないとする経済理論だ。

 現実には、過去にデフォルト(債務不履行)に陥った国は少なくない。2001年のアルゼンチンや15年のギリシャなどの例がある。ギリシャは単一通貨ユーロを採用しているため自国で通貨を発行できなかった。

 なお、ギリシャは破綻(債務不履行と債務条件変更)の常習国だ。カーメン・ラインハート、ケネス・ロゴフ著『国家は破綻する』によれば、1800年以降の200年余の歴史の中で、ギリシャが債務不履行と債務条件変更を行った年数は50%を超える。いうなれば、2年に1度は破綻している国で、ユーロに入る以前には自国通貨でも破綻している。

 これらに対し、米国のMMT支持者は、世界の基軸通貨ドルで借金ができる米国はドルを刷ればいいので、財政破綻はあり得ないと主張する。

 米国の主流派の経済学者は、こうしたMMTの主張に対してバカげていると感情的に反発している。

 筆者にとって、数量的ではない政策議論には意味がない。米国の議論は定性的な極論か経済思想優先で、実りのある政策議論には思えない。

 従来の経済理論では、財政赤字でも中央銀行が国債を買い入れればインフレになる。そのインフレさえ感受できれば政府債務は財政上問題ない。

 これを統合政府のバランスシート(貸借対照表)から見てみよう。政府債務は、中央銀行の国債買い入れで全部または一部が銀行券に置き換わる。国債は有利子有償還であるが銀行券は無利子無償還なので財政問題はなくなる。



 一方、発行された銀行券は実体経済の生産力との関係で、過大になりすぎるとインフレを招く。これは、実体経済の生産力は潜在国内総生産(GDP)水準と近似できるが、それが政府の規模と一定関係であれば、統合政府のバランスシートでの債務超過はインフレをどの程度もたらすかと大いに関係している。また、他国との銀行券の比率において自国通貨が過大になると自国通貨安をもたらす。これらは、MMTによらずとも従来の経済理論から出てくる。

 インフレ率や自国通貨安がどの程度の弊害になるかだが、インフレ率は自国通貨安にも関係するので、結果としてインフレ率が許容範囲かどうかに帰着する。

 先進国で2%程度のインフレ目標は、最小失業率を目指したものだ。それよりインフレ率が高くなると、経済活動の障害など社会コストが高くなる。

 少なくとも、日本のように、インフレ率がインフレ目標まで達していないならば、財政赤字の心配は不要という主張は多くの人に受け入れられるのではないか。これはMMTからでなくとも導かれる標準的な内容だ。MMTの主張は極論すぎると思う。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】貯蓄過剰の現代の世界は桁外れの金融緩和、積極財政が必要だがMMTは不要(゚д゚)!

MMTには三つの以下の中核的な主張があります。
1)自国通貨を持つ国家の政府は、純粋な財政的予算制約に直面することはない。 
2)すべての経済および政府は、生産と消費に関する実物的および環境上の限界がある。 
3)政府の赤字はその他全員の黒字である。
一番目の主張は、広く誤解されている主張です。自国通貨を持つ国の政府とは、自国通貨と中央銀行を有しており、変動為替制度を採用し、大きな外貨債務がないという意味です。日本はそのひとつであり、英国、米国、豪州も該当します。ユーロ圏の国々は自国通貨を持たないので当てはまらないです。これは、当たり前といえば当たり前です。

2番目の主張は、政府はその気にさえなれば、消費しすぎたり課税しなさすぎたりして、インフレを起こすことが出来るという明白な事実を確認しているにすぎないです。現実的な限界を迎えるとき、消費の総合的な水準が、すべての労働力、スキル、物質的な資本、技術および自然資源を投入して生産できる上限を超えているといえます。

間違ったものを大量に生産したり、消費したいものを生産するために間違ったプロセスを使用することで、自然のエコシステムを破壊することも出来るということです。これも当たり前といえば当たり前です。

3番目の主張は、すべての貸し手には、必ず借り手が存在する。つまり金融制度の中では黒字と赤字は足せばいつもゼロになるということです。

政府が巨大な投資を行った場合、それはそれを実施する民間企業にわたり、それは企業の従業員の給料として支払われ、家計からは生活費などとして支払われたり、貯蓄として銀行にまわったり、税金として政府にもどってくるお金もあるということです。

政府の支出はゼロになるというわけではなく、金融制度の中では黒字と赤字は足せばゼロということであり、何やら当たり前といえば当たり前の話です。これは、日本国のバランスシートを見ればわかる話です。

ただし、1)に関しては、自国通貨を持つ国家の政府は、予算制約に直面した場合、自国通貨を自国政府の裁量で刷り増すことができるので、制約に直面することはないということです。ただし、際限なく刷り増せば、インフレになります。

標準理論でもMMTの全部の主張をいえるし、それを超えるの部分(予算制約なしなど)では極論すぎます。MMTは、定量的な議論には向いていません。つまりMMTなしでも標準理論で十分という意味で、MMTは不要です。

では、なぜこのような理論が注目を浴びているのでしょうか。それはブルームバーグの以下の記事が参考になります。
MMT台頭は積極財政論への「パラダイム転換」を示唆-PIMCO
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事から一部を引用します。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は、「現代金融理論(MMT)」の主張がにわかに注目を集めていることについて、経済成長を促すために政府が財政手段を用いることに対する支持の拡大を示唆するとの見方を示した。 
  PIMCOのグローバル経済アドバイザー、ヨアヒム・ フェルズ氏と世界債券担当最高投資責任者 (CIO)のアンドルー・ボールズ氏は21日公表の経済見通しで、「MMTが公の論議で最近目を引いているのは、緊縮財政から、成長促進や世界的な過剰貯蓄への対応、拡大する所得・富の不平等の是正のための手段として、財政政策をもっと積極的に用いるべきだとする新たな主流の見解への広範なパラダイム転換を象徴する」と記した。
 現在では、全世界的に過剰貯蓄の状態になっているのは間違いないです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!
野口旭氏

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、全世界的に過剰貯蓄なっていることを示唆する野口氏の主張を以下に引用します。
一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。
ローレンス・サマーズ氏

この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。
このような状況を打開するためには、無論大規模な金融緩和をしつつ、かなりの積極財政をし続けなければならないということです。そのため、MTTのような理論が形成され、話題となっているのでしょう。

それにしても、先に掲載したように、別にMTTがなくても、既存の経済理論(現在緊縮を主張する日本主流の経済学者らの理論ではありません、あくまで世界標準のマクロ経済理論ということです)で十分説明可能ですし、計量的にも、過剰貯蓄の状況は説明できますし、さらにそれに対する対処法も導くことできます。

であれば、新たな理論など構築する必要もないです。そのようなことよりも、既存の標準の理論で、日本や世界中の国々の財政を定性的・定量的に分析し、その上で対処法を決めるべきです。

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財政緊縮派とデフレ派の存在が、デフレ脱却の大きな障害に 国債発行と金融緩和が近道だ―【私の論評】10%増税等の緊縮財政は、将来世代のための子育て、教育、生活などの基盤を毀損することに(゚д゚)!


2018年3月8日木曜日

完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方―【私の論評】日本経済にはまだまだ、まだ!量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!

完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方

1月の完全失業率が2・4%と24年9カ月ぶりの低水準となった。この失業率が意味するものは何か。賃金の本格上昇には、低い失業率がどの程度続く必要があるのか。

 本コラムで、NAIRU(インフレを加速しない失業率)がマクロ経済政策、とりわけ金融政策において重要だと指摘してきた。一般的に、インフレ率と失業率は逆相関であり、NAIRUを達成する最小のインフレ率をインフレ目標に設定するからだ。ここから導かれる金融政策は、失業率がNAIRUに達するほど低くない場合、インフレ率もインフレ目標に達しないので金融緩和、失業率がNAIRUに達すると、その後はインフレ率がインフレ目標よりも高くなれば金融引き締めというのが基本動作である。


 そして、筆者の推計として、NAIRUを「2%台半ば」としてきた。国会の公聴会でも説明したが、経済学は精密科学でないので、小数点以下に大きな意味はないが、あえてイメージをハッキリさせるために、「2%台半ば」を2・5%ということもある。これは、2・7%かもしれないし2・3%かもしれない。2・5%程度というと数字が一人歩きするので、普通は「2%台半ば」といっている。

 今回、2・4%という数字が実際に出たわけなので、NAIRUに達したかといわれるが、筆者の答えはまだ否である。

 なにしろ、前月の昨年12月は2・7%だったので、0・3%もの大幅な下落となった。一方、1月の有効求人倍率は1・59倍と前月と同水準である。

失業率は、失業者を労働人口で除した数字である。失業者は働く意思があるが失業している人をいうので、1月には大雪があり、職探しを中断して、結果として失業者が減った可能性もある。

 過去のデータを見ても、失業率はあまり上下しない数字である。過去1953年1月から、前月との差をみると、平均0・00064、標準偏差0・11である。ほぼ変動しないのが当たり前だ。これではイメージしにくいかもしれないので、今回のような0・3%下落を探すと、780回のうち今回を含めてわずか7回である。しかも、最大の下落幅だったのだ。


 統計的に見ると、今回の下落はほとんど起こりえないことが起こったわけで、統計的に異常値であるといってもいい。NAIRUになっているかどうかは、あと数カ月間の動向を見なければ判断できない。

 もちろん、失業率が一時でもあれ下落したのは悪いことではない。しかし、これで、金融政策の出口と早計したら、間違った政策になってしまう。

 というわけで、今回の数字だからNAIRUになったとはいえないが、仮にNAIRUになったら、その半年から1年以内に本格的な賃金上昇が来るはずである。なぜなら、人手不足なので、企業は賃金を払わないと人の確保ができなくなり、企業活動に支障が出てしまうからだ。今がNAIRUとは決していえないが、それが目前に迫っていると筆者は思っている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本経済にはまだまだ量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では触れられていませんが、失業率が一時2.4%になったからといって、インフレ目標2%が達成されない限りは、金融緩和政策をやめるわけにはいきません。

失業率に関しては、このたとえが適切かどうかはわかりませんが、失業率を健康の問題などにたとえると、血圧のようなもので、何かの原因で血圧があがって病院に入院したとして、血圧が下がったからといって、すぐに退院ということにはならないでしょう。


やはり、しばらく様子を見るはずです。血圧が安定して、下がっているかをみるのと同時に、血圧が上がった原因が取り除かれたかどうかを検査することになると思います。その結果、大丈夫だということになれば、退院ということになるでしょう。

ただし、その後もしばらく通院して、様子をみて、その後特に変化がなければ、通院もなしということになると思います。

失業率も同じことです。一時、失業率が下がったことをもって、金融緩和をする必要はなしということにはなりません。

さらに、失業率が上がった原因である、デフレ状況が取り除かれ、緩やかなインフレになっているかも調べる必要があります。

インフレ目標は2%ですが、この2%が恒常的にクリアされている状態にもっていく必要があります。

日銀の現在の政策は、市場に供給するお金の量(マネタリーベース)を年間80兆円ペースで増やすとしていますが、これを年100兆円ペースに増やせば、かなりの確率でデフレから完全脱却できます。

ただ、日銀は市場から買う国債の量を年80兆円から年約50兆円程度まで減らしてきています。国債の購入量を拡大するのが難しくなっているのであれば、政府がそれを埋めるだけの財政拡張をして、合計で100兆円にするべきです。財政拡張自体に景気拡大の効果もあるので、実際に増額するマネタリーベースの量はあと10兆円程度でも良いかもしれません。

具体的には、建設国債など新規の国債を増発し、それを日銀が買い上げる方法をとるべきです。その際、日銀のイールドカーブ・コントロール政策は効果的です。政府が財政出動すると景気が刺激されます。金利が上がりそうになれば、イールドカーブ・コントロール政策で長期金利の水準が一定の値に保たれるように日銀が国債を買うので、金利の上昇は止められることになります。日銀が国債を買うことで、量的金融緩和の効果もあります。


日銀が大規模な「量的・質的金融緩和」を導入した2013年4月以降、「予想インフレ率は着実に上昇していましたが、消費税率引き上げと原油価格の下落を契機に弱まってしまいました。

このため、2019年度の消費税引き上げについては消費低迷を通じて予想インフレ率が弱含み、物価が下がることになるでしょう。海外経済のリスクも19年度までに顕在化する可能性があります。その場合、日本経済は相応に下振れることになります。

要するに、今の日本では失業率が2.4%になったからといって、おいそれとすぐに金融引締めや、緊縮財政をするような状況にはとてもないということです。

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2017年6月29日木曜日

都議選の結果で国政への影響は… 民進は「虎の子」の都議を小池氏に奪われるだけかも―【私の論評】積極財政に無関心の小池知事は国政に影響を与えられない(゚д゚)!


都議選の応援をする小池知事

 7月2日に投開票される東京都議選では、何が争点となっているのだろうか。

 民進党や共産党では、トップである代表や委員長が加計学園問題や改憲など、国政問題を掲げている。一方、自民党の幹部や公明党の代表は、豊洲市場への移転問題など都政を訴えている。都議選なのに国政問題を訴えるのは場違いに思えるが、テレビに露出するだけでいいという考え方なのだろうか。

 事前の世論調査をみると、選挙戦では、都民ファーストの会と自民が熾烈な議席獲得競争を続けており、民進、共産は厳しい戦いのようだ。

 国政では、安倍晋三政権が支持率をやや失っており、地方の都議選とはいえ、本来なら民進や共産に有利に働いてもおかしくない。しかし、その批判票は今のところ都民ファーストが受け皿になっている。

 一方で、豊洲移転をめぐる迷走で、都民ファーストへ流れた批判票も一部は自民党に回帰している可能性もある。両党の競争の結果として、民進、共産が切り崩される展開となっているもようだ。それが、冒頭のように民進、共産が国政の課題を訴える背景になっている。

 都議選の現場では都民ファーストと自民は競っている。都民ファーストを率いる小池百合子知事が最近表明した「豊洲移転・築地再開発」の評判は良くない。豊洲と築地の両方にいい顔をしただけと見る人は多い。

 筆者としても、本コラムで書いたように、豊洲への移転は、サンクコスト(埋没費用)論と、豊洲・築地の科学的なリスク評価のみで合理的な帰着である。しかし、「食のテーマパーク」としての築地再開発についてはさっぱりわからない。

 無理してテーマパークのような施設を作ることは可能だが、問題はその後どのように黒字経営できるかだ。思いつきレベルでどこまで収支計算ができるか分からないし、そもそも都庁が口を出さずに、民間に売却して再開発してもらった方が政策の「打率」もいいだろう。そうした不合理性が都民に浸透すれば、都民ファーストの戦いも苦しくなる。

 逆に、今の小池ブームの勢いが続けば、自民が苦戦するだろう。しかし、これが国政に影響するとは必ずしも言えないのではないか。民進、共産が大躍進しない限りは、国政での自公連立は揺るがないからだ。というのは、都民ファーストが勝てば公明の勝利、自民が勝てば自民の勝利なので、かなり乱暴な言い方ではあるが、国政における自公政権としては、どっちが勝ってもいいともいえる。

 都民ファーストが勝利しても、2020年の東京五輪を控えて、小池都知事が国政で自公政権と対立するとは思えず、むしろ協力関係になるだろう。民進にとっては「虎の子」の都議を小池知事に奪われるだけになる恐れもあるのだ。

 いずれにしても民進や共産が期待する国政の混乱にはなりそうもない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】積極財政に無関心の小池知事は国政に影響を与えられない(゚д゚)!

高橋洋一氏の読みは正しいと思います。都民ファーストの会が大勝利したとしても、国政にはあまり影響はないでしょう。

国政に関して、なぜ安倍政権が一強になるかといえば、それは経済対策に関して、野党や自民党内の他の幹部クラスと比較して、まともであるということがいえます。

特に金融政策は未だ不十分とはいいながら、安倍政権が政権の座についてからは、緩和に転じたため、現状では若者雇用を筆頭にかなり雇用環境が良くなっています。

一方、マスコミ全部と与野党の政治家が8%増税に大賛成し、しかもこの増税は日本経済に与える影響は軽微としたため、やむなく増税に踏み切ったところ、軽微であるどころか、甚大な悪影響を与え、個人消費が伸び悩みGDPの伸びはいまいちというところで、今のままではまた何かがあればデフレに戻りかねない状況です。

実際に、8%増税の悪影響で、税収も減っています。2016年度の国の一般会計税収が55兆5千億円前後にとどまり、15年度の56兆2854億円を下回ったことが28日分かりました。前年度割れはリーマン・ショックの影響で税収が急減した09年度以来7年ぶりです。


政府は16年度税収に関し、当初予算の段階では15年度を上回り57兆6040億円に達すると見込んだが、昨年末の補正予算で1兆7440億円下方修正し、55兆8600億円に減少すると見積もり直しました。

この税収減少については、マスコミは8%増税の悪影響であることを報道しませんが、これは以前にもこのブログにも掲載したように、増税による個人消費の減退は明らかで、これが税収の減少につながつていることは明らかです。

日経新聞は、昨秋までの円高で企業収益が伸び悩み、法人税収が低迷したことが響いたなどとしていますが、これよりも個人消費の落ち込みが大きかったことは明らかです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!
 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では8%増税の悪影響について掲載しました。

この記事から、一部分を以下に引用します。
日本国民は、長期化するデフレの中で、ながらく消費支出を抑えてきたが、2012年終盤以降、現在の安倍政権発足と「アベノミクス」によるデフレ脱却の機運の高まりの中で、消費性向は急上昇した。 
2014年4月の消費税率引き上げ直後も、その余勢(もしくは、長年のデフレによる「倹約疲れ」も影響してか)からか、消費性向はすぐには低下しなかったが、2014年の夏場以降、急速に低下し始めた。 
この間、景気回復のモメンタムは失われたが、雇用環境の改善は続いたため、全体としての賃金(統計的には雇用者報酬)の増加は続いた。だが、賃金の回復局面にもかかわらず、消費性向の低下(及び、貯蓄率の上昇)はむしろ、加速度的に進行した。
そして、消費性向の低下の推移をみると、特に加速度的に低下が進行したのは2016年半ば以降であった。 
思い起こすと、ちょうど2016年6月に、安倍首相は、2017年4月に予定していた消費税率再引き上げの先送りを発表した。この決定自体は、当時の経済状況を考えると「英断」であったことは間違いない。ただ、問題は、次の消費税率再引き上げを2019年10月に単に「先送り」しただけであったという点だと考える。 
多くの国民は、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったと推測される。そして、この流れは現在も継続中ということなのだろう。
さて、長々と日本経済の現状について掲載してきましたが、結局何が言いたかったかといえば、確かに8%増税には失敗しましたが、金融緩和のほうはそれなりに効果がでてきて、雇用状況はかなり良くなっているということです。これが、安倍政権一強の最大の要因です。

さて、実はこの事実には、都民ファーストの会が将来国政において大躍進できる機会がったかもしれません。

そうです。東京都が日本全国に先駆けて、積極財政に踏み出せば、東京都のGDPは全国に先駆けて上昇し、金融緩和+積極財政で、経済が上向き東京都はデフレから完全に脱却して、物価も上昇、実質賃金もはっきりと上昇傾向になり、この業績をもって小池知事が国政に積極財政を標榜して再び参画すれば、都民ファーストの会は国政レベルで相当躍進したかもしれません。

さらに、積極財政を標榜し、無論さらなる量的緩和も実施することを標榜し、国政に打ってでれば、国政でキャスティング・ボードを握り、それこそ近い将来に初の女性総理大臣登場ということにもなったかもしれません。

しかし、小池知事はこのせっかくのチャンスを棒に振ったかもしれません。なぜなら、小池知事はどうも積極財施などはなから念頭にないようなのです。

たとえば、今年の2月28日、東京都議会定例会の本会議が開かれ、各会派による代表質問が行われたときに、最初に質問に立った最大会派自民党の高木啓幹事長(51)は、いきなり「個人都民税の10%削減を提案したい」と切り出したのですが、小池氏はこれを一蹴してしまったからです。

高木氏は小池百合子知事(64)が昨年、知事給与を半減させ、議会も議員報酬を2割削減することを可決したことを指摘した上で、「来年度予算案で720億円の歳出削減しているので、成果を直接都民に還元することは、都民福祉の向上に結びつく」と理由を説明。減税規模は約880億円に上るとの見通しを示ししました。

この減税提案は他会派から「知らなかった」との声が上がる完全な“隠し球”。これに対して答弁に立った小池氏は、この提案を一蹴したのです。
 「高額所得者ほど減税額大きくなる。税の公平性の観点から問題がある。都市と地方の税収格差が問題視される中で都富裕論から財政調整の動きに拍車をかけることになりかねない。慎重に戦略的な対応をすべきだ」
代表質問を終え小池知事の前を通って自席に戻る自民高木啓議員
加えて2017年度予算案で無駄なコストを削って捻出したとする720億円は、「待機児童など必要な政策に思い切って投じ、都民に還元している」とすでに使い道が決まっているとかわされました。

質問終了後、記者団に対して高木氏は「議会は自らの待遇を引き下げた。その成果が自己満足で終わってはいけない」としたうえで、「財源の問題も含め唐突なことではなく、背景があってこの問題提起した。確実にできる目標」と強調しました。

この高木議員の「個人都民税の10%削減を提案」に関しては、ひょっとすると本人は積極財政などという考えはなかったかもしれません。単に、節約できたから、それを都民に還元すべきという程度の主張なのかもしれません。

しかし、本人が意図しようとしまいと、積極財政の提案であることにはかわりありません。もし、小池氏が国政レベルでの積極財政を推進すべきであるとの考えを持っていれば、ここまではっきりと否定することはなかったと思います。

積極財政といえば、国政でなくとも、都政でもできることはあるのです。高木議員の提案はその一つにすぎません。

実は東京都には、他にもデフレ的経済と闘う手段があります。これは、経済学者の田中秀臣氏が提案していたのですが、東京都で地域通貨(アービング・フィッシャー流の日付け貨幣というもの)を発行するという方法もあります。

この地域通貨と、現在行われてる地域通貨と決定的に違うのは、これを取得したものは一定期限に利用しないと事実上のペナルティ(追加の増税)を受けることにあります。最寄りの地方自治体の窓口に行き、この「日付け貨幣」を受け取った者(希望者に限定する)は、一定の期間に消費してしまわないと、むしろ追加の税負担を要求されるのです。

そのためこの追加の税負担を避ける目的で、「日付け貨幣」を得たものは積極的に消費する、という政策の枠組みです。これに類した政策の枠組みは多数あります。要はやる気の問題なのです。

東京都の経済が活性化すれば、都の財政状況も改善し、必要な社会保障などの財源として貢献することでしょう。だが、いまの東京都の現状では、むしろ低所得者層の状況を悪化させている消費増税の負担で、社会保障を充実しようという倒錯した形になってしまっている。そしてそれは東京都だけではなく、日本全体の縮図でもあるのです。

だからこそ、東京都が何らかの手段で、積極財政に転じて、東京都が他に先んじて、全国に先駆けてデフレから完全脱却し経済を良くすれば、都民フアーストの会は国政でも勢いを増し、その結果として、小池百合子氏が国政でキャスティング・ボードを握るということもあり得たかもしれないのです。

そうして、もしそうなれば、豊洲への移転問題など、さして問題にされなくなったかもしれません。そうして、もし小池氏がこの道をすすむというなら、私としては大歓迎です。であれば、私は都民ファーストの会を応援し、日本初の女性首相の誕生を待望したかもしれません。

さて、小池百合子氏が積極財政にあまり関心がないことを示す客観的事実はこれだけではありません。

これは、2008年 にまだ自民党に属していた、小池百合子氏が、総裁選に出馬したときの公約をみると良くわかります。

当時の公約について書かれている記事を見つけました。そのリンクを以下に掲載します。
自民党総裁選:小池百合子氏の公約
9月10日、小池百合子元防衛相は自民党総裁選公約で日本が
生かしきれていない潜在力を十分発揮できるよう
戦略的に取り組むことが必要との認識を示した

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この公約から経済政策のみを以下に拾ってみます。

"
 4.「経済力」

(1)財政政策は「財政に家計の常識を入れる」ことを基本にする。

  ・「借金依存の贅沢はしません」=赤字国債増発による景気対策は打たない。

  ・「資金繰り計画を変えません」=2011年度までの財政再建目標は堅持する。

  ・「ヘソクリを今こそつかいます」=構造改革の果実や特別会計の余剰金等を使う。

(2)当面の景気対策について

  ・必要な財源は特別会計の剰余金(いわゆる霞ヶ関埋蔵金)として、財政出動の部分は「経済力」「環境力」「女性力」を強化するという観点から再検討する。

(3)今後の経済財政運営は以下のように考える。

  ・マクロ経済政策運営としては、変動相場制のもとでの財政出動には効果がないとの認識に基づき、金融政策を中心として、必要に応じて減税政策を行い、個別業界へのばらまき財政支出は行わないことを基本とする。

  ・日本がもっている「もったいない力」を生かしきれば2.5─3%以上の経済成長をする実力を持っている。

  ・名目成長率4%を巡航速度とする先進国で一般的な経済の姿を実現する。その結果10年以内に、国民一人当たりGDPを18位から5位に引き上げる。

  ・2011年度の基礎的財政収支黒字化目標は堅持し、増税の前に、無駄の削減、公務員給与の更なる削減、政府資産売却などを徹底的に行う。

(4)借金依存体質に「リバウンド」させてはいけない。

(5)税制改革については以下のように考える。

  ・現在の石油関連税制を総合的に見直して、CO2排出量に応じた一般財源としての「炭素税」に切り替える。

  ・国税は、国税の原則である「応能税、人税、累進的課税」に基づくもので構成すべき。消費税は道州制導入の際に、地方の基幹的税として州政府に税源移譲すべき。

  ・相続税は、高齢者介護の社会化が進んでいること、高齢者の資産格差が拡大しており、この格差を次世代が継承することは望ましくないとの社会的公正の観点から、広く薄い資産課税を適正に行うものとして、福祉財源に充当する。

  ・経済活性化の観点からは、法人税減税の引き下げ、ファンドマネージャー課税の撤廃等の税制の国際標準化を行うべき。法人税率については、地域振興のための法人税減税特区を実現する。

  ・中小企業向けの欠損金繰り戻し還付制度を確立する。黒字から赤字転落した中小企業の納付済み法人税を3年前までさかのぼって還付し、中小企業税制の国際標準化により競争力を高める。

(6)海外の豊かさを日本に取り込む。

  ・羽田空港を24時間化するとともに全国主要都市の国際空港機能を強化して、日本をアジアのヒト・モノ・カネの中心とする。

  ・2013年の農林水産物輸出額1兆円の政府目標を順守する。

  ・国民の豊かさの定義を拡充するため、GDPからGNI(GDP+海外からの純所得)を重視すべき。

  ・英語教育を徹底する。とりわけ公教育における小学校英語教育を拡充する。

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なにやら、頓珍漢な内容です。特に、"財政政策は「財政に家計の常識を入れる」ことを基本にする"というのは、どういうことなのでしょうか。家計のように、とにかく借金を減らすというプライマリーバランス至上主義であるとしかうけとりようがありません。

マクロ経済政策運営としては、"変動相場制のもとでの財政出動には効果がないとの認識に基づき、金融政策を中心として、必要に応じて減税政策を行い"としてはいるのですが、ではこれと財政政策とはどう折り合いをつけようというのか、理解できません。

しかし、財政政策を筆頭にあげているので、やはり、財政政策を優位におき、マクロ経済政策による景気変動対応型の金融緩和、積極財政はあくまでも従という取扱のようです。

やはり、安倍総理が後にあげた、三本の矢である、金融政策、財政政策、成長戦略(成長戦略はとってつけたようなもので不要だったと私は思うが)とは随分異なるものです。

やはり、小池知事の頭の中は、積極財政は従という扱いであるとしか思えません。

これでは、その他大勢の国会議員と大同小異で、安倍政権に対して優位性を保ったり、キャスティングボードを握ることは不可能です。2008年から時もたっているので、小池百合子氏も考えかを変えたかもしれないと思う人もいるかもしれませんが、この時点で財政優先の考えを持っている議員でその後考えを変えた人は与党にも野党にも存在しません。小池知事だけが、例外であるとは考えにくいです。

そうなると、豊洲移転への不手際や、築地市場の失敗も目に見えるてくるでしょうし、都民ファーストの会が国政で大きな影響を与える機会も訪れることはないでしょう。今回の都議会選挙では勝利するかもしれませんが、その後は線香花火のような状況になり、少数政党として、いずれ消えていくか、他の党に吸収されて終わりということになると思います。

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