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2020年3月7日土曜日

前例のない大胆政策…安倍政権は「消費減税」決断を! 財務省は必死に抵抗するだろうが…ここが政権の「正念場」だ―【私の論評】積極財政と金融緩和政策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!


安倍総理

新型コロナウイルスが、世界と日本の経済に大打撃を及ぼしそうだ。株価はすでに急落している。これから、実体経済に波及するのは避けられない。どう対応すべきか。

 結論から先に言えば、私は昨年10月、10%に引き上げた消費税率を元の8%に戻すべきだ、と思う。財務省は必死で抵抗するだろうが、今回の事態はそれほど深刻、かつ前例がない。安倍晋三政権の英断を望みたい。

 多くの読者は、いくらなんでも増税したばかりの消費税を減税するとは「あり得ない」と思われるかもしれない。だが、私は単に自分が期待するだけでなく、「首相の政治判断としても、十分あり得る」と思っている。

 なぜなら、安倍首相は2月29日の記者会見で、次のように語っていた。

 「各地の主要な株式市場において、軒並み株価が大きく下落するなど、世界経済の動向も十分に注視しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行っていく」

 この「インパクトに見合うだけの政策」というフレーズは、私の記憶にない。安倍政権は「コロナ・ショック」がどれほどひどくなっても、それに見合う景気刺激策を展開する決意なのだ。そんな刺激策は減税しかない。

 これまで、日本で景気下支えと言えば、大型公共投資のような歳出拡大策ばかりが展開されてきた。だが、本来は歳出拡大だけでなく、減税もある。実際、ドナルド・トランプ政権を含め、米国では減税が多用されている。

 日本が減税に消極的なのは、財務省が抵抗するからだ。彼らは大きな声で言わないが、「予算のバラマキ」こそが権力の源泉になっている。減税すれば、それだけ原資が小さくなるので、彼らは必死で抵抗するのだ。

 だが、今回の事態は、財務省の都合に耳を傾けているような場合ではない。コロナ・ショックは、2008年のリーマン・ショックを上回る可能性もある。2月27日には、米国のダウ平均株価が過去最大の下げ幅を記録した。

 危機の終わりが見えないどころか、日本も米国も試練は始まったばかりなのだ。リーマンは金融の危機だったが、今回は金融にとどまらず、個人消費、設備投資はもちろん、製造業のサプライチェーンも直撃している。

 加えて、中国、北朝鮮、韓国の政権基盤も揺さぶっている。私は目を覚ますたびに「今日は何が起きているか」と緊張感に襲われる。人々の不安と恐怖は、とてつもなく大きい。そんな心細さはリーマンの時もなかった。

 そうであれば、安倍政権は前例のない大胆な政策で対応すべきだ。言葉ではなく、行動で「政府は国民とともにある」と訴える必要がある。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥ったのは、消費増税が原因だった。減税は増税の誤りを正す結果にもなる。

 最悪なのは、不十分で小出しの対応である。対応に失敗すれば、夏の東京五輪・パラリンピックは吹っ飛び、政権の足元も危うくなるだろう。ここが「本当の正念場」だ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

【私の論評】積極財政と金融緩和策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!

武漢肺炎の猛威はすさまじく、北海道では感染者はとうとう90人を超えました、100人を超えるのも間近いでしょう。これにともなう、経済的損失も凄まじいものになるでしょう。

週明けに発表される去年10月から12月までのGDP=国内総生産の改定値について、民間の調査会社の間では、年率でマイナス6.3%だった速報段階から下方修正され、マイナス幅がさらに拡大するという予測が多くなっています。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は、先月の速報段階では、消費税率の引き上げなどの影響で物価の変動を除いた実質でマイナス1.6%、年率に換算してマイナス6.3%となりました。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は速報値では−6.3%だったが
このGDPについて、最新の統計を反映した改定値が、週明け9日に発表される予定です。

民間の調査会社など11社の予測によりますと改定値は、実質でマイナス1.6%からマイナス2.0%、年率換算ではマイナス6.1%からマイナス7.9%となりました。

11社のうち10社は、速報段階から下方修正されマイナス幅がさらに拡大するとしています。

これは、最新の統計で企業の設備投資が下振れしたためで、2社は前回、6年前の消費税率の引き上げ直後の年率マイナス7.4%よりも落ち込みが大きくなると予測しています。

もうすでに、景気後退局面に入っている可能性もあります。ちなみに、景気後退局面とは一般的に、国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションとみなします。日本経済はすでに景気後退局面に入っている恐れもあります。

これは、武漢肺炎前の数字です。さらに、1月から3月までのGDPも新型コロナウイルスの感染拡大の影響でマイナスになるという予測も出ていて、そうなれば、日本は間違いなく景気後退局面に入ることになります。そうして、これはほぼ確実です。

すぐにでも、消費税減税をしたほうが良いのは言うまでもありません。消費税減税をするにしても、8%未満にするには、法的手続きが必要です。それには、ある程度時間がかかります。

しかし、すぐにできる方法があります。それは、消費税10%はそのままにして、全品軽減税率8%を適用することです。これなら、すぐにできます。これを実行するには、法律を変える必要はありません。安倍政権はまずはこれを速やかに実施すべきでしょう。


さらに、必要とあれば8%未満にできるようにするために新たな法律づくりに着手すべきでしょう。

積極財政には、減税の他にも様々な方法があります。例えば、香港で実施されたように、国民に対する現金の一律支給や、所得減税や社会保険料の減免も考えられます。公共事業の増額もあります。さらには、期限付きのクーポンの支給などもあります。

さらに、今の国債マイナス金利の環境を生かして、政府がマイナス金利で国債発行し、それをそのままマイナス金利で民間に貸し出す「緊急融資制度」を行うということもできます。武漢肺炎で損失を被った個人や企業はマイナス金利で一定額借入できるようにするという方法もあります。

日銀も、武漢肺炎がなかった時期ですら、物価目標を達成できなかったのですか、今後はイールドカーブ・コントロールなどはやめて、異次元の緩和に戻ってもらいたいものです。
中央銀行の資産は金融緩和の度合いに比例する、日銀は緩和しなかったことがわかる

このブログでは何度か掲載してきたように、リーマン・ショックのときには、欧米等が大規模な緩和に踏み切ったにもかかわらず、日銀はほとんど緩和をしなかったために、デフレが深刻化し、円高になりました。

そのため、震源地の米国や悪影響を受けた英国などではいち早く不況から立ち直ったのですが、日本一人だけがなかなか不況から立ち直れず、一人負けの状態になりました。

今回の武漢肺炎による景気に落ち込みは、リーマン・ショック時より酷いことになる可能性は高いです。日銀は、リーマン・ショック時の失敗を繰り返さないように、すみやかに従来の異次元緩和に踏み切るべきです。そうして、それを維持する旨をすぐ公表すべきです。

政府が景気後退局面からの脱出や武漢肺炎対策等のため、国債増発を通じて政府支出を増加させると、長期の市場金利に上昇圧力が加わり、これが次第に民間投資などを抑制するメカニズムが働きます。これに対して、政府支出が拡大するもとでも、中央銀行が市場金利の上昇を抑制すれば、民間投資などへのマイナスの影響は限られ、景気刺激効果の強まりが期待できます。

今般の、景気後退局面と武漢肺炎による経済活動の低下というダブルパンチに対処するためには、政府の積極財政と日銀の緩和政策の両輪で対処するしか方法はないのです。

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2020年3月4日水曜日

五輪延期では済まぬ。韓国式「新型肺炎」検査が日本経済を潰す―【私の論評】武漢肺炎も、数値で見て客観的に物事を判断しないとフェイクに煽られる(゚д゚)!

五輪延期では済まぬ。韓国式「新型肺炎」検査が日本経済を潰す訳

総理の記者会見

2月27日に安倍首相が突如発表した全国一斉休校が、各方面で大きな波紋を呼んでいます。なぜ政府は、混乱が予想されるこのような判断をするに至ったのでしょうか。米国在住の作家・冷泉彰彦さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、今回の対策の真意、すなわち「国策」をあぶり出すとともに、もしも日本がこの先韓国のようにPCR検査を拡大した場合、経済崩壊に追い込まれる危険性があることを指摘しています。

全国小中高一斉休校、問題を抱えたギャンブルか?

それにしても唐突でした。改めて振り返ってみると、

2月25日(火)……基本方針発表、重症者増加回避策を最優先
2月26日(水)……基本方針に追加してイベント自粛要請
2月27日(木)……全国一斉休校方針発表
2月29日(土)……総理会見

という順序だったわけですが、いかにも急な判断であったという印象です。イベント全面自粛や全国一斉休校というのが、予め決定されていたら、25日の基本方針と一緒にまとめて発表すればよかったわけですが、日に日に厳しくなる情勢判断のもとでは仕方なかったのかもしれません。

良かったのは、この4つの発表には矛盾がないことで、1つの一貫したストーリーにはなっていることです。仮に、この4つの発表に矛盾点があるようですと、社会は大混乱に陥った可能性があり、少なくともそれだけは回避されたのは良かったと思います。

矛盾がない一貫したストーリーというのは、以下のような考え方です。
  • 市中感染は全国で相当に拡大していると見ている
  • また、若年層においては感染しても軽症でインフルと見分けがつかないか、無発症のケースも相当に出ているであろう
  • 市中感染が拡大し、その多くが無発症のケースだとすれば、これを放置すればどんどん拡大する。この点についてはSARSよりも、インフルよりも厳しい条件だと考えられる
  • その結果として、重症者が増加して医療機関が対応できなくなり、救命できる重症事例が救命できないケース、これが最悪シナリオであり、このシナリオを避けるのが国策の最優先事項である
この点に関しては、少なくとも2月25日以降の政府は「ブレて」はいません。例えば、加藤勝信大臣は、この25日の時点で「先手先手」ということを言っていました。この点に関して言えば、例えば春節時における膨大な入国許可とか、「ダイヤモンド・プリンセス」での防疫といった点に関しては「後手」であり、弁明の余地はありません。

ですから、この25日の「先手先手」という加藤発言は批判を浴びたわけですが、この発言に限って言えば、加藤大臣は「後手に回った過去の失態」を否定したり、ウヤムヤにしようとしたわけではないと思います。「医療機関の受け入れ体制が崩壊して、救命できるケースの救命ができない」という最悪シナリオに対しては、「まだ間に合うので先手を打っていく」という趣旨での発言であり、この点に関しては理解できますし、29日の総理会見に至る一連の施策との整合性もあると思います。

そこまでは良いことにしましょう。と言いますか、これは決定された国策であるばかりか、極めて大人数の生死のかかった判断であり、その対策の効果が見えないうちから否定したり妨害するべきものではないと思います。

問題は次の2点です。

1.子供は重症化しないという報告がある一方で、子供は無発症のまま感染を拡大させる可能性があり、高齢者や基礎疾患を持つ成人に感染させて重症患者を発生させるのを抑止するために、学校の一斉休校は有効と考えられます。

ところが、そのような説明は「結果を得られない」可能性があるため「子供の命と健康を守る」という説明に「言い換え」をしています。その判断が吉と出るか、凶と出るかはギャンブル性が高いと思います。

2.PCR検査については、キャパに限界がある中で軽症者、無症者が検査のために医療機関に殺到すると、必要な患者の検査ができず、治療体制を潰すことになります。また、医療機関こそ感染の場になりうることもあり、若年者や軽症、無症状の人を対象とした検査は最小限としたいわけです。

更に言えば、ウィルス量が少ない患者の場合は陰性判定となりますが、それで本人が100%安全と誤解するとかえって危険です。また韓国のように徹底的に検査しても一定程度以上感染拡大した場合は、制圧にはつながりません。従って、隠された国策としては、PCR検査の大規模化には消極的とならざるを得ません。

ですが、検査に消極的だなどという方針は明快に説明はできないので曖昧な説明をせざるを得ません。けれども、それが政府不信やモラルダウンを招くと感染拡大につながる可能性があり、この意図的な曖昧姿勢それ自体にもギャンブル性があるわけです。

この2つの問題は非常に重たい課題を含んでいます。

まず1.ですが、一斉休校をするにあたって、仮に「お子さんは重症化しません。ですが無症状のままクラスター化することが回避できれば、結果的に多くの人命を救うことができます」という言い方にしたらどうでしょう?この説明の方が誠実と思いますが、どう考えても「回りくどい」わけです。

ですから、対策を徹底するには「お子さんの健康と命を守るため」という「言い換え」をした方が「結果が得られる」という判断になるのはわかります。更に言えば、安倍政権(の周辺)では、アンチ安倍の世論というのは比較的高学歴・高収入であり、ここまで人命のかかった問題には「ヘソを曲げて来ることはない」という判断があったのかもしれません。仮にそうなら、(そうだとは絶対言うはずはないですが)それも分かります。

しかし、この「言い換え」作戦には問題もあります。今回の休校が「子どもの健康と命を守るため」だと100%真に受ける世論もあり、その中では「無症状なら健康」だという判断の元で、塾に行くのはいいだろうとか、満員電車に乗せて職場に子連れ出勤してもいいだろうという判断を誘発してしまうからです。

反対に対策の真意が理解されている、つまり「無症状の子どもが隠れたクラスターを形成して、静かなパンデミックを誘発、気づいたら重症者が溢れて救命がお手上げに」というシナリオを回避するということで、それが理解されていたらどうでしょうか?塾へ行こうとか、子連れ出勤を認めるのはいい会社という判断は、また別のものとなって行くのではないでしょうか。

一点だけ思うのは、学童保育については、余り批判しなくていいようにも思います。学童に行かざるを得ない子どもというのは、少なくとも「相当に高い率」で「高齢者とは同居していない」からで、仮にそこで自覚のない感染が起きても、直接的に重症者を生み出す可能性は低いからです。

反対に、ベビーシッター代わりに地方から祖父母を呼び寄せて一時同居というのは、ちょっとマズいのではないかとも思います。

この問題は2.も重なって来ます。つまり政府としては、
  • 無症状者や無症状の子どもは、PCR検査をしない
  • 従って、無症状の子どもによるクラスターが発生する可能性はあるが、それは可視化できないし、しない。
  • だからこそ、一斉休校措置により統計的に感染の可能性を抑え込むしかない
というのを国策としたわけです。一連の発表には一貫性があるというのは、そういうことです。現時点では、国としてはこの政策に賭けることにしたわけです。つまり、これが国策です。そして、繰り返しになりますが、その最大の問題はギャンブル性ということです。

勿論、このコロナウィルスの新型については、分からないことも多いわけで、そう考えるとどんな政策も100%正しいわけではなく、ギャンブル性があるわけですが、それはさておき、「高齢者、基礎疾患のある人は重症化する」「反対に子どもは重症化しないばかりか、無症状のまま感染源になることもある」ということを前提とした場合に、「全校一斉休校」「PCR検査は積極的にはしない」「軽症者、軽症疑い者は自宅療養」というのは理にかなっていると考えられます。

問題は、そこを「言い換える」、つまり「一斉休校は子どもを守るため」「PCR検査は拡大へ向けて努力中」と言う言い方にすることで、果たして世論が正しく反応するかは、そこにギャンブル性があるという点です。

この点に関しては、ヒヤリとさせられる事件がありました。

というのは、3月2日に開かれた参議院予算委員会で立憲民主党の村田蓮舫議員が、

「高齢者施設などに対して、イベント自粛や学校の一斉休校と同等の対応をしないのはなぜなのか」

一方で、この村田議員の質問に対しては、報道によれば自民党の松川るい議員による不規則発言(ヤジ)があったそうです。これは、加藤勝信厚労大臣が回答している間のことだそうで、

「高齢者は歩かないから」

という発言だったようです。更に驚いたのは、村田議員は、これに対して、

「自民党席から、高齢者は歩かないから、と松川議員が野次りましたけど、こんな認識でご高齢者の命を守るという認識を与党議員が持っているのに驚きました」

と怒ったようですから、こうなると村田議員が国策の趣旨を全く理解していないことは明白です。政党間の駆け引きとか、野党としてのアンチ権力という伝統というような話の遥かに以前の問題で、とにかく全く伝わっていないわけです。これは怖いことです。


ちなみに、別の報道では、松川議員は「あくまで小中高生と高齢者を比較の問題として発言した」と弁明したそうで、「誤解を与える表現だった」として謝罪したそうです。

これも全く別の意味で怖いことです。村田議員と比較するわけではありませんが、松川議員という人は、自民党議員団の中でも頭脳明晰な政治家だと思います。松川議員の発言は、この国策が何よりも「高齢者の重症化を抑止し、救命できるケースは全て救命する」ということを目的としているという点とは矛盾しませんし、恐らくはその国策を正確に理解しているように見受けられます。

怖いというのは、にもかかわらず(というのはあくまで推測ですが)松川議員の頭脳をもってしてもとっさに国策の正確な説明ができなかったというのは、やはりこの政策を世論に伝えるのは難しいと思ったからです。

もしかすると、松川議員は内閣の閣僚たちよりも正確に国策の趣旨を理解した上で、「これをストレートに世論に説明するのは不可能だし危険」という判断の元でピエロ役を買って出たのかもしれませんが、仮にそう(まさかとは思いますが)だとすると、やはり政策遂行の上でのギャンブル性は明白ということになります。

もしかすると、村田議員にしても全てを分かった上で、あくまでアンチ安倍の野党パフォーマンスというスタイルに徹したということなのかもしれませんし、そうなると、村田=松川の掛け合いもシナリオのある出来レースということになります。仮にそうだとしても、これだけ多くの人命のかかった大問題に対するアプローチとしては不適切です。

ところで、こうしたギャンブル性を一切外して、全く別のアプローチに転じるというオプションも勿論あります。

それは韓国方式とでも言うべきもので、民間の企業も幅広く対象としてPCR検査を思い切り拡大するという方法です。そうなれば、陽性の人の隔離を徹底することで問題が可視化して封じ込めが容易になる、そんなイメージがあります。

ですが、その場合も、無症状の若者や子どもがウィルスを持っていても検査には引っかからず、後日クラスターを作ってしまうというようなケースが出るようですと、これは抑え込めません。反対に、前述したように「100%の確度ではないにも関わらず、陰性だと安心しきってしまう」という中で相当な副作用もあると思います。

それ以前の問題として、猛烈な数の検査が可能になって、その結果として猛烈な数の陽性者が出てしまうと、これは五輪の延期などという話だけでなく、ただでさえ弱くなっている日本経済がボロボロになってしまう危険性もあるわけです。更に言えば、軽症の陽性者を安心して自宅療養させるのは難しく、結局は医療体制を潰してしまうことにもなる可能性があります。

そうなると、100%可視化した透明性のある施策のように見える「ニーズに応えたPCR検査」というアプローチも、それ自体が大きなギャンブルになるということです。ちなみに、現時点でのアメリカは「余計な検査はしない」という姿勢で、本日(2日の月曜日)の現時点ではNY株が大幅に反発しているのも、その効果と言えるように思います。

コロナウィルス問題に関する議論としては、現時点、つまり3月2日時点での論点はそのあたりになるのではと考えます。

冷泉彰彦

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

【私の論評】武漢肺炎も、数値で見て客観的に物事を判断しないとフェイクに煽られる(゚д゚)!

上の記事の分析はかなり鋭いと思います。安倍政権のギャンブルなどとしているところは、いただけないと思いますが、安倍政権が現在まで、コロナウイルスに関する知見から、感染をなるべく広げず、高齢者の重篤化を防ぎ、なるべく多くを救命するということで、大きな賭けに出たのは間違いないです。

そうして、こうした政策に関しては、現在我々は協力できることは協力すべきです。ワイドショー等では、責任論を問う声もありますが、ワイドショーにでてくる専門家、識者などはこの政策に責任を負える立場ではありません。責任論は後からで良いです。

それに、すべての情報が整った上でないと責任など問えないです。あまりに責任論に特化した、ワイドショーなど百害あって一理なしだと思います。

それにしても、つい先日このブログでも指摘したように、毎年インフルエンザに1000万人が感染して、直接間接が原因で年間1万人が死亡しているのです。だから、新型コロナウイルスに過度に脅威を覚えるべきではないですが、何しろ未知のウイルスですから、過度に楽観的になることなく、政府や自治体の規制に従いつつ、様子を見るというのがペストと言えると思います。

その上で、デマに煽られないようにすべきです。その意味では、上の冷泉氏の記事も、全部が正しいとか、間違いなどというのではなく、参考にすべきものと考えていただきたいと思います。無論私のこの記事もそうです。

デマというと、最近ではトイレットペーパーの不足です。これは、鳥取県の米子医療生活協同組合は、組合運営の事業所職員がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して「トイレットペーパーが品薄になる」などと誤った情報を投稿したことなどを起因として発生したものです。

今後、このようなデマが多く出回ることでしょう。以下はデマとまでいえるかどうかわかりませんが、日本での感染者数はかなり多いと認識されているようですが、そうともいえないデータがあります。それを以下に掲載します。

以下の表は、武漢肺炎感染者数の人口比率(2020/03/03)です。


感染に限らず統計は、客観的に見ないと理解できませんし、見方を誤ってしまいます。上の表は、感染者➗人口の比率で比較した表です。

この表でみると、現在では韓国が世界で一番感染率が高いです。少なくとも、韓国の防疫体制が優れているとはいえないことがわかります。それと、中国の統計は単純に信じることはできないと思います。中国の経済統計はデタラメです。コロナウイルスの感染者数だけが、正しいということはできないと思います。

この表によれば、日本は16位ということで、19位の台湾とあまり変わりません。現時点では、特に日本が台湾などの他国と比較して、格段に防疫体制が格段に劣っているとは思えません。

こうしてみると、日本は世界的にみても人口の多い国であることがわかります。中国などは例外中の例外です。人口比でみると、韓国が一番感染していることになります。

このブログでは、数に関してはなるべく客観的であるように努めてきました。たとえば、中国で2010年あたりから、中国では毎年10万件ほど暴動が起こっているとされていますが、中国の人口13億人(最近14億人になりました)ですが、日本の人口は1億2千万人であることを考えると、中国で10万件というと、日本では人口が約1/10とみて1万件発生している勘定になります。

1万件というと、日本であってもこれはとんてもないことであるということが、ひしひしと伝わってきます。

これと同じく、どのような数字も客観的に見ないと、意味を持ちません。感染者数だけでみるというのは、あまりに非合理的だと思います。日本国内で比較するにも、都道府県単位の人口比率でみたほうが、より客観的になると思います。

ただし、人口比でみたとしても、東京は人口が約1千万、北海道は500万人ですから、東京と比較しても、北海道は突出して感染者数が多いです。

北海道では、新型コロナウイルスの感染者が今日までに82名に上っています。政府の専門家会議では、小規模な集団感染「クラスター」の発生が指摘され、25日には感染者数が東京都を上回って都道府県別で最多となりました。なぜ感染が相次ぐのでしょうか。統計データや専門家らの見解から「検査数が比較的多い」「冬の一大観光地」という要因が見えてきました。

北海道内の新型コロナウイルスの感染検査は道立衛生研究所(札幌)など2カ所で行い、1日最大で約60件の検査が可能です。1月25日正午現在では、全道で計170人に実施され、道の担当者よれば「許容量を超えずに、必要な検査ができている」といいます。

ただし、愛知県は検査態勢が「道内とほぼ同規模」(担当者)とされていますが、感染者は本日で49人です。

道内が国内有数の冬の人気観光地であることを踏まえ、人と人が接触する機会が増え、必然的にウイルスに触れる可能性が高まっていると考えられます。

冬場の観光需要は全国的に落ち込む傾向にあるが、道内はスキー場や流氷など冬ならではの観光地が多いです。2018年の観光庁の調査によると、道内の1~3月の宿泊客数は約457万人。集計済みの30都道県の中で東京都、千葉県に次いで3番目に多いです。

さらに冬場の観光地点や行事開催場所は1200地点と全国最多いです。雪を避けて屋内で楽しめる施設も少なくないです


2018年に北海道を訪れた訪日外国人客は298万人を記録しており、日本を訪れた3,119万2,000人のうち9.6%もの外国人が北海道を訪れていることになります。北海道単体で見ると、訪日外国人客数は前年比12.9%と順調な伸びを見せています。

北海道を訪れる外国人の特徴としては特にアジア圏からの訪日客が多く、中国からは71万9,500人、韓国からは67万7,600人、台湾からは60万3,900人が訪日しており、全体の9割近くがアジア圏からの訪日客となっています。これらも、感染の多いことの原因の一つにもなっているものとみられます。

デマが多い現状では、一番便りなるのは数字だと思います。テレビのワイドショーなどでは、特に数字も出さす、結果として不安を煽っているものも多数目にします。私達としては、武漢肺炎関連等でも、なるべく数値で見て、客観的に物事を判断すべきです。

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2020年2月20日木曜日

ロンドン市長選候補、五輪代替開催提起は火事場泥棒―【私の論評】武漢肺炎の対処法やTwitter等での発言内容が、人を客観的に分析する手がかりとなる(゚д゚)!


ショーン・ベイリー氏

ロンドン市長選挙に保守党公認候補として出馬する予定のショーン・ベイリー氏が自らのツイッターにツイッターに以下のような投稿をし、代替開催に意欲を見せている。

「ロンドンは2020年にオリンピックを開催できます。我々にはインフラと経験があります。コロナウイルスの大流行により、世界は我々が一歩踏み出すことを必要とするかもしれない。市長として、私はロンドンが呼びかけに答え、オリンピックを再び開催する準備ができていることを明確にします。」

このコメントはすでに大きな反発を呼んでいるが、非常に浅はかで失礼千万だ。そもそも、ダイヤモンド・プリンセス号はイギリスのP&O社が所有し、船籍はイギリスである。船内での新型コロナウイルス感染の第一義的責任は、所有者と運行会社(これはアメリカの会社)にある。イギリスの船で感染が起きたことにより日本中が大変なことになっているのに、イギリス人としてよくそんなことが言えるなというが正直な気持ちだ。

さらに、ロンドンは2012年に五輪を開催したばかりなのに、そこまでして注目を浴びたいのか、保守党には今では様々なバックグランドを持った政治家がいるのに、なぜこのような時代錯誤的・自国中心主義的な主張をするのかとその強欲さに呆れる。

最後に、五輪開催の時期にロンドンで新型コロナウイルスが蔓延していない保証はない。その可能性も考慮できないような人間は市長候補者として失格である。

五輪を東京で開催できるか否かはここ一ヶ月くらいが勝負だと思うが、仮に今年の夏に開催できなかったとしても、それは日本政府の責任とは言えないだろう。個人的には日本政府のダイヤモンド・プリンセス号に対する対応は間違っていたと思うが、同じような状況で他国の政府だったらもっと上手くやれるという保証はない。日本政府は来年以降も含めて開催時期をずらすことを堂々と主張すべきで、もともと日本が発信源でないコロナウイルスの問題で開催を放棄すべきはない。私は元々五輪には熱心な人間ではないが、そんなことをしたら不等な欧米中心主義に屈したとして後世に汚点を残すので、開催放棄には大反対だ。

【私の論評】武漢肺炎の対処法やTwitter等での発言内容が、人を客観的に分析する手がかりとなる(゚д゚)!

ショーン・ベイリー氏のこのtwitterでの発言で、私は数日前のYouTuberのKAZUYA氏の発言を思い出してしまいました。


ショーン・ベリー氏のこのtwitterへの書き込みは、確かに軽薄の誹りを免れないと思います。彼は、英国内の自分の支持者などに向けて、メッセージを発信したつもりなのでしょうが、このツイートは全世界に向けて発信されています。

当然、世界中の人が見ているわけで、世界中のまともな人が見れば、誰がみても火事場泥棒的なイメージを抱くと思います。それに当の英国内の支援者らも、現状のようにコロナウイルスの感染など、英国内ではまだ深刻では無い状況から、深刻化していけば、ショーン・ベイリー氏の発言のネガティブな面が認識されていくと思います。

実際、ダイヤモンド・プリンセス号船内にいるイギリス人の乗客乗員74人の一部からは、他の国はそれぞれの市民を空路で帰国させているのに、自分たちは存在が「忘れ去られている」ようだとの声が上がっています。

BBCによれば、英首相官邸の報道官は、「我々は、この非常に厳しい状況の中で捕らわれている、すべての人々を気の毒に思っている。(中略)外務省は、今後飛ばすかもしれない帰還便に乗る意向があるかをはっきりさせるため、ダイヤモンド・プリンセス船内にいるすべてのイギリス人と連絡を取っている」と述べたそうです。

報道官はまた、英政府は「船内にいる人々の健康と安全を保証するためのあらゆる選択肢について、緊急に検討」していると明かしたそうです。

英政府の発表に先立ち、イギリス人の乗客デイヴィッド・エイベル氏は、「私たちの存在が忘れ去られているようだ」と述べ、船内にいるイギリス国民を退避させるよう英政府に求めました。(写真下)


デイヴィッド・エイベル氏(右)は、英政府が自分と妻を救出してくれるという確信がほとんどないと語っています。

エイベル氏の息子スティーヴ氏は、ユーチューブにメッセージを投稿。自分の両親が「ストレス」や、28日間も船内にいるという「監禁」の影響を受け始めていると書きました。

「私は、お母さんとお父さんが朝目覚めた時に、何か情報が届けられることを望んでいる。両親には、連絡を入れてもらうことが必要だ」

ショーン・ベイリー氏は、自国民が、日本に停泊している、英国籍のクルーズ船で難儀をしていることを知った上でが、知らないのか、いずれにしても、難儀している自国民のことは、無視してオリンピックの開催を示唆するなど、軽率のそしりは免れません。

今回の、武漢肺炎に関しては、ほとんどがネガティブなことばかりですが、良いことが一つだけあります。

それは、KAZUYA氏がtwitterのコメントに関して主張しているように、馬鹿などが見極められるというのと同じで、このような未曾有のことが起こった場合の反応をうかがっていると、話をしている相手が馬鹿なのか、それとも早とちりの傾向があるのか、物事を良く考えるのか、慎重なのか、慎重すぎるのか、それとも単なるワイドーショー民なのかがわかるということです。

人を見る目を養うのは難しいともいわれていますが、Twitter等のSNSでの発言や、今回のクルーズ船やコロナウィルスに関する考え等を聴いて詳細に分析すると、客観的に相手のことがかなり分析しやすくなります。

岩田健太郎氏

ウイルスなどの感染に関する専門家であれば、たとえば最近の岩田 健太郎氏ダイヤモンド・プリンセス号の防疫体制が脆弱であるとの内容をYouTubeで拡散した行動などが、拙速であったと思われることなどで、岩田氏の評価ができます。

専門家でない人でも、ある程度物事を考えて発言しているのか、単にテレビの受け売りを話しているだけなのかが理解できます。

私自身は、この岩田氏の動画を視聴して、その内容を昨日のこのブログ記事に掲載しようかとも思いましたが、たとえば岩田氏がどのくらいの時間をかけて(後でわかったのですが、2時間程度)ダイヤモンド・プリンセス号の中を観察したのかもわからない状況だったので、真偽を判定できないと思い、やめました。正しい判断だったと思います。

政治家などの、TwitterなどSNSでの発言をチエックしたり、今回の武漢肺炎に関する発言をチエックすれば、その政治家の能力や性格がわかります。これは、国会での答弁などを聴いたり選挙演説を聴くよりもその政治家の真の姿を探ることができる可能性があります。馬鹿や無責任な政治家には、投票しなければ良いです。

会社や身の回りの人なども、普段の働きぶりや、会話だけではなく、Twitterなどでの発言や、武漢肺炎などへの反応を分析すると、その人たちをより深く分析をするとこができます。これは、普段はなかなか得られない機会です。

特に、ストレスがかなり溜まっているかなどもわかるので、それなりの対処や措置がやりやすくなります。

最も良いのは、テレビなどの報道を単純に信じ込んでいるワイドショー民などとの付き合いはなるべく控えて、無駄な時間を省くことができることです。

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2020年2月19日水曜日

政府、広がる批判に焦り 「水際で失敗」、支持率に影―新型肺炎―【私の論評】ダイヤモンド・プリンセス号の教訓を活かし、挙党一致で武漢肺炎対策にあたれ(゚д゚)!

政府、広がる批判に焦り 「水際で失敗」、支持率に影―新型肺炎

首相官邸に入る安倍晋三首相=18日午前、東京・永田町

 新型コロナウイルスによる肺炎への政府対応に批判が広がっている。安倍晋三首相が先頭に立って取り組んだ水際対策は奏功せず、国内で感染が拡大。横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に対する措置でも、乗客乗員を船内にとどめ置いた判断が「かえって集団感染を悪化させた」と指摘された。「未知の感染症」への国民の不安は内閣支持率にも影を落とし、政府・与党は危機感を強めている。

乗客下船、19日開始 新たに88人の感染確認―クルーズ、21日に完了か

 「事態を小さく見せようとし、水際で失敗した」。野党共同会派が18日に開いた新型肺炎に関する合同対策本部の会合で、国民民主党の泉健太政調会長は政府の対応を厳しく批判した。

 政府は当初、発熱症状や中国・武漢市への渡航歴、武漢滞在者との接触がある人らをウイルス検査の対象にしていた。ところが2月に入り、感染経路の分からない感染例が続出。首相側近は「1月時点で中国人全ての入国を止めるしかなかったが、もう遅い」と頭を抱えた。

 政府関係者によると、習近平国家主席の国賓来日を控えて中国側から「大ごとにしないでほしい」と要請があったといい、これも後手に回った要因だとみられる。

 ダイヤモンド・プリンセス号への対応に関し、政府高官は「最初から3700人を下船させたらパニックになっていた」と批判に反論する。ただ、ある閣僚は「本当は早く下ろして隔離すべきだったが、全員を収容できる施設がなかった」と内情を明かした。

 国会で「桜を見る会」をめぐる問題が連日追及される中、各種世論調査で安倍内閣の支持率は軒並み下落。新型肺炎への対応を通じて危機管理能力をアピールすることで、局面転換を期待していた政権幹部を落胆させた。

 自民党の鈴木俊一総務会長は18日の記者会見で「国民は必ずしもポジティブに政府の対応を評価していない」と指摘。菅義偉官房長官は会見で「良かった点、悪かった点をしっかり検証し、次につなげていきたい」と語った。

【私の論評】ダイヤモンド・プリンセス号の教訓を活かし、挙党一致で武漢肺炎対策にあたれ(゚д゚)!

日本では、ダイヤモンド・プリンセス号で知られるようになったクルーズ船ですが、これについては、知られていないことが多くあるようです。

ダイヤモンド・プリンセス号

世界のクルージングのビッグスリーは「カーニバル・コーポレーション(Carnival Corporation)」、「ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(Royal Caribbean International)」、「ノルウェージャン・クルーズ・ライン(Norwegian Cruse Line)」である。この3社で世界のクルージングの82%のシェアーを持ち、それぞれ本社は米国にあります。

クルーズライン国際協会(CLIA)に加盟しているクルージングの主要船会社は58社あるという。水、食品、医療、下水設備、乗客安全などの守るべき規定がCLIAで定められています。

現在、世界で運行しているクルージング411船の内の70%はバハマ、パナマ、バミューダ諸島、マルタの4カ国の国籍になっているそうです。これらの国では環境規制が緩く、タックスヘイヴンの国でもあります。また客船の耐久性への規制は緩く、20年以上運行しているクルーズが結構あるといいます。

ブラックな労働環境、汚物の海洋投棄

前述のクルージング最大手3社は米国に本社を構える船会社ですが、乗組員は季節労働者のようなもので労働契約条件はその船が登録してある国籍の基準に従うことになっているそうです。

乗組員の契約は最高9カ月で、週労70時間、休暇はなく、家族と離れての生活で、しかも通勤があるわけではなく、同じ船内での寝泊まりとなります。乗客の目には見えない乗組員のこのような厳しい勤務事情があります。

更に、環境保護という面において、3000人の乗客が1週間乗船している客船の場合の人的廃棄物は7万5000リットル、浴室トイレそして食器洗浄に使用する水量は37万リットル。

加えて、洗濯などに使用される水も必要です。それに廃棄されるゴミの処理も必要です。これらの汚水そして汚物は海に捨てられるわけです。地球の環境保全という面において客船は必ずしも綺麗な観光業ではありません。

港に停泊している間もエンジンは作動しており、その間も汚水・汚物は海に流れ、大気中にCO2を放出しているわけです。シンフォニー・オブ・ザ・シーズの6つの発電機は1時間に14.9トンの燃料を消費しており、この量は5655台の車が約50kmの距離を移動するのに必要なのに匹敵するそうです。

乗船後の行方不明者も少なくない

また、日本でも寄港地周辺における万引きやポイ捨てなどの迷惑行為が目立つため、商店
街の中には、「クルーズ船客お断り」の貼り紙を掲示する店もあるといいます。

日本以上にクルーズ船が寄るスペインのマジョルカ島では、普段の人口は111万5999人ですが、一昨年8月は客船の入港で人口が一挙に207万8276人に膨れ上がったそうです。同島の人口がひと月でほぼ2倍近くになったのです。

その結果、地元市民にとって生活に不自由を感じるようになったのです。しかも、クルージングに乗船しての観光客は上陸して思い出になる商品を僅かに買って、記念写真を撮るだけというパターンが大半で地元の富の蓄積にはならないとしています。

そのため、シンフォニー・オブ・ザ・シーズの各寄港地では環境汚染や地元市民の生活を脅かすことになるとして市民から寄港反対の声が上がっているほどです。

さらなる問題もあります。それはなんと、「乗客が消息不明になる」問題です。

クルージング犠牲者協会(Cruise Victims Association)によると、2000年から現在まで200人が乗船したあと行方不明になっているといいます。大型客船はあたかも海上に浮かぶ小さな町といった感じですが、しかもそこには警察はいません。厳密に言えば船長などは警察と同様の権限を持つのですが、客の数から考えると、あまり機能しているとは言い難いです。

乗船した後、酔ぱらって海に落ちたり、殺害されたり、盗難やセクハラに合ったりで、乗客の安全という面においては些かどころか、かなり問題ありなのです。旅行中に何やら、問題があったにしても、飛行機なら何日もそれに付き合うこともないですが、クルーズ船では、かなりの長時間それにつきあわなければならないです。

クルーズ船の教訓

クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の乗客・乗組員隔離の状況は、CNNやBBCなど、世界中にニュースで広がりました。2月16日現在、全乗客3711人のうち355人が感染しました。

クルーズ船には、日本人だけでなく海外からの乗客も多数乗船していました。この中に1月下船した後に感染が発覚した香港人男性が感染源の可能性があるとされ、その後の2次感染3次感染が急速に広がったと考えられています。この例からも、新型コロナウイルスの感染力は非常に強いものと考えられます。

クルーズ船の教訓として以下の2つあげたいです。

第1として、感染拡大のために長期間下船させずに隔離という状況が良い判断だったか、隔離を解除して下船させるタイミンがあるとすればそれはいつだったかと、振り返る必要があります。

2月18日現在、一部下船ははじまりましたが、いまだにクルーズ船の非感染者の隔離は続いています。この中で、米国やカナダはチャーター機で乗客を自国に戻し、自国で隔離を継続することになっています。台湾やオーストラリアでも同じような動きがあります。

ダイヤモンド・プリンセス号の中を消毒する自衛隊員

しかし、当初の隔離処置が必要であったと言う判断自体が一概に間違っているとは言えないです。国内感染が明らかでない状況の中で、客船から感染の可能性のある乗客を下船させなかった決定は、致し方ないといえます。

感染の正体や今後の見通しが誰もわからない中、誰かが決定しなければならないのです。この中で、感染者を隔離という処置は、基本的考え方です。ただし、あとで振り返る必要はあります。どの時点で隔離に限界があると考えるか、下船させるべきか、見直す必要があります。そして今後の教訓にする必要があります。

第2として、換気の問題です。

感染経路が、飛沫感染(くしゃみや咳)や接触感染(手すりなどに触れること)以外に、注意すべき点はなかったのでしょうか。この点で、個人的には、空調環境の整備に注意する必要性があるのかもしれないと考えます。

ダイヤモンドプリンセス号は設備に優れた豪華客船であることは間違いないし、他の船に設備で劣ったところはないと思います。その上で、空調の新鮮空気量(外気の量)が、新型コロナウイルスのように感染力の強いウイルスの感染予防には、不十分となった可能性があるのではないかと考えます。

通常の風邪のウイルスでは問題にならない換気も、新型コロナのような強い感染力があるウイルスには、新鮮空気量100%の外気換気を行う必要があるのではないかと考えます。

平常時のダイヤモンドプリンセス号の換気は、通常はキャビン30%、公室・階段室50%、病院・ギャレ100%です。なお、今回の新型コロナウイルスの感染が問題となって以後は、外気換気が十分に行われているとのことです。

平常時に外気100%では、室内は快適な温度が保てない可能性があるので、普段の豪華客船なら乗客から不平が出るかもしれないです。平常時には新鮮空気量100%を行うことは難しいかもしれないです。

しかし今後、未知のウイルス感染が考えられる状況下では、少なくともすぐに、換気を十分にする措置を取る必要があります。

室内の空気を循環させるシステムを使った乗り物や建物では、ウイルス濃度が高められたまま感染を広げるリスクがあります。室内循環でも、もちろん通常の風邪のウイルスでは問題にならないです。

しかし、新型コロナウイルスは感染力が高いです。換気をすることで、ウイルス濃度を下げ感染率を下げることが出来ます。また、外へ放り出されたウイルスも、濃度が低ければ感染するリスクが低くなります。このため、換気が難しい場所でも、外気100%の換気システムの開発が望まれます。言うまでもなく、単純に窓が開けられれば、窓を開けることも重要です

挙党一致でウイルス対策にあたれ

日本のマスメディアでは連日新型コロナウィルス関連の報道で満ち溢れており、国民の関心は自分や家族の身をどうしたら守れるかに集中しているようです。ところが永田町では相変わらず「桜を見る会」の追求に明け暮れています。

野党は「桜」を安倍総理の最大の弱点と見て、政権交代へ追及の矛先を緩めようとはしていません。おそらく野党の見誤りであることは直ぐに明らかになることですが、もし総理が追い込まれて、今の時点で総辞職を余儀なくされた場合を考えるとゾッとします。

将来的に安倍内閣が無能政権だったと烙印を押される可能性はありますが、それでも今は挙党一致で新型ウィルスに対抗すべきです。

4月になって暖かくなり、湿度が高くなれば自然とウィルスの脅威も薄れると思います。少なくともそれまでは意味の無い政権攻撃は止めたら如何でしょうか。実際、東日本大震災のときには野党自民党は、いっとき与党民主党と休戦して、崩壊寸前だった菅内閣が命拾いしたということもありました。

黒岩氏(左)は安倍首相から反論される場面も=27日、衆院第1委員室

一刻も速い感染症対策が求められているのですから、国会議員の質問もやはり9割は武漢肺炎(COVID2019)への対策の現状と反省、および今後の対応へ充てられてしかるべきです。

厚労省直轄で対応することには無理があり、地方自治体でも独自の防衛対策が検討されつつあると思いますので、各党の県連を通して地方議会での議論を国会に吸い上げて、より有効な対策を打ち出す必要があります。

誤った方針の下で政権追求ばかりをしていると、国民は呆れ返ってしまい、次の総選挙では野党は大崩壊するでしょう。

内閣支持率は安倍政権のダイヤモンドプリンセスでの検疫失敗で大分下落を続けていますが、下がったポイントは野党には流れてはいないようです。

今回安倍総理は、危機管理の弱さを露呈しましたが、それでも代わりの適任者が浮かばないという、現実があります。まずは、ここしばらく4月あたりまでは、挙党一致でウイルス対策に邁進すべきです。

日本の住民一人ひとりが、感染予防のエキスパートに

新型コロナウイルスの感染力は、これまでに考えられないほど強いようです。これだけ多くの日本人医師が初めに感染を確認されていることは、これまでに例がありません。

おそらく空気感染を起こす結核よりも感染力が強いといえるかもしれないです。基本的には、飛沫感染と接触感染です。くしゃみや咳からウイルスがまかれ、そこから感染するのです。

感染者がウイルスのついた手で、手すりやつり革にふれ、その上を第3者が触れ、その手で自分の鼻や口をさわれば、ウイルスが体内に取り込まれます。だからこそ、手洗い・うがい・マスクは、非常に大切であり、感染予防の重要な行動となります。

私たちは、自分への感染も、他人への感染も、手洗い・うがい・マスクで、予防するのです。そして、自分を守り、他人を守り、日本を守り、世界を守るのです。私たち一人一人が、感染予防のエキスパートになって、早くマスクを取れるようになるべきです。そして、感染予防対策の先進国として世界に認められるようになりたいものです。

特に、ダイヤモンドプリンセスの例は、詳細に研究して、今後の対策に役立てるべきです。

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2020年2月16日日曜日

いまは“政治休戦”して「新型肺炎対策」に集中! 感染拡大も政府の対応チグハグ…早急に体制立て直しを ―【私の論評】今は挙党一致で、武漢肺炎の撲滅と、革新的な危機管理計画を実行できる体制築くべき(゚д゚)!


     新型コロナウイルス対策本部の会合で発言する安倍首相。
     左は加藤勝信厚労相=1日、首相官邸

中国・武漢発の新型肺炎の感染が拡大するなか、安倍晋三政権の対応がチグハグだ。戦いはむしろ、これからが本番である。早急に体制を立て直すべきだ。

 例えば、武漢からチャーター機で救出した邦人の帰国費用、1人約8万円は政府が負担する方針という。当初は本人負担のはずだったのに、与党の一部が異を唱え、途中で方針転換した。

 政府が強制的に帰国させたならともかく、帰国は本人の意思を尊重した結果である。救援機が飛ばなかったら、すぐ帰れなかったのも明白だ。それなら、政府に感謝して、本人が負担するのは当然ではないか。

 公明党など与党の一部は「これは災難」「緊急事態に余儀なくされた結果だ」などと理由を挙げた。そんなことを言ったら、地震でも台風でも政府が全部、カネを出す話になりかねない。人気取りで言ったのだとしたら、とんでもない勘違いである。

 第1陣で帰国した中では、帰国後の検査を2人が拒否した。「強制帰国」ではなかった証拠である。政府の詰めが甘かったから、後になって右往左往している。

 外国人の入国制限についても、安倍政権は「湖北省滞在者の外国人」に限って制限する方針を決めた。これも甘い。武漢市長は都市を閉鎖する前に「500万人が街を出た」と認めている。中には、感染者もいたはずだ。

 それなら、感染者は上海や北京など他都市や外国にも散らばっている。入国制限の対象を湖北省に限っていたら、他からの感染を食い止められないのは自明である。

 安倍政権の入国制限は、世界保健機関(WHO)が「世界的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言したのを受けて、発動された。そんなWHO頼みの判断自体が間違っている。WHOの事務局長が中国に甘いエチオピアの元外相で、中国に及び腰なのは、周知の事実ではないか。

 米国やオーストラリア、シンガポールなどは、いち早く「過去2週間以内に中国に滞在した外国人」の入国を制限した。日本も手遅れにならないうちに、制限対象を中国全土に広げるべきだ。

 細かい話で言えば、帰国者の宿泊を民間のホテルに任せたのも問題だった。ホテル側の善意は評価したいが、本来、これは政府の責任で「隔離と検査」を実施すべき話である。後になって、警察施設などが用意されたが、対応が後手に回ったのは否めない。

 政府の対応が甘いままだと、世界から日本に対する信頼を失いかねない。そうなったら、東京五輪・パラリンピックの開催も危うくなる。国際オリンピック委員会(IOC)が何を言おうと、選手たちが「日本に行きたくない」と言い出したら、おしまいだ。

 いま、日本は世界で一番厳しい防疫体制を敷いて当然の立場にある。必要があるなら、新規立法も検討すべきだ。

 与党内は「ポスト安倍」をめぐる思惑も交錯しているが、そんな駆け引きをしている場合ではない。いまは政治休戦して、新型肺炎対策に集中して取り組んでほしい。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

【私の論評】今は挙党一致で、武漢肺炎の撲滅と、革新的な危機管理計画を実行できる体制築くべき(゚д゚)!
確かに、武漢肺炎の感染が拡大しているにもかかわらず、安倍政権の対応チグハグでした。そのためでしょうか、内閣支持率が下がっています。

共同通信社が15、16両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は41・0%で、1月の前回調査から8・3ポイント下落しました。「桜を見る会」の疑惑に関し、安倍晋三首相が「十分に説明していると思わない」は84・5%と依然高く、首相の国会対応への批判が背景にあるとみられます。新型コロナウイルス感染拡大による日本経済への影響について「懸念」「ある程度懸念している」との回答が計82・5%に上りました。

支持率に関しては、森友学園問題を巡る決裁文書改ざん発表後の18年3月の調査で9・4ポイント急落して以来の大幅下落でした。回答は固定電話513人、携帯電話516人でした。

ただし、1月前回調査では、「桜を見る会」の疑惑も追求されいましたし、この頃はまだ新型肺炎に関しては、まだ報道されておらず、やはり新型ウィルス感染拡大への対処がチグハグなことが、大きく影響しているものと考えられます。

さて、危機的状況の時に過去の政権はどのように対応してきたのか、振り返って見たいと思います。疫病に関しては、今回のような規模では、現自民党以外の政権は経験したことはなく、地震による震災は自民党以外の政権でも経験していることから、比較のため震災の時の対応を見てみようと思います。

関東大震災のとき、総理大臣は交代中、内閣は不在でした。2011年3月11日には、日本を襲った100年で3度目の大震災ともいわれる大地震が発生しました。

2カ月前の3月11日、民主党菅直人首相は絶体絶命のピンチでした。

「献金については、事務所に確認したところ、いただいている」

午前中、参議院決算委員会で、背広姿の菅は苦しい表情で答弁しました。

2011年度予算は自然成立が決まったものの、予算関連法案は成立のメドが立っていませんでした。内閣支持率も20%まで下落した(2月21日発表の朝日新聞の調査)。

2月下旬から専業主婦の年金救済問題で迷走が始まりました。苦境が続いていたときに、首相自身の在日外国人からの違法献金疑惑が飛び出したのです。不人気のまま4月の統一地方選を迎えれば、惨敗必至で、4月下旬に進退極まる可能性がありました。

ところが、3月11日の午後2時46分、マグニチュード9.0の大地震が襲ったのです。防災服に着替えた菅は6時過ぎ、与野党党首会談に臨む。自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表とも「全面協力」を表明し、一転して「政治休戦」となりました。未曽有の大災害で、「救国」「挙国一致」「総力結集」が世論になりました。一瞬にして事実上の大連立体制が出来上がったのです。菅は九死に一生で息を吹き返しました。

明治時代に建設された浅草にあった凌雲。震災当時日本で一番高い12階建ての建物だった

大震災は1923(大正12)年9月1日の関東大震災(マグニチュード7.9)、95(平成7)年1月17日の阪神大震災(同7.3)に次いで、この100年で3度目でした。関東大震災は死者・行方不明が10万5000人余、被害総額は約46億円(当時のGDPの約28%)、阪神大震災は6400人余、被害は約10兆円(GDPの約2%)、東日本大震災は約2万6000人で、被害総額は20兆円(GDPの4%超)を超えました。

関東大震災のときは、実は政権交代の真っただ中でした。8日前の8月24日、加藤友三郎首相が病没しまし。28日に後継の山本権兵衛元首相(海軍大将)に組閣の大命が下ったのです。政党側は第一党の政友会が内部分裂を起こしていて、山本の強力な指導力が求められ、9年ぶりに首相に返り咲きました。

   後藤新平。1857年生まれ。関東大震災後に内務大臣兼帝都復興院総裁。当初の復興案は、
   規模縮小を余儀なくされたが、今日の東京の骨格が造られた。

山本は9月1日の朝、東京市長の後藤新平を参謀役にして組閣を始めました。閣僚の人選を進めていたとき、午前11時58分32秒に大震災が襲いました。

内務大臣に決まった後藤は大蔵大臣に日本銀行総裁の井上準之助を推しました。翌2日に自ら日銀本店に向かいました。路上で井上の車と出合ったので、自分の車に乗せ、自邸に連れていって説得しました。

「未曽有の大震災が発生した。この惨状を目の前にして躊躇している場合ではない。復興には財政、金融における君の手腕がどうしても必要だ。大蔵大臣を引き受けてもらいたい」

井上は応諾しました。

後藤新平は、関東大震災後に与党立憲政友会の内務大臣兼帝都復興院総裁でした、当初の復興案は規模縮小を余儀なくされたが、今日の東京の骨格が造らました。もし、後藤新平の計画通りに、東京の復興がすすめられていたとしたら、大東亜戦争で米軍に爆撃されたとしても、東京は焼け野ヶ原にならずにすんだだろうといわています。

後藤新平の帝都復興計画は、それほど革新的なものだったのです。立憲政友会(りっけんせいゆうかい、旧字体:立憲政友會)は、戦前の帝国議会において日本最初の本格的政党内閣を組織した政党で、明治後期から昭和前期の代表的な政党です。略称は政友会(せいゆうかい)です。

関東大震災は正午前でしたが、阪神大震災は午前5時46分に発生しました。時の首相は自民、社会、新党さきがけの三党連立による村山富市で、史上2人目の社会党委員長でした。

村山は回顧録『そうじゃのう…』(辻元清美・インタビュー)で、地震発生は首相公邸で朝6時のNHKのテレビニュースを見て知ったと述べています。

「警察庁から来ている秘書官がおってだな。……7時半ごろ電話がかかってきて……被害の状況はわからんけれども、相当大きくなりそうですよというような意味の連絡があった。それで、僕は8時ごろ官邸に出た」

政府の災害の所管は当時、国土庁防災局でしたが、宿直を常備する体制ではなかったため、国土庁も担当する警察庁出身の首相秘書官の金重凱之が兵庫県の警察の情報に基づき、首席秘書官だった園田原三(元社会新報編集長)を通じて村山に連絡を入れました。園田が当日の村山の行動を振りかえっています。

「火曜日で、10時から閣議があった。総理は8時45分に官邸で報道陣にコメントした。その段階では被害状況を把握していない。午前中は甚大になる危険性ありというだけ。正午過ぎに死者203人と聞かされて、エッと驚いた。それからです」

被害状況の把握に手間取り、首相官邸の動きは鈍いものでした。被災者救出など政府の震災対策が本格化するのは、地震発生から6時間以上が経過してからで、初動の遅れに批判が集中しました。(文中敬称略)

阪神大震災

民主党の菅政権のときにも、様々な問題に対する対応が遅れがちで批判をうけました。結局菅政権は、崩壊し、民主党野田政権のときに、選挙で負けて、民主党は下野し、自民党の安倍政権が成立し今日に至っています。

東日本大震災の直後には、自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表とも「全面協力」を表明し、一転して「政治休戦」となりました。ネットをみていると、東日本震災があっても、自民党は民主党をせめていたなどの記載などが散見されますが、それは単なる印象操作であり、震災直後からしばらくは、「政治休戦」体制が続いており、自民党が政権与党を徹底的に批判しだしたのは、復興の目処がたってからのことです。

今日の野党は、武漢肺炎が深刻になりつつあったときも「桜問題」で、安倍政権を追求し続けていました。

最近、この武漢肺炎がより深刻になってからも、「桜問題」を追求し、武漢肺炎でも、政権を批判しようとしています。

民主党政権時代の最大野党自民党とは、あまりにも違いすぎます。野党が一時的にでも「政治休戦」をせずに、与党を批判し続ければ、今度は野党に批判が集まり、野党の支持率は地に落ち、政権与党の支持率があがることでしょう。

そのような不毛なことはやめ「武漢肺炎」が、終息の兆しがみえるまでは、「政治休戦」をして、超党派で武漢肺炎の撲滅にあたるべきです。撲滅の兆しがみえたときに、「政治休戦」を採りやめれば良いのです。

そのようなこともせずに、今時のような危急存亡のときに、倒閣運動ばかりに力を入れていれば、やがて国民の怨嗟の声が、野党に向けられることになります。

自民党内も、「武漢肺炎」撲滅のため一致して事にあたるべきです。特に、親中派は、一時的にでも良いですから中国への忖度などはやめて、日本国の命を最優先して、とくにかく「武漢肺炎」を撲滅のため安倍総理に協力すべきです。

親中派も、この危急存亡のときに、中国に忖度を続ければ、日本も中国なみに、武漢肺炎の罹患者や死亡者が増えて、日本を危険に晒した首謀者として、国民から怨嗟の声があがることになるでしょう。

とにかく、今は挙党一致で、武漢肺炎の撲滅と、そうして後藤新平が革新的な帝都復興計画立案したように、革新的な危機管理計画を立案し、それが実行できる体制築くために邁進すべきです。

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